にこ「魔法使いの弟子」 (33)
立ったら書く
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BGM:「魔法使いの弟子」
作曲:ポール・デュカス
(語り:亜里沙)
昔々、ある国にエリーチカという偉い魔法使いがいました。
エリーチカの魔力は凄まじく、当代随一と言われていました。
絵里「ふふん」ドヤッ
さて、エリーチカには1人の弟子がいました。
名前はニコニー。
彼女はチビながらも、エリーチカのような魔法使いになるべく毎日修行していました。
にこ「誰がチビよ!!」
修行といっても魔法の使い方を教えてもらうのは稀で、ニコニーはほとんど水汲みや掃除、洗濯、炊事、エリーチカの身の回りの世話ばかりやらされていました。
ニコニーはそれが不満で仕方ありませんでした。
なぜならそんな生活を3年も続けていたからです。
にこ「ったく、いつになったら魔法をちゃんと教えてもらえるのよ!!」
そんなある日のこと、ニコニーがいつものように水汲みをしているとエリーチカが魔法で砂を蝶に変えていました。
絵里「…………っ!」
にこ「うわあ……!」
エリーチカの両手を振り上げると砂埃が舞い、そこから大きな美しい蝶が現れました。
ニコニーは思わず水汲みも忘れて見とれてしまいました。
絵里「…ニコニー、何をしているの?水汲みをするよう言ったはずだけど」
にこ「あっ!?ご、ごめんなさい!!」
エリーチカは怒るとすごく怖いのです。
絵里「全く……ニコニー、私は今からノンタン女王の城へ行ってくるわ。私が戻るまでに水汲みを終わらせておいてね」
にこ「わ、わかりました」
絵里「それと」
絵里「私がいない間、勝手に魔法を使わないこと。そこにある呪いの書を読んで水汲みをさっさと終わらせようなんて思わないことね。貴女の魔法は粗いから、使ったらすぐにわかるわ」
にこ「……わかりました」
エリーチカは出かける際、いつもニコニーにこう言います。
絵里「それじゃあ、留守番よろしくね」
エリーチカはそう言うと女王様の城へ出かけて行きました」
にこ「何よ、ケチなんだから!!」
ニコニーは、イライラから思わずバケツを蹴飛ばしてしまいました。
するとバケツが転がった先に一本の古い箒がありました。
凛「何で凛が箒の役なの!?」
凛さん!まだ喋らないでください!
ニコニーは箒を黙って見ていました。
そしてあることを思いつきました。
にこ「……そうだ、この箒にやらせましょ。ちゃんと呪いの書の通りにやれば跡なんか残らないはずよ!」
人間というのは、禁止されたことをやりたくなる生き物なのです。
ニコニーも例外ではありませんでした。
ニコニーは呪いの書の『物を歩かせる呪文』のページをめくり、箒に向かって唱えました。
にこ「…キョンキョン・オニャンコ・セーラー(我が魔力を以って命ずる)」
にこ「セイコサン・レッド・スイートピー!!(物質よ、動き出せ)」
ニコニーが呪文を唱えると………
凛「うーん………」
何と、箒から手が生えて動き出しました!
にこ「すごい!本当に動いたわ!」
ニコニーは大喜びです。箒が喋り出しました。
凛「にこちゃん、凛は何をすればいいの?」
にこ「『にこちゃん』じゃなくて『ニコニー』!!『凛』じゃなくて『箒』!!ちゃんと役になりきりなさい!!」
にこ「こほん……あんた、私の代わりにこのバケツで水を汲んで水瓶に入れなさい」
凛「わかったにゃー!」
箒はバケツを持って水汲みを始めました。
凛「うんしょ、うんしょ」
箒は休まず働き、水瓶に水がどんどん溜まっていきます。
ニコニーは笑いながらそれを見ていました。
にこ「いい働きっぷりよ!そのまま休まずやりなさい!」
凛「了解だにゃー!」
水汲みを見るうち、ニコニーは眠ってしまいました。
夢の中でニコニーは大きな崖の上にいました。
にこ『アイマス・モバマス・ホモーマス!
(星よ輝け)』
ニコニーの呪文で星が瞬きました。
にこ『ミモリン・シシャゴニュー・ナンデデスカー!(海未よ暴れろ)』
呪文を唱えると同時に海未さ…海が大きく波打ちました。
縦横無尽に動き回ったりアーチを描く星と合わせて綺麗な光を放っています。
すると突然、雨が降ってきてニコニーはビショビショになってしまいました。
にこ『ちゃ、うわっ、
にこ「何なのよお!!!!!!」
ニコニーはそこで目を覚ましました。
にこ「って、何よこれ!!」
なんと、水瓶から水が溢れすぎて部屋が水浸しになっていました!!
凛「にゃんにゃんにゃーん♪」
箒はそんなことは御構い無しに水汲みを続けていました。
にこ「ちょっとあんた!!水汲みはもういいわ、元の箒に戻ってよ!!」
ニコニーは必死になって箒を止めましたが…
凛「ええ〜、にこちゃんがやれって言ったんだよ?今更止められないにゃ!」
箒は聞く耳も持ちません。
にこ「ちょっと、止めろって言ってるでしょ!?たかが箒のくせに人間様の言うことが聞けないの!?」
凛「うるさいにゃ!!ほらどいて、水汲みの邪魔……にゃ!!」
箒は怒ってニコニーをバケツで突き飛ばしました。
にこ「キイイイイイ!!いいわ、逆らおうってんならこっちにも考えがあるわよ!!」
怒ったニコニーは壁にかかっていた斧を手に取り、箒を襲いました。
にこ「オラオラオラ、さっさと止まれ!!」
凛「にゃっ!?に、にこちゃん止めるにゃ!!止めて!!誰か助けて!!」
何度も何度も斧で叩かれた箒は、ボロボロになりただの木屑になってしまいました。
凛さん、お悔やみ申し上げます。
凛「死んでないよ一応!!」
にこ「はあはあはあ…やっと止まった…」
ニコニーはため息をつきました。
にこ「先生に言われた通りにすればよかった……あーあ、水を掻きださなきゃ」
ニコニーはそう言って木屑を扉の外に捨てると、バケツを持ちました。
その時です。
扉の向こうから大きな足音が聞こえてきました。
足音はどんどん部屋に近づいてきます。
にこ「やばい、先生もう帰ってきたの!?」
しかし、耳を済ましてみると、とても1人の人間の足音とは思えませんでした。
ニコニーは扉を開けました。
するとそこには。
穂乃果「みんな、ファイトだよっ!」
海未「恥ずかしいです…というか中の人をいじられたのですが」
ことり「ふう、結構暑いねこの衣装」
希「ウチ女王様の役のはずなのに…」
花陽「凛ちゃん、恥ずかしいよお///」
凛「みんな文句言わないで!水汲み頑張るにゃー!」
なんとそれはバケツを持った箒の群れでした!!
にこ「嘘、なんでよ!?斧で壊したはず……ハッ!?」
ニコニーが箒をよく見ると、先ほどより一回り小さくなっていました。
にこ「まさか…欠片から再生したっていうの!?ていうか、この人数で水汲みなんかしたら……!!」
真姫「ちょっと私を忘れないでよ!!」
ごめんなさい。
ニコニーが気づいた時にはすでに遅し。
とうとう、部屋は大洪水になってしまいました。
にこ「どうすんのよ!?やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!!!!」
ニコニーは慌てました。
しかし、はっと思いつきました。
にこ「そうだ呪いの書!あれに魔法の解き方が書いてあるはずだわ!」
ニコニーは必死になって、呪いの書のページをめくりました………が。
水でインクがすっかり落ちてしまいました。
にこ「ちくしょごぼぼぼぼぼぼぼ」
泳げないニコニーは溺れてしまいました。
にこ(私このまま溺れ死ぬの!?嫌よそんなの嫌!!誰か助けて!!)
ニコニーは助けを呼ぼうと水面に上がろうとしました。
にこ「助けゴボボボボボ誰かブゲゲゲゲゲゲゲ」
ニコニーは諦めかけました。
その時です。
絵里「ったく、女王様ったら……飲めないって言ってんのに……ニコニー、帰ったわよ」
エリーチカが城から帰ってきました。
にこ「先生ゴボボボボボ」
ニコニーは一生懸命先生を呼ぼうとしました。
エリーチカが部屋へ入ってきました。
絵里「水汲みは終わっ、これは…!?」
エリーチカは部屋の惨事を見て驚きました。
にこ「先生ゴボボボボボ」
絵里「ニコニー……貴女って人は」
水に使ってもなお水を汲み続ける箒達と、水面でもがくニコニーを見てエリーチカは留守中の出来事を一瞬で理解しました。
そしてため息を吐くと高らかに呪文を唱えました。
絵里「………ラスプーチン・ニコライ・アナスタシア、ノードカイホー・ボリシェヴィキ・レーニン(水よ、水よ、流れる水よ。其の怒りを鎮め母なる海原へと還れ)」
絵里「ゴルバチョフ・フルシチョフ・ブレジネフ、トロツキー・エリツィン・プーチン・ストルイピン(物質よ、在るべき姿を思い出し、己の身の程を弁えよ)」
エリーチカが呪文を唱えると、水は波を立ててひいていき、箒は再び一つになり手脚を引っ込め動かなくなりました。
エリーチカは無言でニコニーに近づいていきました。
絵里「………ニコニー、私の言いつけを守らなかったのね」
にこ「………はい」
絵里「はあ……破門されたいようね」
にこ「っ!それだけは!」
絵里「……まあ、ほぼ初めてでここまでやるのはある意味すごいわ。特別に雑用の期間をもう1年延長で許してあげましょう」
にこ「………」
絵里「文句があるなら出て行きなさい」
にこ「……寛大な処置をありがとうございます」
絵里「はあ、残念ね。明日から本格的な魔法の修行に入ろうとしてたのに」
にこ「え゛っ」
絵里「ほら、さっさと水汲みを再開しなさい……『自分の力』でね」
にこ「わかりました……」
ニコニーは結局、魔法を教えてもらえませんでした。
でも挫けてはいけません、人生とはそういうものです。
その後、ニコニーが修行を重ねエリーチカ以上の偉大な魔法使いになるのはまた別のお話。
完
くぅ疲
この『魔法使いの弟子』はディズニー映画『ファンタジア』のうちのミッキーが主役のアニメで使われました。
興味があればフルバージョンもぜひ聴いてください。
明日申請だします。
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