狛枝「………もう君たちには絶望したよ」(66)


―――――コロシアイ学園生活初日にて

モノクマ「狛枝君…いいものあげようか?」

狛枝「いいもの?」

モノクマ「さぁさぁ…この『全弾装填済みリボルバー拳銃』でロシアンルーレットをやって君が勝ったらあげるよ!うぷぷ…」

狛枝「ふーん…で、ロシアンルーレットって?」

モノクマ「ここにあるリボルバー拳銃を自分の頭に向けて発射するのさ!」

モノクマ「不発弾が出たら狛枝君の勝ちだよ!」

狛枝「よく分かんないけど…引き金を引けばいいんでしょ?」

モノクマ「なんて…できるわけ」

カチッ

狛枝「出なかったね。ちょうだい」

モノクマ「うぷぷ…やっぱり君はすごいね…ボクが認めただけのことはあるよ」

モノクマ(不発弾が出たら…なんて言ったけど、不発弾なんて入れた覚えはないね…)

モノクマ(つまりボクの意図しないところで不発弾がまぎれた…恐ろしい才能だよ、まったく…)


狛枝(………もらったのは、全員分のプロフィールと…モノクマが言っていた『記憶から消された学園生活』の記録)

狛枝(さらには未来機関と呼ばれる組織に関する情報)

狛枝(これを信じるなら…なるほど、ボクがコロシアイをはじめないわけにはいかないな)

狛枝「モノクマのやり方に乗るのは癪だけど…ま、しょうがないよね」

狛枝「…でも…待てよ?この中に未来機関の『裏切り者』が潜んでいるなら…まずいことになるな」

狛枝「まずは裏切り者の特定から始めようかな?」


狛枝「んー…でも…さっきの『ロシアンルーレット』でボクの運のストックはなくなっちゃったかな?」

狛枝「不運が来ないと幸運が来ないなんて…ほんとカスみたいな才能だよね」

狛枝「ま、彼らがゴミとは言っても…今の彼らは違うわけだし…しばらくは一緒にいるのも悪くないかな?」

コンコン

狛枝「はーい」ガチャ

日向「狛枝!これから一緒に探索に出ないか?」

狛枝「日向君…うん、いい考えだね…まずはこの島を一周してみようか」


狛枝(うーん…裏切り者をくじ引きで決めてもいいけど…それ相応の運が欲しいよね…)

狛枝(裏切り者…か…それがモノクマにとってどんな意味があるのかはちょっとわからないけど…きっと特定できてないんだろうな…)

狛枝(あのデタラメなモノクマでさえ特定できないんだから…命を懸けなきゃ、見つからないんだろうな…)

日向「……だ、狛枝!」

狛枝「うん?」

日向「どうしたんだよ、ボーっとして…」

狛枝「あぁ、ううん…ごめんね、ちょっと考え事を…」

七海「………」

狛枝「あれ?もしかして七海さんも一緒に行くの?」

七海「うーーーん…」

狛枝「ははっ…長考だね」

日向「半分返事みたいなもんだよ。じゃあ、どこから回ろうか?」

―――――


日向「それにしても…俺たちをここに閉じ込めた組織って…何者なんだろうな…?」

狛枝「あぁ…それに関してだけど、モノクマから『未来機関』って組織が関わってるって情報をもらったんだよね」

七海「………未来、機関?」

狛枝「うん。詳しいことはわからないけど、未来機関のスパイもボクたちの中に紛れ込んでるらしい……ま、どこまでが本当かわかったもんじゃないけど」

日向「本当だとしたら…許せないな…俺たちをこんなわけのわからないことに巻き込んで…」

狛枝(フン…俺たち、か。同列に扱ってほしくないね)

七海「………何か言った?」

狛枝「うん?なにが?」

七海「……………気のせいかも」

狛枝「それじゃ、めでたく手がかりもなかったことだし…かえろっか?十神君にどやされるよ」

日向「それもそうだな…」

狛枝「みんなで協力すれば、きっと出られるさ!希望を持って前に進もう」

日向「あぁ…そうだな!」

七海「……………」ネミー


狛枝「ま…ボクがそんなことは許さないけどさ」ボソッ

―――――

十神「遅い。何をやっていた」

狛枝「ははっ…探索に精を出しすぎて…ね」

十神「手掛かりはあったか?」

日向「特に何も…あ、でも狛枝がモノクマから話を聞いたらしい」

十神「話?」

狛枝「あぁ、なんでもボクたちをここに閉じ込めたのは未来機関っていう組織で…そのスパイも僕らの中に紛れ込んでいるらしいよ」

十神「……モノクマの話だ…と切り捨ててもいいが…警戒するに越したことはないな」

十神「十神の名に懸けて…犠牲は出さん」

澪田「白夜ちゃんかっけーっす!」

狛枝(まさに茶番だね…)


七海「……」ジーッ

狛枝「………七海さん、どうかしたの?」

七海「狛枝君、なんか今朝からおかしくないかい?」

狛枝「………どうだろうね?自分ではよく分からないよ」

七海「………ふぁ」

狛枝「ははっ、眠いんだね…疲れちゃったかな?」

七海「ううん…べつにー………グー…」

狛枝(可愛らしいな…ははっ…彼女が裏切りものだったらいいんだけどな…)

狛枝(可愛らしい、か。そういえばそんなことを思ったのもいつぶりかな…)

狛枝(彼らと、一友人として付き合っていくのも悪くないのかもしれない…)

狛枝(なんてね。人間なんて『不確か』なものより…ボクの『幸運』のほうがよっぽど信じられる)

狛枝(ボクはここで目的を遂げて…『超高校級の希望』になるんだ…素晴らしいよ!)


狛枝「…ってあれ?七海さん?」

七海「………」スカピー

狛枝「……参ったな。本格的に眠っちゃってるよ…」

日向「ほんとだ…いつもながらよく立ったまま寝れるよな」

十神「しょうがないな…リーダー命令だ。狛枝、七海を部屋まで連れて行け」

狛枝「わかったよ…よっ…と…結構重いな」

小泉「ちょっと!女の子にそんなこと言っていいわけ!?アンタ男でしょ!?」

狛枝「40kg以上のものを軽々持ち上げられるような男なんてそんなにいないよ…じゃ、行ってくるね」


―――――

狛枝「あーっと…そういえば…鍵は…」

モノクマ「ぱ、ぱ、…パルス!」

ガチャ

狛枝「さすがに対応速いね」

モノクマ「君は僕のお気に入りだからね…うぷぷ…そんじゃバイナラ!」

――――

狛枝「おじゃましまーす…よっと…ベッドに寝かせればいいかな…?…!?」グイッ

七海「………」

狛枝「あれ?おこしちゃったかな…?ならみんなのところに…」

七海「………そのまま聞いてね」

狛枝「こんなに近いと照れちゃうな…」


七海「あなたにみんなは殺させないよ」


狛枝「……………クッ…あはははっ!そっかそっか!」

狛枝「君が裏切り者…未来機関からやってきたスパイだったんだね」ボソッ

七海「………」

狛枝「久しぶりに幸運が先に来た!さてさて…これからどんな不幸が来るのかな…今から楽しみにしておくよ…」

狛枝「おやすみ、『千秋さん』!よい夢を!」

狛枝(アハハッ…ボクの幸運はやっぱり訳が分からない!)

狛枝(困ったなぁ…計画の立てようがないじゃないか!あぁ…なんて楽しい!)

狛枝(これが希望になるための試練なんだね!)


―――――

狛枝「…ねぇ、モノクマ」

モノクマ「はーい!なにかな?」

狛枝「出てくるのは自室でも関係なしなんだね…」

モノクマ「うぷぷ…そりゃそうだよ!」

狛枝「ロシアンルーレット、やりたいんだけど」

モノクマ「はいはい…じゃじゃーん!リボルバー!」

狛枝「違う違う…そんなんじゃなくてさ」


狛枝「グレネードランチャーみたいなの無いの?」


モノクマ「あるよ!」

狛枝「さすがに頼りになるね」

ガシャ…

狛枝「ふむ…右手だけじゃキツイな…うーん…こんな感じか?」

モノクマ「………何してるの?」

狛枝「うん、ちょっとね…あ、これって全弾装填済み?」

モノクマ「うん」

狛枝「じゃあ弾丸を抜いて…と…モノクマ、ちょっと手伝って」

モノクマ「なにすればいいの?」

狛枝「弾丸をシャッフルしてくれない?」

モノクマ「オッケー!あぶだけだブラジャー!」

カチッ

ズドン!


―――――

日向「………!?な、なんだ…今の音…!?」

―――――

狛枝「うっわー…ふふっ…これは超高校級の幸運の名折れかな?」

モノクマ「…まったく……最高に面白いね、君ってやつは!」

狛枝「血を止めるだけでいいよ…」

狛枝「あんなおぞましい左腕なんて吹き飛ばしてくれるって…自分の運を信じて望んだとおりになったからね」

モノクマ「うぷぷ…不運でさえも利用するんだね、君ってやつは…」

狛枝「死んじゃうから、はやく」

モノクマ「イタイノイタイノトンデケー」


――――――

狛枝(血が止まるどころか傷までふさいだ…まるで魔法だな…でも…)

狛枝「………ふふっ…あははっ…これで幸運も帳消しとはいかないまでも…もう大きな不幸には見舞われないだろうね…」

モノクマ「計画を実行に移すんですか、旦那!」

狛枝「んー…ま、ゆっくり考えるさ」

モノクマ「………期待してやすぜ…」

狛枝「キミを捕まえる方法を思いついたらね…」

モノクマ「うぷぷ…わかってるくせに!」

狛枝「そうだね…キミを捕まえるには骨が折れるよ…」

狛枝(最低でも7人に…いや、『彼女』に『彼』までもアイツを心から信じている…だから…5人、か)

モノクマ「せいぜい頑張って!期待してるから…うぷぷ…」

シュン

狛枝「消えるのまで自在なのか…全く、奔放なヒトだね…」

狛枝「さて…寝よ」


―――――

狛枝「日向君、おはよう」

日向「狛枝!おまえ昨日の爆発音…って…は?」

狛枝「?」

日向「お、お前…腕…どうしたんだ?」

狛枝「ウデ?…?」

左右田「おーっす…って…ひゃああああああああああああああああああああ!?」

狛枝「左右田君まで、どうしたんだい?」

左右田「なにって!お前!ウデ!ウデ!左腕がついてねーぞ!?」

狛枝「あぁ、これ?」

日向「だ、大丈夫なのかよ?」

狛枝「んー…別に利き手じゃないしね…不便といえば不便かもしれないけど日常生活には問題ないよ、たぶん」

左右田「たぶんって…なんでそんなに落ち着いてるんだよ!?」

狛枝(うるさいなぁ…自分で吹き飛ばしたんだし…君たちが騒ぐことじゃないよ)


モノクマ「うぷぷ…」

左右田「でたぁ!?」

モノクマ「狛枝君は『校則違反』を犯したからね…その罰だよ、それは」

狛枝「だから…つべこべ言ってもしょうがないわけなんだよね…」

狛枝(たまにはこいつも役に立つんだね)

日向「校則違反って…?」

モノクマ「他人の部屋に忍び込んでgo姦をしようと…」

日向「!?」

狛枝「ははっ…ゴミを処分しようと思ったんだけど、面倒でね…ポイ捨てしちゃったんだよ」

狛枝(はっ…やっぱクズか…メンドクサイ奴だよ…)

日向「だ、だよなー…」


日向「…じゃなくて!ポイ捨てなんかで…」

モノクマ「見せしめ、ってやつですな!これを教訓に校則違反は犯さないでね…うぷぷ…」

―――――

狛枝(そのあともほぼ全員に同じリアクションをされた)

狛枝(千秋さん以外には…)

七海「ボー…」

狛枝「おはよう千秋さん。昨日は眠れた?」

七海「…………うーーーーーーーーーん」

狛枝「…そっか。よかったね」

七海「ふぁ…」ネミー…

狛枝「でも眠いんだね…」

七海「狛枝君…君はさ、なんでそんな風になっちゃったのかな?」

狛枝「うん?ずいぶん唐突なんだね」


七海「君、自分が歪んでることに気付いてる?」

狛枝「………どうかな?うん…そうだね、考えたこともなかったよ」

七海「そっか」

狛枝「でも…そうだね、改めて考えると…普通とは比べるべくもないかな」

七海「………自分の腕を吹き飛ばしたりなんかは、絶対しないよ?」

狛枝「それについては賛成できないな…本当にそう思うのかい?」

七海「………」

狛枝「そうだよ。君になら理解できるよね?なんで『左腕』か」

七海「………思い…出してるの?偶然じゃ…」

狛枝「あれ?これは意外だったかな?」

七海「………いいから、答えて」

狛枝「意外に迫力あるんだね…いいよ、答えてあげる。正解は、noだよ」

七海「じゃあ、なんで…?」

狛枝「知ってるだけさ…『知識』としてね。モノクマにもらった資料にはボクたちの忘れている学園生活が事細かに書いてあったよ」


七海「…!!」

狛枝「今考えればそうだね…君のことはそんなに細かく書いてなかった」

七海「………じゃあ…日向君のことも…?」

狛枝「知ってるよ『       』…そうでしょ?おそらくは『彼女』に匹敵する存在さ」

七海「………」

狛枝「ま、ボクの最終目的は『彼女』さ…彼女を引きずり出す方法を思いつくまでは…」


狛枝「仲良くしようよ…ボクも君と同じで『希望』を信じてるからさ」


七海「君、やっぱりおかしい…」

狛枝「………そうかな?」

七海「何が君をそうまでさせてるの?」

狛枝「うーーーーーーーん…」

七海「………」

狛枝「やっぱり…ボクが幸運だから、かな?思い当たる原因はそれしかないよ」

七海「幸運…」

狛枝「ボクはこう思うな…人の幸せの量は等量なんだ。だから、幸運を味わうことはそれだけの不幸を味わうに等しいことなんだ」

七海「………やっぱり、そうなんだね。君の才能が、君を苦しめてるんだよ」

狛枝「はは…ボクの幸運もアイツ程度だったらなー…素敵な友達が出来たかもしれないんだけどね」

狛枝「おっと…少し話しすぎたかな…今のは忘れ…」


七海「…それが君の本音?」


狛枝「………は?」

七海「本当は寂しくて寂しくて…しょうがないのに、誰も自分に関わってくれない」

狛枝「………」

七海「だから…本当に寂しいなら、私が君といてあげるよ?」

狛枝「…優しすぎて、君こそ正常には見えないよ」

七海「………」

狛枝「…答えはノーだよ、千秋さん。僕にだって譲れないものはある」


狛枝「アイツにできて…ボクにできないはずがない…だから、ボクは…」


狛枝「この島で生きる人間を、全員殺す…君も一緒にやってくれるなら、話は別だけど?」

七海「………決裂、だね」


―――――

狛枝(………もったいないことしたかな………なんて、らしくない)

狛枝(………超高校級の絶望………)

狛枝(見ていろ…希望は絶望なんかに負けない…)

狛枝(だがもし絶望に食われる程度の希望なら…)


狛枝(内臓を散らされるくらいは、当然のことだ)


狛枝(………彼女たち…千秋さんとモノミ…それに…)

狛枝(アイツとその仲間の方々が凝れば…)

狛枝(彼女に勝ち目はない…)


狛枝「………最後に信じるべきは『希望』だよね」


―――――

日向「おはよう、こまえ…」

狛枝「触るなよ、ゴミ」

日向「………は、はぁ?お前…なにを」

狛枝「あれ?聞こえなかった?さすがに金ヅルの予備学科だけあって聴力も残念だね」

日向「よび、がっか…?」

七海「…やめて。なんのつもり?」

狛枝「千秋さんに頼まれちゃしょうがない…よかったね、ゴミが構ってもらえたよ」

日向「お前、いきなりなんなんだ!」グッ

七海「ダメだよ、日向君…この人に構っちゃ…」

狛枝「………はっ…情けな…」

日向「!!!」


日向「なんだ…なんなんだよ!お前、あんなに優しかったじゃないか!それがどうしていきなり…」

狛枝「………不愉快だよ、日向君。君が僕の何を知ってるっていうんだい?」

日向「!」


終里「なんだなんだ!どうした!?」

ソニア「なにを揉めているのですか!」


狛枝「おはよう、二人とも…そろいもそろってアバズレのご登場、だね」


終里「あ?…んだよ…やんのかコラ!?」

ソニア「アバズレなどと…いきなりなんなんです!」

狛枝「………あ?」

終里「………」ゴクリ

ソニア「………ひっ」

狛枝「………残念だけど遠慮しておこうかな?終里さん…どうせボクの勝ちだからさ」

終里「………舐めやがって………!お前なんぞ一発で仕留めてや…」

七海「みんなやめて!!!狛枝君も!!!」

狛枝「うーん…千秋さんの頼みじゃしょうがないか…あ、じゃあ…」


狛枝「ソニアさんが土下座しながら靴舐めてくれたらいいよ?ボクは部屋にでも引っ込んでるさ!ね?いい提案でしょ?」


ソニア「………え………?」

狛枝「………ほら、やらないの?」

終里「…テンメェ…!このド変態が!なんならぶっ殺してや…」

七海「やめて…!もうお願いだから…!」

日向「おい狛枝…!」

ソニア「………わかり…ました」

スッ

ソニア「お、お願いします…もう…これ以上言葉の暴力を振るうのは…や、やめて…ください」

狛枝「………で?」

ソニア「………」ペロ…

狛枝「………はっ…これが王女、ね。かわいそうな国…みじめで見てられないから、部屋に戻るね」


左右田「オイ…狛枝…何やってんだ…?」


七海「左右田君…!」

左右田「答えろ…!」

狛枝「は?」

左右田「は?じゃねえ…!」

狛枝「は?」

左右田「」ブチッ

左右田「殺す…!」

日向「左右田!お、落ち着け」

狛枝「左右田君のせいで帰れないなー…ね、ソニアさん!」

ソニア「そ、左右田君…どうか、落ち着いて…」

左右田「ソニアさん…でも…!」

狛枝「あははっ…さっきの調子で左右田君のアレでもしゃぶってあげたの?よく躾けてあるね!」


七海「狛枝君はもう黙って」


狛枝「………じゃ、帰るね」

―――――

日向「や、やっと出て行ったか…」

ソニア「………」ポロポロ…

左右田「クソッ!クソッ!!クソッ!!!」

小泉「おはよー…って、な、なんなの!?この状況!?」

終里「………マジで、殺してくるわ………」

ダッ

七海「待って!………追いかけないと!」

小泉「………」ポカーン


澪田「ちーっす!!」

十神「やはり様子がおかしいぞ?いま、七海や終里ともすれ違ったが…二人ともいつもの雰囲気ではなかったしな」

日向「実は…」

―――――

終里「ぁ…が…うっ…」

狛枝「………ね?勝てないでしょ?」

終里「なんでだ…なんでなんだ!?」

狛枝「あぁ、なんで君が真っ向勝負で負けたか?」


狛枝「運も実力のうち、ってね…ビギナーズラック…ってやつ。よくあるでしょ?」


七海「………」

狛枝「なにその目?なんか言いたげ?」

七海「………別に?」


―――――

狛枝「さて、部屋に引っこもうかな?」

狛枝「…ソニアさんの部屋は…と」

狛枝「パルス」

カチッ

狛枝「あ、良かった…コレ僕でも使えるんだね」


狛枝「………ゆーっくり待っててあげるね…ソニアさん…あははっ…」


―――――

「あーあ…狛枝は面白い人材だったんだけどな…」

「なーんでか内部バグが生じやがった…クソゲーめ…」

「膨大なデータが脳に流れ込みすぎて…人格データが壊れやがった…」

「バグを消去っていうなら…そんくらいの『権限』はあるよね?」


「じゃあね、狛枝凪斗…」

―――――


狛枝「くっ…あれ…?ボクはどうしてソニアさんの部屋に…」

狛枝「モノクマの正体は江ノ島盾子………なんでだ?なんでボクがそれを知って…」

狛枝「くっ…ボクが…ボクが超高校級の絶望を根絶やしに…」

狛枝「きぼうきぼうきぼうきぼうきぼうきぼうきぼう………!」

狛枝「んmがおjajfmakdfgadfjgnakldfmgkladmfkgmna:lga」

komaeda [alfkakgafjdfgkamf;gmamg;amfklgmadfmgakldnfg;anhxmnvbjf]

―――――delete complete


………あ………れ………?

「ここは………どこ……だ?」

「………目が覚めたかい?」

「君は……苗木、誠…?」

苗木「そう…その通り。記憶は確か…かい?」

「…ボクの名前は…狛枝…凪斗」

苗木「そう。君は今までどこにいた?」

狛枝「………ゲーム空間の中」

苗木「………その前は何をしていたんだい?」

狛枝「ゼツボウ、してたよ」

苗木「!その記憶もあるのかい!?」

狛枝「………とりあえず、この左手をどうにかしてくれない?気持ち悪くてしょうがない…」

苗木「あ、うん…」

―――――


十神「………驚いたな。絶望から更生出来たのか?」

霧切「……彼にはバグが生じたの…そして江ノ島盾子が彼のデータを削除した」

狛枝「………クソッ………あそこにいる絶望たちを根絶やしにしなきゃいけないのに!」

苗木「…それが君の希望かい?」

狛枝「当たり前でしょ?…やっぱ君はどこかおかしいよね…超高校級の希望さんは」

苗木「それは違うよ。ボクもただの幸運だよ」

狛枝「幸運だって?ふざけるのも大概にしてほしいね」

苗木「………君の境遇を考えれば、そうかもね」


狛枝「…は?」

霧切「落ち着きなさい」

狛枝「………」

霧切「あなたがが抜け出せたことで、何とか糸口がつかめるかも知れないの。協力して」

苗木「でも…実は…いいことばかりとも言えないんだよ」

狛枝「そりゃそうだよね。僕みたいに一番に殺人を企てるような危険因子がこっちに出てきたら不安でしょ?」

苗木「………そういうことじゃないよ。調べて分かったことがあるんだ」

苗木「…あの世界はいずれ消滅するよ。狛枝君のデータの残骸がウィルスになって、あの世界を食い荒らしてる…」

狛枝「………それは良かったよ!黒幕ごと絶望が消えて万々歳だね!」

苗木「違う。無理なんだ…江ノ島盾子のデータは消せない…どころか、崩壊すれば彼女を縛るルールはなくなり…ネットワークに彼女が流れ出てしまう」

苗木「しかも、崩壊と言ってもペースは遅い…彼女なら間違いなくこの好機を逃さない…キミたちの脳にすら入ってくるかもしれない」

狛枝「それは…ぞっとしないね?」


苗木「今から君をもう一度あの世界に送ろうと思う」

狛枝「………君が行けば?」

苗木「……無理なんだ。僕らのデータを送り込むのには時間がかかる」

狛枝「………ボクを使えば都合がいい、と」

十神「そういうことだ」

苗木「………アルターエゴにかなり無理を言って…時間軸を少し戻した」

狛枝「さすがゲーム、都合イイね」

苗木「………誰も死人が出てないからこそだよ.死人が出たら使えない手だし、長い時間は戻せない」

狛枝「ふーん。あっそ」

苗木「……狛枝君。ボクはね…君がまちがってるとは思ってないよ」

狛枝「…」

苗木「君の希望のあり方は間違っちゃいない。絶対悪は許さない…それも一つのあり方だよ」

苗木「でも」

苗木「絶対悪なんてないんだ…狛枝君…希望を誰より信じる君が絶望したようにね」

狛枝「……」

苗木「キミしかいない。彼らを…救ってあげて」

狛枝(これが…超高校級の希望…誰もが魅了される、圧倒的な眩しさ…)

狛枝「わかったよ…」


苗木「ありがとう!狛枝君!」

狛枝「………でも、ひとつだけ忠告しておきたいかな」

苗木「?」

狛枝「君の希望は、眩しすぎるよ…誰もが君みたいに心が強いわけじゃないんだ」

苗木「………………」

狛枝「ボクは君を誤解していたよ。君のその精神力は確かに超高校級にふさわしいね…」

狛枝「…じゃ、はやく送ってくれない?」

十神「………そこに横になれ」

―――――

狛枝「………ここは…ソニアさんの部屋?」

狛枝(…ほんとに少しだけだな)

狛枝「ま、いいか…とりあえずすぐに出よう」

ガチャ


ソニア「グスン…え…?」

狛枝「あ…」

きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

―――――


ソニア「」ムググ…

狛枝「どうどう…ソニアさん、落ち着いて」

ソニア「………」

狛枝「おーけーおーけー…」

ソニア「わ、わたくしになんの用ですか!?」

狛枝「あー…その………」

狛枝(ゴメン、なんて通じるのかな?でもそうしないと始まらないよね…)

狛枝「ごめん!ソニアさん!」ドゲザッ

ソニア「こ、狛枝さん?」

狛枝「」ペロ…

ソニア「!!!」

きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ


狛枝(しまった…やりすぎた)

ソニア「な、なんなんですか!?舐めたり舐めさせたり!?sなんですか!?mなんですか!?」

狛枝「い、いや…あのね、ソニアさん…そこ?」

ソニア「………狛枝さん?なにか雰囲気が違いますね…?」

狛枝「…そう、かな?」

ソニア「まあ何でもいいのです!さっきのは本当に屈辱的だったんですから!」

狛枝「………ごめん、ちょと参っちゃってさ………ほら、こんな状況だし…」

ソニア「それは…そう、ですね…」

狛枝「…ソニアさん、みんなを集めてもらえないかな?」

ソニア「?」

狛枝「ここを出る方法が分かったんだ」


―――――

十神「ソニア、本当なのか?ここを出る方法が分かったというのは…」

ソニア「………」

狛枝「やぁ、みんな」

日向「こ…狛枝…」

狛枝「………まずは先にお詫びをしようかな…さっきはみんなにひどいことを言ってしまって…ゴメン」

終里「今度はナニたくらんでやがる?」

狛枝「ソニアさんが言ったでしょ?ここから出るんだよ…」

七海「………どうやって?」

狛枝「シャットダウンを使う」

七海「!!」

狛枝「今、黒幕は手一杯のはずだよ…だから、今のうちしかない。遺跡まで行こう、みんな」

十神「おい。状況が読めないぞ…シャットダウンとはなんだ?だいたい…お前を信用しろというのか?」

このSSまとめへのコメント

1 :  超高校級の影   2015年03月28日 (土) 23:32:06   ID: VjE7hlwN

狛枝、黒い……………
最早、超高校級の幸運と言うより
超高校級の絶望と言った方がしっくりくるな。……………いや、狛枝の場合は
希望も絶望も幸運も不幸も全部纏めて
こその狛枝かな?………………何れにしても、面白いな狛枝は。

2 :  SS好きの774さん   2015年07月23日 (木) 14:01:57   ID: B7AWvu1h

続き気になるなー!
やっぱ狛枝ヤバいな

3 :  SS好きの774さん   2016年08月09日 (火) 19:15:45   ID: EviZMAGh

狛江死ね...

4 :  SS好きの774さん   2016年08月18日 (木) 02:35:07   ID: Bw1CMzRS

どっかの裸エプロン先輩思い出した

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom