吸血鬼「僕は、強くなりたかっただけなんだ……」 (16)


【異端】


僕には何もなかった。

力も魔力も……

何もかもが僕からそっぽを向いて、振り向いてくれはしない。


無力なまま、無価値なまま時は過ぎる。


止まったままだ。

ずっとずっと止まったまま……

成長して身長が伸びても、ちっとも変わりはしない。



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僕は、僕のままだ。

何故この世界に生まれた?


蔑まれ、足蹴にされ……

価値無き命があることを知るためか?


僕は……

僕はそんなちっぽけな存在が実在するってことを……


それを証明する為に生まれ、己を恥じて死ぬのか?


踏まれる命なんて必要ない。

必要ない存在を証明するのが、僕なのか?


だとしたら何て残酷なんだろう。


せめて、せめて一つだけでも希望があるのなら。

僕はそれに賭けてみたい。

そう願いながら、今日も魔学書を読む。


「一つでいい、一つでいいんだ」


何でも良い、一つでいい……

そう願いながら読んでいる書物が、最後の一冊。


魔界図書館、最後の一冊。

一冊一冊を読む度に儚い願いを削がれる日々だった。

でもこれで終わり。


これで、最後……


頼む何か一つでいいんだ。

お願いだ。僕は強くなりたいんだ。

何か、何かヒントをくれ。


「結局全部同じ。受け継がれる血脈、血筋」


優秀な血筋か、羨ましいな。


「血筋、血脈……結局は血か……」



血液はあらゆる魔術に共通する。

どの書物に記載されていても何ら可笑しくない。

寧ろ血液が記されていない書物なんてなかった。


例えばコウモリ、トカゲ、ネズミ……

血液は様々な魔術に使われている。

しかし、【これ】は違った。


「えっ? 【人間】の、血?」

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