真美「どうでもよかったはずなこと」 (35)


二人が当たり前、真美は亜美と一緒にしかいられなかった。

だって、怖かったから。

いつだって何かをやろうと言い出すのは亜美だったから自分じゃ何もできない気がして怖かった。



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なんて言い訳ができたのはいつまでだっけ。

だってさ、みんなが“双海亜美”は亜美で、真美は“双海亜美”じゃないって。

勝手だよ、今までずっと真美は“亜美”だったのに。竜宮小町? なにそれ。

わかんないよ、真美だけ置いてけぼり名の? それとも真美一人だけで何かやれっていうの?

無理に決まってるじゃん、絶対無理なんだよ。


兄ちゃんが真美をプロデュースしてくれるって言っても、真美には真美だけやりたいことなんてないよ。

アイドルは楽しいよ? でも、一応みんなに合わせてトップアイドルなんて言ってるけど高すぎて真美には見えないや。

だから、亜美が竜宮の一員として有名になっていくのだけがすごくうれしかった。そうすればたまに亜美の双子ってことで一緒に仕事できたから。

レッスンも一応頑張ってるよ? オールスターライブはみんなでの仕事だかんね!

ミキミキやまこちん、ひびきん程じゃないけど程じゃないけど踊るのにそんなに苦労はしないし、歌だって少し頑張ればどうにかなるから。

みんながすごく真剣ななか、一人だけこんなんでいいのかな、とか思わないわけじゃないけどさ、昔は褒めてもらえたことじゃ褒めてもらえない。だったらどうしたらいいの?


真美「兄ちゃん、真美はどうしたらいいの?」

P「どうしたらって、何をだ?」

真美「んー、何だろう? 全部かな?」

P「?」

真美「えっとね、昔はさ、真美は“真美”じゃなかってでしょ。やりたかったことは亜美のやりたかったことなんだ」

P「...」

真美「二人で手握っていつまでもいられればいいな、なんて真美は思ってた」

真美「でも、亜美は違ったみたい。真美と一緒はいいけど、同じは嫌なんだって」

P「なにもそれは」

真美「わかってる、わかってるよ。亜美は悪くない、誰も悪くないんだよね。」

P「俺は、誰も悪くないだなんて思わないぞ」




P「俺は悪いのは真美だと思うな」



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真美「……」

真「どうしたの、真美?」

真美「たいしたことじゃなYo」

真「嘘が下手だね、どうかした真美は」

真美「んっふっふ~、今日のまこちんはグイグイ来るねー」

真「へへっ、ライブ前は気分がいいからね」

真美「じゃあ、そんなまこちんに質問しちゃおうかな」

真「何でも来い、だよ」

真美「逃げたことってある?」


真「あるよ」

真美「...即答だね」

真「当たり前だよ、逃げたことない人なんていないから」

真美「例えば、どんなこと?」

真「父さんかな、前はアイドル活動してること黙ってたし」

真美「どうやって、どうやって解決したの?」

真「そうだな、そんなに役に立つアドバイスにならないかも知れないけど、正直になることかな」

真美「パパに?」

真「自分に、だよ」


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美希「Zzz」

真美「……」

律子「……」

美希「Zzz」

律子「起 き な さ い!」

美希「あふぅ、なんなのなの」

律子「何じゃないわよ、最近頑張ってると思ったらなんで今日は寝てるのよ」

美希「いくらなんでもメリとハリは必要なの」

律子「まったく」


美希「ところで、真美はどうしたの?」

真美「え?」

美希「美希が来る前からずっとここにいるの」

律子「?」

真美「いやぁ、ミキミキに用があったからここにいればそのうち来ると思って待ってたんだけど、来たらすぐに寝ちゃって」

美希「ふーん、で何の用なの?」

真美「いやー、大したことじゃないんだけど」

美希「大したことじゃないなら、ミキ寝るの」

真美「ちょっ、待ってよ! えっと、ね」チラッ

律子「?」

美希「ふーん。...ねw、律子...さん、ミキおにぎりが食べたいな」

律子「はあ!? あんた何言って」

真美「...」

律子「...わかったわよ」

美希「律子のそういうとこ大好きなの」

律子「“さん”をつけないさい」


×美希「ふーん。...ねw、律子...さん、ミキおにぎりが食べたいな」

○美希「ふーん。...ねえ、律子...さん、ミキおにぎりが食べたいな」


真美「ありがとね、ミキミキ」

美希「なんでもいいから早くしてほしいな」

真美「ミキミキはなんで最近頑張ってるの?」

美希「? それ知って真美はどうしたいの」

真美「どうしたいって、えと」

美希「まあ、いいの。ミキはねキラキラしたいの、頑張って頑張って律子に認めてもらえるくらいシンケンにアイドルやれば竜宮になれるの」

真美「竜宮に?」

美希「うん。プロデューサーがね、そう言ったの」

真美「そっか、兄ちゃんミキミキにはそう言ったんだ」

美希「ミキはね、頑張ってるだけじゃないの。すっごく楽しいの」

美希「今まで全然なんとも思ってなかったことがね、すーごく楽しいの」


真美「楽しいから頑張れるの? キラキラしたいから頑張れるの? 竜宮になれるから頑張れるの?」

美希「んー、ミキ難しいことはわからないの」

美希「そういうことを聞きたいなら事務所にはミキより適任な人がいっぱいいると思うな」


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真美「ひびきーん、ハイサーイ」

響「はいさい、真美」

響「自分に相談ってなんだ?」

真美「ん~、ひびきんは沖縄から一人で来て、一人で住んで、信じてた社長に見捨てられてどうしてまだ頑張れるのかなって。ごみんね、あんまり聞いて欲しくないことだと思うんだけどさ」

響「確かにちょっとキツイ質問だな。でも、自分にとってそのことは悪いことだけってわけでもないんだ」

響「黒井社長にスカウトされて東京に来るまで自分はずっと泣いてばかりだったんだ、すぅーがいなくなってあんまーは毎日忙しくて、構ってくれるのはにぃにと友達のアリサだけだった」

真美「すぅー?」

響「お父さんのことだぞ。自分のお父さんは小っちゃい頃に死んじゃったんだ」

真美「あ、ごめん」


響「気にしなくていいぞ。それでな、アリサがアクターズスクールに誘ってくれてダンスを始めて黒井社長と出会った」

響「最初はな、怪しい人だー、って思ったんだ。でも、アイドルに対しての真剣さ、頂点に対する執着心、情熱、そういうのがすごく感じられたんだ」

真美「あの黒い斜塔が?」

響「黒い斜塔って...黒井社長はいろんなことを教えてくれた。アイドルとは何か、王者とは何か、とかね。でも一番心にきたのは一つの言葉だった」

黒井『孤独こそが人を強くする』

響「結束がテーマのこの事務所には縁遠い言葉かもしれないけどあのころの自分には凄く変われるきっかけだったんだ。毎日寂しくて何もできなかった自分が、実は強いかもしれない。そんな風に思えたんだ」

真美「孤独が人を...」

響「今でもこの言葉を支えにすることがあるぞ、孤独は人を強くする。でも、結束が人を豊かにするのも確かだって、今は思えるけどな」


真美「すごいね、ひびきんは」

真美「それに、うらやましいな」

響「うらやましい?」

真美「良いこと言ってもらえるって、うらやましいや」

響「真美...」

真美「ね、真美にもなんか良いこと言ってよ」

響「そ、そうは言われても急には出てこないぞ」

真美「......」

真美「んっふっふー、冗談だよひびきん。じゃ、真美帰るね。バイバイ」

響「え、ああバイバイだぞ」


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真美「真美は悪い子で、素直じゃなくて楽しんでなくて、誰かの言葉を糧にすることもできなくて」

真美「ホント、良いとこないなぁ」

  「そんなことないと思うけど」

真美「なんかさ、頭の中で自分の姿が浮かばないんだよね」

  「......。ね、何で悪い子は悪いの?」

真美「何でって、悪い子は悪いから悪いって言われるんだよ」

  「兄ちゃん一人の言うことを気にしすぎなんだYo」

真美「それは......そうかもしれないけどさ」

  「それだけじゃないいてことっしょ?」

真美「わかんない、真美のことなのに全然」

  「教えてあげよっか?」

真美「いい」

  「んっふっふ~、そうは問屋がおろさないってやつだYo」

  「真美自身が一番真美を責めてるんだよ」

真美「なんで言い切れるのさ」

  「なんでってそりゃぁ」




真美「真美も真美だから」


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なんか、嫌な夢だったなぁ。

第一、あんなの真美じゃないよ。真美だったら問屋がおろさないなんてちゃんと言わないよ。

それに、真美が真美を許せないって......そうなのかな?

確かにみんなみたいに頑張ったほう良いかななんて思ったりもするけど、それってそういうことなのかな。

兄ちゃんに聞いて、も意味ないよね。どうせ答えてくれないし。

一番悩んでるのは真美が真美を責めてるってこと? じゃあ、責めないようにすればいいのかな。

でも、今のまんまじゃ無理だよ。責めてる自覚はないけど褒めてもないもんね。

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真美「ピヨちゃーん」

小鳥「どうしたの真美ちゃん?」

真美「自分を褒めたいってときどうする?」

小鳥「そうねぇ、やっぱりおいしいお酒をグビッと」

真美「そういうんじゃなくてさー、ご褒美じゃなくて」

真美「今から自分を褒めたいから、そのためには何をすればいい?ってことなんだけど」

小鳥「んー、難しいわねぇ」


真美「そなの?」

小鳥「そうなのって...。でもそうね、自分が褒められる人みたいになるって感じかしら」

真美「?」

小鳥「えっと、例えば今真美ちゃんが凄いなって思ったり偉いなって思う人はいる?」

真美「亜美とかミキミキ、まこちん、ひびきんとかでいいの?」

小鳥「ええ。それでその人たちを見習ってみるの」

真美「真似するってこと?」

小鳥「そうじゃなくてね。真美ちゃんは四人のどこが褒めてあげられる?」

真美「......言わなきゃダメ?」

小鳥「ううん、嫌なら言わなくていいわ。その褒めてあげられるところを自分もやってみるの」

小鳥「それなら真美ちゃんも自分のことを褒めてあげられないかしら?」


真美「そうかな?」

小鳥「きっとそうなるわ」

真美「じゃあ、ピヨちゃんの言うとおりにしちゃおっかな」

真美「責任重大だね、ピヨちゃん」

小鳥「ピヨッ!! ま、真美ちゃんこういうのは一応プロデューサーさんにも聞いたほうが」

真美「んーん、いいんだ。ありがとね、ピヨちゃん」


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真美が最初にアイドルになるきっかけって何だったけ?

亜美? ううん、確かにそうなんだけどそれだけじゃなかったはず。

テレビ? ううん、別にそんなのに感化されたわけじゃない。

じゃあ、何だっけ?

初めてアイドルになってもいいかな?なんて思ったのはいつだっけ

……思い出せないわけないよ、今でもちゃんと覚えてる。あのデパートの屋上での光景。

riola、忘れるわけないよね。ミキミキより、まこちんより、ひびきんより、ずっと前に知った眩しいくらいの輝き。

一度しか見ることはなかったけど、亜美も真美もあの姿に虜になったんだよね。


自分が褒められる人って、そういうことなのかな?

じゃあ、riolaみたいになればいいってことだよね?

どういうことかな? デパートの屋上かな、やっぱり。でも一人で?

そだよね、今回ばっかりは真美の問題だよね......。

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真美「ねえねえ、社長」

高木「ん? どうしたんだね真美君」

真美「真美さ、やりたいことがあるんだけど」

高木「なんだね?」

真美「デパートの屋上でえいぎょーってやつがいいんだけど」

高木「ふむ、それは考慮するがこういう話はプロデューサーである彼にするべきじゃないのかい?」

真美「いま兄ちゃんいないし」

高木「そうか、まあ彼には私のほうからも話しておこう。しかし、自分でもちゃんと伝えるんだよ」

真美「モチモチ、OKだよ」


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スタッフ「では、契約に関してはそういうことで。これからお願いしますね」

小鳥「はい、こちらこそお願いします」

真美「お願いしまーす」

スタッフ「ではステージについての打合せはまた後日」

小鳥「はい」

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小鳥「ごめんね真美ちゃん、プロデューサーじゃなくて」

真美「別に大丈夫だYo。 みんな忙しいんだから」

小鳥「でも、これが真美ちゃんが真美ちゃんを褒められる方法?」

真美「うん、とりあえずそうかな」

小鳥「そっか、よかった」

真美「うん、よかった気がする」

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スタッフ「お疲れさま、良いステージだったよ真美ちゃん」

真美「あんがとね、でもお客さんあんまだったね」

スタッフ「まぁ、最近じゃデパートの屋上にわざわざ上るような人も少ないから」

スタッフ「それより、真美ちゃん一人で大丈夫なの? この前のマネージャーさんは?」

真美「あー、ピヨちゃんは元々事務員だから。プロデューサーは忙しくて」

スタッフ「でもまだ中学生でしょ、一人で来させるのは感心しないなぁ。いくら小さな仕事だからって」

真美「ごめんね、真美が一人で行くって言ってきたんだ。でも、スタッフの兄ちゃんが言うなら今度からは誰かに付き添ってもらうよ」

スタッフ「うん、土日の昼だから忙しいかもしれないけどよろしく伝えてね」

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真美「ピヨちゃん、土日の昼に暇な人っている?」

小鳥「遊びにでも行くの?」

真美「真美が仕事あるってわかってるっしょ」

小鳥「冗談冗談、何かあったの?」

真美「スタッフの兄ちゃんがね、中学生一人じゃダメだって」

小鳥「そっかぁ、じゃあプロデューサーさんにお願いしとかないと」

真美「うぇ、兄ちゃんかぁ」

小鳥「嫌なの?」

真美「ん~、嫌ってわけじゃないんだけど...」

小鳥「何か訳アリみたいなのは、最近感じてたけどこればっかりはどうしようもできません」

小鳥「律子さんは竜宮小町があるし、私は電話やメールの対応でなかなか離れられないし、社長もいろいろ忙しいはずだし」

真美「兄ちゃんだけかぁ......はるるんとか千早お姉ちゃんじゃダメかな?」

小鳥「それは、やっぱりねぇ」

真美「だよねぇ」

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  「悪い子はいなくなった?」

真美「わかんないよ、そっちの方が詳しいっしょ」

  「ま-、まだ《真美》がいるってのが何よりの証拠だよねー」

真美「まぁ、薄々そんな感じはしてたよ」

  「悪い子はいらないならこんなところに来ない方がいいよ」

真美「どうかな、はっきりとは言えないや」

  「《真美》としてはぜひ必要としてほしいな。だって、要らないって言われたら《真美》消えちゃうし」

真美「脅しとは、なかなか悪ですなぁ」

  「んっふっふ~、お互いさまっしょ」

  「なにより、決めるのは《真美》じゃなくて真美なわけだから」

真美「わがまま言うためにさ、ちょっとだけ力をかしてくんないかな?」

  「だからいってるっしょ、決めるのは《真美》じゃない」

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