のび太「ドラえもん!ジャイアン達にいじめられたよ!」ドラえもん「あ、そ」 (166)

のび太「……え?」

ドラえもん「……」

のび太「い、いや……だから、ジャイアンたちにいじめられたんだけど……」

ドラえもん「ふ~ん」

のび太「……」

ドラえもん「……」

のび太(え?ドラえもん?)

のび太「……ドラえもん?聞いてないの?」

ドラえもん「うるさいなぁ。ちゃんと聞いてるよ」

のび太「うるさいって……」

ドラえもん「だから、ジャイアンたちにいじめられたんでしょ?」

のび太「そ、そうなんだよ!だから……!」

ドラえもん「それがどうしたの?」

のび太「え?」

ドラえもん「もう、帰ってくるなり騒がしいんだから……」スタスタ

のび太「え?あ!ちょっとドラえもん!」

スタスタ……

のび太「……ど、ドラえもん?」

それから、ドラえもんの様子は特に変わったことはなかった。
いつもの通りご飯を食べ、いつものようにテレビを見る。
だけど……

のび太「ドラえもん、何してるの?」

ドラえもん「……」

のび太「……ねえ、ちょっとドラえもん」

ドラえもん「……うるさい」

のび太「え……?」

ドラえもん「テレビ見てるの。見て分からない?」

のび太「い、いや……」

ドラえもん「今いいところなんだから、いちいち話しかけないでよ」

のび太「ご、ごめん……」

ドラえもん「……」

のび太(……やっぱり、変だ)

翌日、僕は空き地で昨日のことをみんなに話してみた。

しずか「え?ドラちゃんが変?」

のび太「そうなんだ」

スネ夫「変って……どんな風に?」

のび太「上手く言えないけど……何て言うか、冷たい感じ」

ジャイアン「機嫌が悪いんじゃねえの?」

のび太「それとも違うんだ……上手く言えないけど……」

スネ夫「まあ、ドラえもんにも色々あるんじゃないの?体調悪いとか、忙しいとか」

のび太「う、うん……」

しずか「きっとのび太さんの考え過ぎよ」

ジャイアン「そうそう。ほっとけほっとけ」

のび太「う、うん……」

本当に考えすぎだろうか。
少なくとも、僕の中では違和感のようなものが拭いきれなかった。
何というか、姿形は同じなのに、まるで別人がそこにいるような、そんな感覚だった。

もちろん、僕のために道具を出さないことは、これまでも何度かあった。
だけど、今の彼は、そんな話じゃない。

故障かもと思ったが、その他では目立った変化もない。
テレビを見て笑ったり……僕に話し掛けられて、イライラしたりもしていた。

感情経路は問題ないだろう。
だとしたら……いったい……。

答えの見えないまま、僕は家に向かう。
その足取りは、とても重かった。

ガラッ

のび太「……ただいま」

ドラえもん「……おかえり」

のび太「……」

ドラえもん「……」

のび太「……」

ドラえもん「……ねえ」

のび太「――ッ!な、なにドラえもん!?」

ドラえもん「宿題、先に終わらせなよ?」

のび太「う、うん……」

ドラえもん「……」スタスタ…

のび太「……」

のび太(やっぱり、変だ……)

次の日、僕は彼が出掛けた隙に、スペアポケットを使ってドラミちゃんに連絡を取ってみた。

ドラミ「お兄ちゃんに何かなかったかですって?」

のび太「うん。未来で、何か変わったことはなかった?」

ドラミ「う~ん……特になかったと思うけど……お兄ちゃんも、この前の定期検診では異常はなかったわよ?」

のび太「そ、そうなんだ……」

ドラミ「……ねえのび太さん。何かあったの?」

のび太「……うん。実は……」

僕は、ことの経緯をドラミちゃんにはなして

ドラミ「……そうなんだ」

のび太「うん……。なんだか、とっても冷たく思えてね」

ドラミ「う~ん……」

のび太「まあ、たぶん僕の考え過ぎだと思うんだけどね」

ドラミ「そう……。また、何かあったら連絡してね?」

のび太「うん……ありがとう……」ガチャ

ドラミちゃんも、変わったことはなかったと言っていた。
やはり、僕の考え過ぎなのかもしれない。
それでも少し冷たすぎる気もするが。

僕はとりあえず、1階に降りていった。

階段を降りると、ドラえもんが台所へ向かっているところだった。

……その時だった。

ドラえもんの足元を、何かが飛び出してきた。
それは素早く廊下を駆け抜け、居間に消えていく。
一瞬の出来事だったが、僕にははっきりと見えた。

それは、一匹のネズミだった。

のび太(――ッ!!??そ、そんなバカな!!??)

あまりの出来事に、僕は思わず叫びそうになった。

なぜなら、ドラえもんの視線もまた、足元を通るネズミを追っていたからだ。

だが彼は、まるで道端の石ころを見るかのように、そのまま台所へ消えていった。

のび太「やっぱりおかしいよ!」

学校で、僕はそのことをみんなに話す。

しずか「ドラちゃんが……ネズミを……」

のび太「そうなんだ!普通じゃないよ!」

ジャイアン「ハハハ!ドラえもんがネズミに驚かなかったって!?そんなわけあるかよ!」

のび太「で、でも……!」

スネ夫「どうせ気付かなかっただけだろ?ありえないありえない」

のび太「で、でも!確かに……!」

しずか「……のび太さん。最近変よ?大丈夫?」

のび太「……え?」

ジャイアン「そうだな。最近、お前妙なこと言い過ぎだぞ?」

スネ夫「そうそう。神経質すぎる」

のび太「そ、そんな……」

……結局、誰も信じてくれなかった。

でも、僕は間違いなく見た。
ドラえもんは、間違いなくネズミに気付いていた。
だとしたらなぜ声すら上げなかったのか……。

……もしかしたら……。

その疑問を解消するために、僕は行動に移してみた。

次の日、彼がいない間にスペアポケットを拝借した僕は、裏山に移動した。

のび太「ええと……」ゴソゴソ

のび太「こ、これだ……!スパイ衛星!」

のび太「これを僕の部屋に飛ばして……えい!」

――シュバーーーン

スパイ衛星は、雲を空の向こうへ伸ばしていく。
それを見守った後、僕はその場に座り操作した。

のび太「ええと……照準を僕の部屋に……あ!映った!」

モニターは、僕の部屋を映し出す。
そこには、ドラえもんがいた。
でも彼は、部屋の真ん中に立っていた。
何もせず、ただボーッと。

その姿には気味悪さがあり、背中には嫌な汗が流れていた。

「ドラえもん……何してるんだろ……」

少なくとも、そこに僕が知るドラえもんはいなかった。
僕が知ってるドラえもんは、一人の時は本を見たり、道具の整備をしたり、ミーちゃんと話をしたりしているはず。
だからこそ、今の彼は限りなく異質に思えた。
気が付けば、僕は生唾を飲み込んでいた。

それからしばらく、僕は彼を観察した。
彼はどれだけ経っても、ただ立っているだけだった。
不気味なほど、無表情で。

「……あれ?」

一瞬、彼の目がモニターに向けられた気がした。

「……今、確かにこっちを……」

もう一度モニターを見るが、今は明後日の方向を向いている。

「……見間違いかな……」

そう思っていると、彼はようやく動き始めた。
そしてそのまま、部屋の扉の方へと歩いていった。

「ドラえもん……どこ行ったんだろ……」

彼の姿を追い、スパイ衛星で家の周囲を見た。
でも、彼はどこにもいなかった。

「おっかしいなぁ……」

ドラえもんは、いったいどこにいったのだろうか。


――次の瞬間、モニターに突如下から何かが映る。

至近距離にあるのか、モニターいっぱいに映るそれは、巨大な目だった。

「――うわぁっ!!」

思わず声を上げ、モニターから距離を取る。
その目は、画面に映り続けていた。
そして、まるでカメラの先の僕を睨むように、ジッとこっちを見続けていた。

その目は、見覚えがある。
いつも見てきた、よく知ってる目……。

すると、突然画面は何も映らなくなった。
砂嵐が巻き起こり、ザーザーと音を鳴らす。
おそらく、スパイ衛星が壊れたのだろう。

それが意味するのは、たった一つ。
目の主により、破壊されたということ……。

その場で呆然としていた僕は、ぼそりと主の名前を口にした。

「……ど、ドラえもん……」

モニターは、何も答えなかった。

裏山を後にした僕は、とぼとぼと道を歩く。
やっぱり、ドラえもんはどこかおかしい。
いいや、おかしいというより、完全に別人だ。

これまで、彼といっしょにいて感じたこともなかった感情が、頭の中で渦を巻く。
それは、恐怖と呼ばれるものだった。

しばらく歩き回ったが、さすがに家に帰らないといけない時間になってきた。
どうするか悩んだりもしてけど、いくら考えても仕方ない。

僕は家に向けて、歩を進めた。

家に帰った時は、すっかり夜になっていた。
ママに2、3小言を言われ、台所へ行く。
聞けばドラえもんは、そうそうにご飯を食べたという。
やはり、おかしなところはなかったらしい。

でも彼は、間違いなくおかしい。変だ。
色んな不安に苛まれた僕は、大好きなハンバーグも食べきれなかった。

食事を終え、自分の部屋の前にたどり着く。
一度深呼吸をして、襖をゆっくりとあける。

中では、ドラえもんが背を向けて座っていた。

「……た、ただいま……」

彼に言ったその言葉は震えていた。
そして彼は、振り返ることなく返事をする。

「……おかえり。遅かったね……」

「う、うん……ちょっと、ね……」

「……」

「……」

気持ち悪い沈黙が流れる。

僕は悩んでいた。
ドラえもんに、聞いてみるかどうかを。
流されるかもしれない。無視されるかもしれない。
だけど、ここで聞かないと、ドラえもんが元に戻ってくれない気がした。
あの朗らかで優しい彼に、二度と会えない気がした。

心の奥底にある勇気を、なんとか絞り出す。
そして……

「……ね、ねえ、ドラえもん。あのさ――」

「――のび太くん。さっき、僕のこと、見てた?」

「…………え?」

僕の言葉は、彼の言葉に掻き消された。
部屋には再び沈黙が流れ、電灯のチカチカという音だけが、やけに大きく響いていた。

「……え……ど、ドラえもん……?」

「さっき、僕を、見てた?見てた?」

彼の声は、無機質だった。
感情の一切が込められていないような、そんな声だった。
もちろん、それも僕が知るものとは違う。

「……ど、ドラえも――」

――呼びかけようとしたところで、僕の背筋は氷った。

突然ドラえもんは首から上だけをグリンと背後に回し、顔を傾けながら僕を見た。
とても冷たい、無表情だった。

「見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?……」

「ひいぃっ!!」

僕はその場で腰を抜かした。そして後退り、廊下の壁に寄りかかる。

「見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?……」

ドラえもんは――いや、“それ”は、壊れたレコードのように、ただそう繰り返し呟いていた。

「――う、うわあああああ……!!」

気が付けば、僕は叫び声を上げてその場を逃げ出していた。
腰が抜けたせいか、這いつくばりながら階段に向かう。

「見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?見てた?……」

部屋からはそいつの呟きが断続的に響いていた。
体に力が入らず、僕は階段を転げ落ちた。

「……うぐっ……」

全身の痛みに耐え、何とか体を起こす。

「パ、パパ!!ママ!!」

居間からはテレビの音が聞こえていた。
慌てて襖を開けて、パパ達を呼ぶ。

だが二人は、テーブルに伏せて眠っていた。

「パパ!!ママ!!起きてよ!!ドラえもんが……ドラえもんがおかしいんだ!!」

いくら叫んでも、体を揺すっても、二人は起きる気配がない。
明らかにおかしい。

「ど、どうして……!!」

「――のび太くん……」

廊下の方から、その声が聞こえた。

「――ッ!?」

勢いよく振り返ると、そこには顔を横から覗かせた、そいつがいた。
そして、僕を見ていた。

「……!!」

あまりの恐怖に、声を失っていた。
そいつの視線は、鎖のように僕を縛り付ける。

「……のび太くん……待ってよ……フフフ……」

そいつは、ようやく笑った。
でも決して暖かいものじゃない。
それはとても暗く、重苦しい笑みだった。

「うわあああああ!!」

居間の掃き出し窓を開け、靴下のまま家を飛び出す。

そして僕は、夜の底に沈んだ街へと駆け出した。

怖いよおおお((((;゜Д゜)))

ガチ怖い

寝れない

>>1の文才(?)

情景が浮かんでまう

怖いよ~((((;゜Д゜)))

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月18日 (日) 03:00:17   ID: Ca-xgWhO

元スレのURL間違えてない?
行けないんだけど

2 :  SS好きの774さん   2015年01月25日 (日) 21:23:42   ID: DqEfwaAQ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373384531/
とりあえず元スレと思われる奴。

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