悪徳「ぐへへへ…765プロの悪評を流しまくってやるぜ!」 (34)

黒井「…私が貴様を再び呼び出したのは何故か、解っているな?」

悪徳「へっへっへ、勿論でさぁ…」

黒井「日に日に765プロの評価が上がりつつある…以前は竜宮小町とかぬかす小娘ユニットのみが突出しているだけの、三流弱小事務所だった」

黒井「しかし今や765プロに所属するアイドル全員にスポットが当たっている」

黒井「如月千早然り、貴様が潰し損ねた四条貴音然り、だ」

悪徳「ひっひっひ…これは手厳しい。しかし、天下の961プロの社長ともあろうお人が、そこまで恐れるような事務所だとは思えませんがねぇ?」



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黒井「…私を見くびるなよ?あのような弱小事務所と小者アイドル達なぞ恐れておらん!」

黒井「だが…目障りではある。誰しも視界の端にハエがブンブン飛び回られていたら、潰したいだろう?殺虫剤を吹き掛けたいだろう?要するにそう言う事だ」

悪徳「なるほど…つまり、再びアッシにお呼びが掛かったという事は…?」

黒井「無論、潰せ。765プロの粗を探し、それを世間に公表しろ。ある事無い事書き立てても構わん」

悪徳「ぐふふふふ、何なら無い事だけでも書き立てて構わないんでゲスよ?」

黒井「いや、100の内1つか2つだけでも真実を混ぜろ。大衆は愚かで流され易い…が、今やインターネット全盛のご時世だ。多少の嘘はどこからか必ず明るみになってしまうものだ」

悪徳「ひょっひょっひょっ…社長もまだまだ甘いでヤンスねぇ?」

黒井「何ぃ?」

悪徳「世間の人間はアイドルのスキャンダルが大好物なんでゲス。それが本当か嘘かは、さして重要ではないっちゃよ」

悪徳「このアテクシ、悪徳又一にかかればインターネットでの火消しなどさせませんぞなもし。火消しに見せかけた燃料散布など造作も無い事でござるよ…」

悪徳「今回の作戦では、社長のコネによって新聞、テレビ、週刊誌でのゴシップ流布が容易…となれば拙者の役目は765プロのアイドル達の粗を探す事ではなく、徹底的にアイドルの悪評を作り出す事だべし」

悪徳「ケキャキャキャ!後はその完全なデマに、ほんの少しの信憑性という名のエッセンスを加えてやれば良いんでごわす。そこに真実など1つも入れる必要などありもはん!」

黒井「ふむ…そこまで大言壮語するのなら、好きなようにやってみろ。私の力が必要なら、その都度貸してやる」

悪徳「カカーカカカ!お任せくださいな…必ずや社長の満足行く成果を上げてみせるざんしょ!」

黒井「……さっきから気になっていたんだが、一人称と語尾と笑い方を統一しろ!」

数日後、765プロ。

やよい「こ、これって…」

響「こんなの…おかしいぞ!どうなってるんだ!?」

美希「春香…絶対許せないの!」ギリギリ

律子「落ち着きなさい!まだ春香からも何も聞いてないわ…あの子から直接事情を聞かないと何も判断出来ないんだから」

亜美「で、でも…もしこれが本当だったら…?」

真美「そ、そうだよ!本当だったらマジヤバだよ!」

千早「ほ、本当なワケないわ!春香とプロデューサーに限って…こんな事…絶対に!」ワナワナ

高木「……如月君の言う通りだ。憶測だけで軽軽に判断してはいけない。とにかく、天海君と彼から事情を聞くのが先だ」

ガチャッ。

春香「おはようございまーす!天海春香でーす!」

響「春香!これは一体どういう事なんだ!?」

美希「春香!納得のいく説明をしてほしいの!」

春香「えっ?ど、どうしたの?」

伊織「これよ…読んでみなさい」バサッ

春香「何なの…?」

『新進気鋭のアイドルA・H、男と共に歓楽街に消える!』

『某プロダクション所属の女子高生アイドルA・Hが、白昼堂々男と親しげに街中を歩いていた』

『問題は、その付近一帯が男女のメイクラブを楽しむ為に訪れる、ホテルを中心とした歓楽街だという事実だ』

『そして女子高生アイドル、そう!女子高生アイドルのA・Hと男は、そのまま歓楽街の中に姿を消したのであった…』

春香「こ、これって…」

あずさ「あ、あの…イニシャルで伏せてあるけど、この写真って…明らかに春香ちゃんとプロデューサーさんで…」

貴音「…だからこそ私達も困惑しています。この記事が事実であれば、由々しき事態なのですから…」

美希「春香…こうなったら正直に白状するの!今白状すればまだ間に合うの!」ガルルルル

春香「ちょ、ちょっと待ってよ!これは…」

ガチャッ。

P「おはようございまーす…って、あれ?今日はみんな早いな?っつーか何人かオフのハズなんだけど…」

美希「ハニー!嘘だよね!?こんなの全部嘘だよね!?」ガシッ

P「え?え?な、何が!?」

律子「…プロデューサー、この記事について説明をお願いします」スッ

高木「この記事が真実なら、私としてもそれ相応の処分を下さなければならんのだが…」

真「プロデューサー…どうなんですか?」

雪歩「プロデューサー…ハッキリ説明してくださぁい!」

P「どれどれ…どのページ?あぁ、これ?ふむ…」ペラッ

春香「ぷ、プロデューサー…」

P「……あー、これね?ハイハイ、これって確か先週の金曜日だったっけ?」

春香「は、はい…多分そうですけど…」

P「デマですよ。こんな事実はありません」バサッ

伊織「……やけに簡単に言い切るわね?」

千早「それは本当なんですか?信じても良いんですか?もしこの記事の方が真実なら、私はプロデューサーを絶対に許す事は出来ません!」

春香「ち、千早ちゃん!落ち着いて!」

P「だから、デマだっての。俺も春香も何も疚しい事なんて無い」

美希「ハニー…信じて良いの?」ウルウル

P「当たり前だろ。何で俺が未成年の春香をホテルに連れ込むんだよ?その時点でおかしいだろ?」

響「で、でも…だったらこの写真は何なんだ!?」

春香「そ、そこはたまたま通り道だっただけだよ!ほら、テレビ局裏のダンススタジオだよ!」

P「レッスンに遅れそうで、その日の仕事先から直接向かおうとして、近道に選んだのがそこだったってだけの話だよ」

律子「……だとしても軽率じゃありませんか?仮にも春香はアイドルなんですよ?こんな写真を撮られる可能性を少しも考慮してなかったんですか!?」バァン!

P「…そこは言い訳のしようも無いな。そして現実にこうして週刊誌にスッパ抜かれたんだから、俺が迂闊だったと言うしかない。すまなかった」

あずさ「プロデューサーさん…」

真「プロデューサー…」

P「社長、誠に申し訳ありません。私がしっかりしていないばかりに、このような事になってしまいました…」

高木「いや、まぁ大丈夫だろう。少しの間は騒がしくなるだろうが、すぐに沈静化すると思うからね」

伊織「その根拠は何よ?今売り出し中の女子高生アイドルの性的スキャンダルよ?そんなにすぐに沈静化するとは…」

高木「私も今気づいたのだが…この記事を書いた記者の名前を見てみたまえ」

亜美「んー?どれどれ?」

真美「えっと…わ、わるのり?」

律子「普通にアクトクでしょ…なるほど、これは…」

貴音「悪徳…確か、私が1日警察署長を引き受けた際、私に襲い掛かって逮捕されたぱぱらっちなる者でしたか…」

高木「大方、黒井辺りがまたこの記者を焚き付けて書かせた飛ばし記事だろう。そしてこの週刊誌の出版社も、確か社長が黒井と懇意にしていたハズだ」

千早「つまり、これは黒井社長がまた私達765プロを陥れようとしている、というワケですか?」

P「だろうな。火の無い所に煙は立たず、って具合だ。火が無ければ自分で火をつければ良いって事だろうが…何ともお粗末な仕事だよ」

小鳥「恐らくですけど…例えこの記事が不発に終わっても、多分第二第三の矢が待っているんじゃないでしょうか?」

伊織「かもね…少しでも765プロの評判が落とせれば、嘘でもデマでも創作でも何でも良いってところかしらねぇ」

やよい「じゃ、じゃあこの記事は嘘なんですね?春香さんもプロデューサーも、何も悪い事してないんですね!?」

P「モチロンだ。春香はアイドルとして大事な時期なのに、俺がその芽を摘み取るワケが無いだろう?」

響「……春香、プロデューサー、ごめんな…何か、自分…気が動転しちゃって…」

貴音「私も、少しだけ疑ってしまいました…申し訳ありません」

千早「プロデューサー、ごめんなさい!プロデューサーは春香の事を大事に考えてくれていたのに、私がそれを信じてあげられなくて…!」

P「あぁ、良いよ。それだけ千早も春香を大事な友達だと思ってたんだろ?だから、俺が春香に手を出したんじゃないかって思って怒ったんだろ?その気持ち自体は間違ってないよ」

春香「千早ちゃん…ありがとう」ギュッ

千早「わ、私は…別に…その…」モジモジ

美希「ハニー!美希は信じてたの!」ギュッ

P「そ、そうか…」ナデナデ

高木「ともかくこの件に関しては、私から善澤君に頼んで何とか良い方向に軌道修正出来ないか相談してみる。だからみんなもあまり気負わず、普段通りに過ごしてくれ。君も、律子君や音無君と共に、アイドル達のメンタルケアを頼むよ?」ポン

P「はい。任せてください」

律子「……このまま何事も無く終わってくれるのかしら?」

更に数日後。

『アイドルの性の乱れ、ここに極まれり!』

『白昼堂々、路上キスを敢行する銀色の王女ことS・T!』

美希「貴音ェ!これは一体どういう事なの!?」キシャー!

やよい「し、しかも相手がまたプロデューサーですぅ…」

雪歩「つ、通行人がこんなにいっぱいいるのに…し、四条さんって大胆なんだぁ…」ドキドキ

貴音「落ち着きなさい。私はプロデューサーと接吻など交わしておりません」

P「この時は確か…貴音の目にゴミが入ったんで、それを確認する為に目の中を覗き込んでた時だったっけ?」

貴音「そうですね…私もそのように記憶しています」

亜美「な、なんてベタなシチュエーション…」

真美「その瞬間をヒロインが見てしまって…」

真「そうそう!そしてヒロインが涙目で走り去るっていうのが鉄板だよねぇ!」

律子「…という事は、また捏造記事ですか。敵も懲りませんねぇ」

雪歩「で、でもさすがに楽観視は出来ないかもです…こないだの春香ちゃんのスキャンダルだって、ファンクラブサイトの掲示板がかなり荒れちゃってましたし…」

小鳥「んー…それは多分、ファンのふりをしたアンチの仕業だと思うわ。庇うようなコメントの端々に、他のファンを煽るような言葉がちょいちょい見えてたし」

P「ファンが多いという事は、それに正比例してアンチも多いって事だからな。悲しい事だが… 」

高木「ふむ…しかしこれでハッキリした事がある。それは、黒井の狙いが天海君1人だけではなく、765プロのアイドル全員だという事だ」

高木「恐らく次はまた別の誰かの捏造記事が出るだろうが…」

律子「前回の春香と、今回の貴音…どちらもプロデューサーを情夫に仕立て上げて、男好きなアイドルとして評判を落とそうという意図が見えますね」

P「だろうな…となると、次も俺と一緒に居た時のアイドルが標的にされるって事か…」

更に数日後。

『夜のトリプルお買い物デートか?小動物系アイドルT・Yと、肉食野獣系アイドルG・H!年上男性と仲良く手繋ぎデート!』

美希「やぁよいぃぃぃ!ひぃびぃきぃいぃぃ!」ガルルルル

千早「美希!落ち着きなさい!高槻さんがそんな事をするハズが無いわ!」

伊織「そうよ!きっとあの変態プロデューサーがやよいをたらし込んだに違いないわ!もう1匹の野獣も馬鹿だからあっさり騙されたのよ!」

響「ひど過ぎる!?」ガビーン

やよい「こ、これはぁ…仕事帰りに立ち寄ったスーパーで特売セールをやってたから、響さんとプロデューサーに並ぶのを手伝ってもらっただけですぅ!玉子だって、1人2パックまでだったから…」

響「そうだぞ!自分だって動物達のご飯をまとめ買いしたかったから、プロデューサーに運ぶのを手伝ってもらっただけなんだからな!」

『夜の焼肉デート!男嫌いは実は嘘!?焼肉の後は、男3人とナニをするのかな?』

美希「ゆぅ~きぃ~ほぉ~?」ガルルルル

雪歩「ひぃっ!?こ、この時は社長の奢りで…ぷ、プロデューサーと真ちゃんと4人で焼肉食べて…そ、その後はそこで解散したからぁ!何も無かったからぁ!」ビクビクビクビク

真「てゆーか…何で僕は男としてカウントされてるの…?」プルプルプルプル

P「しっかし、ここまで形振り構わなくなるとはなぁ…」

律子「でも相変わらずウチのファンクラブサイトは大絶賛炎上中ですよ…もういっその事、コメント書き込み禁止にしましょうか?」

P「いや、それはまずい。ウチに後ろめたい事があると思わせてしまう。もしくは、アンチ達にまた攻撃の材料を与える事になる…」

高木「しかし、さすがにこの記事は行き過ぎだな…憶測と決めつけを、あたかも真実のように書いている」

律子「出版社に抗議しますか?」

高木「恐らく無駄だろうが…とりあえずこちらの意思を示しておく必要はあるだろうな」

『巷で話題の双子アイドル、1人の男を巡って泥沼の争い勃発!?』

『双子のJCアイドル、姉のF・Mと妹のF・Aが、スーツ姿の男性の両腕を引っ張り合い、どちらがその愛を勝ち取るかを競っていた!』

美希「亜美、真美、ちょっと話があるから屋上まで来るの」グイグイッ

亜美「む、無実だーっ!亜美達は何もやってないよーっ!」

真美「弁護士を呼べーっ!」

春香「いや、無実なんだろうけど…これ何やってたんですか?」

P「何だったっけ…あ、確か大岡越前ごっことか言ってなかったっけ?」

亜美「そ、そう!それそれ!」

真美「こないだ再放送見ちゃって、それをマネしてただけなんだよぅ!」

P「お陰で本当に俺の身体が真っ二つに裂けそうだったけどな!」

やよい「…おーおかえちぜんごっこって何ですかぁ?」

真「さ、さぁ?」

律子「大岡越前…確か、時代劇だっけ…私も詳しくは知らないけど」

貴音「八代将軍、徳川吉宗…俗に言う暴れん坊将軍の時代の奉行です」

やよい「ぶぎょー?」

貴音「今で言うところの、裁判官でしょうか…その明快な裁きの数々は、今でも語り草になっています。まぁ大半は後の創作だとも言われていますが」

貴音「その中でも『三方一両損』や『子争い』が特に有名で、亜美と真美がやっていたのはこの『子争い』ですね」

やよい「どんなお話なんですかぁ?」

貴音「かいつまんで説明すると、ある日大岡越前の前に1人の子供と2人の女性がお裁きを受けに現れました。その2人の女性は、自分こそがこの子供の生みの母親であるとそれぞれ主張し出したのです」

貴音「両者の話は平行線、子供もどちらが本当の母親なのか解らず、最終的には名奉行として知られる大岡越前の裁可を仰ぐ事となりました」

やよい「でも、それってどうやって解決したんですかぁ?」

響「それって…何だっけ?あ、DNA鑑定とかすれば1発じゃないのか?」

伊織「……江戸時代の話なんだけど?」

貴音「響の言う通り、通常なら子供と母親の遺伝子を調べればすぐに解るのですが、当時はそのような調査方法はありませんでした。そこで大岡越前は2人の女性にこう言いました」

貴音「『その子の腕を左右両方から引っ張ってみよ』と。2人の女性は、そうやって引っ張り合ってその子供を奪い取れ、と解釈しました」

やよい「えぇっ!?で、でもそれじゃ子供は両方から引っ張られて、すごく痛いんじゃ…」

貴音「勿論痛いでしょう。事実、左右両方から力の限り引っ張られ、子供はあまりの痛さに泣き叫びました」

貴音「そして、子供が泣き叫んでいる様を見ていられなくなり、とうとう片方の女性が思わず手を離してしまったのです」

貴音「しかし、大岡越前は最終的に最後まで手を離さず子供を引き寄せた女性の方ではなく、手を離した女性をその子の本物の母親と認めたのです」

真「え?どうして?勝ったのは手を離さなかった方の人なんでしょ?」

貴音「無論、その女性もそのように大岡越前に訴えました。ですが大岡越前は『痛さに泣き叫ぶ我が子の心配もせずして、何が母親か』と言ったのです。こうしてその心優しい女性は、子供の母親となったのでした」

やよい「ふわぁ…なるほどぉ!」

響「へぇ~、良い話だなぁ」

伊織「……って言うか話がすごい脱線してるわよ!そもそも大岡越前の事を聞いたのは誰よ!?」

亜美「…やよいっちだけど?」

伊織「なら仕方ないわね」

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