武闘家「も~。勝手に人んち漁るの、いい加減やめなさいよ」
勇者「うるさい。俺様は勇者だぞ。愚民どもの命を魔王から守ってやってんだぞ。言わば命の恩人だ。全てを貰う権利がある」ガサゴソ
武闘家「魔王を倒すどころか、人の為になるような事、今までに何一つしてないじゃない」
勇者「何しろ俺様は人類にとっての切り札みたいなもんだからな。そう軽々しく動いたりはせんのだ」ガサゴソ
武闘家「こんな事ばっかりしてると、いつか捕まっちゃうんだから」
勇者「おっ、なんかの種はっけ~ん」パクッ モグモグ
武闘家「あ、また確かめもせず食べちゃって。お腹こわしたらどーするの」
村人「ちょ、ちょっと、あんたら!人んちで勝手に何やってんだ!!」
勇者「あぁ?てめぇ俺様を誰だと思ってんだ。なんでもいーからサッサと役に立ちそうな物だせ」
村人「だ、誰か来てくれ~!泥棒だ!強盗だぁ~!!」
勇者「うるせえ」ポカッ
村人「きゅ~」
勇者「ふっ、弱い。弱すぎるぜ村人。いや、俺様が強過ぎるのか」
武闘家「なにバカなことしてんのよーっ!」バシーンッ
勇者「ぐおおっ?!痛ぇな、馬鹿力で殴んなよ」
武闘家「いいから早く逃げるの!」
武闘家「はぁはぁ……ここまで来ればもう大丈夫……」
勇者「ちっ、なんで俺様が逃げなきゃならねぇんだ」
武闘家「勇者が犯罪まがいの事するからでしょ!ハァ、せっかく三日ぶりに人里まで辿り着いたのに、もう戻れないじゃない……」
勇者「犯罪まがいってヒデーな。俺が何したっていうんだよ」
武闘家「勝手に人の家に侵入して、物取った挙句、殴って気絶させといて何言ってるのよ!よく考えてみたら、犯罪まがいどころか犯罪そのものだわ!!」
勇者「小さい。考えが小さいな。お前は小さい人間だ。だから背も胸も小さいんだ」
武闘家「////」バシーンッ
勇者「ぐおおっ?!痛ぇな、ぽんぽん殴んじゃねーよ」
武闘家「とにかく、今の村に泊まるのは諦めて、もう少し先の街まで進みましょ」
勇者「だるい。疲れた。もう動きたくない」
武闘家「ほら、子供じゃないんだから我がまま言ってないでちゃんと歩くの!」グイグイ
テクテク テクテク
勇者「お~い、次の街までまだあるのか~。腹減ったぞ。のど渇いたぞ」
武闘家「手持ちの食料は切れちゃったわ。飲み水も残りが心許ないし、少し節約しないと」
勇者「飲みもの~食いもの~」
武闘家「もう少し我慢して。あとちょっと進んだら野営の準備して食事作ってあげるから」
テクテク テクテク
勇者「なぁ~もういいだろ、そろそろ休もうぜ」
武闘家「ハァハァ……。そうね、今日はここまでかしら。次の街までどのくらいかかるか分からないから、出来るだけ今日のうちに進んでおきたかったんだけど……」
テクテク テクテク
武闘家「あっ、向こうから荷馬車が来るわ」
カッポカッポ
武闘家「すみません。ここから次の街まであとどのくらいかかりますか?」
荷馬車の男「徒歩で行くのかい?だいぶあるよ。馬車で半日かかる距離だから、女の人の足じゃ丸二日はかかるんじゃないかな」
武闘家「そうですか……」
荷馬車の男「最近は治安が悪くなってるし、女の一人旅は危険だよ」
武闘家「どうもありがとうございます。でも、一応男の連れもいますし……って、いない?!」
勇者「ガツガツムシャムシャ バリバリモグモグ
荷馬車の男「ぎゃああ~!!私の売り物の果物を勝手に食ってるのは誰だ~っ!!」
武闘家「ちょ!勇者ったら何やってんのよ!!」
勇者「ガツガツムシャムシャ バリバリモグモグ
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
武闘家「すみませんすみません。お代はキチンと払いますので」ペコペコ
荷馬車の男「いや、まぁお金さえ払っていただけるなら、何もそう謝って下さらなくても大丈夫ですよ」
勇者「そうだぞ。謝る必要なんて微塵もないぞ」モグモグ
武闘家「あんたは目いっぱい反省してなさいっ!」バシーンッ
勇者「ぐおおっ?!痛ぇな、ポカポカ殴んじゃねーよ」
荷馬車の男「ハハハ、愉快なお連れさんだね」
勇者「おいオヤジ。この馬車で俺たちを街まで連れてけ」
荷馬車の男「え?いや、残念だけど私はその街から村へと向かってる途中なんだ。逆方向だよ」
勇者「だったらお前は歩いて村に行け。馬車は俺たちが貰うぞ」
武闘家「なにバカなこと言ってんのよ!」バシーンッ
勇者「ぐおおっ?!気安く何度も殴るんじゃねーっ」
荷馬車の男「ハ、ハハ、本当に愉快なお連れさんみたいだね……」
荷馬車の男「それじゃ道中気をつけてね」カッポカッポ
武闘家「ハイ、どうも色々とすみませんでした。………はぁ~」
勇者「溜め息つくと幸せが逃げるぞ」
武闘家「勇者にだけは言われたくないわ……。本当にもうどうするのよ。今の代金でなけなしの路銀まで使い果たしちゃったじゃない」
勇者「くよくよすんな。そんなお前のためにミカン一個とっといてやったぞ。ほら、食え」ニコニコ
武闘家「(勇者ったら全然悪びれてないんだから……。このミカン一個ってのも悪気は無いんだろうなぁ。いつまでグチグチ言ってても仕方ないし、素直に受け取っとこう)」
武闘家「ありが」
勇者「ヒョイパクッ
武闘家「」
勇者「やーいやーい引っ掛かったー」ケラケラ
武闘家「バババシーーーーーンッ
勇者「ぐおおおおおおっ?!」
夜
勇者「結局今日も野宿か。世界を救う予定の勇者様がなんでこんなシケた旅を続けなきゃならんのだ。ぶつぶつ」
武闘家「仕方ないでしょ。私だっていい加減、ふかふかのお布団で寝たり、暖かいお風呂に入ったりしたいわよ」
勇者「おい、腹減ったぞ」
武闘家「さっき一人でバクバク食べてたじゃない。私は全然食べてないけど」
勇者「バカ、果物は夕飯と言わん。あれはデザートだ。順番が逆になっただけだから、俺は晩飯もしっかり食べるぞ」
武闘家「まったく、無為徒食なんだから。それじゃあ何か食べられる物を探してくるから、その間にせめて焚火ぐらい起こしておいてよね」
勇者「おー。早くしろよー」
勇者「さてと、焚火か……。薪を拾うの面倒くせーな。そこらへんの木でも燃やしとけば勝手に焚火になるだろ」
勇者「俺様は勇者だからな。ちょっとした魔法も使えてしまうのだ。だから火を起こすのなんて簡単簡単。ほれ、メラ!ファイア!アギ!火の術式!燃えろ燃えろー」
ボーッ
勇者「おー、木に火がついたぞ。暖かい暖かい。何でも出来てしまう自分の才能が我ながら恐いな」
ゴーッ
勇者「うむうむ、よく燃えてるな。よし、あとでキャンプファイアーしよう。いっちょフォークダンスでも踊るか」
ゴゴーッ
勇者「武闘家しかいないのが残念だが、あんなんでも一応女だしな。それに性格は変テコでも、ツラだけはまともだし我慢してやろう」
ボボボボボーッ!!!
勇者「……ちょっと燃え過ぎじゃないですか?」
ボボーッ
勇者「……しょんべんかけたら消えるかな」チョロチョロ
武闘家「何してんのよーっ!変態っ!!」ゲシーッ
勇者「ぐええっ?!いきなり後ろから蹴りいれんじゃねーっ!手にひっかかっちまっただろ!!」
武闘家「いいから早く消しなさいよ!強盗の次は放火犯になるつもりなの?!」
勇者「違うんだ。これは焼畑農業なんだ。灰が肥料となって土壌を豊かにするのだ。アルカリ性なんだ」
武闘家「わけ分かんないこと言ってんじゃないの!」ボカーッ
勇者「ぐおおおおっ?!消す、消すから顔はやめてくれ。俺のハンサムフェイスに傷がついたらどーすんだ」
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