うさちゃんとでこちゃん (27)


―― 土曜日の夕方、事務所

美希「ふぁ~、レッスン疲れた! 新曲のダンスちょっとムズいの」

伊織「あら、ちょうど良い」スクッ

美希「あ、でこちゃんだ」

伊織「ちょっと給湯室 行ってくるから持ってて頂戴」スッ

美希「お、うさちゃん」

伊織「すぐ戻るから」コツコツ...

美希「……行っちゃったの」

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美希「ふー、最近うさちゃんを預かる事が多くなったけど」ウリウリ

美希「その辺へ置いとけば良いのになぁ……」

うさ「それほど大切なんですよ、僕が」

美希「そう言うものかなぁ」


・ ・ ・ ・


美希「えっ」

うさ「どうも」


美希「で、どういう事なの?」

うさ「分からないです」

美希「スピーカーが付いてるとか?」

うさ「無いと思いますが」

美希「じゃあ、どうやって声出してるの?」

うさ「難しい事 聞きますねぇ」

美希「ふーむふむ」ギュ

うさ「わわっ///」ビクン

美希「……全然 振動してないの」

うさ「ちょ、ちょっと離してっ!///」アワアワ

美希「え、なに? 照れてるの?」スッ

うさ「てってて、照れてないです!!///」ストン

美希「ふーん。うさちゃん、男の子だったんだ」

うさ「そ、そんな、伊織ちゃん以外に、駄目です……」カァアア

コツコツ...


伊織「……ん、はいお茶」コトッ

美希「あっ! ねぇねぇ、でこちゃん!」

伊織「何よ、大きな声出して」

美希「あのね、うさちゃんね!」

伊織「えぇ」

美希「実は、男の子なんだって!」

伊織「はぁ!?」


―― 美希、状況説明後

伊織「うさちゃんが、ねぇ……」

美希「でも今は何にも喋らないの」

伊織「うーん」

美希「……」



美希「……ねぇ、でこちゃん」

伊織「ん、何よ?」

美希「ミキの言う事、信じてる?」

伊織「全然」

美希「ハッキリ言い過ぎぃ!」

伊織「だって、ぬいぐるみよ?」

美希「い、言い返せないの……」

伊織「そりゃ、喋ってるのを見れれば信じるけど……」

美希「うっうさちゃん! 喋るのぉ!」ナデナデナデナデェ!


うさ「……」

伊織「……」


美希「……赤っ恥なの」


美希「でこちゃん、ちょっと貸して?」

伊織「良いけど、変な事しないでよ?」スッ

美希「ただギュっとするだけだよ!」ギュ

伊織「ふーん」


・・・・


美希「反応ないなぁ」ギュウウ...

伊織「……ねぇ、本当に、さっきは反応したの?」

美希「うん! 抱いてあげたらチョー照れてたの!」

伊織「ふ、ふーん……」

美希「んー、じゃあ次はチューしてみよっかなー♪」ムチュー!

伊織「ぎゃああぁぁああストップ!!」バッ!

美希「わわっ!」

伊織「何すんのよ馬鹿! 汚いじゃない!」

美希「むぅ、失礼だよー」

伊織「ったく、どういうつもりよ」

美希「……」


美希「ねぇ、もう一回2人きりにして」

伊織「はぁ? もう変な事すんじゃないわよ?」

美希「どこまでOK?」

伊織「お触りまでよ!」


――応接室に2人(?)きり

美希「……ねぇ、うさちゃん」

うさ「……」

美希「……」



うさ「……ごめんなさい」

美希「ああー! やっぱり知らんぷり してたんだ! 酷いよぉ!」ユサユサ!

うさ「ちょ、待っ!」アワアワ

美希「ちゃんと、でこちゃんに説明してよぉ!
    ミキ、でこちゃんに頭ヘン、って思われちゃったの!」

うさ「だっ、だから それには訳が!」

美希「え、訳?」


うさ「だって、恥ずかしいじゃないですか」

美希「ミキの恥はどうなるの?」マガオ

うさ「す、すみません……」


うさ「それで、ぇと。 美希さんにご相談したい事が」

美希「ミキに?」

うさ「伊織ちゃんからの信頼を得ている美希さんに、です」

美希「信頼? いっつも鬱陶しがられてるけど」

うさ「それは上辺だけです」

美希「ふーん?」

うさ「伊織ちゃんは捻くれているので、あまり他人に素を出しません」

うさ「どうでも良い相手に対して程、愛想が良くなるのです」

美希「あー、うさちゃんにも愛想イイよね!」

うさ「僕はそこを超越しています」

美希「例外があると分かりにくいよ!」

うさ「例外は僕だけです!」ドン!

美希「ふ、ふーん……」タジタジ


美希「で、相談って何?」

うさ「伊織ちゃんの、ファーストキスが欲しいのです」

美希「キモいの」

うさ「はっ、話を聞いて下さい!」

美希「んー、なぁに?」ジトー

うさ「その目、心がキュっとします……」

シャルル・ド・ブリタニアが本名だっけ?(スットボケ)


うさ「僕は、何の変哲もないウサギのぬいぐるみ。
   体は古く、限界が近づいています」

うさ「そう遠くない未来、伊織ちゃんとの別れが来るでしょう」

美希「でこちゃんなら修復とか出来るんじゃない?」

うさ「仮に全身を修復したとして
   それは僕と呼べるでしょうか」

美希「難しい事を言うねぇ」

うさ「すみません、美希さんには理解出来ないでしょうか」

美希「さすがは でこちゃんの相棒。上から目線パねぇの」

うさ「えへへ……」ニヤニヤ

美希「褒めてないよ!」


美希「で、別れと初キスの関係は?」

うさ「……残したい、んです」

美希「え?」

うさ「伊織ちゃんの心に、僕を残したいんです」

美希「もう残ってるんじゃない?」

うさ「もっと強くです!」


美希「それじゃあキリがないと思うけど」

うさ「……確かに、この”好き”から生まれる欲求には際限が ありません
   ですので、せめて今出来る事 全てを……」

美希「うーん、ずいぶん入れ込んでるねぇ」

うさ「当然です! もう10年以上も一緒なんですよ!」

美希「でもでこちゃん、さっきキッスはダメだって」

うさ「それは、僕が他の女とスるのが許せなかったんですよ」

美希「違うと思うけど」

うさ「そうに決まってます!」

美希「めんどいから本人に聞こっか」

うさ「構いません!」


―― 伊織 再び応接室へ

伊織「うさちゃんが、私とキスぅ?」

美希「うん」

伊織「汚れちゃうから、気は進まないわねぇ」

美希「ほら見ろなの」

伊織「へ?」

美希「んじゃーでこちゃん! またサヨナラなの~♪」

伊織「はぁ!? いったい何なのよ!」

美希「良いから良いから~♪」グイグイ


――応接室に2人(?)きり

美希「……ね? ミキの言った通りでしょ?」

うさ「うぅ……」

美希「だいたい男子ってそんなモンだよね
    自分に都合良いように勘違いしてるの」

うさ「そんな、僕に限って……」

美希「そういうトコだよ」

うさ「うぐぅ」

美希「で、どうするの?
    でこちゃんの気持ちを無視してまでスる?」

うさ「そ、それは……」

美希「うんうん、そうだよね
   ここで強引に行くって言われなくてミキは安心 ―― 」

ガタッ!

美希・うさ「えっ!?」


伊織「う、うさちゃん……?」


―― 伊織、美希から事情を聴く

伊織「信じ難いけど、実際に聞いちゃうと……」

うさ「い、伊織ちゃん……」ドキドキ

美希「でこちゃんに抱かれてハァハァ言ってたんだって」

うさ「ちょっとぉミキさん!?」

伊織「……まぁ、お年頃なら仕方ないわね」ジトー

うさ「その目は止めてよ!」


伊織「……まぁ、何て言うの?」

うさ「はい?」

伊織「もっと自信を持ちなさいよね」

うさ「じ、しん?」

伊織「そう、自信」


伊織「この伊織ちゃんに、大切に思われてるって言う、自信よ」

うさ「……!」


うさ「い、伊織ちゃん……」


美希「 ―― 」



伊織「まさか、こうして うさちゃんと話せるなんて思わなかったわ」


伊織「でね、私、意外な事に気付いたの」

うさ「意外な事?」

伊織「私 今まで、うさちゃんに沢山 話を聞いて貰って来たけど」


伊織「感謝の気持ちを、伝えた事は無かったな、って」

うさ「い、伊織ちゃん……」

伊織「だから、その……」



伊織「今まで、私と一緒に居てくれて」

伊織「本当に、ありがと……」

うさ「……!」



うさ「ぅ……」

うさ「い、伊織、ちゃん……」ウルウル


伊織「なぁに?」


うさ「ぼ、僕の方こそ」

うさ「こんなに、大事にしてくれて」

うさ「そ、その……」


伊織「……ふふ、ゆっくりで良いわよ?」

うさ「あ、あの。昔、腕が壊れた時」


うさ「伊織ちゃんが、一生懸命に治してくれたり」

伊織「えぇ」

うさ「あと、中学生になっても、色んな所へ連れて行ってくれて」


うさ「僕みたいな、普通のぬいぐるみ。 なのに……」

伊織「えぇ」

うさ「あと、遠足で、伊織ちゃんが……」

伊織「えぇ……」


…………

……

.



美希「うさちゃん、黙っちゃったね」

伊織「……そう、ね」

美希「でも、良かったの?」

伊織「何がよ?」

美希「だって、でこちゃん。
    うさちゃんの話を聞いてるだけで」

美希「でこちゃんは ほとんど喋ってなかったし」

伊織「ふふ、良いのよ」

美希「ふーん……?」

伊織「私は、ありがとう、って伝えられれば、それで十分」

美希「そっ、か」



美希「……えへへ」

伊織「何よ、気持ち悪いわね」

美希「だって、でこちゃん」


美希「―― 何だかすっごく、嬉しそうだから♪」

.

以上です!

>>11
シャルル・ドナテルロ18世、です!!

ご指摘ありがとうございます!

これは別板のトリップでして、板毎にトリ変わるのが嫌なので
それならこの入力方法で良いかなー、みたいな感じです

どうせ自分なんかに成りすます人いないかなー、って!

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