貴音「英語で言うとばぁすでい」 (26)

貴音「……ばぁすでいしょっぴんぐ、ですか。それはつまり……」

美希「お買いものするの!」

響「うん。今日は貴音、誕生日だからね」

美希「ミキたちが貴音の願いをなんでも叶えちゃうよ!」

貴音「……しかし」

響「遠慮なんていらないからな!ラーメンでもお菓子でもどんとこいさー!」

美希「社長の売り込みのおかげでミキたち、たっくさん稼いでるもんね。貴音のラーメン代くらい余裕で払えるの!」

貴音「……それは真ですか?」ジュルリ

美希「あ、いや……やっぱりラーメンの食べ過ぎは体に良くないからほどほどにしたほうがいいかな……」

貴音「……ふふ。冗談ですよ。それでは、お言葉に甘えましょうか」

黒井「ウィ。では出発とするか。地下駐車場に行くぞ」

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響「ちょっと待つさー!!」

冬馬「なんだよ我那覇。急に」

響「なんで社長にジュピターまでいるんだ!?自分たちフェアリーだけで貴音の誕生日を祝うつもりだったのに!」

北斗「あらら。俺たちはお邪魔だったのかな?」

美希「そうなの!チャオはともかくなんでこんなところにあほ毛オタクがいるの!響の教育に悪いの!」

響「教育って、どういう意味さー!!」

冬馬「なっ!?お、俺はオタクじゃねえ!」

翔太「別に冬馬くんとは言ってないよね~」

黒井「自覚がないよりはマシだろう」

冬馬「違うっ!オタクじゃねえっつってんだろ!!」

貴音「豚骨、塩、醤油、味噌、豚骨醤油……期待で舌が躍りますね」ワクワクジュルリ

翔太「貴音さんはほんとにラーメン好きだよね」ゾロゾロ

美希「まぁでもそれこそが貴音って感じもするの」ゾロゾロ

北斗「そうだな。そこもまた魅力的さ」ゾロゾロ

響「そうだ。社長いるんなら貴音のラーメン代、ちょっと出してよ。自分と美希で全額はさすがに……」ゾロゾロ

黒井「今日は私が全部出す。金の心配などしなくていいぞ響ちゃん」ゾロゾロ

翔太「ホント黒ちゃん!?さっすが~!」ゾロゾロ

美希「本物のセレブは違うの」ゾロゾロ

北斗「すみませんね社長」ゾロゾロ

黒井「フッ。王者たるもの、社員に金の出し惜しみなどしないのだ」ゾロゾロ

響「かっこいい~!」ゾロゾロ

貴音「なるほど……さすが黒井殿ですね」ゾロゾロ

冬馬「俺の話を聞けええぇぇぇぇ!てか置いてくな!!」

~961プロ地下駐車場~

黒井「こんなこともあろうかと先日、7人乗れる車を新しく買ったのだ」

北斗「ベンツ、ですね」

翔太「すご~い!さすが黒ちゃん!」

響「ホントにすごいな……ピカピカだぞ。社長、これいくらくらいしたんだ?」

貴音「響。すぐに値段を聞くなど少々下品ですよ」

響「うっ……でも、気になったし……」

美希「ミキも気になるの」

黒井「そこまででもないさ。ざっと600万程度だ。もっと高いのも山ほどある」

響「ろ、600万……」

美希「それだけあれば、おにぎりが……」

冬馬「……おいおい。そんな高級車で事故ったりすんなよ?」

黒井「私のドライビングテクを見くびるなよ。今まで廃車にしたのはたったの二台だ。事故など起こすわけないだろう」

冬馬「おかしいだろそれ!ドヤ顔するとこじゃねえだろ、その経歴じゃ!!」

翔太「……大丈夫かな」

美希「ミキ、まだまだ死にたくないの」

黒井「辛辣だな貴様ら。そんなに私の運転が恐ろしいか。30年以上乗ってきて二台しかダメにしていないのだぞ?普通だろう」

冬馬「ふつうは一度も事故したりしねえもんなんだよ!」

黒井「なんだと?」

響「なんだかホントに恐ろしくなってきたぞ……」

北斗「あの、免許ありますし俺が運転しましょうか?」

冬馬「おお……そ、そうだ!そのほうがいい!北斗に運転してもらおう!な!四条もそのほうがいいだろ!?」

貴音「わたくしは黒井殿の運転でも……」

響「うんうん!そうだよな!貴音もそのほうがいいってさ!頼んだぞ北斗!」

美希「ミキたちの命は北斗の腕にかかってるの!」

北斗「はは……責任重大だな。ていうか社長。もうちょっとお手軽な車はないですか?さすがにこれを運転するのはちょっと……擦ったりしたとき怖いですし」

黒井「……チッ、ついてこい」スタスタ

翔太「あらら。黒ちゃん、機嫌悪くなっちゃった」

冬馬「子供かよ……」

ブロロロ……

美希「来たの」

響「……なんかあの車もピカピカで高そうなんだけど」

冬馬「ん~……マ○ダのプレ○シーか。一般人でも結構持ってるやつ多いぞ」

響「……全然違いがわかんないや」

美希「ミキもなの。安全に乗れればなんでもいいって思うな」

北斗「お待たせ。貴音ちゃんたちは真ん中で冬馬と翔太は後ろ」

翔太「黒ちゃんは助手席?」

北斗「まだ少し機嫌が悪くてね」

冬馬「世話のかかるおっさんだぜ……」

黒井「くそ……なぜ私がこのような貧乏人の車なぞに……」

響「……もう、社長!今日は貴音の誕生日なんだから!そんなにブツブツ言わないでほしいぞ!」

美希「そうなの!今日は貴音が主役なの!」

黒井「……そうだな。すまないな、貴音ちゃん。それに響ちゃんと美希ちゃんも」

貴音「いえ、わたくしのほうこそ今日はお世話になります」

響「うんうん!やっぱり仲良くが一番だぞ!」

黒井「……馴れ合いは」

美希「そーいうのはなし!社長だって貴音を祝いたいんでしょ?」

黒井「……そうだな」

北斗「社長は貴音ちゃんたちにはホント弱いですよね」

冬馬「まったくだぜ。俺たちにもこんな感じで接してくれりゃいいのによ」

翔太「黒ちゃんはツンデレだからね~」

黒井「黙れ」

北斗「ははは……。それじゃそろそろ出発しますか。最初はどこ行きます?」

黒井「……まだ昼食は取っていないのだろう、貴音ちゃん?」

貴音「そうですね。本日はまだ……」

黒井「ではまずは昼食としよう。貴音ちゃん、希望は……聞くまでもないか」

貴音「二十郎へ行きましょう」

黒井「……安上がりなのはいいが体調管理はしっかりするようにな」

貴音「わかっております」

美希(絶対わかってないの)

響(おととい行ったばかりの気が)

冬馬「つーか二十郎ってうまいのか?入ったことないんだが」

響「あっ、ばか……!」

貴音「なんと。天ヶ崎竜馬はらぁめん二十郎に行ったことがないのですか?」

冬馬「え、あ、あぁ。そうだけど……なんか食いつきいいなお前。つーか俺の名前は天ヶ瀬冬馬だ」

貴音「それは人の一生のうち九割を損していますよ。わたくしが今から二十郎について一から百まで丁寧に教授して差し上げましょう。そもそもらぁめんの起源は古くは……」

美希「あ~やっちゃったの。もうこうなったら貴音は止められないよ」

翔太「冬馬くん地雷ふんじゃったみたいだね」

冬馬「ど、どういうことだよ?」

響「貴音はラーメンとか二十郎とかについて話し出すと止まらないんだ。聞き手が貴音の話を完璧に暗記するくらいになるまで絶対に話をやめたりしないぞ」

冬馬「な、なんだよそれ!?」

貴音「天ヶ崎竜馬、きちんと聞いているのですか!?」

冬馬「ひぃ!き、聞いてるぜ!」

貴音「ならばわたくしが今述べていたことを言ってみなさい!」

冬馬「え、えーとだな……」チラッ

美希「ミキ、しーらない。響、お昼寝するから肩貸してなのー」コテッ

響「いいけど自分、小説読むから疲れて途中でずらすかもしれないぞ」

美希「車の中で本なんて読んだら酔っちゃうよ?」

響「……それもそうだな。じゃあ自分もちょっと寝よっかな。昨日はねこ吉が家から逃げちゃってそれを探すのに夢中になって寝不足なんだよね……」

美希「じゃあ一緒に寝るのー!」

冬馬「しょ、翔太!」

翔太「……」シャカシャカ ←音楽聞きながら窓の外見てる

冬馬「おっさん!北斗!」

北斗「そういえば近場の二十郎って改装中でしたよね」

黒井「む。そうか。ならばこのカーナビで新たな二十郎を探さねばならんな」ピッピッ

北斗「しかし、すごい渋滞ですね……平日のこんな時間に」

黒井「検問でもやっているのかもしれんな……お、出たぞ、ってずいぶんと遠い場所にあるのだな。本当にここが一番近いのか?」ピッピッ

冬馬「こ、こいつら……!」

貴音「天ヶ崎竜馬!!」

冬馬「ひいぃぃっ!!」

北斗「やっと着きましたね……予想以上に長かった」

黒井「ふん。これだから警察は嫌いなのだ。融通が利かん無能どもめ」

北斗「まぁまぁ……961プロの社長がそんなこと言ったりしたらスキャンダルになるかもしれませんよ」

翔太「壁に耳あり障子に目あり、って言うしね!ね、冬馬くん!……冬馬くん?」

冬馬「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシメンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシメンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ……」ブツブツ

黒井「……見ないうちにずいぶんとやつれたな」

北斗「一方の貴音ちゃんは達成感からか上機嫌ですね」

貴音「……美希、響。着きましたよ」ユサユサニコニコ

美希「んー……響は、これが似合うと思うなぁ……zzz」

響「だめだぞ……美希……そんな短いの、自分は……似合わないからぁ……zzz」

貴音「起きなさい、二人とも。二十郎ですよ」

黒井「……二人が起きたら入るか」

北斗「そうですね」

翔太「冬馬くんはほっといたら元に戻るかな?」

冬馬「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ……」

美希「二日ぶりなの」ズルズル

響「そんなにしょっちゅう食べるもんじゃないと思うんだけどなぁ……ま、今日は貴音の誕生日だし大目に見るぞ」ズルズル

貴音「ありがとうございます」ズルルルルルルルルル

翔太「……すっごい食べっぷりだね」ズルズル

黒井「フードファイターのスカウトが来るのも時間の問題かもしれんな。イメージのため当然辞退することになるだろうが」ズルズル

冬馬「イイカホクト、コノトッピングハメントスープノヒリツガナニヨリモダイジデ……」

北斗「黙って食ってくれよ、冬馬……」ズルズル

貴音「すみません、替え玉をお願いいたします……」

翔太「あー、お腹いっぱい。ラーメンも久しぶりに食べるとおいしいね」

美希「ミキもあんな感想を言ってみたいの」

響「三日に一度のペースだからな……おいしいよりも飽きが先に来るぞ……」

黒井「……三日に一度だと?そんなに食べているのか」

美希「毎日お昼は三人で食べたいものを順番に食べるんだけど……」

響「自分と美希は割とバラバラなんだけど貴音は毎回ラーメンだから……」

貴音「らぁめんこそ全ての食の頂点に立つ食べ物なのです。響たちに止められているので一日一食としていますが三食全てらぁめんでもわたくしは一向に構いません」

黒井「……私は構うがな。貴音ちゃん、ラーメンは一週間に一度にしよう」

貴音「な、なぜですか!?」

北斗「まぁ、しょうがないですよね」

黒井「そんな頻度で食べていればいつか必ず体調を崩す」

貴音「らぁめんを食べないことによってわたくしの体調が崩れてしまっては意味がないのでは!?」

美希「言い切ったの」

冬馬「もはや完全に中毒者だな……」

翔太「あ、冬馬くん治ったんだ。よかったね」

冬馬「よくねぇよ。なぜか腹はいっぱいだし、なんか口の中が妙に油っぽいし……今から昼食だってのにな」

北斗「もう昼食は終わったぞ。油っぽいのはお前、貴音ちゃんと同じトッピングで食ってたからな」

冬馬「食った記憶がないんだが……つーか四条と同じもの食ったってマジかよ?二十郎がトラウマになりそうだぜ……」

黒井「冬馬だけにか」

翔太「黒ちゃん、それはないよ」

美希「センスがないの」

黒井「だ、黙れ!文句ならそんな名前をしているこいつに言え!」

冬馬「お、俺が悪いってのかよ!?」

響「貴音との話し合いは済んだの?」

黒井「ああ。何とか週一度、美希ちゃん響ちゃんと食べるのは月に一度にさせた」

響「おお……!よくそこまで貴音が譲歩したな……」

黒井「二人の体調を優先しろと言ったら渋々了解したぞ」

貴音「そうです……何よりも二人の体調が、大切ですからね……」ニコォ

美希「笑顔が引きつってるの……」

響「そんなにつらいのか……なんかこの前テレビで見た薬物中毒者にホントに似てるような……」

ブロロロロ……

貴音「とはいえ確かに黒井殿の言にも一理ありますゆえ、将来のことを考え、今後は少し控えようと思います」

翔太「将来?」

黒井「動物性脂質の摂り過ぎで腎臓を悪くするものは決して少なくないからな。酷使しすぎると年を取って新陳代謝が低下していくにつれて若い時のツケが回ることになる」

北斗「社長もお酒ばかり飲んではいけませんよ?」

黒井「体を悪くするのは安い酒のみだ。私のようなセレブの飲むゴージャスな酒はいくら飲んでも悪酔いもしないし体を悪くすることもないのだ」

冬馬「んなわけねぇだろ……」

響「なんでもほどほどが大事だぞ。……それよりもさ、今どこに向かってるの?」

北斗「ショッピングモールさ。貴音ちゃんの欲しいものを社長が何でも買ってくれるそうだよ」

響「すごいな社長……」

黒井「セレブだからな」

美希「ここぞとばかりセレブを強調するね」

貴音「本当によろしいのでしょうか……」

黒井「遠慮しなくても良い。フェアリーのおかげでただでさえセレブな私はより一層セレブになってきているのだ」

冬馬「俺たちは?」

黒井「貴様らの売り上げなどはした金にもならん」

北斗「これは手厳しい」

翔太「CD売り上げとかフェアリーと同じくらいのはずなんだけど……」

冬馬「あからさまに俺たちとこいつらの扱い違うよな」

響「じゃあ着く前にプレゼント渡そっかな。はい、貴音!誕生日おめでとう!」

美希「あ、待って響。ミキも渡すの!!」

貴音「これは……」

響「えへへ……マフラーだぞ。もう冬も折り返し始めてるけど、ぜひ使ってよ!」

美希「ミキは手袋だよ。響に教わって初めて編んだんだけど結構うまくいったの!」

貴音「ではこの二つは二人の……ありがとうございます、響、美希。大切に使わせてもらいましょう」シュル

響「えへへー。実はね……」シュル

美希「三人でおそろいなの!」シュル

貴音「なんと……!」

冬馬「すげえな。全部手編みか?」

美希「ミキのは響の手作りなの。ミキが手袋一つ編んでる間に二つもマフラー編んじゃうなんてさすが響!」

響「せっかくだしなー。おそろいのほうが良いでしょ?」

美希「もう!大好きなの響!!」ギュッ

響「あっ、ちょっと美希!」

貴音「わたくしは友人に恵まれました……」ギュッ

響「貴音まで!もー……」

北斗「仲良きことは美しきかな、ですね」

黒井「……まぁ、な」

翔太「なんかクオリティ高くて僕たちのが霞んじゃいそうだねー」

響「そんなことないと思うぞ!大事なのは気持ちだからな!」

翔太「あはは……それじゃあ僕も渡すね。はい、貴音さん。おめでとう!」

貴音「ありがとうございます……これは」

翔太「何にするかすっごく悩んだんだけどね。やっぱり貴音さんってラーメン好きだから」

美希「お~。これが噂に聞くMy箸ってやつなの!」

響「確かに割りばしって店によって微妙に違うしなんかしっくりこないときもあるよね」

貴音「ありがとうございます、御手洗翔太。大切に使わせてもらいます」

翔太「喜んでもらえると嬉しいよ」

北斗「翔太。俺のカバンからプレゼント取って渡してくれよ」

翔太「いいの?」

北斗「運転中だし、みんな渡してるみたいだからな」

翔太「ふ~ん。はい、貴音さん。北斗くんから!」

北斗「おめでとう、貴音ちゃん。直接渡せなくてごめんね」

貴音「いえいえ。気持ちだけでも十分ですよ。これは……」

響「髪留め?とリストバンドかな?」

北斗「この前ちらっとフェアリーのレッスンを見かけたとき、貴音ちゃんだけ髪をそのままでやってたからさ」

美希「そういえば貴音、前使ってたゴム、切れちゃったんだっけ?」

貴音「ええ。新しく購入しようと思っていたのですが、思わぬところで手に入りましたね」

北斗「リボン一つだけってのもあれだと思ったからリストバンドも一緒にね」

響「あっ!ここ見て!961プロのロゴが入ってるぞ!」

美希「ホント!この横のやつは?」

黒井「フェアリーのロゴだ」

響「えぇっ!?」

美希「そんなのあったの?」

黒井「いい機会だから作ったのだ。北斗が961のロゴ入りのリストバンドを特注で作れないかと聞いてきたからな」

響「じゃあもしかして自分たちのもあるのか!?」

黒井「ああ。明日打ち合わせの時に二人にも渡そう」

美希「すっごくかっこいいって思うな!」

黒井「ちなみに響ちゃんと美希ちゃんのは経費で作ったが貴音ちゃんのだけは北斗の金で作られた」

貴音「なんと」

北斗「貴音ちゃんへのプレゼントだからな。俺が出さないと、なんか違うだろ?」

翔太「おぉ~。北斗くんかっこいい~!」

貴音「ありがとうございます、伊集院北斗。二つとも、ありがたく使わせてもらいます」

北斗「どういたしまして。さて、冬馬。今度はお前の番だぞ」

冬馬「あ、ああ……」

翔太「そういえば冬馬くん、ずいぶんと静かだったね。まさか用意してないとか……?」

冬馬「いや、用意はしたんだけどよ……つーかお前ら、なんでそんなに的確に四条が喜びそうなものを……」

美希「アホ毛くんは何を用意したの?」

冬馬「アホ毛言うな!……ほらよ」

貴音「これは……」

響「ジュピターのライブのチケット?」

冬馬「まぁ、なんだ。俺たちのライブの結構いい席だからよ。その、見に来いよ」

美希「ちょうどミキたちお休みの日だね」

響「わざわざ調べたのか?」

翔太「冬馬くんストーカーみたいだね」

冬馬「ストーカーじゃねえよ!」

貴音「……以前から一度は観客として見てみたいと思っていました。ありがたく、頂戴いたします」

冬馬「お、おう」

美希「……ミキたちのは?」

冬馬「は?」

美希「ミキたちのはないの?」

冬馬「ねえよ」

美希「なんでー!ミキたちだってこの日お休みなの!」

冬馬「知らねえよ!」

美希「アホ毛くんは気が利かないの」

冬馬「なんで俺がわざわざお前らの分も用意しなくちゃいけねえんだよ!?これは四条への誕生日プレゼントだろ!」

美希「そうだけど……気が利かないの」

黒井「……まぁ、そう言いだすと思って二人の分のチケットも確保してある。もちろん貴音ちゃんの隣の席をな」

響「本当、社長!?」

貴音「それでは、三人で見に行きましょう」

美希「ありがとうなの!社長はアホ毛くんとはやっぱり違うね。カリスマの差なの」

冬馬「こいつ……言わせておけば!」

翔太「まぁまぁ、冬馬くん」

北斗「そろそろ着くから暴れるなよー、冬馬」

~超大型ショッピングモール~

美希「ここ確かこの前、ミキがファッション誌に出たときに撮影した場所だよね」

黒井「ウィ。ファッションの最先端を行くショッピングモールだ。貴音ちゃん、気になるものがあれば何でも遠慮せず言いなさい。私がプレゼントしよう」

貴音「しかし……」

響「社長がこう言ってるし、せっかくだからいろいろ見て回ろうよ貴音!」グイグイ

美希「そうなの!貴音に似合う服とか靴とかいっぱい見るの!」グイグイ

貴音「わ、わかりました。二人とも、あまり引っ張らないでください……」



冬馬「……意外だな」

翔太「?何が?」

冬馬「いや、我那覇って今の社長の言とか星井と違って結構遠慮しそうなイメージだったんだが。四条と同じで」

翔太「あー、確かに」

北斗「だからこそ、じゃないか。自分も同じ立場になったら遠慮するだろうからこそ社長の顔を立てるために」

冬馬「……だとしたらすげえな」

北斗「あくまで推測だけどな。案外無意識のうちにやってるのかもな」

黒井「さすが我がフェアリー。何もかもが完璧!まさに王者にふさわしい最高のユニットだ。くくくくっ……!」

翔太「はは……」



響「おーい、早く来るさー!」

美希「さっそく可愛いワンピース見つけたのー!社長たちも見るのー!」



冬馬「……行くか、俺たちも」

黒井「うむ」

翔太「女の子の買い物は長いっていうから、疲れないようにしないとねー」

北斗「あの三人の可愛い姿が見れたら疲れなんてすぐに飛んでいくさ」

冬馬「やれやれ……」

黒井「本当に会社まででいいのか?」

美希「うん!今日は三人で響の家に泊まるから」

冬馬「そうなのか?にしては荷物が少なすぎる気がするが」

響「朝に二人が一旦うちに来て大きな荷物を置いてから出発したからな」

美希「響の忘れ物がなかったらここにもよらなかったの」

響「しょうがないだろー。定期忘れちゃったんだから」

美希「まぁでも、そのおかげで社長に服とかこんなに買ってもらえたからよしとするの!」

響「ホントに良かったの社長?貴音だけじゃなくて自分たちにもこんなにたくさん……」

黒井「かまわん。この程度の出費、セレブな私からすれば雀の涙のようなものだ」

美希「ありがとう社長!」

響「にふぇーでーびる!」

翔太「えっと、『ありがとう』だっけ。最近ちょっとずつ沖縄弁を勉強してるんだ」

冬馬「役に立つのか、それ……?」

北斗「そういえば響ちゃん、定期忘れたって言ってたけど電車苦手じゃなかったっけ?」

響「そうなんだけどやっぱり不便だから二人に何回か付き合ってもらって克服したんだ。まだ満員電車とかはあまり得意じゃないけど」

黒井「言えば車ぐらい出すというのに」

響「さすがにそこまでは……」

黒井「きちんと女性専用車両に乗るのだぞ?不埒な考えを起こす不届き者というのはどこにでもいるものだからな」

響「そこは徹底してるさー!心配しなくても大丈夫だぞ!」

翔太「黒ちゃん過保護だね~」

黒井「何を言う。これでも心配し足りんくらいだ」

北斗「まぁ、気を付けるに越したことはないよ」

響「まぁ一人なのは数駅だけだし。途中で貴音と合流するからね」

貴音「そうですね。響に近づく不届き者など、わたくしが許しません」

美希「え~、二人とも電車で通ってるの?」

貴音「美希は送ってもらっているのですか?」

美希「うん!だって家から会社まで歩くのなんてだるいの」

冬馬「星井らしいぜ……」

北斗「……さて、着いたぞ。三人はここで降りるかい?」

美希「ん~、じゃあ降りよっか」

貴音「本日は真にありがとうございました。今まで生きてきた中で最高の誕生日でした」

翔太「そういってもらえると嬉しいなぁ」

冬馬「ま、よかったな」

北斗「俺も今日は楽しかったよ」

黒井「明日からも頼むぞ」

美希「問題ないの!」

貴音「いつも通りの、最高のパフォーマンスを約束しましょう」

響「どんな時でも最高のパフォーマンスを提供することが王者の義務、だよね!」

黒井「そうだ。わかっているのなら良い」

貴音「それではみなさん、ごきげんよう。本日はありがとうございました」

美希「ばいば~い!」

響「ぐぶりーさびたん!」

ミキガシッパイシテモネンパイノジブンガフォロースルカラシンパイナイゾ!
チッチャイノニオネエサンブルヒビキハカワイイノ
マッタクモッテソノトオリデスネ
ウガー!コドモアツカイスルナー!

翔太「ぐぶりー……?う~ん、それはまだ勉強してないなぁ。バイバイとかまたねとか別れの挨拶っぽいけど……」

黒井「うちなーぐちで『さようなら』だとかそういうニュアンスのある言葉だ」

翔太「あ、やっぱりそうなんだ」

北斗「しかし、ホント仲良いですよね。あの三人」

冬馬「何も言わねえんだな。珍しいな」

黒井「……結果を出しているのなら口は出さん。もし結果が伴わなければその時は……」

翔太「黒ちゃんも丸くなったよねー。以前は僕たちが仲良く話してたらすぐ不機嫌になってたのにねー」

黒井「……ふん」

貴音「……二人とも。本日はありがとうございました」

美希「どういたしましてなの!」

響「何回言うのさ、貴音。もう聞き飽きちゃったぞ」

貴音「そうですか?しかしわたくしはまだまだ言い足りないくらい、二人には感謝しているのです。本日は最高の誕生日でした」

響「……そ、そういうこと言われると、ちょっと照れるな……」

美希「そう言ってもらえると嬉しいな!」

貴音(わたくしたちの未来は誰にもわからない……)

貴音(もしかすると、三人がバラバラになってしまうような未来が待っているのかもしれません)

貴音(ですが、不安など一切ありません。なぜなら……)


響「夕飯何にしよっか―」

美希「ケーキ買う?」

響「あー、そうだな。ホール?それともバラ?」

美希「ミキ的にはいろんな味を楽しめるからバラが良いって思うな」


貴音(わたくしたち、フェアリーならば……どんな困難でも乗り越えていけますから。だってわたくしたちは、)

貴音(完璧、ですからね)



おわり

おまけ

美希「貴音ー。貴音はケーキ、何個くらい食べる?」

貴音「とっぷしぃくれっとです」

響「いや、そこを秘密にされたら困るんだけど……」

お姫ちん誕生日おめでとう!
仲の良い961の面々は一度書いてみたかった。Jupiterの新曲も期待してます
響のプレゼントを手編みのマフラーや手袋にしとけばいいという風潮、あると思います

あとスイスフラン問題の影響で路頭に迷う黒井社長っていうネタを思いついたけどFXには明るくないので断念。誰か書いてくれないかなーチラッチラッ
妙な点や誤字脱字があったらすみません

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