魔法使い「なにか食べたいものはあるかの?」幼女「チャーハン!」 (155)


・このSSは勇者「魔導人形?」幼女「ユーシャ!!」の続きです
勇者「魔導人形?」 幼女「ユーシャ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418973751/)

・慣れない部分もありますがそこは見なかったことに…

・基本妄想の垂れ流しです

・書き溜めの部分もありますが、ゆっくり進行していきたいと思ってます

それでは始めていきます



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420450266

ここでちょっと前回の登場人物紹介


勇者 ニート。魔王討伐をしたことで入ってくる支給金で生活している

幼女 勇者の仲間である魔法使いが作ったとされる魔導人形。金髪。龍族のブレスを出せる。

受付 役所の受付。勇者が今月生活できるかは彼女にかかっている

山賊A 山賊。回復魔法が使える

山賊B 山賊。火竜とも戦い、なんとか生き残る


これだけわかれば前回のなんか見なくても大丈夫!

―――火竜事件直後――――



山賊A「な、なぁ……」

山賊B「なんだよ?」

山賊A「もう一度確認していいか?」

山賊B「またかよ、 いい加減、理解しろって」

山賊A「頼む、もう一回、もう一回だけ。そうしないとおかしくなっちまいそうだから……俺たちはお頭たちと同じように村を襲撃したことに対して取り調べを受けてたんだよな?」

山賊B「ああ、勇者と一緒にいた受付の嬢ちゃんが勤めてるあの役所でな」

山賊A「とりあえず俺たち2人は知っていることを洗いざらい話したんだよな」

山賊B「龍のこと、金髪のちんちくりんのこととかその他諸々のことを話した」

山賊A「で、とりあえず休憩ってことになって、担当の人が取調室からでた瞬間……」

山賊B「突然、黒服の男が数人現れて、俺たちに目隠しをして転移魔法でどこかへ飛ばされた」

山賊A「……俺、ここで死ぬのかな?」

山賊B「死ぬな、多分。俺は覚悟を決めた」

山賊A「マジかよ!?」




山賊B「喚くなよ、山賊団一つ闇に葬られたところで世間は誰も俺たちのことなんて気にしねぇよ」

山賊A「とりあえず、逃げよう!」

山賊B「どうやって? 目隠しされて、縛られてるんだぞ? それにここがどこだかわからない」

山賊A「それでもなにもしないよりマシだろ!? 俺はこんなところで死ぬ気はねぇぞ! せっかく足を洗って真面目に生きようって思い始めたのに!」

山賊B「やめとけって、騒げば騒ぐだけ惨めになるぞ、自分の運命だと思って潔く散ろうぜ、兄弟」

山賊A「こんな時に限ってそんなこと言うなよ!!」

山賊B「いや、もう言う機会ないだろうからな、兄弟」

「………」ガチャ スタスタ

山賊B「お、どうやら死神のお出ましらしい」

山賊A「死ぬのは嫌だ、死ぬのは嫌だ、死ぬのは嫌だ」

山賊B「やるならさっさと済ませてくれ、そっちの方が気が楽だ」

「………」ゴソゴソ

山賊A「目隠しを外してくれるのか?」

山賊B「絞首台の上だったりして」

山賊A「こ、怖いこと言うなよ!」


前作…っつーか第一部?面白かったんで期待

>>5 コメントありがとうございます!

すみません、ちょっと席外していました。これから再開していきます



「………聞いてたのより随分と騒がしい方々ですのね」

山賊A「ぅん……おお、綺麗な姉ちゃん……」

山賊B「あんたが死刑執行人ってとこか?」

メイド「まさか、そんなわけがないでしょう? 私はメイド。主の身を守り、サポートするのが私の務めです」

山賊B「そのメイドとやらが俺たちになんの用だ」

山賊A「そ、そうだ! そうだ! 俺たちをどうする気だ! それとお頭たちは無事なのか!?」

メイド「そうキャンキャン喚かないでくださいますか? 今から説明して差し上げますから」

メイド「あなたのお仲間方は無事です。然るべき場所に行ってもらいました。もちろん、山賊行為からは足を洗っていただきましたが……」

山賊B「それで、なぜ俺たちをここに連れてきた? そもそもここはどこなんだ?」

メイド「ここは宮廷の一室です」

山賊A「宮廷……ってことはここは王都なのか?」

山賊B「じゃあ、あんたの主って言うのは、国王陛下……」

メイド「いえ、正確にはそのご息女であらせられます、王女様ですわ」

山賊B「ますます話が見えないな」

メイド「では、単刀直入に申し上げます。あなた達、我が主のためにその身を捧げてくれませんか?」



山賊A・B「「は?」」

メイド「あなた方の活躍は耳にしています、特にあなた、龍と互角に渡り合ったとか」

山賊B「それは違う。誰から聞いたか知らないが、実際には逃げ回って時間稼ぎしてただけだ」

メイド「あら、龍相手に死なずに逃げ回り続けるなんてなかなかできることじゃありませんよ?」

山賊A「ちょっと待ってくれよ、実際に龍と戦ったのはこいつだけで俺、なんもしてないんだけど……なんで俺まで連れてこられたわけ?」

メイド「あなたは回復魔法の使い手だとか……回復魔法は今となってはこの王都にも使い手が少ないとされている希少魔法、本職の僧侶の方々でも扱える人間は少ないとされています」

山賊B「お前、けっこう凄い奴だったんだな……」

山賊A「そんな褒めるなよ……照れるだろ///」

山賊B「調子に乗るな、気持ち悪い」

山賊A「ひどい!!」



メイド「こちらの話を聞いて下さる? ……とにかく! お二人の噂を聞いた我が主が、是非にと……まぁ、いわゆる『スカウト』というやつですね。どうです? 天下国家のため、その身を役立ててみませんか?」

山賊B「断る」

メイド「……理由を聞かせてくださいます?」

山賊B「俺たちはそんな大したものじゃない、龍を相手に生き残ったのもたまたま運がよかっただけだ。それに……」

メイド「それに?」

山賊B「天下国家のためにだとか、そんな大層な理想を掲げる奴に限ってろくでもない奴だってのがこの世界の相場ってところだ。それにスカウトだったらスカウトらしく、堂々と正面から俺たちに姿を見せるのが礼儀ってもんだろ? こんな周りくどいやり方をしてくる奴を信用しろなんて無理な話だ。悪いが他をあたってくれ」

山賊A「……そ、そうだよな! さすが兄弟! 残念だったな、お姉さん。俺たちはいきなり拉致してくるような胡散臭い連中とはつるまないことにしてるんだ! わかったらさっさと縄を解いて俺たちを解放しな!」ジタバタ

メイド「そうですか……それはそれは、ご無礼を」フフ



山賊A「そうそう! こんな扱いは無礼なの。大体、、物事にはには頼み方ってのがねぇ……!」

メイド「どうやら私の『頼み方が悪かった』ようですね」ヒュンヒュンヒュンヒュン!

山賊A「え?」カツカツ

山賊B「………な!?」カツカツ

山賊A「な…ナイフ……か? お、おい! 俺たちを殺す気かよ! 仮にも王女様に仕えるメイドさんがこんなことしていいと思ってるのか!?」

メイド「あなた達に我が主の命令を『断る』という選択肢はありません。この勧誘の答えは『喜んで引き受ける』か『嫌々引き受ける』かのどちらかです」

山賊B「それでも、もし断ったら?」

メイド「今度はそのナイフがあなた方の大事なところに飛んでいくだけ。どうですか? あなた達、我が主のためにその身を捧げてくれますか?」

山賊A「ど、どうする?」

山賊B「どうするもなにも、どうしようもないだろう?」

メイド「それは肯定と受け取ってもよろしいのですね? ありがとうございます、我が主もきっとお喜びでしょう」

山賊B「あんた、いい性格してるよ」

メイド「よく言われます」フフッ



山賊B「あんたの主とやらもよっぽど根性が曲がってるみたいだな」

メイド「………」

山賊A「もう十分だろ? そろそろ縄を解いてくれよ!!」

メイド「……ああ、それは失礼しました。ではさっそく……」ヒュンヒュン

山賊A「もっと普通に解いてくんねぇかな!?」ブツッ

山賊B「………」ブツッ

メイド「あら、こっちの方が楽ですよ?」フフッ

山賊B「あんまり逆らわない方が身のためってことか……」

メイド「あ、そうそう、大事なことを忘れていました」ヒュンヒュンヒュン

山賊B「………!!!」ツー

山賊A「お、おい! 大丈夫か!? 血ぃ出てるじゃねぇかよ!?」

山賊B「喚くな、大丈夫だ。おい、どういうつもりだ?」

メイド「躾です」ニコッ

メイド「今度、その薄汚い口から我が主を侮辱する言葉を吐いてみなさい………殺しますよ☆」

山賊B「………悪かった。気をつける」



メイド「まぁ、今回はこれくらいで勘弁してあげます」

山賊A「綺麗だけど、怖い姉ちゃんだ……」ゴクッ

メイド「ちなみにさっきのナイフには毒が塗ってありますので」

山賊B「………は? ……グアァ!!」

山賊A「え、毒!? 大丈夫か? 兄弟!!」

メイド「安心してください、命に別状はありません。ただ………」

山賊A「命に別状ないって、滅茶苦茶苦しんでるでしょ! 大丈夫か!? 兄弟!」

メイド「強烈な下剤効果があります☆」

山賊B「グアァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!」ゴロゴロゴロゴロ

山賊A「兄弟ぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!」



メイド「それでは行きましょうか、これからやらなければならないことがたくさんありますので」

山賊A「綺麗だけど、とんでもなく恐ろしい姉ちゃんだ……」

メイド「ちなみにこの部屋はトイレから一番遠いところにありますので」プッ ククク

山賊B「ぬぅぅぅぅぅぅううううううう!!!!」ゴロゴロゴロゴロ

山賊A「最低だ! この姉ちゃん最低だ!」


―――――役所―――――


勇者「こんにちはー、今月も支給金の申請にー」

幼女「………!!!」キタヨー

「これとこれ、明日中に」ドサドサ「課長さん! どうして現場の仕事がなくならないんだ!」「みんなー、黙って仕事しようねー、どうせ今日も帰れないからー」「はは、もうダメだ……」「俺、この仕事が終わったら結婚するんだ……」「もう嫌だお家帰るー!」「あ、あいつ逃げたぞ!」「ふざけるな! 追え! 追えー!」

勇者「なに、この地獄絵図………」

幼女「ユーシャ……」コワイ……



受付「は? 倒れた!? ふざけないでください、回復魔法使ってでも叩き起こすんです! とにかく今は人手が足らないんです! 何人たりとも逃げることは許しませんよ!」ギャース

勇者「あ、あの今月の支給金の申請に……」

受付「あ!?」

勇者「なんでもないです……幼女、今日のところは帰るぞ」

幼女「………」コクコク

受付「………幼女ちゃん!? 幼女ちゃんがいるんですか? 勇者様、それを早く行ってくださいよー、支給金の申請? もちろんやらせていただきます!」ビシッ

勇者「いや、でもいいのか?」

同僚「受付、こんな忙しい時になにしてんのよ! あんたもこっちきて手伝いなさい!」グイグイ



受付「今、勇者様が支給金の申請に来たんです。世界を救ってくださった英雄様をお待たせするわけにはいかないでしょう?」

同僚「あんな穀潰し、待たせればいいじゃないの! 人様の税金で悠々と暮らしてる奴なんていつまででも待たせておけばいいの! 公務員なめんな、って言ってやれ!」

勇者「あの……俺目の前にいるんだけど……」

受付「うるさいんですよ! いくら同僚さんとはいえ、私と幼女ちゃんの逢瀬を邪魔する奴は例え親でも王様でも死んでもらいますよ!?」ガルルルル

同僚「……しょうがないわね、わかったわ、5分だけよ。5分経ったら通常業務に戻ること、みんなあんたのことを待ってるんだからね」

受付「さすが、同僚さんです! 話がわかりますね!」

同僚「そういうのはいいからさっさと済ませるのよ! ……それでは勇者様、ごゆっくり……」ニコッ

勇者「できねぇよ! そんな前置きでできるわけねぇだろ! ていうかちょっと待て、あんたさっき俺にものすごい暴言吐いてたよな! それでも公務員か! 王様にチクってクビにしてもらうぞ、コノヤロー!」


受付「あの、割とマジで時間ないんでそろそろいいですか?」



勇者「あ、はい……」

受付「っと、その前に……」スタスタスタ ダキッ

幼女「???」

受付「幼女ちゃーん! ようこそお越しくださいましたぁぁぁぁぁあああああ!!!」スリスリスリスリ

幼女「ユ……ユー……シャ……」クルシイ……

勇者「……許せ、幼女。これも俺たちの生活のためだ……」

受付「ふー、癒されますぅ……ここのところ残業ばかり続いてて癒しがなかったものですから余計に。あぁ幼女ちゃん、かわいいよぅ!」スリスリスリスリ

勇者「なんなんですか? あの地獄絵図は?」

受付「あぁ、あれですよ『英霊祭』です」

勇者「『英霊祭』?」



受付「え? 勇者様、もしかして知らないんですか?」

勇者「ええ。俺、そういうのとは無縁な生活してきましたから……なんです? その『英霊祭』って」

受付「建国以来、英雄と崇められる方々に人々が日頃の感謝を込めてお祝いするんです。王国最大規模で行われるお祭りで、諸外国からも多くの来賓の方々が見えるんです。その準備や段取り、資料作成などのめんどくさい作業だけが我が役所に流れ込んできてまして、現在このような修羅場を迎えているというわけです☆」

勇者「へぇ……」

受付「私なんてここ二日間、お家に帰れてないんですよぅ……」

勇者「そ、それはご愁傷様……」

受付「そこで勇者様にお願いがあります!」

勇者「お断りさせていただきます」

受付「えー、まだなにも言ってないのにぃ」

勇者「あんたのお願いを受けるとロクなことにならないんですよ! この間のタダ働きがどんな結果になったか、忘れてないでしょう?」

受付「ぶー、それに関してはちゃんと『ありがとう(ハート)』って言ってあげたじゃないですかぁ」

勇者「こっちは死にかけてるんですけど!!」



受付「いつまでも過去のことにこだわっても成長できませんよ?」

勇者「成長なんてしなくていい! 俺はこの生活を死ぬまで続けていく!」

受付「お、幼女ちゃんと一生を添い遂げると!」

幼女「///」テレテレ

勇者「そういうことじゃねぇ!」

ヒュン!

幼女「……!!!」

「わわわ、ちょっと! どいて! どいてぇ!!」

勇者「ん? なんだ?」

受付「勇者様! 上! 上ぇ!」

勇者「は?」

ドシーン!

勇者「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」

幼女「ユーシャ!!」




「ごめんなさい! ごめんなさい! 私昔から転移魔法の制御がどうしても苦手で……あ、でも他の魔法は大丈夫なんですよ!? でもでも、あの転移魔法って使った瞬間ぐにゃーってなるじゃないですか!? あれがダメなんですよ、もう酔っちゃって酔っちゃって……誰だか知らないけどごめんなさいごめんなさい……」

「おい、見ろよ! 女の子が上から降ってきたぞ?」「転移魔法の失敗?」「なんでこの忙しい時に面倒事が次から次へと……」「あ、でもかわいい」「困ったねぇ」「オメェら! 仕事に戻りやがれ!」

勇者「なんで俺ばっかりこんな目に……」

幼女「………!!」ハヤクドイテー

「ああ! 皆さんお仕事中にお邪魔してしまいましてごめんなさい! 決して怪しいものじゃないんです! 私はえーっと、広い意味では皆さんと同じ公務員でして……ですからえーっと……」


勇者「そういうのはいいから早くどいてくれないか、魔法使い」

受付「え?」

同僚「え?」

課長「え?」

頭領「え?」

幼女「???」

魔法使い「え? 勇者!?」キョロキョロ

勇者「よ、久しぶりだな、ったく面倒事押し付けやがって……」

魔法使い「えーっと……」キョロキョロ

魔法使い「…………………こほん! ひ、久しぶりじゃの、勇者。そ、息災でなによりじゃ」ヒクヒク

「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」」」」」」」


受付「そ、粗茶ですが………」コト

魔法使い「うむ、かたじけないの」

勇者「お前、まだその妙な喋り方続けてたのか?」

魔法使い「こっちのほうが威厳ってものがでるじゃろ?」

勇者「違和感しかないんだが……現に役所のみんながショック受けすぎて仕事が手についてないし」

魔法使い「むぅ……いいであろう! この方が『世界を救った偉大なる魔法使い』って感じがでていて! 少なくともこの喋り方に変えて、研究所の人たちから頭を撫でられる回数が減ったもん!」

勇者「なくなったんじゃないのか……そんな無理なんてしなくていいのに。魔法使いは今のままで十分すごいぞ?」ナデナデ

魔法使い「な、撫でるでないわ!」

受付「あの~、本当にこの方が勇者様のお仲間の魔法使い様なんですか?」

魔法使い「い、いかにも。わしが王立研究所の所長であり、魔王討伐パーティーの一人。魔法使いじゃ」フフン

受付「もっとお年を召している方だとばかり……」

勇者「あー、魔法使いはあんまり前に出たがらないしな。行事とか記念式典とかは全部俺と剣士に任せっきりだったし」

魔法使い「人前だとどうしても緊張するのじゃ……」

受付「………ありですね」


勇者「なにがだ、この変態公務員」

受付「魔法使いちゃーん……ちょーっと近くに来てくださーい」

魔法使い「な、なんじゃ?」トテトテ

受付「えへへ~」ダキッ

魔法使い「な、なにをする!! 離せ!」

受付「ああぁ……かわいいですよう! かわいいですよう!」スリスリスリスリ

魔法使い「く、くるしい……勇者……助けてくれ……」

勇者「ほら、変態公務員、そろそろ許してやってくれ」

受付「ちぇー、では改めまして、魔法使い様。本日はどのようなご要件で?」


魔法使い「ひ、ひどい目にあったわい……ああ、本当は勇者の家に直接出向こうと思ったんだがの、ちょうどいいわい」

勇者「幼女のことか?」

魔法使い「おお、そうじゃ。いきなり悪かったの、勇者。大事に育ててくれたか?」

勇者「大事にもなにも、こっちはあいつのお陰で何回か死にかけているんだが……」

魔法使い「? おかしなことを言うの、それでわしの魔導人形はどこにおるのじゃ?」

勇者「ああ、おーい、幼女ぉ!」

幼女「ユーシャ!!」トテトテ ダキッ

勇者「悪い、魔法使い。色々教えてみたんだけど未だに上手くしゃべれないみたいなんだよ。どうも俺には教育っていうのは向いてないらしい」

魔法使い「誰じゃ? この幼女は? 勇者の親戚の子かの?」

勇者「は? なに言ってんだよ、お前が送りつけてきた魔導人形だぞ? な?」

幼女「ユーシャ!」ビシッ


魔法使い「??? なにを言っておる? いくらわしでも生命の創造などできるわけがなかろう?」

勇者「いやだから! 魔法使いがこいつを馬鹿でかい木箱に入れて、俺に送りつけてきたんだろ?」

受付「そうですよ、私も王立研究所から勇者様宛にということでお渡ししたんですから」

魔法使い「……状況が上手く掴めんな。どういうことじゃ? 少なくともわしが勇者に送りつけるために木箱に入れた魔導人形とこの幼女とでは明らかに別物じゃぞ?」

勇者「でも幼女は木箱から出てきて、お前が吹き込んだ録音メッセージを喋ったぞ」

魔法使い「………確かに、勇者は断ると思ってあらかじめ魔導人形に録音音声を搭載していたが……」

幼女「………」オロオロ

受付「これは……一体、どういうことなんでしょうか……?」

勇者「……幼女……」

幼女「ユーシャ……」


―――――王都 元老院―――――


王弟「……英霊祭の準備はどうなっている?」

貴族長「はい、とどこうりなく進んでおります」

王弟「ふん、忌々しい……王はなにを考えているのだ?」

貴族長「陛下は平穏な世を望むお方、今回の英霊祭をきっかけとして各国の友好化を進めていくつもりなのでしょう」

王弟「平穏な世か……そのような弱腰な態度などとっていれば他の国が調子づくということがなぜわからん!」

軍人貴族「その通り! 魔王を討伐した今こそ、我々が先陣を切り、領土拡大に着手すべきなのです!」

王弟「そうだ、我が国がとるべき道は平穏な世ではなく、国を強く、より多くの領土を支配することにある! 我々が所有する最大戦力を使えば、それも可能だと言うのに……」

商人貴族「確かに魔王を倒した勇者の力、それを使えば世界を支配することも難しくないですねぇ」


王弟「それをあの愚兄はなにひとつ分かっていないのだ! 世界を統べる力を持っていながらそれを用いようとしない! それは罪なことだとは思わないのか!?」

軍人貴族「そうですな、我が騎士団に所属する剣士も王の勅命で各地の復興作業とやらに駆り出されている状態で……まったく、陛下の御心が自分にはわかりかねますな!」

貴族長「王立研究所の魔法使いに対しても『自由に研究させるように』とのことでした」

商人貴族「『あとのひとり』は姿をくらませていますしねぇ」

王弟「ぬるい、ぬるすぎる! それにもう1つ……」

商人貴族「『聖女』……ですか」


王弟「そう! その『聖女』とやらだ!」

軍人貴族「なんです? その『聖女』というのは?」

貴族長「……勇者のパーティーの1人だ。魔王討伐に一役買ったとか」

商人貴族「曰く『魔王の脅威からその身を犠牲にして救った救世主』 曰く『神が遣わした使者』 ……曰く『聖女』 ……下々の間でも大層な人気だそうですよ」

王弟「その聖女様とやらを国王は我々が崇める英霊に加えようとしているのだ!」

軍人貴族「そ、それがなにか問題でも……?」

貴族長「………聖女は元々奴隷だった女だ」

軍人貴族「ど、奴隷……!?」

王弟「英霊に選ばれる人間は代々王族出身か、貴族出身者と決められている。それをあの男、言うに事欠いて身分の卑しい奴隷出身の女を崇めよと我々に言っておるのだぞ!」

貴族長「………殿下はそれが不満であると……?」

王弟「当然であろう! ………あの王は汚らわしい身分の女を英霊に加えることで民の機嫌をとるつもりだ。なるほど、それで民は奴を慕うだろう。だがそれだけでは国は強くはならん!」

商人貴族「確かに、これをきっかけに平民どもが勘違いでもしたら大変ですねぇ。ああいう馬鹿達は放っておくと面倒なことになるに違いありません」


王弟「私は何度も王に進言した。だが、王は私の話に聞く耳を持たない!」

軍人貴族「それは嘆かわしい! 奴隷身分の者が英霊に崇められるなど世も末ですぞ!」

王弟「私はこの事態を重く見ている。何としてでもあの王を止める必要があると考える!」

軍人貴族「殿下! この軍人貴族めにお任せ下さい! 自分がこの事態、見事解決してみせましょう!」

王弟「おお、やってくれるか軍人貴族!」

軍人貴族「この身に代えましても!」

貴族長「………」

商人貴族「貴族長殿、どういたしました?」

貴族長「いや……」

王弟「どうした貴族長? まさか反対とでも申すのか?」

貴族長「いえ、滅相もございません……」

王弟「英霊祭まであと1ヶ月。それまでにこの事態収集に向けて動いて欲しい。頼んだぞ、軍人貴族」

軍人貴族「ははっ!」ザッ

王弟「聖女だかなんだか知らないが、私は奴隷を英霊に迎えることなど認めん! 断じて認めるわけにはいかないのだ!」ダンッ

貴族長「………」


―――――――――

魔法使い「………ふむぅ……ほむぅ……」ジロジロ

幼女「ユ、ユーシャ……?」オロオロ

勇者「大丈夫だ、じっとしてろ幼女」

受付「しかしどういうことなんでしょうかねぇ?」

勇者「あの木箱は確かに王立研究所のものだったんですよね?」

受付「はい、間違いありません」

魔法使い「うむ」

勇者「なにかわかったのか? 魔法使い」

魔法使い「信じられんことじゃが、どうやら幼女はわしが作った魔法人形ではあるらしい」

受付「あるらしいってどういうことですか?」


魔法使い「素体、つまりベースは確かに王立研究所でわしが組み立てたものに間違いない。ただの……」

勇者「ただ、なんなんだ?」

魔法使い「中身は全くの別物じゃ」

勇者「別物って……」

魔法使い「そもそもこの魔導人形は復興作業を手伝うためにわしが作ったんじゃ。魔王に汚染された大地でも変わらず活動でき、かつ人間とコミュニケーションをとり、助けを求める人々の役にたつことを目的としていた。だから限りなく人間に近いように設計した。しかし、このスペックは想定外じゃ」

受付「魔法使い様の予想をはるかに超えているということですか?」

魔法使い「予想どころの騒ぎではない。ありえないとはっきり言えるレベルじゃ。元はわしの作った魔導人形じゃがこれは最早『別のなにか』じゃ」

勇者「じゃ、じゃああれは? 火竜の片翼をもぎ取った龍のブレスもお前が搭載したわけじゃないのか?」

魔法使い「勇者、そんな威力の兵器。この子に搭載するメリットがどこにある?」

勇者「それは、そうだけど……」


魔法使い「それにこの子の髪……勇者、この子は最初から金の髪をしておったのか?」

勇者「あ、ああそうだ」

魔法使い「わしが送り出したときはこの子の髪は茶色じゃった」

受付「つ、つまり! 幼女ちゃんは元は魔法使い様が作ったものですけど誰かが手を加えたということですか!?」

魔法使い「そういうことになるの」

勇者「一体誰が?」

魔法使い「それはわしにもわからん。勇者、この子は謎が多すぎる。そしてなにより強大な力をもっておる。一度この子を王立研究所で詳しく調べてみたいんじゃが……いいかの?」

勇者「ああ、別にいいけど……」

幼女「ユーシャ……」ヒシッ


受付「まぁ、幼女ちゃんたら、勇者様と離れたくないんですねぇ」ウンウン

勇者「………俺も一緒に行ってもいいか? こいつ、ずっと俺から離れようとしないんだ」

魔法使い「そっちのほうが良さそうじゃの」

受付「えー! 幼女ちゃん行っちゃうんですかー!」

勇者「忙しいんじゃないんですか?」

受付「忙しいからこそですよ! 幼女ちゃんがいなくなっちゃうなんて、私は明日からどうやって生きればいいんですか!?」

勇者「知らねぇよ」

魔法使い「そんなに時間はかからんわい」

受付「代わりに魔法使い様を愛でるとしましょう」ダキッ

魔法使い「うひゃあ!! や、やめてくだ……やめるんじゃ!」

受付「ああぁん! キャラ作りに必死な魔法使い様、かわいいですよう!!」スリスリスリスリ


魔法使い「ゆ、勇者! 早く助けてくれい!!」

勇者「………あの、もういいんじゃないですか?」

受付「邪魔するなら今月の支給金は無しです」

勇者「すまん、魔法使い。お前の力になれない」

魔法使い「この! 裏切り者ぉぉぉぉ!!!」

受付「うへへへへへへへ………」スリスリスリスリ

幼女「………ユーシャ……」ドンビキ

んぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!

受付「……ふぅ」

勇者「おい」


魔法使い「ひ、酷い目に……文章では書き表せないほど酷い目に……」

勇者「すまん。俺のニート生活のためだ」

魔法使い「……と、とにかく一度王都の研究所に行くとするかの、勇者」スッ

勇者「ん? なんだその手は?」

魔法使い「なにって……転移魔法で移動するんじゃが? 勇者は魔法を使えないんじゃろ?」

勇者「……さっき失敗してたあれで?」

魔法使い「さ、さっきのはたまたまで……」アセアセ

勇者「嫌だよ、俺まだ死にたくないし」

魔法使い「こ、今度は大丈夫じゃ!」

勇者「幼女、これから王都までハイキングだ!」

幼女「……!!!」ピョンピョン

受付「結構な距離ありますよ!?」


魔法使い「ゆ、勇者……? わしだって一応魔王討伐パーティーの魔法使いなんじゃよ?」

勇者「いいか、幼女。このお姉ちゃんはな、一回俺を城のてっぺんまで飛ばしたことがあるんだぞ」

幼女「………!」オオォ

受付「ああ、ありましたね、そんな事件。侵入者が出たってことで王宮が一時騒然となったとか……あの事件の犯人勇者様だったんですか」

勇者「あ、あの事件知ってたんですか? もう衛兵が集まってきて殺されそうになるわ、王様が出てきて『え? こんなので魔王倒せるの?』みたいな顔するわで大変だったんですよ!」

受付「ええ、新聞でも一面飾ってましたしね『勇者、王宮に不法侵入!』って」

魔法使い「あ、あれはちょっと手が滑ったからで……」

勇者「あの事件以降、俺たちは魔法使いに転移魔法の使用を禁止したんですよ」

受付「ええ!?」


魔法使い「……うぅ……大丈夫だもん! あのころの私とは違うもん! さっきはちょっと失敗しちゃったけど次は絶対成功するもん!」

勇者「魔法使い、キャラが崩壊してるぞ」

魔法使い「大丈夫だもん! できるもん! 私は完璧な魔法使いなんだもん!」

勇者「わかった、わかったって。魔法使い、お前に任せるよ」

魔法使い「むぅ、わかればいいのじゃ、わかれば」フンス

受付「……勇者様の周りってかわいい子ばっかりですね」

勇者「そうですか?」

受付「あれですか、主人公補正ってやつですか」

勇者「幼女連れたニートが主人公なんて、どんな話ですか」ハァ


受付「……それにしても転移魔法無しで旅を続けていたなんて、大変じゃなかったんですか?」

勇者「まぁ、慣れちゃえば案外平気です」

魔法使い「それに最終的に転移魔法ならあの人が代わりに……」

受付「あの人?」

勇者「ん?」

魔法使い「あ……いや、なんでもない、忘れてくれ」


勇者「? それじゃ、ちょっと行ってきます」

受付「………勇者様」

勇者「ん? なんですか?」

受付「私も王都へ連れて行ってくださいませんか?」

勇者「………えっと……なぜ?」

受付「たまには私も王都に行きたいんですよ、有給休暇も溜まってることですし!」

勇者「いや、あの、いいんですか? あの地獄絵図を放っておいて……」

「おい、こいつ息してねぇぞ!」「救護班! 救護班!!」「仕事が終わらないーい♪ みんな死んでゆくー♪」ウフフ 「今日も残業よろしくねー」「殺して……もういっそ殺してぇ……」

受付「大丈夫です! 死ぬって言って死んだ人は誰もいませんので」フフ

勇者「……大丈夫かな、この人」


魔法使い「では行くぞい、勇者」

勇者「や、やさしくしてね……?」

受付「明かりは消して……?」

魔法使い「な/// 馬鹿言ってないでさっさとせんか!」

受付「あ! ちょっと待ってください! 書置きだけ書いちゃいますので!」サラサラ

勇者「お前、本当に慎重にやれよ? こっちは幼女もいるんだからな!」

受付「これでよし! お待たせしました!」

魔法使い「……自由な奴らじゃの…… では行くぞ、皆の者、わしの手をとるのじゃ」


勇者「ほい」

幼女「ユーシャ!」ダキッ

受付「あ、勇者様ズルい! 私も幼女ちゃんにくっつきたいです!」ダキッ

勇者「おい! お前ら、あんまりくっつくんじゃねぇよ!!」

幼女「……ユーシャ……」クルシイ

魔法使い「ええい! 静かにせんか! ……では行くぞ! 転移魔法!! ………あ」

勇者「あって言った!? ねぇ、今あって言……」シュン


――――――――――


同僚「受付ー! あんたいい加減、勇者様の相手してないで仕事手伝いなさい! こっちは既に5人ほど過労でぶっ倒れてるんだからーって………ん? 書置き……?」

『同僚さんへ これからちょっと王都の方へ行ってきます。英霊祭の準備で忙しいとは思いますが私も有給を消化しなければいけないので……(笑) 辛いと思いますが有給を使うのも公務員の権利ですのでどうかご理解ください! それでは王都を楽しんできますね!

 追伸  お土産はちゃんと買ってきますので楽しみにしててくださいね!』


同僚「………あんの馬鹿女……!!!」

課長「ん? どうしたんだい同僚くん? おや、これは……」

同僚「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

課長「ふふふ。相変わらず受付くんは自由だねぇ。それじゃあ同僚くん、受付くんが抜けた穴を私たちで埋めようじゃないか!」アハハ

同僚「課長! なに笑ってるんですか!」

課長「それじゃ、私は定時だから。お疲れ様ー」ヒラヒラ

同僚「あ、課長! ちょっと!」

同僚「受付の奴……! 帰ってきたら泣かす!」

なんてことだ……書き溜めがあっという間になくなっただと!?


というわけで今日の投稿はここまでです
明日も同じ時間帯に投下していきたいと思います

前作をHTML化したいんですけど、依頼版ってどこにあるんですかね? リンクをクリックしても飛べない……

あ、依頼版×→依頼板でした

すみません

おつかれさま!

これじゃダメだった?
■ HTML化依頼スレッド Part26 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420044155/)

>>45 ありがとうございました、お陰で依頼することができました



……前作がいつも見ているSSまとめサイトでまとめられてたよ……初めて書いたSSで嬉しいやらなんやらで内心パニックだよ


書かれてたコメントも同反応したらいいのか、パニックだよ……



というわけで今日も投下していきます。よろしくお願いします。


―――――宮廷―――――


山賊A「でやぁ!!」ブン

メイド「甘いですわ」バシッ

山賊B「はぁ!!」ヒュン

メイド「残念」ヒョイ

山賊A「こんのぉぉぉぉ!!!」

メイド「なんですか、そのやる気のない攻撃は? もっと私を殺す気でやりなさい!」

山賊B「言われなくても!」ブン

メイド「狙いが単純ですよ」ガン

山賊B「ぐわぁぁぁぁぁぁあ!!」

山賊A「これならどうだ!」

メイド「振りが大きいです」ガシッ

山賊A「うぉぉぉぉぉおおおお!!」

メイド「熱くなるのはいいことですが、隙だらけですよ?」ガシィィン!

山賊A「よし、今だ! 兄弟!」

山賊B「上出来だ……くらえ! 今までの恨み!!!」

メイド「………!!!」

バシィィィン!!!


山賊A「……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ…」

山賊B「……はぁ……はぁ……はぁ…」

メイド「………ふむ。まぁよしとしましょうか」

山賊A「し、死ぬ……本当に死んでしまう……」ゼェゼェ

メイド「あら、死ぬと言って本当に死んだ人間はここにはいませんわ」フフ

山賊B「本当にいい性格してるよな…… あんたって奴は!」ゼェゼェ

メイド「文句は私を倒せるようになってから言ってくださいね?」

山賊A「1ヶ月間、ぶっ続けで戦闘訓練して……」

山賊B「2人がかりでやっと一発当てただけかよ……しかも俺の渾身の一撃をくらっても平然と立ってやがる……化物か、あの女」ヒュン

メイド「そこ、乙女に向かって化物なんて……死にたいんですか?」ニコッ

山賊B「スミマセンデシタ……」


メイド「まぁ、これで我が主を『最低限』守れるだけの力をつけたということにしておきましょう……誰か! この者たちに例の物を」

ザッザッザッ

山賊A「あ、俺たちを拉致した黒服野郎ども!」

山賊B「例の物?」

メイド「これからは宮廷で行動することも多くなります。あなた方にも『それなりの格好』をしてもらいます」

山賊B「これは……鎧か?」

メイド「王族の親衛隊だけに着用を許可された特別製の鎧です。あなた方はこれからこれを着て全ての業務にあたっていただきます」

山賊A「へぇ………カッコイイじゃん!」


メイド「………あなたたち」

山賊B「なんだ?」

山賊A「なんだよ、急に改まって」

メイド「王女の名において、お二人を正式に姫様の護衛に任命します」

山賊A「へへ、やったな、兄弟!」

山賊B「騒ぐなよ……」

メイド「あなた方はこれから山賊の名を捨て、それぞれ『紅騎士』『蒼騎士』と名乗りなさい!」

山賊A→紅騎士「おお! 山賊の俺がいきなり騎士様だってよ!」

山賊B→蒼騎士「落ち着けって……ところでメイド」

メイド「蒼騎士、上司である私のことは愛を込めて『メイド様(ハート)』と呼びなさい」

蒼騎士「ワカリマシタ、メイドサマ」

メイド「よろしい」

蒼騎士「1ヶ月ここで寝泊りしてるが、俺たちは一度もあんたの主である王女様とやらに会ったことがないんだが」

紅騎士「そういえばそうだったな……あれ? そういえばこの国って元々王女様なんていたっけ?」

メイド「自分の主になる人のことをなにひとつ知らないんですのね、疑問に思わなかったんですの?」ハァ


蒼騎士「あんたが考える暇すら与えないくらいしごいたからだろ……」

メイド「いいでしょう、説明してさしあげます。我が国の姫様は代々結婚するまで一部の人間を除いて素顔を晒すことを禁止されているのです」

紅騎士「禁止!? え、じゃあ誰も王女の素顔知らないの?」

メイド「ですからこの宮廷内でも姫様の素顔を知るのは私を含めてひと握りの人間だけ、あなた方のようなぽっと出の元山賊共が姫様のご尊顔を拝謁することはできません」

蒼騎士「ということは、俺たちはその素顔も知らねぇ誰かを守らなきゃならねぇってことなのか?」

メイド「安心なさい。姫様は普段、仮面を着けて生活しております。それにあなた方の力が必要となる場面は英霊祭のような姫様が大衆に姿をお見せする時だけです」


紅騎士「それ以外の時は?」

メイド「もちろん私が姫様の身の回りのありとあらゆるお世話をいたします」

蒼騎士「ま、まぁあんたなら1人でも一個師団くらい平気で相手にできそうだしな」

メイド「メイドとして当然の嗜みですから」フフッ

蒼騎士「紅、どう思う?」

紅騎士「俺が思うに姫様は素顔を晒せないほどブスなんじゃないか」

メイド「………」ピクッ

蒼騎士「でも、王妃様は確か綺麗だったはずだぞ?」

紅騎士「ああ、あの毎日庭に水やりしようとしてバケツごとひっくり返るお茶目な姉ちゃんか……」

蒼騎士「え? あの人そんなことしてたのか!?」

紅騎士「でも娘さんがそのまま可愛いかというと、世の中そんなに上手くはできてないんだよなぁ」

蒼騎士「で、親が綺麗で娘がブスだから仮面で隠してる……と」

メイド「………」ピクピク


紅騎士「やっぱり娘さんもコンプレックスなんでしょうねぇ、お母さんが美人だと」

蒼騎士「そうですねぇ、可哀想ですけど母親があんなに美人だと顔も隠したくなりますよねぇ……」

メイド「……ブチィ!!」

紅騎士「あらあら蒼騎士さん、今不穏な音が聞こえましたけど」

蒼騎士「あらあら紅騎士さん、ちょっと嫌な予感がするんですけど」

紅騎士「あ、あああ蒼騎士さん、僕今日で死ぬような気がします」

蒼騎士「俺もちょっと言いすぎた気がす……グハァァァァァァ!!!」ヒューン ズドォォォォン

紅騎士「兄弟ぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!」


メイド「あらあら紅騎士さん」ガシッ

紅騎士「あ、あ、あらあらメイド様。で、できればその手を離してくれませんか?」ガタガタ

メイド「言ってませんでしたけど私、ナイフ投げより徒手空拳の方が得意ですの」

紅騎士「そ、そうなんですかぁ……と、ところでそのお得意の徒手空拳とやらで僕らはどうなっちゃうんでしょう?」ガタガタ

メイド「そんな大したことありませんよ、ただちょっと死んでもらいます」ニコッ

紅騎士「……あの、許してください……」

メイド「ダメです☆」


メイド「紅騎士さん……私、言いましたよね? 姫様を侮辱したら殺しますと……私言いましたよね? …・・・・それなのに言うに事欠いて! 姫様をブサイクなどと……!! 私の姫様はとても可愛くて美しくてそれでいて笑うと花のように可憐で肌なんてスベスベでもうとにかくたまらなくて………」デヘヘ

紅騎士「今私のって言った! 私のって!!!」

メイド「うふふ………うふふふふ……うふふふふ」

紅騎士「あ、あの! このオチ、そんなに何回もやるもんじゃ……」

メイド「うふふふふふふ」

んぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!

蒼騎士(すまん、紅騎士。俺はこのまま死んだふりさせてもらうぞ……)

メイド「そんな拙い死んだふりで私の目を誤魔化せるとお思いですか?」ユラァ

蒼騎士(あ、俺死んだ)

ドガァァァァァァァァン!!!



ちょっと休憩します

再開は21時頃です

ただいま戻りました

再開していきます

―――――宮廷 謁見室―――――

王妃「あら? あの音はなにかしら?」

王「庭でメイドが新兵の特訓をしているとのことだからきっとその音だろう」

王妃「まぁ! メイドちゃんはいつも元気ですね!」

王「う、うむ……あの爆発音を聞いてそう判断するのはそなたくらいだな……」

兵士「陛下! 第一騎士団長の剣士様が復興作業から帰還されました!」

王「うむ、通してくれ」

ザッザッザッ

剣士「陛下、第一騎士団帰還しました」ザッ


王「面を上げてくれ剣士よ。そなたにそのような態度をとられると恐縮してしまう」

剣士「いえ、ですが私は陛下とは主従関係であり……」

王「私がいいと言うのだ、そなた達とは王としてではなく、友人として接していたいのだ」

剣士「しかし……」

王妃「剣士さん、陛下は一度言ったら効かないってことご存知でしょう?」

剣士「で、では……」スクッ

王「復興作業からの帰還、ご苦労であった。あちらの様子はどうなっている?」

剣士「ええ、魔王討伐から約2年経ちましたが魔王に汚染された土地は以前、一般人が活動するには難しいと思われます。回復するにはまだ時間がかかると思われます」

王「………そうか、魔王は倒れたが課題は山積みであるな」

剣士「そうですね……」


王妃「剣士さん、お体の方はお変りありませんか?」

剣士「え、ええ。私は大丈夫です。それに配下の騎士達は久々の故郷で喜んでいます」

王妃「それはよかった」フフ

王「これからもこのような遠征は度々あると思う。我国にはまだまだそなたの力が必要だ。頼りにしているぞ、剣士よ」

剣士「はい、騎士団一同、陛下と国のために忠義を尽くしていく所存です」

王「よろしく頼む」

剣士「はっ! ………ところで陛下」

王「ん? なにかな?」


剣士「魔王討伐記念式典のあと、勇者には会われましたか?」

王「いいや、会ってないが勇者の活躍はこちらの耳に届いておる。なんでも西の洞窟に封印されていた龍族から村を守ったとか……さすがは勇者。使命を終えてもその志は変わることがないと見える」フフフ

剣士「勇者が? 龍を倒した? それは真ですか?」

王「ああ。正確には火竜の片翼をもぎ取り、追い払ったと報告が来ておる……剣士、いかがした?」

王妃「なにか、よくないことでも?」

剣士「……いえ、そうですか、あいつも元気そうでなによりです」

王「英霊祭も控えておる。どうだ、これを機会に久々にかつての仲間と顔をあわせては?」

剣士「……そうですね、そうしたいと思います」

王「……剣士よ。少しよいか?」

剣士「はい」

王「………英霊祭のことに関して1つ、君たちに謝っておかなければならないことがある」サッ


剣士「そんな、陛下が我らに頭を下げるようなことなどありましょうか」

王「いいや、下げさせてくれ。『聖女』の件だ」

剣士「………!」

王「君たちになんの相談もなく、彼女を英霊に加えることにしてしまった。君たちのことを思えば、特に彼のことを考えれば、そのような軽率なことをすべきではないのかもしれない、しかし!」

王「魔王との戦いで我々は多くのモノを失った。民衆は魔王討伐に表面上は喜んでいるが、その心にはまだ大きく暗い影が存在している。民には支える力が必要だ。これからを生きていくために。希望が必要だった!だから私は彼女を『聖女』として祭り上げた!」

王「………君たちの目には私が彼女を政治的プロパガンダとして利用したように見えているだろう。私は民の顔を上げさせるために、希望を見せるために私は彼女の死を都合よく利用したことに間違いない。友を失い悲しみに暮れる君たちにとって私はとても残虐なことをしている。私を恨んでくれても構わない。ただ、この場で謝罪だけはさせてくれ」ザッ

王妃「陛下……剣士、私の口からも謝らせてください。彼女はとてもいい人でした。本当は、英霊になんてなるべきではなく、あなた方とここで肩を並べて私たちに会いに来て欲しかった」

剣士「………顔を上げてください、陛下。あれからもう2年が経つんです。私なら大丈夫です。それに、彼女は私たちの思い出で収まっているような人じゃありませんよ、みんなの希望になるくらい、そんな大きい存在の方が彼女らしい」

王「……勇者も、そう思ってくれるだろうか?」

剣士「もちろんです、あいつはそんなことを気にするような奴じゃありませんよ」フフ





―――――――――


従者「いやー、僕びっくりしちゃいましたよー。まさか陛下が団長に頭下げるなんて」

剣士「私も驚いたよ」

従者「でも聖女様って巷じゃすごい人気ですよ! なんでも今度の英霊祭では聖女様の像が立つ予定ですし!」

剣士「そこまでする必要があるのか?」

従者「とにかくすごい人気なんですよ! もうあれは一種の宗教ですね」

剣士「……死して人々の希望か」

従者「あんまり嬉しそうじゃないですね?」

剣士「いや、嬉しいさ。単純に仲間の出世はな。ただ……」

従者「ただ?」

剣士「その場に彼女がいないのがとても歯がゆいよ」

従者「………すみません、団長のお気持ちも知らず、勝手にはしゃいでしまいまして……」


剣士「気にするな、少し感傷的になっているだけだ」

従者「……陛下、勇者様のこと気にしてましたね」

剣士「あいつなら大丈夫だ、全てが終わったあと『税金暮らしでウハウハだぜ!』って喜んでいたからな」

従者「……う、羨ましい……」

剣士「イラっときたんで殴っておいたが」

従者「……アハハ」

剣士「昔からそういう奴なんだよ、あいつは。だからそんなに気にしなくていいんだ」

従者「そうなんですかー………あ、団長、もう公務はこれで終わりですよね? 僕、行きたいところがあるんですけど!」


剣士「ああ、英霊祭が始まるまでの間休暇を頂いた。もう自由にしていいぞ。団員にも伝えてある」

従者「聖女様の像の建設予定地を是非見たくてですね……団長! 僕、行ってきます!!」タッタッタッタ

剣士「気をつけるんだぞ!」

剣士「………『勇者はそんなこと気にしない』……か。違うな、『気にすることができない』んだよ。あいつは」ギリッ

剣士「………英霊祭か、あまり気分のいいものではないな……」



―――――王立研究所―――――

勇者「いやー大変でしたね、受付さん」

受付「本当に大変でしたね、勇者さん」

勇者「まさか、転移魔法が失敗して魔法使いが使用している研究室ではなく……」

受付「その真下に移動しちゃうなんて!」

勇者「運良く空洞部分に移動できましたが!」

受付「あともうちょっとで『*いしのなかにいる*』状態でしたね!」

勇者「本当に運がよかったです!」


受付「ただ、そこから脱出するために、幼女ちゃんのブレスで全部吹っ飛ばしちゃいましたね!」

勇者「そうですね! 王立研究所の方々には多大なご迷惑をおかけしまして大変申し訳ありませんでした!」

魔法使い「うるさいわ!!」ガタッ

勇者「これはこれは主犯格、どの面下げて俺たちの前に現れやがった?」ガルル

受付「こっちは危うく死にかけましたよ?」ガルル

魔法使い「……うぅぅぅ!!」グスッ

助手「まぁまぁ、お二人共。幸い誰も怪我しなかったからいいじゃないですか、研究資料も無事ですし。あんまりウチのマスコットをいじめないであげてください」

魔法使い「マスコットじゃなくて所長じゃ!」


助手「必死で強がっちゃってるけど、内心みんなに迷惑かけたこと申し訳ないと思ってしょんぼりしちゃってるんですよ? 隠しきれてませんけど……可愛くないですか!?」ナデナデ

受付「可愛いですね!」ナデナデ

魔法使い「うにゅ……撫でるな!」

勇者「それで、どうだったんだ?」

助手「そうですね、判明したことといえば1つでしょうか」

勇者「なにかわかったのか?」

助手「ええ、『なにもわからない』ってことが判明しました」アハハ

勇者「おい」


助手「正直、私たちも驚いているんですよ。自慢じゃないですけど科学と魔法を融合させる技術力は間違いなく我が国が一番です。その技術力をもってしても幼女ちゃんのスペックを理論的に説明することができないんです」

勇者「理論的に説明できないって?」

助手「今幼女ちゃんの中には膨大な量の魔力が溜め込まれています、総量にして魔道士およそ1万人分程度です」

受付「1万人!?」

魔法使い「もちろん、今の技術では1つの素体にそれだけの量の魔力を溜め込むことは不可能じゃ」

助手「それに勇者さんから聞いた火竜の片翼をもぎ取ったブレス……ですか、ここに来るときにも使用したみたいですが……」チラッ

魔法使い「……すまん」グスッ


助手「あの破壊力の魔法は今この世界には存在しませんから、火竜が話したように龍族のブレスで間違いないでしょう。ですがそれだと説明がつかない」

魔法使い「文献に残っている龍が最後に我々の前に現れた記録は今から250年前のことじゃ。当時の龍のブレスを見たものはいないし、仮に伝聞で伝えたとしても人間の魔力の量では再現することは不可能」

助手「つまり、誰かが幼女ちゃんに龍族のブレスを教えることは不可能なんですよ」

勇者「龍族が教えたんじゃないか? 実はまだどこかに生きていたとか」

魔法使い「阿呆。そんなデカイ化物が現れたら嫌でもニュースになるわ」

勇者「じゃ、じゃあ、幼女はなんであんなことができるんだよ?」

助手「だから言ったじゃないですか、『なにもわからない』ってことが判明したって」


魔法使い「とにかくブラックボックスが多すぎるんじゃ。勇者、幼女のことでなにか他に変わったことはなかったかのう?」

勇者「えっと……『金色になった』」

助手「は!?」

勇者「あと……『急に目の色が青色になった』」

魔法使い「……ますますわけがわからなくなってきたの……」

助手「そうですね……勇者さん」

勇者「はい?」

助手「研究員としての立場として王立研究所所長に進言します。直ちにあの魔導人形を凍結するべきです」


魔法使い「助手! なにを言う?」

受付「そうですよ! なんてこと言うんですか!」

助手「あんな破壊力を持つ兵器をそのまま野放ししておくにはあまりにも危険です。それにその力を求める人がいないわけではないでしょう? しかも我々が知らない、もっと強大な力がまだあるのかもしれない」

魔法使い「し、しかし!」

勇者「………」

助手「きっと、魔導人形をめぐって争いが起きます。……悲しいことですが魔王を討伐したことで手を取り合っていた国たちが今度は自分たちの領土拡大のために動き出してきていることも事実です。そうなる前にこの魔導人形を封印するべきではないですか?」

受付「そ、そんな……!」

助手「それにあの魔導人形が暴走しないとも限らないでしょう? あれは意思を持っています。その力が我々に向いた時、あなたたちにそれを止めることができますか?」

魔法使い「そ、それは……」

助手「どうですか? 勇者さん。あなたはどう思いますか?」


勇者「………あいつ、花をくれたんだ」

受付「勇者様……」

勇者「折り紙でできた花なんだけどさ、これがよくできてるんだよ。きっとあの時も俺にその花を見せたかったんだろうなぁ……そのために小さい体を火竜の前に差し出して、笑ってあいつは俺のことを守ってくれた」

勇者「………俺にとってはそれだけで十分だ。あいつと一緒にいる理由はそれだけで十分なんだよ」

助手「もしも、魔導人形が暴走したら? もしも魔導人形がその力を利用しようとする人間に奪われようとしたら?」

勇者「今度は俺があいつを守る番だ」ニッ

助手「覚悟はおありなんですね?」

勇者「………」コクッ


助手「ですが、私も研究者という立場に身を置く者。危険を承知で放っておくわけにはいきません。魔導人形は凍結すべきです」

魔法使い「お主! まだそのようなことを!」

助手「ただ! 私の個人的な気持ちを率直に言いますと……」

受付「言いますと……?


助手「やっぱり幼女ちゃん、可愛いんですよねぇ!」デレッ

ズコッ!

魔法使い「お、お主も……素直じゃないのぅ」イテテ

受付「そうですよ! 久々のシリアス展開で私、どんな顔していいかわからなくなっちゃいましたよ!」

助手「ごめん、ごめん。一応言っておかなきゃいけないと思ってさ」アハハ

勇者「心臓に悪いですよ、まったく……」ハァ

助手「でもでも、勇者さん。幼女ちゃんに人前でブレスを吐かせないように気をつけてくださいね、なにが起こるかわからないから」

勇者「わかりました。気をつけます」


受付「あれ? そういえば幼女ちゃんはどこですか?」

助手「え? いませんか? どこに行ったんですかね?」

勇者「幼女―! どこだー!?」オーイ

魔法使い「まだ遠くに行ってはいないはずじゃ、助手。発信機の信号を解析するのじゃ」

助手「わかりました」

勇者「あいつ、どこ行ったんだ?」




幼女「………」ジー

猫「にゃぁ」

幼女「………!!」ナデナデシタイ……

猫「……にゃ?」

幼女「………」ジー

猫「ふ、ふにゃ?」

幼女「………?」ナデテイイ?

猫「ふにゃー」

幼女「………」イクヨ?

猫「にゃー」

幼女「………」ブン!

ベシーン!!

猫「ふ、ふにゃぁぁぁあああ!!!」ダダダ

幼女「………」アア……

剣士「……どうしたんだ?」

幼女「……?」パァ

剣士「ん? なんだ?」

幼女「ケンシ!!!」ダキッ

剣士「うぉ! こら、やめないか!」ブンブン

幼女「ケーンーシー!!!」イヤイヤ

剣士「クッ、困ったな、どこの子だ?」

幼女「んふー」

剣士「喋れないのか? 君は? 誰か大人の人は近くにいないのかい?」

幼女「ケンシ!」ビシッ

剣士「いや、私じゃなくてだね……」

幼女「………!!」ピクッ

剣士「しかし、どうしたものか……従者に応援を頼むべきか、いやせっかくの休暇の邪魔をしたくない……」

幼女「!!!」ダダダダダッ

剣士「しかし、私一人ではこの事態を解決するのは難しいし……うーんどうしたものか……ってあれ?」

シーン

剣士「消えた……?」


―――――路地裏―――――

魔法使い「発信機の反応から察するにここら辺のはずじゃが……」

勇者「こんなところでなにしてるんだ? 幼女の奴は……」ハァ

ダダダダダダダダダ!!

幼女「マホウツカイ!!!」ダキッ

魔法使い「ぬぅおう!?」バターン

幼女「!!!」キャッキャ

勇者「こら、幼女! 急にいなくなったら心配するだろ!」

幼女「……ユーシャ…」ゴメンナサイ

勇者「わかればよろしい。心配したんだぞ?」ナデナデ

幼女「ユーシャ!」パァ


魔法使い「そんな、親子の団欒風景とかいいから、さっさとどいてくれんかのう……?」

幼女「マホウツカイ!!」ダキッ

魔法使い「ぬぅお! ええい! 離れんか!」

受付「勇者様! 幼女ちゃん、今『マホウツカイ』って……」

勇者「他の言葉も喋れるようになったのか? 幼女?」

幼女「ユーシャ! マホウツカイ! ケンシ!」ビシッ

勇者「……なんで剣士?」

魔法使い「そんなことはどうでもいいのじゃ! 早くどいてくれい!」ジタバタ


受付「なぜ……!? なぜ私の名前は呼んでくれないの……? こんなに幼女ちゃんのことを愛しているのに!!」プルプルプル

勇者「嫌われているからじゃないですか? 単純に」

受付「せい!!」パチコーン

勇者「痛い!!」

魔法使い「……ふぅ、やっと起き上がれたわい。ところで勇者よ、言い忘れておったがの幼女がしゃべれないことについてなんじゃが……」

勇者「そうなんだよ、魔法使い。こいつ、あれだけ言葉を教えてるのに中々喋ってくれないんだよ。基本的に『ユーシャ』と『チャーハン』の2単語のみ。どうなってるんだ?」


魔法使い「これも誰かの改造の弊害での。膨大な魔力が魔導人形に搭載されていた言語学習デヴァイスを圧迫しているようでな、高性能になったが故に既存の機能が働きにくくなっているみたいじゃな」

勇者「ということはずっとこのままなのか?」

魔法使い「いやいや、働きにくくなっているだけじゃっからの。直に言葉も覚えるじゃろうて、それにこの子は頭がいいしの」

受付「なぜ!? なぜなの幼女ちゃん!? 私の愛が足りないからなの!?」ギンッ

勇者「愛というか、愛し方に問題があると思うんですけど」

受付「黙れクソニート!」

勇者「あ、女性がしちゃいけない顔してる」


魔法使い「とにかく! 幼女については未だにわからないことが多すぎる。勇者、とりあえず引き続き幼女のことを頼む。わしは幼女のことをもう少し調べたい。しばらく王都に滞在してはもらえぬか? もちろん宿はこちらで用意する」

勇者「ああ、別に俺は構わないけど……それでいいか? 幼女?」

幼女「……!!」ピョンピョン

勇者「いいみたいだ」

魔法使い「来月には英霊祭も開催される。それまで王都でゆっくりするがいい」

勇者「なにからなにまで悪いな、魔法使い」

受付「税金生活の上に宿まで用意してもらえるなんて、どれだけ勝ち組なんですか……」ハァ

勇者「繁忙期に有給取るどっかの誰かさんよりかはマシだと思いますけど」


魔法使い「さて、今日のところは悪いが研究所で寝泊りしてらおうかの」

受付「あ! 私、同僚さんにお土産買わないと! 忘れたらぜったい怒りますよね?」

勇者「いや、どっちにしろ怒ってると思う」

受付「先行っててもらえますか? 今日中には戻って来れると思いますので!」

魔法使い「ふむ、気をつけるのじゃぞ? 最近は物騒じゃからの」

勇者「大丈夫ですよ、こんな洗濯板襲うほど王都の人は飢えて……グホゥぅぅぅううう!!!」ヒューン ドシーン

幼女「ユーシャ!」

受付「もー☆ 勇者様ったら、冗談が過ぎるんだから! こっちも冗談で返さなきゃいけないじゃにですかぁ☆」

魔法使い「……お主、何者じゃ?」

受付「ただのしがない公務員ですよ? それではいってきまーす!」

勇者「……いってらっしゃーい」フラフラ

魔法使い「……お主も中々大概じゃの」ハァ


勇者「それじゃ気を取り直して行きますか。行くぞ、幼女」

幼女「ユーシャ!」ダキッ

勇者「うっ! お前見かけと違って金属製なんだから重いんだよ!!」

幼女「!!!」キャッキャ

魔法使い「幼女はともかく、勇者も王都は久しぶりじゃろ?」

勇者「そういえば、そうだな。考えてみれば記念式典が終わってから来てなかったから2年ぶりぐらいか」

魔法使い「2年前に比べて王都も発展しておる。せっかくじゃからどこかで夕食を食べるとしようか。なにか食べたいものはあるかの?」

幼女「チャーハン!」ビシッ

勇者「……だそうだ」

魔法使い「勇者、いくら機械製とは言え、人間と同じで偏った食事をさせるのはあまりよくないぞ?」

勇者「いや、こいつそれしか言わないし……」

幼女「チャーハン♪ チャーハン♪」ピョンピョン

魔法使い「元気じゃの……」ハァ

勇者「こうしていると子連れの夫婦みたいだな」ハハ

魔法使い「な /// バカなこと言ってないでさっさと行くぞ!!」

勇者「へいへい」



今日の投下はこれで終了です。

明日は21時頃に投下出来ると思います。

スローペースになってしまうと思いますがどうかご容赦ください。

ありがとうございました。


もしかして幼女の中身って……

今日も投下していきます。

>>93 分かっても気づかないふりをしてあげて!(懇願)


―――――王国騎士団本部―――――

軍人貴族「どういうことだ! 参謀! なぜ『聖女』の列聖を止められない!」ガンッ

参謀「だから、何度も言ってるでしょう? いくら王弟殿下の頼みだからってこればっかりは無理ですよ。金にもならないことなんて考えても無駄です。もっと有意義なことを考えましょうよ」ヒラヒラ

軍人貴族「またお前は金、金、金と……」

参謀「ったく、なんだってこんな脳筋司令官の元に着いちゃったんだか……どうせだったら商人貴族閣下の方がよかったっての」ガックシ

軍人貴族「金稼ぎの問題は後にしろ! 今は我が国の誇りの問題だ!」ガンッ

参謀「金稼ぎというより、俺は無駄な労力を使いたくないだけなんです。誇りだかなんだか知りませんけどね、よっぽどのことがない限りこの件は無理ですよ」


軍人貴族「だから! それがなぜかと聞いているのだ!」ガンッ

参謀「そう何度も机を叩かないでくださいよ、いいですか、アホな閣下でもわかりやすく説明させていただきますよ」

軍人貴族「あ、アホ? 参謀、お前俺のことをアホと言ったか!?」ガタッ

参謀「あー、ちゃんと説明しますから座って聞いててくださいよ。まず第一に聖女の列聖は陛下が取り決めたことです。陛下が決めたことを軍人貴族閣下が正当な理由もなく却下することなんてできるわけないでしょう?」

軍人貴族「それは、そうだが……だから俺はこうやって聖女の身分の卑しさを陛下に訴えてだな……」

参謀「第二に聖女は民衆に絶大な人気を誇っています。その聖女の列聖を急に取りやめになったりなんかしたら、民衆の間で暴動がおきますよ。だからできないんです。だから俺はあなたにこんな無駄なことはやめましょうって言ってるんです。わかりましたか?」

軍人貴族「ふん! 聖女だかなんだか知らんが、元は奴隷ではないか! そんな女がなぜ民衆に支持される? 俺にはまったく理解できん!」ガンッ

参謀「机を叩かない……それも込みなんでしょうね」




軍人貴族「どういうことだ?」

参謀「奴隷という最下層の身分から、人々の希望の光になった女。平民の中では自分たちを救ってくれた恩人。そして奴隷の中では『自分も努力すればあのようになれる』といった希望。両方の面で聖女は支持されているのでしょう。それを知ってか知らずか、あの馬鹿弟は危険分子と判断された」

軍人貴族「参謀、殿下に対して、なんたる無礼!! そこに直れ! 今すぐ切り殺してくれる」ジャキ

参謀「おっと、これはつい本音が……」

トントン

軍人貴族「今は重大な会議中だ。後にしろ」

参謀(なにが重大だよ、馬鹿弟の犬が!)

剣士「第一騎士団、騎士団長剣士。復興作業から帰還しました故、ご報告に参上しました。ご多忙中につきまた後日改めてお伺いしたいと思います。では」

軍人貴族「剣士だと!? ………すまない、入ってくれ」

剣士「……よろしいのですか?」

参謀「なにを考えているのですか!? 剣士は勇者の……」

軍人貴族「なに、ちょっとな……入れ!」ニタァ





剣士「失礼します。ご挨拶が遅れまてしまい申し訳ありません。王国騎士団総司令軍人貴族閣下、剣士、只今帰還しました」

軍人貴族「うむ、ご苦労である」

参謀「剣士、長旅で大変だっただろう?」

剣士「参謀。いや、困っている人々のことを思えばこれくらい……それに本当に大変なのは復興地の人々だ」

参謀「相変わらずだな、お前は。金にもならないことを進んでやる」フフ

剣士「相変わらずお前はがめついようだな」フフ

参謀「失礼な、剣士。俺は……」

剣士「『正当な対価をもらっているだけだ』だろ?」

参謀「その通り」

軍人貴族「なんだ、二人共顔見知りか?」

剣士「ええ、参謀とは士官学校の同期です」

軍人貴族「そうか、……ところで剣士よ。これからどうするつもりだ?」





剣士「休暇のあと、英霊祭の期間中は閣下をお手伝いさせていただきたいと考えています」

軍人貴族「ありがたい、英霊祭期間中は特に人手が足らん。ご助力感謝する」

剣士「いえいえ、そんな。私どもでよろしかったらどんどんこき使ってください」

軍人貴族「して、剣士よ。この度の英霊祭のことだが……」

剣士「なんでしょう?」

軍人貴族「君の仲間だった聖女様がこの度英霊に加わることになったそうだな、おめでとう」

剣士「……いえ」

軍人貴族「その聖女様は出身が奴隷であるとは本当かね?」

参謀「閣下!」

剣士「……そうですが、それがなにか?」





軍人貴族「歴代の英霊と崇められている方々は決まって貴族出身か、王族出身者だ。そこに
加わるのが元奴隷とは……」

剣士「なにか問題でも?」

参謀「閣下! それ以上は」

軍人貴族「お前は黙っていろ。私はね、正直なところ聖女を英霊に加えることに反対なんだよ。彼女に恨みはないが、奴隷を崇めるとなっては我が国の品位が落ちる。そうは思わないかね」

剣士「………」

軍人貴族「君の口から陛下に頼めば聖女の列聖を止めることができるのではないのかね? 私は是非そうするべきだと思うんだがどうかね?」

剣士「どうもこうも、一兵卒である私が陛下のお考えを変えることなどできません。私にはこの大役荷が重すぎます故、ご期待に沿うことはできかねます」

軍人貴族「そ、それもそうか……すまなかったな、無理を言って」

剣士「いえ、私はこれで失礼します」

軍人貴族「う、うむ。ご苦労」

剣士「失礼します」ツカツカ





軍人貴族「……クソ! 剣士め!」ガンッ

参謀「机を叩かない……何考えてんですか、アホ閣下」

軍人貴族「いや、剣士が陛下に言ってくれたら聖女の件を考え直してくれるかと思ってな……やっぱりお前アホ閣下って言ったか?」

参謀「そんな単純なわけないでしょうが……」

軍人貴族「なぁ、今アホ閣下って言ったよな?」

参謀「言ってませんよー」

軍人貴族「そう? 言ってない? ならいいけど……」

参謀「本当にアホだな、この人は」ボソッ



すいません、今日はここまでです。

前回を第一部とするなら今回の第二部は前後半構成になる予定です。


前半部分にあたるこのSSは消化不良な形になりますが、すぐ後半に繋げていきたいと思っています。
ただ、書き溜めが少ないため、毎日ちょっとずつの投下になることをご了承ください。

今日も読んでくださってありがとうございました。

こんばんは、今日も投下していきます。

よろしくおねがいします!


―――――宮廷 救護室―――――


紅騎士「……知らない天井だ」

蒼騎士「……なんとか生きてるみたいだな」

紅騎士「ああ、本当だ、俺生きてる」

蒼騎士「痛って………あの女、むちゃくちゃしやがって!」

紅騎士「メイドコワイメイドコワイ………ユルシテユルシテユルシテ……」ブルブル

蒼騎士「おい、紅! 帰ってこい!」

紅騎士「………はっ! 俺はなにを!?」

蒼騎士「トラウマになってるじゃねぇか……」

「ふふ、随分とメイドに随分と酷い目に合わされたみたいね?」




蒼騎士「誰だ!?」

「傷だらけじゃない、そんな実力であたしの護衛が務まるの?」

紅騎士「仮面を着けた……女の人?」

「初めましてって言ったほうがいいかしら? いきなり拉致っちゃってごめんねぇ。こっちも立場上あんまり表立って行動できないから」

蒼騎士「あんたが俺たちの主、仮面王女か?」

仮面王女「そそ。あたしが仮面王女でーす。あ、いたずらで私の仮面とっちゃダメよ?」




紅騎士「なんか想像してたのと違う」

蒼騎士「やっと本人のお出ましか……山賊だった俺たちを騎士にして、一体どう言うつもりだ!」

仮面王女「どうもこうも、護衛が欲しかっただけなんだけど?」

紅騎士「護衛って……俺たちより強いのなんていっぱいいるでしょ!? メイドの姉ちゃんとか!」

仮面王女「メイド一人じゃどうしても手が足りなくなるでじゃない、今度の英霊祭とか」

蒼騎士「俺たちを拉致した黒服の男たちは? そいつらを使えばいいだろ?」

仮面王女「あのね、誰が用意したのかもわからない護衛なんて護衛として機能してないわよ? いつ裏切るかわかったもんじゃないわ。こういうのはね、自分の目で見つけるもんなのよ。実力はギリギリだけど、贅沢も言ってらんないわ」




蒼騎士「随分な言い草だな、俺たちだって金を積まれれば裏切るかもしれないぜ?」

紅騎士「そうだそうだ! 元山賊なめんなよ! あんたにも恐ろしい目にあってもらおうか!」キシャー

仮面王女「あんたたちにメイドを敵に回す覚悟なんてないわよ」フフ

紅騎士「はい! その通りです! 生意気言ってすいませんした!」ガバァ

蒼騎士「情けねぇ、俺も含めて情けねぇ……」

仮面王女「じゃ、さっさと済ませちゃおうか!」

蒼騎士「済ませるってなにをだよ?」

仮面王女「契約よ、契約」




紅騎士「え? メイドの姉ちゃんがそういうのやってくれてたけど」

仮面王女「馬鹿ね、こういうのは面と向かって当人同士がするの。こんなの常識よ、常識!」

蒼騎士「あんた仮面じゃねぇか」

仮面王女「面は面じゃない! さぁ、さっさと準備しなさい!」

蒼騎士「まぁ、いいけど……」

紅騎士「痛てて、全身傷だらけで体動かすのキツいんだって!」

仮面王女「さっさとしろ!」ゲシッ

紅騎士「あぎゃぁぁぁ!」

蒼騎士「もうちょっと待ってやれよ……」

仮面王女「時は金なり、なのよ……それじゃ、準備はいいわね?」チャキッ

蒼騎士「ああ」

紅騎士「いいぜ」





仮面王女「蒼騎士、紅騎士。あなたたち両名を我が騎士に任命します。私の行く道を共に歩く刃として盾として……………そして私の友として共に戦い続けてくれますか?」

紅騎士・蒼騎士「………」コクン

仮面王女「………ふぅ、これで契約完了ね。改めてよろしく、二人共!」ニコッ

紅騎士「ん? でもいいのか? 俺たちはあんたの護衛のはずだろ? 友としてってのはなんか色々とまずくないか?」

蒼騎士「そうだよな? 主従関係を結ぶってのにそれはダメだろ?」

仮面王女「ああんもう! 細かいわね! いい? 私が自分の騎士に命令するのは2つだけ! 1つが『自分で考えろ』 もう1つが『絶対に死ぬな!』………以上! じゃ、私もう行くから!」スチャッ

蒼騎士「は? おい、ちょっと! いくらなんでも急すぎるんじゃねぇか?」

仮面王女「あんたたちと違ってあたしは忙しいの! 多分5秒後にメイドが来るからよろしく言っておいてね! じゃ!」タッタッタッタ





紅騎士「あー行っちゃったな」

蒼騎士「なんか去り際に不吉なこと言ってなかったか?」

紅騎士「あれ? なんか悪寒が……」ブルブル

ズダダダダダダ!! バン!

メイド「姫様! こちらですか姫様!」

蒼騎士「もう帰ったよ」

メイド「帰った!? それは真ですか!?」

紅騎士「ついさっき、その窓から出て行ったよ」

メイド「遅かったですか……まったく、姫様ったらすぐにどこかへ行っちゃうんですもの、困ったお方ですわ! そんなに走り回らなくても私が完璧にお世話して差し上げますのに」プンプン

蒼騎士「それが嫌なんじゃねぇか? あの姫様は相当なじゃじゃ馬って感じだぞ?」






メイド「あら、蒼騎士さん。就任当日に大怪我とはたるんでますね?」

蒼騎士「あんたがやったんだろ! あんたが!」

メイド「ふふふ、それは言わない約束ですよ☆」

紅騎士「もう嫌だ、この姉ちゃん本当にコワイ……」ブルブル

メイド「ふぅ。今日のとこらはいいでしょう。あなた達は来るべき時に備え、ゆっくり休みなさい。いいですね?」

蒼騎士「チッ、半人前扱いしやがって……」

メイド「悔しかったら私を倒してみなさい? 私は24時間、どんな時でも受けて立ちますよ? では、おやすみなさいませ?」ウフフ


バタン





紅騎士「………なぁ、兄弟。改めて思うんだけどさ」

蒼騎士「なんだよ?」

紅騎士「俺たち、とんでもないとこ来ちゃったな」

蒼騎士「……ちげぇねぇ」ハァ


今日はここまでです。

明日はお休みします。

再開は土曜日の夜からにしたいと思います。

ちょっとずつの更新で申し訳ありません!

まさか自分もこんなに大風呂敷になるとは思わなかった(笑)

頑張って失踪しないようにしますのでお付き合いのほどよろしくおねがいします!

こんばんは、一日休みましたが投下していきます。

明日には前編を終えて、明後日に後編を投下する予定です

よろしくお願いします


―――――王立研究所 研究室―――――

魔法使い「……ふむぅ……ほむぅ……」カタカタカタ

受付「遅くなりましたー! 受付! 只今帰還いたしました!」ビシッ

魔法使い「おおう、受付か。遅かったの」

助手「夜道、大丈夫だった?」

受付「はい、お土産も手に入れましたし、バッチリですよ!」ビシッ

魔法使い「なにを買ったんじゃ?」

受付「生八つ橋に紅芋タルト、ひよこまんじゅうに……」ガサゴソガサゴソ

助手「どこ行ってたのよ……?」









受付「ところでこんな時間までなにやってたんですか?」

助手「ちょっと幼女ちゃんのデータをね、調べ直していたのよ」

魔法使い「データと勇者の証言を照らし合わせればなにかわかると思ったんじゃが……」

助手「どれも不発。打つ手なしってところね」

魔法使い「あとは勇者が言っていた火竜とやらに直接聞くしかないかの……」

受付「え? そんな危ないですよ!」

助手「そうも言ってらんないのよね、困ったことに。あのままブラックボックスのままで幼女ちゃんを放っておくのもまずいだろうし」

魔法使い「それになぜ幼女があのような改造をされて勇者の前に現れたのかも気になる」





受付「改造って、実際になにか幼女ちゃんの体を誰かがいじったってことですよね?」

魔法使い「いや、いじったいじったというよりは『加えられた』という方がニュアンス的に近いかもしれん。わしが作った魔導人形という器に誰かが膨大な魔力を注入した。その結果できたのが幼女ということになるかの」

助手「問題はそれを『なんで』行ったのか、『なにが』目的なのか、それを知るためには幼女ちゃんのことをもうちょっと知る必要があるのよ」

魔法使い「わしは嫌な予感がするのじゃ。助手が言った通り、幼女を巡って再び争いが起こってしまうかもしれん。人間と魔王の戦いではなく、人間同士の戦いがの」グッ

受付「……魔法使い様……」

魔法使い「それを防ぐためにも、幼女の正体とこれを仕掛けた犯人を我々は一刻も早く知るべきだと思うんじゃよ」

シュンッ

受付「……そうですね、私たちはもっと知るべきなんですね」




同僚「そう、例えば私たちがどれだけ業務に追われて、どれだけ辛い目にあってるのかをね……」ポン

受付「うぇぇ!? 同僚さん!? どうしてここに!?」

同僚「どうしても仕事が終わらなくてねぇ……あんたの帰りを待ってる余裕もなくてね……仕事の合間を縫って転移魔法を使ってあんたを連れ戻しにきたのよ……」ユラァ

受付「でも、私有給……」

同僚「そんなの認めるわけないでしょう?」ニコッ

受付「あ、そうだ! 同僚さん、私みんなにお土産買ってきたんですよ。ほら見てください、生八つ橋に紅芋タルト、あ! 白い○人までありますよ!」

同僚「へー、気が利くじゃない。じゃあ『帰って役所のみんなで食べましょうか?』」ニタァ

受付「い、嫌です。私はもうちょっと休暇ライフを楽しむんです!」ダッ

同僚「逃がすか!」ガシィッ





受付「は、離してください! 私、まだ休み足りません!」ジタバタ

同僚「問答無用」ニヘラァ

受付「嫌です! 私、幼女ちゃんにまだ名前呼ば……」シュンッ





助手「行っちゃったわね……」

魔法使い「嵐のような奴じゃったの……」

助手「さて、一区切りついたところであんたもそろそろ寝なさいよ? 夜更かしすると大きくなれないんだからね?」

魔法使い「う、うるさいわい!」

助手「さぁ、もうおねむの時間ですよー、いい子は早くベッドに行きましょうねー」ナデナデ

魔法使い「うにゅ………撫でるなぁ!」


―――――????―――――

男「♪♪♪」

女「どうしたのよ、随分とご機嫌じゃない」

男「いやいや、あっちの世界は随分と平和だなと思いましてね」カカカ

女「そう何回も龍の封印が解けたりなんかしないわよ」

男「そうそう、それでみんなで平和ごっこしてるフリしてあっちで策略、こっちで謀略♪ これが笑わずにはいられるかってんだ♪」

女「……そうね、人間はいつまで経っても学ばない……」ハァ





男「気分が乗ってきたので……ここでおもむろに一人ピラミッド!」ビシッ

女「それってあんたがただ単純に四つん這いになっただけじゃない」

男「その通り!」

女「あんた、寂しいわね……」

男「そりゃ、こんなところにふたりっきりでいたらふざけたくもなりますよー」ヘラヘラ

女「バカじゃないの?」

男「………あんたも内心穏やかじゃないのはわかるけどさ、こっちからはどうすることもできないんだし、成り行きに任せましょうよ、成り行きに」

女「……人間はいつまでたっても学ばない。せっかく掴んだ平和も誰かの私利私欲を満たす道具に成り下がる。人間は汚くて、狡くて、救う価値なんてないかもしれない」

男「そう、そして俺たちはそんなくだらない演目を永遠に見せ付けられるってわけさ。これ以上の拷問があるかい?」カカカ

女「……私たちは所詮、傍観者。世の行く末に干渉なんてできない、それを選んだのは他ならぬ私自身。後悔はしてないわ。ただね」

男「ただ、なんだい?」

女「あんまり人間とあの子をなめんじゃないわよ?」ギロリ

男「はは! それはおもしろい! じゃあこのまま見させてもらおうじゃないか。人間と人になりきれない魔導人形がこの世界にどう立ち向かっていくのかを!」

女「………!!」





男「………今のちょっとカッコよくなかった?」

女「……あんたねぇ、どこまで本気なのよ……」ハァ


今日の投下は以上です

明日も同じ時間頃に投下できたらなと思っています

ありがとうございました

こんばんは。今日も投下していきます。


よろしくお願いします。


―――――王国騎士団本部―――――

参謀「アホ閣下~。呼びました~? ………って」

軍人貴族「うぬぬぬぬ……」

参謀「まだ悩んでるんですか? こんなど深夜に。いい加減諦めなさいよ」ハァ

軍人貴族「できるか! これは王国の品位の問題であるのだ! そしてなにより! 王弟殿下直々に俺を頼ってくださったのだぞ? この栄誉の極み、なんとしてもこの軍人貴族殿下のご期待にお応えしたい!」

参謀「それでなにかいい案が浮かびましたか?」

軍人貴族「浮かばんからこうして悩んでいるのだろう! おい参謀! なにかいい案はないのか!」

参謀「なんで俺がそんな面倒なこと……嫌ですよ」

軍人貴族「お前も貴族出身であろう? このままでいいのか!?」

参謀「いいんじゃないですかぁ? 人々は希望一杯、陛下は満足、なにが問題なんですか」




軍人貴族「問題だらけではないか! 王族と貴族が手を取り合って作り上げた伝統! 格式! 品位! その全てが陛下の決定で崩れてしまうのだぞ! お前はこの事態を嘆かわしいとは思わんのか!」

参謀「そんなんで崩れちまうものなら俺はさっさと崩しちまった方がいいと思いますけどねぇ」

軍人貴族「奴隷を聖女と崇めるなど、国の恥、王族の恥、貴族の恥だ! これは我々の問題だけではない。この世界の支配階級である人間全ての問題なのだ!」

参謀(支配階級って……だから聖女様とやらが人気になるんだろうが……なんでそんな単純なことに気がつかないのかねぇ、身分にこだわる老害達は……)

軍人貴族「聞いているのか! 参謀よ!」ガンッ



参謀「聞いてます、聞いてますよー」ヒラヒラ

軍人貴族「参謀よ、俺はなんとしても聖女の列聖を止めたい。士官学校歴代最高と言われたその頭脳を使って! こう! なんとか! できんものか!」

参謀「……できなくはないですけど、それなりの対価をいただきますよ?」

軍人貴族「俺のできることならなんでもしよう!」

参謀「……なんでも?」ピクッ

軍人貴族「ああ、なんでもだ! 男、軍人貴族! 二言はない!」

参謀「……いいでしょう」


軍人貴族「おお! なにか策があるのか!」

参謀「まぁ、そう慌てずに……いいですか、俺は知恵を貸すだけです。俺はこの件になにも関与してない。いいですね?」

軍人貴族「あ、ああ! 構わん。最早手はないのだからな!」

参謀「計画の是非に関わらず、閣下は俺に対価を払う。それも構いませんね?」

軍人貴族「ええい! ごちゃごちゃ言うな! 殿下のためならそれで構わん!」

参謀「かしこまりました。では俺に考えがあります」ニヤッ






魔法使い「なにか食べたいものはあるかの?」幼女「チャーハン」終わり

受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」幼女「♪♪♪」に続く





予告編


魔法使い「勝利宣言をさせてもらうぞ! 高らかにの!」ニカッ

参謀「俺は言いましたよね? 『それなりの対価はいただきます』って」

勇者「………なんでだ? なんでこんなところで涙なんて出るんだよ?」

軍人貴族「認めん! 俺はこんなこと認めん! 認めんぞぉぉぉぉおおお!!」

助手「あれが人を救った力だっていうの……!?」

蒼騎士「気にするな。俺たちはただの通りすがりの」

紅騎士「元山賊だってーの!」

仮面王女「わかるでしょ! 私がなにを望むのか! 答えがわかったならさっさと行け!」

女「行きなさい。あなたが望むままに」

男「止めてみな、本当にあいつが大切ならよ」

幼女「ユーシャ!! だめぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」




受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」 幼女「♪♪♪」




今回のSSは以上です。

以下番外編を投下します



魔法使い王立研究所所長就任直後




助手「ありゃ? 魔王を倒した大魔法使いが来るって聞いてたからどんなじいさんが来るのかと思ったら随分可愛らしい女の子だね?」

魔法使い「あ、あの………私、ちょっと緊張しちゃって……」

助手「ふーん。まぁいいわ。これからみんなにあんたのこと紹介するから、ちゃんと挨拶するのよ?」

魔法使い「大丈夫かな? ちゃんと認めてもらえるかな? こんなガキが上司になっちゃってみんなから嫌われないかな? ただでさえ、昔から友達少なかったのにここでもいじめられたりなんかしたら私立ち直れない……」ブツブツ

助手「ああんもう! シャキっとしなさい!」

魔法使い「は、はいぃ!!」



魔法使い「そ、そうよ、自分を変えたくて勇者にくっついて魔王討伐に参加したんだもん。あの頃の私に比べたらずっと成長してるはず。少なくとも昔みたいにみんなに取り囲まれたりとかそんなことはないもん! うん、絶対大丈夫! 勇者が私のこと認めてくれたみたいに、ここの人たちにも私のこと認めてもらえるように頑張るもん」ブツブツ

助手「大丈夫かしら、この子……あ、ここがみんながいる研究室よ、入って」

魔法使い「は、はいぃ………失礼します……」




助手「みんな、ちょっと作業の手を止めてくれる? 今日からここの所長に就任することになった、魔王討伐メンバーの魔法使いさんです。魔法使いさん、挨拶して?」


魔法使い「きょきょきょきょきょ………今日からここここちらのしょしょ所長になりますす……魔法使いです! よよよよろしくおねがいしましゅ!!!」ガタガタ




助手(あ、噛んだ)

研究員A(今、噛んだな)

研究員B(噛んだな)

研究員E(持って帰りたい)

魔法使い「う、うぇ………」グスッ

助手「はいはい、そういうわけで私たちの直属の上司だから、仲良くしてあげてよ?」




研究員A「なんだろう、あのかわいい生物は」ヒソッ

研究員B「娘にしたい」ボソッ

研究員C「お菓子あげたい」ヒソッ

研究員D「ナデナデしたい」ボソボソ

研究員E「持って帰りたい!!!!」バーン

魔法使い「ひう!?」




助手「ほらほら、あんたたちそんな邪な目で見ない」フフ

研究員A「だって可愛いんですもの。なー」

研究員一同「「「「なー」」」」」

助手「あんたたちは本当に………それと今日から私、あんたの助手になることになったから、よろしくね」ニコッ

魔法使い「あう……よよよろしくおおおねがいいいししままま……」ガタガタ

助手「ダメだ、やっぱり可愛いわ。この娘」ナデナデ

魔法使い「な、撫でないでください!!」

研究員A「あ! ずるいですよ、俺たちだってナデナデしたいです!」

「俺も」「俺も!」「俺も!!」「私も!」「ミーも!」

魔法使い「ひ、ひぃぃぃぃぃぃいいいいい!!!」








―――――




研究員A「あ、所長。おはようございます」

魔法使い「うむ、今日もいい天気じゃの」

研究員B「所長。『例のもの』の件ですが……」

魔法使い「そうじゃの。今は実験を繰り返すしかないしのう……とりあえずAプランからDプランまでの準備を頼む」

研究員C「所長。貴族長様から今月の研究について報告書を提出して欲しいと」

魔法使い「すぐやるわい」

助手「おはよう、魔法使い。今日も忙しそうね」

魔法使い「お主も手伝え」

助手「はいはい……あなたたちも今日も一日よろしくね」フフ







研究員A「今日も所長かわいいな」

研究員B「ああ、無理して大人ぶろうとして変な風にこんがらがっちゃってるところが特に……娘にしたいもん」

研究員C「前のバージョンの所長も可愛いけど、今のもありだよな」

研究員D「ありだなー」

研究員E「持って帰りたい!!!」バーン

研究員A「さぁ、無駄口叩くのもこれくらいにして今日も一日。所長のために頑張りますかー」

研究員一同「「「「「おー」」」」」





魔法使い「ふふん♪」

助手「どうしたの、あの子達を遠巻きに見て」

魔法使い「最近、やつらにわしも認められてきたと思っての」

助手「は?」

魔法使い「ここに来た当初は子供扱いされたり、意味もなく撫でられたり、お菓子をくれたりとまるでわしを馬鹿にしたような行動の数々だったが、この口調にしてからそういうことも減ってきたのじゃ!」ドヤァ

助手「………」

魔法使い「これもわしの威厳が皆に伝わったということじゃろ? そうじゃろ?」キラキラ

助手「………やっぱりあんた……」

魔法使い「んぬ?」

助手「やっぱりあんた超絶に可愛いわね」ナデナデ

魔法使い「むぅ! 撫でるでない!!」プンスカ



終わり



番外編も以上です。

続きにつきましては明日と同じ時間帯に受付「勇者様! 英霊祭ですよ!」 幼女「♪♪♪」というスレを立てて続きを投下したいと思います。


長い間お付き合いくださりありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年02月23日 (月) 18:28:58   ID: OtjpwnAO

これ続きどこに出てんの?

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