時雨「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」 (141)
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喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません。私の取り扱う品物は心、人間の心でございます。ホーホッホッ・・・」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり、そんな皆さんの心のスキマをお埋め致します。いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。さて、今日のお客様は・・・」
時雨(しぐれ) 『たしかなマフラー』オーホッホ・・・
時雨「提督、書類の進み具合はどう?」
提督「あと少しで終わるよ。時雨が手伝ってくれているおかげだな」
時雨「僕は当たり前のことをしているだけだよ」
提督「・・・どうだ? ここの生活は慣れたか?」
時雨「うん。白露や妹達も、みんな仲が良いんだ。凄く居心地が良いよ」
提督「それは良かった。最近出撃回数が多くなってすまんな」
時雨「気にしないでよ。僕は提督のためなら、いつだって頑張るよ?」
提督「ありがとうな・・・」
時雨「(ついこの間、提督は僕を改二に実装してくれた。五月雨と涼風はまだいないけど、白露型の5隻を揃えてくれた)」
時雨「(提督、本当にありがとう。僕、ちっとも寂しくないよ)」
夕立「さて、そろそろ寝るっぽい!」
村雨「春雨、寝る前にトイレに行ってきなさい。また朝起きたら燃料が漏れていました、なんてシャレにならないから」
春雨「うん・・・」
白露「これぞ春雨スープ! なんちゃって!」
春雨「///」
村雨「ちょっと! 下品よ!」
夕立「ぽいぽい!」
時雨「(ふふ・・・楽しいな・・・おやすみ)」
時雨『・・・・・・ん?』
時雨『あれ? ここは・・・』
白露『』
村雨『』
夕立『』
春雨『』
時雨『? みんな?』
白露『・・・時雨。貴女は今までよく頑張ったわ』
村雨『もう、私達のことは忘れて・・・』
夕立『ばいばい、時雨・・・』
春雨『時雨姉さん・・・元気でね?』
時雨『みんな? 何を言っているんだい?』
時雨『ちょっと! みんなどこに行くの? 僕を置いて行かないでよ!』
時雨『待って! 僕を一人ぼっちにしないで!』
時雨「うわあぁぁぁっ!?」ガバ
時雨「はぁ・・・はぁ・・・!」キョロキョロ
時雨「(ゆ・・・夢か・・・)」
夕立「ど、どうしたっぽい!? 時雨、大丈夫?」
時雨「う、うん・・・ちょっと嫌な夢を見てね」
夕立「そっか・・・じゃあ、久しぶりに一緒の布団で寝るっぽい!」
時雨「え!?」
夕立「時雨がまた魘されないためっぽい!」
時雨「う、うん・・・///」
夕立「ぽいぽい!」モゾモゾ
時雨「(夕立・・・ありがとう)」
時雨「(あれから、あの夢の内容が頭から離れない・・・)」
時雨「(またあの時みたいに・・・みんな、沈んじゃうのかな・・・)」
時雨「(そんなこと、僕がさせない!)」
提督「そうだ、今日は時雨が買い出し当番だったな。そろそろ書類の方はおしまいにして行っておいで?」
時雨「う、うん」
時雨「(最近、鯨の肉が売られなくなってきたな)」
時雨「(昔はよく、鯨ベーコンとか食べていたのに)」
喪黒「んまんま」パクパク
時雨「(あのおじさん、試食コーナーを食い荒らしている・・・)」
喪黒「ん?」クル
時雨「!」ギョ
喪黒「いやぁ~! これはこれは、お恥ずかしいところを。昼食を取り損ねてしまって、今の今まで空腹だったんです」
時雨「あ、あはは・・・」
喪黒「おや? お嬢さん、顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
時雨「え? そうかな?」
喪黒「それに、何やら思い詰めたような表情をしているようですが」
時雨「えっと、まぁ・・・」
喪黒「・・・どれ、少し私に事情を話してみては如何ですか? 私、これでもせぇるすまんをしておりまして」スッ
時雨「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。きっと、お嬢さんにぴったりの商品があるかもしれません。せぇるすまんと言っても、お金は一銭も頂きません」
時雨「えっと、じゃあ・・・」
喪黒「・・・なるほど、悪夢を見てから不安で仕方ないと」
時雨「うん・・・また、みんな僕を置いて、どこかに行っちゃうんじゃないかって」
喪黒「戦争とは悲しいものですねぇ・・・先程まで元気だった戦友が、1分先には死んでしまうかもしれない」
喪黒「そのお気持ち、よぉ~くわかります。では、このマフラーを差し上げましょう」スッ
時雨「え、良いの?」
喪黒「もちろんです。この商品は、お嬢さんのような方が使ってこそ、本当の効力を発揮します」
喪黒「このマフラーを身につければ、お嬢さんの大切な人を決して忘れなくなります」
喪黒「約束さえ守って頂ければ、ずっと一緒に過ごせますよ?」
時雨「約束?」
喪黒「はい。このマフラーをつけてからは、もう他のマフラーを首に巻かないで下さい。それだけです」
時雨「(マフラーなんて、あまりする機会なんてないから、大丈夫か)」
時雨「うん、わかったよ。おじさん、ありがとう」
喪黒「いえいえ・・・」
時雨「(夕立のつけているのと、瓜二つだ)」
時雨「(最近はめっきり寒いし、丁度良いかな?)」ファサ
時雨「(・・・うん! 良い感じだ)」
夕立「あれ? そのマフラー、夕立と一緒っぽい?」
時雨「似ているけど、別物なんだ」
春雨「なんかお揃いみたい」
村雨「仲の良い姉妹って感じね」
白露「ラブラブゥ!」
夕立「夕立と時雨は、一番の仲良しっぽい!」ダキ
時雨「ふふ・・・」
提督「出撃ご苦労様。良い結果だったな!」
夕立「提督さん、褒めて褒めてー!」
夕立「時雨と一緒だったら、どんな敵も海の藻屑よ!」
時雨「ゆ、夕立・・・///」
提督「ははは! 本当に仲が良いんだな!」
時雨「(最近、今までよりももっと、姉妹を意識しているような気がする)」
時雨「(みんな、今度は僕がきっと・・・守って見せるから)」
時雨「この前はどうもありがとう。おかげで、もっと姉妹の絆が深まったよ」
喪黒「それは良かったです。あのマフラーの効力は、凄まじいものですからね」
時雨「これをつけていると、凄く安心するんだ。もう、手放せないね」
喪黒「ホッホッホ・・・」
夕立「時雨ー! 見て見てー!」
時雨「? どうしたの?」
夕立「時雨がマフラーをつけたから、今度は夕立がロングマフラーを作ってみたの!」
夕立「これ、2人で一緒につけてみましょう?」
春雨「夕立姉さんと時雨姉さん・・・恋人同士みたい」
村雨「私達にも構ってよー・・・ちょっと寂しいわよ?」
白露「姉妹で、しかも女の子同士って・・・凄い壁だね!」
時雨「もう! 変な想像しないでよ!///」
夕立「さ、試しにつけてみるっぽい!」
時雨「(あ・・・でも、このマフラー以外のものはつけちゃダメだったんだっけ)」
時雨「(でも断れないな・・・どうしよう)」
夕立「時雨? どうしたの?」
時雨「(でも・・・柄も似ているし、大丈夫だよね?)」
時雨「ううん、なんでもないよ。さ、つけよう?」
春雨「可愛い・・・本当に恋人みたい」
白露「」●REC
村雨「似合っているじゃない!」
夕立「えへへ」
時雨「(あぁ・・・幸せだなぁ・・・この時間が、いつまでも続けば良いのに・・・)」
ウーーーーッ!!
時雨「け、警報!?」
夕立「深海棲艦ね・・・まったく、空気を読まないっぽい!」
最上「夕立、時雨! 急いで準備して!」ガチャ
山城「ゴールデンバットが売り切れていたわ・・・不幸だわ・・・」
夕立「了解!」
時雨「・・・・・・」
― 洋上 ―
時雨「(さぁ、今日も全力で頑張ろう!)」
喪黒『時雨さん・・・貴女、約束を破ってしまいましたね?』
時雨「え・・・おじさん?」
喪黒『あれほど他のマフラーはつけてはいけないと言ったのに・・・』
喪黒『こうなってしまっては、貴女は嫌でも大切な人のことを忘れられなくなるでしょう』
時雨「そ、そんな・・・何を・・・」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
時雨「うわあぁぁぁ!?」
扶桑「!? 右舷70°の方角、魚雷発見!」
満潮「危ない! 避けて!!」
夕立「え・・・」
時雨「夕立! 危ない!!」バッ
時雨「うぐっ!?」ドガァァン
時雨「(ダ、ダメだ・・・直撃して、もう・・・)」
夕立「時雨!!」
山城「くっ・・・! これでも喰らいなさい!」ズガァァン
満潮「えい!」ズダン
扶桑「・・・以上が報告内容です」
提督「・・・・・・わかった」
提督「みんな、本当によく頑張った・・・今日はもう、ゆっくり休むんだ」
最上「・・・・・・」
山城「・・・・・・」
満潮「・・・・・・」
夕立「う・・・うぅ・・・ひっく」ポロポロ
提督「夕立・・・」ギュ
夕立「て、提督さん・・・時雨が・・・時雨がぁ・・・!」ポロポロ
提督「・・・お前が悪いんじゃないんだ」
夕立「うわあぁぁぁぁっ!!!」ポロポロ
鈴谷「ねぇ、熊野。幽霊艦の話知ってる?」
熊野「あぁ、チラッとしか覗ってはいませんが・・・最近、鎮守府近海に出るらしいですわね」
鈴谷「うん。何でも、雨の日になると必ず出るんだって。しかも、見つけてもすぐに消えるから、深海棲艦なのかもわからないって」
熊野「不気味なのが、炎上しているのにも関わらず、何の部品も焼け落ちてこないという話を聞きましたわ」
鈴谷「もしかして、時雨ちゃんのことだったりして・・・」
熊野「や、やめて下さらないかしら!? 不謹慎ですわ!」
鈴谷「ご、ごめん・・・」チラ
夕立「・・・・・・時雨」
??「・・・・・・」
??「夕立・・・みんな・・・元気にしているかな・・・?」
??「今日は雨の日だね・・・僕はここにいるよ・・・」
??「みんなが僕を忘れても・・・僕は、絶対にみんなを忘れないから・・・」
喪黒「沈んでもなお、大切な人のことを忘れない・・・感動しますな」
喪黒「彼女は艦娘でもなく、深海棲艦でもない、ゴーストシップそのものになったのです」
喪黒「彼女の想いは、永遠に消えることはないでしょう。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
夕立(ゆうだち) 『ソロモンの護符』オーホッホ・・・
夕立「提督さん! 褒めて褒めて!」
提督「よしよし、今回も良い結果を残せたな!」ナデナデ
夕立「えへへ」
提督「それにしても、夕立は結構アクセサリー類が好きなのか? 色々つけているみたいだが」
夕立「もちろん! 可愛い物は好きよ?」
提督「なかなか似合っているぞ! センスが良いな!」
夕立「ありがとう、提督さん!」
夕立「提督さんにいっぱい褒められたっぽい!」
時雨「良かったじゃないか」
村雨「また提督のところに遊びに行っていたの?」
白露「あたしが一番じゃないなんて・・・納得いかない!」
春雨「良いなぁ・・・」
夕立「(今度、また可愛いデザインのを買ってくるっぽい!)」
夕立「ぽい♪ ぽい♪」
夕立「(今日は外出届を出して、ショッピングっぽい! 楽しみだなぁ!)」
夕立「あ! 早速可愛いの発見っぽい!」
喪黒「いらっしゃいませ」
夕立「定員さん! 何かオススメはあるっぽい?」
喪黒「そうですねぇ・・・お客様からは、力強いオーラが感じられます」
喪黒「これなんてどうでしょう?」スッ
夕立「なんかカッコいいペンダントっぽい!」
喪黒「これはソロモンの護符というもので、身に着けた者の気を最大限に活かすものです」
喪黒「あ、忘れていました。実は私、ちゃんとした定員ではないんです」スッ
夕立「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「せぇるすまんをしています。と言っても、お金は一銭も頂きません」
夕立「え?」
喪黒「こちらの商品も、もちろんタダでございます」
夕立「本当に良いっぽい!?」
喪黒「もちろんです。ただし、これをつけた状態で満月を見ないで下さい。それだけ、お願いします」
夕立「わかったっぽい! 店員さん、ありがとうね!」
時雨「おかえり・・・あれ? そのペンダント、なんかカッコいいね」
夕立「たまにはこういうのも良いっぽい!」
村雨「へぇ~、似合っているんじゃん」
春雨「良いなぁ・・・」
白露「悔しいぃ~!」
夕立「(えへへぇ・・・なかなか好評っぽい!)」
提督「お! そのペンダント、新しく買ったのか?」
夕立「そうよ! どう? 似合っているっぽい?」
提督「凄く似合っているよ! いつもより大人っぽく見えるな!」
夕立「提督さん、ありがとう!」
夕立「(そういえば、定員さん何か言っていたっぽいけど、何の話だったか忘れちゃったっぽい)」
― 洋上 ―
夕立「はっ!」ズザザ
夕立「ガラ空きっぽい!」ズダン
空母棲姫「いったーい!」
時雨「夕立・・・凄い迫力だ・・・」
山城「まるで夢魔みたいだわ・・・」
夕立「本当大したことないね。夕立に傷一つもつけられないなんて」ニコ
提督「おかえり。今日も安定の戦闘っぷりだったな! この後はゆっくり休んでくれ」ナデナデ
夕立「わふわふ」
提督「本当、こんな可愛い娘がソロモンの悪夢、だなんて呼ばれていたとは・・・」
夕立「夕立、提督さんのためなら、もっと頑張れるっぽい!」
提督「はは、それは頼もしいな!」
時雨「そういえば、今日は満月だね」
村雨「あ、そうなの? どれどれ・・・あ、本当だ」
春雨「綺麗・・・」
白露「あ! あたしが一番って言っているじゃん!」
夕立「(満月・・・? 何かひっかかるっぽい)」
時雨「ほら、夕立も一緒に見よう?」グイ
夕立「あ・・・」チラ
喪黒『おやおや、私の忠告を覚えてはくれていなかったようですね』
夕立「え? 店員さん?」
時雨「?」
喪黒『あのペンダントを渡したときに、しっかりと言ったはずだったのですが・・・』
夕立「(わ、忘れていたっぽい!)」
喪黒『まぁ、もう仕方がないでしょう。夕立さん、覚悟して下さい』
夕立「え?」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
夕立「きゃああぁぁぁ!?」
夕立「・・・・・・」
時雨「夕立? どうしたの?」
春雨「・・・?」
夕立「・・・赤いね」
時雨「え?」
夕立「今日の月、赤いね。血みたいに」
時雨「え・・・」
夕立「」ギロ
時雨「ひっ!?」ビク
春雨「え? どうしたの? 夕立姉さん・・・・・・!?」
時雨「夕立・・・目が!」
夕立「いただきます」ガバ
きゃああぁぁぁ・・・!!
提督「な、なんだ!?」ダッ
提督「おい! 一体どうしたんだ!?」ガチャ
提督「ひっ!?」
夕立「ダメ・・・オイルしか出ないっぽい・・・」ポタポタ
時雨「」
白露「」
村雨「」
春雨「あ・・・あ・・・」ガクガク
提督「夕立! 何をしているんだ!?」
夕立「」ギロ
提督「ひぇ!?」ビク
夕立「提督さん・・・人間・・・生きている・・・血・・・」ブツブツ
夕立「首筋、手首から流れゆく、赤い露・・・これがあれば夕立、もっと強くなれるっぽい! だから提督さん・・・いっぱいちょうだい?」ガバ
提督「うわあぁぁぁっ!!」
喪黒「あららら。力を維持し続けるために、血を求めるようになりましたか」
喪黒「これぞ、本当の悪夢ですな。彼女の体は、今後血液なしでは生きていけません」
喪黒「あの提督は果たして、終戦まで生きているでしょうか? オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
春雨(はるさめ) 『マロニー・バッジ』オーホッホ・・・
春雨「司令官、春雨特製麻婆春雨です」コト
提督「お! 美味そうだな! いただくよ」ズゾゾゾ
提督「ああ美味い! 大好物なんだ、お前の作る麻婆春雨は!」
春雨「ありがとうございます。そう言っていただけると、作った甲斐があります、はい」
提督「美味し美味し!」ズゾゾゾ
春雨「(よし!)」グッ
春雨「(最近、よく司令官に褒められるようになっちゃった)」
春雨「(この調子で、もっとお料理頑張らないと!)」
喪黒「さぁさ、そこのお嬢さん。今の寒い季節に春雨スープは如何ですか? どうぞご試食を」スッ
春雨「え? あ、どうも」
喪黒「温まりますよぉ~?」
春雨「あ、美味しい!」
喪黒「それはどうも。お嬢さんは可愛いお方ですから、こちらの春雨スープの素をプレゼントしましょう」
春雨「え!? そ、そんな・・・悪いですよ」
喪黒「いえいえ、良いんです。そんなに売れているわけではありませんので。あと、サービスとしてこれも差し上げましょう」スッ
春雨「これは・・・バッジですか?」
喪黒「その通りです。あ、実は私こういう者です」スッ
春雨「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。せぇるすまんですよ。見たところ、貴女は今料理に夢中そうな顔をしていらっしゃる」
春雨「どうしてわかったんですか?」
喪黒「この仕事をしていると、大抵のお客様の事情は把握できるようになってくるんですよ」
喪黒「そのバッジはお嬢さんのベレー帽にでもつけてみて下さい。料理スキル上達アイテムですよ」
春雨「ほ、本当ですか?」
喪黒「はい。得意料理から苦手料理まで、全てが上手くいきます。ただし、条件がありますが」
春雨「条件ですか?」
喪黒「春雨料理を作る際は、絶対にマロニーを代用しないで下さい。良いですね?」
喪黒「あ、あとそちらのバッジはタダです。どうぞご活用して下さい」
春雨「えっと、あの・・・何から何まで、本当にありがとうございました!」
春雨「(えーと、こうしてっと)」パチ
春雨「(えへへ・・・なんだか昇格したみたい)」
春雨「さて、今日は肉じゃがを作ろうかな」
提督「美味過ぎる! もっと食わせろ!」ガツガツ
春雨「お、落ち着いて食べて下さいね?」
春雨「(凄い・・・今日はなんだか、いつもよりもっと楽しく作れちゃった)」
春雨「(司令官も凄い喜んでくれているし、このバッジは一体・・・?)」
提督「食欲を持て余す」ムシャムシャ
春雨「ここはこうして、水は1/2の分量で、火は若干強火でお願いします」
鳳翔「助かるわ、春雨ちゃん。私、和食が中心だったから」
大鯨「私も中華に興味を持っていたんですけど、よくわからなかったんで・・・」
春雨「いえいえ、どんどん聞いて下さい! 私、ベルギー料理とかロシア料理も作れますから」
鳳翔「うふふ・・・頼もしいわ」
春雨「(やった! 褒められちゃった)」
春雨「~♪」テクテク
提督「春雨」ヌッ
春雨「ひっ!? し、司令官・・・?」ビク
提督「すまん、春雨! もうこんな時間だけど、夜食を作ってくれないか?」
春雨「夜食ですか・・・良いですよ」
提督「メニューなんだけど、またお前の麻婆春雨が食べたいんだ!」
春雨「材料があれば良いのですが・・・」
提督「んじゃ、頼んだよ?」スタスタ
春雨「あ、はい・・・」
春雨「(えーと、青ネギとキクラゲと・・・あ、肝心の春雨がないわ)」
春雨「(どうしようかしら・・・司令官、あんなに楽しみにしていたのに)」
春雨「(あれ? これはなんだろう?)」スッ
春雨「(マロニーかぁ・・・ちょっと麺が太すぎるや)」
春雨「でも・・・」
提督『またお前の麻婆春雨が食べたいんだ!』
春雨「・・・・・・」
喪黒『絶対にマロニーを代用しないで下さい』
春雨「どうしよう・・・」
春雨「(司令官、楽しみにしていたなぁ・・・)」
春雨「(司令官に・・・もっと褒められたい)」
春雨「・・・きょ、今日は気分的に少し変えてみました、って言えば良いよね?」
春雨「・・・よし、完成!」
春雨「(自分で言うのもなんだけど、結構美味しそうかも。くずきりみたいな?)」
春雨「さ、執務室に持っていこう」
喪黒『春雨さん。その麻婆マロニーは何ですかな?』
春雨「え!? おじさん?」
喪黒『あれほどマロニーを代用してはいけないと言ったのに・・・これはちょっと、痛い目に逢って頂く必要がありますねぇ』
春雨「え!? そ、そのゴメンなさい! どうしても司令官の笑顔が見たくて・・・」
喪黒『ダメです。春雨の呪いというのは、とても恐ろしいものなのです』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
春雨「きゃああぁぁぁ!?」
春雨『・・・・・・うぅ~ん』
春雨『あれ? 私は一体・・・』
春雨『体が動かない・・・それに、何で天井を見つめているんだろう・・・?』
春雨『湯気・・・? どういうこと?』
提督「春雨ぇ~、もうできたかぁ~?」
春雨『し、司令官!? わ、私はここにいまーす!』
提督「ん? なんだ、もうできているじゃないか。春雨はどこに行ったんだ?」
春雨『え・・・?』
提督「なんか今日の春雨は色がピンクっぽいな。おまけに太いし」
春雨『私、料理になってる・・・!?』
提督「まぁ、美味そうだから問題ないか。もう食いたくて仕方がない、ここで食べちゃうか!」
春雨『いやあぁぁ!! 司令官、やめて!!』
提督「いっただっきまぁ~すっ!」
春雨『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!』
喪黒「あ~あ、あれは絶対痛いですねぇ。想像してみて下さい。生きたまま食べられるのと同じです」
喪黒「誰かのために役に立ちたい、好きな人の笑顔を見たい・・・そのために、様々なことを努力するのは、素晴らしいことです」
喪黒「しかし、時には一旦状況を確認して下さい。見落としている点があるかもしれません」
喪黒「彼女は一生、あの提督の血となり、肉となり、生きていくでしょう。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
響(ひびき) 『不帰鳥』オーホッホ・・・
暁「ちょっと! 暁のプリン食べたの誰!?」
雷「雷じゃないよ」
暁「嘘ね! 信憑性が全く感じられないわ! 本能的に!」
雷「ひ、酷いじゃない!?」
電「ぷぷ・・・まるで道化師なのです」パクパク
響「あはは・・・」
響「(この鎮守府に来てから、もう随分と時が経ったような気がする)」
響「(最初は、何が起きたかわからなかった。長い眠りから覚め、気がついたらみんながいた)」
響「(暁、雷、電・・・再会できて、凄く嬉しかった・・・)」
響「(あの頃は、みんな私を残して沈んでしまって・・・昭和20年に終戦を迎えて)」
響「(あの後、私はロシアに引き渡されたんだ・・・そして)」
響「(1972年、9月19日・・・私は海軍航空隊の標的艦として、ウラジオストク沖のカラムジナ島岸に沈んだ・・・)」
響「(・・・・・・)」
響「(正直、今の生活は非常に楽しい。悲しみを乗り越え、艦娘としての新たな人生を歩むことができた。だけど・・・)」
響「(後になって、あの時ああしていれば、こうしていればと・・・嘆くとともに、やり直したい気持ちも浮かんでくる)」
響「(私は贅沢だな・・・これ以上、何を望むのさ)」
暁「? どうしたの、響?」
響「いや、なんでもないよ。それより、電がプリンを食べているけど?」
暁「あ! 電、待ちなさい!」
電「退避なのです!」
響「ふふ・・・」
響「海は・・・いつ見ても変わらないね」
響「私達が生まれて、最期まで共に過ごしてきた海・・・」
響「・・・・・・」
喪黒「もしもし」
響「? 誰だい?」
喪黒「どうも、こんにちは。いや、こちらの鎮守府の提督さんが、忘れ物をしてしまいまして、それを届けた帰りなんです」
響「ず、随分警備が手薄なんだね」
喪黒「いえいえ、決して怪しい者ではありません。私、こういう者です」スッ
響「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。せぇるすまんをやっておりますが、何しろタダで商品を提供致しますので、ボランティアのようなものです」
響「ふーん・・・それで、私に何か用かな?」
喪黒「海をずっと眺めていたもので、少し気になっていたんです。海が好きなんですか?」
響「うん、まぁね。それと、ちょっと昔のことを思い出していて・・・」
喪黒「ほほぅ! それは是非、聞いてみたいですね!」
響「明るい話じゃないよ?」
喪黒「なるほど、辛い思いをされたのですな」
響「でも、今はみんな一緒だよ。司令官が、私のためにみんな揃えてくれたんだ。感謝してもしきれないよ」
響「でも・・・なぜか最近、もう一度あの戦争をやり直したいと思ってしまうんだ」
喪黒「はて? それはなぜ?」
響「よくわからないんだ。今の生活は満足している。でも、どうしても気になって・・・」
喪黒「何か気がかりがあるのでしょうな。では、ここはゲームをしましょう」
響「ゲーム?」
喪黒「はい。それでは、この勲章をどうぞ」スッ
響「鳥を象った・・・これは?」
喪黒「これは不帰鳥をイメージしたものです。名前こそ縁起はわるいですが、お嬢さんのしたいことができますよ?」
響「! それって・・・」
喪黒「はい。タイムスリップをして、もう一度やり直しましょう。そして、もう一つの戦後を迎えるのです」
喪黒「ただし、どんなことがあっても、その勲章を信じて行動して下さい。それだけお約束を」
響「わかった・・・スパスィーバ」
喪黒「それではいきますよ?」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
響「くっ・・・!」
― 1939年11月15日 ―
響「・・・ん?」
響「(ここは・・・波止場?)」
雷「ほら、響。なにをボサっとしているの? 暁が来たよ」
響「え?」
暁「やっとこれで特Ⅲ型が揃ったわね」
雷「これから、頑張るのです!」
響「(これは・・・また、あの時に戻ったのかな?)」
響「(今度こそ・・・今度こそみんなを・・・!)」
― 1942年4月3日 ―
響「2人共、怪我は大丈夫?」
雷「大丈夫よ。工藤艦長の命令で、たくさんの英水兵を救ったの!」
電「電も、できれば助けたいと思っていたのです」
暁「まったく、貴女達らしいわね」
響「そうか・・・ (なんで連合国側の人間を助けるんだ・・・)」
響「(これから、自分達が沈むというのに・・・)」
― 1942年11月12日 23時40分 ―
響「(何とか修復は防げた・・・あの時とは違って、私もソロモン海戦に参加できた)」
響「(暗いが、敵艦の大体の位置は把握している・・・)」
響「暁。これから会敵しても、絶対に探査灯なんか照射しないでね」
暁「え!? あ、当たり前じゃない」
響「うん。暁、雷、電。これから、私の言う通りにして」
響「(1942年11月13日・・・暁、ルンガ岬沖での轟沈回避・・・)」
― 1944年4月13日 メレヨン島行き山陽丸船団護衛任務 ―
響「対潜掃討、単独にならなくて良かったね」
雷「一緒だと、心強いわね」
響「さぁ、今回の雷撃戦は激しくなりそうだ。私は前につくから、雷は十分気を付けて」
雷「わかったわ!」
響「(1944年4月13日・・・雷、グァム島西での轟沈回避・・・)」
― 1944年5月14日 ヒ六一船団護衛任務 ―
響「雷、持ち場は交代せずに、このまま行こう」
電「え? う、うん・・・」
響「(あと30分後・・・位置はわかっているんだ。あと少し・・・)」
響「(1944年5月14日・・・電、セレベス海での轟沈回避・・・)」
― 1945年8月15日 日本はポツダム宣言の受諾と軍の降伏を決定 終戦 ―
響「(結局、日本は戦争に負けてしまったけど、それでも・・・)」
響「(みんなはここにいる・・・私は勝ったんだ)」
響「(解体される、その日が来るまで・・・ずっと一緒だよ?)」
響「(こうも上手くいっているんだから、ロシア行きも回避できるかな?)」
― 1947年7月5日 ―
響「な・・・!」
ロシア人1「Мы не нужны другие. (他の艦はいらん)」
ロシア人2「Япония потеряла. Вы должны слушать то, что мы говорит. (日本は戦争に負けたんだ。俺達の言うことは聞いてもらうぜ?)」
ロシア人3「ヒビキタンカワユスゥゥーーーッ!!」
ロシア人4「ウラァーーーっ!!」
響「(なんで? 私は、みんなといたいのに・・・)」
響「(嫌だよ・・・もう、一人ぼっちは嫌だ・・・!)」
暁「響――っ!」
雷「ちょっと! 響を連れていかないでよ!」
電「やめて下さいなのです! うぅ・・・」ポロポロ
響「(何がゲームだ・・・折角ここまで頑張ってきたのに・・・)」
響「こんな勲章、信じるんじゃなかった・・・」
喪黒『響さん』
響「!?」
喪黒『とうとう約束を破ってしまいましたね?』
響「ど、どこにいるんだ!? 話が違うじゃないか!」
喪黒『それはこちらのセリフです。その勲章を信じ続けていれば、もしかしたら未来は変わっていたかもしれないというのに・・・』
響「なっ・・・!」
喪黒『因果応報です。ここまで頑張ってきたというのに、残念で仕方ありません』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
響「うわあぁぁぁ!?」
― 1972年9月19日 ウラジオストク沖、カラムジナ島岸 ―
響「・・・・・・」
ロシア人「Подготовка удара молнии! (雷撃用意!)」
響「(また、私はここで眠るのか・・・)」
響「(みんなとはお別れしちゃったけど、これが運命なのかもしれない・・・)」
ロシア人「Огонь! (撃て!)」
響「(みんな、さようなら・・・)」
ズドォォーーン!!
喪黒「何とも悲しい結末ですな。姉妹を助けたものの、自分だけ標的艦として人生を終えるなんて」
喪黒「この何があるかわからない人生、そう何事も上手くいくはずがありません」
喪黒「まぁ、安心して下さい。他の3隻のみなさんは、無事日本で解体されましたよ。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
川内(せんだい) 『反鬼マスク』オーホッホ・・・
川内「夜戦夜戦ー!」
提督「お前この前大破しただろ! しかもそのまま追撃しやがって!」
提督「夜戦はしばらくお預けだ!」
川内「いーやーだー! 夜戦! 夜戦がしたいよー!」
提督「ダメや言うとるやろわれー!?」
川内「まったく、提督は分からず屋なんだから」
川内「この前はちょっと張り切っちゃっただけなんだから・・・」
神通「まぁまぁ、提督もそれほど心配しているってことよ?」
川内「それはわかってはいるけど・・・」
那珂「何よ! この渋谷凛とかいうアイドル! 凄く可愛いじゃない!」ムキー
川内「はぁ・・・」
川内「(どうしたらもっと夜戦ができるようになるんだろう?)」
川内「(もっと強くなれば? 提督にもっと好かれれば?)」
川内「(頑張らないと・・・)」
喪黒「もしもし、お嬢さん。そんなに思い詰めた顔をして、どうしたんですか?」
川内「え? おじさん誰?」
喪黒「これは失礼しました。私、こういう者です」スッ
川内「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「せぇるすまんをしております。それも、夜戦専用の」
川内「夜戦!? 本当に夜戦ができるの!?」
喪黒「その通りです。貴女はこれから夜戦仮面です」スッ
川内「ん? マスク?」
喪黒「これはタダで差し上げましょう。お嬢さんの夜戦に対する敬意、脱帽ものです」
喪黒「このマスクをつけて夜戦をしてごらんなさい。きっと、鬼のくノ一と噂されるでしょう」
川内「本当? そんなに凄いんだ、これ」
喪黒「このマスクは想像以上の力を秘めています。条件として、このマスクをつけているところを、誰かに見られてはいけません。力が暴走し、大変なことになります」
川内「わかったわ! おじさん、どうもありがとう!」
川内「さてと、みんな部屋にいないし、つけてみるか」スッ
川内「おぉ! なんか恰好良い!」
提督「川内、ちょっと今度の出撃の作戦練るから、執務室に来てくれ」
川内「え? ということは・・・」
提督「そうだ、夜戦だ。お前にチャンスを与えてやろう」
川内「やったぁぁ!!」
提督「ははは・・・ん? マスクなんてつけて、何をしているんだ?」
川内「これは私のお守りよ! 今度の夜戦、期待していてね!」
川内「それっ!」ズガァァン
レ級「んぼっ」
川内「遅い! もらったぁー!」ズドン
ヲ級「ヲヲ・・・」
夕張「す、凄い・・・」
神通「」ポカーン
電「川内さん、一体何が・・・」
川内「へっへっへ、楽勝だね!」
提督「1隻も小破なしだと・・・? 川内、一体どうしたんだ・・・」
川内「夜戦は私に任せて! 誰も沈ませないよ!」
提督「そうだな、今回の戦績は大変良かった。今後も、よろしくたのんだぞ?」
川内「了解!」
川内「それからはもう、毎晩が楽しみなんだ!」
喪黒「ほほぅ、さぞ可憐に舞っているんでしょうな」
川内「提督も、私を優先して改二にしてくれたんだ! ますます張り切っちゃうよ!」
喪黒「ホッホッホ・・・」
川内「さて、今晩も頑張っていくよー」スッ
神通「あれ? 川内姉さん、まだ準備してたんだ」ガチャ
川内「!?」
川内「神通! 今見た!?」
神通「見たって、何が?」
川内「私がマスクつけるところ!」
神通「ええ、見たって言えば見たけど・・・」
川内「」
喪黒『お待ちしておりました。貴女なら、必ずヘマをすると思って、楽しみにしておりました』
川内「な!?」
神通「?」
喪黒『貴女は正体がバレてしまったヒーローと同じ・・・本物にはなれないのです。貴女はそのマスクの、本当の力を思い知るでしょう』
川内「あ・・・あぁ・・・」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
川内「うわあぁぁぁ!?」
川内「はっ!」スパ
北方棲姫「うぇーん!」
川内「今日は何色かな?」ズバ
駆逐棲姫「ユウダチネーサンタスケテー!」
川内「へへへ・・・良いよね、駆逐艦は」ズババ
飛行場姫「ひゃん!?」
電「川内さん! 遊ばないで下さいなのです!」
川内「電ちゃん・・・私は忙しいの。電ちゃんは今日は何色なのかな?」スパ
電「ひぅっ!?」
夕張「ちょっと! 味方に何をしているの!? やめなさいよ!」
川内「むふふ・・・私の邪魔をすると、痛い目に逢うよ? それっ!」ガバ
夕張「きゃぁ!?」
川内「はぁはぁ・・・」ゴソゴソ
夕張「いやぁ・・・やめてぇ・・・みんな見てるから・・・!///」ビクビク
電「///」
鈴谷「うわー・・・///」
金剛「Oh…」
比叡「ヒエー!?///」
喪黒「あらら、とうとう間違った方向にいってしまいましたな」
喪黒「あれこそ、真の夜戦仮面なのです。彼女の発言には、誤解を招くものが多いのですが、あれは全てそっちの意味だったのですね」
喪黒「もしかしたら、彼女のおかげで日本は平和になるかもしれませんね。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
夕張(ゆうばり) 『誘惑のBA10』オーホッホ・・・
夕張「提督、昨年度の深海棲艦に関してのデータを、資料としてまとめました。是非ご参考に」
提督「おぉ! ありがとう! こんなに膨大な量のデータを、こつこつとまとめてくれていたのか」
夕張「好きでやっていますので」
提督「いやぁ、助かるよ!」
夕張「あと、こちらの艦娘の資料と、平成26年度の物資調達品もまとめておきました」
提督「ありがとう、読んでおくよ」
夕張「提督、喜んでいたな」ニヤニヤ
夕張「(提督のためなら、どんなデータでもまとめてみせるんだから!)」
夕張「さて、今度は未確認の深海棲艦のデータでもまとめるか・・・」
夕張「・・・・・・」
夕張「うーん・・・」
夕張「(意外と資料がないわね・・・ちょっと手こずるかも)」
夕張「(私立図書館なんかにあるわけないよね、鎮守府の資料室にもなかったんだもの)」
夕張「(これは、直接私が出撃して確かめるしか方法はないかしら?)」
喪黒「ふむふむ、北方棲姫と港湾棲姫は姉妹であると・・・」
夕張「・・・?」チラ
喪黒「ほぅ、中間棲姫と飛行場姫もでしたか。すると4姉妹と・・・」
夕張「あの、それ本当ですか?」
喪黒「はい? 失礼ですが、どなたでしょうか?」
夕張「あ、すいません・・・」
喪黒「いえいえ、良いんですよ。私も海上自衛隊と関係がありまして、独自に調べているんですよ」
喪黒「と言っても、マイナーな情報しか手に入りませんが・・・」
夕張「良いんです。とにかく、私にも詳しく教えて下さい!」
喪黒「貴女は艦娘でしたか。なるほど、道理で詳しいはずです」
夕張「私も個人的にデータをまとめるのが好きなんです。でも、最近難航していて・・・」
喪黒「データに対する情熱が桁違いですね。これは、自分の趣味の他にも、誰かのためにやっているのですかな?」
夕張「え、えぇ、まぁ・・・///」
喪黒「ホッホッホ。私にもお手伝いをさせて下さい。私はこういう者です」スッ
夕張「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「せぇるすまんをしていますが、私の提供する商品は全て無料です」
夕張「無料ですか?」
喪黒「はい。貴女にはこのスカウターを差し上げましょう」スッ
夕張「計測器ですか?」
喪黒「はい。小型ですので、前腕部に装着して下さい」
喪黒「このスカウターは、回線が何通りかありまして、使用用途によって効力が異なります。慣れれば、今までよりもさらに多くのデータの収集が可能になる代物です」
喪黒「例えば、回線をこうやって調整して」カチ
喪黒「ふむふむ、貴女の想い人は、同じ鎮守府の提督さんでしたか」
夕張「な!? なんでそれを!///」
喪黒「ホッホッホ、面白いでしょう? 使い方を間違わなければ、きっと貴女は満足してくれるはずです」
夕張「これを私にくれるんですか?」
喪黒「もちろんです。ただし、BA10という回線だけは使用しないで下さい」
喪黒「あ、おまけでそれぞれの回線表を資料にまとめましたので、こちらもどうぞ」スッ
夕張「あ、ありがとうございます」
夕張「(ふーん、見かけや性能は最新式なのに、回線形式だけは旧式なんだ)」
夕張「(えーと、なになに・・・)」
― Instructions for the Collector (無線使用上の注意) ―
When using the Collector, it is imperative to use the correct channels.
Refer to the list. (無線使用に際しては、以下に記載する使用回線を厳守すること。)
[List of applied channels] (使用回線一覧)
AA00 – AA03 : Ships 1 (船舶用1)
AA10 – AA23 : Ships 2 (船舶用2)
AB00 – AB23 : Ships 3 (船舶用3)
BA00 – BA03 : Ships 4 (船舶用4)
BA11 – BA23 : General 1 (一般用1)
BB00 – BB23 : General 2 (一般用2)
The use of the channel [BA10] is strictly prohibited, except in case of an emergency.
(※なお、緊急の場合を除き、専用特殊回線 [BA10] の使用は厳禁とする。)
夕張「(うわ、英語じゃん・・・でも、この程度なら読めるわ)」
夕張「緊急時以外はBA10を使っちゃダメなのね・・・」
夕張「どれ、試しにこの回線に合わせて・・・」カチ
鈴谷「」テクテク
夕張「あ、鈴谷さんだ。何の情報がとれるかな?」ピピ
「対象 / 鈴谷(すずや) 今週における自慰回数4回」
夕張「うぇっ!?///」
夕張「(こ、こんなことまで測定するの!? てか、鈴谷さん意外と多い・・・///)」
鈴谷「?」
夕張「えいっ!」ズダン
響「そこ、ガラ空きだよ」ズドン
夕張「(よし、今のうちに回線を・・・)」カチカチ
夕張「よし! 空母水鬼のデータをゲット!」
長門「か、固いなコイツ・・・!」ズガァァン
空母水鬼「ズイカク・・・」
夕張「喪黒さん、本当にありがとうございます! あれからどんどん膨大な資料が完成しました!」
喪黒「それは凄いですねぇ」
夕張「あ、これはお土産です」スッ
喪黒「ん? これは・・・! 飛行場姫、港湾棲姫、北方棲姫、中間棲姫の4ショット!」
夕張「貴重品ですよ? 私が開発したステルス機能を搭載して撮影したんです」
喪黒「これは貴重な写真をありがとうございます」
提督「夕張、最近頑張ってばかりだから、少しは休んでくれよ?」
夕張「はい。わかっているよ」
提督「お前には本当に頭が上がらないよ。お前の作成してくれた資料のおかげで、大分作戦等にも役立っているんだ。いつもありがとう」
夕張「ふふ・・・///」
夕張「(やった! テイクに褒められちゃった///)」
夕張「(結局、喪黒さんの言いつけ通りBA10は使わなかったけど、どんなのなんだろう?)」
夕張「(最近、提督とますます良い関係になってきたし、もしかしたら・・・)」
夕張「(提督の好きな人がわかったりして・・・)」
夕張「(うぅ~、でも約束は約束だし・・・う~ん)」
夕張「(でも喪黒さんはいないんだし、ちょっと回してすぐに戻そう! うん!)」
夕張「(提督に向けてこう・・・よし)」カチ
夕張「(・・・? あれ、何も表示されない)」
喪黒『ばぁ!』
夕張「ひゃあ!?」ビク
提督「どうした!?」
夕張「な、なんでもないよ!」
喪黒『何でもないはずがありません。貴女は好奇心のあまり、約束を破ってしまったのです』
夕張「ゴ、ゴメンなさい・・・」
喪黒『いいえ、許しません。BA10の真実、たっぷりと知っていただきましょう』
喪黒『あ、ちなみにモニターから失礼しました』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
夕張「きゃあぁぁぁ!?」
夕張「提督、朝ですよ! 起きて下さい!」
提督「ふわぁ~・・・おはよう」
夕張「提督、今日は私が昼食を作りました。どうぞ召し上がれ」
提督「お、美味そうだな! いただきます!」
夕張「提督、今日の業務も終了しましたね・・・」
提督「え、えーとじゃあおやすm」ガシ
夕張「待って下さい。まだ出してないですよ?」
提督「い、いや良いよ! 毎晩悪いし!」
夕張「そんなこと言って、ここは正直よ?」サワサワ
提督「あぅぅ!?」ビクビク
夕張「提督は私のものなんですから、全部データにまとめています」
夕張「提督の全てを管理しているんですから、楽にしていてね・・・?」チュ
提督「ん・・・」
喪黒「誘惑のBA10、好きな人の想い人を計測するのではなく、対称を無理やり自分のものにする効果だったんです」
喪黒「夕張さんは、もともとデータに対する執着がありましたから、さぞ独占欲が強いでしょうね」
喪黒「ま、あの2人は幸せそうですな。修羅場にならないことを、お祈り致します。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
鈴谷(すずや) 『純情ヘアピン』オーホッホ・・・
鈴谷「提督! 一緒にカレー食べよう!」
提督「またカレーかぁ・・・昨日もカレーじゃなかったか?」
鈴谷「良いじゃん、美味しいんだし!」
提督「それに、たまには熊野達と一緒に昼食をとっても良いんだぞ? あいつら寂しがっているぞ」
鈴谷「良いの良いの! さ、食べよう?」
提督「はいはい・・・」
鈴谷「(まったく、提督は鈍感なんだから)」
鈴谷「(提督と一緒にいたいから、お昼誘っているんじゃん!)」
鈴谷「(秘書艦になってから1年かぁ・・・早いな)」
鈴谷「(この調子で提督と・・・にひひ)」ニヤニヤ
最上「鈴谷は何をニヤけているんだい?」
熊野「見てはいけませんわ」
鈴谷「さて、執務室に戻ろう」
鈴谷「(? 話し声が聞こえる・・・)」
提督『あぁ~・・・効くぅ~』
榛名『随分凝っていますね』モミモミ
提督『最近寝ていないからな、肩凝りが酷いんだ』
榛名『榛名で良ろしければ、いつでも呼んで下さいね?』モミモミ
提督『すまないな、頼むよ。いやはぁ~・・・榛名は上手だなぁ~』
榛名『ふふ・・・』
鈴谷「・・・・・・」
鈴谷「(なんか良い雰囲気)」ムッ
鈴谷「(提督は榛名さんみたいに、純情な娘が好きなのかなぁ・・・)」
鈴谷「(私、よくJKみたいって言われるし)」
鈴谷「(でも、提督を想う気持ちは負けていないし!)」
提督「鈴谷、ちょっと買い出しに行ってきてくれないか? 比叡がやらかした」
鈴谷「ヒエー・・・うん、わかった!」
― スーパー ―
鈴谷「えぇーと、クローブとローリエとターメリックっと・・・」
鈴谷「(・・・純情になるスパイスとかないかな?)」
鈴谷「あるわけないよねぇ・・・」ハァ
喪黒「・・・・・・」
喪黒「お嬢さん」
鈴谷「ひゃあ!?」ビク
喪黒「おっと、これは驚かせてすいません」
鈴谷「あのぉ~・・・鈴谷に何か用ですか?」
喪黒「はい、何かを呟きながら溜息を吐いていたもので、少し気になりましてな」
鈴谷「あぁ~、ちょ、ちょっとですね、はは」
喪黒「私で良ろしければ、お話を伺い致しますが?」
鈴谷「でも、つまらないですよ?」
喪黒「大丈夫です! 貴女のような可愛らしい女性の話す内容に、つまらないものなどありません!」
鈴谷「(か、可愛い・・・!)」ニヘラ
鈴谷「えっと、じゃあ少しだけ」
喪黒「・・・なるほど、自分の性格を少し考えていたと」
鈴谷「うん・・・提督は、本当は真面目な娘の方が好きなんじゃないかって」
鈴谷「鈴谷は提督のことが好きで・・・どうすれば良いかな?」
喪黒「貴女は貴女のままで良いではありませんか、可愛らしい女性だと思いますよ?」
鈴谷「え、えへへ」クネクネ
喪黒「まぁ、そんなに気になるのでしたら、これを差し上げましょう」スッ
鈴谷「ヘアピン・・・?」
喪黒「実は私、せぇるすまんをしております」スッ
鈴谷「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい、私は貴女のように、悩んでいる方のお役に立てるよう、無償で商品を提供しているのです」
鈴谷「え!? タダ!?」
喪黒「はい。もちろん、そちらの商品も例外ではございません」
鈴谷「で、でもそんな・・・」
喪黒「大丈夫です。私にとっての報酬は、お客様の満足でございます」
喪黒「そのヘアピンは、貴女の思い描いているような女性になるための道具です」
喪黒「きっと、提督とのご関係も今以上に上手くいくと思いますよ?」
喪黒「ただし、条件があります」
鈴谷「?」
喪黒「そのヘアピンは、海水に触れた後は必ず、就寝前に綺麗に拭いて下さい」
鈴谷「あ、そのくらいだったら大丈夫そう」
鈴谷「おじさん、どうもありがとう!」
喪黒「いえいえ・・・」ニヤ
鈴谷「ちょっとサイズが大きめで、可愛い柄だなぁ」スッ
鈴谷「・・・うん、バッチシだね!」
熊野「あら、鈴谷さん。そのヘアピンは新しく買ったのかしら?」
鈴谷「うん、ちょっとね。どぉ? 似合っているでしょ!」
熊野「良いセンスだと思いますわ」
鈴谷「にへへ・・・ (よし、これで提督も!)」
提督「お、鈴谷。ヘアピン変えたのか?」
鈴谷「うん、似合っているかな?」
提督「凄く可愛いじゃないか! よく似合っているよ!」
鈴谷「えへへ/// 提督にそう言われると、凄く嬉しいな///」テレ
提督「」ドキ
鈴谷「さ、あともう少しで書類作成が終わるよ? 頑張ろう!」
提督「(おかしいな・・・鈴谷が非常に可愛い・・・)」
鈴谷「さ、提督。夕食用意してきたよ」コト
提督「お、すまないな・・・ん? 今日はグリーンカレーを作ったのか?」
鈴谷「うん。いつも同じカレーだと、飽きると思ったから」
提督「でも、カレーにすることは変わらないのな・・・まぁ良いや、いただきます!」パク
提督「!?」
提督「激辛じゃねぇか!」
鈴谷「へっへーん! ハバネロたっぷり効かせたからね!」ニヤ
提督「このビッチ型重巡が!」
鈴谷「だって・・・提督に構ってほしかったんだもん・・・」
提督「え・・・」キュン
鈴谷「な、何でもないよ/// ほら、たまには辛い物も良いじゃん?」
鈴谷「一緒に食べよう?」
提督「お、おぅ・・・ (鈴谷が・・・あの鈴谷が可愛いだと!?)」
鈴谷「あの後から、提督と凄い良い関係になっているんです!」
喪黒「ほぉ、それは良かったです」
鈴谷「このままいけば、提督と・・・!」
喪黒「ホッホッホ、頑張ってくださいね・・・」
鈴谷「第一艦隊、ただいまをもって帰還しました!」
提督「おぅ、おかえり。凄いじゃないか! 勝利Sだなんて」
鈴谷「えへへ! 提督のためなら、どんどん頑張るよ、鈴谷!」ニコ
提督「ふぉ!?」
鈴谷「じゃあ鈴谷、ちょっと入渠してくるね」
鈴谷「ふぅ、さっぱりした」
鈴谷「(あ、入渠する前に机にヘアピン置きっぱなしだった)」チラ
鈴谷「そろそろ拭いておくか・・・」
熊野「鈴谷さん! 大変ですわ!」ガチャ
鈴谷「ど、どうしたの!?」
熊野「み、三隈さんが・・・!」ユビサシ
鈴谷「え・・・?」チラ
三隈「くーまくまくま、くまくまりんこ!!」
最上「」
鈴谷「あちゃー・・・」
鈴谷「はぁ、凄い疲れた・・・」
鈴谷「(何か忘れているような気がするけど・・・もう寝たい・・・)」
鈴谷「おやすみー・・・」ドサ
鈴谷「・・・ℤℤℤ」
喪黒「」ニヤ
鈴谷『・・・ん?』
鈴谷『(ここは・・・? 夢かな?)』
喪黒『鈴谷さん』
鈴谷『あ! おじさん!』
喪黒『貴女、約束を破りましたね?』
鈴谷『え? ・・・あ!』
喪黒『もう日が変わってしまったではありませんか、時既に遅しです』
鈴谷『ヤバ・・・おじさん、そこをなんとか! ね?』
喪黒『ダメです。貴女には罰を受けて頂きましょう』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
鈴谷「きゃああぁぁぁ!?」
鈴谷「う、うーん・・・」
鈴谷「(ゆ、夢か、怖かったぁ・・・)」ヌチャ
鈴谷「え?」
鈴谷「(なんでパンツが濡れているの? しかも、これって・・・///)」
鈴谷「・・・なんか、ムラムラする///」ハァハァ
鈴谷「(ウソ・・・なんでこんなにムラムラするの?///)」
熊野「うーん・・・あら、おはようございます、鈴谷さん」
鈴谷「え!? あ、おはよう・・・///」
熊野「・・・? 何やら顔が赤いようですが」
鈴谷「な、何でもないよ!///」
鈴谷「(あちゃ~・・・完全にタイミングを逃した!)」
鈴谷「ん・・・ふぅ・・・///」モジモジ
鈴谷「(ヤバ・・・もうパンツがグショグショだよぉ///)」
鈴谷「(染み出てないよね? つーか、なんかさっきから提督がこっち見てるし///)」
提督「」チラッチラッ
鈴谷「(ハァハァ・・・ヤリたい・・・ヤリたい・・・///)」ハァハァ
提督「・・・す、鈴谷」
鈴谷「え!?///」ビク
提督「じ、実は少し大事な話があるんだ」スタスタ
提督「お前に、これを見てもらいたい・・・」スッ
鈴谷「(顔近い! 顔近い!///)」ドクンドクン
提督「・・・鈴谷、俺と契りを交わしてはくれないか?」
鈴谷「ハァハァ・・・///」
提督「・・・鈴谷?」
鈴谷「もう我慢できない!!」ガバ
提督「うわぁ!? ちょ、ちょっとまtt」
喪黒「おやおや、あれでは完全に純情とは言えなくなってしまいましたね」
喪黒「鈴谷さん、貴女は最初から変わる必要はなかったのですよ?」
喪黒「提督はありのままの貴女が好きだったはずです。この後、悪い方向に考えが変わらなければ良いのですが・・・」
喪黒「欲張るのは、あまり良くないことですよ? オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
熊野(くまの) 『怪鳥茶』オーホッホ・・・
熊野「とぉぉ↑おう↓!!」ズガァァン
レ級「けぺ!」
熊野「ひゃぁぁぁ!」ドガン
ヲ級「ぎゃん!」
金剛「Oh! 凄いデース!」
皐月「さすが熊野さん!」
熊野「このくらい、当然の結果ですわ!」ドヤ
熊野「(またやってしまいましたわ・・・)」
― エステ店 ―
熊野「(淑女たる私が、戦闘時になると奇声を発してしまうだなんて・・・)」
熊野「(このままでは、イメージダウンしてしまいますわ!)」
熊野「(どうにかして治さなければ・・・)」
熊野「あ、そこ良いですわぁ~」
喪黒「ぐはぁ~! たまりませんなぁ!」
熊野「ふぅ・・・今日も素晴らしかったですわ」
熊野「そろそろ戻って提督の手伝いをしますか」
喪黒「もしもし、お嬢さん。少しよろしいですか?」ヌッ
熊野「あら? 私ですか? 何のご用で?」
喪黒「さきほどの貴女が、何やら焦っているようにも見えまして・・・あ、私こういう者です」スッ
熊野「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。実は私せぇるすまんをしております」
熊野「せぇるすまんですか・・・生憎、私は無駄な出費は致しませんの」
喪黒「いえいえ、お金は一銭も頂きません。私は貴女のようにココロに焦りを感じている方々の支援をする、ボランティアのようなものです」
熊野「そ、そうですか」
喪黒「私にお力になれることがあるかもしれません。どうぞ、お気軽に話してみて下さい」
熊野「では・・・」
喪黒「ふむふむ、砲撃時の掛け声を直したいと」
熊野「そうなんですの・・・折角築き上げてきた淑女の座、こんなことで失いたくはありませんわ」
喪黒「よろしい! では、こちらの商品をどうぞ」スッ
熊野「これは?」
喪黒「これは怪鳥茶と呼ばれる、美容効果も抜群のお茶です。もちろん、気にしている癖もきっちり直りますよ?」
熊野「まぁ! 凄いですわね!」
喪黒「もちろん、こちらの商品に関しても、お金は一銭も頂きません。どうぞ、大事に飲んで下さい」
喪黒「あ、そうそう。このお茶は1日に1杯しか飲んではいけません。そのことだけをお守り下さい」
熊野「わかりましたわ」
熊野「さて、このお茶は・・・就寝前のひと時に飲むとしますか」
熊野「今日は初めてですから、早速今飲んでみますか」コポコポ
熊野「あら、良い香り」ズズ
熊野「・・・大変、美味しいですわね」
熊野「早速効果があれば良いのですが・・・」
― 洋上 ―
熊野「はっ!」ズガァァン
ネ級「クマノンイタイヨー」
熊野「沈みなさいっ!」ドォン
タ級「あいた」
皐月「熊野さん、前にも増して凛々しくなったね」
卯月「格好良いぴょん!」
熊野「(ふふ・・・やりましたわ!)」
提督「なんか最近、熊野って可愛くなったよな」
熊野「はい?」
提督「あ、すまん。ちょっとそう思ったから・・・」
鈴谷「ちょっと、提督?」ムッ
提督「あはは・・・」
熊野「(美容効果もばっちりですわ)」
熊野「・・・といった具合で、非常に順調ですの」
喪黒「ほぉ、それは良かったです」
熊野「ふふ・・・本当に助かりましたわ。感謝致しますわ」
喪黒「いえいえ、良いんですよ。約束を守って頂ければ・・・」
熊野「ふぅ、今日も1日が終わろうとしていますね」ズズ
熊野「さて、明日の朝も早いですから、おやすみしますか・・・」
提督「熊野、すまん。ちょっと作戦会議に出席してくれないか?」
熊野「今からですか?」
提督「本当にすまん。色々考えてはいたんだが、やはりお前の意見も聞きたくてな」
熊野「わかりましたわ・・・ (夜更かしはお肌に良くないというのに・・・)」
― 3時間後 ―
提督「うーん・・・いや、ここはこの娘を行かせた方が・・・」
熊野「(ね、眠いですわ・・・!)」
提督「ここはこのルートを行くか・・・」
熊野「(あぁ、もう! 肌荒れが起きたらどうするんですの!?)」
熊野「提督、少しお茶を飲んできますわ」
熊野「折角今日まで頑張ってきましたのに・・・こんなことで」
熊野「・・・・・・」
熊野「お茶の飲み過ぎで死ぬことなんて、ありませんわよね・・・?」
熊野「しかもたかが1杯程度・・・」
熊野「(これは提督が悪いんですわ! そう、私は悪くない・・・)」コポコポ
熊野「」ズズ
熊野「ふふ・・・これで大丈夫でしょう!」
喪黒『いいえ、大丈夫ではありません』
熊野「え? 喪黒さん?」キョロキョロ
喪黒『貴女は約束を破ってしまいましたね・・・まったく、淑女の風上にもおけないことを』
熊野「こ、これは・・・!」
喪黒『そのお茶は摂取量を間違えると、大変なことになるんです。どうなっても知りませんよ?』
熊野「あ・・・あぁ・・・!」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
熊野「ひゃああぁぁぁ!?」
熊野「ぅあたたたた!!」ドカンドカン
装甲空母姫「あちっ」
熊野「ほわぁああっ! ほぁちょぉおおっ!!」ズドンズドン
空母棲鬼「んぼっ」
提督「・・・熊野は一体どうしたんだ?」
鈴谷「ま、何かが吹っ切れたんだろうね」
提督「まぁ、あれはあれで強いから良いか・・・」
熊野「サモハンハンキンポーォォォッ!!」
喪黒「あれほど淑女にこだわりを持っていたお方が、こうも変貌してしまうとは」
喪黒「もともと、こういう才能もお持ちだったのではないのですかねぇ」
喪黒「ま、決して元に戻ることはないでしょう。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
翔鶴(しょうかく) 『アンラッキー・ウェイ』オーホッホ・・・
翔鶴「以上が報告になります」
提督「良いねぇ! 頑張ったじゃないか!」
翔鶴「艦載機の子達も、随伴艦の皆さんも、本当に頑張ってくれました!」
提督「え」
瑞鶴「え」
翔鶴「?」
金剛「・・・・・・」ハタブネ
翔鶴「あ」
榛名「・・・・・・」
鈴谷「・・・・・・」
夕立「・・・・・・」
翔鶴「あ、あの・・・」オロオロ
瑞鶴「翔鶴姉も悪気があったわけでは・・・」
金剛「・・・私は気にしていないデース」トボトボ
榛名「・・・・・・」
鈴谷「あ、あはは・・・」
夕立「・・・ぽいぽい」
翔鶴「(やってしまったわ・・・)」
翔鶴「(はぁ・・・さっきの発現はさすがにないわよね)」
翔鶴「(瑞鶴も庇ってくれたけど、ちょっと顔が引き攣っていたし・・・)」
翔鶴「(事情を知った扶桑さん達には、ニヤニヤされるし)」
翔鶴「不幸だわ・・・」ズーン
喪黒「ばぁ」
翔鶴「きゃあ!? だ、誰ですか!?」
喪黒「これは驚かしてすみません。私、各鎮守府の老朽化を調べるために、視察に来た者です」
喪黒「というのは嘘で、せぇるすまんをしております」スッ
翔鶴「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。失礼ですが、貴女は負のオーラがプンプン漂っていますよ?」
翔鶴「え、嘘!?」
喪黒「これは何か拙いことをなさったのですな? 私が助けてあげましょう」
翔鶴「じ、実は・・・」
喪黒「ははーん、つい空気を読まなかったと」
翔鶴「はい。金剛さんには後に謝罪をしたのですが、凄く落ち込んでいて・・・」
翔鶴「妹の榛名さんからは、睨まれました・・・」
喪黒「あらら。でも、貴女も一緒に落ち込んでいてはいけませんよ?」
喪黒「どれどれ、それではこれを差し上げましょう」スッ
翔鶴「これは何ですか?」
喪黒「これは反喜力装置と呼ばれるもので、不幸を幸運に変えてくれるものです」
喪黒「お部屋にでも置いて下さい。あ、もちろんタダですので、お気軽に」
翔鶴「い、良いんですか?」
喪黒「ええ、もちろん。ただし、妹の瑞鶴さんの名前を、1日に20回以上言ってはいけません」
喪黒「それだけ、お約束を」ニヤ
翔鶴「(これ、本当に効果があるのかしら?)」
翔鶴「(まぁ、気休めにはなるでしょう)」
翔鶴「!? (窓から離れなきゃ!)」ダッ
ガシャーーン!!
翔鶴「きゃっ!」
赤城「すいません! 加賀さんが暴走して!」
加賀「やりました」
翔鶴「い、いえ、大丈夫ですよ?」
翔鶴「(あれ? 今なんでわかったんだろう?)」
翔鶴「(不思議なこともあるのね・・・)」テクテク
翔鶴「!? (上から何か落ちてくる?)」シュバ
ゴッ!! ゴロゴロ・・・
赤城「すいません! 加賀さんが油手で!」
加賀「ちっ・・・外したか・・・」ボソ
翔鶴「私は大丈夫ですけど、気をつけて下さいね?」
翔鶴「(また・・・あの装置、本物?)」
翔鶴「(あれからというもの、凄く運勢が良くなったような気がするわ)」
翔鶴「(扶桑さん達も、グヌヌしていたわ)」
瑞鶴「翔鶴姉、なんか最近嬉しそうだね」
翔鶴「そうかしら? ふふ、瑞鶴のおかげかも、ね?」
瑞鶴「え? なにそれ?」
反喜力装置 : 18 ピッ
提督「急に集まってもらってすまない。至急、出撃してくれ!」
翔鶴「はい、わかりました!」
翔鶴「瑞鶴、今日も張り切って行くわよ!」
瑞鶴「うん!」
翔鶴「くっ・・・!」パシュ
瑞鶴「敵さんもなかなかやるねぇ!」
金剛「ファイアーッ!」ズガァァン
榛名「それー!」ビシバシ
ヲ級「ヲ!」シュバ
翔鶴「!!」
翔鶴「瑞鶴! 避けて!」
瑞鶴「え? あわわわ!?」パッ
ズガァァン!!
瑞鶴「ふぅ~、危なかった! 翔鶴姉、ありがとうね!」
翔鶴「気を付けてね?」
喪黒『それはこちらのセリフです、翔鶴さん』
翔鶴「えっ!?」ビク
喪黒『まったく、本当に妹さんがお好きなのですね。提督さんも、軽度のノイローゼになっていますよ?』
翔鶴「ど、どこから・・・!?」
喪黒『約束を破ってしまった以上、これから貴女には辛い経験をして頂かなくてはなりません』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
翔鶴「きゃあぁぁぁ!?」
ヲ級「」ピタ
レ級「」ピタ
ネ級「」ピタ
タ級「」ピタ
離島棲鬼「」ピタ
榛名「・・・?」
瑞鶴「あれ? 動きが止まった・・・」
鈴谷「? 何か取り出したよ?」
ヲ級「」ブン
レ級「」ブン
ネ級「」ブン
タ級「」ブン
離島棲鬼「」ブン
翔鶴「痛いっ!」パコーン
瑞鶴「タ、タライ!?」
夕立「うわー、なんか楽しそうっぽい!」
翔鶴「やめてーっ!」パコーン
瑞鶴「なんで翔鶴姉だけ狙われているのよ!? て、撤退! 撤退!」
提督「んで、これはどういうことだ?」
瑞鶴「えっと、翔鶴姉が何故か深海棲艦からずっとタライを投げられていて」
提督「撤退したは良いけど、気付いたら大量の深海棲艦がついてきていた、と」
瑞鶴「ええ。しかも、どんな砲撃もあのタライで防いじゃうの。とんでもない装甲よ?」
提督「鎮守府の1階部分とかもう悲惨だよ? ガラスが勿体ない」
提督「こちら側に攻撃してくる様子はないから、今本部に連絡したよ。もうすぐ何とかしてくれるだろ」
瑞鶴「翔鶴姉、無事に入渠できているかな?」
提督「さぁな。翔鶴には悪いが、もう少し頑張っていてもらうしかないな」
翔鶴「ふえぇーん! なんで私ばっかり!」グスグス パコーンパコーン
喪黒「不幸体質というのは、実に理不尽なものですなぁ」
喪黒「あのタライは、一体どこから大量にでているのでしょうか?」
喪黒「ま、あともう少しの辛抱ですよ、翔鶴さん。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
瑞鶴(ずいかく) 『愛のブーメラン』オーホッホ・・・
瑞鶴「全機爆装、準備出来次第発艦! 目標、母港執務室の提督! やっちゃって!」シュバ
提督「うわあぁぁぁ!!」ドカーン
提督「瑞鶴! いくら俺が悪いからって、いい加減にしてくれ! 執務室がメチャクチャだ!」プスプス
瑞鶴「ゴ、ゴメンなさい・・・」
瑞鶴「あーあ、またやっちゃったなー・・・」
瑞鶴「(今回は提督さんが悪いってわけでもなかったんだけどね)」
瑞鶴「(なんかついつい爆撃したくなって・・・病気なのかしら?)」
喪黒「ココロのヤマイ、見ーつけた」ヌッ
瑞鶴「いやあぁぁ!!」シュバ
喪黒「あいたたた」ズバババ
瑞鶴「あ! ゴメンなさい!」
喪黒「・・・ゴメンで済んだら、警察はいりません」
喪黒「どうしてくれるんです・・・私の大事な顔が・・・」コツ…コツ…
喪黒「こんなになってしまったではありませんか・・・」ゴゴゴゴ
瑞鶴「ひいぃぃぃっ!?」ビクビク
喪黒「いやぁ、さっきのはちょっとしたジョークですよ」
瑞鶴「死ぬかと思ったわ・・・って、貴方本当に誰?」
喪黒「こういう者です。せぇるすまんをしておりますが、無料のボランティアのようなものです」スッ
瑞鶴「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。この現代社会、常にストレスを抱えて生活をしている方が多いですからね。年代層は幅広いものです。もちろん、職種や環境の問題もありますが」
喪黒「そういった状態が続き、ココロが病んでしまった方々を、私は何人と見てきました」
瑞鶴「・・・・・・」ゴク
喪黒「みなさん、不幸な結末を迎えました・・・そこで」
喪黒「貴女に特別なものをあげましょう。これです」チャキ
瑞鶴「これはブーメラン? なんでまた・・・」
喪黒「このブーメランは、投げて帰ってきたのをキャッチする。普通のブーメランと使い方は変わりません。しかし、これをすることによって、貴女の望んでいることが起きるでしょう」
瑞鶴「え? 本当?」
喪黒「はい。ただし、このブーメランは人に向かって投げたり当てたりしないで下さい」
瑞鶴「わかったわ。あと、あれ大丈夫なの?」チラ
喪黒「ん?」
憲兵「待てー!」
喪黒「あららら!」ドスドス
瑞鶴「あのおじさん、誰だったのかしら?」
瑞鶴「(それにしても、ブーメランねぇ・・・)」
瑞鶴「それっ!」ブン シュルルル
瑞鶴「ほっ」パシ
瑞鶴「(こんなので、効果があるのかしら?)」
提督「瑞鶴、こんなところで何をしているんだ? なんか不法侵入者が現れたって騒いでいるから、早く中に入るんだ」
瑞鶴「あ、提督さん・・・」
瑞鶴「提督さん、さっきはゴメンなさい。いつもやり過ぎてしまって、ゴメンね?」
提督「え?」
瑞鶴「まだ片付いていないんでしょ? 後は私がやっておくから。あと、書類も全部終わらせましょう?」
提督「お、おう・・・」
瑞鶴「(あれ? 普通にできた・・・)」
瑞鶴「ほいっ!」パシ
瑞鶴「(よし、今日の分はやったわ)」
翔鶴「瑞鶴ー! ここにいたのね」
瑞鶴「翔鶴姉? どうしたの?」
瑞鶴「貴女がいないと、どうにも落ち着かなくて・・・」
瑞鶴「(提督さん、ノイローゼにならないかなぁ・・・?)」
瑞鶴「まったくもう、翔鶴姉は甘えん坊なんだから」ナデナデ
翔鶴「うふふ・・・///」
喪黒「ほほぅ、それは良かったですね」
瑞鶴「ええ! それより、憲兵さんは大丈夫なの?」
喪黒「彼との鬼ごっこは癖になりそうですな! オーホッホ」
憲兵「待て! 今日という今日は許さん!」
喪黒「あひゃあ!」ドスドス
憲兵「喰らえ!」バンバン
喪黒「いたたた」ビシビシ
瑞鶴「(この書類を書いたら、またブーメラン投げに行こう)」
提督「・・・七面鳥のグレービーソース風が食いたいな」ボソ
瑞鶴「・・・急に何?」ピク
提督「いや、ふと思っただけだよ。別にお前のことじゃ・・・ぷっ」クスクス
瑞鶴「」イラ
提督「な、なんでもねぇよ、ほ、本当・・・くくく」ニヤニヤ
瑞鶴「思いっきり笑っているじゃない! えいっ!」ブン
提督「あいた!」バキ
瑞鶴「あ・・・」
提督「いててて・・・なんだ、これ? ブーメランか? いきなり投げつけてくるなんて、酷いじゃないか!」
瑞鶴「っ!」パシ
瑞鶴「提督さんのバカ!」ダッ
瑞鶴「(ど、どうしよう・・・! 提督さんに向かって投げちゃった)」
瑞鶴「(痛かっただろうなぁ・・・大丈夫かなぁ?)」
喪黒「いいえ、大丈夫ではないです」
瑞鶴「も、喪黒さん!?」
喪黒「そんな危険なものを、よく人に向かって投げつけられましたねぇ?」
瑞鶴「だってあれは! 提督さんが悪いのよ!」
喪黒「いいえ、何があったとしても、彼を傷つけた貴女が悪いのです」
喪黒「照れ隠しとはいえ、人を傷つけた代償、覚悟して下さい」
喪黒「ドーーーーン!!!!」
瑞鶴「きゃあぁぁぁ!?」
瑞鶴「(喪黒さん、帰っちゃった・・・)」
瑞鶴「(このブーメランを投げて、提督さんに謝りにいこう)」スッ
瑞鶴「はっ!」ブン シュバババ
瑞鶴「よいしょ・・・・・・!?」
瑞鶴「(え? 体が動かない・・・どうして!?)」
瑞鶴「(は、早く取らないと・・・)」
瑞鶴「(い、いやあぁぁぁ!!)」
ズバッ!! ドッ! ゴロゴロ・・・
瑞鶴「」
喪黒「あちゃー・・・あれは入渠して直せるかどうか」
喪黒「自分が相手にしたことというのは、大抵自分にも返ってくるものです。良いことをしたのなら、別なんですが」
喪黒「道具に頼り過ぎるのも良くないのですよ? いつかは自分で挽回をしないと」
喪黒「よくわかって頂けましたか? 瑞鶴さん。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
龍鳳(りゅうほう) 『猛鯨』オーホッホ・・・
龍鳳「提督! 今日こそは出撃に!」
提督「すまん、まだお前の性能を把握しきれていないんだ。もうちょっと待ってくれ」
龍鳳「そ、そうですか・・・」シュン
提督「(潜水母艦から軽空母に改装したのは良いが、もう少し辛抱してくれ)」
龍鳳「はぁ・・・」
龍鳳「(折角改装したのに、提督が全然出撃させてくれない・・・)」
龍鳳「(そして、今日も買い出し当番・・・私はもう、潜水母艦じゃないのに)」
龍鳳「今日はオムレツも作ろうかしら」
喪黒「ホッホッホ、私も食べて良いですか?」
龍鳳「え?」
喪黒「あ、冗談です。いや、貴女が少し寂しそうな顔をしていたものですから、少し声をかけたんです」
龍鳳「そ、そう見えますか?」
喪黒「はい。これは何かお有りですな? もし良ろしければ、少し話しませんか?」
龍鳳「え、えぇと・・・」
喪黒「ナンパではありませんよ。さぁさ、早くレジに持っていきましょう」
喪黒「改装したのは良いものの、なかなか出撃させてくれずに落ち込んでいると」
龍鳳「そうなんです。私、凄く嬉しくって、すぐにでも出撃したいんです」
喪黒「提督さんも、貴女のことを思って慎重になっているのですよ」
喪黒「よし、では今度の出撃のために、お守りを差し上げましょう」スッ
龍鳳「メダル、ですか?」
喪黒「はい。これはバイオレントメダルという、戦闘力が上がるお守りです。戦績はとんとん拍子に上がっていくでしょう」
龍鳳「まぁ! で、でもこれ・・・」
喪黒「あ、失礼しました。私、こういう者です」スッ
龍鳳「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。せぇるすまんをしておりまして、貴女のようにココロにスキマがある方の助けをしているのです」
喪黒「お金は一銭も頂きませんので、ボランティアだと思って下さい」
龍鳳「・・・本当に良いんですか?」
喪黒「もちろんです。ただし、必ず寝る前に格納庫内の天山の数を数えることをお忘れなく。それだけ、お願いします」
龍鳳「わかりました。本当にありがとうございます!」
喪黒「ホッホッホ・・・」
龍鳳「(効果があると良いな、このお守り・・・)」
提督「龍鳳、お前の大体の性能は把握した。まだ資料だけでだが、明日あたりに深海棲艦の動きがみられそうなんだ。出撃してみるか?」
龍鳳「ほ、本当ですか!?」
提督「ああ。だが、無理はするなよ?」
龍鳳「やったぁー!!」
提督「(そんなに喜んじゃって・・・余程出撃したかったんだな)」
龍鳳「はぁっ!」シュバ
ヲ級「ヲヲーッ!?」ドガン
翔鶴「す、凄い・・・!」
扶桑「龍鳳さん、出撃は初めてよね・・・?」
龍鳳「(やった! やっぱり楽しいなぁ!)」
提督「す、凄過ぎる・・・! 初めての戦果で勝利Sとは・・・!」
龍鳳「皆さんのおかげでもあるんですよ? 張り切っちゃいました!」
提督「よし! 作戦の練り直しだ! お前をとことん引き立ててやるから、楽しみに待っていてくれ!」
龍鳳「はい! ありがとうございます!」
龍鳳「(さて、この後は格納庫内を確認しましょう!)」
喪黒「それは素晴らしいですな! 龍鳳さんに任せれば、この日本も平和を取り戻せます」
龍鳳「いえいえ~。これも喪黒さんのおかげです。本当にありがとうございます」
喪黒「いやはや、これは貴女の実力ですよ。これからも頑張ってくださいね」
龍鳳「(今日もたくさん暴れちゃった。入渠したら、眠くなっちゃった・・・)」
龍鳳「(あ、格納庫の中を確認しないと・・・)」
龍鳳「(・・・でも、きっと昨日と変わらないよね? 何だか最近、面倒くさくなってきちゃった)」
龍鳳「(喪黒さんもわかるわけないし、良いよね? おやすみなさぁ~い・・・)」
喪黒「」ニヤ
喪黒『龍鳳さん、起きて下さい』
龍鳳『んぅ・・・?』
喪黒『おはようございます。早速ですが、貴女には罰を受けて頂きます』
龍鳳『ふぇ・・・? あ!』
喪黒『オーホッホ。継続は力なり、3日坊主はみっともないですよ?』
龍鳳『ゆ、許して下さい! これからは毎日確認しますから!』
喪黒『オーホッホ・・・では、龍鳳さんには新しい戦闘スタイルをプレゼント致しましょう』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
龍鳳「きゃあぁぁぁ!?」
龍鳳「龍鳳チョォップ!!」ズバ
ヲ級「ヲヲヲ・・・」
龍鳳「猛鯨足卍っ!!」バキバキ
ネ級「タスケテクマノーン!!」ポロポロ
扶桑「・・・・・・」
翔鶴「・・・・・・」
龍鳳「龍鳳式バックドロップ!!」グシャ
泊地棲姫「ふぇぇ・・・」
山城「・・・・・・」
暁「・・・・・・あ、勝っちゃった」
龍鳳「本当!? やったー!」
時雨「・・・うわー」
龍鳳「ヨーでるヨーでるヨーでるヨーでる りゅうほうでるけんでられんけん♪」
龍鳳「ドォワッハッハー!」
一同「(どうしてこうなった・・・)」
龍鳳「一大事♪」
喪黒「龍鳳さん、皆さんにとっては本当に一大事ですよ?」
喪黒「しかしまぁ、見事な技の数々でしたなぁ。終戦はそう遠くなさそうですな」
喪黒「どうしてこうなった!? どうしてこうなった!?」
喪黒「もぐろのせいなのね そうなのね? オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
金剛(こんごう) 『バーンド・ラブ』オーホッホ・・・
金剛「Hey! 提督ゥー、ワタシ特製のFish and chipsはどうデスか?」
提督「うん! 美味いよ!」
金剛「それはGoodネ! あ、提督ゥ、ほっぺにサワークリームついているネ」ペロ
提督「なっ!? や、やめろよ、自分でとるから///」
金剛「んもぅ~、提督はヘタレデース!」
提督「そんなんじゃねーし!」
金剛「(まったく提督はー、恥ずかしがり屋さんデース)」
金剛「(でももう少し、あともう少しデース)」
金剛「~♪」
喪黒「ばぁ」
金剛「ひゃあ!?」ビク
金剛「Who the fuck are you!? (だ、誰デスか!?)」
喪黒「これは失礼。I am a salesman. (私はせぇるすまんです)」スッ
金剛「ココロのスキマ、お埋めしマス・・・?」
喪黒「驚かしてすいません。鼻歌を歌っている貴女が、あまりにもお綺麗だったもので」
金剛「え、えへへ///」
喪黒「何か嬉しいことでもあったんでしょう、良いことですな」
金剛「Yes! もしかしたら、もう少しでケッコンするかもしれないんデース!」
喪黒「ほほぅ! それはおめでたいですなぁ。それでは、これは私からのプレゼントです」スッ
金剛「指輪? オジサン、気持ちは嬉しいケド・・・」
喪黒「ホッホッホ。私みたいなオジンが、貴女みたいに綺麗な方にプロポーズができるほど、身の程知らずではございませんよ?」
喪黒「これは是非、右手の薬指につけて下さい。私の気持ちなので、タダです」
金剛「え!? こんな高そうな指輪、本当に良いんデスか?」
喪黒「ええ、もちろんですとも。その指輪はミラージュエッジと呼ばれるもので、愛する人と燃え盛るような恋を楽しむことができる代物です」
喪黒「どうぞ、お幸せになって下さい。ただし、その指輪には絶対に油を付着させないで下さい」
金剛「OK! Thank you very much!! (OKデース! ドーモ、アリガトウゴザイマース!!)」
金剛「(あの変なオジサンから貰った指輪、凄く綺麗デース)」
金剛「(この指輪も綺麗デスけど、提督は一体どんな指輪をくれるのかなぁ?)」
金剛「(でも、提督から貰うのだったら、どんな指輪でも素敵デース!)」
榛名「あれ? その指輪、どうしたんですか?」
金剛「へっへーん! これは提督と熱ーい愛を育むためのリングデース!」
榛名「なっ!? 金剛姉様ばかりズルいです! 榛名も欲しいです!」
金剛「No, it’s mine! (ノー、これは私のものデース!)」
提督「金剛、ちょっと話があるんだ。執務室に来てくれないか?」
金剛「? 良いデスよ」
提督「金剛、俺と・・・ケッコンしてくれ!」
金剛「ふぁっ!?///」
提督「お前が秘書艦になってから、ずっとお前を目で追っていた。す、好きだ!」
金剛「提督・・・やっとプロポーズしてきたデース! もちろん、答えはYESデース!」
提督「金剛!」ギュ
金剛「ん・・・あんまり焦らされるのは、趣味じゃないネ」
金剛「今までの分、たっぷり愛し合いましょう!」
提督「金剛!!」ガバ
金剛「ああーん! 提督のケダモノー!」
金剛「というわけで、ワタシ達ケッコンしマシタ!」
提督「ぬへへ・・・」
榛名「・・・榛名は大丈夫です」ハイライトオフ
比叡「ヒエー!? ヒエー!?」
霧島「司令、金剛姉様、おめでとうございます。末永く、お幸せに」
金剛「ありがとうネ、霧島! 今日はパーッと飲むネ!」
榛名「飲んでぇ! 飲んでぇ! 飲まれてぇ! 飲んでぇ!」グビグビ
比叡「こうなったらヤケ飲みです! んぐんぐ」ゴクゴク
霧島「それでは霧島も少々・・・」ゴキュゴキュ
榛名「ひっく・・・提督・・・どうして金剛姉様を・・・」シクシク
榛名「榛名はちっとも、大丈夫なんかじゃないです・・・」シクシク
霧島「説教タイムじゃゴラァ!! てめぇ、何榛名を泣かせてんじゃゴラァ!?」バン
比叡「ヒエーン! ヒエーン!」ポロポロ
金剛「もう飲めないデース・・・」ムニャムニャ
榛名「オロロロロロ」ビチャビチャ
提督「あーあ・・・」
提督「とりあえず寝ているのは金剛だけだし、俺の部屋で寝かせるか・・・」スタスタ
金剛「・・・提督?」
提督「金剛、起きたか」
金剛「えい!」ガバ
提督「おわ!」ドサ
金剛「むふふ、やっぱりお酒を飲むとHな気分になるデース」
提督「まったくお前は・・・」
金剛「さぁ、酔いが冷めないうちに、もっと激しくいきまショウ?」チュ
提督「ん・・・」
喪黒『オーホッホ』●REC
憲兵『いたぞ! あそこだ!』バンバン
喪黒『あいたたた』ビシビシ
提督「じゃあ金剛、気を付けて行ってきてくれ」
金剛「YES! 頑張ってくるデース!」チュ
提督「ん・・・」
鈴谷「まったく、見せつけてくれるねぇ」
熊野「まぁ、金剛さんらしいですわ」
榛名「榛名は・・・大丈夫です・・・」ハイライトオフ
加賀「・・・あれは大丈夫なのかしら?」
赤城「もう完全に手遅れです」モグモグ
金剛「ファイアー!」ズガァァン
榛名「榛名の・・・榛名の提督を返せぇぇー!!」ズガァァン
鈴谷「ちょっと榛名さんから離れよう」
熊野「とぉぉ↑おう↓!!」ズダン
南方棲戦姫「ウワーイタイ」
南方棲鬼「コレデモクラエー」ズガァァン
赤城「きゃあぁぁ!?」
加賀「赤城さん! 大丈夫!?」
赤城「ね、燃料が!?」ドポドポ
金剛「うわ!」ピシャ
金剛「SHIT!! 提督に貰った大切な装備が! 赤城、あとで覚悟するネ!」
赤城「しょ、しょんなぁ!?」
金剛「あぁ・・・手にもついてしまったデース・・・」
金剛「燃料・・・油・・・・・・はっ!?」
喪黒『気づきましたか、金剛さん』
金剛「オ、オジサン!? 一体どこに!?」
喪黒『不意の事故とはいえ、約束を破ってしまったからには、お望み通り燃えるような愛を応援させて頂きます』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
金剛「NOOOOOOOO!?」
南方棲戦姫「ハンゲキヨ!」ズダァァン
金剛「くっ・・・!」ボッ
金剛「火、火が!?」ゴォォ
金剛「あ、熱い! 熱いデース!」ゴォォ
榛名「金剛姉様!」
鈴谷「消火を急いで!」
金剛「消えないデース! いやあぁぁぁ!! 提督ゥー!!」ゴォォ
熊野「金剛さん!」
提督「・・・・・・」
提督「(金剛・・・金剛・・・)」ポロポロ
提督「(お前が沈んでから、もう1月も過ぎたんだな・・・)」
提督「(俺は、お前のことを考えなかったときは一度もなかった)」
提督「(金剛・・・ゴメンな・・・もう一度会いたいよ・・・)」ポロポロ
提督「うっ・・・くぅ・・・うぅ・・・!」
??「・・・テイトクゥー」
提督「!? こ、金剛!?」ガバ
??「ソンナニワタシノコトヲ・・・ワタシモ、テイトクトアイタカッタネ・・・」
提督「金剛! 生きていたのか!? どこにいるんだ!?」
??「ワタシハ・・・ズットココニイルヨ・・・?」ガシャンガシャン
提督「・・・? ひっ!?」ビク
コンゴウ「提督のハートを掴むのは・・・私デース・・・」クロコゲ
提督「ぎゃああぁぁぁ!!」
喪黒「燃え尽きてもなお、熱の冷めない愛。なんと魅力的なのでしょう」
喪黒「金剛さん。貴女ほど、あの男性を愛している方は他にいらっしゃいません。その想い、ずっと大切にして下さいね」
喪黒「提督さんも、お二人で一緒に燃え尽きましょうね! オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
榛名(はるな) 『クレーン・プレイ』オーホッホ・・・
榛名「提督、お茶をどうぞ」コト
提督「お、ありがとう。榛名の淹れてくれるお茶は美味いんだ」
榛名「ふふ、ありがとうございます」
提督「お前は本当に気が利くなぁ・・・いつもすまないな」
榛名「いえいえ。榛名で良ろしければ、いつでもお世話致します」
金剛「Hey! 提督ゥー!」ダキ
提督「こ、金剛!?///」
金剛「むふふー、今日の提督分補給デース!」スリスリ
提督「おい、やめろよ、榛名が見ているだろう?///」
榛名「・・・・・・」
榛名「(はぁ・・・金剛姉様は積極的過ぎです)」
榛名「(榛名だって、本当は甘えたいのに・・・)」
榛名「(このままだと、金剛姉様に提督をとられてしまいます!)」
榛名「(何とかしないと・・・!)」
喪黒「お嬢さん、手を上げなさい」チャキ
榛名「ひっ!? は、榛名は美味しくないですよ!?」パッ
喪黒「ホッホッホ。冗談ですよ、これはプロップガンです」
榛名「あ、貴方はどこから入ってきたんですか?」
喪黒「実はこの鎮守府の提督さんに用事があったのですが・・・貴女があまりにも切羽詰まった顔をしているんで、少し声をかけてみたんです」
榛名「は、はぁ・・・」
喪黒「あ、ちなみに私こういう者です」スッ
榛名「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。私は貴女のようなココロに余裕がない方の手助けをしているのです」
喪黒「せぇるすまんと言っても、無料で商品を提供致しておりますので、そこはお気軽に」
榛名「無料ですか?」
喪黒「はい。とは言っても、実は今日は商品が入った鞄を、どこかに置いてきてしまって」
榛名「だ、大丈夫ですか?」
喪黒「まぁ、気にしないで下さい。お嬢さんには、良いことを教えてあげましょう」
喪黒「何かを悩んでいるなら、1日に一回、作業区にある建造用の大型ガントリークレーンに向かってお祈りをしてみて下さい。何かが変わるかもしれませんよ?」
榛名「クレーンですか? クレーンは好きですけど・・・」
喪黒「ほほぅ、変わったご趣味をお持ちのようですな。まぁ、騙されたと思ってやってみて下さい。オーホッホ・・・」
榛名「(このクレーン、見れば見るほど大きいな・・・)」
榛名「」パチ
榛名「(どうか、提督ともっと仲良くなりますように・・・)」
榛名「・・・さ、執務室に戻りましょう」
提督「榛名、一区切りついたところだし、少し休憩しようか」
榛名「はい、ありがとうございます」
提督「この事務作業をしていると、本当肩が凝るよなぁ」
榛名「あ、榛名が肩揉みを致しましょうか?」
提督「いや、今日は俺が榛名の肩を揉んであげよう」
榛名「えぇ!? そ、そんな、悪いですよ・・・」
提督「あはは、遠慮するなって」
金剛「ぐぬぬ・・・」ノゾキミ
提督「ん~、どっちにしようかな?」
榛名「提督、おはようございます。メニュー表を見て、どうなさったんですか?」
提督「いやなぁ、納豆定食にしようか、サバの味噌煮定食にしようか迷っちゃって」
榛名「では、2人でそれぞれ頼んで、一緒に食べましょう?」
提督「え? 良いのか?」
榛名「はい! 提督が良ろしければ」
金剛「ぐぬぬぬぬ!」ベキベキ
比叡「金剛お姉様、箸が折れていますよ?」
榛名「というわけで、あれから提督とますます仲が深まったんです!」
喪黒「ほほぅ、これは契りを交わすのも、そう遠くはないですな」
榛名「ち、契りって///」
喪黒「恥ずかしがる必要はないですよ。貴女は立派な恋する乙女です」
喪黒「ただし、ごケッコンをなされる前は、アクマで甘え過ぎないことをオススメ致します。例えば、一緒に添い寝をするとか、お風呂に入るとか・・・」
榛名「そうですね、軽いとは思われたくはないですし・・・」
喪黒「ホッホッホ、本当に堅実なお方ですな」
提督「ふわぁ~ぁ、なんかちょっと眠くなってきたな・・・」
榛名「提督、最近お疲れのようですから、仮眠をとっては如何ですか?」
提督「うん、そうするか・・・えっと、榛名?」
榛名「はい? なんでしょうか?」
提督「そのだな・・・えっと、い、一緒に昼寝しないか?///」
榛名「え!?///」
提督「い、嫌なら良いんだ!///」
榛名「(も、喪黒さんにはああいう風に言われたけど・・・)」
榛名「(これは同時に、またとないチャンス・・・!)」
榛名「はい! 榛名で良ろしければ、お相手致しましょう!」
提督「でへへへ・・・///」
喪黒『榛名さん、呑気に寝ている場合ではありませんよ?』
榛名『うぅーん・・・喪黒さん?』
喪黒『貴女は誠実な方だと思っていたのですが・・・私の思い違いだったようです』
榛名『は、榛名は・・・どうしても提督と一緒にいたいんです!』
喪黒『そうですか、では、今度は貴女が提督にお世話をされるようにして差し上げましょう』
榛名『え・・・?』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
榛名「きゃあぁぁぁ!?」
榛名「うぅ・・・こ、ここは!?」
榛名「(作業区? 榛名は提督の部屋にいたはずでは・・・)」
ブチッ! ガラガラ!
作業員1「大変だ! コントロールケーブルが切れたぞ!」
作業員2「逃げるんだ! 危ないぞ!」
榛名「え・・・」
ガシャーーン!! ガン! ガラガラガラ!
榛名「」
作業員1「大変だ! 艦娘が下敷きになったぞ!」
作業員2「早く助けるんだ!」
喪黒「やれやれ、途中までは上手くいっていたのに、勿体ないですなぁ」
喪黒「入渠して直せたとしても、しばらくは提督さんに面倒を見られることでしょう」
喪黒「そこからは、貴女が望むだけたっぷりと甘えて下さい。オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
扶桑(ふそう) 『ハルシオン』オーホッホ・・・
扶桑「・・・・・・」モゾモゾ
扶桑「・・・・・・」
扶桑「(はぁ、寝られないわ・・・)」
扶桑「(最近、布団に入ってから寝付くまで、2時間くらいかかっているわ)」
扶桑「(朝も気分が悪いし、困ったわ・・・艦娘に睡眠障害なんてあるのかしら?)」
扶桑「はぁ・・・不幸だわ・・・」
扶桑「おはようございます、提督・・・」
提督「おはよう、扶桑。睡眠の方は大丈夫か?」
扶桑「いえ、変わりないんです。妖精さんから頂いた処方箋も、全く効果がなくて・・・」
提督「それは困ったなぁ・・・寝具も悪い物は使ってないと思うんだが・・・」
扶桑「ご迷惑をおかけしてすみません。少し、外に行ってきますわね・・・」
提督「扶桑・・・大丈夫かな?」
扶桑「はぁ・・・空はあんなに青いのに・・・どうしてこんなに眠れないの?」
扶桑「(具合は悪いわ・・・)」
喪黒「そのクマ、一体どうしたんですか?」
扶桑「少し睡眠不足で・・・あら? どちら様ですか?」
喪黒「ちょっと釣りをしているんです。憲兵さんには秘密ですよ?」
扶桑「はぁ・・・何やら、貴方からも負のオーラが・・・」
喪黒「おやおや、私はしっかり睡眠をとっていますよ?」
扶桑「羨ましい・・・」
喪黒「睡眠障害というのは、一度発症してしまうとなかなか治らないものです」
喪黒「昼夜逆転生活や、ストレスが原因とされていますが、原因不明なことも多いです」
扶桑「そうなんですか・・・」
喪黒「折角の美人が台無しです。実は私、せぇるすまんをしています」スッ
扶桑「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。今の貴女に必要なのは、良質な睡眠です。この青い錠剤をあげましょう」スッ
扶桑「これは、睡眠薬ですか?」
喪黒「はい。変なものは入っておりませんので、ご安心を」
喪黒「この錠剤は寝つきが良くなる他に、実際にとった睡眠時間の約3倍の時間、睡眠をとったことになる効果があるんです」
扶桑「ほ、本当ですか?」
喪黒「はい。ただし、効果は1錠で十分表れますので、1日に1錠以上飲まないように、気を付けて下さい」
扶桑「あ、ありがとうございます・・・」
扶桑「(普通なら、見ず知らずの人から貰ったものなんて、危ないけれど・・・)」
扶桑「(今の私には、寝られるのならどんなものでも構わないわ)」ゴク
扶桑「ふぅ・・・少し様子をみてみましょう」
扶桑「」ウトウト
提督「扶桑? 眠いのか?」
扶桑「はい・・・先程から・・・」ウトウト
提督「折角のチャンスだ。後は俺がやっておくから、お前は自室で寝ていてくれ」
扶桑「はい・・・すいません・・・」
扶桑「はぁ・・・もうダメ・・・」バフ
扶桑「(あぁ・・・やっと眠られる・・・幸せ・・・)」
扶桑「・・・ℤℤℤ」
扶桑「さ、提督。張り切って頑張りましょう!」キラキラ
提督「本当にもう大丈夫なのか?」
扶桑「はい! 今の私に、怖いものなんてありません!」キラキラ
提督「そ、そうか・・・」
提督「(扶桑が、心なしか輝いて見える)」
扶桑「ふわぁ・・・そろそろ寝ましょうか」モゾモゾ
山城「扶桑姉様? あ、あの・・・一緒に寝ませんか?///」
扶桑「ふふ・・・いつになっても甘えん坊ね。さぁ、いらっしゃい・・・」
山城「えへへぇ・・・///」モゾモゾ
扶桑「(はぁ・・・毎日が見違えるようだわ!)」
扶桑「本当にありがとうございました、喪黒さん。もう、毎晩寝るのが楽しみで」
喪黒「それは良かったです。毎日辛かったでしょう、満足な睡眠を得られないというのは、本当に辛いことなのですから」
扶桑「えぇ、毎日が不幸だと思っていましたが、今はもう大丈夫です」
喪黒「オッホッホ・・・」
扶桑「さぁ、今日もこの錠剤で・・・」
扶桑「・・・・・・」
扶桑「(喪黒さんは1日に1錠以上飲んではいけないと言っていたけれど、もしかしたらもっと効果があるのではないのかしら?)」
扶桑「(幸運戦艦になったりして・・・)」
扶桑「(今まで不幸だった分、多少多めに飲んでも大丈夫よね?)」ゴクゴク
扶桑「ふふ・・・明日から楽しみだわ・・・」
扶桑『んぅ? あれ、喪黒さん?』
喪黒『どうも、夢の中まで失礼します。扶桑さん、貴女約束を破りましたね?』
扶桑『そ、それは・・・!』
喪黒『薬の副作用というのをよくご存じないようですな。とても恐ろしいものなのですよ?』
扶桑『で、でも、そんなに大したものではないですよね?』
喪黒『またそんな甘いことを。では、その身をもって、体験して頂きましょう』
喪黒「ドーーーーン!!!!」
扶桑「きゃあぁぁぁ!?」
山城「扶桑姉様が・・・夜な夜な数字を呟いているんです・・・」シクシク
提督「困ったなぁ・・・治療法も見つからないし、駆逐艦の子達も不気味がっているんだ」
山城「折角完治したと思っていたのに・・・扶桑姉様に、一体何が・・・?」
扶桑「4757201727・・・4757201728・・・4757201729・・・」
扶桑「眠りたい・・・眠りたい・・・」
喪黒「ホッホッホ、分量を間違えてしまった所為で、3000年分の睡眠を1日でとってしまうだなんて」
喪黒「これからは一生、睡眠をとれないことでしょう。まさに、悲劇ですな」
喪黒「皆さんは睡眠を大事にして下さいね? オーホッホ・・・」
喪黒「さて、次のお客様は・・・」
山城(やましろ) 『恋のスカーフ』オーホッホ・・・
山城「扶桑姉様!」
扶桑「あら、山城・・・どうしたの?」
山城「扶桑姉様は最近提督と仲が良過ぎます! あんなの、獣なんです!」
扶桑「あらあら、私は提督とそんな関係ではないわ?」
山城「で、でも・・・」
扶桑「それに、提督はそんな人ではないわ」
山城「・・・・・・」
山城「(扶桑姉様は平和ボケをしているんだわ!)」
山城「(提督もどうせ、体目当てで扶桑姉様に近寄っているだけなんだから!)」
山城「(私がこんなに扶桑姉様のことを思っているのに・・・どうして・・・)」
山城「(姉妹であるとはいえ、この気持ちは変わらないわ。扶桑姉様・・・)」
喪黒「くんくん、何やら百合の香りがしますな」
山城「(? 誰かしら、この人)」
喪黒「おや、どうやら貴女から百合の香りがしますな」
山城「え? そ、そうですか・・・」
喪黒「とは言っても、花の百合の香りではありませんが」
山城「(この人は何を言っているのかしら?)
喪黒「ホッホッホ、まぁ気にしないで下さい」
山城「あの、誰かに用でもあるんですか?」
喪黒「はい。実は貴女にあるんです。その固い決意に満ちた顔、これは何かある、と興味を持ったのです」
山城「興味があるって・・・私は扶桑姉様以外、興味はありません」
喪黒「扶桑姉様? すると、貴女は妹の山城さんですか」
山城「そうですよ」
喪黒「そのような言い方ですと、姉妹の一線を越えているように聞こえるのですが」
山城「それはまだ、です・・・きっと、叶わない恋なんです・・・」
喪黒「・・・少し詳しく聞かせて頂けませんか?」
喪黒「ほぅほぅ、つまり貴女は実の姉に恋をしていると」
山城「気持ち悪いと思いますか・・・?」
喪黒「とんでもございません。世間からの風当たりは強いと思いますが、好きになってしまったのなら仕方がないことです」
喪黒「それに、貴女のその目。本当に心の底からお姉さんを愛しているのでしょう。私にはわかります」
山城「あ、ありがとう・・・ございます・・・」
喪黒「どうかその恋、私にもお手伝いさせて下さい。実は私、せぇるすまんをしておりまして」スッ
山城「ココロのスキマ、お埋めします・・・?」
喪黒「はい。せぇるすまんと言っても、無料ですからご安心下さい」
山城「無料? タダほど怖い物はないわ」ジト
喪黒「あひゃぁ、睨まないで下さい。本当にお金は一銭も頂きません。もし私が嘘をついた場合は、貴女の一生分の不幸を背負って生きていきます」
山城「約束よ?」
喪黒「もちろんでございます。それでは、貴女にはこのスカーフを差し上げましょう」スッ
山城「あ、可愛いかも・・・」
喪黒「このスカーフは、どんなインモラルな恋愛も乗り越えてしまう魔法のスカーフです」
喪黒「一度実った愛は、決して揺るぐことのない確かなものへと成長していくでしょう」
喪黒「山城さん、今こそ貴女が頑張るときです。このスカーフを身に着け、貴女はどんな苦難も乗り越えてゆくのです!」
山城「これで・・・扶桑姉様と・・・!」
喪黒「ただし、このスカーフに血液を付着させてはいけません。そこだけご注意を」
山城「わかりました! 絶対、扶桑姉様を幸せにしてみせます!」
喪黒「オーホッホ!」
山城「(これで良いかしら?)」キュ
扶桑「あら? 山城、そんなスカーフ持っていたかしら?」
山城「え、えぇまぁ・・・」
扶桑「凄く似合っているじゃない。さすが、私の妹ね」スッ
山城「(か、顔が近い!///)」ドキドキ
扶桑「どうしたの? そんなに顔を赤くして」
山城「い、いえ・・・何でもないです・・・///」
扶桑「ふふふ・・・」
山城「(さっきは凄いドキドキしたわ・・・)」
山城「(ん? 執務室に扶桑姉様が・・・)」
山城「」キキミミタテ
提督『扶桑、どうしても俺の気持ちには答えてくれないのか?』
扶桑『申し訳ございません、提督。実は私、好きな人がいるんです・・・』
提督『俺以外に好きな人・・・? 憲兵さんか?』
扶桑『いいえ、違います』
提督『それ以外だと・・・艦娘くらいしかいないじゃないか。まさか・・・』
扶桑『・・・・・・』
提督『お、女の子同士なんだぞ? そんなの上手くいくはずがない!』
扶桑『・・・!』
扶桑『そんな言い方は酷いです! 私だって悩みに悩んだんです!』
提督『もう一度考え直せ! 同性愛だなんて気持ちの悪い・・・』
扶桑『――っ!』ダッ
山城「(あのゲス提督! って、扶桑姉様がこっちに来る!?)」ササ
扶桑「う・・・うぅ・・・」タッタッ
山城「扶桑姉様・・・」
扶桑「うぅ・・・ひっく・・・!」ポロポロ
山城「扶桑姉様、入りますよ?」ガチャ
扶桑「や、山城!?」
山城「扶桑姉様・・・」ギュ
山城「申し訳ございません、実は先程の会話を聞いてしまったんです」
扶桑「!」
山城「私はいつでも、扶桑姉様の味方です。扶桑姉様のためなら、私は命を捨てる覚悟さえあります」
山城「だから、辛いときは思う存分、頼って下さいね? そして、いつまでも一緒にいて下さい」
扶桑「山城・・・私、私・・・!」
山城「扶桑姉様・・・ (こ、これはキスをするしかないわね!)」チュ
扶桑「!?」
扶桑「や、山城・・・?」
山城「扶桑姉様・・・私は・・・私は扶桑姉様のことが大好きです。愛しているんです・・・」
扶桑「私もよ、山城・・・世界でたった1つの妹、愛しているわ!」
山城「扶桑姉様・・・嬉しいです!」ガバ
扶桑「あっ・・・」
金剛「扶桑達、最近もっと仲が良くなったデース」
榛名「そうですね、まるで恋人同士みたいに・・・」
金剛「NO! それではインセストデース!」
榛名「でも、お互いが良いなら良ろしいのではないでしょうか?」
金剛「それでもダメデース!」
比叡「ヒエー! 金剛お姉さま、私のアイデンティティを否定しないで下さい!」
金剛「比叡! 目を覚ますデース!」
扶桑「うふふ・・・」イチャイチャ
山城「ふふ・・・ふふふ・・・」イチャイチャ
山城「(こんな毎日が続けば良いなぁ・・・)」
山城「(これも、このスカーフとあの知らない人のおかげ)」
山城「(ここからは、私が頑張らなくては・・・!)」
山城「さて、料理当番を任されたから、この近海魚をおろしますか」ザク
山城「あ! スカーフにちょっと血がついてしまったわ・・・」
山城「(でも、魚のだし、大丈夫よね・・・?)」
喪黒「いいえ、全く大丈夫なんかではありません」
山城「きゃぁ!? 一体どこから!」
喪黒「山城さん、魚の血とは言え、血は血です。血であることに変わりはないのです」
山城「で、でも私は悪くないわ・・・!」
喪黒「そもそも料理中にスカーフをつけているのが悪いのです。つけ爪をしている女性は火事が苦手なように、汚れると困るものはあらかじめ外しておくのが基本です」
喪黒「なにも、外してはいけないと言ったわけではないのですから。それにしても、このタコのカルパッチョ、なかなかイケますなぁ」モグモグ
山城「あ・・・」
喪黒「本当にもう、どうなっても知りませんよ?」モグモグ
喪黒「ドーーーーン!!!!」
山城「きゃあぁぁぁ!?」
山城「あぅ・・・!」バン ビー ガシャン
山城「(はぁ、びっくりして食品貨物用のエレベーターにぶつかってしまったわ・・・)」
ウィィーーン
山城「うぐっ!?」ギュゥゥ
山城「(何!? 何が起きたの!?)」
山城「(ス、スカーフがエレベーターに挟まって・・・!)」
山城「(さっきぶつかった衝撃で、ボタンが押ささったんだわ!)」ポチポチ
山城「(なんで!? なんできかないの! 故障!?)」
山城「あぐぅ・・・! (ダメ・・・息が・・・苦しい・・・)」ミシミシ
山城「(扶桑姉様・・・・・・)」ギュゥゥ
ベキッ!! ブァッ! ビシャビシャビシャ…
山城「」
扶桑「山城、怪我していなi・・・きゃぁぁ!?」
喪黒「あーあ、折角実った恋も、まさかこんな結末を迎えるとは」
喪黒「山城さん、貴女の首はへし折れてしまいましたが、もしかしたら入渠で直るかもしれません」
喪黒「もし直ったら、今度こそ夢の生活に戻って下さい。私、実は本当に貴女の恋を応援していたんですよ? オーホッホ・・・」
――― 終 ―――
俺のヴェールヌイちゃんをこんな目に遭わせるなんて・・・お前ら人間じゃねぇ!
このSSまとめへのコメント
春雨の春雨スープ飲みたい