小鷹「隣人部でSAO」 (174)
・処女作です
・「ソードアート・オンライン」と「僕は友達が少ない」のクロス二次創作
・時系列ははがないを準拠 序盤はその中でも2巻をベースに
・ソードスキルは可能な限り原作に合わせますが余りにストックが少ないので捏造するかも
・不必要なストーリー簡略化の為にソードアート・オンライン側の設定を少し変更 序盤で言えば「ソードアート・オンラインがナーヴギアで初めてのソフト」という設定にしてあります 今後も微調整する可能性あり
・アドバイスや批判、感想はご自由に 但しこちらがレスポンスするとは限りませんのでご了承ください
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放課後。いつも通り部室に行くと、いつもの隣人部のメンバーに出迎えられた。
と言っても、夜空と理科は俺を一瞥したきり視線を本に戻したし、星奈に至ってはテレビ画面を見たままこちらを見向きもしない。
幸村「おかえりなさいませ、あにき」
そう言って丁寧な所作でお辞儀をしてくる幸村だけが、俺を存在を迎え入れてくれているという気がする。
幸村が入れてくれた紅茶を飲みつつ、俺は読みかけの本をカバンから引っ張り出す。
本を読むだけならば、ピコピコ耳障りなゲーム音のするここよりもほぼ無音の図書室の方が落ち着くように思える。
それでもこの場所で本を読もうとする辺り、俺はこの場所を相当気に入っていると自覚しなければなるまい。
まぁ、部活への帰属意識が働いているというのもあるかもしれないが。
しばらく本に没頭していたが、何やら感動的なファンファーレが流れてきたのでそちらに目が移る。
どうやら星奈がゲームをクリアしたようだ。ここに来てから少なくとも5本はクリアしているのではないだろうかという彼女のやり込みっぷりには少し呆れる。
んんーっと背伸びをした星奈は、呟きにしては大きな声でこう言った。
星奈「・・・ゲームの中に入れたらいいのに・・・」
夜空「口を開いたと思ったらそれか。貴様の下らん妄想など聞くに耐えん」
口を開けばたいてい罵倒か愚痴が飛び出る夜空がそう言う。
でも、ゲームの世界に入るなんて誰しもするものじゃないのか?
俺も何度かしたことがある。現実世界のしがらみがない世界で、勇者然として広大な土地を冒険できればどれだけいいことか。
ま、星奈と違って俺は口には出さないけどな。そんな勇気は俺にはない。
問題の発言した当の本人は、あんな大きな声を出しておいて発言しようとした意思は無いらしい。
夜空の発言に少し間をおいて、慌てたように取り成す。
星奈「・・・! ち、違うわよ!今のは、その・・・」
遅すぎる撤回を受けて、夜空が嫌な笑みを浮かべる。
夜空「何が違うというのだ。今のが貴様の本心だろう?思わず口に出してしまうほど日夜下らん妄想を垂れ流しているのだろう、なあ肉よ」
星奈「流石にあたしだって現実とフィクションの区別くらいついてるわよ! さっきのは、なんていうかその」
理科「ありますよ。ゲームの世界に行く方法」
星奈が夜空に罵倒され続け、部室から泣きながら逃げていく未来を想像していた俺は、思わぬ方向からの横槍に驚く。
いやちょっと待て。今何かトンデモない事を聞いたような気がしたんだが。
周りを見回すと、夜空が信じられないというような目つきで、また星奈が歓喜を湛えた表情で理科を見つめている。
星奈「ホントに!? ゲームの世界の中に入れるの!?」
理科「はい。といっても今開発中のものでして、完成品ではありませんが」
夜空「・・・信じ難いが、お前が嘘を付くとも思えんしな・・・」
小鷹「何でお前がそんなもの持ってるんだ?」
理科のことだ、この手のことで嘘を付くとは思えない。どうしてそんな夢のような機械を持っているのかと尋ねると、彼女はこう返してきた。
理科「ある人に頼まれて開発の手伝いをしていたんです。世界初のVRMMORPGとして、数か月後には発売される予定なんですよ。テストプレイのβ版は、今月にも被験者を募る予定だそうです」
VRMMORPG・・・何やら良く分からないが、ゲームの中に入れるということは確かなようだ。そんなものが近日中に発売されようとは・・・科学の力ってスゲー
理科「実は、サーバー自体はもうほぼ完成していて、実際にゲームを体験することが可能です。そのための<ナーヴギア>を、実は5つほど貰っていまして」
星奈「ナーヴギア?」
理科「ゲームをプレイする際にあたり装着するヘッドギアです。実際には、無数の信号素子が中に組み込まれ、それらが発生させる多重電界によって―――」
夜空「小難しい話はされても分からん。それより実際に今からそれをプレイすることは可能なのか?」
理科「はい。では理科室から持ってきますね。理科一人だと重くて運べないので小鷹先輩も付いて来てください」
そう言って、理科は部室から出ていく。俺は慌てて彼女の後を追った。
理科室に入ろうとすると、理科に「小鷹先輩はそこで待っていてください」と言われたので、待機すること数秒。理科がヘッドギアを3つ抱えて戻ってきた。
理科「小鷹先輩はこれを持って先に戻っていてください。残りは私が持っていきますので」
小鷹「分かった。それにしても用意周到だな・・・5つも貰ったってとこは、最初から」
理科「隣人部でやるつもりで貰ってきちゃいました☆」
ウインクをする理科。彼女もああ見えて、部活動に熱心なようだ。
それを嬉しく思いながら、俺はヘッドギアを受け取り、部室へと足を運んだ。
俺が部室についてから一分と経たぬうちに理科も戻ってきた。
彼女が持ってきたのは俺が持ってきたものと同じヘッドギア2つのみ。
星奈「この被り物だけでホントにゲームの中に入れるわけ?」
星奈が訝しむように聞くが、無理もない。俺も全く同じ感想を抱いている。
理科「論より証拠、といいますし、実際にやってみましょうか」
そう言うと、理科は俺が持ってきたものも含め、5つのヘッドギア、いやナーヴギアを1人1個づつ手渡した。
理科「起動方法は簡単です。ナーヴギアを装着した状態で<リンク・スタート>と言うだけです」
夜空「本当にそれで・・・」
星奈「いいじゃない! 早くやってみましょうよ!」
依然訝しげな夜空に対し、星奈はやる気満々だ。幸村は無表情でナーヴギアを眺めている。
そんな中、俺はワクワクしていた。幾度となく夢想したゲームの中への潜入。それが今、叶おうとしている―――
全員がナーヴギアを装着したことを確認した理科は、満足げに頷いた。
そういえば、今日はマリアがいないな。もし居たら理科はどうするつもりだったんだろうか。
実はナーヴギアがもう一つあるのかもしれない。まぁ、今はそんなことを気にしても仕方がない。
久しぶりに胸が高鳴っている。俺も大半の男の子と同じように、ゲームは好きだ。
そのゲームの中の世界に入れるというのだから、ワクワクしない道理がない。
始まりを告げるように、理科が宣言する。
理科「さて、それでは行きましょう。せーのっ」
全員「リンク・スタート!」
今回の投下はここまでです
はがないとは珍しいな
完全に俺ガイルに取って変わられたと思ってたけど
SAO事件には巻きこまれずに、所謂βテスト段階での話をやるって事でOK?
ナーヴギア「セットアップを開始します。しばらくお待ちください」
意気揚々とゲームの世界に飛び込まんとする俺の耳に飛び込んできたのは、無機質な機械の声。
周りを見渡すと・・・いつもの部室と、いつもの面々。皆戸惑ったように視線を辺りに這わせている。1人を除いて。
その例外である理科がポンッと手を叩き、俺らに説明する。
理科「あっ、忘れてました。ナーヴギアで仮想世界にフルダイブする為には、皆さんの体の情報を機械に認識させなければならないんです」
どういうことだと理科を見つめるが、「ナーヴギアの指示に従えば問題ありません」と言われ、大人しく指示を待つ。
数秒後、すっぽりと俺の耳を覆う機械から新たな指示が出された。
「キャリブレーションを行います。身に着けている衣類を全て脱いでください」
上着を脱ぎ、下着に手を掛けかけた俺はそこではっとする。
目の前には、もう既にブラ一枚となっている星奈と、メイド服を脱ぎにかかっている幸村。
夜空「な・・・なっ・・・・」
夜空は事態を早急に把握したらしく、俺の方を凝視して口をパクパクさせている。
理科が「あ、ヤベっ」などと呟いているが、俺としては彼女を問いただす間も惜しい。
上着をひっつかみ、早急に部室から駆け出る。
部室を出て少し歩いたところで待機していると、すぐ理科も部室から出てくる。
俺の姿を確認すると、理科は申し訳なさそうな顔をしながら駆け寄ってくる。
理科「すみません。キャリブレーション機能のことすっかり忘れていました。小鷹先輩は理科室でやってきて貰えますか?少々寒いと思いますが・・・」
そう言って鍵を渡してくる。
・・・もはや鍵束だな、これ。
困惑していると、理科が付け加える。
理科「扉を開けるのは一番大きいやつです。あ、行為は理科室入ってすぐのとこで行ってくださいね。くれぐれも部屋を探索したり荒らしたりしないようにお願いします」
普段冗談めかしている理科に真剣な目で言われては断れない。もとよりあんな事故のあった後、理科室を探索する気など俺にはない。
了解の意を示すべく軽く手を挙げ、俺は理科室へと歩を進めた。
ナーヴギアを被ったままだったのだが、すれ違う生徒たちの反応がいつもと変わらなかったので、理科室に着くまでその失態に俺が気づくことは無かった。
ナーヴギアの指示により、自分の体を様々な姿勢で余すことなく触らされた俺は、ふと邪な事を考えていた。
今頃部室では、美少女達があられもない姿で自分の体をまさぐっているのだろう。・・・いざ想像するとなんだかとても残念な気持ちになる。
あれ、そういや幸村は大丈夫なのか?つい女の子扱いしてしまっていたが、あいつも男なんじゃ・・・
そんな考えに至った矢先、耳元から機械音が発せられた。
ナーヴギア「セットアップが完了しました。一旦起動を停止します。」
それを聞いてからたっぷり10秒は置いて、俺は恐る恐るナーヴギアを頭から外した。
壊してしまっては大変だからな。精密機械は壊れやすいと言うのが俺に考えに深く根付いている。
ナーヴギアを両手でしっかりと持ち、部室へと向かう。
部室に戻ると、夜空のの咎めるような視線に迎えられる。星奈は俺を見るや否や、体を抱えて叫ぶ。
星奈「小鷹のバカ!アホ!変態!死ね!」
俺に完全に非があるかと言えば微妙な気がするんだが、こういう時は決まって男が弱い。
小鷹「すまん、星奈。悪かった」
誤って頭を下げると、星奈はそっぽを向いた。横目でちらとこっちを見て、こう付け加える。
星奈「か、感謝しなさいよね!他の男子には私の下着姿なんて見せたことないんだから!」
最早何を言っているか分からない星奈は放っておいて、俺は先ほど感じていた疑問を口にした
小鷹「そういえば幸村はどうしたんだ?さっきは忘れてたけどお前って男・・・」
理科・星奈・夜空「あ」
そういえばそうだったと言わんばかりの顔をする三人。この反応からして幸村はおそらくここで・・・
夜空「全く気付かなかった・・・まぁ、済んでしまったことを気にしても仕方がない」
小鷹「おいおい、いいのかよそれで」
理科「理科は全く気にしませんよ。幸村君からは男特有の下心の類が感じられませんし」
俺からは感じるってことなのか・・・まぁ無いと言えば嘘になるが。
幸村自身は気にしないのか?と目を向けると、彼?は上目遣いで
幸村「わたくしはあにきのおからだにしか興味がありませんゆえ」
と返してきた。さっき星奈の下着姿を思わず見てしまった時よりグッとくる。こいつ本当に男なのか・・・?
理科「まあそれはさておき、皆さんセットアップは済んだようですね」
理科が音頭を取る。ゲームの世界に入るという本来の目的を思い出したのか、星奈が目を輝かせて首を縦にブンブン振っている。
理科「もう一度ナーヴギアを被って<リンク・スタート>の起動音声を発すれば、今度こそ皆さんの意識はゲームの中に飛び立ちます。初期装備を選択し終えたら、飛ばされた位置で待機していて下さい。皆最初は同じ場所から開始するように設定されているはずなので」
ああそれと、と言った感じで理科が付け加える
理科「フルダイブした後は体から意識が抜け落ちます。立ったままだと危ないですので皆さん横になって下さい」
それはさっき言うべきだっただろ・・・と心の中で文句を言う。しかしま、口に出すのは野暮ってもんだろ。
床に寝そべり、理科の指示を待つ。何だかんだで楽しみだという気持ちに変わりは無い。
理科「皆さん準備はいいですね?今度こそ行きますよ。せーのっ」
全員「リンク・スタート!」
そう発声するや否や、俺の意識は深い闇へと吸い込まれていった。
今回の投下はここまでです
投下開始します
ふらふらする。まるで小船で海の上にいるような感覚。
確か俺は、部室で─────
だんだんと意識がはっきりしてくる。俺は何もない空間に一人立っていた。
辺りを見回しても青みがかった紺色の背景が広がるのみ。
恐る恐る足を動かしてみる。動く。が、少々感覚がおかしい。
動かしている自分の足が普段の自分の足で無いような気持ち悪さを感じる。
これが、ゲームの世界の中───
突然、目の前にウインドウが出現する。
ゲームを始めるにあたっての注意事項だろうと勘繰りつつ、そこに書いてある文字を眺める。
≪初期装備を選択して下さい≫
そう書いてあるだけだ。それ以外何も記されてはいない。
恐る恐る画面に触れる。すると、画面からその文字は消え、代わりに数種類の武器のアイコンが表示される。
片手剣、短剣、細剣、曲刀、片手棍、両手斧、槍・・・
表示された数多くのアイコンの中から、俺は片手剣のそれをタッチしてみる。
すると、片手剣に関するステータスが表示される。STR、VIT、AGI、DEX等の値を眺めながら、俺は夢想する。
実際にこの武器を手に取って、俺がこの手で戦うんだな・・・
感極まり、よく吟味もせずに右下にやや大きめに表示されている≪この武器でよろしいですか?≫と書かれた場所をタップする。
軽快な効果音と共にウインドウが閉じると、目の前にいかにもなワープホールが出現する。円状に眩い光を放っち、俺を誘っている。
躊躇うことなく、俺はそこに足を踏み入れる───
転移した先は、とある部屋の一室であった。
周りを見渡すと、驚くことに夜空以外の3人はもうそこにいた。
武器以外の初期装備は皆同じようで、3人とも同じ格好をしている。
しかし見事なまでに顔や体つきが再現されている。星奈の胸はレザーアーマー越しにもその存在感を放っているし、幸村は相変わらず女の子っぽい。理科は眼鏡をしていないこと以外はいつも通りだ。
俺が来たのを見てか、理科が話しかけてくる。
理科「小鷹先輩も決めるの早いんですね。殿方はこういう装備を決めるのに慎重になるものかと思っていましたが」
小鷹「早く冒険したくて居てもたってもいられなくなっちまってな、吟味せず直ぐ決めたんだ」
星奈「分かってるじゃない小鷹。初期装備選びに時間をかけるなんて、ネチネチした奴のすることよ」
おそらく俺以上にこのゲームを楽しみにしているであろう星奈が、未だ現れない夜空に対し嫌味もかねてそう言う。
小鷹「星奈はレイピアにしたんだな」
正直意外だ。攻撃力の高そうな両手斧辺りにすると思っていたんだが。
すると星奈はしたり顔でこう言った。
星奈「攻撃力よりも攻撃回数や命中精度を重視した方が夜空を倒しやすいでしょ?」
こいつモン狩のことまだ引きずってんのかよ・・・
理科「星奈先輩、このゲームは基本的にモンスターを倒すゲームであって、対人要素は精々決闘ぐらいしかないですよ」
苦笑いしながら理科がそう言うが、対人要素などほぼ皆無なモン狩でPKに走る奴にその説得は無意味だろう。
ちなみに理科の初期装備は俺と同じ片手剣。幸村は・・・見た感じだとおそらく曲刀だろう。
ちょうど夜空も装備を決め終えたらしく、部屋の隅から沸き出てくる。
人間に沸くという表現を使うのはどうかと思うが、実際のところその表現がしっくりくる。
腰に下げているのは短剣・・・まぁいかにも夜空らしい装備ではある。
理科「皆さん揃いましたね。では早速モンスターを狩りに行きましょうか」
そう言って理科は外に通じる扉を開ける。俺はついていこうとして、先ほどと同じ違和感に襲われる。
体を動かす際に奇妙なズレを感じるのだ。
小鷹「なあ理科、体を動かそうとした際に少し違和感を感じるんだけど」
理科「あー、慣れるまで少し時間がかかりますが問題ないですよ。あくまで私たちのこの体は現実のものではなく、バーチャルなものですから、最初は違和感を感じるのはしょうがないことです」
星奈「え?あたしはそういうのあまり感じないけど」
星奈は歩きながらさらっと言う。そういえば星奈の適応力には目を見張るものがあったな。
幸村「わたくしもあまり違和感のようなものはありません」
夜空「・・・」
反応を見る限り、適正は人それぞれなようだ。おそらくは黙って体を動かしている夜空は、多少なれ違和感を感じているのだろう。
理科「なるほど。やはり個人差があるようですね。ですが今は違和感のある人でもその内慣れると思います。とりあえず、雑魚モンスターを狩りつつ体を慣らしてみましょう」
そういう理科に習って歩くこと数分。町から出た俺たちは、広大な草原に出ていた。
街中を歩いている時もきょろきょろあたりを見回していた星奈は歓声を上げているし、夜空も満更ではなさそうな顔をしている。幸村は相変わらず無表情だが。
俺もだいぶ歩くのに慣れてきた。体の動かし方のコツをつかんだとも言うべきか、違和感もあまり感じなくなってきている。
理科「あ、いましたよ」
そう言って理科が指をさした先には。
こちらを向いて威嚇をしているイノシシの姿があった。
今回の投下はここまでです
神居キリトって名前にしよう(遅い提案)
>>33
名前ですか。変なPNを付けるつもりはなかったのですが、少し練ってみます。
提案して頂いたものは申し訳ないことに採用は厳しいと思いますが。
投下開始します
イノシシ。
雑魚敵かどうかと言われると微妙なラインだろう。俺は雑魚敵と言われればスライムを想像する。
不意を突かれたせいもあるが、そのイノシシが俺にとっては脅威に映った。
やはり実際にゲームの中に入って敵と対峙するというのは中々スリルのあるものだ。
しかしまあ、理科が呑気な態度を取っていることから、おそらくは最弱の部類のmobである事は想像できる。
理科「では戦い方を教えますね。まずは───」
ふと、何かの駆ける音がする。
イノシシが近づいてきたのかと顔を上げる。
しかし、その憶測は外れていた。
説明を始めようとする理科に聞く耳を持たず。
柏崎星奈はイノシシに向かって猪突猛進に駈け出していた。
星奈「ハァァアアアア!」
気合一閃、星奈は右手に持ったレイピアをイノシシに向かって突き出す。
二重にスピードの乗った細剣から繰り出された一撃は、避けようとしたイノシシの脇腹に見事突き刺さる。
ピギャーという悲鳴と共に、イノシシに添えるように表示されていたゲージが半分近くまで減少する。
あれが俗に言う「HPゲージ」か。初期状態である星奈のたった一度の攻撃で半分近く減るってことは、やっぱり雑魚モンスターだったんだな、あのイノシシ。
レイピアを引き戻し、反撃を受ける前に星奈はイノシシから距離を取るべく後退する。
イノシシは怒り狂った様相で、星奈を睨みつけている。
星奈も、イノシシを見据えつつ、ある程度距離を取ったところで足を止める。
数秒にわたる眼光戦の末、先に動いたのはイノシシだった。
怒り狂った鳴き声を発し、星奈に向かって突進を仕掛ける。
対する星奈は、レイピアを体の中心に構え、イノシシを待ち構える―――
小鷹「細剣でイノシシの突進を迎え撃つって・・・無謀じゃないのか?」
理科「そうですね。ある程度速さもあるのでタイミングも合わせ辛いですし、上手く合わせられても被弾は避けられないでしょう。あまり褒められた手ではないですね」
危機感を感じさせない声で理科はそう言う。
小鷹「被弾って・・・攻撃を受けた場合どうなるんだ?」
理科「HPが減るだけです。0になれば町に強制帰還させられますが別段問題はありません。被弾による痛みは感じないですし」
そう聞いても、落ち着かない物は落ち着かない。
俺がハラハラしながら見つめる中、イノシシは星奈にあと2メートルというところまで迫る。
その時。
星奈の構えたレイピアから純白の光が発された・・・気がした。
そのまま真っ直ぐに突きだされた細剣は。
イノシシの鼻面を寸分違わず貫いた。
会心の一撃によりHPゲージを0まで減らされたイノシシは。
星奈にダメージを与えることなく、硝子の様に砕け散り、消滅した。
今回の投下はここまでです
期待
なかなか面白い
>>41
励みになります。拙い文でよろしければ今後も読んで頂けると嬉しいです。
投下開始します
・・・先ほどの戦闘の感想を一言で言うとするならば、純粋に「凄い」としか言いようがない。
星奈がさっきやってのけたことを、俺は真似出来る気がしない。
イノシシに突っ込んで剣を突き立てるくらいはできるだろう。
だが、それをあれほど勢いよく綺麗に行うのはまず無理だろうし、その後の対応などもっと不可能であると言える。
彼女はとっさに剣を引き、間合いを取った。それもただ逃げるためではなく、敵の攻撃を誘発し、カウンターで確実に仕留める為に。
これほど作り込まれているゲームだ。攻撃に乗せるスピードがダメージに影響を与えないというのは考え辛い。
星奈はそこまで考えて、イノシシの突進の速度を利用した反撃で、見事にHPを削り切ったのだろう。
星奈はダメージを受けても痛みを感じないということを知っていたのだろうか。
ゲームということを考えれば当たり前の発想だが、実際にあのイノシシを目の当たりにしてその考えを盾に臆せず戦えるかどうかは別だ。
現に俺は少し怯えてしまった。視覚が与える情報というのは、何よりも強く思考を支配する。
それなのに、彼女は―――――
星奈「意外と大したことなかったわね」
澄ました顔で星奈が凱旋してくる。
理科「初心者とは思えない動きでした。流石は星奈先輩といったところでしょうか」
星奈「ま、当然よね。あたしを他の人間と同じレベルで見て貰っちゃ困るわ」
理科「ソードスキルを初回であそこまで使いこなせるなら、私から星奈先輩に戦闘面で教えられることはほぼ無くなりました。今後実施するβテストにも是非参加を―――」
星奈「ハァ?あたしソードスキルってのが何なのか知らないんだけど」
理科が驚いたような顔をする。話の内容からして、星奈が無意識のうちに怪しいワザを使ったみたいだが・・・
ふと、先程の光景が頭をよぎる。
イノシシを迎え撃つ際、星奈のレイピアが光った気がした。もしかして、あれが―――
理科「ソードスキルというのは、所謂必殺技みたいなものです。詳しく言えば、決まった構えから決まった方向に武器を振るうことで、システムアシストを受けて攻撃力を底上げできる仕組みのことです」
理科の話によれば、武器のカテゴリー毎にスキルが一定数存在し、熟練度というものを上げることで新しいスキルが解放されていく仕組みらしい。
理科「先ほど星奈さんがイノシシに対し止めを刺す際に放ったのも、ソードスキルの一種です。細剣基本技≪リニア―≫というスキルに該当します」
ということは、俺が見た光ってのもその際に発せられたエフェクトの一種なのだろう。
ソードスキル・・・心を揺さぶられる響きだ。俺も使ってみたい。
夜空「そのソードスキルとやらは無制限に使える物なのか?」
今まで黙って理科の話を聞いていた夜空が質問すると、理科はうーんと唸りながら口を開く。
理科「一般的なゲームと違ってSPという概念は無いのですが、一度スキルを使うと同じスキルはすぐには使えません。リブートに要する時間はスキルによって異なりますので、スキルの詳細は是非各々で把握しておいてください」
ああそれと、と理科は付け加える。
理科「ソードスキルを使用した後には少なからず硬直が発生します。この硬直時間の長さもスキルによって異なりますが、こちらは特に表記されている訳ではないので、使っていく内に体で慣れて下さい。まぁ序盤は使えるスキルも少ないので苦労することは無いと思います」
なるほど。で、だ。
そのソードスキルとやらの説明はどこで見ればいいんだ?
質問しようとした矢先、先回りするように理科が言う。
理科「すみません、大事なことを言い忘れてました。メニューウインドウは、右手の人差し指と中指を真っ直ぐ揃えて掲げ、真下に振ることで呼び出せます」
今回の投下はここまでです
投下開始します
メニューウインドウを開くと、様々な項目が表示されていた。
アイテム、スキル、能力値、オプション等の文字が表示されたウインドウがいきなり目の前に出現した時は少し驚いたものだ。
そういえばこのウインドウ、初期装備を決めるときに見たものと同じだ。
スキルの項目をタップする。すると、画面左側にスキルがずらっと表示される。
どうやら俺が今習得可能なスキルのみ表示されるらしい。これが全てのスキルだとするとあまりにも少ない。
画面右には四角いアイコンが2つあり、1つは空だが1つはスキルのアイコンにより埋まっている。現在装備しているスキルだろうか。
装備されているであろうスキルのアイコンをタッチする。予想に違わず、表示されスキル名は、先ほど俺が選んだ武器と同じ≪片手剣≫
使えるスキルは・・・3つか。どれも簡潔で短い名前だが、当然効果も軌道も違うのだろう。きちんと使い分けなくては。
理科「デフォルトで装備されている基本攻撃スキルは外さない方がいいと思います。もう一つの枠は皆さんがお好きなものを入れちゃってください。それもゲームの醍醐味ですし」
理科がそういうと、俺の中にくすぶっているゲーマー魂がくすぶられる。なんかこういうのっていいな。俺そこまでゲーマーでもないけど。
星奈「このスキルってやつはいつでも好き勝手に変えられるの?」
理科「変えることは可能ですが・・・スキルを一度でもスロットから外してしまうと今まで貯めたスキルの熟練度が0になってしまうのであまりお勧めはしません」
星奈「ふうん・・・じゃあ割と真面目に選ぶ必要があるってわけね」
星奈はスクリーンに目を戻し、スキルを吟味し始める。夜空は先程からずっと集中して画面を見続けているのか、手以外のパーツが全く動いていない気がする。
幸村「あにき」
声を掛けられ振り向くと、そこにはすでにウインドウを閉じた幸村が佇んでいる。
幸村「すきるを決められましたらわたくしにおおしえ下さい。わたくしはあにきと同じものにしますゆえ」
小鷹「えーと、決めるのにかなり時間がかかるかもしれないんだが」
幸村が一度言い出したら意見を曲げることは少ない。
幸村「かまいません。あにきの気のゆくままごゆるりとおえらびください」
そう返されては何も言えない。はぁ、何だか急かされているようでやり辛い・・・
俺らがくだらないやり取りをしているうちに、星奈はスキルを選別し終えたらしく、意気揚々と叫ぶ。
星奈「さ、スキルも選び終えたことだし、次の敵を倒しに行くわよ!」
夜空「協調性の欠片もない奴だな。さすがクラスの姫(笑)は格が違う」
ウインドウから一ミリも目を離さずに夜空が言う。
星奈「ハァ?なんであたしが決定の遅いネチネチした奴に足を引っ張らなきゃなんないわけ?ノロマな夜空は後で決めなさいよ」
夜空「黙れ肉。イノシシを見て反射的に突っ込むお前と他の人様を一緒にするな。行くなら勝手に1人で行けばいいだろう」
再び口を開きかけた星奈だが、何かを思案するように視線を散らす。主に俺の方を見ていたような気がするんだが・・・
星奈「フンッ、数匹倒したら戻ってくるから、それまでには決めておきなさいよね!」
そう言って星奈は、フィールドの少し遠くに見えるイノシシらしきものに向かって歩いて行った。
悩みに悩んだ末、俺が選んだスキルは「生存能力」だ。
5人、それも自分よりも上手なメンバーで構成されることが予想されるパーティーでは、俺が取るべきスキルは好戦的なものではなく守備的なものにすべきだ。
幸村には装備したスキル名のみ伝えた。それでもその後の反応からして幸村は迷うことなく俺と同じスキルを選んだ、のだろう。
夜空も選び終えたらしい。こちらに向き直り、歩み寄ってくる。
夜空「で、戦闘方法だったな。真っ当な戦い方を1から丁寧に教えてほしい」
星奈に対し含みのあるような発言をする夜空。対抗意識でも燃やしているのだろうか。
理科「ソードスキルを上手く当てるてることが戦闘の基本ですね。スキルを使わずに攻撃することも可能ですが、慣れないうちはダメージがあまり入りません」
星奈先輩は例外のようですが、と理科が付け加えると、夜空が悔しそうな顔をする。何も言わないあたり、星奈の特異性を頭では理解しているのだろう。
と、思いついたように理科が言う。
理科「敵がいなくてもスキル自体の発動は可能なので、まずは素振りからやってみましょうか」
今回の投下はここまでです
投下開始します
剣を斜めに構え、振り抜く。かれこれ5回は繰り返したが、俺の剣が発光することは無い。
それでなくても、硬直時間が全く発生していないことから、ソードスキルが不発に終わっていることは嫌でも分かる。
素振りをするため距離を開けているが、少し離れたところにいる夜空も苦戦しているようだ。
食い入るようにウインドウを見つめ、短剣を突き出し、苦々しい表情をしている。
放任主義に徹することにしたのか、理科は俺らの素振りを見つつも接触はしてこない。アドバイスの一つでもしてくれれば楽なんだけどなぁ。
幸村はどうしているだろうか。目を向けると―――
しゅぎーん。
軽快な効果音と共に振り出された曲刀が紅色を纏い弧を描き、何もない空間を一閃する。
滑らかに踏み出された足や幸村自身の風貌も相俟って、その斬撃はとても美しく映えた。
しばらくぽーっとしていた幸村だが、俺の方に歩み寄ってくると、珍しく嬉しそうな顔をして俺にこう言った。
幸村「できました、あにき」
・・・幸村の思考回路から考えるに、俺が何の問題もなくソードスキルを発動できると思い込んでいるのだろう。
助けを求めるように理科を仰ぎ見る。理科はため息をつくと、
理科「幸村さんは、もう少し安定してスキルを出せるように素振りでコツをつかんでください。小鷹先輩はこっちに」
そう言って俺の手を取る。助かった。でも助け舟はもう少し早く出してくれてもよかったんじゃ・・・
理科「ソードスキルを出すにあたってのコツですが」
単刀直入に理科が言う。あるなら先に言ってくれよ。
理科「既定の構えで少しタメを作るとモーションの検出ががされやすいそうです」
タメを作る、かぁ。確かに俺は、剣を構えたら愚直に素早く振り下ろすのみだった気がする。
理科から少し距離を取り、再び剣を構える。言われた通りタメを意識し、ゆっくりと振りかぶる。
刹那。
見えない力に引っ張られるような感覚を覚える。身を任せるがままに俺は剣を振り抜いた。
間違いなく過去最高速度で振り抜かれた俺の剣は、仄かに青い光を発行しながら斜めの軌道を描き、剣が地面に衝突する前に制止した。
小鷹「今のが・・・」
理科「やればできるじゃないですか、小鷹先輩♪」
理科が微笑む。こんな簡単にできるコツがあるなら、もったいぶらずに教えてくれればよかったんじゃあ・・・
喉まで出かけた疑問を押し殺し、再び剣を構える。再びタメを作り、スキルを発動させるべく剣を振るう。
小鷹「あれ?」
しかし、スキルは発動することなく、システムアシストを得られる前提で振られた俺の剣は頼りなく空中を彷徨う。
小鷹「やっぱり発動を確実にするには練習が必要か」
理科「んー・・・小鷹先輩、ウインドウからスキルのページを開いて≪片手剣≫スキルのアイコンをタッチして貰えます?」
言われるがままにウインドウを出現させ、スキルのページを開く。≪片手剣≫スキルアイコンをタッチすると、スキルの名前と共にアイコンが表示される。
その中で、先ほど俺が使用した片手剣基本技≪スラント≫のアイコンのみ右半分が暗くなっている。
じっと眺めていると、反時計回りにアイコンは徐々に光を取り戻しつつある。
小鷹「さっき使ったスキルのアイコンが半分近く暗くなってるな。だんだん元の色に戻りつつあるけど」
理科「先ほど説明した通り、スキルにはクールタイムが設定されていて、リブートまでに少々時間がかかります。片手剣なら基本技は3つあるはずですし、全てのスキルを交互に練習してみるのがいいと思います」
小鷹「それを他の奴らにも説明してやれよ・・・」
そうでした、と得心顔の理科に俺は少し呆れる。理科ってこういう説明不足なことが多々あるんだよな。
幸村の元に駆けていく理科を尻目に、俺は素振りを再開した。
今回の投下はここまでです
ソードスキルについて補足があります。
原作にあまりにもストックが少なく、話を進めるうえで引っ掛かりを感じたため、こちらである程度捏造することにしました。
嫌悪感を感じてしまう方には申し訳ありませんがご了承の程よろしくお願いします。
投下開始します
慣れればソードスキルの発動も難しくないな。
1時間ほどの素振りを経て、そう思えるくらいに俺は自由にソードスキルを発動できるようになっていた。
大事なのは振り出し位置と角度だ。それさえ慎重に合わせてやれば、あとは勝手にシステムが剣を振るってくれる。
もう10回近くは繰り出したであろう水平斬撃技≪ホリゾンタル≫の発動に成功させ、満足した俺は、剣を腰に提げると夜空たちの元へ向かった。
どうやら夜空と幸村も、俺と同じくソードスキルを問題なく発動できるまでには至ったらしい。
それなのに、夜空はどこか浮かない顔をしている。
小鷹「どうしたんだ、夜空」
夜空「いやなに・・・リーチが短いのに直線的なスキルしかなく、扱いづらい武器であることを嘆いているのだ」
短剣の基本スキルは2つあるらしい。短剣を体の前に掲げ突進する突進技≪アーマー・ピアス≫。そして、剣を垂直に振り下ろした後に、間髪入れず水平切りを叩き込む斬撃技≪ダブル・エッジ≫。
前者には高確率で相手のDEFを下げる効果が付与され、後者はその名の通り二連斬である。
スキルの数こそ3つあるとはいえ、縦、横、斜めの単発斬りしかない片手剣と比べればむしろ優遇されている部類だと思うんだけどな・・・
理科「確かに短剣はリーチが短いのでその分間合いを取ることがとても難しいです。ですが、初動の速さや隙の少なさは随一で、上手く使いこなせればパーティーでも相応の活躍が出来ますよ」
夜空「ふむ・・・」
思案顔で黙り込む夜空。そういえば、星奈はまだ戻ってこないのか。
そう思った矢先、のんびりとこちらに向かって歩いてくる星奈の姿が視界に入る。
向こうもこちらに気付いたらしく、全速力でこちらに駆けてくる。
しかし汗一つかいてないな。こちらの世界では汗と言う概念は無いのだろうか。
星奈「この辺りってあのイノシシしかいないわけ?何匹も倒したけど他のヤツは一向に現れなかったんだけど」
開口一番、合流した星奈が不満顔で理科に問う。何匹もあのイノシシを倒しておきながらHPが8割近く残っているのは流石と言うべきか、それとも回復アイテムでもドロップしたのだろうか。
理科「第一層では、初心者考慮も兼ねて同じエリアには同じ攻撃パターンを持つmobしか出現しないように設定されています」
つまり、この広大な草原にはあのイノシシしかモンスターがいないってことか。
そういえば、と理科が星奈に尋ねる
理科「何十匹とあのイノシシ≪フレンジーボアー≫を倒したのなら、レベルが上がっていてもおかしくないと思うんですが」
確か15匹倒すことでレベル2になるはずです、と言う理科に対し、星奈は何かを納得したような顔をする。
星奈「そうそう。何匹か倒した辺りで変な音がして、体が光ったのよね。あれがレベルアップだったのかしら」
理科「流石ですね星奈先輩。何十匹と言ったのは誇張ではなかったようですね」
星奈「当然じゃない。それであの後体が軽くなったような気がしたのね」
小鷹「体が軽くなるだって?」
星奈「まぁ、ほんの少しっていえばそうなんだけど。走るスピードが速くなったり、この細剣を軽く感じるようになったのよね。それもあってイノシシに攻撃を合わせるのが楽になったわ」
理科「それはレベルアップに伴い能力値が上昇したためですね。ちなみに星奈先輩はボーナスポイントはもう振り分けました?」
星奈「また新しい単語ね・・・知らないわ、それが何かも」
理科「レベルアップをした際、能力の自動上昇の他にボーナスポイントが3ポイント貰えます。これを筋力又は敏症に振ることで、さらに能力を伸ばすことが出来るんです」
星奈はメニューウインドウを開くと、何やら画面を操作する。「ああ、これのことね」とだけ言うと、ささっと操作を終わらせ、画面を閉じる。
もう振り終わったのか。また随分とお早いことで。まぁ話を聞いた限り、上げられるのは「筋力」と「敏捷」の二択らしいが。
星奈「それで、これからどうするわけ?」
理科「星奈先輩には申し訳ないのですが、小鷹先輩たち3人は実際にモンスターと戦っていないので・・・」
星奈「分かったわ。じゃ、あたしは後ろからついてって見てるわね」
理科が何を言いたいのか察したのか、星奈は先回りして了解の意を示す。
ただ、どうやらそれを快く思わない人間がこの場にいたようだ。
今回の投下はここまでです
おつおつ
楽しみにみてるよ
>>71
ありがとうございます。稚拙な文章で恥ずかしいですが、楽しみにして頂けるのでしたらこれ以上の喜びはありません。
投下開始します
夜空「その必要はない。お前は一人この草原を彷徨って野垂れ死ぬがいい肉よ」
星奈「いいじゃない別についていくくらい!・・・あ、さては夜空、イノシシに翻弄される無様な姿をあたしに見られるのが嫌なのね。ぷくく」
夜空「くっ・・・おのれ肉・・・」
珍しく夜空が口で押されている。戦闘に自信がないという点では図星を付かれたのだろう。
事を荒げるのも面倒なので、仲裁に入ることにする。
小鷹「まぁまぁ、誰だって最初からうまく戦えるわけじゃないんだし、別にやられたっていいじゃないか。それを見て笑うほど、星奈も嫌な奴じゃないだろうしさ」
夜空は「まぁ、小鷹がそういうのなら・・・」と言ったきり押し黙る。
対する星奈は「あ、当たり前じゃない!それよりさっさと行くわよ!」と顔を背けながら言う。
何も言わなかったら夜空のこと馬鹿にしてたんじゃないかなぁ、星奈。
お目当てのイノシシはすぐに見つかった。
しかし、イノシシはこちらが近づいても、攻撃してくるようなそぶりは見せない。
どうやらこちらから仕掛けない限り、向こうから仕掛けてくることは無いらしい。
理科「早速実戦と行きましょう。まずは―――」
小鷹「俺が行く」
そう言って、一歩前に踏み出す。
夜空にああいった手前、こうするのがベストだろう。
実際、恐怖がないと言えば嘘になる。ただそれ以上に、戦ってみたいというのが俺の偽りない本心だ。
剣を構え、駆け出す。
イノシシがこちらを見るや否や、威嚇であろう鳴き声を発してくる。どうやら攻撃意志を感知し、戦闘体制に入ったようだ。
徐々に減速し、剣を体の横に水平に構える。星奈ならここでさらに加速して突っ込むのだろうが、残念ながら俺にはその度胸は無いし、その速度で剣技を命中させられる技量もない。
狙いは、すれ違いざまにイノシシに対し、水平斬りである≪ホリゾンタル≫を叩き込むこと。
イノシシがこちらに突っ込んでくる様子は無い。よし、行ける―――
焦りのせいだろう。
狙ったタイミングよりも早くソードスキルが発動する。
俺は反射的に剣を止めようとした。
確かに剣は止まった。だが剣が纏っていた青色の輝きは霧散し、スキル発動後の硬直が訪れた。
無防備な姿をイノシシの目前にさらしてしまった俺は、容赦のない突進により吹き飛ばされる。
HPゲージがぐんと減り、残り7割強のところで落ち着く。
ごろごろと草むらを転がり、起き上がった時には、すでにイノシシは二度目の突進のモーションに入っている。
痛みがない事も幸いしたのか、幸い怯みは無かった。
左手で剣先の後ろ部分を押さえ、イノシシの突進を受け止めるべく体の前に剣を構える。
突っ込んでくるイノシシに対し、上手く刃を合わせることに成功する。両手でしっかりと剣を支え、足で地を削りつつ、摩擦で何とか勢いを殺す。
剣の刃を直に支えている左手に負荷がかかったのか、俺のHPが僅かではあるが減少する。
ただ、このカウンターとも言い難い苦し紛れの策でも、イノシシにも相応のダメージが入ったようで、ぶぎーっ!と鳴き声を発している。
HPゲージを見るに・・・あと7割ちょいってところか。
イノシシを視界の正面に捉ええつつも下がり、間合いを取る。
先程のカウンターを警戒しているのか、イノシシは突進の構えを取るでもなく、こちらを睨みつけている。
これを攻撃の機と見た俺は、今度は剣を斜めに構えつつ、イノシシに走り寄る。
今度は最初から速度を落とし、そのままの速さを維持して切り込むつもりだ。
イノシシにあと一歩と迫った俺は、今度こそタイミングを違えずにソードスキルを発動させる。イノシシは回避しようと動きを見せるが、俺は気にせず単発斬撃技≪スラント≫を叩き込む。
斜めから振り下ろされた剣戟は、回避を試みたイノシシの体にギリギリのところで直撃する。
≪フレンジーボアー≫のHPゲージが急激に減少する。しかし、削り切ることはできずにあと少しだけ残してしまう。
こちらから突っ込んだ手前、間合いを取ることは難しい。それにソードスキルの硬直で俺は今、動けない。
もう一発突進を受けることを覚悟した俺は、来るべき衝撃を待ち構えた。
しかし、突如俺の横を通り過ぎた炎色の斬撃が、俺が受けるはずであった衝撃、そしてイノシシをまとめて消し飛ばした。
今回の投下はここまでです
おもしろいっす
完結まで読みたいっす
>>79
ソードアートオンラインのクロスssはエタることが多いと言われていますが、自分は完走出来るよう尽力します。
投下開始します
呆然とする俺の視界には、オーバーキルによって砕け散った≪フレンジーボア≫の残滓と、その斬撃を繰り出した張本人―――幸村の後ろ姿が映っている。
俺の記念すべき第一回目のモンスター討伐は、このように何とも情けない形で幕を閉じることとなった。
幸村「ごぶじですか、あにき」
幸村はそう言ってこちらを振り向く。その姿はどこか武人然としており、普段の素行からは想像できないほど頼もしく見える。
女の子に頼もしいという感情を抱くのは俺の中では既に違和感のない事だ。星奈を見ていれば誰でもそうなる・・・いや、そもそも幸村は男だったか。
助けてもらったという嬉しさと、雑魚敵にすら己一人の力で満足に倒せない情けなさに葛藤しつつも、俺は幸村に声を掛ける。
小鷹「ああ・・・助かった。ありがとう、幸村」
理科「初めてにしては上出来だったと思いますよ」
開口一番、そう言ってきたのは理科だ。
理科「私も含め、開発スタッフで実際にテストプレイを行った事があるのですが、初見であのイノシシを倒せた人は2割にも満たなかったと記憶しています」
・・・俺は一時間もソードスキルの素振りをしたうえで臨んでこの結果だからなぁ。励ましになっていないような気がする。
星奈「あたしに比べたらかなり劣るけど、小鷹もなかなかいい筋してると思うわよ」
本心からなのか、それとも適当にそれっぽいことを言っているだけなのか分からないが、星奈もそう言ってくれる。
まぁ、自分でも最初から星奈みたいに上手くいくとも思ってはいなかったし、このゲーム内での戦闘にもそのうち慣れていけばいい。
ふと、思いついたことを口にしてみる。
小鷹「そういえば、理科はどうだったんだ?初見であのイノシシと戦った時は」
理科「理科のことはどうでもいいじゃないですか。それよりも」
理科は俺の問いを軽く躱し、先程から全く言葉を発さない夜空に目を向ける。
理科「夜空先輩も、一度くらいは単騎での戦闘を経験しておいた方がいいと思いますけど」
夜空「・・・分かっている」
妙に歯切れの悪い返事を残し、夜空は前方近くに沸いているイノシシへと歩を進める。
先程から妙に戦闘を毛嫌いしている雰囲気が出てるなあ、夜空。
好戦的な性格をしている割に、いざ肉弾戦となると怖気付くタイプなのかと考えてしまう。
・・・あまりそういう風には見えないが。
夜空が短剣を構えると、先程と同じようにイノシシが吠える。
そのまま夜空が距離を詰めると、イノシシは右の前足で地面を掻く。突進攻撃のモーションだ。
だが、既にイノシシは夜空のソードスキル≪アーマーピアス≫の射程内に入っているように見える。
回避するのか、それともソードキルで迎え撃つのか。俺は夜空の出方を見る。
しかし、夜空は剣を構えたまま―――
何もアクションを起こすことなく、イノシシの突進をまともに受けて吹き飛ばされた。
今回の投下はここまでです
乙
しかし、このメンバーだけで行くの? 基本、隣人部はクズの集まりだし
小鳩とシスターシスターが居ないとギスギスした空気から抜け出せなくて詰みそう
>>87
マリアと小鳩はソードアートオンラインの世界観にマッチしていないと考えており、動かすにしても扱いが難しいと判断したため登場させるつもりは今の所ありません。もしかするとチョイ役として動かすかもしれませんが、メインとなることは無いでしょう。期待に添えなかったらのなら申し訳ありません
投下開始します
地面を転がった夜空は、しかしすぐに立ち上がり再び剣を構える。
その仕草を見る限り、どうやら戦闘に不慣れであったり怯えの感情を強く抱いているといった様子は感じられない。
ソードスキルを上手く発動できなかったのか?それにしては微動だにもしていなかった気がするんだが・・・
再びイノシシが突進すべく構えを取る。対する夜空は、短剣を体の前に構え、迎え撃とうとする。
構えからして、突進系スキルである≪アーマーピアス≫を放つつもりだろう。夜空の右足が踏み出され、剣を纏うように紅蓮の光が―――
発光しない。
無様にも空打った剣をすり抜け、≪フレンジーボアー≫のタックルが再び夜空に炸裂する。
地を派手に転がった夜空は、それでも怯むことなく再び体制を立て直す。しかし、HPゲージは既に3割を下回ろうとしている。
当たり所が悪ければ、もう一撃貰うと死にかねないラインに達してしまっているのだ。
まぁ、HPが0になったところで、特に何も問題は無いらしいんだけどな。
夜空もそれを理解しているのか、先程と全く変わらない様子でイノシシと向き合っている。
しかし、先程の素振りでは問題なくソードスキルを出せていたのに、いざ実戦では出せていないところを見ると、この先の未来は想像できる気がする。
実際の所、まだイノシシにかすり傷一つ負わせることが出来ていないのだ。
同じことを考えていたのだろうか。星奈がイノシシの方へ向かって駆け出す。
レイピアを左側の胴に添えるように構え、夜空に向かって突進を繰り出そうとしていたイノシシに対し一閃を繰り出す。
鋭く白い光を放った細剣は、星奈の豪快な踏み込みの補正も受け、突進のモーションに入っていた≪フレンジーボアー≫の首筋に勢いよく直撃する。
イノシシのHPが一瞬で消し飛び、軽快な効果音と共に霧散する。
星奈は立ち尽くす夜空に向き直ると、怒気を纏った声で問い詰める。
星奈「アンタ、なんのつもりよ」
夜空「・・・無様な姿を見せてしまったな。お前と違い、どうやら私には才能がないらしい」
星奈「あたしが言いたいのはそんなことじゃない。なんであのイノシシを攻撃するのを躊躇ったのかって聞いてるの」
夜空が驚いた顔をする。いや俺も驚いたんだが。
夜空がイノシシを攻撃すること自体を躊躇うなんて考えもしなかったんだが・・・
しかし、夜空の反応からしてそのことは事実であるようだ。そのことを見抜いた星奈の観察眼には舌を巻く。
しばらく夜空は沈黙を貫いていたが、夜空を見据えたまま視線を逸らさない星奈に観念したのか、重い口を開く。
夜空「・・・小さいころに少々トラウマを患っていてな。刃物に対し苦手意識があるのだ」
夜空が手に持った短剣に視線を落としながら言う。しかしそれならなんでまた短剣を選んだのだろうか。
俺の心の問いに答えるように、夜空が言葉を紡ぐ。
夜空「刃物全般が無条件で無理と言う訳ではない。まぁ、この短剣は私に忌わしき記憶を植え付けた凶器に類似している。しかし、これが初期武器として存在するということは、同じ系統の武器を今後目にすることはあるのだろう?」
慣れる意味でも自分で使うべきだと判断し、短剣を選んだのだと夜空は言う。
夜空「・・・振るわれるのではなく、振るう分には問題ないのではないかと期待していたのだがな・・・」
今回の投下はここまでです
投下開始します
確かに、このゲームに短剣を使用するmobが出ないことはまずないと見ていいだろう。
それに、理科の話によれば、今後βテストと称し少なくない数のプレイヤーがこのフィールドに来るそうだ。
10種類も満たない武器カテゴリーの中から、誰も短剣を選ばない可能性を信じるなど楽観もいいところだ。
短剣に対する悪印象を払拭しない限り、夜空がこのゲーム内において肩身の狭い思いをするのは自明ってことになる。
プライドの高い夜空のことだ、自身が部員全員の足を引っ張るような事態に陥る前にこのゲームを辞めてしまうだろう。
隣人部の活動の一環である以上、部長である夜空を抜きにしてこのゲームをやり込むなんてことは誰もしないだろう。星奈は分からないが。
つまり、ここで俺たちが取るべき行動は二つに一つだ。
夜空のトラウマを克服、またはそこまでいかなくても支障のない程度まで緩和させるか、このゲームのプレイ自体を諦めるかだ。
星奈「ちょっと付き合いなさい、夜空」
重い沈黙を唐突に破った星奈は、夜空の腕を掴み、広大な草原を歩き出す。
夜空「何をするのだ肉、放せ」
諦観と苛立ちが綯交ぜになったような口調で夜空が抗議する。しかし星奈はそれを気にも留めず言い放つ。
星奈「あんたがイノシシを躊躇なく叩っ切れるようになるまで、このあたしが指導してあげるわ」
夜空「簡単に言ってくれるな。人の気も知らないで、トラウマを克服させるなどと・・・」
星奈「この世界はあくまで仮想のものであって、現実じゃないの。それくらいあんたも分かってるんでしょ? 素振りが出来るっていうんなら、仮想で形作られたイノシシ程度、斬れない道理はないじゃない!」
トラウマってそんな簡単に割り切れる物なのか・・・? つーか星奈、あれだけ楽しみにしてた割にはこれをゲームだと割り切ってるんだな。
夜空がふと立ち止まる。その腕を引っ張っていた星奈は、急な抵抗を受けてつんのめる。
振り向き様に文句を言おうとする星奈に対し、夜空がぽつりと問いかける。
夜空「・・・何故お前はそこまでする。私など放っておいて念願のゲームの世界を満喫すればいいものを」
星奈は、「ああ、そんなこと」と、躊躇いなく返事を返す。
星奈「だって、張り合う相手がいないとつまらないじゃない!」
あっけらかんと言い放った星奈の姿は。
彼女のありようをまざまざと示すようで。
嘘偽りない本心であると確信できるその言葉は。
彼女が純粋に、真っ直ぐに生きてきたのだと強く実感させる。
柏崎星奈という存在が、俺にはとても眩く見えた。
夜空の方を見やると、彼女は下を向いており、その表情は読み取れない。
しかし、数秒の後、星奈の手を振り解くとこう言った。
夜空「・・・行くぞ、肉」
星奈「やっとやる気になったわね。今日中には無傷であのイノシシを倒せるようになるまでやるわよ!」
そう言って、意気揚々と星奈は歩き出す。夜空もその背中を追って―――
――駆け出す。
夜空の体前方に構えられた短剣が燃え盛る炎の如き光を纏う。
おいおい、まさか・・・
嫌な予想は見事的中し。
夜空が勢いよく突き出した短剣は、隙だらけの星奈の背中に深々と突き刺さった。
8割もあった星奈のHPがこの一撃で半分消し飛び、バーが4割近くまで減少する。
星奈は最初は何が起きたのか分からなかったようだが、夜空が自分に剣を突き立てているのを見るや、すぐに状況を把握したようだ。
星奈「いきなり何するのよ!」
夜空「ふむ、確かに貴様の言う通り、攻撃対象を現実の物体であると見做さなければ抵抗が消えるようだ」
星奈「あ、あんたねえ・・・」
顔をひくひくさせながら星奈は夜空から距離を取る。
ふと何かを思いついたのか、星奈が邪悪な笑みを浮かべる。
星奈「人の好意を仇で返すようなゴミカスには、お仕置きが必要よね」
夜空「好意だと?貴様は自分の自己満足の為に、私をダシにしようとしただけだろう」
この言葉を受けて、星奈は言葉ではなく行動で返した。
星奈「死っねえええええええええええええッ!」
瞬く間に距離を詰め、星奈は夜空に向け、先ほど一撃でイノシシを屠ったものと同じソードスキルを放つ。
しかし、夜空もそれに合わせるように斬撃系ソードスキル≪ダブル・エッジ≫を発動させていた。
横薙ぎの一閃と垂直に振り下ろされた一撃が大きな音を立てて衝突する。夜空が若干押し負けるが、星奈の剣は夜空に届くことなく相殺される。
スキル後の硬直に入った星奈に対し、夜空はまだ二撃目を残している。女の子に似つかわしくない雄叫びと共に、鋭く繰り出された水平切りが無防備の星奈に直撃する。
≪アーマー・ピアス≫の追加効果であるDEF低下のバフを受けていた星奈のHPは呆気無く消し飛び、イノシシのそれとは違う鋭い効果音を残し消滅する。
勝ち誇った顔をする夜空は、気の緩みの所為からか、自身らのソードスキルに反応して戦闘態勢に入った≪フレンジーボアー≫の存在に気が付かなかったらしい。
死角から突進をかまされ、本日三度目の地べたローリングをキメた夜空は、残っていた3割のHPを使い果たし、無残にも消滅した。
理科「・・・何と言いますか」
幸村「むえきな争いは、なにも生みださないというよい例ですね」
俺は大きくため息をついた。
今回の投下はここまでです
投下開始します
夜空と星奈は黒鉄宮と呼ばれる場所に転移させられたようだ。俺たちは2人を迎えにその場所へと足を運んだ。
はじまりの街でも異質な存在感を放っているそれは、理科の案内を必要としないくらい分かりやすい位置に存在していた。
中に入ろうとすると、ちょうど2人が中から出てくるところだった。
星奈「なんであんたはあたしにに攻撃できるのにあたしの攻撃ははじかれるわけ!?」
夜空「本来、貴様のような野蛮人がこの私に触れることすらおこがましいのだ。ゲームのサーバーもそのことを認識して攻撃を防いだのだろう」
星奈「そんなことあるわけないでしょ! いちいちムカつくわねあんた・・・あ、ちょっと理科!」
どうやらこちらにようやく気が付いたらしい。星奈が理科に問い詰めてくる。
星奈「さっき夜空を串刺しにしようとしたら、何の前触れもなしにいきなりはじかれたのよ! そんな防御スキルは無かったはずよね? いったいどういうことよ!」
理科「まさかとは思いましたがほんとにやってたんですね・・・一応説明しておくと、≪圏内≫では基本的にプレイヤーが攻撃を受けることはありません」
星奈「圏内?」
理科「街の中のことです。あとは各フィールドに設定されている安全地帯も該当します。基本的に戦闘を行わない場所のことを指します。圏内では、攻撃になり得ると判断されたアクションは、対象物に当たる直前で遮断されます」
星奈「ふーん、そうなのね」
こいつら外に出たらまたドンパチおっぱじめるんじゃないだろうか・・・容易に未来が想像できる。
小鷹「身内同士で戦闘とかあれっきりにしてくれよ・・・いちいち外に出るたび殺し合いしてここまで戻ってきてたんじゃゲームが進まないだろ」
またため息をつきそうになる。理科はこっちに来てから真面目モードでいい感じなのに、この二人は悪い意味でいつもと変わらないな・・・
星奈「文句なら夜空に言いなさよね! せっかくあたしが協力してあげようって言ったのにいきなり後ろから攻撃してくるなんて――」
夜空「助けてくれと頼んだ覚えはない。それに結局、お前自身がお前自身の為だけに私を利用しようとしただけだろう。恩着せがましいにも程がある」
星奈「・・・あーもう、ほんっと腹立つわねあんた。いいわ、ここは小鷹に免じて許してあげる。ただし、今後また攻撃してくるようなことがあったら容赦しないんだからね!」
何故俺に免じてなのかは良く分からないが、一先ず矛を収めてくれたようだ。星奈は再びフィールドに向かうべく歩き出す。対する夜空はそっぽをむき、動こうとしない。
理科は俺と夜空を交互に見た後、最後に俺にウィンクを残し、幸村の手を取り星奈の後を追う。どうやら夜空は俺が何とかしなければならないらしい・・・
小鷹「星奈は素直じゃないけど、あいつなりにお前のことを案じてくれてると思うぞ。あそこまで無下にしなくても・・・」
夜空「・・・気にくわんのだ」
ボソッとした声で拗ねるように夜空が言う。
夜空「・・・やつが自分の為だけにあのような行動を起こしたとは思っていない。ただ、それを認めるのが癪でな・・・つい手を出してしまった」
小鷹「ついって・・・お前なぁ」
雑魚敵であるイノシシに斬りかかる事すらままならなかった人物の台詞とは思えない。
夜空「・・・小鷹は、このゲームをやり込むつもりか?」
不意に夜空が話題を変える。
小鷹「え?・・・うーん、そこまで先のことは考えてないけど、このゲームって理科が言うには近いうちに販売されるらしいからな。友達を作るツールとしてこのゲームを利用するっていうのも、隣人部の活動としてはありだと俺は思う」
まぁ、それは副次的な理由だけどな。俺は―――
小鷹「でもやっぱり、しばらく俺は純粋にこのゲームを楽しみたい。こうしてゲームの世界を旅をするのって子供の頃夢見たことでもあるしな」
さっき実際に戦闘をしてみて思ったが、このゲームは仮想のものだとは思えない臨場感がある。画面を通してアバターをボタン操作で動かすRPGゲームにはない何かがある。その魅力に俺は既に取り憑かれていた。
夜空「子供の頃・・・か」
夜空はそう言って何やら思案するような顔をしていたが、しばらく後に顔を上げ、俺の手を取り歩き出す。
夜空「行くぞ小鷹。やると決めたからにはやつらに後れを取るつもりはない」
夜空の顔に、もう憂いは無かった。
今回の投下はここまでです
はがない少なくなってきたから
がんばれ
乙
はがないは原作者がもう少し落ち着いて進めてさえいればなぁ…
>>115
もっと増えてくれるといいですよね。そういえば自分ははがないと俺ガイルのクロスssがとても好きでした。もうエタってしまっているのが残念ですが・・・
>>116
自分はあの展開嫌いじゃないです。11巻早く出てほしいです・・・
投下開始します
草原に再び足を踏み入れた俺たちは、イノシシ狩りを再開した。
最初の内は突進を上手く避けきれず何度か被弾したものの、イノシシがたまに落とす回復ポーションにより黒鉄宮送りになることは無かった。
・・・ま、星奈や夜空が「使わないから」と言って俺にくれた分も含めてようやく間に合っていたんだが。
今ではレベルも上がり、自前の回復ポーションだけでも余裕を持って間に合う程度にはなっている。
そういえば、夜空の豹変ぶりには驚いた。さっきやられていたのが嘘のように、ソードスキルを上手く駆使してイノシシを次々と屠っていた。
まぁ、あの星奈を不意打ちからとはいえ倒すくらいだしな。元々そのポテンシャルを持ってたってことだろうな。
今頃、星奈と倒したイノシシの数でも競っているのだろう。たまに二人が言い争うような声も聞こえるし。殺し合いをおっぱじめるのだけは勘弁してほしいが・・・
どれくらい時間が経っただろうか。
俺はもう何匹目かも分からないイノシシと対峙していた。
俺の今日の目標は、レベルを3にすること。
レベル1からレベル2になるのは早かった。しかし、既にその3倍の量を倒している実感があるのに、依然レベル3には到達していない。
そういえば、イノシシ狩りに夢中になりすぎてあいつらとコンタクト取ってないな。とりあえずこいつ倒したら声掛けに行くか。
俺がタゲっている≪フレンジーボアー≫は、突進の構えを取ると、一直線に突っ込んできた。
何度も戦っているうちに体で覚えた事だが、初撃はカウンターでダメージを与えることで、かなり被弾を抑えられる。
そのまま突っ込んでしまうと、俺では一撃で倒しきれずに反撃を食らいがちなのだ。
イノシシを正面で見据えつつ素早く右に移動する。基本的にイノシシが突進する際は直進的で、あまり急には曲がってこない。
剣を体の横に構える。この位置なら俺にイノシシの突進は当たらないので、安心してソードスキルのタイミングを合わせることだけに集中できる。
会心のタイミングで放たれた水平斬撃技≪ホリゾンタル≫は、イノシシの鼻面に直撃し、HPゲージをゴリゴリ削る。
1割程度までHPを削られたイノシシが悲鳴を上げる。突進のモーションが中断され、多少の隙が出来る。
スキル硬直から解除された俺は、素早く剣を上段に構え、垂直斬撃技≪バーチカル≫をイノシシに直撃させた。
・・・イノシシのHPが少ないのにわざわざソードスキルをわざわざ使ったのは、情けないことに普通の攻撃だと外したり威力不足で倒しきれなかったりすることがあるからだ。
星奈のように上手く勢いを乗せた正確な通常攻撃も早いうちにモノにしないとな。スキル使用後の硬直、地味に痛いし。
イノシシが呆気無く砕け散った後、俺の体が光を帯び始めた。
・・・間違いない。今の一体から得た経験値でレベルアップ条件を満たしたのだ。
レベルアップで獲得できるボーナスポイントを確認すると、前のレベルアップ分で得たのを含めてしっかりと6ポイントあった。
俺はそれを確認し、満足しつつウインドウを閉じる。
何でポイントを振ってないのかって? なんか勿体ない気がするんだよな。
必要に迫られたときに振り分ければいいと自分では思ってる。
顔を上げると、近くに夜空と星奈の姿が見える。
2人に合流すべく、俺はゆっくりと歩き出した。
今回の投下はここまでです
投下開始します
イノシシを軽く倒して一息ついていた夜空に近づくと、どうやら足音で気付いたのかこちらを振り向く。
夜空「ん?どうした小鷹。ポーションでも足りなくなったのか?」
小鷹「足りなかったのは最初だけだって。むしろ今では余ってるくらいだ。それに、レベルも3になったんだぜ?」
得意げに言うが、夜空の反応は薄い。
夜空「レベル3など私もとっくに到達している。しかし、予想できたことだがレベル4になるのはなかなか大変そうだ」
小鷹「まぁ確かにそうかもな。レベル2になるのはすぐだったけど、3になるまでかなり時間がかかったしな・・・」
夜空「時に小鷹」
小鷹「ん、なんだ?」
夜空が不意に話題を変える。
夜空「もう8時を過ぎているのだが、まだ帰らなくていいのか?」
小鷹「・・・え?」
俺は時間のことなどすっかり忘れてゲームにのめり込んでしまっていたようだ。
今頃家では小鳩が腹を空かせて俺の帰りを待っているだろう。
小鷹「悪い、俺帰らないとまずい。俺が帰ったって他の部員に伝えといてくれ」
夜空「あ、ああ。分かった」
俺の焦りが伝わったのか、夜空は素直にそう返答する。
それを確認するや直ぐに俺はメニューウインドウを開き、ログアウトのボタンをタッチする。
視界が揺らぎ、意識が遠くなる―――
再び意識が戻ると、そこは見慣れた隣人部の部室だった。
日はとっくに堕ちている。急いで帰らないとまずいな。
起き上がり、あたりを見回す。床に寝ているのは夜空と星奈。まだゲームの中にいるのだろう。幸村の姿は無い。
そして理科は、椅子に腰掛け本を読んでいたようだが、俺が戻ってきたのに気がついてか、本を机の上に置く。
理科「お疲れ様でした。戻ってきたのは小鷹先輩だけですか?」
小鷹「急ぎの用があってな。先に抜けてきた。幸村はもう帰ったのか?」
理科「はい。幸村君が帰る際に私もこっちに戻ってきました。見回りの人が来たときに全員この恰好じゃ不味いですし」
確かに、もう部活動の活動が終わる時間もとっくに過ぎている。その時間帯に部員全員が怪しげなヘッドギアを付けて床に寝ていたのでは不審に思われること請け合いだ。
この学校で特殊な位置付けを得ている理科なら、状況説明に困ることは無いという判断だろう。
小鷹「損な役回り押しつけちまって悪い」
理科「いえ。私もこんな時間までやり込むとは思っていませんでしたし、ここまで楽しんで貰えるのでしたら開発者明利に尽きますので」
小鷹「・・・そうか」
俺は鞄を手に取り、反対の手で理科に軽く手を挙げる。名残惜しいが、あまりぐずぐずしている暇はない。
理科「小鷹先輩」
部室を出る直前、理科に呼び止められる。
理科「このナーヴギアは小鷹先輩に差し上げます。家に持ち帰って遊んで頂いて構いませんよ」
小鷹「本当にいいのか?」
理科「もともとそのつもりで貰ってきましたので」
そういうことならありがたく貰っておこう。寝る前に少しやろうかと思案していると、理科が「そういえば」と質問してくる。
理科「急ぎの用ってオナニーのことですか?でしたら今から理科室に行けば直ぐに済ませられますよ。殿方のおかずになるようなものはたくさん保管してありますし。何なら私が小鷹先輩の性処理を―――」
俺は最後まで聞かず、部室から出て扉を閉めた。
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家に着いた時には、もう8時半を過ぎていた。
茶の間に入ると、小鳩がコントローラーを手にテレビ画面と向き合っていた。
俺が帰ったの気づいたのか、小鳩がゲームを一時停止しこちらを向く。
小鳩「・・・・・・ククク・・・・・・随分と遅い帰還であるな・・・・・・我が半身よ・・・・・・」
小鷹「悪い。腹空いてるよな。今から作るからちょっと待っててくれ」
小鳩「・・・・・・急ぐがいい・・・・・・我はそこまで寛容ではない・・・・・・・空腹を満たす為なら汝の肉を喰らうことも厭わぬやもしれぬぞ・・・・・・」
どうやら小鳩もゲームにのめり込んでいたようで、帰りが遅い事への咎めは最低限で済んだようだ。
ここ連日部活で帰りが遅くなっているので、今日の件で不満が爆発するかもしれないと危惧していたんだが・・・
いつも通りの様子で安心した。
俺も腹減ったし、さっさと飯を作ってしまおう。
部活で帰宅が遅くなってしまうことが多くなったため、購入に踏み切った圧力炊飯器が役立ちそうだな。
米二合と必要量の水を入れ、炊飯器を起動させる。
無洗米って便利だよな。味もほとんど変わらないし。
冷蔵庫を開き、玉葱と人参を引っ張り出す。
皮を剥いた後、玉葱は繊維を断つようにスライスし、人参は細切りにする。
用意しておいたフライパンにバターを入れ中火にかける。いい感じに溶けたところでさっき切った野菜を入れて炒める。
玉葱が狐色になった辺りで牛肉を投入。こちらも色が変わるまで炒めつつ。頃合いを見て食用酒を少々。
あとはケチャップとソースを少量、デミ缶を半分ほど入れる。隠し味ではちみつも忍ばせておく。
5分ほど煮たところでスプーンを使って味見をする。・・・うん、悪くない。
火を止め、既に炊き上がっていたご飯を皿によそう。15分で美味しく炊けるって素晴らしいよな。
最後にご飯の上に作ったハヤシをかけて―――完成。
夕食を載せた皿をテーブルに運ぶ。
小鳩は2人分のスプーンを用意してテーブル前で待機していた。俺が座ると同時に、小鳩も席に着く。
小鷹「そんじゃ、いただきます」
小鳩「ククク・・・・・・我に供物を捧げられたことを光栄に思うがいい・・・・・・」
トマトジュースの入ったワイングラスを片手に小鳩が言う。
そのまま逆の手でスプーンを手にすると、ハヤシライスを掬い口に運ぶ。
小さい顔でご飯を頬張りながら小鳩は満足げな顔をする。口にあったようでよかった。
わがままな小鳩も少しは成長したよなぁ。
前は言わないと手を付けなかった玉葱も躊躇なく口にするようになったし。
小鳩の好き嫌いを克服すべく、玉葱を使った料理を工夫を凝らして出していた甲斐があるものだ。
あとは、あの口調さえどうにかなれば言うことは無いんだけどな。
小鷹「ごちそうさまでした」
小鳩「ククク・・・美味であったぞ」
食事を済ませた後、食器洗いを手早く済ませる。風呂掃除をして風呂を沸かせつつ、合間に宿題に取り掛かる。
今日中に済ませるべき宿題は、数学の簡単な問題数問のみであったため苦労せずに片づいた。
と、ちょうど風呂が沸いたことを知らせる機械音が鳴り響く。
沸いたらすぐ入るようにと小鳩に言っておいたので、今頃風呂場に向かっているだろう。
小鳩が上がるまでに少し時間もある事だし・・・
俺は鞄からナーヴギアを取り出し、頭に被せた。
小鷹「リンク・スタート」
静かにそう呟くと、俺の意識は闇へと吸い込まれた。
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俺は広い草原に降り立つと、辺りを見回した。
見渡す限り戦闘が起きている様子は無い。ということは星奈と夜空もログアウトし、帰宅したということか。
冷静に考えれば、女子高校生が夜遅くまで学校でゲームしてるって結構異常なことだよな・・・
そういえば、先ほど時間を忘れる要因にもなったことだが、このゲームに昼夜の概念は無いのだろうか。
まぁ、大抵の人はゲームをするのは夜が中心となるだろうし、実際の時間に合わせた昼夜を再現するのは難があるのは分かるけど。
暗い中で狩りをするのも難しいだろうし、夜と言う概念自体がないのかもしれないな。
近くに≪フレンジーボアー≫が一匹いるのを見つけ、俺は剣を抜く。
レベルも上がったし、もう一発で仕留められるんじゃないか・・・そんな期待を込め、定石のカウンターを放棄し、俺はソードスキルを発動させた。
水平斬撃技≪ホリゾンタル≫。イノシシは基本的に左右に回避動作を取るため、特に隙がない場合はこのスキルが安定する。
案の定、突進モーションに入っていなかったイノシシは攻撃を避けようとしたものの、横に薙ぎ払われた一閃の範囲から逃れるには間に合わない。
強烈な手ごたえを感じつつも、剣を振り抜く。
イノシシのHPゲージがぐんぐん減り―――空になる。
≪フレンジーボアー≫が消滅するのを確認し、俺は満足感に浸っていた。
倒すのに苦労していた敵を軽く倒せるようになるっていうのはRPGの醍醐味の一つだ。
まさに今、こうして俺がそれを実感している。
・・・ただ、苦労せず倒せるようになったのはいいが、そうなるとこいつらばかりを狩っているのもつまらないよな。
別の場所に向かって、違うモンスターとも一戦交えてみたいと俺は感じていた。
俺から見て、始まりの街の反対側には森らしきものが見える。
森というだけあって、もしかするとかなり強いモンスターが出現するかもしれない。
ただ、死亡によるペナルティは経験値と装備(これは低確率らしいが)だけと聞いている。
経験値を失うのは先ほどレベルが上がった直後なので痛くない。装備をロストした場合、今日は一旦切り上げて明日理科にどうすればいいか聞けば済むだろう。
俺は森を目指して走り出した。
小鷹「・・・やっぱ現実で走るのとは訳が違うな」
目についたイノシシをすべて無視してここまでたどり着くのに10分もかからなかったように思える。
結構本気で走ってきたつもりだが疲労をほとんど感じない。
それに、心なしか走る速度も早くなっている気がする。
森の中には一本の小径が続いており、何かがその先にあるという事を否が応でも感じさせられる。
小鷹「・・・行くか」
とりあえず俺は進んでみることにした。
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乙
なんだかんだ酷いとこあるけど
こだか好きだわ俺
>>156
私も何だかんだ言って好きです、小鷹。はがないのキャラクターの中でも3本の指に入るくらいに。
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足を踏み出そうとした刹那、「小鷹ー!」と叫ぶ声が背後から聞こえた。
振り向くと、星奈がこちらに向かって手を振りながら駆けてくるところだった。
星奈「今ここにいるってことは、小鷹も家から接続してるってことよね?」
星奈は俺の近くまで来ると、息も切らさずそう問いかけてきた。
小鷹もって事は、あの後星奈も家に帰ったのだろう。
小鷹「ああ。そういえば星奈は帰るの遅くなって大丈夫だったのか?」
帰り際、その気遣いを忘れていたことが地味に心残りなので軽い感じで聞いてみる。
星奈は「あぁ、そんなこと」と言った感じで軽く答える。
星奈「部活動が長引いたってパパに言ったら、怒られるどころかむしろ労われたわ。交友関係を深めることは大事だって言ってたわね」
理解の深い人が父親なんだな・・・うちのオヤジと知り合いって聞いてるし、ただの放任主義なだけかもしれないが。
星奈「それより小鷹、この森の中に行くつもりなんでしょ? あたしも一緒に行くわ!」
どうやら皆考えることは同じらしい。
星奈が同行してくれるのであればとても心強い。危険分子の夜空もいないしな。
小鷹「分かった。とりあえず―――」
星奈「決まりね。じゃあ今からパーティー申請するから承諾しなさい」
そう言い、星奈が何やら指を動かす。すると、俺の目の前にウインドウが表示された。
<【player031】よりパーティーの申請がありました。承諾しますか?>
player031とはおそらく星奈の事だろう。ちなみに俺はplayer033である。おそらくアバターを作成した順に数字が割り振られているのだろう。
俺は躊躇う事無くOKを押す。これで、星奈と俺の即席パーティーが結成されたことになる。
小鷹「よくパーティーの組み方なんて知ってたな」
星奈「さっき理科から教えてもらったのよ。私と夜空でパーティーを組んで狩りをすればいいとでも思ったんじゃない? ま、夜空があたしに跪いて懇願してくるようなら組んであげてもよかったんだけどね」
どうやらパーティーを組むのは俺が初めてのようだ。
・・・こうして気軽にパーティーを組んで狩りをすれば、俺にも友達が作れるんじゃないだろうか。
想像し、期待が膨らんでいく。
久しぶりの部活らしい活動だ。星奈には目一杯練習台になってもらおう。
そんなことを考えつつ、今度こそ俺たちは森の中に足を踏み入れた。
今回の投下はここまでです
以降原作に登場していないmobを登場させます。
第一層の森には人型mobが出ないとの表記がなされておりましたが、本ssにおいてその原則は適応されないものとします。
勝手ですがご理解の程よろしくお願いします。
投下開始します。
やはり草原と比べると視界の悪さが際立つ。
森の中に入り5分ほど歩いているのだが、中に入れば入るほど暗くなり、先が見えにくくなる。
未だモンスターと接触はしていないが、気を抜いていると奇襲される可能性もあるだろう。
≪フレンジーボアー≫はこちらから攻撃意志を示さない限り襲ってくることは無かったが、全てのモンスターがそうとは限らない。
警戒しながら進んでいると、不意に星奈が細剣を構えた。
星奈「右から一体来るわよ、小鷹」
星奈に忠告され、俺は慌てて剣を抜く。
右を見ると、棍棒らしきものを持った何かがこちらに向かってきていた。
距離が10mを切ったところで、視界にモンスターの名前とHPバーが表示される。
≪レッサーゴブリン≫。その名の通り体は小さいが、棍棒は意外と太く、もろに受ければそれなりのダメージを受けてしまうだろう。
更に近づいてきたゴブリンは、棍棒を真上に振り上げると、俺に飛びかかりながらそれを振り下ろしてきた。
小鷹「うおっ」
咄嗟に剣でガードする。しかし、あまり力の入らない位置で受けてしまったため、押し切られてしまう。
棍棒が俺の肩に直撃し、HPゲージが少し減少する。威力はある程度殺したので、大したダメージにはならずに済んだ。
俺に一撃を与えたゴブリンは、着地する否や別方向からの斬撃に襲われた。
星奈の放った一撃は、ゴブリンのHPを大きく削り取る。ゲージから推測するに、残り4割と言ったところか。
ゴブリンはその体躯から考えるとやや野太い声を発し、星奈の方を向く。多量のダメージを負わせたことによりタゲが移った様だ。
スキル硬直から解除された星奈は、素早くゴブリンとの間合いを取る。
ゴブリンは星奈との距離を詰めると、先ほど俺にしたのと同じ攻撃を繰り出す。
俺はゴブリンの後ろに回り込み、剣を構えていた。
星奈がゴブリンの攻撃を弾いた直後、着地際の無防備な状態にソードスキルを叩き込む腹積もりだ。
しかし、事はそう単純に運ばなかった。
・・・星奈は攻撃を受け流すことなく、細剣でゴブリンを貫いていた。
4割以上残っていたHPが一瞬で吹き飛び、星奈にダメージを与えることなく≪レッサーゴブリン≫が消滅する。
・・・初めてパーティー狩りを成功させた喜びはあるにはあるが、ぞれ以上に俺があまり何もしていないことへの虚しさがあった。
小鷹「・・・結構無茶するよな、お前。攻撃を弾いてくれさえすれば、その隙に俺が安全に仕留めたのに」
星奈「はぁ? レイピアであの攻撃をパリィしようとするほうがよっぽど難しいわよ。避けることは出来そうだったけど、その場合アレは小鷹のスキルの射程外に着地することになるじゃない。それなら倒しちゃったほうがいいって考えただけよ」
簡単に言いくるめられてしまう俺。まぁ、言ってることは間違ってないんだろうけど・・・なんかこう、パーティ狩りしてるっていう実感が湧かないというか・・・・・・
小鷹「・・・すまん。余計な口出しだった」
結局反論することが出来ず、俺は再び星奈の前に足って歩き出した。
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