社会「国語先生、生徒とテストで勝負するのはやめとけ……。わしも昔、コテンパンにやられて1万磨ったことがあるけん……」ｼｮﾎﾞﾝ

数学「何平然とお金賭けてんですか！」

国語「もう遅いっす。もし負けたらクラス全員にハーゲンダッツ奢ることになってますから……」ﾊｧ

理科「ようこんだけの数学力で大きく出れたもんやな」

英語「じゃあ国語先生が勝ったら？」

国語「そいつらは坊主。俺に何のメリットもねえ……」

理科「ま、ええやん。若くてかわいい先生にマンツーマンで教えてもらう機会なんてそうそうないで？」ﾆﾔﾆﾔ

国語「でも性格がキツくて……」

数学「国語先生の理解力がうんこすぎてイライラしてるだけです。ほら、手が止まってますよ！」

国語「うう……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

英語「ってか何で苦手な数学で勝負すんの？　英語でやりゃあいいじゃん」

国語「……」

数学「英語、もっと苦手なんだそうです。アルファベットが怪しいのはもう救いようがないかと……」

理科「なら理科はどうや？　今やってる範囲なんかほとんど暗記やで？」

社会「わしんとこも簡単じゃけん、社会で勝負したらどうじゃ」

数学「対戦相手の中に理科と社会でそれぞれ満点取れる奴らがいるらしくて……」

理科「ああ……あいつらと勝負するんかい」

体育「期末なら保健のテストもあんのにな」

国語「中学時代、保健だけは満点でした。『生殖にかかわる機能の成熟』に限りますけど」ｷﾘｯ

英語「俺もその分野なら誰にも負けない自信あるっす」ｷﾘｯ

理科「あんたらエッチやっただけやろ」

数学「でも今更期末に変更できないでしょ？　頑張りましょうよ国語先生」

国語「うん……」

＊＊＊


1時間後


数学「ああもう！　何で指使って計算しようとすんですかこの馬鹿！　答え三桁になるのに足りるわけないでしょ！」ﾊﾞｼｨﾝｯ

国語「もうやだぁ……」ｼｸｼｸ

英語「俺、教師が竹刀もってるとこ漫画でしか見たことなかったっす」

理科「数学ちゃんもう勘弁したりいな。国語くんガチ泣きしてるで」

社会「そりゃ教員１年目の子に『馬鹿！』とまで言われたらのう……」

体育「でもこいつの数学センスの無さは筋金入りだな。よくこれで教採受かったもんだぜ」

英語「これよりも英語ができねえって国語先生どんな脳みそしてんだよ」ﾍﾟﾁﾝ

国語「春はあけぼの……やうやう白くなりゆく山際……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

社会「いけん、壊れかけよるわい」

数学「国語先生！　悔しかったんじゃないんですか！　テストであいつら見返してやるんでしょ！」ﾍﾟﾁﾍﾟﾁ

国語「もうやだよう……。お家に帰りたいよう……」ｼｸｼｸ

理科「あかん、もうなんか可哀想や」

英語「数学先生、これ以上は無理だって。国語先生の脳みそは国語と女体を考えるようにしか出来ていないんだって」

社会「生まれつき物覚えの悪い子だっておるけんの。こればっかりは仕方ないじゃろが」

数学「いいえ！　あたしはきっと国語先生に満点を取らせて見せますよ！　努力してできないことは無いんです！」ｺﾞｵｵｵｵｵ

体育「その熱意は生徒にだけ向けてやりゃあいいんじゃないのか……？」

教頭「皆仕事終わってんならそろそろ帰れ。光熱費が勿体ないぞ」

理科「ほーい」

国語「助かった……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

数学「仕方ないですね……。続きは国語先生のアパートでやりましょう！」

国語「ふぁ？！」

数学「これからしばらく泊まり込みで頑張りますよ！　国語先生のアパートに予備の布団ありますよね？」

国語「ない！　人を泊めるような設備はない！」

英語「あるよー。俺よく泊めてもらうし」

国語「黙れ英語！」

英語「しかもオートロックの小奇麗なマンションだし」

数学「ヒュウ！　打ってつけじゃないですか！」

理科「でも数学ちゃん、プライベートな時間くらい見逃したり？　国語くんが死ぬで」

社会「ほうじゃ。ただでさえテスト制作でひいひい言っとんのに……」

数学「大丈夫です、数学で人が死ぬことなんかありませんよ！　じゃあ国語先生の車に乗せて頂きますね」

国語「冗談だろ？！　きょ、教頭先生も何か言ってくださいよ！」

教頭「うるせえ。どうでもいいからさっさと帰れ」

国語「きょ、教頭先生……」

理科「も、もう何言っても無駄やで国語くん……」

国語「わ、分かりました……。ちょっと車の中片づけてくるんで数学先生はここで待ってて……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

数学「竹刀入りますかね？」

国語「入らんッ！」

英語「入るよー。ワゴンだし余裕」

国語「黙れ英語！」

社会「可哀想にのう……」

数学「国語先生の家、楽しみです」

理科「あんなぁ、数学ちゃん。家にまで押しかけるのはあんまりやで」

数学「でも出来の悪い子を見たら何とかしてあげたくなるじゃないですか！　やっぱりあたし、根っからの教師なんですね！」ﾃﾚﾃﾚ

理科（ここまで生徒の気持ちを無視して突っ走る教師はおらんで！）



ブロロロン……ブロロロオオオオオオオオオオオッ！



数学「」

国語「アディオスッ！」ﾌﾞｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵﾝ

数学「ちょ、ちょっと！　なんで置いてっちゃうんですか！　国語先生！」ﾀｯﾀｶﾀｯﾀｶ

理科（なんでって言われてもなぁ……）

＊＊＊


自宅


国語（はあはあ……あの女、頭がおかしいぞ！　俺はただ、テストの回答のコピーくれって言っただけなのに……）ｶﾞﾀｶﾞﾀ

国語（それにこのストレスに比べたらクラス全員にハーゲンダッツ奢ることくらいなんでもないじゃないか……！）ｶﾞﾀｶﾞﾀ

国語（もうプライドも何も要らねえ……！　テスト勝負は棄権するッ！）ｶﾞﾀｶﾞﾀ

国語（……。とりあえずもう寝よう。今日は疲れた……）ﾌｳ







ピンポーン






国語「」ﾋﾞｸｯ

サガワキュウビンデース



国語「なんだ……宅配便か……」ﾎｯ

国語（いや待て……念のためにドアスコープ覗いとこう……）ｿｵｯ




数学「お荷物お届けにきましたー」



国語「」ﾋﾞｸｯ

国語（あっぶねえ！　騙されるとこだった！）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

数学「いるんでしょー？　開けてくださいよお」ﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝ

国語（そしてあいつ、オッサンの声真似超うめえ！　きめえ！）ｶﾞﾀｶﾞﾀ

数学「判子くださいよお」ﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝ

国語（神様……！）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

＊＊＊


１時間後


シーン


国語（行ったか？）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

国語（どうかあの女がいませんように……）ｿｵｯ



数学「……」ｼﾞｯ



国語「ひぃっ！！」

数学「あ、やっぱり居るじゃないですか！　なんで宅配便来たのに開けないんですか！　非常識ですよ！」

国語「宅配便じゃねーからだよ！」

数学「さっさと中に入れてください。寒くて死にそうです」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

国語「お、俺の家を何故知ってる？！」

数学「英語先生が100円で教えてくれました」

国語「英語このやろう！」

数学「まだ連立方程式出来てないでしょ！　時間がもったいないですよ！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

国語「……も、もう俺は数学なんかまっぴらなんだよ！　頼むから俺に付きまとわないでくれ！」

数学「何言ってんですか。これからが楽しいとこなのに！　Yに代入するんですよ？！」

国語「……つまんねえんだよッ！　数学先生に教えてもらうのは！」



数学「……え？」



国語「……そういう風に来られると、余計に数学が嫌いになんだよッ！」

数学「こ、国語先生、私はただ先生のためを思ってですね……！」

国語「俺たち教育者は、出来るようにしてやることだけが仕事じゃねえんだよ……。自ら学びたいと思わせなきゃいけないんだよ……」

数学「……で、でも……でも……」

国語「自分の好きなこと押し付けてるだけになってんじゃねえか？　もう一度よく考えてみろよ……」

数学「……」

数学「……」

国語「……」

数学「……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

国語「……」

数学「……」ｼｸｼｸｼｸｼｸ

国語「……」ﾊｧｰ



国語「……」ｶﾞﾁｬｯ



国語「……そこで突っ立てんのは寒いだろ。中に入れよ」

数学「ふう、やっとですか」ｽﾞｶｽﾞｶ

国語「……へ？」

数学「貴重な時間を無駄にしました。こんな茶番する時間があったら3問くらいは解けたのに」ﾔﾚﾔﾚ

国語「ちょ、俺の話で泣いてたんじゃ……？」

数学「だれがあんな話で泣くんですか。国語先生が数学の面白さ語るなんて1兆年早いですよ」

国語「え……」

数学「それから独自に生徒達に好きな授業アンケートとったら、国語先生の授業、堂々のワースト1位でした」

国語「そ、それは国語を好きになってもらうのって難しいから……！」ｱｾｱｾ

数学「特に悦に入りながら朗読するのがホントウザいそうです。昼寝の邪魔をしないで欲しいとか」

国語「そんな……てっきり感じ入って聴いているものかと……」ｱﾜｱﾜ

数学「さあて、出勤まであと6時間はあります。頑張りましょう！」

国語「そんな……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

＊＊＊


一週間後


生徒A「ま、参りました……」

国語「サウダロウサウダロウ。コレニ懲リタラ二度ト俺ニ刃向ワナイコトダナ」ｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ

生徒B「あと先生、なんか臭いんですが……」

国語「モウ一週間モ風呂ニ入ッテナイカラネ」ｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ



理科「国語くんが満点とってまさかの圧勝とは……。恐ろしい奴やで数学ちゃんは……」

英語「人間性は欠如してしまったみたいっすけどね」

数学「人間、死ぬ気になれば何でも出来るんですよ。まぁ子ども達にはこんな勉強絶対にさせませんけど」

生徒C「俺数学30点だった～」ｹﾞﾗｹﾞﾗ

生徒D「俺英語20点wwww」


英語「おいお前ら笑いごとじゃねえんだぞ！」

数学「そうよ！　しっかり授業聴いてないからそんな酷い点数とんのよ！」

英語「そんな簡単な問題で躓いてちゃ、この先どんどん出来なくなんだからな！」

数学「恥を知りなさい恥を！」

生徒C「……先生達だって数学と英語しか出来ないくせに」ﾎﾞｿｯ

生徒D「チッ」

数学「今なんつったッ！？」ﾑｶｯ　ｶﾞｼｯ

理科「まぁまぁまぁ。あんた達二人はあとでウチがたっぷり説教したるわ。それにこの先生たちは数学・英語以外もあんた達よりよう出来るで」

数学「勿論です！」ﾌﾝｯ

理科「試しに今度の期末、先生と国語のテストで勝負してみたらええやん」ﾆﾔﾆﾔ

数学「」

英語「」

＊＊＊


国語「おいお～い、何で情景描写抜き出しなさいって書いてあんのに心情描写抜き出してんだ～い？　お話になんないねぇ～」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

数学「くっ、殺せ……ッ！　///」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

国語「そして英語先生？　英語話せても自分の国の言語の文法が滅茶苦茶じゃだ～めでしょ～う」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

英語「……///」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ


社会「も、もう勘弁したったらどうじゃ……」

理科「放っといたり。あの二人、テストで負けたらクラス全員に焼肉奢ることになってんねんから」


数学「解答のコピーをぐだざい～」ｼｸｼｸ

英語「国語様～」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ



国語「このあと家で勉強会を開こうねぇ～」ﾆｺﾆｺ