作戦領域:樹海 作戦目標:浮遊物体の排除(180)
風「今見えているこの世界は神樹様が作った結界なの」
東郷「神樹様の……?」
友奈「じゃ、じゃあ悪い所じゃないんですね!」
風「ええ……でも、神樹様に選ばれたあたし達はこの中で戦わなくちゃならないの」
樹「戦うって……え?」..ババ
東郷「風先輩、まさかあれ……あのヘリですか?」..バババ
風「え? なに、あれ……」
シーラ『まもなく作戦領域に到達するわ』
シーラ『何の前触れも無く旧世代と思しき兵器が現れるだなんて……』
シーラ『どうにも腑に落ちないわね、注意して』
重苦しい金属音と共に体が浮き上がる感覚に包まれる。
それも僅かな間で、すぐさまに轟音と衝撃が着地した事を知らせた。
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
音声ガイドを聞き流しながら周囲を見渡す。
大小様々な蔓のようなものがひしめき合い、中心地には巨木が聳えるというえもいえぬ世界が広がっている。
そこは今まで見てきた景色と一線を画するが如く、同じ世界である事さえ疑わざるを得ない光景だった。
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|Commission |
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|現在我々アライアンスが保有し、 |
|採掘施設建造中の地域で謎の浮遊物体が出現した |
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|Commission |
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|先の特攻兵器による被害と混乱も徐々に収束し、 |
|各地の資源確保の為の施設建造を進めているのだが |
|ここもその一つであり、早々と手放せるものではない |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|最近、発生している武装集団によるものなのだろう |
|我々の功績によって得た安定を元に立ち上がり、 |
|我々に楯突くとはなんとも愚かな話だ |
|当然、見過ごすつもりはない |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|そう判断し我々の持つ軍事力で排除を試みたのだが、 |
|正直なところ時間稼ぎにもならないのが現状である |
|報告を聞く限りでは、現在の技術で作られている事すら |
|疑わざるを得ないものだ |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|何者かが旧世代の兵器を起動させた可能性がある |
|だが、真相はどうあれ我々に害する者の行動を |
|黙って見ているわけにはいかない |
|よって、この物体の撃破をレイヴンに任せる事にした |
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|Commission |
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|浮遊物体は超長距離の射程から |
|バズーカによる攻撃を行ってくる |
|危険な依頼ではあるがよろしく頼む |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼者 :アライアンス |
|作戦領域:樹海 |
|作戦目標:浮遊物体の排除 |
|報酬 :100000c |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
HEAD CR-H84E2
CORE C-C90U3
ARMS CR-A72F
LEGS LH09-COUGAR2
BOOSTER B04-BIRDIE2
F.C.S. CR-FB82D2
GENERATOR CR-G91
RAGDIATOR ANANOA
INSIDE
EXTENSION JIREN
BACK UNIT R CR-WB72RO2
BACK UNIT L KURARA
ARM UNIT R CR-WR81RS2
ARM UNIT L YWH07-DRAGON
Hanger UNIT R CR-WH69H
Hanger UNIT L CR-WH01HP
OPTIONAL PARTS
O01―AMINO
CR-O69ES
CR-O69SS
CR―O71EC
CR―O79L+
O04-GOLGI
MARISHI
&Li00070001g000I000w00500o030se1NPgT$gxd#
頭を振って短く息を吐く。
思い返した依頼内容を頭の片隅に追いやり前方に注意を払う。
まだレーダーに反応していないほどの距離であるにも関わらず、
こちらに向かってくる物体の姿を見つけ出した。
AC並みのサイズといったところだが、旧世代の兵器であれば随分と安い依頼なものだ。
鼻で笑いながら周囲の地形を確認していく。
相手がバズーカによる攻撃なら、周囲の蔓を遮蔽物にするまで。
だが、逆に蔓に引っかかるような事があればこちらがやられるだろう。
おおよその地形を把握して、再度攻撃目標を見ると
ゆっくりとした速度で進んでくるばかり。
ならこちらから動かせてもらう、と
機体背面のブースタに火を噴かせて巨大な機体を加速させていく。
友奈「凄い凄い! 人の形をしたロボットですよ!」
東郷「迷彩柄……? 西暦時代のものでしょうか?」
樹「なに、あれ……あ、もしかして大赦の?」
風「そんな話、聞いてなんかいないけども……」
友奈「あたし達、どうしたらいいんですか?」
風「……どの道、戦うしかないわ。バーテックスを倒せるのはあたし達だけなのよ」
東郷「あの浮かんでいるのを……倒すだなんて」
風「あれが何なのか分からないけども、今のうちに説明するわ」
こちらを向かずに進む破壊目標の姿が徐々に大きくなってくる。
蔓の間を突き抜けながら射程に入るのはまだかと息を吐く。
なるほど旧世代か。
その姿は既知を否定する、とても金属とは思えない見た目の姿だが生物兵器とも見えない。
そんな事を考えていると、進行方向を変えずにいた巨大物体下部に動き、
尾のような先から無数の半楕円の白い球体を吐き出した。
息を飲んで即座に操作する。
横に叩きつけられるようなGを感じながら、攻撃対象から遠ざかりつつ大きな蔓の影へと急ぐ。
目標の尾の向きとは裏腹に機体のすぐ横を球体が飛び抜けていく。
その一瞬間前に機体がいた場所へ、機体を追うように球体が飛びぬけ、後方の蔓に着弾して爆発を起こしていく。
地面を抉りながら急停止し、蔓の影に隠れると機体がビリビリと大きく震えだした。
すぐそばで発生する爆発の振動は途切れる事なく際限なく続いていく。
本当に安い依頼だ。
舌打ちして汗を拭う。
僅かな差であるが、この機体の速度であれば敵の照準に追いつかれる事はないようだ。
当然ながらエネルギー切れを起こさず、蔓を盾にして移動すればの話。
正面切って回避、も不可能ではないだろうが、
既存の兵器の常識などありはしないと言わんばかりに降り注ぐ榴弾。
それを正面から回避しようなど余程の熟達した者でもない限り、
あまりにも履き違えた勇気であると言えるだろう。
深く息を吐き、呼吸を整えていると短い電子音が等間隔に数度鳴り、ロックサイトとマーカーが赤く染まる。
今度はこちらが見せてやる番というものだろう。
東郷「あんな……戦うなんて」
友奈「東郷さん……」
風「友奈、東郷を連れて逃げて! 樹も一緒に!」
友奈「わ、分かりました!」
風「樹も早く!」
樹「駄目だよお姉ちゃん。お姉ちゃんを一人にしてなんて……行けないよ」
樹「何があってもついて行くよ。お姉ちゃん」
風「樹……分かったわ、あたしに続いて!」
無数のマイクロミサイルが飛んで行き、避ける様子の無い目標に着弾しては爆発する。
だがしかし、目立ったダメージを与えている様子は全くもって見せなかった。
ゆっくりとした速度で航行する対象に照準を合わせ、僅かに機体を蔓から出して小型ロケットを発射させる。
それも命中するもやはり……いや、初めて動きを見せた。
若干ではあるものの進行方向が変わった。
こちらに少しでも近づく為か、あるいは榴弾を飛来させる角度を変える為か。
何れにしても相手は明確にこちらを排除すべき対象とみなしたようだ。
ダメージはあるのだな、その思いだけで下がりつつあったモチベーションが高まる。
再び始まった爆発もしばらくすると途切れた。
ここを飛び出し敵の背後に向かうべきかと僅かな時間を思索する。
だが答えが決まるより早く状況が変わった。
機体側面に衝撃が走る。
何が、と視界をそちらに向けた直後、近くの地面に着弾する物体と爆発を垣間見た。
直撃ではなく爆風を浴びせる攻撃に切り替えてきたというのか。
予想を遥かに超えたAI、あるいは有人兵器。
何れにせよ、状況は更に悪化した事だけは明白だった。
横へと移動しながら蔓の間から攻撃目標に撃ちこむ。
しかし敵は弾切れというものが無いかのように榴弾を飛ばし続ける。
少しずつ少しずつ、蔓の影に隠れる直前に直撃するようになってくる。
相手の照準補正の精度が増している。
機体由来の性能ではないのか?
AIが組み込まれた射撃制御なのか?
それともあれ自体が一つの生物なのか?
最早ただの可能性を虱潰しにする想像となりつつある考えを走らせ、はたと気付く。
真相など分かりはしないし必要も無い。
ただ、時間がかかればかかるほど不利になっていく。
焦る気持ちに大きく息をついて呼吸を整える。
落ち着いて対処すればまだ戦える。
樹「うわーー飛んでるーーー!! これがーー!」
風「そうよ! これが神樹様に選ばれた勇者の力! 樹、着地!」
樹「うわっ!」ズザァ
風「樹、大丈夫?」
樹「う、うん……わっ、可愛い」
木霊「……」フヨフヨ
風「この世界を守ってきた精霊よ。神樹様の導きであたし達に力を貸してくれる」
犬神「……」フヨ
風「進むわよ!」バッ
樹「ま、待ってーー!」
風「手をかざして戦う意思を示して!」パァ
樹「こ、こう? わ、なんか出た!」パァ
風「上出来よ! その武器であたし達が戦うのよ!」
樹「わ、分かった!」
風「樹、また着地!」
樹「う、うん!」
テロリロリン テロリロリン
友奈「風先輩!」
風『よし、繋がった!』
友奈「風先輩、大丈夫ですか?! 今戦っているんですか?!」
風『一先ずはまだあのロボットがバーテックスを引き付けていてくれているわ』
風『こっちよりそっちはどう? 大丈夫?』
友奈「はい、こっちは大丈夫です!」
風『そう、良かった……。友奈、東郷……黙っててごめんね』
友奈「……風先輩は皆の為に黙っていてくれたんですよね」
友奈「ずっと一人で打ち明けることも出来ずに……」
友奈「それって勇者部の活動目的どおりじゃないですかっ」
友奈「風先輩は、悪くない!」
風「友奈……」
樹「お姉ちゃん!」
風「え? あっ!」ッドォォン
樹「お姉ちゃん! 大丈」ッドドォォン
友奈「あ……そんな」
東郷「風先輩……樹ちゃん……」
『左碗部破損』
『AP50% 機体ダメージが増大しています』
淡々と報告をしてくるシステムに軽い苛立ちすら覚える。
倒せるのかあれを、と大きな蔓に隠れて考える。
徐々に一方的になりつつある戦闘に焦りを募らせる。
だがここで大きく状況が変わった。
浮遊物体の進路が元に戻り、こちらへの攻撃が止んだ。
それと引き換えに遥か前方、聳え立つ巨木の方角に攻撃を始めた。
何が起こった。
アライアンスによる援軍だろうか?
しかしレーダーには友軍を示す反応は存在しない。
だが、僅かながらも好機が生まれた事には違いなかった。
東郷「友奈ちゃん! あたしを置いて今すぐ逃げて!」
友奈「何言ってるの! 友達を……」
友奈「そうだよ……友達を置いてなんて、そんな事絶対しない」
東郷「駄目! 友奈ちゃんが死んじゃう!」
友奈「嫌だ」
東郷「え……」
友奈「ここで友達を見捨てるような奴は……」
友奈「勇者じゃない!」ッドォォン
東郷「友奈ちゃん! 友奈ちゃん、返事をして!」モアァァァ
東郷「あ……」
友奈「……」ォォォ
東郷「友奈ちゃん」
友奈「嫌なんだ。誰かが傷つく事、辛い思いをする事。皆がそんな思いをするくらいなら」バッ
友奈「あたしが、頑張る!」ッドォォン
風「友奈!」
樹「友奈さん!」
東郷「友奈ちゃん!」
一筋の光の飛来を見た。
薄紅色の美しい光が浮遊物体に向かって突き進む。
自立兵器か新たなミサイルだろうか。
何れにせよ、それが小さくとも状況打開の一手を刺すつもりである事は分かりきった事。
既に一発の榴弾を受け止めている。
あと何発耐えて標的に攻撃を加えるのか。
分からないのであれば成すべき事は一つ。
あれを援護するまでだ。
浮遊物体の下部が膨らみ、再度榴弾を吐き出そうとする。
そこに照準を合わせて小型ロケットを打ち出す。
ガイド通りに真っ直ぐ飛んでいったロケットの爆発と共に、
巨大な爆発を起こして誘爆に成功した事を示した。
友奈(! 守ってくれた?)
友奈「勇者パアアァァァンチ!」カッ
乙女型「」ッバァァン
風「凄い……」
樹「これが……」
東郷「友奈ちゃん……」
何度目だろうか。
再び息を飲んだ。
あの小型の何かが浮遊物体の一部を破壊した。
いくら攻撃してもACではあれだけの傷を負わせられなかったのに関わらず。
だがそれも束の間、浮遊物体の概観は見る間に回復していく。
どうなっている。
先程の小型の何かはどうなったかを確認すべく周囲を見渡す。
薄紅色と、黄色と萌黄色の姿が見えた。
三体いるのか、などと呑気な事を思った矢先、
それらのいる所に榴弾が着弾して爆炎が立ち上る。
三つの光が飛び立って回避していく。
まだ戦闘は続行できるようだ。
ブースタを噴かして蔓から飛び出し、浮遊物体に攻撃を加える。
現状を見るにこちらが攻撃するよりも、あれらに攻撃を専念させた方が勝機があるのだろう。
であればこちらは敵を引きつける事に専念しよう。
残弾が尽きたKARURAをパージする。
小型ロケットのCR-WB72RO2はあと僅か。
右腕のスナイパーライフルのCR-WR81RS2も同様。
左腕部を失った今、格納されている武器もハンドガンのCR-WH69Hだけとなった。
一体、何処まで相手を釘付けできるか。
かつてない状況に妙な高揚感に浮かされるも敵を捉えて接近していく。
さあこちらを狙ってみろ。
友奈(封印をする為の手順1.まずは敵を囲むっ!)タタタ
友奈「……」ザザァッ
友奈「位置につきましたー!」
樹「こ、こっちもついたよ!」
乙女型「」ドン ドォン
風(あのロボットのお陰でだいぶ楽ね……)
風「よし! 封印の儀いくわよ!」
友奈樹「はい!」
友奈「ええと、手順2.祝詞を唱え……ええっ! これ唱えるの?!」
樹「え、えと幽世大神、憐給」
友奈「恵給、幸魂、奇魂」
風「大人しくしろぉ!!」ッドォン
友奈樹「ええぇぇ!」
友奈「それでいんですか?!」
風「要は魂込めればいいのよ!」
樹「それを早く言ってよー!」
御魂「」スー
友奈「な、なんか出たー!」
風「封印すればバーテックスの心臓がむき出しになる! あれを破壊すればあたし達の勝ち!」
友奈「それならあたしが!」バッ
友奈「たああああ!」ガィィン
友奈「……」
樹「友奈さん?」
友奈「かったぁぁぁい! 固い過ぎるよぉこれぇぇ!」
風「友奈変わって!」
友奈「は、はい!」
風「たあ! やあ!」ガィンガィィン
風「はぁっ!」ガギィン
風「ならあたしの女子力を込めた渾身の一撃をぉぉ!」ガギィン
樹「そんな、まだ壊せないの……?」
友奈「! 周りが荒れてる?!」
風「始まった……長い間封印していると現実世界に悪い影響が出るの!」
浮遊物体から何かが出てくる。
小型の何かはそれに対し攻撃を行っているが、今のところ破壊の兆しは見る事が出来ない。
もしやあれがあの物体のコアとなるものなのだろうか。
完全に動きを止めている浮遊物体とコアを見比べる。
最早本体への攻撃は不要か。
更に接近してコアと思しき物体に照準のガイド合わせる。
大きな何かを振るう黄色い個体が離れたのを見計らい、
小型ロケットの残弾を全てコアへと叩き込んだ。
御魂「」ッドォン ドン ドォン
御魂「」ピシ ビシビシ
樹「お姉ちゃんが作った亀裂が広がった!」
風「ロボットナイス!」
友奈「時間が無い……このぉ!」バッ
友奈「たあああ!」ガァァァン
コア「」パァァ
乙女型「」ザァァァ
友奈「砂になってる……」
風「友奈! やったね! ナイス友奈!」
友奈「いたたたた!」
風「あ、ゴメン」
眩い光が立ち上りコアが消えていき、本体は砂となり地に降り注ぐ。
復活する様子も無く、浮遊物体の消滅を確信した。
途中から無我夢中だったな、とモニターに表示されるシステムを確認していく。
もう間もなくAPが1000を切ろうとしていた。
気付けば頭部とコアも破損している。
状況が状況だけに音声ガイドを聞き逃していたようだ。
それにしてもよくもってくれたものだと大きく息を吐いた。
垂れた頭を上げて周囲をよく見てみる。
そこにいた三つの小型の何かは……。
どう見ても人の姿をしていた。
東郷「勝った……」
東郷「良かった……」ゴ..ゴ
東郷「え? な、なに?」ゴゴ..ゴゴ
友奈「ふ、風先輩! これは?!」ゴゴゴゴ
樹「お、お姉ちゃん……」ゴゴゴゴゴ
風「大丈夫よ、樹」ゴゴゴ
友奈「あ、あれ……ここ学校の屋上?」キョロキョロ
風「神樹様が戻してくださったのよ」
友奈「あっ東郷さん!」
友奈「無事だった? 怪我は無い?」
東郷「大丈夫だよ、友奈ちゃん。友奈ちゃんこそ、大丈夫?」
友奈「うん、大丈夫っ。それにもう安全! ですよね?」
風「そう。あたし達で守ったんだよ、皆の日常を」
吹き荒ぶ風と舞い上がる草葉や花弁のようなものが視界を遮る。
晴れたその時には近くに居た三つの小型兵器と思しき何かは消えていた。
シーラ『浮遊物体の完全撃破を確認したわ』
『作戦目標クリア システム 通常モードに移行』
シーラ『一体あれは……』
シーラ『何はともあれお疲れさま』
シーラ『レイヴン、帰還しましょう』
遠くからプロペラの音が聞こえる。
聞きなれたはずのその音は久しぶりに聞くような気がして、
体から力という力を抜け落ちた。
戻ってからはアセンブルを一から考え直し始めた。
何一つ分からないまま終わった謎の浮遊物体排除の依頼。
これで終わるようにはとても思えない。
だが、今持ち得るパーツでどれほどあれに対し有効な機体が組めるのだろうか?
そもそもあれに対し有効な機体とはなんだろうか?
現状において自分に出来た事は敵の注意をひきつける事。
こちらの攻撃が明確なダメージとして与えられていたかは疑わしい。
むしろあの回復能力を見る限り、単純にダメージを与える事自体に意味がないのではないか?
アセンブリの手を休めて、依頼時の映像を見直してみる。
目視できる範囲で傷らしい傷を残せてはいない。
だがある事に気付く。
攻撃命中時に敵の動きが鈍くなっている。
あの薄紅色の攻撃で大きく欠損した時も、回復するまでの間動きはしなかった。
あそこまでのダメージは無理だとしても、相手の行動を阻害するだけの傷を負わせられれば……。
しかしそれでもし、あれらがいなかったらどうする?
一抹の不安が過ぎったか頭を振って自嘲する。
そもそもあの小型の何かがいなければ、到底倒す事など望めない。
逆に言えばあれらが居なければすぐに依頼を放棄したほうが身の為か。
……方向性は決まった。
また同様の依頼があった時に備えるべく、休めていた手を動かし始めた時だった。
シーラ『レイヴン、聞こえる?』
シーラ『今すぐ依頼を見て。受けるかどうかは貴方次第だけども』
シーラ『貴方宛てに例の依頼がきているわ』
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|Commission |
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|レイブン、昨日はご苦労だった |
|と言いたいところだが緊急事態だ |
|昨日とは別の新たな浮遊物体が確認された |
| |
| |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|更に熱源は複数確認されている |
|状況が状況だけに彼らとの戦闘経験の無いレイヴンでは |
|失敗する可能性もあると見て、 |
|我々は君個人に再び依頼する事にした |
| |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|危険な依頼である事は承知しているが |
|レイヴンなら可能だろう |
|報酬も十分に弾む |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|あれが一体何なのか、またあの場にいた人型は何なのか |
|我々の方でも調査をしており、ある組織との |
|繋がりが判明している |
|だが、肝心な事はまだ何も分からないままだ |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|だがしかし、我々に対する領域侵犯を |
|黙って見過ごす訳にはいかない |
|必ずや撃破してくれ |
|頼んだぞレイヴン |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼者 :アライアンス |
|作戦領域:樹海 |
|作戦目標:全浮遊物体の排除 |
|報酬 :350000c |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
HEAD CR-H84E2
CORE C-C90U3
ARMS CR-A72F
LEGS LH09-COUGAR2
BOOSTER B04-BIRDIE2
F.C.S. CR-FB82D2
GENERATOR CR-G91
RAGDIATOR ANANOA
INSIDE
EXTENSION JIREN
BACK UNIT R CR-WB72RO2
BACK UNIT L KURARA
ARM UNIT R CR-WR81RS2
ARM UNIT L YWH07-DRAGON
Hanger UNIT R CR-WH69H
Hanger UNIT L CR-WH01HP
OPTIONAL PARTS
O01―AMINO
CR-O69ES
CR-O69SS
CR―O71EC
CR―O79L+
O04-GOLGI
MARISHI
&Li00070001g000I000w00500o030se1NPgT$gxd#
風「三体同時とか……モテ過ぎでしょ」
樹「あわわわわ……」
友奈「東郷さん、待っててね。すぐに倒してくるからね」
東郷「ま、待って……あたしも」カタカタ
友奈「大丈夫だよ、東郷さんっ。行って来るね!」
風「お、また来たみたいね」バ..ババ...
樹「お姉ちゃん、あれ結局なんなの?」ババ..ババ..
風「うーん。大赦には連絡したんだけど分からないみたいんだよね」バババ..ババ.
東郷「既存の兵器ではバーテックスには効かなかいはず……まさかあれにも神樹様の力が?」ババ.バババ..
シーラ『間もなく作戦領域に到達……そんな、三体も?』
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
衝撃と共にモニターいっぱいの土埃が舞い上がる。
晴れてくると共に、三体の浮遊物体が見えてきた。
シーラ『アライアンスから通信、補給車がこちらに向かっているそうよ』
シーラ『出し惜しみをする必要はなさそうね』
シーラ『レイヴン……必ず生きて帰ってきて』
結局のところ、アセンブルの為の時間が不十分であった為に、
前回同様のアセンブリのままで挑む事となった。
周囲を見渡すと昨日目にした三つの姿が映る。
それはどう見ても人の形をしていた。
大きさも含めて人型の自立兵器?
何とも非効率な話だが、既に自分達の既知では一切説明がつかない状況だ。
であればそういうものなのだろう。
何より今心配すべきはこの現状だが、あれらがいるのなら打開は可能だ。
ブースタを噴かして破壊目標に近づいていく。
前回以上に厳しい状況だ。
相手の一挙手一投足に気を配る。
また先制を取られるにせよ、それを掻い潜らなくてはならない。
何より、あの三体とどう戦うのか。
あれらとどう連携を取るかが鍵なのだ。
一人で戦う戦場ではない。
今まで以上に周囲の状況の敏感にならなくては。
風「よし、手前の二体をまとめて封印の儀いくわよ!」
友奈「でもなんであれだけあんな後ろに……あ」
樹「攻撃が来るよ!」
風「わっ!」ガギィン
友奈「風先輩!」
樹「お姉ちゃん!」
風「大丈夫! それより前っ!」
樹「いっぱいきたぁっ!」
遠距離による攻撃が可能という事もあり敵の行動が早い。
矛先がこちらに向かせるよりも前に、自立兵器目掛けて攻撃が開始された。
ならば、と大きく回りこんで針のような矢のようなものを飛ばし続ける
白い浮遊物体へと近づいていく。
電子音が鳴りサイトとマーカーが赤く色づく。
逃げ惑う自立兵器に今尚攻撃を続ける敵機、そこにこちらが攻撃を当てたらどう反応する。
バックユニットのKARURAから九本のマイクロミサイルが一斉に放たれ、
左手のCR-WL95Gからは擲弾が飛んでいく。
元より避けるだけの機動力が無いのか、白い敵は爆炎を上げるも向きを変える事は無かった。
引きつけられないか、と視界を残り二体に向ける。
だが、その直後に機体に衝撃が走り続ける。
降り注ぐ先程の針のようなもの、ダメージこそ大きくは無いが、無数のそれにAPが削られていく。
何が起きた、と奥歯を噛み締めながら回避行動を取りつつ周囲の状況を窺う。
針が飛んできた先には赤い浮遊物体がいた。
まさか、跳ね返しているのか?
敵自身が連携を取ってくる事は予想していたが、反射という手段までは考え付かなかった。
だがこれで、二体を釘付けにできる。
機体が破壊されるほどの甚大なダメージを被らなければ、でもあるが。
早めにもう一体を撃破して助けて欲しいものだと溜息を吐く。
飛び掛る無数の針を回避しながら、やはり安い依頼だと悪態をついた。
その直後、敵の攻撃が急に止む。
何が起こったか把握しようと周囲を探る間に、再び針が降り注ぐ。
針の動きを追うと赤い敵が携える、針を反射させていた板が向きを切り替え、別の方向へと攻撃しだす。
どうやらあの自立兵器にも攻撃を加えているようだ。
これは予想以上に苦戦を強いられそうだ。
友奈「たあああ!」ガィン
蠍型「」ブンブン
友奈「弾かれた?!」
蠍型「」ブォン
友奈「わっ!」
樹「友奈さん、逃げて!」
風「こっちも来たわよ!」シュカカカ
樹「うわわっ!」カカカカ
友奈「う、う……」ドザァ
東郷「友奈ちゃん!」
蠍型「」ブオン
牛鬼「……」ガィン
東郷「……やめろ」
蠍型「」ブン
牛鬼「……」ギィン
東郷「友奈ちゃんを、苛めるなああああ!」
蠍型「」クル
蠍型「」ビュン
青坊主「……」ガィン
蠍型「」ギギギ
東郷「今度はあたしが……あたしが勇者になって」
東郷「友奈ちゃんを守る!」カッ
友奈「う……東郷さん……」
東郷「……」
東郷(どうしてだろう……あれだけ怖かったのに変身したらもう)
東郷(武器を持っているからかしら……)ッドン
『頭部破損 左腕部破損』
針が機体に突き刺さる音が耳に響く。
せめて他のレイヴンも同時参加であれば、とありもしない期待を思う。
『AP10% 危険です』
もう機体がもたない事は明白。
現状を変えない限りは死を待つばかり。
反射板を狙おうにもロックできる距離でもなく、そもそもロックできるのかすら不明。
であればと前へと突き進む。
針を飛ばす敵を盾に立ち回るだけの事。
さあ、僚機に大してどう反射させる。
挑むつもりで動き出すも轟音と共に攻撃が止む。
見れば反射させていた敵機が長い尾を持つ敵機に押しつぶされていた。
あちらが動き出したのか。
向こうを片付けてくれるのなら動き易いものだ。
白い敵の動きは単純だった。
発射までのインターバルの長い長針を飛ばすか、リロードの無い短針をマシンガンのように飛ばすか。
更に自身の向きを変えねば撃ちこむ場所を変えられない。
今までの動きからしてこちらの機動力にもついてはこられない。
白い敵の周り旋回しつつ大型ロケットが次々と火を噴いて敵に食らいつく。
白い滑らかな姿に塗装が剥げるように赤錆を彷彿とさせる跡が露出する。
装甲の厚さに違いがあるのだろうか。
敵の背面に立ち止まり、修復されつつあるそこに集中砲火を浴びせる。
東郷「こいつが皆を苦しめた……」
東郷「これなら……足止めできる」ッドォン ッドォン
友奈「御魂出たー!」
樹「こっちもー!」
友奈「よーし! たああっ!」
御魂「」ヒュンッ
友奈「え?! や!」
御魂「」サッ
友奈「こ、この御魂、すばしっこいよ!」
もう一機自立兵器が追加されたのだろうか。
遠距離からの支援砲撃が白い敵を追い詰める。
撃ち切ってしまったCR-WB85RPXからスナイパーライフルに切り替えていると、
残り二体の敵機の周りが輝きだす。
コアへの攻撃も始まったか。
この敵の足止めがいらないのであればあちらに加勢すべきか?
様子を窺っていると薄紅色の兵器の攻撃をかわすコアが見える。
ここからでもロックオンできるのか。
薄紅色の兵器とコアが横に離れ、動きが止まるその瞬間に銃口を光らせた。
あ
左手装備が違う
遠距離による攻撃が可能という事もあり敵の行動が早い。
矛先がこちらに向かせるよりも前に、自立兵器目掛けて攻撃が開始された。
ならば、と大きく回りこんで針のような矢のようなものを飛ばし続ける
白い浮遊物体へと近づいていく。
電子音が鳴りサイトとマーカーが赤く色づく。
逃げ惑う自立兵器に今尚攻撃を続ける敵機、そこにこちらが攻撃を当てたらどう反応する。
バックユニットのKARURAから九本のマイクロミサイルが一斉に放たれ、
敵に食らいつくかのように殺到していく。
元より避けるだけの機動力が無いのか、白い敵は爆炎を上げるも向きを変える事は無かった。
引きつけられないか、と視界を残り二体に向ける。
だが、その直後に機体に衝撃が走り続ける。
降り注ぐ先程の針のようなもの、ダメージこそ大きくは無いが、無数のそれにAPが削られていく。
もう一機自立兵器が追加されたのだろうか。
遠距離からの支援砲撃が白い敵を追い詰める。
撃ち切ってしまったCR-WB85RPXからCR-WR81RS2に切り替えていると、
残り二体の敵機の周りが輝きだす。
コアへの攻撃も始まったか。
この敵の足止めがいらないのであればあちらに加勢すべきか?
様子を窺っていると薄紅色の兵器の攻撃をかわすコアが見える。
ここからでもロックオンできるのか。
薄紅色の兵器とコアが横に離れ、動きが止まるその瞬間に銃口を光らせた。
風「友奈離れて!」
友奈「はい!」バッ
銃弾「」ヒィンッ
コア「」サッ
風「そこだぁ!!」ヒュン
コア「」ザンッ
風「ロボットナイスアシスト! 次!」
コアA「」ポコポコポコ
コアH「」ポコポコ
コアV「」ポコポコ
友奈「ふ、増えた!」
樹「数が増えたのならこの糸で!」キラララ
樹「やあっ! たぁっ!」
コア「」キンッキンッ キンッ
友奈「わあっ! 凄いよ樹ちゃん!」
風「さあ! あとは一体よ!」
ブースタを調整しつつ滞空して白い敵の発射口に向けて、
スナイパーライフルの弾丸を撃ち込んでいく。
既にJIRENも使い切り、EN回復も兼ねて着地して周囲を窺う。
薄紅・黄・萌黄・紫、計四機の自立兵器の姿が見える中、この敵に関して心配する事もないのだろう。
こちらに向かってくる自立兵器の邪魔にならないよう敵から離れるも攻撃の手を緩めはしない。
補給車は有り難いが正直なところ、補給する余裕はないものだ、と息を吐く。
残りの武装も、心許ない残弾のCR-WR81RS2と格納されているCR-WH69Hのみとなった。
APも残り僅かに満身創痍かと鼻で笑うも、迫る目標全撃破の前に戦う事は止めなかった。
風「よーし! あのロボットが協力してくれている内に、ラスト一体いくわよ!」
友奈「おー!」
樹「おー!」
東郷「おーっ」
AC「……」ガシャ
AC「……」ッドン ッドン
射手型「」ガン ッガン
樹「位置についたよ!」
友奈「封印開始っ」
御魂「」スー
友奈「よーし……あ、あれ?」
御魂「」ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
御魂「」ヒュンヒュンヒュンヒュン
友奈「この御魂も速いー!」
樹「こ、これじゃあ……」
御魂「」ドゴォン
樹「東郷先輩?!」
風「撃ち抜いた!?」
御魂「」パァァ
あの速度のコアを撃ち抜いたのか。
崩れ落ちる最後の一体を尻目に、紫色の自立兵器を見つめる。
恐ろしい射撃精度。
いや、あれは予測射撃と呼ぶべきか。
完全に自立兵器であれば、恐ろしい技術力だ。
もしあれが遠隔操作されているものだとしたら……。
ACに搭乗されたら一位のランカーACの座を不動のものにするのだろう。
そんな事を考えている内に再び視界が遮られ、戦場を共にした機体は消えていた。
シーラ『全浮遊物体の排除を確認』
『作戦目標クリア システム 通常モードに移行』
シーラ『お疲れさま、満身創意とは言え無事でなによりだわ……』
シーラ『さあ、帰りましょう』
近づく輸送機の影が見える。
ボロボロの機体を押して、こちらからも近づいていく。
願わくば、次の依頼はもうしばらく時間が空いてほしいものだ。
新たなアセンブルを考えつつ帰路に着いた。
挑むつもりで動き出すも轟音と共に攻撃が止む。
見れば反射させていた敵機が長い尾を持つ敵機に押しつぶされていた。
あちらが動き出したのか。
向こうを片付けてくれるのなら動き易いものだ。
白い敵の動きは単純だった。
発射までのインターバルの長い長針を飛ばすか、リロードの無い短針をマシンガンのように飛ばすか。
更に自身の向きを変えねば撃ちこむ場所を変えられない。
今までの動きからしてこちらの機動力にもついてはこられない。
白い敵の周り旋回しつつ小型ロケットが次々と火を噴いて敵に食らいつく。
白い滑らかな姿に塗装が剥げるように赤錆を彷彿とさせる跡が露出する。
装甲の厚さに違いがあるのだろうか。
敵の背面に立ち止まり、修復されつつあるそこに集中砲火を浴びせる。
数週間後
「新着メールがあります」
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|Message |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|レイヴン、先日はご苦労だった |
|この一連の騒動と関係があると思しき組織、大赦 |
|彼らとの接触に成功し得ることの出来た |
|いくつかの情報を簡単に伝えておこう |
| |
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|Message |
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|彼らにとってあの地域にある巨木を神樹様と呼び、 |
|周囲を神樹様の結界というものの世界であるという |
|浮遊物体はバーテックスという名称であり、 |
|彼らに対する侵略者であるそうだ |
| |
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|Message |
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|彼らはこの結界内であり別の世界に暮らしており、 |
|神樹様を破壊された場合、彼らの世界は壊滅的被害を |
|被る為、あの小型の何かであった、神樹様が選定した |
|人間の少女に力を与えて迎撃させている |
| |
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|Message |
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|既存の兵器では傷つかなかったバーテックスだが、 |
|彼女達の攻撃ならば傷を負い死に至るようだ |
|ACでも軽傷ならば負わせられた事に関しては |
|大赦も大いに驚いていた |
| |
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| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|何とも荒唐無稽で信じがたい話だが、先の大戦は愚か |
|我々アライアンスやACでさえも知らないようで、 |
|嘘をいっている様子ではなかった |
|一先ずは信じていいのだろう |
| |
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|Message |
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|大赦は我々の領土であるこの樹海の権利については |
|主張をするつもりがないらしい |
|と、いうよりも彼らには自由に出入りできない地に |
|我々の行動を抑止する術が無いといったところか |
| |
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|Message |
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|であれば、この一連の出来事に我々が関与したところで |
|我々には利益は無いだろう |
|だがしかし、気になる事がある |
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|Message |
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|全く別の世界の特定の場所だけが繋がるというのは |
|一体どういう事なのだろうか? |
|また、彼らの世界が壊滅したら?結界が消滅したら? |
|この地域の有様は彼らの世界の影響ならば? |
| |
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|Message |
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|静観するにはあまりにも不確定要素と不安材料が多い |
|また今後の事も含めて協力する姿勢は見せる事で、 |
|主導権獲得に繋がるという判断から我々アライアンスは |
|今後もバーテックス排除に加わる事が決定した |
| |
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|Message |
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|話しではあと八体のバーテックスが存在するらしい |
|この一連の依頼は継続的に君に任せたい |
|可能な限り、応えてくれると助かる |
|これからもよろしく頼むぞ、レイヴン |
| |
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いくつかのパターンを考えてアセンブリを行う。
とは言え、全ての機体を収めておく訳にもいかない。
半数はどういったアセンブルかをまとめたデータでの管理となってしまった。
だが、いざ依頼があっても即座に対応する事ができるだろう。
一息ついたところで、メールの内容を読み返す。
あれが人間だとは……あそこが別世界である事よりもよほど驚愕な事実だ。
だが、より鮮明に映っている二度目の依頼の映像の中で見えるその姿は、
正しく年端もいかない少女達である事には間違いなかった。
いくらよく分からない強大な力を持っているとはいえ、どれほどの苦痛を伴う戦いなのだろうか。
想像しただけで同情心が湧き上がる。
そろそろ何か依頼を受けるべきだろうか。
と依頼を見ていくと、ある地域での依頼が目に付いた。
前回の依頼から一ヶ月。
そろそろこちらもまともな戦力として成果を上げなくては。
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|Commission |
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|レイヴン、バーテックスの出現が確認された |
|今回より、大赦から新たな少女が投入されるそうだ |
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|Commission |
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|しかし到着までに多少の時間を要するとの事だ |
|君と既存の少女達はその時間稼ぎでいいという話だが、 |
|当然ながら君達だけで撃破してもらって構わない |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|今までに比べれば遥かに楽な依頼だろう |
|それではよろしく頼む |
| |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼者 :アライアンス |
|作戦領域:樹海 |
|作戦目標:バーテックスの排除 |
|報酬 :80000c |
| |
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HEAD CR-H84E2
CORE C06-EOS
ARMS CR-WA74BZL
LEGS LH09-COUGAR2
BOOSTER CR-B83TP
F.C.S. MONJU
GENERATOR CR-G94
RAGDIATOR ANANOA
INSIDE
EXTENSION JIREN
BACK UNIT R WB13RO-SPHINX
BACK UNIT L CR-WB85RPX
ARM UNIT R
ARM UNIT L
Hanger UNIT R
Hanger UNIT L
OPTIONAL PARTS
O01―AMINO
CR-O69ES
CR-O69SS
CR―O71EC
CR―O79L+
MARISHI
&Li000l0007M000I000k00500o03wsgEM000ug14#
AC「……」ヒュゥゥゥ
AC「……」ドザァァン
風「お、きたきた」
東郷「本当に……あれは一体なんなんでしょうか」
風「ああ、そうそう。大赦から連絡があったよ」
友奈「本当ですか?!」
樹「じゃあ分かったんだ?」
風「んー意図的にぼかされてる感じだったけどねー」
風「大赦とは関係が無いけども、一応あたし達と共に打倒バーテックスって立ち上がってくれている人、みたいな」
東郷「でもあのような技術……それにバーテックスは兵器で傷をつける事はできなかったはずでは?」
風「うん、あたしもそこは気になるけども、これ以上は教えてくれそうに無いしなぁ」
風「ま、あたし達のすべき事をしましょ。考えたところで仕方ないしね」
友奈「でもあんなすっごい味方がいるって頼もしいですよね!」
風「あー……確かに助かってるけども、どの道バーテックスを倒せるのはあたし達だけだからねー」
友奈「って、あれ? 腕がなくなっちゃってませんか?」
東郷「本当、箱のような形に四つの穴……より強力な弾丸、にしては銃身が短いから射撃精度は低そうだし」
樹「あっロボットさんが動き出しましたよ!」
薄紅色の少女が手を振っているのを眺めてから前方を見据えた。
敵は一体、そして多少の時間稼ぎでいいのであればこちらは短期決戦型。
相手の先制許さない、あるいは先制をこちらを向けるべく接敵する為の機動力。
そして敵は回避行動をほぼ取らない事を前提とした攻撃。
収納武器を切り連装小型バズーカを備えた腕、CR-WA74BZLによる瞬間火力。
更にこれで食い止め切れなければ、と両肩に大型、特殊ロケットを携えている。
幾度と無く行ったテストを思い返しながらブースタを噴かしていく。
照準をバーテックスに向けたまま徐々に姿が大きくなるバーテックスを前に各システムをチェックしていく。
突如、レーダー上で後方に流れるだけだった友軍を示す緑のマークがバーテックスの近くに出現した。
何時の間に追い抜かれたというのだろうか?
しかし地には誰もいない。
上空かと視線を上げるより先に、光る何かがバーテックスに到達し爆発をあげる。
今だ目視できずにいるものの、だが攻撃が始まったのならこちらも援護するまで。
バーテックスに急接近しつつ、同時発射数を8に切り替えたCR-WA74BZLの照準を合わせていく。
いよいよ射程範囲内といった矢先、上空から赤い輝きが落ちてくる。
今まで複数名でバーテックスを取り囲んでいたのに、今回は単体でバーテックスの周囲が光りだす。
剥き出しになったコアから毒々しい煙が周囲に噴きつけられる。
機体には何も影響が無い、ただの目暗ましかと思い至った瞬間、赤い輝きがコアを両断する姿が目に飛び込む。
操作していた手を止めて傍観してしまう。
あれが大赦から派遣されたもう一人の少女。
この戦いの終結もそう遠くないかもしれない。
その少女の姿を見ながら、この戦いの終わり見たかのようだった。
数日後
MT『くそ……こん』ザッ
MT『馬鹿な……』ザザッ
シーラ『敵戦力消滅を確認。お疲れさま、レイヴン』
『作戦目標クリア システム 通常モードに移行します』
30体近いMTのテロリスト部隊排除。
以前なら決して楽な依頼ではなかったはずだが……。
どうやらバーテックスに関する一連の依頼でだいぶ鍛えられているようだ。
残り七体。
しばらくまた期間が空くのだろうか?
少し所持金の余裕も出てきた事だし、パーツを買い足してアセンブルを見直すべきなのだろう。
機体のテストを何度か行い手応えを感じる。
戦闘継続力とバーテックスの放つ弾幕に対する回避能力に不安があるが。
とは言え、完全にこちらをターゲットにさえしてくれれば蔓の間に逃げこみ、
隙を突いて攻撃するという手段を取れれば、この機体であっても比較的安全に戦える。
状況次第で大きく左右されるところもあるが、確かな実力の向上の実感からの安心感がある事と、
概ね期待通りの機体に仕上がった事で少し上機嫌になったところで通信が入った。
シーラ『レイヴン、緊急の依頼が来ているわ』
聞きなれた雇っているオペレーターの声がする。
ある依頼を見かけたら連絡するよう頼んでいる今、それを意味するものはただ一つ。
思わず口角が上がる。
良いタイミングできてくれたものだ。
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|レイヴン、緊急事態が発生した |
|例の地域に大量のバーテックスが集結している |
| |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|どうやら連中はこのタイミングで |
|総力戦にもち込むつもりのようだ |
|残っているバーテックスは七体、 |
|半数以上が残る今の段階で動くとは思いもしなかった |
| |
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|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|最早、一刻の猶予もない |
|とてつもなく厳しい依頼だがそこはレイヴン |
|必ずや成功してくれるだろう |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|領域には複数台の補給車両を手配し弾薬費ももつ |
|間に合うかは分からないがこちらからの |
|支援攻撃の準備を進めている |
|思う存分に暴れてきてくれ |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|これが最後の戦いになるだろう |
|目的は違えど我々の領土を脅かした罪を |
|連中に思い知らせてやってくれ |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼の成功と無事の帰還を願っている |
|よろしく頼むぞ、レイヴン |
| |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼者 :アライアンス |
|作戦領域:樹海 |
|作戦目標:全バーテックスの排除 |
|報酬 :500000c |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
思わず口角を引き攣らせた。
最早人身御供とでも言うべきか。
他のレイヴンにも依頼するつもりはないのだろう。
何とも絶望的な話だ。
だがそれで構わない。
自分というレイヴンはそういうものだ。
ただ依頼を受けて遂行し、報酬を得て生きる。
例えそこが死地だろうと騙まし討ちの依頼だろうと。
自らの意思でその依頼を選択したのであれば、
硝煙弾雨を潜り抜けて目的を果たすまでだ。
乗り込んだ愛機を起動させ、モニターに表示される内容を追っていく。
ジェネレータ出力、電装、冷却異常なし、FCS、センサー連動確認……と一つ一つチェックを行っていく。
緊急を有する事態とは言え、これを疎かにする事はできない。
AC乗りとしてはまだまだ若輩者だが今までに疎かにしてきた事もない。
アクチュエーター、A0000からM0298までチェック終了。
全ての確認を終えて、一歩、二歩とガレージから進む。
これが最後の戦いか。
あまりに急速に始まり、急速な終わりを見せる一連の依頼に感慨らしいものはなかった。
ただそれでも自分にとってこの出来事は死ぬその時まで忘れる事は無いだろう。
僅かに逸る気持ちを輸送機にジョイントされる音を聞きながら落ち着かせる。
HEAD CR-H84E2
CORE C06-EOS
ARMS A09-LEMUR2
LEGS CR-LH81AP
BOOSTER B05-GULL
F.C.S. MONJU
GENERATOR CR-G94P
RAGDIATOR FURUNA
INSIDE
EXTENSION JIREN
BACK UNIT R CR-WB85RPX
BACK UNIT L CR-WB85RPX
ARM UNIT R CR-WR88G2
ARM UNIT L CR-WR95G
Hanger UNIT R
Hanger UNIT L
OPTIONAL PARTS
O01―AMINO
CR-O69ES
CR-O69SS
CR―O71EC
CR―O79L+
MARISHI
&Li000l00020001s000A00400E03wshESGM0ug18#
シーラ『間もなく作戦領域に到達するわ』
上空より投下され、見る間に地面が迫ってくる。
シーラ『レイブン……あなたは死ぬつもりなの?』
シーラ『……それでも尚、この戦いに加わるというの?』
『メインシステム 戦闘モード 起動します』
シーラ『そう……必ず、必ず生きて帰ってきて』
言われる間でもない。
何時だってやる事は変わらない。
生きる為に戦う。
レイヴンとはそういうものだ。
夏凜「あの時はちらっとしか見ていなかったけども……あれが」
風「ふっふっふっ……そう! あたし達の強力な仲間よ!」バッ
樹「お姉ちゃんがえばる事じゃないじゃん……」
友奈「大赦にいてもあの兵器に関する話はなかったの?」
夏凜「ええ、全くといっていいほどにね」
東郷「完全に大赦が関与しない組織であれだけの技術……何度見ても信じられないわ」
風「んー? ていうかさ。あれ、また形変わってない?」
東郷「あ……足の形も肩の兵器も違っていますね」
友奈「またパワーアップしているのかな? この間は今までよりびゅーんって飛んで行きましたよね!」
風「だといいわねぇ……その勢いであれだけでバーテックス倒してくれないかしら」
友奈『ロボットさーーん! 頑張ろーー! おーーー!』
相変わらず元気ハツラツといった様子の薄紅色の少女は、
跳ねながら手を振ってくる。
彼女達は最早友軍であり、欠いてはならない僚機と言っても過言ではない。
が、必要以上に馴れ合うつもりもない。
少なくとも自分におけるレイヴンというものの価値観はそうしたものだった。
少しだけ体を向けて答えるに留めて正面に向き直る。
近い位置に居る彼女達に配慮して数歩前へと歩き距離を取る。
バーテックスまでの距離はまだある。
ブースタから火を噴かせ、最前線に飛び出していく。
轟音と粉塵を撒き散らして巨体は突き進む。
夏凜「よしっ殲滅!」バッ
風「あたし達も行くわよっ!」バッ
友奈樹「はいっ!」ババッ
東郷「……」ザッ
東郷「バーテックスの進行速度にバラつきがある……」
東郷「あの巨大なのは明らかに別格……だけどまずは……」
夏凜「一番槍ぃっ!」ザンッ
東郷「……」ッドォン
夏凜「一匹目! 封印するわよ!」
攻撃の口火を切ったのは少女達だった。
予想に反して突き出てきたバーテックスに、こちらが攻撃する間もなく終わった。
数が数だけに波状攻撃をしてくるか物量で押してくると思ったが、それにしては後続が遅すぎる。
コアに攻撃を行っている少女達に砲撃を浴びせる訳でもなく前進してくるだけだ。
残っているバーテックスは近接型なのだろうか?
思考している中、緑色のバーテックスが彼女達に急接近する。
腑抜けたか、戦況把握に随分と粗が出た。
レーダーを確認すると狙撃を行う紫色の少女の下に近づくバーテックスの反応まである。
何を浮かれているのだろうか。
どれほどの機体が組めても、動かなければただの鉄屑。
気持ちを切り替え、彼女達に迫る緑色のバーテックスへと近づく。
牡牛型「」ゴォォォンリィィィン
風「くっ!」
夏凜「なにっ! この音っ!」
東郷「皆っ! あのベル」ッドォォン
東郷「なにっ?!」
魚型「」ドザァァン
東郷「この揺れじゃ……狙撃が!」
耳障りな音がコクピットにまで響く。
あれを直に聞いている彼女達は堪らないだろう。
完全に後手に回ってしまった。
紫色の少女に近づいたバーテックスは、地面から出ては潜り周囲に振動を与えて狙撃妨害が目的か。
ならばあの緑のバーテックスはこちらで動きを止める。
両手に握るグレネードをバーテックスに向ける。
が、自動で照準が合わない。
対象の姿をロックサイト内に収め距離も射程範囲内だというのにだ。
見ればシステムエラーの表示がされており、この音にECMの効果まである事を察した。
即座に大型ロケットに切り替えて頭部のベルらしき部分に向けて撃ちだす。
だが、バーテックスは僅かに動きロケット弾は遥か遠方に飛んでいく。
そうこうしている内に少女達に向けて、レーダーに映る赤い点が更に近づいてくる。
随分と面倒な時間稼ぎがいたものだ。
彼女達への影響が心配だが、迷う時間も与えられていない。
もう一度、紫の少女を見る。
どう見ても射程範囲外。
ならば手をつけるなら緑のバーテックスだが、ロックオン無しで狙うには発生源が小さい。
力技だが仕方が無い、と周囲の足場と緑のバーテックス、そして少女達の位置を確認する。
即座に進行ルートを定めて走り出し、自分自身の居住まいを正してからある機構を作動させた。
コア、C06-EOSの背部に内臓されたブースタが迫り出されると光が灯る。
一呼吸の後、正面から叩きつけられたかのGに張り倒されそうになるのを堪える。
モニターを通して見える景色は吹き飛ぶように流れていく。
今度は一呼吸の間もなく、巨大な機体は500km/hに達して周囲を薙ぎ払っていくのだった。
風「く、そ! 何なのよ!」ゴォォォン
友奈「こ、これぐらいっ……勇者ならぁ!」リィィィン
樹「う、うう……こんな、音っ」ゴォォォン
夏凜「え? ……なに? 違う、音?」ァァァァァ
AC「……」ズァァァァ
牡牛型「」ガゴォォォン
AC「……」ッズザァァァ
夏凜「くっ!」ブアァァッ
風「なんて、突風……!」ビュアァァァ
牡牛型「」ッズゥゥン
友奈「すっごい! 体当たりしたよ!」
夏凜「! 音が止んだ!」
樹「あんな音っ! もう鳴らさせない!」シュルル
牡牛型頭部「」ヒュル ビッ
風「樹、ナイス!」
夏凜「反撃するわよ!」
音を止めるのには成功したが、緑のバーテックスを完全に追い抜かしてしまった。
ここからほぼ真後ろに旋回するタイムロスを考えると、紫の少女の援護に向かうべきと判断した。
紫の少女の周囲で再び地面から突き出たバーテックスに照準を合わせる。
サイトとマーカーが赤くなり更にワンテンポを待つ。
随分と撃ちやすい動きをしてくれるものだ、と射撃操作をする。
二次ロックが完了されてから放たれた二発の擲弾は、吸い寄せられるようにバーテックスに着弾する。
装甲が薄いバーテックスなのか、頭部らしき部位が大きく剥がれ落ちとしながら、
爆発の衝撃で体が宙に跳ねて滞空時間も延びる。
動きに合わせて照準を動かし、ロックオンした状態を維持する。
ゆらりと降下し始めたところでもう一斉射を撃ちだした。
東郷「ご助力、感謝します」カッ
東郷「封印、開始!」
友奈「東郷さん!」
東郷「こっちは任せて!」
友奈「うん、分かった!」
樹「きゃあっ!」ググ
牡牛型「」ゴゴゴ
風「ワイヤーを切って!」
樹「う、うん!」ビッ
牡牛型「」
天秤型「」
水瓶型「」
夏凜「……なに? 撤退していく?」
友奈「どういう事?」
獅子型「」ッゴォォンオォォン
樹「……火の、玉?」
牡牛型「」ボッ
天秤型「」スゥ
水瓶型「」スッ
一体のバーテックスが巨大な炎の玉になり、三体のバーテックスが呑まれていった。
大型ロケットを一発撃ちだすも炎に飲まれ、システムから命中を報告する表示もされない。
後方を窺うと紫の少女がコアを破壊し終えたところのようだった。
だがレーダー上に赤い点が移動している事に気づいた。
瞬時にデコイを予測するもそうではなかった。
バーテックスがいるであろう方向に向くと、小さい何かが走る姿が見える。
小型にして人型のバーテックスが地を駆ける。
F.C.S.が反応し、敵をロックオンした。
あの小型ならACでも十分に止められるだろう。
撃ち出した擲弾は真っ直ぐ敵に向かい、
ひらりとかわされた。
鼓動が高まり息を飲む。
瞬時にこの状況の危険性を察する。
彼女達はレーダーなんてものはないだろう。
であればここで自分が止められなければ……。
しかし地を走るだけであの速度。
下手をしたら止まったり減速されなければ当てられないのではないだろうか?
だが、これ以上の進行される事は避けなければならない。
最短距離で接触できるよう敵の進路と接近時の予測地点を即座に判断する。
再び背面より内臓ブースタの姿を出させた。
射撃による攻撃はかわされる。
ならば面で押しつぶす。
急加速するACの前に、こちらの手中を掻い潜り抜け出す勢いであったバーテックスも
見る間に距離を詰め寄られ、機体に飲み込まれる。
追い抜いてからオーバードブーストを切りつつ通常ブースタを吹かせて旋回する。
押し潰して地面と共に舞い上げられたのか、それともただ単純にはね上げたのか。
身体の一部を千切れさせながら地面に落ちていくバーテックスの姿が見えた。
その体に照準を合わせながら地面に叩きつけられる瞬間に狙いを定めて両手のグレネードを撃つ。
爆発と砂煙が舞い上がると小さな四角錐が宙に浮かぶ。
あの大きさなら攻撃のみでも、コアを露出させられるのか。
東郷「くう……!」ビュアァァァ
東郷「あのロボット……一体、なにを?」
東郷「! バーテックス?! なんであそこに……」
敵情報
個体名称 双子型
種別 人型
全長 3m
移動速度 250km
記録 戦闘記録ナシ
東郷「な……この大きさに気付けたというの?」
東郷「あれは……御魂!? あのバーテックスなら、封印の儀無しにでも……」
東郷「え、ロボットが離れ……あ! 任せて下さい!」ッドン
御魂「」バァン
未だに火の玉が燃え盛る。
小型のバーテックス消滅を確認しながら、補給車に向かって弾薬の補給を済ませる。
シーラ『レイヴン、聞こえる? 無事でなによりだわ』
シーラ『アライアンスより通信、依頼内容にあった支援攻撃についてよ』
シーラ『残念だけど、支援攻撃は中止になったわ』
準備をしていたのに中止とは一体?
その疑問の思いから吐いた息に彼女も気付いたのだろうか、通信は更に続く。
シーラ『ある地域を守っていた衛星を知っているかしら?』
読んだ事のある内容に、記憶を掘り返す。
確かあれは六、七十年近く前に発見された……。
シーラ『もう一つのレイヤード……サイレントラインに近づく者を砲撃で排除していたものよ』
シーラ『あの当時、サイレントライン調査の為、衛星は機能を停止させられていたわ』
シーラ『その後、どの企業も牽制のし合いになって、修復などは行われずに飛び続けるだけの代物だった』
シーラ『けれども、どうやらアライアンスとなった今、その衛星の再稼動の為に動いていたようね』
シーラ『ただ、最早修復は不可能、というのが結論だそうよ』
シーラ『更に悪用される事を恐れたアライアンスはあれを落とすつもりのようだわ』
つまり準備していた支援攻撃とは……復旧させた衛星砲による砲撃だったのか。
聞く限りであれば、一転に集中して砲撃しようものなら、バーテックスと言えどひとたまりもなかっただろうに。
そこまで当てにはしていなかったとは言え、少し残念なことではある。
が、そんな事で落ち込む余裕はない。
幸いにしてまだ一度も被弾していない。
弾薬も補給した直後。
通信している間に移動を終えて待機しているところ、先の炎の玉が消えていく。
そこに姿を現したバーテックスはあまりにも大型のものだった。
むしろ自分達の世界にかつて存在したという巨大兵器さながらの大きさである。
残り四体がこの局面でこういった形になるとは……つくづくこちらの予想を引っくり返してくれる。
こちらで注意を引き、早々と彼女達に撃破してもらわないと何とも分からない状況だ。
射程範囲まで近づこうと動いた瞬間、敵前方に円状に火の玉が並びだし、周囲に飛び散った。
火の玉はすぐさまに各自を狙う軌道に移る。
速いが避けられない速度ではない。
ブースタを噴かせて斜め前へと進み、射線から外れる。
が、火の玉の軌道が修正されるのを目の当たりにした。
流石にこの位置関係からの回避は不可能。
奥歯を噛み締め、直撃を甘んじて受け入れる。
誘導性があるのか……。
更に向かってくる次弾を右に移動する事で誘導し、ギリギリのところで左へと急加速して回避する。
三斉射目が無いのを確認し接近すべく、再度ブースタを点火すると共に
衝撃が機体を走り、機体温度を高めた。
何が起こった?
後方を確認する余裕も無く、とにかく前進しつつ左右に機体を揺らして回避行動をとる。
ふと赤い輝きが自分より先に進むのが見える。
彼女の背後を逃がすまいと無数の火の玉が追いかけている。
あれだけの誘導性があるのか……。
先程の衝撃の正体に気づくと共に、その性能に驚かされる。
各社のミサイル開発ももう少し頑張ってほしいものだ。
より厳しい状況になったというのに、下らない事が頭に過ぎる。
だがそれでいい。
まだ終わっていない、悲観も絶望も必要ない。
何よりその暇があるのなら、生き残る活路を探るまで。
先程に比べるとだいぶ数の多い火の玉を掻い潜り、爆発と共に地に落ちていく赤い少女を尻目に擲弾を撃ちだした。
友奈「げほっ……うぅー」
夏凜「なんて……強さなの……」
風「まだ、よ……まだ戦えるわ……」ググ
樹「お姉ちゃん……」
友奈「攻撃が……? あ……ロボットさん」
夏凜「そう、よ。まだ誰も、何も欠けていないわ」
風「ええ……」
風(皆を巻き込んでおいて……こんなところで負ける訳にはっ)ザッ
回避しては蔓の影に逃げ込み、火の玉を爆発させる。
だが、徐々に蔓を避けて追い続けてくるものが増えてきた。
そんな反撃と逃走を繰り返しながら、巨大バーテックスがこちらに向いたのに気付く。
そして次は火でなく……水玉が膨れ上がっていくのを目にする。
水没したら最後、自力では上がれないが即座に故障、機能停止に追い込まれる訳ではない。
だが当然ながら依頼は即座に中止となる為に、地上で水に包まれるという状況がどういった事態になるか想像がつかない。
ただ通常の攻撃よりも危険度が高くみるべき事は明らか。
ならば抗うまで。
大型ロケットに切り替えて水玉に照準を合わせて撃ちだした。
みるみる重量級ACも軽々と飲み込める大きさまでに膨れ上がった水玉は、炎を散らしてその身を弾けさせた。
直後、衝撃と共に機体温度が上がる。
『AP50% ダメージが増大しています』
『コア損傷』
じりじりと追い込まれていく。
先の三体との戦いでAPを削られなかったのは幸いか。
敵の攻撃が直撃したからか、まだ少女達はまともに動けずにいる様子。
何としてでもこちらで時間を稼がなくては。
追いかけてくる攻撃を避けながら敵に攻撃を続けて遮蔽物となりえる蔓を探す。
ACをも隠す大きい蔓の影に周ると蔓に密着するように停止する。
連続でいくつもの爆発が振動として機体に伝わる。
蔓を避けた三発の火の玉が機体を追い越したかと思うと、反転してこちらに向かってくる。
だがこれで吐き気を催したくなるほどレーダーを埋め尽くす、ミサイルとして表示されていた火の玉はリセットされた。
二十から先は数えるのを諦めたのはいいが、何時までも追いかけてくるのは本当に勘弁してもらいたい。
巨大バーテックスが完全にこちらを向ききった。
今までと違い、今度は中心部に向かって光が集まる。
身の毛のよだつ悪寒が走り即座に動く。
出来るだけ距離をとるべく右後方へとブースタを吹かせながらオーバードブーストを起動させる。
機体温度など気にする余裕もなく、立ち止まる事を許さずにENが枯渇しかかっているコンデンサに
エクステンションのJIRENから大量のENを流し込ませる。
右方向へと急加速した直後、巨大バーテックスより超高速の火の玉が撃ち出された。
避けきれるか、と息を飲むも加速によるGとは違う大きな衝撃に揺らされた。
『左腕部破損』
搭乗者の努力も空しく、システムは非情なメッセージを伝えてくる。
ただでさえ弾数が豊富でない機体で左手の武器をも失った。
これはいよいよ厳しくなってきたか。
着弾時に爆発したのであろう反動に機体を吹き飛ばされながら、息が詰まりつつある現状を噛み締めた。
風「皆……大丈夫?」
樹「う、うん……何とか」ノソ
夏凜「東郷は……?」
風「無事よ。ロボットがバーテックスを引きつけているのを見て攻撃は中止しているみたいよ」
夏凜「間にあたし達を挟んでいるから、反撃される時に巻き込まない、為かしら」
樹「あ、なるほどっ」
友奈「う……く」ググ
友奈「そんなの駄目です。ロボットさんだけが……」
風「分かってる。多分、ロボットもあたし達の為の時間稼ぎをしてくれているんだと思う」
風「正直、こっちもボロボロだけどここで決めるしかないわ」
風「これが最後! 封印の儀いくわよ!」
『頭部破損』
次にまた高速射撃を食らったら耐えられるかギリギリのところだろうか。
誘導性の高い攻撃を避けながらロケットと擲弾を撃ちこんでいく。
左肩のCR-WB85RPXの残弾が尽きる。
だが補給する余裕など欠片ほどないのが現状。
装備を切り離して多少身軽になった機体で回避を続けているとある事に気付いた。
新たに火の玉を打ち出されていない。
残りのミサイル型の火の玉を遮蔽物で処理をするも、やはり追撃が完全に止んでいる。
巨大バーテックスの周りに光がまとわりついている光景を目にした。
これで、終わりか。
思わず感慨深げに思いかけたが、バーテックスのコアを見て目を剥く。
あまりにも巨大な上に、大気圏さえも越えているようにしか見えなかった。
風「なによ……あれ」
東郷「そんな……規格外すぎるわ」
夏凜「しかもあの御魂……出ている場所って宇宙?!」
樹「大きすぎるよ……」
夏凜「最後の最後で……こんなっ!」
友奈「大丈夫。御魂なんだから今までと同じようすればいいんだよっ」
友奈「どんなに敵が大きくたって諦めるもんか!」
夏凜「友奈……」
樹「友奈さん……」
東郷「でも、今の私達じゃ攻撃が届かないわ……」
風「ここまで来たんだ……駄目元でも玉砕覚悟でもやってやるわよ!」
風「皆、満開の事、覚えているわよね!」
友奈「あっ!」
東郷「! まだその手がありましたね」
樹「で、でもどうやったらいいの?」
夏凜「東郷、樹! 遠距離で攻撃できるのはあんた達だけよ! 任せるわよ!」
シーラ『レイヴン、アライアンスより緊急の通信よ』
シーラ『バーテックスのコアが出現した場所は衛星の軌道上だという事よ』
思いがけない言葉に息を飲む。
まさか……。
シーラ『既に作業員は全員撤収』
シーラ『今、正に衝突する直前らしいわ』
遥か彼方を見上げる。
悠然とするバーテックスのコアが突如、一生に一度と見る機会もないだろうほどの爆発を巻き起こした。
シーラ『バーテックスのコアがどれほど強固か分からず、これで倒せるものかは分からない』
シーラ『が、それとしてもこの爆発による地表の被害は防ぎたい』
シーラ『その為、地上に降り注ぐ破片を破壊してほしい、との事よ』
無茶を言う。
大型ロケットと小型グレネードでどうこなせというのだろうか。
大小様々な亀裂を見せるコアだが、今だ原型を保ちながら降下してくる。
やるのならばこちらだろう。
周囲を見渡し、高いところを探す。
可能な限りコアにダメージを与える。
バーテックスの事だ。
これを失敗すればコアも修復されて、打つ手がなくなるのだろう。
思いがけない出来事でコアに大打撃を与えられた好機を逃がせるはずも無い。
これが最後だ。
風「……え? え? あれ?」
夏凜「な、何よ今の……」
友奈「も、もしかしてロボットさんが何かしたのかな?」
樹「見てください! 落ちてきていますよ!」
東郷「これなら……誰が攻撃に出ますか?」
風「封印していられる時間は……何とかなりそうね」
夏凜「とは言え攻撃力重視じゃないと破壊できないかもしれないわよ」
風「分かってるわ。だから……ん?」ババ...バ..
パイロット『聞こえるか、レイヴン。援護に来た』
パイロット『追加の依頼は聞いているだろう。どれほど破片が降り注ぐか分からない』
パイロット『有効射程を延ばす為にもこちらで上空に運ぶ。必要なら飛び降りてくれ』
その依頼を受けるつもりは無いが、この状況下でコアに近づけるのは大きい。
彼らの目的とは合致しないが、遠慮なく利用させて頂こうと近づく輸送機に飛び乗った。
パイロット『ACの搭乗を確認。上昇する』
風「こ、今度は何?!」
夏凜「ロボットが乗った……どんな乗り物なのよ!」
樹「どんどん浮いてく。もしかして御魂に向かうのかな?」
東郷「待って! 御魂から!」
友奈「み、御魂が攻撃?!」
東郷「落とさせない!」ッドン ッドン
夏凜「……風、友奈! あんた達が行きなさい!」
風「夏凜?」
夏凜「ここはあたし達が引き受けるわ! 満開ゲージが溜まっている中であんた達が一番攻撃力が高い!」
風「分かった! 友奈! あのロボットと一緒に御魂に近づくわよ」
友奈「え? ええ!?」
風「あれを運べるんだからあたし達二人増えたって余裕なはず! 行くわよ!」
友奈「はいっ!」
友奈『待ってーーー!』
風『乗せてーー!』
二人の少女が近づいてくるのが見える。
意図に気付き、輸送機の端へと移動する。
パイロット『いいのか、レイヴン?』
パイロット『詳しい事は知らされていないが、別のものも乗せる分よろしく頼むぞ』
徐々にコアが近づいてくる。
さて、どれだけ落下物を無視し続けたら、輸送機から振り落とされるだろうか。
残っている武装は右腕と右肩のみの上に残弾は半分も残っていない。
全火力開放と言えば聞こえはいいが、残り僅かの大型ロケットと擲弾を撃ち込み続ける。
距離がまだあるからだろうか?
少女達は小さい端末のようなもので何かを確認しながら、こちらの行動を見守っている。
こちらの攻撃でギリギリまで削ってから挑むつもりなのだろうが、
僅かな残弾など早々と撃ち尽くしてしまった。
射撃を止めて立ち尽くすこちらの様子に、少女達も最早残弾が無い事を悟るのは容易かったのだろう。
黄色の少女が頭を下げ、薄紅色の少女が手を振って輸送機から飛び出していく。
それを眺めながら一つの事を考える。
この高さなら何とか飛んでこれなくもないだろうか。
間に合うかは分からないが、用心も含めて戦える状態にしておくべきだろう。
補給車に向かって輸送機から飛び降りた。
風「よし、時間もまだある……。友奈! 一斉攻撃いくわよ!」
友奈「はいっ!」
風「たあああ!」ギィィン
友奈「やああっ!!」ッドガァン
御魂「」ビシビシ バシ
友奈「かったい!」
風「友奈、頑張って! あと少しよ!」
友奈「大丈夫です!」
友奈「皆が……皆でここまできたんです!」
友奈「絶対……絶対に諦めるもんかーー!」
弾薬を補給し終え、ブースタを噴かせ続けて上昇をしている時だった。
突如、コアが輝き崩れていった。
操作する手を止め、重力に引かれるままに落ちていく。
消えゆくコアが急速に小さくなる中、二つの輝きが見えた。
薄紅色と黄色の少女達もまたコアから落ちてきた。
パイロット『こちらの仕事は飽くまでレイヴンを上空に運ぶ事だけだ』
パイロット『報告の義務もないし、落下物を一切無視した事はこちらの知る限りではないとしておこう』
ありがたい申し出に思わずコクピット内で口角を上げる。
パイロット『どうやら色々と全てが片付いたようだな』
パイロット『当機体はこれより作戦領域を離脱する』
パイロット『レイヴン、ご苦労だった』
風「とうっ」ドンッ
友奈「ほっ」ダンッ
東郷「友奈ちゃん!」
樹「お姉ちゃん!」
夏凜「二人とも無事!?」
風「ええ、ばっちしよ!」
友奈「これで……これで全部終わったんだね」
風「そうよ! あたし達の大勝利! これぞ女子力がなせる技よ!」
夏凜「……」ゴゴ
樹「神樹様の結界を見るのも、これで最後なんだね……」ゴゴゴ
風「ええ、そう思うと感慨深いものがあるわね」ゴゴゴ
東郷「私達が、成し遂げた……」ゴゴゴゴ
友奈「やったね! 東郷さん!」ゴゴゴゴゴ
樹「帰ってきた……帰ってこれたよ、お姉ちゃぁん!!」
風「よしよし、本当によく頑張ったね。冷蔵庫のアイス、半分」
樹「だからそれもあたしのだよぉ!」
友奈「守りきったんだよ、あたし達!」
東郷「うん……うんっ。あたし達で国を……皆を」
夏凜「……」テロリロリンテロリロリン
夏凜「三好夏凜です。バーテックスと交戦、負傷者ゼロ」
夏凜「尚、今回の戦闘で十二体のバーテックスは、全て殲滅しましたっ!」
シーラ『全バーテックスの消滅を確認。お疲れさま、レイヴン』
『作戦目標クリア システム 通常モードに移行します』
静けさが訪れた樹海に遠くから聞こえるプロペラ音が響く。
それはこの依頼の終了を合図するもの。
つまりはこの一連の依頼の最終目標、全十二体のバーテックスの排除の証でもある。
奇妙な依頼ではあったがその終わりをこの目で見届けるに至れた。
これ以上、新たなバーテックスの出現がないのであれば、ここに降り立つ依頼もそうはないのだろう。
自分にしては珍しく、僅かながら感傷めいた思いで周囲を見渡した。
そして彼女達が誰一人欠ける事も無く、終わりを迎えられた事に安堵感を感じながら、
巨木に背を向けて輸送機に向けて進みだした。
風「えー……コホン。勇者部大勝利をを祝ってー」
風「かんぱーーい!」
友奈東郷樹夏凜「「かんぱーい!」」
風「やー大赦から検査するって言われた時はぞっとしたけど、皆何事もなくてよかったわー」
夏凜「そうね。これで何かあったら後味が悪くなるところだったわ」
友奈「そういえば病院食って結構味気が無かったねー」
東郷「神世紀以前からそういうものらしいよ」
樹「えー……そうだったんですか……」
風「でもまー夏休み前に片付いてよかったわね」
友奈「ですねっ。これで夏休みを心置きなく全快で遊べますねっ!」
東郷「心置きなくちゃんと宿題も出来るね、友奈ちゃん」
友奈「うぐっ。それはーそのー……」
東郷「ちゃんと自分でやろうねっ」ニコ
夏凜「友奈は勉強苦手なの?」
友奈「あははー……お恥ずかしながらー」
樹「夏凜さんは勉強できるんですか?」
東郷「そういえば編入試験もほぼ満点だって先生が言っていたような……」
風「なぬっ?! 文武万能とかどこのヒロインよ!」
夏凜「あたしは言うほどじゃないわよ」
樹「え? そうなんですか?」
夏凜「一夜漬けほど酷くはないけど、詰め込んで何とかしてるのよ。風はどうなのよ? 期末テスト、この間あったばっかだったでしょ」
風「得意ってほどじゃないけどそこそこな程度よー」
友奈「べ、勉強の話はやめにして、ほらほらポテトチップ開けるよー!」バリッ
風「あ、友奈が逃げた」
樹「でも今日はそういう話は抜きにしよーよ」
夏凜「樹もなの?」
風「いやいや、テストの点は悪くないわよ。……ただまあテスト前は結構大変なんだけどね」
樹「お、お姉ちゃん~」
夏凜「テストと言えば……やっぱり東郷は歴史関係は満点だったりするわけ?」
友奈「そうだよっ。歴史の事なら東郷さんにお任せっ!」
東郷「任されましたっ」ムンッ
夏凜「何となくそんな気はしたわ……」
風「歴史、か……」
樹「どうかしたの?」
風「んーいやね。結局のあのロボットって何だったのかって」
風「だって普通に暮らしている分には見た事無いじゃん?」
風「もしかして昔使われていたものを改造した、とか?」
夏凜「あたしも大赦に聞いてみたけど何も教えてもらえないわ」
東郷「私も西暦時代まで調べてみましたが、冗談の範囲で巨大人型ロボット開発の案が挙がったそうです」
東郷「当然ながら実行に移される事は無かったようですが」
東郷「ただ娯楽作品に登場するロボットの等身大の模型自体は作られた事があったようです」
東郷「もしかしたら、ですが一部の水面下では研究そのものはされていたのかも……」
樹「でも迷彩柄でいかにもって感じでしたよね」
夏凜「結局分からずじまいねー……」
友奈「そっかぁ……もうロボットさんにも会えないんですねー……」
風「それはそれで平和の証って事。むしろ喜ぶべきなんだけどもね」
友奈「牛鬼ともちゃんとお別れできなかったし……」
東郷「……そうね」
夏凜「そういう意味ではロボットも似たようなものね」
樹「ロボット……精霊?」
夏凜「そういう意味じゃないって」
風「うーん、神樹様を直接守る精霊……随分といかつい精霊ね」
友奈「あはは、バーテックスに体当たりもしてましたもんね」
夏凜「……ま、バーテックスの戦いをちゃんと知っているのはあたし達だけなんだし」
夏凜「あたし達がしっかり覚えててあげましょ。精霊もロボットも」
友奈「うん……そうだねっ夏凜ちゃん」
__________________________
|Message |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|レイヴン、ご苦労だった |
|これでバーテックスの侵攻はなくなり |
|樹海地域の開発も一層、力をいれられるというものだ |
|今後の君の活躍に期待している |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
終わった途端これである。
今までの若干擦り寄ったメールも幻かと思わずにはいられない。
最も調べるまでも無く、特攻兵器以前からそんな感じであったらしい。
全くもって企業様様な状態だという事か。
その企業からの依頼で命を繋ぐ自分達レイヴンも、
大きな事を言えたものではないが。
シーラ『とは言え、あの時近くにアライアンスの部隊が集結し、ミサイルによる集中攻撃を行えるようにしていたようよ』
あの輸送機の迅速な作戦領域入りはそういう事だったのか。
恐ろしい事を言われたが思わず納得してしまった。
シーラ『先の戦争において、ミラージュは雇ったレイヴンごとミサイルによる集中攻撃で破壊しようとしたわ』
シーラ『流石にアライアンスとなった今、そんな大胆な事まではできなかったようね』
シーラ『依頼主がミラージュでなくて良かったわね』
元ミラージュの現オペレーターは、さらりと更に背筋が凍る話を続ける。
情報には感謝を示し、気持ちを切り替えていく。
アセンブルを普段の依頼に備えたものへ変更してから依頼を漁る。
ある程度依頼があるとは言え、あまり稼ぎのいい依頼は滅多に無いものだった。
今現在目に付く依頼は武装勢力の鎮圧や、特攻兵器による被害の復興が手付かずの地域の調査等。
今はそんなものばかりである。
ACの武装をエネルギー武器主体のものに切り替え、
被害の大きい区画に残る破損コンテナの全排除という依頼を引き受けた。
夏休み
友奈「わぁーっ見て見て! すごーい綺麗ー!」
東郷「本当ね」
友奈「いやーまさか大赦からご褒美が貰えるなんて思ってもいなかったね」
東郷「食事も用意してくれているっていうし、きっと夕食は豪華なんじゃないのかな?」
友奈「ううー今からおなか空いてきちゃうー」
東郷「ふふ、風先輩は大変な事になってそうね」
風「折角の海! めいいっぱい楽しむわよー!」
樹「おーっ!」
夏凜「風ー! 競泳で勝負よ!」
風「おっ望むところよー。瀬戸の人魚と言われたあたしが格の違いを見せてあげるわー!」
夏凜「……言われてるの?」
樹「自称デス」
友奈「あ、遂に勝負するんだ」
夏凜「ふふん、あたしがいかに優れた選手か見せ付けてやるわ」
友奈「頑張ってね、夏凜ちゃん!」
夏凜「え、ええ! 当然よっ! 見ておきなさいっ」
樹「いっちにー、さんしー」
東郷「樹ちゃん、泳げるんだっけ?」
樹「えへへー少しだけですけど」
東郷「優秀だね、勇者部の未来は安泰っ」
樹「そんな事ないですよー」
風「ん? あれ? 夏凜あれ見て」
夏凜「え? 何よ?」クル
風「隙有りっ!」
夏凜「あ、ちょぉっ!」
風「ふははははー! 既に勝負は始まっているのだー!」
夏凜「待ーてーー!」
友奈「あはは、あたし達も行こっか」
東郷「そうね」
樹「ですね」
夕方
友奈「ふあー……もうお腹ペコペコ」
風「友奈部員っ、早急に片づけを済ませ旅館に帰還するのだー!」
友奈「部長殿ー! エネルギー切れで動けませんっ!」
風「じゃあ夏凜齧って我慢してー」
夏凜「食えないわよ」
友奈「あむっ」パク
夏凜「食いつくなっ!」
樹「こっち、まとめ終わったよー」
東郷「あとは運ぶだけです」
風「おーしじゃあ行くわよー」
友奈「お、おお……」
夏凜「ちょ、ちょっと、これは豪華過ぎじゃないの?」
樹「カニですっカニがいますっ!」
友奈「しかもカニカマじゃないよ本物だよっ!」
風「あ、あのー部屋間違っていませんか?」
女将「とんでもございません。どうぞ、ごゆっくり」
東郷「私達、高待遇みたい」
夏凜「ここは大赦絡みの旅館だしお役目を果たしたご褒美って事じゃない?」
風「よーし、それじゃあ」
風樹友奈東郷夏凜「「いただきまーすっ」」
友奈「そういえば結局、満開ってしませんでしたねー」
風「あー……ホント、あのロボットがいてくれたおかげね」
東郷「実際のところ、満開は可能な限りしておくべきだったのでしょうか?」
夏凜「満開中は凄い力が上がるって話だから、緊急時の為に温存しておくべきという考えもできるわね」
樹「満開が終わってもパワーアップはするんですよね?」
夏凜「……そうなのよねぇ」
風「こんな事なら遠慮なくばんばん使っておけば良かったわねー」
夏凜「それでも神樹様の力なのよ。無駄に使うわけにもいかないわ」
友奈「ああ……美味しかった……幸せ」
風「お腹いっぱい……」
樹「お姉ちゃんーすぐ寝ると牛になるよー」
風「満腹のまま横になる……この至福の為なら犬吠埼風、牛になる事すら甘んじるっ!」
夏凜「馬鹿な事言っていないで片付けて行くわよー」
東郷「お風呂、楽しみですね」
友奈「これだけ広いと泳ぎたくなるよねー」スィー
東郷「こーら、駄目よ友奈ちゃん」パシャ
友奈「はーい……」
東郷「風先輩達、も」
風「むむっここは引き分けね」グググ
夏凜「何の勝負よっ何の!」グググ
樹「あーさっぱりしたぁ」
友奈「あっお布団敷いてあるー」
夏凜「あたしは端っこ」
風「あたしは部長だからでーんと真ん中」
樹「じゃああたしは……」
友奈「おお、樹ちゃんがすかさず風先輩のとなりに」
東郷「私達はこっちで寝ましょ」
友奈「うんっ」
風「うら若き乙女が五人集まる夜……なんの話をするかは分かっているわよね?」
夏凜「は? 何よ?」
風「コイバナよ!」
東郷「略さずもう一度お願いします」
風「こ、恋の話よ……言い直させないで」
夏凜「ふーん、じゃあ誰か好きな人とかいるの?」
友奈「……」ピク
東郷「ゆ、友奈ちゃん?」
風「え? おおっ友奈?!」
樹「友奈さん、好きな人がいるんですか?!」
友奈「い、いやー好き、って言われると違うんだけどロボットさんとか……」
夏凜「……それは正体不明だから気になる、ってだけじゃないの?」
風「まあ気持ちは分かるけどもねー」
樹「そもそもあれって、やっぱり中に人がいるのかなぁ?」
東郷「あれだけでも相当進んだ技術だし、更に自動で動くというのは考えにくいと思うわ」
友奈「人が乗っているとしたらどんな人なのかなぁ」
風「きっとヒゲを蓄えたダンディーな人とかっ!」
夏凜「大赦の人だったりしてね……あの服装で? 滅茶苦茶似合わないわね……」
樹「実は女性の方とか……」
東郷「……女性。エースパイロット? はっ、上官殿! 東郷三森、ついて参ります!」
友奈「わわわ、東郷さんにスイッチが入っちゃった」
風「これからは勇者部の活動に集中できるし……」
風「時間があったらあのロボットについて調べてみるのもいいかもね」
風「パイロットありのロボットなら、どっかで暮らしてるでしょーし」
夏凜「大赦の上の人だったらトップシークレット扱いよ」
風「まーそれも含めて調べていけばいいんじゃないの」
友奈「でもそれ、面白そうですね」
東郷「依頼ではなく勇者部単独の任務ですね」
風「お、それいいねー。勇者部初勇者部が勇者部による勇者部の為の任務っ」ビシッ
風「てゆか、樹静かねー……あ」
樹「すう……すう……」
友奈「あはは、そろそろあたし達も寝よっか」
夏凜「そうねー」
風「それじゃああたしが樹を起こさないようにこっそりひっそり電気を」ソロー パチ
友奈「おやすー」
東郷「お休みなさい」
夏凜「お休み」
風「ほい、お休みー」
「……」
東郷「ある山奥に……五郎という猟師がいました」
友奈風夏凜「!?」
東郷「ある晩……五郎が山の中で火を起こしていると、いつの間にか隣に若い女がいました……」
友奈「な、なんでこのタイミングで怪談を?!」
風「ちょっとあたしそういうの苦手なのよー!」
夏凜「ふ、ふん、こんなの所詮創作だわっ」
東郷「若い女は口を大きく開いてこう言いました。狩りをしていなさるのかー? その鉄砲、弾は何発撃てるんだー?」
友奈「東郷さん、やめてー!」
風「お願い東郷ー!」
夏凜「ふ、ふふん、こ、この程度……」
樹「んん~……むにゃ」
風「樹、ほら樹っ起きちゃうから」
東郷「……そうですね。もう休みましょうか」
友奈「良かったぁ……」
夏凜(ほっ……)
翌朝
風「忘れ物無い?」
樹「大丈夫だよー」
友奈「こっちも大丈夫ですっ」
東郷「部長殿、問題ありませんっ」
夏凜「抜かりないわ」
風「よーし、総員帰宅開始ー!」
犬吠埼家
樹「ん~~美味しいっ」
風「いやーご馳走もいいけど」
樹「やっぱりうどんだよね」
風「これはアレね。家に帰るまでが遠足じゃない。家に帰ってうどんを食べるまでが遠足ね」
樹「だねー」
風「お?」ピピピ ピピピ
風「……あららーごめん、ちょっと行ってこなくっちゃ。樹、食べちゃっててねー」
樹「うん、分かったー」
部室
風「……アタッシュケース」ガチャ
犬神「……」ポンッ
風「うわっ! 狗神?! じゃあ……」
風「携帯が……本当に戻ってきている」
メール『敵の生き残りを確認。次の新月より40日の間で襲来。部室に端末を戻す』
犬神「……」ペロペロ
風「……」ナデナデ
風「……戦いは、まだ終わってない」
風「と、いうわけで延長戦の為にも端末が戻ってきた。という事よ」
風「いつもいきなりで、ごめん……」
東郷「先輩も知ったばかりの事なんじゃないですか。仕方ないですよ」
友奈「東郷さんの言うとおりですよ」
夏凜「ま、あたし達は敵の一斉攻撃も迎撃したのよ。残党如き来るなら来なさいってもんよ」
樹「なせば大抵なんとかなる、だよお姉ちゃんっ」
風「……うん」
風「よーし、かかってきなさいバーテックス! あたし達五人の勇者が相手だー!」
数週間後
友奈「って言ってたのに、バーテックス全然来ないね」
東郷「敵を気にするのは大切だけど、気にし過ぎもよくないわ。友奈ちゃん」
夏凜「ま、東郷の言うとおりね」
樹「でももう二学期になっちゃったね」
風「ホントねー。来るならとっとと来てほしいもんだわー」
風「まー実は敵の襲来は気のせい、だったらいいんだけどねー」テロリロリン テロリロリン
友奈「噂をすればってやつですね」
夏凜「……風」
風「なっ、あ、あたしは悪くないしっ」
樹海
樹「バーテックス、来ちゃったね」
東郷「敵は一体、あと数分で森を抜けます」
友奈「一体だけならっ」
風「今回の敵で延長戦も終わり。ゲームセットにしましょ!」
夏凜「ええ、絶対逃がさないわ!」
風「よーし、勇者部一同変身っ!」
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|レイヴン、樹海地域にバーテックスの残党が確認された |
|とは言え熱源はごく小さなもの |
| |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|恐れるに足らないだろうが大赦に恩を重ねて売るのも |
|悪くは無いだろう |
|残党を迎撃してくれ |
| |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__________________________
|Commission |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|依頼者 :アライアンス |
|作戦領域:樹海 |
|作戦目標:バーテックスの排除 |
|報酬 :50000c |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
HEAD CR-H84E2
CORE C06-EOS
ARMS CR-WA74BZL
LEGS LH09-COUGAR2
BOOSTER CR-B83TP
F.C.S. MONJU
GENERATOR CR-G94
RAGDIATOR ANANOA
INSIDE
EXTENSION JIREN
BACK UNIT R WB13RO-SPHINX
BACK UNIT L CR-WB85RPX
ARM UNIT R
ARM UNIT L
Hanger UNIT R
Hanger UNIT L
OPTIONAL PARTS
O01―AMINO
CR-O69ES
CR-O69SS
CR―O71EC
CR―O79L+
MARISHI
&Li000l0007M000I000k00500o03wsgEM000ug14#
これはどういう事だというのだろうか。
十二体ではなかったというのだろうか。
輸送機から投下直後よりブースタを噴かせて、レーダーにて遠方に示される敵に向かう。
急速に神樹目掛けて突き進んでいるようだが、それでも尚追いつける速度のようだ。
近づくにつれてその姿が見えてくる。
他のバーテックスと比べあまりにも小さい、前回の依頼の時にもいた小型バーテックスだった。
破壊したはずだというのに地を駆ける姿は、大差が無いように思える。
ならばもう一度排除するまでだ。
バーテックスの進行方向後方へと機体を着地させる。
走りながら両肩の装備をパージし、ENの回復を待ってオーバードブーストを起動した。
東郷「あれは前回倒したはず! 双子型……まさかそういう事なの?」
友奈「二体でワンセットって事?」
樹「あ、見てください! あれ!」
風「お、あっちも皆勤賞ねー」
夏凜「あ、ちょっと! あのロボット! 前に出られたらバーテックスが見えないじゃない!」
AC背面「」ガコッ
樹「え? せ、背中が?!」
友奈「おお! 変身?! 変形?!」
夏凜「……? まさかっ」
風「え……あれってもしかして」
東郷「伏せてっ!」
背部に格納された二本のブースタに徐々に強まる光が灯っていくと猛烈な炎を噴出した。
瞬く間もなく機体は730km/hに達し、周囲を蹴散らし目標へと突き進む。
歯を食いしばりGに耐える。
前回より更に1.5倍ほどの速度だ。
AC乗りは短命だと聞くが、戦いの中に限ったことではないらしい。
なるほど、これで長生きしていられるわけも無いだろう。
見る間に近づくバーテックスに対し、僅かに機体を上昇させる。
あとはもういらない。
ブースタを止めて慣性と引力に引かれるがままに機体を任せた。
AC「……」ドッザァァァァ
夏凜「うわ……」
風「前の時から思っていたけど、結構あれのパイロットって豪快よね」
東郷「前回よりも速度が出ていましたね……しかも今回は踏み潰しながら……?」
樹「ひー考えただけで恐ろしいです……」
友奈「あ、あんなバーテックスじゃミンチだね……」
風「と、とにかく急いで行って倒しちゃうわよ!」
友奈「おー! え? あれ? なにあの御魂?!」
機体が停止し、旋回に移ろうとした矢先、レーダーが赤く染まり出す。
まさかバラバラになったバーテックスが再生しているとでも言うのか。
慌てて振り向いた先にはまるで泉のように湧き溢れる大量のコアの姿だった。
多くのコアに防衛能力があるようだが、これはまた想像を超えた方法だった。
少女達がまだ遠方にいるのを確認し、同時発射数を8に切り替えたCR-WA74BZLを向けた。
これでどれほどの効果があるのだろうか、という思いもあるが、出切る事をせずに座して待つつもりも無い。
両腕の連装小型バズーカから四つの発射口全てから榴弾を吐き出した。
地面一面に溢れていくコアに逃げる能力は無いのか、全ての榴弾がそれぞれに命中し爆発した。
やはり小型のコアであっても破壊にも至らないのか、無数のヒビだらけのコアが跳ねるだけだった。
自分では僅かな数を減らす事すらできないという事か、と溜息をつく他ない。
風「封印の儀なしに?!」
夏凜「ていうかこの数!」
樹「ど、どんどん増えていくよ!」
友奈「あたしに任せて!」バッ
友奈「勇者キィィック!!」ゴッ
御魂「」ボァァ
双子型「」ザァァッ
友奈「よしっ!」
東郷「まだバーテックスが残っていたのは予想外でしたがこれで全て……」
風「ええ、これで残党も終わりよ」
夏凜「本当に本当の終わり、ね……」ゴ..
樹「よかった……これで」ゴゴ
友奈「うんっ」ゴゴゴ
友奈「あっロボットさん! 今までありがとーー!!」ゴゴゴゴ
友奈『ロボットさん! 今までありがとーー!!』ブンブン
大きく手を振る少女の姿は瞬く間に遮られ、後には何時もどおり何も残ってはいなかった。
今まで……これで本当に最後だという事を彼女達は知っていたという事か。
それにしても随分と好意的に見られたものだ。
所詮、自分は傭兵だというのに。
シーラ『今日は大した事が無かったようで良かったわね』
シーラ『お疲れさま、レイヴン。帰還しましょう』
『作戦目標クリア システム 通常モードに移行します』
今日は後ろ髪引かれる思いは何処にも無かった。
前回の時で十分に気が晴らされたからか、それとも彼女達からの別れがあったからか。
一時は静寂に包まれた周囲にプロペラ音が響くのを聞いて、
進むべき方角へと機体を歩かせ始めた。
風「讃州中学勇者部、大っ勝ーー利!!」ビシッ
樹「お姉ちゃん……恥ずかしいよぉ」
夏凜「ま、気持ちは分からないでもないわね……あれ?」
風「どしたの?」
夏凜「え? 嘘? 友奈と東郷がいないわよっ!」
樹「えっ! ゆ、友奈さん!?」
風「東郷ー! なに……どうなってるの、これ」
東郷「戻った、けど……ここは」
友奈「皆もいないよ……」
東郷「あれは……大橋?!」
友奈「本当だっ! だとしたら結構離れてる場所に来ちゃったね……」
友奈「とりあえず皆に連絡……あ、あれ? 電波入ってない……」
東郷「……私の改造版でも駄目」
「ずっと呼んでいたよ、わっしー」
「会いたかったぁ。ようやく呼び出しに成功したよ、わっしー」
友奈「わっしー? 鷲? ていうかベッドがなんでこんなところにどーんと?」
「あなたが戦っていたのを感じて、ずっと呼んでたんだよ」
友奈「え、と……東郷さんの知り合い?」
東郷「……いいえ。初対面だわ」
「……。あははは、わっしーていうのはね、私の大切なお友達なんだ」
「いつもその子の事を考えているから、つい口に出ちゃうんだよ。ごめんね」
友奈「あの……あたし達を呼んだ、んですか?」
「うん、そこの祠」
友奈「……うちの学校にも」
東郷「うん、同じだね……」
「バーテックスとの戦いの終わったあとなら、その祠使って呼べると思ったんだ」
友奈東郷「っ!」
友奈「……」
友奈「バーテックスをご存知なんですか?」
「一応、あなたの先輩になるのかな。私、乃木園子っていうんだよ」
友奈「さ、讃州中学、結城友奈です」
園子「友奈ちゃん」
東郷「東郷、三森です」
園子「三森ちゃん、か……」
友奈「先輩ていうのはつまり……乃木さんも?」
園子「うん、私も勇者として二人のお友達と一緒に戦っていたんだ」
園子「今はこんな体になっちゃったけどね」
友奈「ば、バーテックスが先輩にこんな酷い目にあわせたんですか……?」
園子「ううん、これは敵じゃないよ。これでもそこそこ強かったんだぁ」
園子「友奈ちゃんはまだ満開した事ないんだよね?」
友奈「満開……あ、はい。あたし達、まだ一度もしてません」
園子「そっかぁ。満開ってね、わーっと咲いてわーっと強くなるんだ」
園子「咲き誇った花は……そのあとどうなると思う?」
友奈「え、ええと……種になる?」
園子「……満開のあとに、散華という機能が隠されているんだよ」
東郷「散、華……花が散るの、散華……?」
園子「満開のあと、体の何処かが不自由になるんだ」
東郷「え……」
友奈「そんな……」
園子「うん、これが散華。神の力の振るった満開の代償……」
園子「花一つ咲けば、一つ散る。花二つ咲けば、二つ散る」
園子「その代わり、勇者は決して死なないんだよ」
園子「そのお陰でいっぱい満開して戦ったから精霊もいっぱいいるけど……いっぱい体も失っちゃったんだけどね」
東郷「死なない……精霊……?」
友奈「で、でも、し、死なないなら……良い事じゃないかな? ね?」
園子「そして、戦い続けてこうなっちゃったんだ。元からぼーっとするのが特技みたいなもので良かったかなって」
園子「全然動けないのはきついからね……」
友奈「い、痛むんですか?」
園子「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから、満開して戦い続けたからこうなっただけ」
友奈「満開して……戦い続けた……」
東郷「じゃあその体は代償で……」
園子「……うん」
友奈「そんな……こんな……乃木さんが、どうしてっ」
園子「何時の時代だって、神に見初められて供物となったのは無垢な少女だから」
園子「穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。その力の代償として神樹様に体の一部を供物として捧げる」
園子「それが勇者システムだよ」
東郷「私達が……供物?」
園子「大人達は神樹様の力を宿す事ができないから……あたし達がやるしかないとは言え、酷い話だよね」
東郷「わ、私達は……これから体の機能を失いながら……」
友奈「だ、大丈夫だよっ東郷さん。十二体のバーテックスは倒したんだから!」
園子「倒したのは凄いよね……あたし達の時は追い返すので精一杯だったから」
友奈「そ、そうなんですよ! だからもう、戦わなくていいはずなんです!」
園子「……そうだといいね」
友奈「あ、あの……乃木さんは治らないんですか?」
園子「そうだね……治りたいな。私も歩いて、友達を抱きしめにいきたいよ」
東郷「! 友奈ちゃん!」
大赦「……」ザッザッ
友奈「た、大赦の人達?」
園子「私が呼んだ大切なお客様だから傷つけたら許さないよ」
大赦「……」ザッ
園子「あれだけ言ったのに、会わせてくれないんだもん。だから自力で呼んじゃったよ」
大赦「……」ザザ
友奈「え? ええ? ひ、平伏した?」
園子「私は今や半分神様みたいなものだから、崇められちゃってるんだ」
園子「安心してね、あなた達も丁重に元の町に送ってもらえるから」
園子「不安がらせてごめんね。大赦の人達もこのシステムを隠すのは、一つの思いやりではあると思うんだよ」
園子「でも……私はそういうの、ちゃんと言って欲しかったから」
東郷「……」キィ
園子「……そのリボン、似合ってるね」
東郷「このリボンは……とても大事な物なの。それだけは覚えている」
東郷「覚えているのに……けど、ごめんなさい。私、思い出せなくて……」
友奈「……! こ、このシステムを変える方法はないんですか?!」
園子「神樹様の力を使えるのは勇者だけ。そして勇者になれるのは極々一部、私達だけなんだよ」
園子「彼女達の町へ帰してあげて」
園子「何時でも待ってるよ。大丈夫、こうして会った以上、あなたの存在をあやふやにはしないから」
東郷「……」
友奈「……っ」
友奈「……」ギュ
東郷「! 友奈ちゃん……」
友奈「勇者部五箇条、なるべく諦めないっ」
友奈「あたし、ずっと一緒にいるから」
__________________________
|Message |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|レイヴン、先日はご苦労だった |
|しかしバーテックスの数が大赦の話と食い違っている |
|仮に以前出現したバーテックスの片割れだとして |
|何故その事を大赦は告げてこなかったのか? |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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|Message |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|どうにも彼らには不明な点と疑うべき点が見受けられる |
|再度我々独自での調査を行う予定になっているが、 |
|君もバーテックスに関する依頼はまだ続くものだと |
|思っていた方がいいかもしれない |
| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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|Message |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|何かあればまた連絡しよう |
|有事の際にはまたよろしく頼むぞ |
| |
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