真姫「世界の中心で」凛「にゃーと叫ぶ!」 (46)

とあるまきりんの同人誌を読んで、衝動的に思いついたネタです。

シリアスssです

文章力ないけど小説形式でがんばります。

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ーーカサカサ、と
乾いた音を立てて枯れた葉っぱが、冷たい風と共に足元を転がる。
ちょうど昨日で10月が終わり、一応まだ秋ではあるのだけど、その日は真冬のように寒かった。

あれからもう10年か……そんなことをセンチメンタルに思いながら坂を登る。同じような黒い石が並ぶこの場所に、人影は無い。

ーーーいや、一人だけいた。私の目的地の前で、両手を合わせてしゃがみ、目を閉じている、茶髪の女性。
しばらくして彼女は立ち上がり、振り返ったところで私に気付いた。

「ーー真姫ちゃん!」

「ち、ちょっと花陽!危ないでしょ?!走らないの!」

あの頃となにも変わらない笑顔で駆け寄る彼女を慌てて止める。
「大袈裟だよー」なんて苦笑する花陽。当の本人がこんな調子なので、私の方が気が気ではない。フゥと一息ついて少し膨らんだ彼女のお腹を見る。

「ダメよ。転んだりしたらお腹の子が……」

「もぉー真姫ちゃんまで心配しすぎ!穂乃果ちゃんじゃあるまいし、私そんなドジじゃないもん!」

プクッと頬を膨らませ抗議するその姿は本当に子供みたいだ。だから心配になるのだが……確かに穂乃果を引き合いに出されたら頷くしかない。花陽も言うようになったものだ。
しかし、「真姫ちゃんまで」か、大方、旦那さんにも過保護並の扱いを受けているのだろう。あの優しそうな人なら十分ありえる。
ホント、羨ましい限りだ。ご馳走様。

「それより、まだ花陽だけ?みんなは?」

「まだだよ……というか、流石にまだ2時間も前だけど……」

「あっ……」

やばっ、墓穴を掘った。

「真姫ちゃん、ひょっとして1番最初にお参りしにーー
「ち、違うわよ!ただ、そのっーーよ、予定より早く着いただけ!は、花陽こそ、こんな早い時間に着いてるじゃない!」

「私は、真姫ちゃんならもういるかなって……いつも先にお線香が置いてあるの、真姫ちゃんじゃないかなって思ってたから」

「なっ……」

ばれてた。
毎年この日は、私が集合時間の2時間前に来ては先にお参りし、少し時間を潰してから集合時間の10分前に皆と合流するという流れをとっていたのだが……

「……まさか、花陽にばれていたなんて………」

「ふふっ、伊達に10年以上、親友をやってないよ?」

親友。その言葉に少し気恥ずかしくなり、目をそらしてしまう。ハッとして気づくと、左手で髪を弄っていた。やはり直ったと思った癖も、旧友に合うと蘇ってしまう。

「ほら、真姫ちゃんも挨拶しよ?もっとも、月に一度は掃除に来てるみたいだけど!」

「……はぁ、かなわないわね」

墓石が綺麗にされていることから察したのか、花陽はそう言って少しだけイタズラな笑みを浮かべる。
ホント、完敗だ。あの引っ込み思案な花陽がここまで変わるなんて……それとも私が変わってないだけだろうか?

本当はお線香を買ってきていたのだが、あえて花陽の余りを貰って、火を付けると、独特な香りが鼻を突く。線香皿に乗せ、手を合わせてゆっくりと目を閉じ、懐古の念に包まれる。

(凛……)

心の中で、今は亡きもう1人の親友の名を呼ぶ。ふと、近くで猫の鳴き声が聞こえた気がした。

(誕生日おめでとう……)

***11年前***

「逃げられなーい、かーくごしてーよ、羽まみれー♪Angel Beat♪」

最後の決めポーズと同時に会場に大量の白い羽が舞いあがる。同時に湧き上がる歓声。私と凛は汗だくで呼吸も荒いまま、手を振ってそれに応える。「ありがとうにゃー!!」凛が締めの一言を言って、私達は舞台袖へとはけた。
客席から見えない所まで移動すると同時に、後ろから抱きつかれる。

「まーーーきちゃん!!」

「きゃっ?!ち、ちょっと凛!?」

バランスを崩して倒れそうになるもなんとか持ちこたえる。そして凛の額にチョップをかます。

「いったー!何するのー?!」

「それはコッチのセリフよ!急に抱きついてきたら危ないでしょ?!」

「えー!だってすっごい上手くいったから、真姫ちゃんに抱きつきたくなっちゃったんだもん」

「なっ、なにそれ!イミワカンナイ!」

「まぁまぁ二人とも……」

言い合う私達を宥めるように海未からタオルが渡される。まだ少しだけむくれる凛を見て少し強くかったかなと軽く後悔。

「それにしても、二人ともとっても良かったですよ?特に真姫、ダンスのキレがいつもより凄かったです」

「ふっふーん、実は2人で秘密の特訓をー」

「わっ、り、りん!!」

仕返しのつもりか、ニヤニヤと笑っている。もう!子供なんだから!

「ほら、次は雪穂と亜里沙ですよ?2人のユニットの初ステージです!」

海未の指差す方に目を向けると、そこには少し緊張した表情を見せる2人の後輩。
エリー達が卒業してから数ヶ月。私達はμ'sとしてではなく、アイドル研究部のユニットとして活動していた。無事廃校をまぬがれ、一躍有名になった音ノ木坂学園アイドル研究部。もちろん、話題のラブライブ優勝という実績は大きく、入部希望者は30人を超えた。
複数のユニットが出来る中、流石に全員ライブに参加させる訳にはいかず、出場はオーディション製という形をとった。
学校でライブを開き、学生に投票で出場者を決めてもらうというもの。毎回講堂を借りた大掛かりなライブができるわけじゃないから、屋上で数人を集めた小さなライブなんかを開いたりした。
もちろん、そこに先輩後輩は関係なく、私達も先輩として負けるわけにはいかず、全力でオーディションを取りに行った。一応一年生枠を設けており、今回その枠を勝ち残ったのが、雪穂と亜里沙の二人のユニット。
あの二人は、穂乃果と絵里という、先輩の妹という肩書きに恥じることの無いよう、人一倍練習してきたから、当然といえば当然だ。

特に雪穂は、穂乃果が現役なので、「高坂穂乃果の妹」というレッテルを貼られ続けており、そのプレッシャーに苦悩もしていたようだが、今では姉にも負けない、立派なスクールアイドルになっていると、私は思う。



「ホントだ!凛ここで見てる!」

「あんた、次穂乃果とのPassionateじゃない。準備しないと」

「ガーン!!そーだったにゃー!」

頭を抱える凛を見てほくそ笑む。フンっ、さっきの仕返しよ!
ちょっと誰!?今子供って言ったの!

「うー!真姫ちゃんなんて嫌いにゃー!!」

「・ぇぇ!、あ……」

捨て台詞と共に裏へと走って行く凛。残された海未と私に嫌な沈黙が流れる。ふと、海未から視線を感じる。

「……なによ?」

「いえ、別に……」フィッ

なんなのよもう!別に今の私悪くないじゃない!

「ただ真姫は、強気なのに自分の発言を気にする節がありますから、大丈夫かなー、と思いまして」

図星をつかれ思わずたじろぐ。しかし、ここで同様したら負けだと思った。何に対してかはわからないけど……

「べっつに!気にしないわよ!ただちょっとさっき強く叩いちゃったかなとは思ったけど………」

言ってから、いらんことを言ってしまった自分にハッとする。
うぅ、私ってなんかすごい単純……。思わず髪を弄ってしまう。

「ふふ、大丈夫ですよ。二人にとっては、いつものことですし、凛もそこまで怒ってないと思います。それにーーー」

そこで海未は口元に指を当て、優しげな笑みを浮かべる。

「ーーーこの後のことも、ありますしね」

「みんなー!今日は来てくれてありがとーー!!」

全ての曲が終わり、8人が舞台に上がる。
穂乃果が会場にマイクを向けると、観客はそれに大歓声で応える。
この後の流れとして、穂乃果が締めの挨拶をして終わり。
ーーそう、凛には伝えてある。

「ところで!皆は、今日が何の日か、知ってるかにゃー?」

ニコニコ顏の穂乃果がわざとらしい口調で振り返る。ニコニコ、ニヤニヤしている私達の中で、凛だけがキョトンとしていた。

「そう!今日は私達の仲間、星空凛ちゃんの17歳の誕生日でーーーす!!凛ちゃんおめでとーーーう!!」

その言葉を筆頭に、会場から割れんばかりの拍手がおこる。「凛ちゃーーん」「おめでとにゃー」など、様々な賞賛の声があちこちから聞こえる。一方の凛は、しばらくポカーンとしていたが、だんだん状況が飲み込めてきたのか、顔が綻んでくる。
「わぁー!ありがとにゃーー!」と、はしゃぐ姿を見て、このサプライズを提案して、本当によかったと思える。

ふと、穂乃果と目が合った。瞬間。にやぁ、と小悪魔な笑みを浮かべる。なにやら嫌な予感……。


「ち、な、み、にー、このサプライズを考えてくれたのは、真姫ちゃんでーーーす!!ヒューヒュー!」

「ヴえぇ!?」

ちょっ………穂乃果ーー!!?
それは黙ってるって約束だったじゃない!!
穂乃果に合わせて会場からも茶化す声やら口笛やらが聞こえてくる……は、恥ずかしい……。

チラッと凛を見てみると、おそらくずっとこっちを見ていたのか、彼女と目が合った。

「………」ニコッ

「っーーーー」

少しだけ頬を染めて、嬉しそうに笑う凛に思わず目をそらしてしまう。
穂乃果……あとで覚えてなさいよっ……!

そんなことを思っている私の頬がこれ以上ないくらい緩んでいることは、隣に並ぶことりしか知る由はなかった。

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