ほむら「2人だけのクリスマス」 (153)
まどマギの百合物です
2回に分けて投下する予定です
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まどか「……」
さやか「今週はいよいよクリスマス。楽しみだねぇ」
まどか「……」
さやか「美味しいもの食べて、プレゼントをもらって…今から楽しみだよ」
まどか「……」
さやか「まどかの家が少し羨ましいよ。あんなに料理上手なお父さんがいてさー」
まどか「……はぁ」
さやか「……おーい?まどかー?」
まどか「あっ…ご、ごめんねさやかちゃん。何?」
さやか「何というほどのことじゃないけど…今日はずっとぼーっとしてるね」
まどか「うん。ちょっと、ね……」
さやか「あたしでよければ話、聞くよ?」
まどか「……ありがとう。ちょっとショックというか、残念なことがあって」
さやか「ショックなこと…何があったのさ」
まどか「今年のクリスマスは…家族みんなで過ごせないの」
まどか「ママに急な出張が入っちゃって、パパもタツヤを連れて一緒に行っちゃうことになって……」
まどか「だから、今年のクリスマスはわたしひとりになっちゃって…少し気が滅入ってるんだ……」
さやか「なるほど。クリスマスくらい休ませてくれたっていいのに、社会は厳しいねぇ」
まどか「それが、少し前の飲み会のときにママが次の出張は自分が行ってやるみたいなこと、言ったらしくて」
さやか「うへぇ……」
まどか「後になって代わってくれる人を探したみたいだけど、この時期に代わってくれる人なんて……」
さやか「まぁ、普通いないよね……」
まどか「そんなわけで、今年はひとりなんだけど…さやかちゃんはもう予定入っちゃってるよね……?」
さやか「ごめん、もう埋まっちゃってるよ。今更取り消すわけにもいかないし……」
まどか「ううん、いいの。気にしないで……」
さやか「気にするなってもなぁ……」
まどか「あはは…今年は寂しいクリスマスだなぁ……」
まどか「……そっか、これが噂のしんぐるべる、ってことなのかな……」
まどか「あはは…はぁ……」
さやか(ほっとくと寂しさのあまりにおかしくなりそう……。どうしたものか)
さやか(誰か…誰かひとりぼっちのまどかのサンタになってくれそうな人は……)
ほむら「まどか、さやか。帰……」
さやか「あー、ごめん。今ちょっと……」
さやか「……ほむら?」
ほむら「何?」
さやか(まどか、1人…寂しい。あたしはダメだから、友達…ほむら……)
さやか「……そうだ!これだっ!」
ほむら「き、急に大声出さないで。一体何なの?」
さやか「ほむら、お願い!まどかのサンタになってあげて!」
ほむら「……話が全く見えないのだけど」
さやか「あ、えっと…クリスマスにまどかの両親が出張とその付き添いで留守にするみたいなんだ」
さやか「だから、今年のクリスマスはまどかひとりだけになっちゃって……」
まどか「家に帰っても真っ暗で、冷たくて…夕飯もきっとお惣菜で……」
さやか「それで、あんな感じに……」
ほむら「そ、そう……」
さやか「ほむら、1人暮らしみたいだしどうせ予定空いてるでしょ?」
ほむら「そう断言されるのも腹が立つけど…確かに予定はないわね」
さやか「それなら、まどかのためにまどかのサンタになってあげてくれないかな」
ほむら「サンタになれという意味はわからないけど、要はまどかと一緒にいてあげればいいのかしら」
さやか「うん、大体そんな感じ」
ほむら「私は構わないけど、まどかが何と言うか……」
さやか「んじゃ、聞いてみようか。……おーい、まどか。まどかってば」
まどか「……あ、さやかちゃん。ほむらちゃんも」
さやか「喜びなさい、まどか。ほむらがあんたのサンタになってくれるって」
ほむら「何であなたが偉そうなのよ……」
まどか「……さやかちゃん。わたしのサンタさんって…何?」
さやか「うぅん、何だろうね。ノリで適当に言っただけだし」
まどか「そ、そうなんだ」
さやか「とにかく、クリスマスはこれまた独り身のほむらが一緒にいてくれるってさ」
ほむら「……あぁ、急用を思い出したわ。その日はさやかのところに行くサンタを迎撃する予定が」
さやか「わー!嘘、嘘だって!」
まどか「えっと…ほむらちゃん……?」
ほむら「……まどか。私でよければクリスマスの日は一緒に…過ごさないかしら?」
まどか「ほ…ほむらちゃんっ!」ギュウ
ほむら「ま、まどか?ちょっと……」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん!わたし、嬉しいよ!」
ほむら「わ、わかったから離してもらえると……」
まどか「ほむらちゃん、大好きーっ!」
ほむら「だっ、だだだだ、だっ!?」
さやか「あんたたち、落ち着きなさいっての!」
――――――
さやか「……落ち着いた?」
まどか「はい……。ごめんね、ほむらちゃん。わたし、嬉しくて……」
ほむら「き、気にしないで。私もまどかの言葉に…その、驚いてしまって」
まどか「わたしの言葉って…何か変なこと言ったっけ……?」
ほむら「その…私を大好きだって……」
まどか「あ、あぁ…確かにそんなこと言っちゃったね。何だかちょっと恥ずかしいよ」
さやか「忘れてるかもしれないけど、ここ教室だからね。すっごい注目集めてたから」
まどか「うっ……」
さやか「見せつけるのもいいけど、時と場所を選びなさいよ」
ほむら「だ、誰もそんなこと……」
さやか「それで、結局どうするのよ?」
ほむら「クリスマス…実際は24日のイブの日ね、その日はまどかと一緒に過ごすわ」
まどか「でもほむらちゃん、本当にいいの?」
ほむら「えぇ。どうせ1人暮らしで何の予定も入ってないから」
まどか「そっか。……ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「……別に、お礼を言われることじゃないわ」
さやか「お、照れてる照れてる」
ほむら「うるさいわね。……それじゃ、私は先に帰るわ」
さやか「あれ?最初一緒に帰ろうって……」
ほむら「そのつもりだったのだけど…今日は予定があったのを思い出したの。ごめんなさい」
まどか「ほむらちゃん、またねー」
ほむら「えぇ。またね、まどか」
さやか「……さーて。あたしたちも帰ろうか」
まどか「うん。……あ、まだ荷物まとめてないんだった。ごめんね」
さやか「別に気にしなくてもいいよ。のんびり待ってるからさ」
まどか「うぅ…ちょっとだけ待っててね。すぐ終わらせるから」
さやか「あいよー」
さやか(……どうでもいいんだけど、ほむらの予定って何なのかな)
さやか(元々予定があったって言ってるけど、最初はそんな風には見えなかったような……)
さやか(……ま、気にしても仕方ないし、意味ないか)
まどか「お待たせ、さやかちゃん。帰ろっか」
さやか「ん、そだね」
――――――
マミ「……さて。暁美さん、話というのは何かしら」
ほむら「えぇと…その……」
マミ「もう慣れたことだけど…相談の度にこうなっちゃうのはどうしてかしらね……」
ほむら「そ、それは……」
マミ「大丈夫、わかってるから。友達としての相談じゃなくて、恋の相談だから…よね」
ほむら「……わかってるのならわざわざ聞かなくてもいいじゃない」
マミ「ふふ、ごめんなさい。それで、今回はどうしたの?」
ほむら「それが…まどかと一緒に過ごすことになってしまって……」
マミ「……もう少し詳しく話してもらえる?」
ほむら「え、えぇ。……24日、クリスマスイブの日にまどかのご両親が揃って家を空けてしまうみたいで」
ほむら「ひとりぼっちのクリスマスは寂しいからということで、私が…その日は一緒にいるということになって……」
マミ「あら、いいじゃない。あなたとしても願ったり叶ったりなんじゃないの?」
ほむら「それはそうだけど…少し不安なの。私がまどかの寂しさを和らげてあげられるのか……」
ほむら「クリスマスの日はどう過ごすものなのか…それもよくわかってなくて」
ほむら「何かアドバイスか、ヒントでもいいから…教えてもらえないかしら……?」
マミ「そうねぇ…ほら、私も1人暮らしだからあまり参考になるようなことは言えないけど……」
マミ「今の暁美さんの考え方じゃダメかなって思うの」
ほむら「考え方?」
マミ「えぇ。鹿目さんの寂しさを和らげるとかじゃなくて、私が笑顔にしてみせるくらいに思わなきゃ」
ほむら「私が……」
マミ「鹿目さんのこと、好きなんでしょう?好きな人が悲しんで…今回は寂しいんだったわね……」
マミ「とにかく、鹿目さんが落ち込んでいたのなら、あなたが笑顔にさせてあげるべきよ」
ほむら「……そうね。私は…まどかのサンタになるんだものね」
マミ「えぇ。……あの、暁美さん?」
ほむら「ありがとう、マミ。何となくだけど、私がやるべきことが見えた気がするわ」
マミ「そ、そう。それはよかったけど…ねぇ、今……」
ほむら「他に聞いておいた方がよさそうなことは…ないかしらね。じゃ、この話はここまでにしましょう」
マミ「で、でも……」
ほむら「いい、わね?」
マミ「……はい」
ほむら「……他に聞くことはないと言ってすぐなんだけど、当日はどう過ごしたらいいのかしら」
マミ「漫画やドラマなんかだと、相手と一緒にいるだけでいいなんてのがお約束になってるけど……」
ほむら「でも、それは想い合ってる場合だと思うわ。私の場合は…片想いだから」
マミ「鹿目さんも、きっと暁美さんと一緒にいるだけでいいって思ってるんじゃない?」
ほむら「……もしそうだったとしたら、嬉しいわね」
マミ「当日どう過ごすかは暁美さんに任せるとして…クリスマスプレゼントは考えてあるの?」
ほむら「それは…いるのかしら。ご両親からのものがあるんじゃ……」
マミ「わかってないわね。今まで両親からだけだったからこそ、意味があるんじゃない」
マミ「初めて家族以外の誰か…それも暁美さんに貰ったプレゼントとなれば、何よりも嬉しく思うはずよ」
ほむら「そういうものなの……?」
マミ「そうよ。もう、暁美さんは乙女心がないんだから」
ほむら「私も女なのだけど……」
マミ「そうだわ、プレゼントは暁美さん自身にしたらどう?」
ほむら「……ごめんなさい。今、何と?」
マミ「だから、クリスマスプレゼントはあなた自身にしたらいいのよ。名案だと思わない?」
ほむら「……頭痛くなってきたわ」
マミ「プレゼントは…私自身。私と付き合ってほしい…みたいな感じで」
マミ「あっ、もちろん赤いリボンも忘れずに身につけてね」
ほむら「マミ、あなた疲れてるのよ。もう休みなさい」
マミ「あら、失礼ね。今、私の頭脳はあなたたちをどうくっつけるかフル稼働してるんだから」
ほむら「だいぶ偏りがあるというか、夢の見すぎというか。漫画やドラマに影響されすぎよ」
マミ「じゃあ、どんな方法で告白するの?」
ほむら「それは…って、話をすり替えないで。プレゼントの話だったはずでしょう」
マミ「そうだけど…告白するには絶好の機会じゃない。こんなチャンス、滅多にないわよ」
ほむら「……」
マミ「……まぁ、暁美さんの恋だから…最終的にどうするかはあなたが決めることだけど」
マミ「何度も相談を受けた私の意見としては、ここで告白するのもいいんじゃないかって思うのよ」
ほむら「でも、それは……」
マミ「そう悪い方へは転がらないと思うわよ。鹿目さんだって、暁美さんのこと…友達以上として見てる節があるように感じるけど」
ほむら「まどかが…私を……?」
マミ「あくまで私の感じたことだから確証はないけれど…少なくとも、友達以上の好意を持ってることは確かだと思うわよ」
ほむら(……確かに、最近のまどかは…何と言うか、私との距離が近いような…そんな気がする)
ほむら(会話をしてるときも、お昼を食べているときも。今日だって大好きと言われ、抱きつかれて……)
ほむら(少し前まで、そんなこと…なかったのに。手を繋ぐとかそのくらいのことはあったけど……)
ほむら(じゃあ、まどかは本当に私のこと……?私の告白を待ってるとか、そういうこと…なの……?)
ほむら(……いえ。勝手な思い込み、希望的観測はよくないわね。焦ってもいいことなんてないわ)
ほむら(私は私のタイミングで…その、気持ちを伝えればいいのよ。だから今回は……)
マミ「……暁美さん?考え込んじゃってどうしたの?」
ほむら「あ…いえ、何でも。告白については考えておくことにするわ」
マミ「そう……」
ほむら「せっかくアドバイスしてくれたのに、ごめんなさい」
マミ「謝らないで。私は暁美さんにも、鹿目さんにも幸せになってもらいたいだけ」
マミ「焦って告白したって、いい結果になんてなるはずないもの」
ほむら「……ありがとう」
マミ「お礼も、まだ早いわ。それは鹿目さんと一緒になってから言うことよ」
ほむら「……それはそれとして、結局どう過ごせばいいのかわからないままね」
マミ「24日って、終業式の日よね。ショッピングモールでデートでもして、それから鹿目さんの家に行けばいいんじゃないかしら」
ほむら「デート…デート、ね……」
マミ「クリスマスはこうであるべき、なんて模範解答はないと思うわよ。大事なのは、誰と過ごすかってことじゃない」
ほむら「……そうね。私たちは私たちらしく、いつも通りでいればいいのかしらね」
マミ「そうよ。鹿目さんといる手前、背伸びしたくなる気持ちもわからなくはないけど」
ほむら「べ、別にそんなつもりは……」
マミ「とにかく。今日は22日の月曜日だから…明後日ね。上手く行くことを祈ってるわ」
ほむら「……出来る限りのことはしてみるわ」
マミ「頑張って。……さて、そろそろ夕飯の支度を始めないと」
ほむら「じゃあ、私はこれで失礼するわね」
マミ「……せっかくだから夕飯、食べていかない?」
ほむら「それは…助かるけど、いいの?」
マミ「寒くなったせいか、最近ひとりでいるのが寂しいのよ……」
ほむら「そ、そう……」
マミ「今日は暁美さんもいることだし、腕によりをかけてご馳走しちゃうわ」
ほむら「ご馳走になるだけじゃ悪いし、手伝いましょうか?」
マミ「いいのよ。暁美さんはお客様なんだから」
ほむら「……そう言うのであれば、大人しく待ってるわ」
マミ「えぇ。……暁美さんもいるとなると、何を作ったものかしら。お鍋?シチュー?」
ほむら「2人で食べきれる量でお願いするわよ」
ほむら(……そう言えば、まどかの家…ご両親がいないってことだったけど)
ほむら(夕飯とかどうするのかしら。私、大したもの作れないわよ?まどかも得意ではないはずだし……)
ほむら(……今から考えても仕方ないわね。当日になってから考えましょう)
――2日後――
詢子「まどか、ほんっとーにゴメンな。何であんなこと言っちまったんだろうなぁ……」
詢子「あー、どっかその辺にタイムマシンでも落ちてないもんかね。あの日の自分はり倒して来たいよ……」
まどか「もう決まっちゃったことだし、仕方ないよ」
知久「明日の夜か、遅くても明後日の朝には帰って来るから。それまで、留守番頼んだよ」
詢子「あぁ、そうそう。プレゼント、アタシたちのベッドの下に用意してあるから。あとで持っていきなよ」
まどか「ありがとう、ママ」
詢子「……さーて、そろそろ出るか。んじゃ、まどか。行って来る」
知久「まどか、行って来るよ」
まどか「うん。いってらっしゃい」
バタン
まどか「……はぁ。行っちゃったな」
まどか(……家族みんなでいるときは思いもしないことだけど)
まどか(わたしひとりだけだと、家がすごく広く感じちゃう……)
まどか「……」
まどか「……っと。ぼんやりしてる場合じゃなかった」
まどか「時間は…うん、大丈夫。さやかちゃんにはメール送って……」
まどか「……これでよし、と。それじゃ、わたしも行かないと」
――――――
ほむら「……」
ほむら(今日は12月24日、クリスマスイブ……)
ほむら(まどかと一緒に過ごすと約束した日……)
ほむら(……何だか少し緊張するわね。今日告白すると決めたわけでもないのに)
ほむら(今日は終業式とホームルームでおしまいだから…お昼過ぎには下校になるはずよね)
ほむら(午後からは全部、まどかの為に使えるのは嬉しいけど…どうしたものかしら)
ほむら(どこかに出かけるにしても、いい案が思い浮かばないし……)
ほむら「……っと。悩んでる場合じゃなかったわね。学校、行かないと」
ほむら「忘れ物は…ないわね。じゃあ、行きましょう……」ガチャ
まどか「あ、ほむらちゃん。おはよう」
ほむら「……」
まどか「……あれ?ほむらちゃん?」
ほむら「……」
バタン
まどか「ちょ、ほむらちゃん、何で閉めちゃうの?」
まどか「ほむらちゃーん」
ほむら(な、何でまどかが家の前にいるのかしら……?)
ほむら(まどかの家と私の家、方向全然違うのに…どうして……?)
ほむら(……まどかの考えはわからないけど、家の前で待ってたってことは何か用がある…のよね、きっと)
ほむら(と、とにかく家を出ないと……)ガチャ
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「え、えぇ。おはよう、まどか」
まどか「もー。ほむらちゃん、わたしを見るなり玄関、閉めちゃうんだもん。ひどいよ」
ほむら「ご、ごめんなさい。少し驚いてしまって」
まどか「驚いた、って?」
ほむら「だってそうでしょう。玄関開けたらまどかが立ってたんだから」
ほむら「今日はどうしたの?こんな朝早くに私の家に来たりして」
まどか「んっとね…ほら、今日は24日だから、ほむらちゃんと一緒にいる日…だよね」
ほむら「そう、ね……」
まどか「だから…その、今日は朝から一緒にいたいな、なんて……」
まどか「……あ、う、嘘!今の嘘だから!全部忘れて!」
ほむら「……ふふっ、そう。そういうことだったの」
まどか「うー……」
ほむら「まどかは…今日のことを随分と楽しみにしていてくれたのね」
まどか「それはそうだよ。だって、ほむらちゃんと2人で過ごせるんだもん」
ほむら「……え?」
まどか「……い、今のは違うの。クリスマスはずっと家族とだったから、友達といられるのが嬉しいってだけで」
ほむら「そ、そう。そうよね。何だかそれ以上の意味に聞こえてしまって……」
まどか「それ以上って…そ、そんなわけ…ない、よ……」
ほむら「……そう断言されてしまうと少し寂しいわね」
まどか「そ、そうかな……」
ほむら「えぇ。それよりも、立ち話していないでそろそろ学校に向かいましょう」
まどか「あ、うん。そうだね」
ほむら「じゃあ、行きましょうか。……はい、まどか」
まどか「……?どうしたの?手、出してきて」
ほむら「……最近、まどかと手を繋いでない気がして。それに、今日は寒いから」
まどか「えへへ…改まると何だか恥ずかしいね。じゃあ、お言葉に甘えて……」
ほむら「……本当に久しぶりね、まどかと手を繋ぐのは」
まどか「そうだっけ?」
ほむら「最近は…抱きついたりが多くなったような気がするわ。スキンシップが激しくなったというか……」
まどか「ご、ごめんね。嫌だった……?」
ほむら「いえ、その…嫌というわけではないのだけど……」
ほむら「今までそんなことなかったものだから、最初のうちは驚いてしまっていたわ」
ほむら「でも…今はそれも悪くないかなって、思っているけど……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「……も、もうこの話はおしまい。ほら、行くわよ」
まどか「あ、ま、待ってよー」
――放課後――
さやか「あー、終わったー……」
ほむら「何だらしない声出してるのよ」
さやか「やー、だってさ。明日から冬休みじゃん。仕方ないよ」
まどか「そ、そうかなぁ」
さやか「……それよりも、今日あんたたちはデートなんでしょ。楽しんできなよ」
ほむら「ば、馬鹿言わないで。別にデートなんかじゃ……」
まどか「さ、さやか、ちゃん。何言って……」
さやか(あーあー、2人して慌てちゃって。冗談だってのに……)
さやか「まぁ、それはともかく。今日はほむらがしっかり楽しませてあげないとダメだよ」
ほむら「い、言われずともわかってるわ」
さやか「それならいいんだけど。……んじゃ、あたしも予定あるし、先に帰るね」
まどか「うん。さやかちゃん、またねー」
さやか「またー」
ほむら「さようなら……」
まどか「……それじゃ、わたしたちも行こうよ」
ほむら「え、えぇ。そうね」
まどか「ほむらちゃんは今日、どうしたいとかっていうの…ある?」
ほむら「それなんだけど…ショッピングモールに行ってみない?」
まどか「うん、いいよ。……えへへ、ほむらちゃんとデートができて嬉しいよ」
ほむら「で、デートって…クリスマスイブ、だから……?」
まどか「そう、かもね。じゃあ、今日はよろしくね」
ほむら「まどかに楽しんでもらえるといいのだけど……」
まどか「大丈夫だよ。だって、ほむらちゃんと一緒なんだから」
ほむら「……じゃあ、早速向かいましょうか」
まどか「あ、朝みたいにまた手を繋いでも…いい?」
ほむら「え、えぇ……」
――ショッピングモール――
まどか「うわぁー…あっちもこっちもクリスマス一色だね」
ほむら「そうね……。飾りつけだったり、店員の衣装だったりがクリスマス仕様になってるわね」
まどか「それもそうだけど…やっぱりあのクリスマスツリーだよね。すごい大きいの」
ほむら「暗くなるとイルミネーションもするみたいだから、帰りにまた見に来ましょう」
まどか「……それで、まずどこから回ろう?」
ほむら「雑貨屋はどうかしら。買っておきたいものもあるし」
まどか「それじゃ、まずは雑貨屋に行ってみよっか」
ほむら「……予想してはいたけど、クリスマスグッズでいっぱいね」
まどか「だねー。……ほむらちゃんは何を買いに来たの?」
ほむら「あぁ…大したものじゃないわ。気にしないで」
まどか「え?でも……」
ほむら「いいから。ほら、見て回りましょう」
まどか「う、うん」
ほむら「この辺は…アクセサリーや小物が多いわね」
まどか「そうみたいだね」
ほむら「……ま、まどかは…その、リボン以外をつけてみたりしないの?」
まどか「え?うーん…リボン以外はしたこと、ないね。たぶん似合わないと思うし」
ほむら「そんなこと……」
まどか「わたしがこういうのつけてみても、きっと変だよ。むしろ、ほむらちゃんの方が似合うと思うな」
まどか「……ほら、この辺のとかどうかな」
ほむら「え、遠慮しておくわ……」
まどか「……特にこれといってほしいもの、ないみたいかな」
ほむら「私は欲しいものがあるから買ってくるわね」
まどか「じゃあ、わたしはこの辺にいるよ」
ほむら「えぇ。すぐ終わらせるから、少し待ってて」
まどか「はーい」
まどか(……ほむらちゃんの買いたいものって何だったんだろう。気になるなぁ)
まどか(こっそりついて…ううん、やめよう。あんまり知られたくないことかもしれないし)
まどか(それにしても、色々売ってるなぁ。値段もそんなに高くは……)
まどか「……あ、これ……」
――――――
ほむら「まどか、お待たせ……」
ほむら「……あら?まどかはどこに……」
まどか「あ、ほむらちゃん。ごめんね、待たせちゃった?」
ほむら「いえ、待ってはいないけど…一体どこに?」
まどか「あのあとちょっと気になるもの、見つけちゃって」
ほむら「そうだったの……」
まどか「ほむらちゃんもわたしもほしいもの買ったし、そろそろ出よっか」
ほむら「結構長居してしまったわね。さて、次はどこに行ったものかしら」
まどか「どうしよっか……」
ほむら「まどかはどこか行きたいところ、ある?」
まどか「わたしはほむらちゃんと一緒なら、どこでもいいよ」
ほむら「そ、そう。それなら…映画はどうかしら。終わる頃にはクリスマスツリーのイルミネーションも始まってると思うわ」
まどか「じゃあ、映画館に行ってみよっか」
――映画館――
まどか「……色々やってるね。クリスマスを題材にしたのも多いみたい」
ほむら「まどかはどれか見たいもの、ある?」
まどか「どういう内容なのかわかんないのばかりで、なんとも……」
ほむら「私もそこまでは……。ただ、あの2つは知ってるわ」
ほむら「クリスマスに泥棒をボコボコにする映画と、クリスマスにテロリストとドンパチする映画だったかしら」
まどか「そ、それはいいかな……」
ほむら「それなら…そうね、あれはどうかしら。ポスターを見る限りアクションではないでしょうし」
まどか「素敵なタイトルだね。……うん、これにしようよ」
ほむら「次の上演は…20分後みたいね。時間も丁度よくてよかったわ」
まどか「チケットはわたしが買ってくるから、ほむらちゃんは何か飲み物を買ってきてよ」
ほむら「わかったわ。何がいいかしら」
まどか「ほむらちゃんにお任せするよ。じゃあ、お願いね」
ほむら「……さて、何にしましょうか。私は何でもいいけど、まどかは……」
ほむら「屋内だから暖房は入ってるけど…暖かいものにしておきましょう」
ほむら「……すいません。ホットティーとホットコーヒーをひとつずつ……」
まどか「ほむらちゃん、買ってきたよ」
ほむら「ありがとう、まどか。飲み物は…暖かい紅茶でよかったかしら」
まどか「うん、ありがとう」
ほむら「よかった。……そろそろ入場、始まるみたいね。行きましょうか」
まどか「どんな映画なんだろう。楽しみだなぁ」
――――――
ほむら「……」
『私…ずっと自分を誤魔化してた。私がおかしいだけだと…そう思ってたから』
『でも、今日はクリスマスだから。……私の本当の気持ち、あなたに伝えるわ』
『……私、あなたが好き。私と…付き合ってほしい』
ほむら(どうしたものかしら。まさか恋愛物だったなんて……)
ほむら(しかもこれ、女同士の恋愛物じゃない……。わけがわからないわ……)
ほむら(内容が内容だけに見てる人、ほとんどいないし……)
ほむら(……まどかには悪いことをしてしまったわね。あとで謝りましょう……)
『……ごめんね、気づいてた。わたしのこと、好きなんだって』
『でも…直接好きって言ってもらえて…凄く嬉しい。だって……』
『わたしも…あなたのことが好きだから……』
まどか(こ、これ、女の子同士の……?ほむらちゃん、どうしてこの映画を……?)
まどか(ほむらちゃん…内容、知ってたのかな……)
まどか(でも、そうだとしたら…何でわたしと……?)
まどか(……もしかして、ほむらちゃんが好きってこと…気づかれちゃった……?)
まどか(……えっ、ど、どうしよう。まずい。まずいよ……)
ほむら(……だけど、あの2人が羨ましい。私もまどかと……)
まどか(どうしよう…どうしよう、どうしよう……。ばれちゃったのかな……)
ほむら(私とあの子…どこか似てるところがあるわ。友達を好きになったり、素直になれなかったり)
まどか(このままだとほむらちゃんに嫌われちゃうよ……。どうにかしないと……)
ほむら(でも、あの子は最後の最後に素直になって、勇気を出して…告白したのよね)
まどか(だけど…今を乗り切ったとしても、いつかは…伝えないといけないんだよね……)
ほむら(私は…どうしたらいいのかしら……)
まどか(わたし…どうしたらいいのかな……)
――――――
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら「……え、映画…終わったわね」
まどか「あ、え、うん、そうだね」
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら(どうしよう、気まずい……。あんなもの、見せてしまったせいで……)
まどか(うぅ…何だか話すのが怖いよ。どこかでぽろっと言っちゃいそうで……)
ほむら(でも…黙ってるわけにもいかないわね。何か話を……)
ほむら「……まどか、ごめんなさい」
まどか「ほ、ほむらちゃん……?急にどうしたの……?」
ほむら「内容も知らないまま見たせいで、まどかに妙な映画を見せてしまって……。本当にごめんなさい」
まどか「き、気にしないで。そ、それなりに面白かったし」
ほむら「……まどかはあんな形の恋は…どう、思う?」
まどか「へっ!?え、えーと、それは…その……」
ほむら「それは……?」
まどか「えっと、あの…あ、ありじゃない、かな。好きの形は人それぞれだと思うし……」
まどか(……な、何バカ正直に話してるの、わたしは!?これで変な目で見られでもしたら……!)
ほむら「……そう。ふふ、そうなの……」
まどか「ほ、ほむらちゃん……?」
ほむら「……あぁ、ごめんなさい。そうよね、あんな形の恋があったっていいわよね」
まどか「う、うん……」
まどか(……変な目で見られては…ないみたい。よかった……)
まどか(でも…何であんなこと、聞いたんだろう。まさか…わたしのこと……?)
まどか(……映画を見たから、それについて聞いただけ…だよね)
ほむら(今の反応を見るに、まどかは女同士がまるっきり駄目というわけではなさそうね……)
ほむら(それなら…まだ望みはあるかしらね)
まどか「ほむらちゃん…どうしたの、ぼーっとして」
ほむら「……いえ、何でもないわ。イルミネーションを見て帰りましょうか」
まどか「うん……。そうだね」
ほむら「まどか……?」
まどか「……ほら、行こうよほむらちゃん」
ほむら「ちょ、ちょっと、そんなに引っ張らなくても……」
まどか「いいから、いいから」
ほむら「……ふふっ。仕方ないわね」
ほむら(私がまどかを引っ張ってあげたいけど…まどかに引っ張られるのも、悪くないわね)
まどか「あ、ほら。見えてきた……」
まどか「うわぁ……」
ほむら「とても…綺麗ね……」
まどか「うん……。すごく綺麗……」
ほむら「……まどか、今日はどうだった…かしら?」
まどか「……楽しかったよ。ありがとう、ほむらちゃん。わたしのわがままに付き合ってくれて」
ほむら「お礼なんていいの。私も…まどかと一緒にいて、楽しかったから……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「……さぁ、そろそろ帰りましょう」
まどか「うん。帰ろう、ほむらちゃん」
――――――
ほむら「それじゃあまどか、私は1度家に戻るわね」
まどか「なるべく早く来てね。待ってるから」
ほむら「えぇ。また後で」
まどか「あ…ま、待って」
ほむら「どうしたの?」
まどか「えっと、その…持って来てもらいたいものがあるんだけど……」
ほむら「持って来てもらいたいもの?」
まどか「あのね…着替え、持って来てくれないかな……」
ほむら「着替え……?まどか、それって……」
まどか「うん……。今日、泊まってほしいの……」
ほむら「私は構わないけど、でも……」
ほむら「……いえ、何でもないわ。泊まる用意もしてくるわね」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん。わたし、買わなきゃいけないものがあるから先に行くね」
ほむら「え、えぇ」
ほむら「……私も家に戻らないと」
ほむら「……」
ほむら(まさか…泊まっていって、なんて言われるとは……)
ほむら(それも、今日…クリスマスにそんなことを言われるなんて……)
ほむら(でも…きっとひとりだと寂しいのでしょうね。いつも家族と過ごして……?)
ほむら(……あれ、待って。今日ってご両親はいらっしゃらなくて、まどかひとりのはずよね)
ほむら(もしかして…今日、まどかと2人きりってこと……?それも、まどかの家で……)
ほむら(まどかのことだから…変な意味なんてなくて、純粋に私といたいってだけで……)
ほむら(そうだとしても…やっぱり意識してしまうわね……。仕方ないと言えば仕方ないけど……)
ほむら(クリスマスイブの夜に、好きな人と2人きりになるんだもの……)
ほむら(……あぁもう、変なこと考えてないで早く家に戻りましょう)
まどか「うぅー……」
まどか(わたし…何であんなこと、言っちゃったんだろう……)
まどか(どうしてよりにもよってわたしだけのときに限ってあんなこと……)
まどか(それに、今日はクリスマスイブだし…ほむらちゃんに変に思われてないといいけど……)
まどか(……でも、チャンスでもあるんだよね……。誰もいないわたしの家だから、周りを気にしなくていいから)
まどか(ほむらちゃんはわたしのこと…どう思ってるのかな。きっと…友達としか見てないよね……)
まどか(……)
まどか「……っと。夕飯、買って帰らないと」
今回はここまで
次回投下は26日夜を予定しています
帰って来てそのままばたんきゅーしました。ごめんなさい
続きは27日夜の予定です
叛逆後のやつは現在鋭意製作中です
なんかギャグっぽくなってきてる気がするけど…
次から本文
――――――
ほむら(つ、ついに来てしまったわ……。元々来るつもりだったけど……)
ほむら(とにかく、余計なことは考えないで…まどかと楽しくクリスマスを過ごす、それだけ……)
ほむら(告白は…何も今日しなくちゃいけないわけではないし。今日が過ぎても…バレンタインとかもあるし)
ほむら(……よし。行きましょう)
ほむら「……その前に、これをこうして、と」
ほむら「これでよし。それじゃ今度こそ……」
まどか「……これで夕飯の支度はおしまい、と。片付けもしてあるし、大丈夫だよね」
まどか「あとはほむらちゃんが来るのを待つだけ……」
まどか「……特別な意味としてもそうだけど…友達としてのほむらちゃんも…大好きで、大切な人」
まどか「だから…今日、これからの時間が楽しいものになると…いいな……」
ピンポーン
まどか「あ、ほむらちゃん…かな。……よし、がんばらなきゃ」
ガチャ
まどか「ほむらちゃん、いらっしゃい……?」
ほむら「ま、まどか。メリークリスマス」
まどか「……ど、どうしたの、サンタの帽子なんて被って」
ほむら「私は…まどかのサンタだから」
まどか「それって、この前さやかちゃんが言ってた……」
ほむら「あれがどういう意味だったかは知らないけど…私はまどかに喜んでもらいたくて……」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん。すごく嬉しいな」
ほむら「そう…よかった……」
まどか「ほら、いつまでも立ち話してないで家に入ろうよ。待ってたんだから」
ほむら「ふふ、そうね。待たせてしまってごめんなさい」
まどか「夕飯の支度もできてるから、まず夕飯にしよっか」
ほむら「わかったわ。まどか、今日はお世話になるわね」
まどか「わたしの方こそ。今日はよろしくね」
ほむら「……ねぇ、まどか。この夕飯は……」
まどか「え、何か変だった?」
ほむら「いえ、そうじゃないけど…少し豪華すぎない?」
まどか「そんなことないと思うけど。フライドチキンとかピザはお店で買ったやつだし」
まどか「作ったのは…今朝パパが作っておいてくれたシチューくらいだよ」
ほむら「それならそれでだいぶかかってしまったんじゃ……」
まどか「気にしなくても大丈夫だよ。ちゃんと夕飯代もらってあるんだから」
まどか「それに、これはほむらちゃんとのクリスマスパーティーなんだよ。細かいこと気にしないで楽しもう?」
ほむら「……そうね。そうしましょうか」
まどか「じゃあ、夕飯にしよう。ほむらちゃんはそっち側、座って」
ほむら「あ、そうそう。来る途中でこんなもの、買って来たのだけど……」
まどか「それ…何?シャンパン?」
ほむら「多分まどかが言いたいのはシャンメリーのことね。シャンパンはお酒だから私たちじゃ売ってもらえないわ」
まどか「子供でも飲めるシャンパンみたいなもの、なのかな」
ほむら「そうだと思うわ。……悪いんだけど、コップか何か持ってきてもらえない?」
まどか「うん、わかった。ちょっと待っててね」
まどか「ほむらちゃん、お待たせ」
ほむら「……まどか、このグラスは?」
まどか「ワイングラスだよ。ママが買うだけ買って、結局使わなかったやつ…だと思う」
ほむら「ふふっ。シャンメリーなのに、ワイングラスってだけでそれらしくなるものね」
まどか「だねー。料理だって買って来たのばかりだけど、こうして並べれば豪華なパーティーみたいだし」
ほむら「それじゃ、頂きましょうか」
まどか「ほむらちゃん。メリークリスマス」
ほむら「えぇ。まどか、メリークリスマス」
まどか「あむ…うん、やっぱりお店のフライドチキンはおいしいね」
ほむら「こっちのピザも美味しいわ」
まどか「……ほむらちゃん、今日はありがとう。わたしのために……」
ほむら「まどか?」
まどか「今日、ほむらちゃんがいてくれなかったら…わたしひとりの寂しい夕飯になってたと思うから……」
まどか「だから…ありがとう、ほむらちゃん。わたし、すごく嬉しいよ」
ほむら「……お礼を言われるようなことじゃないわ。それに……」
ほむら「私だって、まどかと一緒でなければひとりで過ごしていただろうから……」
まどか「……こ、この話やめよっか。何だか湿っぽくなっちゃうから」
ほむら「そ、そうね」
ほむら「それにしても、まどかのお父様は本当に料理が上手なのね。このシチュー、とても美味しい」
まどか「ほむらちゃん、料理は……?」
ほむら「あまり得意ではないわね。茹でるとか切る程度のことはできるけど。まどかは?」
まどか「わたしもあんまり。……パパに教えてもらおうかなぁ」
ほむら「いいじゃない。何か作ったときは私にもご馳走してほしいわ」
まどか「そっ、そんなの…いい、けど。でも、そのときはほむらちゃんも一緒だからね」
ほむら「一緒って……」
まどか「ほむらちゃんも一緒に習って、わたしに料理…作ってほしいな」
ほむら「……わかったわ」
まどか「……あれ、ほむらちゃん。チキン食べないの?」
ほむら「食べないわけじゃないけど…久しぶりに食べたピザがやけに美味しくて……」
ほむら「それにほら、どうしても手が油で汚れてしまうから後回しにしようかと」
まどか「そうなんだ。……あ、わたしの分、残しておいてよ?」
ほむら「わかってるわ。ちゃんと取っておくから」
まどか「それならいいけど。……あ、あとさ…ほむらちゃん、手が汚れるって言ってたけど……」
まどか「わ、わたしが…その、食べさせてあげるってのは…どうかな……?」
ほむら「……え?」
まどか「ほ、ほら。わたしはもうチキン食べて汚れちゃってるから。だから……」
ほむら「い、いいの……?」
まどか「う、うん。……ほむらちゃんは…嫌?」
ほむら「……じ、じゃあお願い…できる……?」
まどか「えと…それじゃこの食べやすそうなので……」
まどか「……は、はい、あーん」
ほむら「……あーん」
まどか「……ど、どう?」
ほむら「え、えぇ…お店のものだけあって美味しいわ」
まどか「そ、そっか……」
ほむら(私…今、チキン食べてるはずよね……。味なんてさっぱりわからない……)
まどか(あーもう…やめとけばよかった。ほむらちゃん、何か複雑な表情してるし……)
ほむら(まどかにその気なんてないはずなのに…私が勝手に意識してしまってるせいで目も合わせられない……)
まどか(微妙に視線外されちゃってる……。うぅ、絶対変なことしたって思われてるよ……)
ほむら(とにかく、少し冷静になりましょう……。ひとまず他の料理を……)
まどか(どうしたらいいのかなぁ……。チキン食べながら考え……)
ほむら「……ま、まどか?」
まどか「な、何?」
ほむら「その…今、あなたが食べたチキンって……」
まどか「え?……あ」
まどか(……これ、ほむらちゃんに食べさせてあげたやつ…って、ことは……)
まどか「ごごご、ごめんねほむらちゃん。こ、これほむらちゃんに……」
ほむら「い、いえ、別にいいのよ、気にしなくても……」
まどか「でも、これほむらちゃんの食べかけで……」
ほむら「チキンならまだあるから大丈夫よ。それはまどかが食べて……」
ほむら「……人の食べかけなんて気持ち悪いわよね。もしそうなら、捨てちゃった方が……」
まどか「そ、そんなこと…ないよ。だって、ほむらちゃんの……」
ほむら「……私の?」
まどか「な、何でもないよ。ほら、冷めちゃうから早く食べちゃおう?」
ほむら「えぇ……」
ほむら(……私、まどかと間接キス…しちゃったのよね。まどかは気づいて……)
ほむら(……やめましょう。これ以上、意識しちゃうと…いつも通り振る舞えなくなるから)
――――――
まどか「ごちそうさま……」
ほむら「ごちそうさまでした」
まどか(結局、あれからあんまり話せなくなっちゃったな……)
ほむら「食べ終わった食器はどうしたらいいかしら?」
まどか「あ…全部わたしがやるからそのままでいいよ」
ほむら「でも、そういうわけには……」
まどか「ほむらちゃんはお客さんだから。ほら、テレビでも見ててよ」
ほむら「わ、わかったわ」
まどか「……それじゃ、片付けようかな」
まどか「……はぁ」
まどか(何だろう。やけに緊張しちゃって…いつも通りでいられないよ……)
まどか(たぶん…さっきのあれが原因なんだろうね。ほむらちゃんと…間接キスしちゃって……)
まどか(偶然だったとは言え、女の子同士の映画とかも見ちゃったし……)
まどか(……あぁもう、ダメだ。思いっきりほむらちゃんのこと、意識しちゃってる)
まどか(テレビでも見てて、とか言っちゃったけど…向こうで何してるのか気になっちゃう……)
まどか(……早く洗い物終わらせて、わたしも……)
ほむら「まどか……」
まどか「えっ…ほ、ほむらちゃ……」
ガチャン
まどか「あ……」
ほむら「……だ、大丈夫?」
まどか「う、うん。お皿も割れてないみたいだし。それより、どうしたの?」
ほむら「……やっぱりまどか1人に任せているのは悪い気がして」
まどか「い、いいの。わたしに任せて」
ほむら「そう……?」
まどか「うん。2人分だからすぐ終わると思うし」
ほむら「……なら、終わるまで待ってるわ。ひとりでいても…つまらないもの」
まどか「う…わかった、なるべく急ぐね」
まどか(……いなければいないで気になっちゃうけど、いたらいたで……)
まどか(……とにかく、早く終わらせ……)
まどか「いつ…っ……」
ほむら「まどか、どうしたの?」
まどか「指先…切っちゃった……。お皿、落としたときにどこか欠けちゃったのかも……」
ほむら「とりあえず、洗剤を洗い流して。絆創膏と消毒液はどこかしら?」
まどか「全部まとめてそこの棚に入ってるはずだけど……」
ほむら「……絆創膏はあったけど、消毒液が見当たらないわね」
まどか「そこになければ…わかんない。使い切っちゃったのかも……」
ほむら「そう…困ったわね」
まどか「べ、別に消毒までしなくても……」
ほむら「そういうわけにもいかないわ。どうしたら……」
ほむら「……まどか、切った指…出して」
まどか「う、うん」
ほむら(……これはあくまで治療…応急処置、まどかの為……。やましい気持ちなんて……)
まどか「ほむらちゃん……?」
ほむら「……あむっ」
まどか「……え?」
ほむら「ん、む……」
まどか「……ちょっ、ちょちょちょ、ほむらちゃん!?」
ほむら(どうしよう……。まどかの指…気持ちいい……。柔らかくて、少しだけ鉄の味がして……)
ほむら(もう少し、このまま……)
まどか「ほ、ほむらちゃん!もういいよ、もう十分だから!」
ほむら「っ……。ご、ごめんなさい。私……」
ほむら「……本当にごめんなさい。気持ち悪いこと、してしまって」
まどか「あ、謝らなくてもいいの。……すごくびっくりして…恥ずかしかったけど……」
まどか「でも、消毒液がないから…なんだよね。だったら、わたしはお礼を言うべき…だよね」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「まどかがそう言うのなら…そのお礼は受け取っておくわ」
ほむら「……指、出して。絆創膏貼るから」
まどか「あ…はい、お願いね」
ほむら「……これでよし、と」
まどか「そう言えば…洗い物、まだ終わってなかったんだっけ。早く終わらせないと……」
ほむら「大丈夫…なの……?」
まどか「うん。絆創膏貼ったから平気だよ。ほむらちゃんは先に戻ってて」
ほむら「……わかったわ。また怪我しないように気をつけてね」
まどか「わ、わかってるよ」
ほむら「じゃあ…先に戻るわね」
まどか「うん。……はぁ」
まどか(何だか今日は色々とダメだな……。いつも通りに振る舞ってるはずなのに……)
まどか(……誰もいない家でほむらちゃんと2人きりだから…どこかで緊張しちゃってるのかな……)
まどか(……わからない。わからないけど…チャンスでもある。だけど……)
まどか「……考え事してるとまたやっちゃいそうだから、早く終わらせよう……」
まどか「……これでおしまい、っと」
まどか「ううん…なんだかんだで随分かかっちゃった……。わたしの手際が悪いせいもあるけど」
まどか「それじゃ、わたしも戻ってほむらちゃんと……」
まどか「……っと。そうだ、忘れてた。ケーキ、買ってあるんだった」
まどか「えーと、ケーキに…何か飲み物を……」
まどか「……このオレンジジュースでいいかな。確か結構おいしかった覚えが」
まどか「でもこれ、もう1人分くらいしか…どうしよう……」
まどか「……あ、わたしはこっちの缶ジュースでいいや。グレープジュース…かな」
まどか「えっと、コップは……」
まどか「ほむらちゃん、お待たせ」
ほむら「お疲れさま、まどか。……それは?」
まどか「クリスマスケーキだよ。ホールケーキじゃないけど……」
ほむら「2人しかいないのだから、それで十分よ」
まどか「じゃあ、ケーキと…これ、オレンジジュースね」
ほむら「ありがとう。でも、まどかは違うものみたいだけど……」
まどか「オレンジジュースが1人分しか残ってなくて。わたしは別の缶ジュースなの」
ほむら「いいの?何なら半分ずつ……」
まどか「いいんだよ。わたしはもう飲んだことあるし」
ほむら「じゃあ…遠慮なく頂くわね」
まどか「うん。それじゃ、いただきまーす」
――――――
ほむら「……ごちそうさま。甘くて美味しかったわ」
まどか「えへへ、おいしかったねー」
ほむら「え、えぇ。……あの、まどか?」
まどか「ふぇ?なになに?」
ほむら「い、いえ…何でもないわ。ごめんなさい」
まどか「恥ずかしがらなくてもいいのにー」
ほむら(何だかまどかの様子が変ね。どうしたのかしら……)
ほむら(いつも以上に素直というか、無邪気というか……)
まどか「あ、ほむらちゃん、ジュース飲むー?」
ほむら「え?でも1人分しかないって……」
まどか「いいから。ほら、コップ出してー」
まどか「……あれ?何でもう空っぽなの?まだ1杯しか飲んでないのに」
まどか「もー。誰なの、全部飲んじゃったの。……あ、わたしだった」
ほむら(やっぱりおかしい。自分で1人分しかないって言ってたはずなのに……)
ほむら(それに、顔も少し赤くなって、目もとろーんとしてて…可愛い……)
ほむら(……じゃなくて。もしかして、まどか……)
まどか「うぇひひ、何だか楽しいな。ねー、ほむらちゃーん」
ほむら「まどか…あなたの飲んでるジュース、少し貰えない?」
まどか「んー、いいよー。はい、これ」
ほむら「ありがとう。……あぁ、やっぱり。これ、お酒じゃない……」
ほむら「缶だけ見たらジュースに見えなくもないし…アルコールの匂いもほとんどしないし……」
ほむら「……何にせよ、飲んじゃったものは仕方ないわね」
まどか「ほーむーらーちゃん。なに難しい顔してるのー。ほらー、笑って」
ほむら「ちょ、ちょっと待って。まどか、あなたはジュースと間違えてお酒飲んじゃってるの。酔ってるのよ」
まどか「えー。そんなことー、ないよー。酔ってなんか、いないよー」
ほむら「酔っ払ってる人はみんなそう言うのよ……。とにかく、これはもう飲んじゃ駄目」
まどか「うぇへへ、はーい」
ほむら「まどかが素直で助かるわ。それよりも、どうしたら…水でも飲ませればいいの……?」
まどか「ねぇ、ふぉむらひゃん。お話、しようよー」
ほむら「え、えぇ。ちょっと待ってくれる?」
まどか「ふぉむらひゃんが言うなら、待つよー」
ほむら(呂律が回らなくなってきてるわね……。このまま寝かせた方がいいかしら……)
ほむら(今ならまだ意思疎通もできるし、素直だし。酔いが醒めるまでベッドに……)
ほむら「……ねぇ、まどか」
まどか「なぁにー?」
ほむら「……」
ほむら(これ…聞いてもいいのかしら。今のまどかだったら、まず間違いなく答えてくれると思う……)
ほむら(だけど、こんなの…卑怯よ。前後不覚、べろんべろんでないとしても、酔ってるところを……)
ほむら(……それでも、私は……)
まどか「ふぉむらひゃん、どうひたのー?」
ほむら「……まどかに聞きたいことがあるの。正直に…答えてくれる?」
まどか「うぇへへ、わらしは、いつらってふぉむらひゃんにはひょうじきらよー」
ほむら「……なら、教えて。まどかは私のこと…どう思ってるの?」
まどか「ふぉむらひゃんのことー?もひろん、大好きー」
ほむら(こう聞けばそう返ってくるとは思ってた。この先は…聞いちゃいけないのに……)
ほむら(もう…止められない……)
ほむら「……ありがとう、嬉しいわ。でも…それって、どういう意味での好き、なの……?」
まどか「ろういう意味って、そんなのー……」
ほむら「……まどか?」
まどか「……すぅ」
ほむら「……眠ってしまったみたい、ね」
ほむら(聞いてしまったあとで言うのもおかしいけど…まどかが眠ってくれてよかった……)
ほむら(あのまま、思っていることを聞いてしまっていたら…きっと私は真っ直ぐまどかと向き合えなくなってたから)
ほむら(……そうよね。相手がどう思ってるか、わからないのが普通なのよね。だからこそ…勇気を出して、伝えないといけないのよね)
ほむら(まどか…ごめんなさい。あなたを騙すような真似をして……)
ほむら「……こんなことでお詫びになるかどうか、わからないけど……」
ほむら「ふふっ…目が覚めたら、どんな反応をするかしらね」
――――――
まどか「……ん…ぁ、あれ、わたし……?」
ほむら「まどか、目が覚めた?」
まどか「う、うん。……わたし、寝ちゃってたの?」
ほむら「えぇ。ジュースと間違えてお酒を飲んで、酔ってしまってたのよ」
まどか「……ごめん、全然覚えてない。冷蔵庫から飲み物出したところまでは覚えてるけど……」
ほむら「体は大丈夫かしら?頭が痛いとか、気持ち悪いとか……」
まどか「それは全然大丈夫。ちょっと体が熱いかなー程度だよ」
ほむら「そう……。よかった」
まどか「……ねぇ、ひとつ聞いていい?」
ほむら「えぇ。何?」
まどか「酔っ払ってたときのわたし…何か変なこと、してないよね……?」
ほむら「そうね…少し呂律が回らなくなって、目がとろんとして…まどかには悪いけど、可愛かったわ」
まどか「か、可愛いだなんて……」
ほむら「まだ少し顔が赤く見えるけど…本当に平気?」
まどか「へ、平気だよ。それと、もうひとつ聞きたいんだけど……」
まどか「わたし…何でほむらちゃんに膝枕されてるのかな……?」
ほむら「ふふっ。いいでしょう、たまには」
まどか「いいか悪いかで言えば、いいんだけど…どうして?」
ほむら「……まどかが酔っているときに、少し失礼なことを言ってしまって。そのお詫びよ」
まどか「何を言ったのかはわからないけど…酔っ払いが相手なんだから、気にしなくても……」
ほむら「いくら酔っ払いでも、まどかだもの。お詫びにならないかもしれないけど…受け取って」
まどか「……じゃあ、もう少し…こうしててもいい?」
ほむら「勿論。まどかの気の済むまで……」
まどか「……ほむらちゃん、ごめんね。せっかく来てもらったのに、酔って、寝ちゃって……」
まどか「時間、だいぶムダにさせちゃったし……」
ほむら「無駄なんかじゃないわ。こうして、まどかに膝枕してあげられてるんだから」
まどか「も、もう。お詫びじゃなかったの?これ」
ほむら「……あぁ、そうね。そうだったわね」
まどか「でも…わたしも嬉しい。ふわふわして、気持ちよくて……」
ほむら「……まだアルコールが残ってるのかしら」
まどか「ち、違うよ。ほむらちゃんの膝枕が気持ちいいってことだよ」
ほむら「そうだったの……。まどかに気に入ってもらえたのなら、よかったわ」
まどか「……そろそろ、起きるよ。ほむらちゃん、ありがとう」
ほむら「起きてみて、気持ち悪いとかはないわね?」
まどか「うん、何ともないよ。……きっとママに似てお酒に強いんだよ、わたし」
ほむら「その割には記憶が飛んでたみたいだけど」
まどか「そ、それは……」
ほむら「とにかく、平気ならそれでいいのよ。次からは間違えないように気をつけて」
まどか「うん、わかった」
ほむら「……時間も時間だし、お風呂…入りましょうか」
まどか「じゃあ、入れてくるね」
ほむら「まどかがよかったら、なんだけど…一緒に入らない……?」
まどか「……え?」
ほむら「あ…いや、その…嫌ならいいの、無理しなくても……」
まどか「……せ、せっかくだし、一緒に入ろうかな」
ほむら「いいの……?」
まどか「い、いいよ。ほむらちゃんとなら……」
まどか「……わ、わたしお風呂入れてくるから、支度でもしててよ」
ほむら「え、えぇ……」
――――――
まどか「……」
ほむら「……」
まどか「……な、何だか落ち着かないね」
ほむら「そ、そうね。普段は1人で入ってるせいかしら」
まどか「それはともかくとして…わたしは何でほむらちゃんに後ろから抱きしめられてるのかな……」
ほむら「だ、だって2人で並んで入るには狭いって言ったの、まどかじゃない」
まどか「わ、わたしが言いたかったのは1人が洗って1人が湯船って意味だったんだけど……」
ほむら「そ、そう、だったの……?ごめんなさい、私……」
まどか「あ、謝らなくても……。その、嫌、というわけじゃないし……」
まどか(うぅ、落ち着かない…どころか、すっごいドキドキしちゃってる……)
まどか(後ろから抱きしめられてるせいで、ほむらちゃんが…近いよ……)
ほむら(あぁもう、まどかの言葉を変に取ってしまうなんて…私の馬鹿……)
ほむら(それも、こんなに思いきり密着してしまって…恥ずかしい……)
ほむら(でも、このくらい…しておかないとよね。少しでも…私を見てもらわないと……)
ほむら(……やっぱり、言うべきかしら。こんなチャンス…滅多にないのだから)
ほむら(まどかは私のことをどう思っているかは…わからない。そんな気なんてないのかもしれない)
ほむら(そうだとしても…伝えたい。私の、気持ちを……)
まどか「……ほむらちゃんってば」
ほむら「あ…な、何かしら」
まどか「どうしたの、ぼんやりして」
ほむら「……何でもないの。少し、考え事をしてただけよ」
まどか「考え事?」
ほむら「えぇ。……ねぇ、まどか。私のこと…好き?」
まどか「……うえっ!?ななな、何、聞いて……」
ほむら「どうなの…かしら……?」
まどか「うぅ……。そ、そんなの…す、好きに決まってるよ……」
ほむら「……そう、ありがとう。私もまどかのことは好きよ」
まどか「あ…あぅ……」
ほむら「……先に洗って、あがらせてもらうわね。少し、のぼせてしまったみたい」
ほむら「まどかの部屋に先に行っててもいいかしら?」
まどか「べ、別にいいけど……」
ほむら「ありがとう。……お風呂あがって、髪を乾かしたら…まどかも来てくれる?」
ほむら「伝えたいことと、渡したいものがあるの」
まどか「何だかわからないけど…わかった」
ほむら「……じゃあ、先に洗わせてもらうわ。まどかはゆっくりしてて」
まどか「うん……」
ほむら(……今のまどかの好きを聞いて決めた。私…今日、伝える)
ほむら(友達の好きじゃ、もう…物足りない。まどかの、特別な好きが欲しい……)
ほむら(これを伝えて…どうなるかはわからない。でも、きっと上手くいく)
ほむら(だって…今日はクリスマスイブなのだから……)
ほむら「……ふぅ。それじゃ、先に失礼するわね」
バタン
まどか「ほむらちゃん、どうしたんだろう。のぼせたって言ってたけど……」
まどか「それに、伝えたいことと、渡したいものって何なんだろう……」
まどか「……今日はクリスマスだから…プレゼントと一緒に告白してくれる…なんて……」
まどか「そんなこと…あるわけないよね……。ほむらちゃんにとって、わたしは友達。それ以上は、たぶん…ない」
まどか「……やめよう。自分で言ってて虚しくなってくるし」
まどか「とにかく…ほむらちゃんから何かあるみたいだし…早めにあがろう……」
――――――
まどか「ほむらちゃん、来たよ」
ほむら「……まどか。よく来てくれたわね」
まどか「うん…まぁ、ここわたしの部屋なんだけどね。それよりも……」
ほむら「……わかってるわ。悪いのだけど、向こうを向いて…目を閉じていてもらえる?」
まどか「え?」
ほむら「その…準備があるの。すぐ終わると思うから」
まどか「……わかった。終わったら教えてね」
ほむら「えぇ。ありがとう」
まどか(……何だろう。準備って言ってたけど、一体何を……)
まどか(辛うじて音だけはするけど…布が擦れるような……)
ほむら「……まどか、終わったわ。こっちを向いて」
まどか「ほむらちゃん、準備って……」
ほむら「……私に似合ってるかしら。この…赤いリボンは」
まどか「う、うん。すごく似合ってるけど……」
ほむら「そう……。ありがとう」
まどか「でも…それが準備って、よくわからないよ。ほむらちゃんが…何がしたいのか」
ほむら「……それじゃあ、本題に入るわね。私の伝えたいこと、渡したいもの……」
ほむら「本当は…今日、行動を起こすつもりなんてなかったの。でも……」
ほむら「こんなチャンス、滅多にないし…これ以上引き延ばしても意味がない気がしたから」
ほむら「だから…受け取ってもらいたいの。私からの…クリスマスプレゼントを」
まどか「クリスマス…プレゼント……?でも、ほむらちゃん、何も持って……」
ほむら「当然よ。プレゼントは…私なんだから……」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「だから…クリスマスプレゼントは私自身なの……」
まどか「ま、待って。意味わかんないよ」
ほむら「……私はね…まどか。あなたのことが…好きなの」
ほむら「友達としてじゃなく…恋愛対象として……。私は、あなたに…恋をしてしまったの……」
まどか「……嘘、でしょ?」
ほむら「嘘じゃないわ。……まどかがそう思いたくなるのも、無理はないけど」
ほむら「本来この気持ちは異性に向けられるはずなのに…同性であるあなたに向けてしまったのだから……」
まどか「……いつから、なの?」
ほむら「……わからない。気が付いたときにはもう…まどかを目で追ってしまって、頭はまどかのことでいっぱいになっていたわ」
まどか「どうして…プレゼントがほむらちゃん自身なの……?」
ほむら「大好きなまどかに、私の気持ち…私の全てを受け取ってもらいたいから……」
まどか「それじゃ…その頭と首の赤いリボンって……」
ほむら「プレゼントにはリボンをかけるものでしょう。だから……」
まどか「そう…なんだ……」
ほむら「……まどか。私、あなたが好き。大好き。叶うなら、ずっと一緒にいたいと…思ってるの……」
ほむら「もし、私と付き合ってくれるなら…私からのプレゼント、受け取ってほしい……」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん。わたし…嬉しいよ」
ほむら「えっ……」
まどか「ほむらちゃんからのプレゼント…受け取るよ。だって……」
まどか「わたしも…ほむらちゃんのこと、大好きだから……」
ほむら「嘘……。本当、なの……?」
まどか「……うん。本当だよ」
ほむら「……まどかは私のこと、好き…だったの?」
まどか「少し前からかな。ほむらちゃんのことばかり考えるようになっちゃって……」
まどか「それが恋だと気づいて、恋人になりたいと思って…だから、ほむらちゃんとの距離を近くしたの」
ほむら「もしかして、スキンシップが激しくなった理由って……」
まどか「……ほむらちゃんに少しでも意識してもらうため、だよ」
ほむら「じゃあ…もしかしなくても、私たちって……」
まどか「お互い、片想いだと思ってたみたいだね」
ほむら「そう……。それならこんな真似…しなくてもよかったんじゃない」
まどか「そうかもしれないけど…でも、わたしは嬉しかったよ」
まどか「だって…クリスマスプレゼントが大好きなほむらちゃんだったんだから」
ほむら「まどか……」
まどか「ほむらちゃん、ありがとう。最高のプレゼントだよ」
まどか「だから…ほむらちゃんへのクリスマスプレゼントに、わたしを…もらってくれないかな……?」
ほむら「……当然じゃない。まどかからのプレゼント…確かに受け取ったわ」
まどか「これでわたしたち…恋人になったんだよね?」
ほむら「……えぇ。プレゼントだなんて妙な表現だったけど、私たちは…恋人よ」
まどか「……プレゼントとして受け取ってもらっちゃったから、わたしはもうほむらちゃんだけのわたしだから」
ほむら「私もよ。私は、まどかだけの私」
まどか「……えへへ、最後まで意味わかんないや。ほむらちゃんのせいだよ」
ほむら「ふふっ。そうね、ごめんなさい」
ほむら「……あぁ、そうだ。クリスマスプレゼント、買ってあるんだったわ」
まどか「え?でも……」
ほむら「ほら、今日行動するつもりはなかったってさっき言ったでしょう」
ほむら「そのときはこのプレゼントを渡して、友達として過ごすつもりだったの」
まどか「そうだったんだ……」
ほむら「せっかく買ったのだから…受け取ってもらえないかしら?」
まどか「……うん。ありがとう、ほむらちゃん。開けてもいい?」
ほむら「えぇ、どうぞ」
まどか「ほむらちゃんのプレゼント…何かな……」
まどか「……ほむらちゃん、これって……」
ほむら「その…それを買ったときはまどかが私を好きだなんて思いもしなかったから」
ほむら「だから、それで…少しでも私を意識してくれたら、なんて思って……」
まどか「それで紫のリボンなんだね。リボンがわたしで、紫がほむらちゃんで……」
ほむら「い、言わないで。恥ずかしいから……」
まどか「……あのね、ほむらちゃん。実は…わたしからもクリスマスプレゼントがあるの」
ほむら「まどかも……?」
まどか「気に入ってくれるかどうかわからないけど…受け取ってもらえないかな」
ほむら「……ありがとう。嬉しいわ」
まどか「えへへ……」
ほむら「ふふ、まどかは一体何を贈って……」
まどか「どう…かな……?」
ほむら「まどか…これは……」
まどか「……うん。たぶん、わたしもほむらちゃんと同じ理由でそれを選んだんだと思う」
ほむら「だから…赤いカチューシャなのね……」
まどか「わたしだって…ほむらちゃんが告白してくれるまで、わたしのことを好きだなんて思わなくて……」
まどか「そのプレゼントで気を惹けたらなって……」
ほむら「……私もまどかも似通ったものをプレゼントするなんて、少し笑っちゃうわね」
まどか「お互いのアクセサリーに、お互いのイメージカラーを乗せて贈りあうなんて…ちょっとできすぎだよ」
ほむら「いいじゃない、できすぎだって。今日はクリスマスイブなんだから」
まどか「……そっか。そうだよね」
ほむら「……このアクセサリーをつけるのは、2人きりだけのときにしましょう」
ほむら「あれを身につけた姿は…まどかだけに見せたいから」
まどか「わたしも…そうするよ。ほむらちゃんだけに見てもらいたいし」
ほむら「……そろそろ、休みましょうか。もうすぐ日付も変わるし」
まどか「わたしはもう少しほむらちゃんと一緒に起きていたいんだけど……」
ほむら「遅くまで起きてるような子のところにはサンタは来てくれないわよ?」
まどか「そんなことないよ。それに、サンタさんならもう来てくれたから」
ほむら「え?」
まどか「だって、わたしのサンタさんはほむらちゃんだから」
ほむら「そう…だったわね」
まどか「でも、確かにあんまり夜更かしするのもよくないよね……」
まどか「……それなら、ベッドに入ってお話してようよ。それならいつ眠くなっても大丈夫だし」
ほむら「えぇ、そうしましょうか」
まどか「あ…先にこっち聞くの、忘れてたね。ほむらちゃん、一緒に寝てくれる……?」
ほむら「勿論よ。むしろ私の方からお願いしようと思ってたところだから」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん」
――――――
まどか「……ほむらちゃん、大丈夫?狭くない?」
ほむら「大丈夫よ。まどかこそ、寒くない?」
まどか「ううん、すごくあったかい。ほむらちゃんと一緒だから、かな」
ほむら「なら、いいのだけど…まどかってここまでストレートに気持ちを言う子だったかしら……」
まどか「だって、自分の気持ちは伝えなければ伝わらないでしょ」
ほむら「それはそうだけど……」
まどか「今回のことで、決めたの。わたしの気持ち…嬉しいも楽しいも、全部ほむらちゃんに伝えるんだって」
まどか「ほむらちゃんは、わたしの気持ち…全部受け止めてくれるよね?」
ほむら「当然じゃない。私は…まどかのこと、大好きだもの」
ほむら「まどかも私の全て、受け止めてくれる?」
まどか「もちろんだよ。わたしはほむらちゃんの恋人だもん」
ほむら「……ありがとう。嬉しい」
まどか「ねぇ…ほむらちゃん……」
ほむら「……えぇ。キス、したいのよね……?」
まどか「それは…そうなんだけど……。でも……」
まどか「今日、パパもママも…誰もいないんだよ……?だから、もっと色んなこと……」
ほむら「え、でも……」
まどか「早くても、帰って来るのは25日の夜だから……。いい、よね……?」
ほむら「……何をしてもいいの?」
まどか「……うん。ほむらちゃんだったら…いいよ」
ほむら「そう……。じゃあ、お言葉に甘えて……」
まどか「ほむら…ちゃ、ん…っ……」
まどか「ん…ふ、ぅ……」
ほむら「……っはぁ」
まどか「ほ、ほむらちゃん。急すぎるよ」
ほむら「何をしてもいいと言ったのはまどかの方よ?」
まどか「そ、それは……」
ほむら「まどかが私を求めてくれているのは嬉しいけど…急ぐことはないわ」
ほむら「私たちはもう…恋人だから」
まどか「……ごめんね。わたし、気持ちが先走ってたのかも」
まどか「ほむらちゃんと…一緒になれたから……」
まどか「でも…いつか、キスの先のことも…してくれるよね……?」
ほむら「……えぇ」
まどか「じゃあ…今日はこれで寝よっか」
ほむら「……まどか、もっとこっちに来て」
まどか「え、うん。いいけど、何を……」
ほむら「キスの先は…今はしてあげられないけど……」ギュウ
ほむら「まどかを抱きしめてあげることはできるわ」
まどか「あ…ほむらちゃ……」
ほむら「まどかと…そういうことをしたくないわけじゃないけど……」
ほむら「今は、まどかを思いきり抱きしめていたい……」
まどか「……わたしも、今はこれで十分…幸せだよ」
ほむら「このまま…寝ちゃいましょうか」
まどか「そうしちゃおっか。……おやすみ、ほむらちゃん」
ほむら「おやすみなさい、まどか……」
――――――
ほむら「……ん、朝……」
ほむら「……?私、何を抱いて……」
まどか「すぅ……」
ほむら「……そうだった、わね。昨日はまどかを抱きしめたまま……」
ほむら(目が覚めて、すぐ目の前にまどかがいて……)
ほむら(今年は…最高のクリスマスになったわね)
まどか「んぅ…んー……。ほむら、ちゃん……」
ほむら「まどか……。目が覚めた?」
まどか「……ふぅ。おはよう、ほむらちゃん」
ほむら「えぇ。おはよう」
まどか「ほむらちゃん、あれからずっとわたしのこと……?」
ほむら「だと思うわ。朝起きてもまだ抱きしめていたから」
まどか「ほむらちゃん、そんなにわたしが気に入っちゃったんだ」
ほむら「ふふっ。かもしれないわね」
まどか「今年のクリスマスは…今までで1番、最高のクリスマスだよ」
ほむら「そうなの?」
まどか「もちろん家族と過ごした今までのクリスマスもよかったけど……」
まどか「今年は…ほむらちゃんと恋人になれたんだもん」
まどか「朝起きて、ほむらちゃんに抱きしめられていて…どんなプレゼントをもらうよりも、嬉しい」
ほむら「私だって…まさかまどかを抱きしめて、愛してあげられるなんて思いもしなかった」
ほむら「今年のクリスマスは…本当に素敵なものだったわ」
まどか「わたしにとっても、ほむらちゃんにとっても…忘れられない素敵な思い出になったよね」
ほむら「そうね……。きっと一生忘れられない日になったわ」
まどか「うん……。そうだよね」
ほむら「……」
まどか「……ほむらちゃん。メリークリスマス」
ほむら「メリークリスマス、まどか……」
Fin
これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
今年はこれでおしまいです。年越し作品は案出なかった…
・次回予告
まどか「デレデレさせたい」
ほむら「まどかと私」(仮)
ほむら「私の道しるべ」(仮)
叛逆後を鋭意製作中。書いててわけわかんなくなってる
本年はありがとうございました。来年もよろしくお願いします
このSSまとめへのコメント
まどか、サンタさんはほむらちゃんじゃなくてさやかちゃんなんじゃ
二人で静かにゆっくりとしたときを過ごすっていいですね
百合やほむまどあられもまどほむ読んでも読んでもまだ読み足りぬ
ゴミゴミアンドゴミ
これ書いた奴良く生きていられるな
すべてがゴミ