さやか「絶望?飲み干してやるよ」 (165)
ほむら「あなたは自分の人生が尊いと思う?」
私の親友に対してそいつはそう質問したらしい。
もっともその事は親友である鹿目まどかから聞いたものだけれど。
謎の転校生、暁美ほむら。
まぁ実際は他の人が囃し立てているだけで謎でもなんでもない。
見た目や性格は何処にでもいるただの地味目の女の子だ。
さやか「で、顔見知りなの?」
まどか「ううん、会ったことないよ」
きょとんとした顔で親友は言う。
それがまどかの可愛いところでもある。
私にも少しくらいこの可愛さがあってもいいのに。
不平等だよねぇ神様は。
ま、平民は平民らしく、農家の子供は農家ですってね。
さやか「あはは、なにそれ」
なーんか、違和感。
変な違和感なんだよな。
今までの私がずっと感じてる。
私が私じゃない感じ。
私は私を第三者目線で見ている。
笑う私も私なんだけれど、それを遠くから冷めた目で眺めている私もいる。
そんな感じ。
中二病かな。
いや、思春期か。
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そんな冷めた私にも
大事なものか三つだけあったりする。
ひとつは自分。
自分を信じなきゃこの冷めた世界がもっとつまらなくなる。
ひとつは音楽。
音楽はいい。心が満たされる。
ひとつは絆。
言わずもがな、まどかや仁美やその他。
この三つだけは何が何でも失うわけには行かない。
じゃないと私が私でなくなるから。
どうしてかな?
こんな冷めた自分は嫌だって心が叫んでるのに
その自分すらを観測する自分がいる。
変な感じ。
冷めてるくせに大事なものがあるなんて。
矛盾。
矛盾もいいところ。
笑っちゃうくらい笑えない。
さやか「帰りにCD屋よってもいい?」
まどか「いいよ」
ほとんどいつもの日課。
CD屋に寄ってクラシックのCDを買う。
それを幼馴染みである上条恭介に届けるのだ。
なんで届けるかって?
思春期の女の子がそこまでする理由なんてほかにある?
そういうこと。
好きなんだよ。
自分では言えないくらいに
自分で自覚しすぎてる。
上条恭介が大好き。
まどかや仁美、家族が大切。
それだけは遠くから見つめることができない。
観測できない。
それだけが私にとって唯一の救いってやつなのかも。
まどか「また上条くん?」
さやか「あはは、まあね」
この二つを観測してしまったら
この二つを遠くから見つめたら
この二つに冷めてしまったら
さやか「生きてる意味なんてないよね」
まどか「えっ?」
嫌だなぁ、この違和感。
「助けて」
クラシックのCDを試し聞きしていた私はその声を聞いた。
といってもどうやらまどかに助けを求めていたようだけれど。
だけれど私にも聞こえていた。
声の主。
それは小さな小さな獣だった。
ただし言葉を使う。
ほむら「そいつから離れて」
声の方向へ向くとそこには転校生がいた。
何故か少し悲しそうな目をして
だけれど拳を強く握って
まっすぐと私たちを見据えてきた。
そんな目で見るなよ。
嫌になっちゃうだろ。
なんの目的もない私がダメだと言われてるようなもんじゃん。
まどか「でもこの子、怪我してる…!」
確かに怪我をしている。
だけど悲しいかな、私はその獣が死のうと心からどうでもいい。
ただ一つ言えることは。
ほむら「…そう」
こいつはやばい。
私の命が。
まどかが。
最悪な想像。
転校したての女子生徒がそんなことをする筈がない。
そう頭ではわかっていても。
心が拒絶する。
心が最悪なイメージを作り上げる。
まるで頭から蛇に丸呑みにされるような。
そんなイメージ。
さやか「逃げるよ!まどか!」
私は走り出す。
可能な限り踵を返しそこそこ自慢である足の早さを生かして走り出す。
さやか「追ってきてる…」
走りながら息も絶えだえ、私は事実を述べる。
早いなんてものじゃない。
一つ一つの動きがもはや人間のレベルではない。
倒れている荷物を踏み台にして。
複雑な地形を利用して。
少しずつ確実に距離を狭めてくる。
あぁ。
なんだこれ。
違和感が消えた。
生まれた時から
物心ついた時から感じていた「観測者」としての私が確かに眠っていた。
楽しい?
分からない。
防衛反応?
分からない。
恐怖?
分からない。
分からないけれど
「観測者」としての自分が消えたことに嬉しさを隠せなかった。
そうだ、私はー
考えをまとめる前に私は急に立ち止まる。
さやか「何だこれ…」
目の前に現れたのは不気味と言ってもいい足りないような風景。
青は黒く濁り、黄色は緑に明滅し、赤は白く反転する。
言葉にはとても形容できないような風景が目の前に現れたのだ。
まどか「…ど、どこ?ここ…」
私の大切なまどかが怯える。
そうだ。
今は「観測者」なんてどうでもいい。
取り敢えず優先すべきは私の身と
まどかを守ること。
さやか「私から離れないで!まどか!」
無理だとは分かっていても
無駄だとはわかっていても
私は取り敢えずあの転校生をぶっ叩く為に拾っていた材木を構える。
差し違えても私の世界を守ってやる。
そうして死んでも本望なんだ。
私にはもう三つしかないんだから。
そう決意する。
少しだけ、私は遠目から私を見た。
マミ「もう大丈夫、安心して」
今まさに材木を振り下ろそうとしたその最中。
声を聞いた。
高すぎず低すぎず、とても通る綺麗な声。
黄色い髪の毛と、後ろで結んだ二つの巻いてある髪の毛が印象的な女の人。
見た感じは年上だろうか。
暁美ほむらと同格、もしくはそれを上回るくらい美人だった。
マミ「ちょっとひと仕事、片付けちゃっていいかしら」
バシュン、と派手な音を立ててその女の人は変身する。
文字通り変身。
服装が変わり見た目が変わる。
何より目が行くのは武器であろう銃だった。
なんと呼ぶのかはしらないが
ずいぶん古風な銃。
全く状況が飲み込めないがこれだけは分かった。
危機は脱した。
もう安心だ。
後ろでほっとため息をつくまどかに笑顔を返して
私は笑った。
そして気付く。
この状況を遠くから眺めている自分が
「観測者」の目が覚めたという事に。
マミ「ありがとう、その子は私の大事なお友達なの」
巴マミと名乗った先輩は魔法とやらで白い生き物を直しつつそう言った。
魔法。
そんなものがこの世にあるとは思えない。
生まれてから今までの間そんなものの存在の可能性など考えもしなかった。
だけどある。
確かに存在している。
QB「ありがとう、鹿目まどか、美樹さやか」
私は元気になった白い生き物、QBに名前を呼ばれそっちを向いた。
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
膝が砕けそうになる。
唇が震える。
頭に衝撃がこだまする。
こんな非日常有り得ない。
有り得ないほど刺激的で
そして求めていた。
QBと名乗る白い生き物に勧誘されたまさにその時
「観測者」は驚くほど静かに
だけれど確かに少しだけ近づいて来た。
魔法少女。
巴マミという先輩から教えてもらったこの世の真実の一つ。
魔女という絶望を振りまく存在から人を守るために戦う。
奇跡を願った少女達。
希望を振りまく魔女とは対になる存在。
聞こえはいいが用は奇跡を叶えるから命をかけて戦えと言っているのだ。
とんでもない。
よくよく考えてみると成り立っていすらしない。
ふざけている。
馬鹿げている。
さやか(足りない)
そう。
例えそれが一般人にとっては向こう見ずで愚かな選択であったとしても。
私には、足りない。
圧倒的に足りない。
もっともっともっともっと。
絶望を超えて希望を上回る。
そんな事実が。
もっともっと。
欲しい。
まどか「どうしたの?さやかちゃん」
不意に名前を呼ばれて私は振り向く。
さやか「んーん、どうもしないよ?」
笑顔で返す。
マミ「魔法少女についてはこれくらいね」
さやか「…」
叶えたい願い事とか。
私には良く分からない。
平和ボケしすぎた毎日に。
平和バカな私に。
終止符を打つ。
それさえ叶えば。
マミ「よく考えてみるといいわ、貴方達にはどんな願いもかなうチャンスがあるけれど」
どんな願いも。
私にとってはどんな願い事も関係ないのだ。
つまらない日常に終止符が打てたら。
それがどんなに過ぎた願いか。
それがどれほど愚かな選択か。
それがなにより贅沢な悩みか。
頭では分かってる。
分かっていても。
マミ「それと引き換えに命をかけて戦うことを強いられる」
ー上等。
願ってもない。
願っても叶わない。
そう思っていた。
だからこそ。
このチャンスを無駄にできない。
無駄にしてはいけない。
さやか「…」
誰にも見られないように顔を伏せる。
自分の顔を見られないように。
何がおかしいのか自分でもわからないけれど。
込み上げてくる笑いを悟られないように。
さやか「…あは」
「観測者」は私に近づく。
いつも遠目から眺めているくせに。
足音もなく、派手な音楽だけを響かせながら。
少しずつ私に近づいてくる。
もう少しだよ。
おいで。
「観測者」は確かに笑った。
結局その日は契約もせずに家に帰ることになった。
私はいずれは絶対にするけれどまどかはわからない。
もともと争いが嫌いなコだったから。
さやか「魔法少女、かぁ」
さやか「あははっ」
明日の遠足が待ちきれない小学生のような。
そんな気分。
QB「…君は魔法少女そのものに憧れているのかい?」
声をかけられる。
どこから入ったか分からないが私の部屋には先客がいた。
白い契約者。
QB。
さやか「そのものってわけじゃあないよ」
そういいつつも笑顔が剥がれない。
QB「…君は不思議だね」
QB「大抵の子は二つ返事といえど」
QB「君ほど安易な子も居ないよ」
そりゃそうだよ。
私は求めてるものが違うんだから。
私自身何が欲しいのかわからない。
だけれど魔法少女になれれば。
きっと見つかる。
そんな予感がするんだ。
さやか「私、なりたいって言ったっけ?」
QB「…君たち人類との付き合いは長いからね、表情を見ればおおよそ予想はつくよ」
なるほど。
厄介だね。
QB「そのものじゃ無いなら君はどうして魔法少女を望むんだい?」
さやか「自分が嫌なのよ」
自分が嫌。
どんな出来事でも遠くで眺めてしまう自分が。
どんな事態でも冷めてしまう自分が。
その違和感を無くすために。
「観測者」すら観測するために。
さやか「私は魔法少女にならないといけないんだ」
ケタケタと笑い声が漏れる。
おかしくてたまらない。
こんな身近にあったんだ。
QB「そうかい、君はーーー」
言葉を区切りQBは
QB「ーーー壊れているんだね」
そう言ったのだった。
マミ「それじゃあ、魔法少女体験ツアー、行ってみましょ」
あれから数日が立ちマミさんとの関係も深まった。
取り敢えず魔法少女の体験ツアーということで落ち着いた。
それはつまり生身の体のままであの化け物たちの巣へ入るということ。
居るだけでおぞましいあそこへ。
再び。
生身の体で。
さやか「…なんなんだよ、もう」
こんなの、あんまりじゃないか。
選択肢がない。
私に目的は存在しない。
目的を探すこと、それこそが目的。
「観測者」を観測できさえすれば
わかる気がする。
あんまりだ。
あんまりにも、出来すぎている。
さやか「…ふふ、あはは」
マミ「…美樹さん…?」
さやか「え?どうしました?」
私はすぐに笑顔を消す。
悟られてはいけないから。
さやか「そうだ、私、こんなもの持ってきたんです」
家から持ち出したそれを机の上に出す。
マミさんがいるとはいえ危険なものは危険なのだ。
少しでも用心するに越したことはない。
まどか「…さやかちゃんっ…!」
マミ「心構えは十分だけれど」
マミ「こんなところで出すのは感心しないわ」
刃物。
私にぴったりな気がする。
普段肉屋野菜しか切らないんだから。
たまには他の物も。
さやか「…あはは、ごめんなさい」
斬らせてあげる。
ペースめちゃめちゃ遅くなるけど頑張ります
見てくれてありがとう
マミ「ここね」
結界の入口に到達する。
私は持ってきた包丁を構えゆっくりと辺りを見回した。
うん、何もいない。
マミ「油断しないでね」
私の心を読み取ったようにマミさんはそう忠告する。
油断か。
魔女や使い魔と対面した経験なんてほとんどないのに私は何故か油断している。
いや、これは余裕なのかも。
まどか「…マミさん!あれ!」
まどかが指をさす方向を見る。
そこには今まさに廃ビルから飛び降りようとする女の人の姿があった。
さやか「…なんてことを」
マミ「大丈夫」
マミさんがそういった直後。
弾けるように女の人は飛び降りる。
まどか「…っ!」
見たくない、というふうにまどかは顔を背けた。
さやか「…」
私は凝視する。
どんな人生を送ってきたか分からないけれど。
その人の一生。
その最後を見届けるために。
例えその人がもう物言わぬ肉塊になったとしても私はけして目をそらさない。
潰れてしまえ。
私に絶望を見せてみろ。
恐怖を見せてみろよ。
その願いも虚しく。
マミさんはリボンの魔法とやらでその人を抱きとめた。
マミ「…見て」
女の人の首筋には不気味な模様が描かれていた。
マミ「…魔女の口づけよ」
魔女の口づけ。
どうやらこれがこの人を自殺に追いやった原因らしい。
さやか「…よかった」
よかった。
本当に良かった。
魔女の口づけはこうして目に見える。
魔女の呪いはこうして現実に現れる。
私には魔女の呪いはかかっていない。
「観測者」はまた観測し始める。
慌てなさんな。
お前は確かに私の意志なんだ。
私の意志は魔女なんかに当てられちゃあ居ないよ。
遠目から私たちを観測するそいつにそう言い放つ。
よかった。
これは私の意志なんだ。
マミ「…行くわよ!」
呪いも絶望も希望も祈りも。
それら全てをまるで神のような立ち位置で観測する。
私の中の「観測者」
私の世界を遠目から観測するもう一人の「私」。
待ってなよ。
後少しで。
あんたは本物に。
私になれるから。
入るとそこはこの前の結界によく似ていた。
色が混ざり合い不気味な色彩を生み出す。
何でできているか、何が何なのか分からないそこで私は包丁を構える。
マミ「…気休めにしかならないけれど」
マミさんが私の包丁に触れた途端それは一本の剣へと姿を変えた。
さらにしっくりくる。
まどか「凄い…」
それを左右上下に振り回し、私は確かめる。
さやか「うん、確かにこれなら」
殺れそうだ。
使い魔を。
あわよくば魔女を。
さらにいえば私自身の心を。
壊せそう。
マミ「来るわ…!」
あぁ、始まる。
私の非日常。
「観測者」を観測するために。
そしてそれを通して目的を見つけるために。
空っぽな私を何かで埋めるために。
さやか「始まるよ」
それは私だけの物語。
私の中で鳴り続ける無音の音楽。
そして。
「観測者」に対する。
「私」に対する、私の観測が始まる。
さやか「プロローグが」
ぶん、と剣を振り回す。
無音の音楽に空を割く音が加わる。
待ってて。
いつか、豪華な合唱団にしてあげる。
お前の好きなように私を使わせてあげる。
だから。
もう少しだけ。
さやか「待ってて」
何も言わない「私」はただ静かに。
派手で美しい音楽を奏でながら。
静かに笑った。
取り敢えずここまで
まったり更新していきます
面白いこと書いてるだろドヤあって顔してこういう文章書いてるんだと思うと読む気失くなる。
さやか「…」
縦。
使い魔「ぎっ!」
横。
使い魔「ぎゃっ!」
私が描くその筋に沿って化物たちは一匹、また一匹と絶命していく。
命というものを持っているのかどうかはわからないけど。
まどか「…さやかちゃん、凄い…」
さやか「あはは、初めてにしては上出来でしょ?」
初めてにしては。
確かに私の口からはその言葉が出た。
初めて。
本当に?
予想以上にしっくりくるこの感じ。
まるで今までの私は立つことすら覚えてなかったかのような。
それ程までにこの動作は当たり前のように感じた。
QB「上出来なんてものじゃないよ、さやか」
QB「君はまだ魔法少女ですらないんだよ?」
さやか「知ってるよ」
縦橫斜め突き。
どの動きも私の考えている以上に私に当てはまる。
これは私の素質なのか。
それとも。
「私」の素質なのか。
答えは出ない。
「観測者」は答えない。
マミ「…どうやら結界の主のようね」
マミさんが目を向けた先にいたのは他の使い魔より一回り大きい使い魔だった。
マミ「…一気に決めるわよ」
その直後、轟音が響く。
マミさんが沢山の銃でその使い魔を一斉射撃したのだ。
マミ「ふぅ…」
響く。
嬉しそうに「私」は笑う。
いずれお前の物になる。
この力はお前の物になる。
慌てるな。
その時は。
全てお前に委ねて
私のすべてをお前にあげる。
>>33
大丈夫です
ドヤ顔してませんよ
気に触ったならすいません
マミ「美樹さんは武術の心得があるの?」
的外れなことを聞かれた。
私は別に武術の心得もないし特別な技能を持ってるわけでもない。
さやか「いや、持ってないっすよ」
マミ「そう、それにしても手馴れた感じだったわね」
手馴れてるのは私じゃないけれど。
まどか「今の使い魔はグリーフシードを落とさなかったんですか?」
まどかがマミさんにそう言った。
私も少し気になっていたのだ。
使い魔と呼ばれる魔女の分身。
彼らを狩ることは魔法少女にとって有益なものなのか。
マミ「ふふ、説明不足だったわね、使い魔はグリーフシードを落とさないのよ」
まどか「えっ?」
マミ「でもね、たとえ落とさなかったとしても狩らない理由なんて無いのよ」
マミ「使い魔も人に危害を加えるから」
そう付け加えてマミさんはふいと後ろを向いた。
それは目を背けたようにも見えた気がした。
マミ「それに使い魔は成長するとより強力な魔女になる」
マミ「尚更放っておくわけには行かないの」
使い魔は魔女へと成長する。
つまり使い魔も最終的にグリーフシードを生むことがあるということ。
マミ「…現実は、違うけれどね」
マミ「使い魔が人を殺して成長するのを待つ魔法少女が居る」
マミ「…」
マミ「悲しいことよね」
魔女。
魔法少女。
使い魔。
成程。
使い魔が魔女へと成長するまで放っておく魔法少女も存在する。
もしそんなものが存在するならば。
それはきっと。
それは。
さやか「そんな奴、魔女と変わりないですね」
魔女よりも、魔女なんだろう。
そんなこんなで魔法少女体験ツアーから数日がたったある日。
私とまどかは屋上で弁当を食べていた。
まどか「さやかちゃん、願い事考えた?」
さやか「んーん、まだ」
こんなに恵まれていいのだろうか。
私の願いは叶うのに。
私はさらに願ってもいいのだろうか。
そんなことを考えているうちに声が聞こえてきた。
聞き慣れない声。
それもそうだ。
その声の主とはほとんど関わりがないのだから。
ほむら「魔法少女になってはダメよ」
暁美ほむら。
マミさんとは別の魔法少女。
QBを殺そうとした転校生。
そしてQBが言うところのイレギュラー。
さやか「どうして?」
ほむら「危険だからよ」
危険。
きっと魔法少女になるということは相当の覚悟が必要なんだろう。
さやか「…」
笑いを殺し損ねる。
それは一瞬の隙だったけれど、転校生は感づいていたようだ。
ほむら「…美樹さやか」
ほむら「…いえ」
ほむら「あなたは誰なの?」
…。
さやか「ご挨拶だね、転校生」
私は美樹さやか。
「私」は美樹さやか。
さやか「私は美樹さやかだよ」
さやか「今も昔も、ね」
マミ「それじゃあ今日も行くわよ」
魔法少女体験ツアー第二弾。
と言ってもこの前と大差なく。
ただソウルジェムを頼りに地道に魔力の反応を追うだけだったり。
さやか「使い魔ですか?」
私はマミさんにそう聞いた。
使い魔であろうと魔女であろうとマミさんは立ち向かうだろうけど。
マミ「分からないわ、それよりも美樹さん」
さやか「え?」
唐突に呼ばれて少し怯む。
別に怒っているわけではなさそうだ。
マミ「あまり無茶はしないでね」
笑顔。
やめて欲しい。
私にそんな笑顔を向けないで。
戻りたくないから。
覚悟を決める必要すらないくらいにもう私の心は決まってる。
だけど。
そんな笑顔を見てしまったら。
「 」
さやか「…へぇ、喋れるんだ、あんた」
マミ「え?」
初めて聞いた「私」の声を頭の中でゆっくりと反芻する。
似てるね。
不気味なくらい誰かさんに似てる。
分かってるよ。
私は魔法少女になる。
それが私の願いだから。
さやか「何でもないですよ、無茶なんてしません、さ、行きましょう!」
マミ「え、えぇ」
少しだけたじろぐマミさんを背に私はつかつかと遊歩道を進む。
「 ?」
黙ってろ。
私の言うことを聞け。
あんたは「私」だ。
あんたの望みは私の望みだ。
そこにいた魔女は魔女と呼ぶにはあまりにも小さく。
そして弱々しかった。
薄紅色のぬいぐるみ、というのがはじめの印象だ。
さやか「これが、魔女?」
もちろん童話のような老婆の姿をしていたり。
はたまた漫画のような美人なお姉さんのようだったり。
そんなことは考えてなかったけれど。
だからといって目の前のそれはあまりにも不釣り合いだった。
さやか「…」
魔女がどんなものかは知らないけれど。
だけど、私は思う。
いくら不釣り合いで、いくら有り得なくて、いくら不可思議でも。
こいつは魔女だ。
絶望の化身。
誰にでもある黒い感情の塊。
さやか「それが、あんたなんだね」
目の前の魔女に向かってそう言い放つ。
だけれど返事はない。
マミ「…即効で片付けさせて、もらうわよ!!」
言った直後、マミさんは引きずりおろした魔女を銃でぶっ叩いた。
そのままリボンで拘束。
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
いつか聞いた轟音が響く。
あぁ、これはきっと祝砲なんだろう。
私が志すことを祝ってくれてるのだろう。
?「…」
名も知らぬ魔女は為すがまま、為されるがままだった。
絶望の化身。
その終わり方はあまりにもあっさりしていた。
マミ「…え?」
あっさりと。
あっさり。
魔法少女の先輩の一生は幕を閉じた。
マミさんは頭を食いちぎられて。
あっさりと死んだのだった。
QB「まどかっ!さやかっ!早く契約するんだ!」
QBが叫ぶ。
その声は耳に届く。
だけど。
さやか「マミ…さん」
こうもあっさり終わるのだ。
魔法少女の一生は。
魔法少女の人生は。
化物に殺されて終わるのだ。
まどか「…うっ…え…」
マミさんだったものを見てまどかが嘔吐しかける。
QB「いくら君でもあの大きさには勝てないよ!さやか!!」
恐怖。
絶望。
足がすくむ。
手が震える。
目が見開く。
声が掠れる。
「 ?」
さやか「…そうだよ」
「 」
さやか「私は…」
「 」
さやか「こんな絶望が」
?「ぎいいいいいいいいい!!!」
魔女が吠える。
何かに訴えるように。
何もかも忘れてしまうくらい。
吠える。
さやか「欲しかった」
QB「君の願いは…!」
どうでもいい。
私の願いは魔法少女になることそのもの。
それこそが私の願い。
だったら。
あまりの願いくらい。
大好きな親友のために使ってやる。
さやか「マミさんを返せ!」
胸がしめつけられる。
私の心、魂、記憶、願い、その全てがQBの元に集まる。
青い光が強まっていく。
そして。
さやか『はじめまして』
今度ははっきりと。
「私」の声を私は聞いたのだった。
私が爆ぜる。
私が溶ける。
私が混ざる。
私がーーー。
『私達』が爆ぜ合う。
『私達』が溶け合う。
『私達』が混ざり合う。
さやか『どんな気分?』
昔から感じていた違和感が消えていく。
神の視点を持つ「私」が。
確かに私になっていく。
さやか「…く、あ、あは」
込み上げてくる笑いが抑えきれない。
私は確かに手に入れた。
お前を手に入れた。
さやか「いつもいつも冷めた目で見てくる」
さやか「大嫌いなあんたが」
私になっていく。
さやか「あはははははっ!!!」
絶望でも希望でも何でもいい。
この現実だけは。
私が私であるという確かな実感は。
何を引き換えにしても、惜しくない。
さやか『…嘘つき』
横に薙ぐ。
その動きだけで衝撃波が生まれる。
私の祈りの形が飛んでいく。
さやか「あっはははははは!!」
?「…ぎ、いいい…」
消えろ消えろ消えろ。
邪魔なんだよ。
一刻も早く確かめたい。
私の世界を確かめたい。
だから。
さやか「消えろ!」
一閃。
さやか「最高の気分だよ」
さやか『…ごめん』
訳のわからない「私」の言葉。
その意味も知らないまま。
私は私の中に生まれた最高の音楽を。
何度も繰り返し聴いていた。
ほむら「…どういうこと?」
こんな世界はありえない。
いえ。
ありえないはずだった。
QB「…何が言いたいんだい?」
白々しい。
仮説は立てられてもとりあえず分からないふりをするというコイツのスタンスが私は大嫌いだ。
ほむら「…美樹さやかにあの魔女を倒すような力はまだないはずよ」
QB「そうだね」
だったら。
どうして。
そもそもあれは美樹さやかなのかどうなのかも分からない。
確かにあの子は最後は絶望でその人生を終わらす。
絶望を伴ってその一生を終える。
そんな世界が多かった。
だけど、今のあの子は。
ほむら「…あそこまで」
QB「…これは仮説だけどね」
QB「彼女の魔力は少し変なんだ」
ほむら「変?」
これまでの時間移動で彼女の変なところと言ったらせいぜい普段の性格くらいだ。
QB「僅かだけれど別な魔力、それも強力な魔力を感じるよ」
ほむら「…」
どうしてかはわからない。
だけど私は。
あの子のことを美樹さやかだとは思えなかった。
ほむら「…もっと、不器用な子だったはずよ」
不器用。
不器用なあなたの優しさを何度私は見たことか。
QB「…彼女の人となりはあんな物だよ」
QB「むしろ彼女に問題はない、彼女がああなった原因が他にあるかもね」
ほむら「…どちらでもいいわ」
私の邪魔をするのなら殺す。
目の前に立ちはだかるのなら殺す。
容赦なく殺す。
ほむら「…きっと助けるから、まどか」
QB「…」
何度目かわからないその決心を固め。
私はその結界を後にしたのだった。
生まれた時から感じていた。
私が笑うと。
私が泣くと。
私が怒ると。
それを遠くから眺めてくるもう一人の「私」がいるということに。
私はそれが気に入らなかった。
あんたも私の癖に。
どうして私の事を見ているの?
生意気だ。
気持ち悪い。
いつか引きずり降ろしてやる。
方法はわからないけれど。
いつかきっと私と同じ位置まで。
いや。
「私」と同じ位置まで。
登り詰めてやる。
さやか『…ほんと、あんたって馬鹿』
さやか『私なんかになっても得なんかしないのに』
さやか「あは、何言ってんのよ」
訳のわからないことを言う。
さやか「こんなにも心地いいのに」
私が誰にも見られてないということはこうも嬉しいことだったのか。
さやか『…私のせいで、そうなったの?』
さやか「そうだよ、あんたのおかげだよ」
さやか『…』
さやか『…あんたは本当はそんな奴じゃ…』
剣を投げる。
投げつける。
喉元を狙って。
さやか「あんたが評価するな」
さやか「私は私、美樹さやかだ」
さやか「これこそが、私なんだよ!」
さやか「あはっ!!あっはははははは!!」
さやか「あっはははははは!!」
さやか『…ごめん』
鳴らせ。
もっと爆音を。
もっと轟音を。
もっと騒音を。
もっともっと!
さぁ、私の音楽はもっと大きくなる。
何もかも飲み込んで。
何もかも飲み干して。
そうして世界が終わったとしても。
私の世界が壊れたとしても。
さやか「私は充分に、幸せだ」
マミ「…ん…こ、ここは…」
まどか「マミさんっ!」
がばっとマミさんにまどかが抱きつく。
かなり勢い良く。
マミ「…あれ?私は…」
そしてあの時のことを思い出し、マミさんは目を伏せる。
その手はかすかに震えていた。
マミ「…美樹さん…あなたが」
さやか「あはは、マミさんが生きてて良かったです」
さやか『…』
よう。
あんた、随分大人しいね。
見下さないの?
神のような視点から見ないんだ?
さやか『…私はそんなつもりじゃなかった』
見れないもんね。
今や私はあんたと同じ位置にいる。
あんたは私の同じ位置にいる。
どう?
目線が同じ気分は、さ。
さやか『…嘘つきだね』
またそれか。
マミ「ごめんなさい…一度のチャンスを…たった一度の奇跡を…」
マミさんの瞳から涙が溢れる。
透明のそれはまるでスローモーションのように落ちていく。
さやか「…いいんですよ」
さやか「私の願いはかなったんで」
ね?
さやか『…』
さやか「じゃ、マミさんは安静にしててくださいね」
そう言って私は家を出る。
魔法少女になったのだ。
マミさんの意志に習いパトロールに行く。
さやか「…んー、どうもなれないなぁ」
マミさんは簡単そうにソウルジェムをレーダー替わりにしていたが私はまだ魔法少女になって一日も経っていない。
それこそ三時間ほど前だ。
さやか「ま、歩くうちに慣れるでしょ」
あぁ、気分が軽い。
こんな気持ち生まれて初めてかもしれない。
…。
そうだ、私は魔法少女。
希望を振りまく、絶望を打ち砕く存在。
…。
さやか「…はは、は」
さやか『…どうしたの?』
どうもしないよ。
ただ今までの目的が達成された。
次の目的を探すだけ。
そう、それだけ。
さやか「…ん?」
ソウルジェムが僅かに点滅する。
かすかだが明らかに使い魔の反応だった。
さやか「こっちだ!」
とりあえず考えるのはやめた。
まずは正義の味方らしく。
マミさんらしくこの街を守るんだ。
さやか『…気付けよ』
さやか『…私はあんたじゃない』
さやか『「私」は私じゃないんだよ』
使い魔「きいいい!」
さやか「たぁぁぁ!!」
縦に削く。
その一撃で数匹の使い魔が絶命する。
これだ。
この緊張感も。
確かに私が生きているという実感をくれる。
あぁ、生きてる。
?「…おいおい、お前何してんの?」
不意に声をかけられて私はその声の方を振り向く。
目に付いたのは赤。
全身真紅に包まれた赤い少女だった。
?「卵を産む前の鶏を締めてどうすんのさ」
言うや否や彼女は持っていた巨大な槍で。
さやか「ぐぶっ…!」
私のお腹を貫いた。
鮮血と体液が交じり合い私の真後ろに飛んで行く。
何かの臓器のようなものが地面に散らばる。
?「あれ?よけれると思ったんだけど?」
?「そんなひよっこじゃどっちにせよすぐ死んじまうか」
この傷。
これは。
この感覚は。
さやか『…どこまで馬鹿なんだよ!』
さやか「痛くない…!」
「私」の忠告を無視して私は走り出す。
痛くない。
体が全く痛くない。
お腹に大穴を開けられたとしても。
臓物が飛び散ったとしても。
私の体は痛みを感じない。
さやか「あはは!痛みなんて消しちゃえるんだ!」
?「な、なんだ!?この馬鹿!」
無意識。
私にはこの戦い方がしっくりくる。
自己犠牲?
自己嫌悪?
赤と青は激しくぶつかって。
その火花すら飲み込むような鮮血を撒き散らす。
それでもなお。
それでもなお私の体は痛みを感じないで。
さやか『やめろおおおおおおおお!!!』
さやか「あっははははははははは!!!」
まるでゾンビのように動き続けた。
流石にそこで嫌悪を使う意味が分からん
「私」のさやかに対してなら分からないでもないがいくらなんでも唐突過ぎる
西尾の真似をしたいのか何なのか分からんがもうちょっと言葉を調べてきたらいいのに
?「…ちっ、手こずらせやがって」
さやか「放せ!」
不思議な模様の紐に体を結ばれる。
どれだけの攻撃を受けても動き続けた体はあっさりと。
あっさりと動きを止めたのだった。
?「…あんたさあ、何で使い魔なんて狩ってるわけ?」
さやか「はぁ?そんなの…」
…。
それはマミさんの意志だから?
まどかに危険が及ぶから?
私が魔法少女だから?
さやか『…』
さやか「…私の勝手でしょ」
?「…そーかい」
?「聞き分けのないバカは息の根止めるのがいつもだけど」
?「…今回は見逃してやるよ」
はぁ?
なにそれ。
いつでも勝てるってこと?
さやか「…どう言う意味よ」
?「見てらんねぇから」
それだけ言うと赤い魔法少女は壁を伝い上へ登っていった。
私は早速魔法少女としての挫折と。
私の戦い方を見つけた嬉しさを味わった。
さやか『絶望なんか、させないから』
私の中の「私」がそう言った。
相変わらず耳障りな音楽と。
狂ったようなバイオリンの音が。
ずっと鳴り響いていた。
私の日課と言えば沢山あるけれど。
ほぼ毎日欠かさない事といえば。
幼馴染である上条恭介にクラシックCDを届けるということである。
さやか「…」
数日前の赤い魔法少女との戦い。
あの時の傷もすっかり癒えて。
今では元気すぎるくらいに元気だ。
さやか「んー…これなんかいいかも」
天才バイオリン少年。
それが私の幼馴染、上条恭介だ。
若くしてバイオリニストとしての才能を開花させ。
…そして事故でその才能を失ってしまった。
私はそんなあいつが大好きだった。
ひたむきに、好きなことに打ち込むあいつが。
演奏が終わったあとに笑顔をくれるあいつが。
バイオリンをひくあいつが。
後悔なんてしないつもりだったけれど。
私がもう少し早く契約して。
あの魔女を2人で難なく倒せていたら。
恭介のために願っていたら。
さやか「…言ってもしょうがないよね」
そうだ。
全ては過ぎたこと。
私があの時魔法少女になった事は。
もう変えることのできない事実なのだ。
さやか『…』
そんな目で見るな。
憐れむような目で見るなよ。
さやか「…ねぇ、もし私がさ」
さやか「もし、私が一人になったらさ」
さやか「その時はあんたのこと、教えてよ」
さやか『…いいよ』
あんたのことは大嫌いだけど。
だけど生まれた時から一緒だもんね。
さやか『だけどその時は、あんたが本当に「私」になる時だけどね』
>>59
すいません
自己嫌悪っていうのは感情がごっちゃになってるからです
その感情がさやかのものなのか「さやか」のものなのか分からなくなってるからっていう表現です
でもそもそも「さやか」の正体やら目的やらまだ書いてないので訳分からなくなるのは当然だと思います
自分の文が書きたい事をただ書いてるって感じなので表現も稚拙ですし陳腐だから見るに堪えない人も居ると思うけど
完結させるので最後まで見ていただければ幸いです
どんな形にせよ見てくれる人が居て評価してくれる人が居るだけで嬉しいです
ありがとうございました
恭介「さやかは僕のことを虐めているのかい?」
ハンマーか何かで頭を殴られたような衝撃。
取り返しのつかない事をしたかのような焦燥感。
そんなことは露一つも思っていなかったのに。
それなのに。
どうして。
恭介「…もう、自分で弾けもしない音楽なんて…!」
恭介「聞きたくないんだ!」
がしゃあん、と恭介の手とCDプレイヤーが交錯する。
赤い液体がシーツの上に飛び散る。
さやか『…恭介』
恭介「もう、ダメなんだよ」
恭介「奇跡か魔法でもない限り、僕の腕は…動かない…!」
奇跡。
魔法。
果たして私の魔法はどこまで通じるのか。
私の固有魔法は癒し。
もう一つ言えば修復。
マミさんの失われた頭部を癒し復活させ。
その失われた魂を復活させた。
回復魔法とはまた、毛色が違うかもしれない。
…魂…。
恭介「…見てよ、もう、痛みすら感じない…!」
さやか『…あんたに、「私」によく似てるよ』
さやか『…強がっちゃって、あんたも恭介も』
さやか『…痛みすら感じないなんて』
黙れ。
痛みなんか感じない。
私はそんなにやわじゃない。
恭介「…」
ああ。
消えていく。
私の視界から。
私の世界から。
恭介が消えていく。
やめて。
居なくならないで。
あんたが居なくなっちゃったら、もう私には。
一つしかないじゃん。
それでも体一つ動かせない私は。
恭介「…もう、帰ってくれ」
その言葉によって、まるでそれこそ魔法にかけられたように。
弾けるようにその場を早足に立ち去ったのだった。
さやか「…あは」
乾いた笑いが込み上がる。
とうとう恐れていた事がおこった。
私の支えは壊れてしまった。
もう、たった一つの支えじゃ。
私の心は支え切れない。
さやか「あははは」
?「なに笑ってんだよ」
声の方向を向くとそこには先日の赤い魔法少女が居た。
さやか『…杏子』
さやか「杏子?」
杏子「なんだ?あたしのこと知ってんのか?」
杏子「ははあ、さてはマミの奴から聞いたのか」
杏子。
その言葉を心の中で繰り返す。
不思議な感覚が体を支配する。
ずっと知らなかったけれど。
何故か知るべきだった。
知っているはずだったその言葉。
なんであんたが知ってんのよ。
さやか『さぁね』
杏子「立ち話もなんだ、付いて来いよ」
杏子という魔法少女は意地悪そうににやりと笑って親指を真後ろに動かした。
杏子「うまいラーメン屋、紹介するぜ」
こいつには一度殺されかけた。
ついて行くのはもちろん危険だが。
だけど。
恭介を失ったわたしの心はそんなことを考える余裕なんてなかった。
さやか『大丈夫、信じていいよ』
さやか「…黙ってて」
絶えず聞こえてるその声を無理やり押し込めて。
その杏子と呼ばれる魔法少女についていったら。
さやか「…あは」
乾いた笑いが込み上がる。
とうとう恐れていた事がおこった。
私の支えは壊れてしまった。
もう、たった一つの支えじゃ。
私の心は支え切れない。
さやか「あははは」
?「なに笑ってんだよ」
声の方向を向くとそこには先日の赤い魔法少女が居た。
さやか『…杏子』
さやか「杏子?」
杏子「なんだ?あたしのこと知ってんのか?」
杏子「ははあ、さてはマミの奴から聞いたのか」
杏子。
その言葉を心の中で繰り返す。
不思議な感覚が体を支配する。
ずっと知らなかったけれど。
何故か知るべきだった。
知っているはずだったその言葉。
なんであんたが知ってんのよ。
さやか『さぁね』
杏子「立ち話もなんだ、付いて来いよ」
杏子という魔法少女は意地悪そうににやりと笑って親指を真後ろに動かした。
杏子「うまいラーメン屋、紹介するぜ」
こいつには一度殺されかけた。
ついて行くのはもちろん危険だが。
だけど。
恭介を失ったわたしの心はそんなことを考える余裕なんてなかった。
さやか『大丈夫、信じていいよ』
さやか「…黙ってて」
絶えず聞こえてるその声を無理やり押し込めて。
その杏子と呼ばれる魔法少女についていった。
杏子「うめーだろ?」
ずるる、と麺をすする音が聞こえてくる。
こんな生き方が。
こいつみたいな悩みの無さそうな生き方ができたらどれほど楽だろうか。
さやか「それで、何の用なのよ」
杏子「別に、暇だったから声をかけてただけさ」
さやか「あ、そう」
杏子「なんてね、お前が気になったのさ」
またも意地悪く杏子は笑う。
その無邪気で裏の無さそうな笑顔を見ていると。
不思議と心が軽くなる。
杏子「…何だよ、あの戦い方」
戦い方。
私が無意識のうちに。
無自覚のうちにやっていた。
痛覚遮断の魔法。
それを駆使して。
痛みに怯まず。
恐怖に屈せず。
ただただ目の前の相手を屠る機械になる。
絶望の音楽の中で踊るように敵を穿つ。
狂騒曲、なんてね。
さやか「…それがどうかしたの?」
杏子「どうかしたかじゃねぇよ、あんたマミの弟子なんだろ?」
弟子ってわけではないと思うけれど。
確かに魔法少女の事は彼女から聞いた。
杏子「マミの奴はそんなこと教えたのか?」
いいや。
むしろこれを教えたのは。
あんただよね?
さやか『…私は止めたよ』
さやか「…何だっていいじゃん、なんで私に構うのさ」
もうほうっておいて欲しい。
私は誰とも関わりを持ちたくない。
もう、まどかや、マミさんや。
それだけでいい。
だから。
杏子「見てられねぇからだよ」
さやか「だったら見なければいい!」
私はありったけの声を出す。
もう見ないでくれ。
私なんかを見ないでくれ。
本当は分かってる。
私自身が。
「私」がいつも叫んでる!
見るに堪えないって。
もうやめろって。
自分を傷つけるなって。
だけど。
さやか「…そっか」
杏子「…あ?」
さやか「吹っ切れちゃえばいいんだ」
杏子「おい…何言ってやがる」
自分から抱えて。
失っちゃうくらいなら。
自分から依代を捨てればいい。
恭介も、まどかも、マミさんも。
捨てちゃえば。
そうすれば。
誰にも。
もう誰にも。
さやか「…ねぇ、ひとつだけ聞かせて」
杏子「…何だよ」
さやか「…あんたは魔法少女になって、幸せ?」
杏子「…不幸だよ」
そっか。
やっぱり私とは違うんだ。
何が正義の味方だ、笑わせる。
そうだった。
私の目的は、ただ一つ。
「私」を。
「観測者」であるお前を。
観測すること。
なんで忘れてたんだろう。
さやか『おい!やめろ!』
ばいばい。
さやか『 ろ! せ!』
さやか『 は ろ!』
私は「私」を深い闇に押し込める。
一切の光さえ届かない闇に。
そうだ。
私はもう私だ。
違和感は消えた。
あとはあんたを消すだけだ。
さやか『それをし ら!あん は本当に「私」 ってしまう!』
さやか『 !』
私はただ一人の私になりたい。
それが私の願いだから。
さやか「さよなら」
私は誰へともなく別れの言葉を。
空へと発して。
その場所を後にしたのだった。
杏子「おい!!待て!」
耳に届くその声は心には届かない。
もはや音楽というには余りにも騒がしい。
余りにも雑多で。
余りにも無様で。
だけどその音色は。
私の心で鳴り続ける。
それはきっと。
私が死ぬまで。
さやか「…あは、うっ、…ぁ…」
さやか「っ…!ひっ…!」
さやか「あっははは!あははははは!」
観測の仕方さえ。
目的の果たし方さえ。
や り 方 さ え 分 か っ ち ゃ え ば 簡 単 な も ん だ ね 。
この音楽とは到底呼べないものは。
きっともう。
止まない。
ほむら「…」
おかしい。
どう考えてもおかしい。
美樹さやかが呪いを生むタイミングが早過ぎる。
QB「やあ」
白い契約者、QBはタイミングを見計らったかのように現れる。
QB「美樹さやかのことが気になるんだろう?」
ほむら「…そうね、あの子は、おかしいわ」
絶対におかしい。
彼女は確かに呪いを生む世界が多い。
魔女になってしまう世界が多い。
だけれど。
それにしても早過ぎる。
QB「…この世界では普通でないことが三つある」
ほむら「?どういうこと?」
QB「一つは君のこと」
QB「僕は君と契約した覚えなんてない」
ほむら「…」
良し。
まだ私の魔法について、特性は掴めていないようだ。
QB「二つ目は鹿目まどかの素質」
QB「…三つ目は美樹さやかの矛盾」
矛盾?
どういうことだろう。
私もこんな事態は初めてなので予想がつかない。
QB「…彼女の性格、人となりはね、正義漢とでもいうのかな」
女の子に相応しい言葉ではない。
だけれど確かに彼女は正義感が強い。
いえ。
強かった。
QB「とにかく正義感に溢れている」
QB「…と、思えば彼女は矛盾した行動を取るんだ」
QB「あれはもう、思春期と言う言葉では片付ける事ができない程」
QB「不安定だ」
ほむら「…」
たとえ美樹さやかが呪いを生み、魔女になったとしても。
私には関係ない。
邪魔するならば殺す、それだけだ。
QB「そして、僕が思うに」
QB「この三つの事実は繋ってる」
知ることか。
私の目的はたった一つ。
鹿目まどかを救うこと。
もうあいつの声は聞こえない。
私が閉じ込めてしまったから。
二度と這い上がることのできないような。
闇の中に閉じ込めたから。
そうだ。
私はもう誰もいらない。
恋焦がれた恭介も。
大親友のまどかも。
沢山の人との絆も。
生まれた時から一緒の「私」も。
もう必要ない。
だって。
痛みなんて感じないから。
さやか「本当に、バカ」
馬鹿だ。
「私」は最後まで私のことを心配していた。
結局あいつが誰だったのか。
本当に私だったのか。
別の誰かなのか。
もう答えは出ない。
「さやか」は答えない。
どうしてこうなったのだろう。
私の目的は。
違和感を打ち消すこと。
私が私であるという。
「私」を観測しているという。
その実感が欲しかっただけ。
それなのにどうして。
こうもねじれてしまったのか。
歪む。
捻れる。
崩れる。
歪んでしまっていた。
私はもう、とっくに。
おかしくなっていた。
痛くない。
痛くない。
痛くない。
痛みを感じないほど。
腐りきってる。
歪んで腐って呪って笑って壊れて泣いて。
もう中身なんてグズグズだ。
「私」なんていなければ良かったのに。
そうすれば私は。
さやか「…歪まずにいられたのに」
鳴り響く音色はついに無音へと還る。
ふり出し。
今更気づいても遅い。
私が私であるという実感は。
それを得る方法は。
さやか「…私って、ほんとバカ」
他にもあったっていうのにさ。
マミ「話って何かしら?」
やっぱり威圧的。
当然か。
あたしから裏切ったようなもんだしな。
それにしても。
やっぱ、あんたは変わんねぇな。
まどか「…マミさん、誰なんですか?」
マミ「…」
マミ「佐倉杏子さん」
じろりと、マミがこっちを見る。
やっぱりあのことを根に持ってるのかもしれない。
喧嘩別れを。
こういうと恋人みたいだが。
要はあたしが勝手に擦れてグレただけのこと。
杏子「…今は、冷静になってくれ」
マミ「あら、お得意の騙しかしら?」
杏子「違う!」
自分でも驚くほどの声量。
住宅街に響くあたしの甲高い声。
それを聞いてマミは少しだけ警戒を緩めた。
マミ「どうしたの?」
情けねぇ。
あたしと同じ過ちを犯しそうな奴を。
ぶっ壊れそうな同類一人。
自分ひとりで正すこともできない。
杏子「…はは、何を重ねてやがる」
そもそもなんであたしがあいつなんかのために。
どこにそんな義理がある。
あたしとあいつは前世で繋がってたとかならまだしも。
大した関わりもない。
むしろムカつくくらいだ。
中途半端な覚悟で。
正義の味方しやがって。
お前は。
あたしの目の前にいる、このバカみたいに。
マミのような奴になれるってのか。
ふふ。
ははは。
ほっとけねぇ。
バカは沢山見たけれど。
応援したいバカは。
助けてやりたいバカはあんただけだ。
杏子「…あの青髪、お前の仲間だろ?」
マミ「…美樹さん…?」
まどか「…さやかちゃん?」
美樹さやかっていうのか。
いい名前じゃねぇか。
杏子「あいつを」
下らねぇ。
情けねぇ。
でも許せねぇ。
杏子「助けてやってくれ」
無音の音楽は止まない。
きっと、ずっと私の心の中に蔓延り続ける。
これまでも。
これからも。
まやかしだったのかも。
あんたを観測すれば。
無音の音楽に色がつくと思ってた。
でも違った。
無音。
無音こそが私。
旋律も音階もない。
空っぽの私こそが私。
さやか「タイミング、悪いね」
私の無音を。
無色の私を。
嘲笑うかのように。
目の前には色彩豊かな結界が現れた。
私の中に何がある。
何が私の生きる意味?
もう誰も答えない。
「私」も既に閉じ込めた。
気付く。
モヤがかかったかのようなアイツの言葉を。
今、はっきりと把握する。
思い出す。
「 悔 」
もっと早く気付けばよかった。
あんたは。
敵なんかじゃなかったのに。
「 つ 後悔 」
へぇ、あんた、喋れたんだ、だって?
そりゃそうだ。
だってあんたは。
他でもない「私」だったんだから。
「いつか後悔する!」
大正解。
大後悔。
分かってるよ、だって?
何もわかっちゃいなかった。
あんたの言葉に耳を傾けることもしないで。
受け容れることを拒否した。
さやか「あは」
壊れてしまえ。
いっそ壊れてしまえ。
私を含むこの世界も。
私自身も。
塵も未練も禍根も何も残さずに。
壊れてしまえ。
壊してしまえ。
さやか「最悪の気分だよ」
目の前の魔女が迫ってくる。
私の腕が吹き飛ぶ。
私の耳が吹き飛ぶ。
痛みなんか感じない。
さやか「…あはははは…」
回復魔法ならぬ修復魔法。
そして痛覚遮断。
私は。
もう。
さやか「死にたい」
私は私のソウルジェムがどす黒く濁っていくのを見続けながら。
そっと剣を地面に置いた。
強烈な閃光が私の目の前で弾ける。
それはこの前見た、真っ赤な閃光だった。
さやか「杏子…?」
目の前の現実に頭が追いつかない。
杏子「何をボケっとしてやがる!」
やめて。
私は死ななきゃならないの。
大した覚悟も。
大した祈りも持たないで。
魔法少女を願ってしまった代償を。
この命で償わなければならないの。
さやか「…やめてよ」
私は地面に置いた剣を再び手に取る。
そして。
その剣を自分の喉に突き立てて。
思い切り力を込めた。
さやか「…ぐぶっ…!」
杏子「さやかぁぁあ!」
治るな。
修復するな。
痛みなんか感じない。
感じないんだから。
せめて早く…!
マミ「レガーレ!」
さやか「!?」
聞き覚えのある声を聞いた。
それは私の先輩、マミさんのものだった。
リボンの拘束によって私の体はきつく縛り上げられる。
マミ「何を、してるの?」
まどか「さやか、ちゃん」
…。
何をしてるのか私にもわからない。
さやか「…きっかけは、恭介だった」
何を話しているんだろう。
こんなこと言っても何の解決にもならないのに。
さやか「…私の中の支えが壊れたの」
空っぽだった私の数少ない中身。
そのうちの一つが壊れた。
さやか「その時気付いたんだ」
さやか「私って、空っぽだったんだって」
魔女はなおも攻撃してくる。
あの時戦った魔女よりもきっと数段強いのだろう。
杏子もかなり苦戦している様子だ。
さやか「…痛くないんだよ」
さやか「ちっとも…!痛くないんだよ!」
もう人間らしさなんて少しも残っていない。
「私」を受け入れることができれば。
こんな事にはならなかった。
でも、もう遅い。
さやか「…殺して」
絶望。
この世に。
運命に。
私自身に。
絶望する。
ソウルジェムがこれ以上ないくらい黒く濁る。
闇よりも漆黒に染まる。
あぁ。
案外、魔女って魔法少女の成れの果てなのかもね。
さやか「…はは」
痛くない。
もう。
何も感じない。
杏子「バカ野郎が!」
その怒号が響いたと思うと。
魔女をそっちのけで私をぶん殴った杏子が目の前にたっていた。
杏子「痛くねぇなんて嘘だ!」
さやか「嘘じゃない!」
杏子「痛ぇだろうが!」
そう言って杏子はどん、と私の胸を叩く。
久々に人に触れた。
あったかい。
あぁ。
私の求めてたのはもしかして。
杏子「ここが、痛いだろ!」
痛い。
胸が焼けるほどに、息ができないほどに。
痛い。
心が痛い。
さやか「…うっ…ぁ…」
杏子「あんたは空っぽなんかじゃねぇよ!」
杏子「見ろよ!居るだろ!マミたちが!」
不意に目を向ける。
そこには、私のために。
私なんかのために瞳に涙を浮かべる二人がいた。
まどか「一人ぼっちだなんて思わないで」
マミ「あなたには感謝しているわ」
そうだ。
私は魔法少女なんだ。
たとえ嘘でも、見よう見まねでも。
正義の味方になってやる。
私の大事な人を守れる力が。
そんな力が、私には備わっているんだから。
ほむら「…ありえない、こんな世界…」
あそこまでどす黒く濁ったソウルジェムがここまで持つ筈がない。
QB「なるほど、世界か」
ほむら「…!」
QB「…君の魔法について、仮説は立てられたよ」
QB「君は世界を繰り返しているんだね」
ほむら「…まどかの素質の問題も、それが原因なのでしょう?」
だから私は。
こんなところでもたもたしていられない。
私は。
QB「…君が世界を繰り返す事に、まどかの素質は強まっていった」
QB「魔法少女としての因果の糸が集まってしまうからね」
ほむら「…そう」
だから何だというんだ。
QB「じゃあ」
QB「美樹さやかは?」
まさか。
それも…。
QB「奇跡というには余りにも悲惨だ」
QB「だけどこれでようやくはっきりしたよ」
QB「彼女から感じる別の魔力」
ありえない、だけど。
今までそんなことなかった。
…むしろ…今までそんなことなかったからこそ、見逃していたの?
QB「あれは魔女の魔力に酷似している」
さやか『強いね、この魔女』
そうだね。
そっか。
あんたは私じゃなかったんだ。
さやか『そうだよ、私はあんたの成れの果て』
さやか『何の手違いか、いつしかあんたの潜在意識に潜り込んでた』
さやか『私が覚えているのは、あいつ、暁美ほむらに殺される所』
そっか。
あんたは私の別の可能性なんだね。
ごめんね。
さやか『こっちこそ、悪かったよ』
さやか『…私があんたを歪ませた』
ねぇ。
さやか『…なに?』
あんたって強いんでしょ?
さやか『…強いって言うか…』
さやか『私の強さはあんたとは別物だよ』
力を貸してよ。
あんたの力を貸してよ。
さやか『…それホントに言ってるの?』
さやか『私はあんたの体を借りることになるよ?』
もう、失うのは嫌。
空っぽなのは嫌なんだ。
私も、力が欲しいの。
さやか『…どんな力が欲しいの?』
さやか『全部壊す力?魔女を倒す力?希望を振りまく力?』
…。
さやか「大切な人たちを、守れる力が欲しい」
さやか『…』
さやか『お安い御用で!』
にかっと。
「私」は笑った。
さやか「…ふぅ」
やっぱり動く体はいいなぁ。
ソウルジェムは私の「最後」みたいに真っ黒だけど。
だけど。
私はこの世の因果を外れかけた存在。
この世界のルールに。
縛られるはずもない。
さやか「やぁ、久しぶりだね、ほむら」
ほむら「…そうね」
さやか「あはは、そう邪険にしない」
ほむら「…あなたは前のさやかなのね」
さやか「そうだね、魔女化した分、絶望には強いよ」
そんな好都合。
ありえない?
ご都合主義?
仕方ないじゃん。
それこそが奇跡ってもんでしょ?
さやか「ご都合主義もたまには悪くない」
にやりと、私は笑う。
QB「絶望に飲まれない魔法少女か」
QB「ありえない」
さやか「絶」
そんなこと言われてもさ。
これが私なんだから。
今は眠ってるけれど。
あそこまで言われちゃあ。
手を貸さずにはいられない。
さやか「望?」
さやか「あははは、下らない」
心配するなよ、美樹さやか。
あんたは確かに矛盾してる。
正義の味方ぶったと思ったら。
壊れたふりなんかして。
なんでも良かったんでしょ?
なんでもいいから中身が欲しかったんでしょ?
空っぽを観測されたくなかったんでしょ?
安心しなよ。
あんたは確かに、美樹さやかだよ。
少しだけ、力を貸してあげる。
あんたに貸してあげるよ。
飲まれないように。
さやか「絶望?飲み干してやるよ」
今度こそ、絶望なんかで終われない。
音楽っていいもんだと思わない?
例えそれが無音だとしてもさ。
無音もまた、悪くない。
だって自分の好きな音を。
好きな旋律を。
いくらでも加えられるんだから。
さやか『とことん変だねぇ』
さやか「うるさいわよ」
この世界は残酷だ。
特に女子中学生なんて多感だし、思春期だし。
グレるし、ブレるし。
だけどそれでも。
守りたいものが見つかったのなら。
それはとっても幸せな事だって。
気付けただけでも、私にはそれだけで十分だ。
エンディングはまだ始まらない。
これからも様々な色と音が私の無音と混ざり合うのだろう。
その度に増やしていけばいい。
私の物語はまだ始まったばかりだから。
これからも沢山、大変な事がある。
だけど。
さやか「幸せだよ、私は」
これからも続く私の物語。
それはきっと、ちょっとやそっとじゃ語り切れない。
だからここで。
ひとまず、お終い。
質問あれば受け付けます
批判も賞賛も全て受け入れて次の自分の糧にしたいと思います
見てくれてありがとうございました
えっ
これでおわり?
>>88
はい、終わりです
さやかちゃんの葛藤とかをもう一人のさやかちゃんと交えて書きたかっただけなので
葛藤が終わってさやかちゃんがもう一人のさやかちゃんを受け入れた時点でこの物語は終わりです
物足りなかった人はすいませんでした
自分では割と綺麗に締めれたと思ったけどそうでもないようですね
取り敢えず続きは書いてみます
ワルプルギス攻略まで取り敢えず書いてみようと思うので本編とは違うパラレルワールド的展開になると思います
それでもいいなら次からも是非御一読下さい
取り敢えず今日のところはお疲れ様でした
ありがとうございます
次は明後日くらいになると思います
ありがとうございます!
全体に漂うリア中2が書きたい場面だけ書いた感じがちょっとあれでしたが
さやかちゃん主役で書こうという意気は良かったです
>>94
読んでくださってありがとうございます!
ただやっぱり俺のセンスは中二なんですね
もっと頑張ります!
>>95
いやまじめに良かったです
>>96
ありがとうございます
もっと楽しんでもらえるように頑張ります
とりあえず明日早いので寝ます
見てくれて本当にありがとうございます!
ああ、確かに中学生が書いた文章っぽいわ
わざとやってるなら凄いけど素でこれなら引くわ
>>98
素ですよ
読んでくれてありがとうございます
年末忙しいのでいつ書くか分かりません
すいません
とりあえずこのトリで
何時になるかわからないけれどなるべく早く書き始めます
とりあえず書き始めだけ
さやか「神様の温度」
私にはもう一人の私がいる。
それは別の世界の可能性。
この世を呪って生まれた私。
そして。
私の成れの果て。
そんな「私」と私は生まれた時からずっと一緒だった。
さやか『まったく、やってらんないよ』
さやか『死んだと思ったら自分の人生をもう一度繰り返すなんて』
うるさいな。
あんたは遠くから眺めてただけでしょ。
さやか『ふふ、まあそれも悪くない』
とにかく私は「私」とずっと一緒だった。
初めは受け容れることができなかった。
それは私が「私」の事を勘違いしてたから。
まるで神様のような視点で見る「私」を。
許せなかったから。
何様のつもりだと思ってたから。
だけど。
私は「私」を受け入れた。
私は「私」と前へ進む。
ひとまず終わった私たちの物語は。
暗い夜を吹き飛ばして。
輝く未来を確かに捉えて。
そして更なる夜を迎える。
最強最悪にして災厄の象徴。
その夜は祈りも願いも関係なく。
そしてその夜はゆっくりと確実に。
私の音楽をかき消して行く。
杏子「にしてもさー」
だるそうな顔をして杏子はお茶をすする。
放課後はだいたい四人でマミさんの家でお茶をするのが当たり前になってきた今日この頃。
それは私が欲しかったもので。
当たり前のように存在する。
掛け替えのない幸せ。
杏子「この街魔法少女多くないか?」
マミ「そうねぇ…」
確かにこの街、というかこの市、見滝原は平均的に見ても魔女が多く出現する。
だから魔法少女の数も多いのだけど。
杏子「魔女が多いからってこんだけ魔法少女がいればいつか争いになると思うけどな」
分かっている。
私たち三人が争う事は多分ないだろう。
まどかは魔法少女ですらないし。
杏子「…イレギュラーがどう出てくるか、分かったもんじゃねぇしな」
暁美ほむら。
QBが契約した覚えのない謎の魔法少女。
あの日、「私」とほむらは初対面ではなかった。
それはつまり。
さやか『…』
それはつまり、あいつの事を「私」は知っているということ。
何か知ってるの?
さやか『…ほむらが転校してきてから二週間たった』
2週間。
短いように感じるが。
私が魔法少女の存在を知り、そして「私」を受け容れるまでにかかった時間。
案外長いものだ。
さやか『…あと…2週間…』
こいつはいつもそうだ。
肝心なところは教えてくれない。
さやか『…ほむら』
私が「転校生」と呼ぶ「暁美ほむら」の事をこいつは「ほむら」と呼ぶ。
それが何を意味するかは分からないけれど。
分からないけれど、「私」と転校生との大雑把な関わりは見えてくる。
それにしても。
ほむら。
炎、ね。
燃え上がれーって感じ?
さやか「…ふん」
燃え上がるどころかあの氷よりも冷たい目に。
炎の要素なんて一つもない。
冷めた炎、ほむら。
皮肉もいいところだね。
とりあえずここまでです
読んでくれてありがとうございます
そう言えばあんたも冷めた目で見てたっけ。
さやか『私はただ眺めてただけ』
ふぅん。
その割には随分冷めてたみたいだけど。
さやか『…ごめん』
さやか『…本当の事をいうと…』
言わなくてもいいよ。
同じ人生だもんね。
二度も見たくないもんね。
さやか『…』
だけど。
私にはあんたがいた。
私には「私」がいた。
それだけでどれだけ救いになったことか。
魔法少女の成れの果てであるあんたが味方に付いてくれたこと。
これはきっと奇跡だよ。
さやか『…うん…!』
成れの果て。
私はまだマミさんにも杏子にも伝えていない事実を知っている。
きっとそれを聞いたら絶望してしまうであろう事実を。
魔法少女の魔女化。
希望を願った魔法少女は。
いずれ世界を呪い、絶望を振りまく魔女となる。
それがどれほどの恐怖で。
どれほどの怒りなのかは痛いほど知っている。
私が、「私」が知っている。
マミ「うふふ、佐倉さんたら」
杏子「いや、ほんとだってば!」
まどか「あはは」
だからこそ。
この事実は誰にも言えない。
この真実は伝えられない。
魔女を殺す魔法少女が魔女になる。
こんな負の連鎖。
伝わる前に、私が断ち切ってやる。
その身を絶望に落とす前に、死んでやる。
さやか『…前例はないらしいよ』
前例はない。
魔法少女から魔女へ変わる。
それはどうあっても覆らない残酷な真実。
前代未聞。
なら。
私が前例になってやる。
やっと手に入れた中身を。
大事な人達を。
その人生を。
絶望で終わらせるもんか。
絶望?飲み干してやるよ
それで私が魔女になってしまっても。
それはそれで案外悪くない人生だったって思えるほどの。
そんな音楽を私達は知ってるから。
放課後。
マミさんの家でお茶会をしたあと、私達はパトロールに出た。
杏子「ったく、使い魔を倒すなんて勿体ねぇ」
相変わらず杏子は使い魔狩りに対して文句を垂れていた。
さやか『あはは、変わんないなぁ』
マミ「もう、使い魔狩りも立派な魔法少女の仕事よ」
杏子「ちっ、分かってるさー」
悪態はつきつつも杏子は笑顔でその歩みを進める。
似た者同士だからわかること。
私と似ていたから杏子の気持は凄く分かる。
意地っ張り。
強情な奴め。
さやか「…あは」
変な笑いがこみ上げる。
とっても不思議で。
すごく暖かい。
そんな笑いが確かに込み上げる。
マミ「…どうしたの?美樹さん」
悟られないように。
私は込み上げてくる笑いを抑えながら答えた。
さやか「あはは、何もないですよ」
杏子「変な奴」
抑えきれなかった。
大好きだよ。
皆、大好き。
単純だろうか。
安易だろうか。
だとしても。
この思いに嘘はない。
マミ「こっちね…!」
三人でパトロールに出てから数十分、マミさんのソウルジェムが魔力の痕跡を捉えた。
杏子「へぇ、大物だな」
結界の大きさを見て杏子がそう呟く。
マミ「…」
さやか「…マミさん?」
マミ「…隠れていないで出てきたら?」
すっ、と。
廃工場の奥。
飲み込まれるような闇の中から人影が現れる。
その髪の毛はその闇に溶け込むように黒くて。
瞳は紫水晶のように強くて冷たい光を灯していた。
ほむら「…」
杏子「…あんたがイレギュラー、ってやつかい?」
ほむら「…」
暁美ほむらは語らない。
転校生は語らない。
すべてを達観して。
すべてを上から見ているかのように。
冷めた目でこちらを見る。
ああ。
冷めた目で見てる神様のような奴、ね。
そっくりだよ。
さやか「…何の用?転校生」
私が嫌いだった奴に。
さやか『…ほむら』
何様のつもりだ。
神様のつもりか。
冷炎ほむら?
くだらない。
いつまでも冷めた炎で居るのなら。
さっさと。
さやか「…」
その灯火を消してしまえ。
ほむら「…貴方達は…」
転校生は歯切れ悪くそう言った。
紫水晶のような瞳は強く冷たく、そして寂しそうだった。
杏子「ここでやり合うってのか?」
杏子が喧嘩腰に突っかかる。
そうだ。
忘れるな。
ほむらがどうあれ。
コイツはイレギュラーなんだ。
何をしてくるか分かったもんじゃない。
ほむら「…貴方達にお願いがあるわ」
マミ「…お願い、ね」
どの口が言うのだろう。
私はあの時襲われたことを忘れてなどいないのに。
ほむら「…まどかを…」
忘れてなどいない。
恨んですらいる。
私の大切なまどかを。
私の支えを襲ったことに対して。
例えこいつにどんな目的があって。
どれほどの大義があろうとも。
こいつに心は開けない。
だけど。
どうして。
ほむら「…守ってあげて」
そんな顔するんだよ。
誰だって抱えているモノがある。
誰だって何かを抱えて生きている。
みんな何かを抱えてる。
私だって成れの果てを抱えてる。
魔法少女はやむにやまれぬ事情を持つ奴だけにふさわしい。
いつだったか杏子はそう言った。
杏子だって。
マミさんだって抱えてる。
それに向き合って、それでも前を見て生きてる。
ほむら「…それじゃあ」
すっ、と転校生、暁美ほむらは闇の中へ消えた。
停滞。
停止。
時が止まる。
流れ落ちる時の中で生きている私たち。
だけれど転校生がいるだけで時が止まる。
諦観?
傍観?
達観?
あいつが何を抱えているかは知らないけれど。
気に入らない。
何様のつもりなんだよ。
あんたは何を抱えてるんだ。
いつか暴いてやる。
あんたの心を覗いてやる。
嫌がっても。
拒否されても必ず。
さやか『素直じゃないね』
私はもう。
後悔なんてしたくない。
何故だか分からない。
考えが纏まらない。
空白。
私の音楽には足りない。
空白に当てはめる音がある。
私の音楽には転校生が必要だ。
もう一度始まるプロローグ。
いつ終わるかもわからない。
だけどそれでも。
始まりの終わりはまだ来ない。
もっと、音色を。
もっと、色彩を。
さやか「神様じゃ、ないんだろ」
カラフルに。
色鮮やかに私の世界を染め上げる。
その為に。
冷めた炎じゃない。
燃え上がるあんたが必要だ。
杏子「結局なんだったんだ?」
魔女退治も無事に終わり、棒状のお菓子を食べながら杏子は言う。
マミ「…さぁ」
杏子「何か知らないのか?QB」
QB。
そうだ。
例えどれだけ魔法少女に協力的であっても。
この事実だけは覆らない。
QBは魔法少女の契約を結ぶ。
そして。
魔法少女は魔女になる。
QB「さぁね、僕が彼女の事について話せることは何もないよ」
どんな顔をしているのだろう。
心の奥底では笑っているのだろうか。
魔女の卵であるわたし達を。
孵化するのを待っているのだろうか。
さやか『…』
ぎりり、と。
歯を食いしばる音が聞こえた。
成れの果ては。
冷めた目で。
神様のような視点から。
私達の事を見ていた。
それは。
諦めとか。
呆れから来るものだったかもしれない。
感情を表に出さないが故に、無関心。
心を押さえ込むが故に、無愛想。
そう思ってた。
だけど。
さやか『…Q…B…!』
どす黒い感情が次々に溢れてくる。
絶望とまでは行かないけれど。
怒り。
悲しみ。
恐怖。
後悔。
「私」に何があったのかは知らない。
私は何も知らない。
それは約束だったから。
もし私が一人になったら。
あんたのこと教えてよ。
私が「私」の事を知らないという事は。
それは私が幸せだっていうことだよね。
さやか「私の音楽には」
だったら。
次はあんたの番でしょ。
私の音楽には足りないんだよ。
さやか「あんたも、ほむらも必要だ」
因果じゃない。
心がそうさせる。
さやか「もう誰も、一人ぼっちになんてさせない」
私の祈りが確かに響く。
私の中に響く。
これ以上ない決意。
渇望。
希望。
それでも。
圧倒的存在の前には。
簡単に消え去ってしまう程に私の音楽は脆かった。
だって。
最後は。
最後には。
ある一人の少女の犠牲によって、この物語は幕を閉じたのだから。
例えば移り行く世界の中で。
その世界の動きを、私だけが知っているとしたら。
例えば流れ行く時間の中で。
その時間の進みを、私だけが知っているとしたら。
それはどれほど不幸なことだろう。
そして。
例えば移り行き、流れゆく世界や時間の動きや進みを。
私だけが繰り返せるとしたら。
それはどれほど残酷な事だろう。
ほむら「…今度こそ」
何度も願った。
何度も誓った。
だけれどその度にその思いは残酷な運命によって潰えていく。
どうして私は絶望しないのだろう。
私なんてどうなってもいいのに。
まどかさえ助けることができれば、もう。
分かっている。
私の中に諦めが生まれつつあることくらい。
私の中の時間が停滞しつつあることに。
だからこそ、冷徹。
だからこそ、冷静。
だからこそ、冷血。
ほむら「何様のつもりかしら」
あの子の。
あの子達の時間を繰り返して。
あの子達の思いを無為にして。
それでも私は繰り返す。
誰の同意も得ずに。
誰の了承も得ずに。
神様のつもり?
自虐的に自分に問いかける。
それはもう希望と言うにはあまりにも自分勝手な願い。
いっそ絶望してしまえ。
全力で生きるから。
だからもし、私が絶望したのなら。
その時は。
許して。
何回通ったかもわからない通学路。
見飽きるほどに、飽きるほど変わらない風景。
それでも視界の片隅にあの子が映ってくれれば。
私は救われた気持ちになった。
ほむら「…それさえも」
それさえも。
冷めてしまうほどに私は達観してしまった。
凍てつく炎。
何も燃やせない役立たず。
見せかけだけの希望。
私に、ぴったり。
さやか「よ、転校生」
不意に名前を呼ばれて私はたじろぐ。
何度も何度も聞いたこの言葉。
そしてこの声。
転校生。
私のことを「ほむら」と呼んでくれるあなたも確かにいたけれど。
それは遠い遠い過去の今。
もう、私は。
そんなことさえ許されない。
ほむら「…何の用?」
早くこの会話をおわらせたい。
あなたなんかと話したくない。
無駄に希望を持ってしまうから。
早く…!
さやか「なんだよ、クラスメートに声かけるのに」
さやか「用も何もないでしょ?」
ほむら「…おはよう」
何をしている。
言葉を交わすな。
心を冷やせ。
達観しろ。
いっそ、神様になってしまえ。
何が起こっても、何がどうなろうとも一切関しない。
冷えた神様。
それが。
さやか「おーはよ」
私?
そうだ。
案外。
私が。
この世界を作っているのかも。
だって私は。
世界を何度もやり直しているのだから。
時さえ止まる。
時さえ。
もう何も。
動かない。
もう何も。
変わらない。
私は何なんだ。
どれほどのことをしているのか分かっているつもりか。
頭ではわかってる。
心でもわかってる。
分かっているからと言って。
辞める理由にならないことも。
分かってる。
止まってる。
いや。
もしかして。
もう既にあの時。
彼女が死んでしまった時から。
止まっていたのかもしれない。
なんて皮肉。
なんて温度。
ほんと、私ってーーー
さやか「冷たいなぁ」
ほむら「…え?」
さやか「挨拶くらい返してくれてもいいじゃんか」
冷たい。
冷え過ぎた心。
さやか「白昼夢でも見てたの?」
けたけたと。
彼女はそう笑う。
夢。
なるほど確かに夢と言う言葉で片付けるのも悪くない。
これが覚めない夢ならば。
それが冷めた夢ならば。
私はただこんな夢を作り出す自分自身を呪っていれば良かったのに。
それだけで、良かったのに。
ほむら「…」
足早にその場を去る。
私はもう関わってはいけないから。
関わったら後悔するから。
関わったおかげで貴方達が何度。
何度死んだと思ってる。
後悔する。
あなたが、じゃないわ。
ほむら「…さよなら」
この時間にもさよならを告げる。
もう私には何の手立ても残されていない。
準備に取り掛かるのが遅すぎた。
もう。
遅すぎた。
さやか『…あいさつ、ね』
そ、あいさつだよ。
私はあいつから挨拶をもらいたい。
さやか『…先に挨拶してきたのは向こうなんだけど…』
分かってないなぁ。
あれはさ、社交辞令みたいなもんだよ。
もっと言えばただの反射。
私はさ、あいつから言葉を貰いたい。
大したことじゃなくてもいい。
くだらない事でも良い。
ただ。
挨拶のあとに、もっと続く。
そんな言葉が欲しいんだ。
さやか『…止めはしないよ』
「私」が勧めて。
私が進む。
これって素敵なことだと思わない?
私たちの音楽がもっともっと素敵になると思わない?
さやか『さぁね』
絶望から生まれて希望で終わる音楽。
なんだ、案外。
音楽って簡単じゃん。
さやか『やっぱ、あんたって私と違うわ』
そりゃあね。
同じ世界なんて有り得ない。
絶望を糧にしてなお笑え。
希望を盾にしてなお笑え。
止まる時間も冷えた炎も、それが全て私の音楽になる。
音楽は。
私の人生だ。
私は昔からあなたが苦手だった。
それは私には到底できないことを成し遂げるあなた。
それは私の心を揺り動かしそうになるあなた。
そんなあなたが苦手で。
羨ましかった。
だからこそ、遠ざける。
私はあなたは通して私を見る。
あなたという像を通して、私を見る。
あなたとは違いすぎる私を見る。
「さよなら」
何度もさよならを言った。
その度にあなたは怪訝な顔をするだけだった。
そうだよね。
「さよなら」をいうほど。
私達は。
分かり合えていないから。
この世界のあなたも。
きっと怪訝な顔をするだけなんだろう。
きっとそうなんだろう。
仲良くなんてなれないから。
だったら。
「さよなら」に意味なんて、ない。
いつになっても。
凍てつく炎は。
冷めた炎は。
覚めない私は。
あなたと分かり合えない。
私は。
凍てつく炎。
私は。
私は…。
さやか「…さよならってなんだよ…!」
腕を掴まれる。
恐怖が私を支配する。
未来を語る私が拒絶される。
そんな恐怖が。
それと同時に。
さやか「…こっちを見てよ」
それと同時に。
私の心が。
少しだけ。
さやか「…"ほむら"…!」
少しずつ。
確かに。
熱を帯びてきた。
ほむら「…さやか…」
やめろ。
何の意味もない。
そんな事をしても後悔するだけ。
希望を持つだけ無駄。
私の望みは。
この世界では叶わない。
その筈なのに。
ほむら「…お願いがあるの」
何の願いだ。
私の願いは。
まどかを助ける、それだけだ。
それ以外にない。
その願いは。
まどかのためじゃない。
私自身の願いでしょ?
ほむら「…私を」
黙れ。
口を開くな。
何の為に冷めた炎になったと思ってる。
どんな苦難にも物怖じしないだけの。
罪の重さに潰されないだけの。
そんな心を持つためだろ。
どうして。
私は。
私は何度。
私は私の弱さを見せ付けられなければならないの?
さやか「…ほむら」
さやか「…あんたは神様じゃないんだよ」
さやか「そんな目で、そんな温度で」
さやか「この世界を見ちゃいけないんだよ」
さやか「…あんたは、ほむらなんだよ!」
なんにも知らないくせに。
私の苦労なんてなんにも知らないくせに。
眩しいほどの笑顔。
さらに激しく。
私の心は揺れ動く。
それはもう。
私の意志じゃ抑えきれないほど。
ほむら「…助けて…!」
さやか「助ける!」
もう。
本当に、馬鹿なんだから。
マミ「…」
杏子「よう、マミ」
私のことを呼び捨てで呼ぶのは佐倉さん。
年下だけれど生意気などと思ったことはない。
杏子「考え事か?」
いえ。
もう一人、居たわね。
マミ「…どう思う?暁美さんのこと」
目的も何もわからない。
QBですら知りえない過去を持つ少女。
だけれど。
何故か懐かしく感じる。
まるで前世で関わりがあったと思えるほどに。
色濃く、感じる。
杏子「…イレギュラー、ねぇ」
やっぱり佐倉さんは気に入らないのかもしれない。
元々優しい子だから。
暁美さんのような冷たいタイプの人間は苦手なのかも。
杏子「…なぁ、マミ」
マミ「なぁに?」
杏子「…あいつ、どこかであったことねーか?」
ある訳が無い。
ある訳が無いんだ。
だってそれは。
絶対にありえないことだから。
それは。
あってはいけないことだから。
マミ「…えぇ、私もそう感じていた」
頭では分かっていても。
心がそう叫ぶ。
杏子「…ほっとけない」
放っておけない。
佐倉さんは私と同じ思いを口にする。
杏子「…あいつがほんとに冷たいやつならさ」
もう、分かってる。
言いたい事は。
痛いほど、分かってる。
そう。
彼女が本当に冷たい人なら。
本当に冷めた人なら。
杏子「あんな顔、するはずねぇ」
それは。
希望すら潰えて。
絶望をも通り越して。
もはや諦めさえも無くなって。
ただ一つの悲しみだけが読み取れる。
そんな顔。
マミ「…佐倉さんはどうしたい?」
聞かなくても。
それはもう決まってる事なのに。
決まってる事なのに、私はあえて聞く。
迷わないように。
彼女の口からそれを聞きたいから。
杏子「…笑わせてやりたい」
…。
え?
杏子「あんな顔する暇もないくらい笑わせてやるんだよ!」
本当に。
あなたって真っ直ぐで。
マミ「…じゃあ、笑わせましょう」
素敵だわ。
マミ「二度とあんな顔させないように、ね」
体が軽い。
私はもう。
一人ぼっちじゃないもの。
さやか『どうして』
さやか『どうしてあんたはほむらって呼んだの?』
色々理由はあるよ。
だけど一番は。
あんたがほむらの事を嫌いじゃ無さそうだから。
さやか『…たったそれだけで?』
それだけ。
それだけだよ。
私とずっと一緒にいたあんたが。
ほむらの事を嫌いじゃないなら。
それはほむらがいいやつってことじゃないの?
さやか『…わかったよ』
さやか『…私も言いたいことがあったんだ』
さやか『ほむらに、伝えたいことがあったんだ』
それも教えてくれないの?
さやか『さぁね』
さやか『だけど、私はもう後悔したくない』
残酷な世界。
こんな残酷な世界だからこそ。
色濃く映える色も。
音楽も存在する。
色鮮やかな音楽はこの世界をカラフルに照らし出す。
みんなが都合よく。
一斉に前を向ける時なんて滅多に来ないけれど。
それでもありえないことじゃない。
もしそれが本当にありえないなら。
さやか「『私たちが前例になってやる』」
それは私たちが初めて口に出した決意。
初めて揃った願い。
この音楽がたとえかき消されようとも。
私の心は。
潰えない。
5
「ごめんだね、諦めるなんて」
赤い魔法少女は口悪くそう言った。
4
「死なないわ、誰も」
黄の魔法少女は凛々しく言った。
3
『さぁ、見せてもらうよ』
青い成れの果ては遠目からそう言った。
2
「二度と諦めない」
紫の魔法少女は冷たく言い放つ。
1
「行こう」
私は、そう言った。
例えそれが可能性の低い未来だとしても。
私は諦めない。
絶望。
そんなものは魔女にでも食べさせろ。
私は魔法少女。
希望の象徴。
どれほど辛くたって。
絶望なんてしてやるもんか。
可能性が低くても。
0
さやか「0じゃないっ!!」
あぁ、心地いい警報。
気持ちいい警告。
私の中で最大限鳴り続ける音。
目の前の魔女に対して警報を鳴らす。
その音すら。
ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
私の音楽にしてあげる。
まどか「…ねぇ、QB」
ただ一人、力になれない私は遠くから彼女たちの戦いを見続ける。
それはとっても辛いことで。
耐えがたい。
QB「なんだい、まどか」
私は知っている。
魔法少女はいつか魔女になっちゃうって事。
いつか世界を恨んで呪っちゃうって事。
まどか「…あの魔女に、勝てるの?」
それは魔法少女として生きてきた皆にとっては耐えがたい真実。
QB「可能性は低いだろうね」
まどか「…もういいよ、はっきり言って」
QB「…」
QB「…あの四人で勝つ可能性は、0だ」
QB「彼女達だけでは荷が重すぎる」
やっぱり。
さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃん、杏子ちゃん。
あれだけ強い四人でも、勝てないんだね。
QB「…だけど、君が契約すれば」
まどか「契約は、しない」
しない。
人に流され流れて。
自分で決めたことなんてほとんどない私が。
きっと初めて、強い意志で決めた事。
QB「…そうかい」
QB「…気が変わったら」
まどか「変わらないっ!」
自分でも驚くほどの声が出る。
胸が苦しくなる。
声がかすれる。
恐怖で足がすくむ。
まどか「…私は、みんなを信じてる!」
何もしないで遠くから見てる私。
それってとっても卑怯な事。
分かってる。
命をかけて戦ってる「5人」を差し置いて。
自分だけ安全なところで見ている。
そんな自分が一番ずるいって。
まどか「…分かってる…!」
私は、絶対に契約しない。
それが「さやかちゃん」とほむらちゃんの。
お願いだったから。
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
さやか「…ん」
さやか「…ふぅ」
久々の感覚。
腕を動かすのも足を動かすのも自分の思いのまま。
嬉しい。
でもそれより。
さやか「…んっ…はぁ」
こんな美味しい紅茶をもう一度飲むことが出来る。
それが何より、嬉しいよ。
ほむら「…久しぶりね、さやか」
さやか「そーだね、ほむら」
二人して目を合わせてくすりと笑う。
二人しか知らない秘密。
それを共有しあってるかのような。
そんなくすぐったい感覚。
杏子「…なぁ、さっき言ったこと、本当なのか?」
マミ「そうね、信じ難いわ」
さっき言ったこと。
それはほむらが世界を繰り返してるということ。
そして私が前の世界の私だということ。
さやか「本当だよ、杏子」
杏子「な、なんか感じ違うぞお前…」
少し驚いてよそを向く杏子。
初い奴め。
さやか「私は、さやか」
さやか「前の世界の「美樹さやか」だよ」
絶望に飲まれ、世界を呪った魔法少女。
その成れの果て。
それが私。
前の世界の、美樹さやか。
まどか「…えっと、じゃあ、ほむらちゃんは…」
まどかがたじろぐ。
そう、ほむらは敵じゃない。
ほむら「…ごめんなさい、まどか」
ほむら「怖がらせちゃったわね」
まどか「…ううん、ほむらちゃん、学校で優しかったから」
まどか「…でもどうしてQBを狙ってたの?」
そう。
それが最大の難関。
どうやってショックを受けさせずに魔女化の真実を伝えるか。
伝えないとほむらの目的も信憑性がなくなってしまう。
さやか「これをみて」
私は「私」のソウルジェムを机に置く。
器は一緒だがそれは美樹さやかのものではなく。
間違いなく私自身の物だった。
杏子「…お前っ…!これっ…!」
一度絶望に落ちた魔法少女。
確かに私は今自我を持ち。
魔法少女のような姿をしているが。
それでも中身は魔女。
当然ソウルジェムはどす黒く濁っている。
さやか「あはは、「私」はこれがデフォなの」
マミ「大変!急いで浄化を…!」
さやか「どうして?」
そこをつく。
魔法少女として最大の疑問を口にする。
どうしてソウルジェムを浄化する?
魔力が使えないから?
使わなければいいだけ?
黒くなったら魔法が使えない?
黒くなったら、どうなるの?
マミ「…?」
さやか「…それはね」
さやか「魔女になるから」
時が、止まる。
ほむら以外が凍りつく。
さやか「ソウルジェムは濁りきると、グリーフシードになる」
杏子「なっ…!?」
魔法少女は魔女になる。
いずれは知っていたであろう真実。
だけれど今知るべきでない真実。
それを私は口にする。
さやか「驚かないで聞いて」
さやか「魔法少女は、魔女になるんだ」
痛いほど知ってる。
「私」はそれを身を持って経験したから。
あのどす黒い感情に支配される感覚も。
思考がめちゃくちゃになる感覚も。
身を持って、経験した。
さやか「…ほむらはまどかを魔法少女にさせないために」
さやか「QBを殺そうとしたんだ」
殺す。
そんな事であいつらを止められるはずもない。
だけれど。
思考を止めてでも、取り敢えずQBを殺すという。
その気持ちは分かる。
マミ「そ、そんな…」
マミさんが声を震わせる。
ほむらは言っていた。
「巴マミに真実を伝えるときは、気を付けて」
知ってるよ。
強がってるマミさんのこと。
だけど、それを含めて。
私の大好きなマミさんなんだ。
マミ「…私達は…仲間を殺していたってこと?」
マミ「…いつか…私も魔法少女に…なる?」
ばしゅん、とマミさんが変身する。
見てみると少しだけ頭のソウルジェムが濁っていた。
ほむら「…真実よ」
マミ「…だったら…!私は今まで何の為に…!」
マミ「…そんなの…もう…」
やめて。
やめろ。
そんな事のために、私は。
この世界を見続けていたわけじゃない。
マミ「死ぬしかないじゃない!」
いつかは今じゃない。
それは絶対に起こることだけど。
だけど、だからって。
今を否定する理由なんかに、なり得ない。
だったら。
さやか「…絶望しなければいいんだよ」
私が、全部飲み込んでやる。
私が。
さやか「絶望?飲み干してやるよ」
さやか「もう誰も、絶望なんかさせない!」
絶望する暇もないくらい、希望で埋め尽くしてやる。
ーーー
ーーーー
ーーーーーー
思い返してみれば。
私はまるで神様のような立ち位置で、この世界を眺めていた。
何度も世界を繰り返すうちに。
いつしか冷めていた。
ほむらなんて笑わせる。
燃え上がったことなんて無かったくせに。
神様の温度。
それは冷めすぎて。
冷たすぎて。
世界を達観していた私を表すには充分過ぎた。
絶望しないからと言って。
希望を持たないんじゃ話にならない。
ほむら「…うっ…」
ほほを熱いものが伝う。
どうして。
目の前の敵を屠る事だけを考えなければいけないのに。
どうして私はないてるの?
ワルプルギス「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
この熱も、久しぶり。
あったかい。
さやか「ほむら!行くぞ!」
燃える。
燃え上がる。
凍った心が溶けだして。
冷えた炎が燃えだして。
そうだ。
私は。
ほむらだ。
暗闇を照らす。
ほむらだ。
私は。
ほむらだ!
ーーーーーーーー
杏子「…う…ぐ」
マミ「…はぁ…」
ほむら「…くっ…」
あれだけやっても。
目の前の魔女は倒せない。
災厄の象徴は。
私の音楽を軽々と吹き飛ばす。
さやか「…強いなぁ」
QB「当然だよ」
QBが姿を現す。
QB「君たちが勝てる相手じゃない」
QB「普通の魔法少女では手が負えないよ」
黙れ。
だとしても。
やらなきゃいけないんだ。
私は。
もう二度と、空っぽになったりなんかしない。
私の音楽は、まだ止まない。
さやか『…普通の魔法少女じゃ、手に負えない』
さやか『だってさ、どうする?』
私は。
あんたが嫌いだった。
さやか『知ってるよ』
いっつも見下した位置から見てるあんたが大嫌いだった。
だから。
きっと、断られても仕方ない。
さやか『…』
さやか「力を貸して」
さやか『いいよ』
どうして?
どうして断らないの?
さやか『あんたが、ほむらに手を差し出したから』
さやか『ほむらが燃え上がったから』
さやか『それ以外に、理由なんている?』
絶望の化身。
ぶち壊れた私の心。
あんたを眺めているうちに、少しずつ。
私は心を取り戻したんだ。
絶望の化身である私が。
希望を振りまく。
これってさ。
すごい嬉しいことだと思うよ。
さやか『任せて』
さやか『そして』
さやか『さようなら』
今度こそ、全てを希望で終わらせる。
オクタヴィア「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
何と言えばいいのか分からない。
私のソウルジェムから繋がって。
不気味な魔女が現れる。
QB「何が起こっているんだい?」
QB「彼女は、誰なんだ?」
やめてよ。
自分で言ってたじゃん。
魔法少女から魔女への変化は不可逆だって。
もう二度と戻れないんだよ?
QB「意思を持つ魔女か」
QB「興味深いね」
オクタヴィア「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
目の前の魔女が、ワルプルギスへと突っ込む。
体の大きさはあれど。
私達よりは押しているように思えた。
オクタヴィア「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
QB「…自ら呪いを募らせるなんて」
QB「彼女は何を呪っているんだい?」
QB「何に絶望してしまったんだ」
絶望?
違うよ。
あいつはきっと、絶望なんかしていない。
あいつ?
そうだ、私は一度も呼んだことがなかった。
さやか「…さやか…」
頬を伝う涙。
それすら吹き飛ばす轟音。
音楽は絶望も希望も取り込んで。
より人間らしい色へと染まっていく。
ありがとう。
私は。
幸せ者だ。
『 』
いつか聞いた時みたいに。
その声は少しずつ遠ざかっていく。
もう会えないとしても。
だとしても、私はあんたを覚えてる。
絶対に、忘れない。
絶望は、希望へ。
私達は、私だけに。
空っぽは、埋まって。
そして。
「さやか」は、消えた。
例えば。
集中してる時に。
例えば。
びっくりした時に。
自分を遠目で見ちゃうことってない?
それってちょっと怖かったりしない?
私はさ、それがずっとあったんだ。
それがずっと嫌だった。
どんな事をしても。
冷めた自分が遠くから眺めているようで。
それがずっと嫌だった。
「さやか」は消えた。
跡形もなく。
役目だけを終えて消えた。
あいつが幸せだったのかどうかは分からない。
だけど、確かに。
後悔はしていない、そう思う。
音楽はこれからも続いていく。
私が関わった全てを詰め込んだ。
派手で。
優しくて。
苦しくて。
でも人間らしい、私の記録。
私の音楽。
さやか「私って、幸せだよ」
これからは。
あいつの分まで生きてやる。
あいつがしたくて出来なかったことも。
嫌味ったらしく楽しんでやる。
そうして、私が死んだとき。
言ってやる。
「お帰り」って。
言ってやる。
これからも私の物語は続く。
楽しいことも辛いこともある。
だけど、その度に思い出す。
私ならざる私のことを。
別の可能性の私を。
この音楽は。
きっと死ぬまで終わらない。
きっと多くて語れない。
きっとちょっとやそっとじゃ、語れない。
だからここで。
ひとまず、お終い。
『ありがとう』
さやか「…こっちこそ」
さやか「今まで見てくれて、ありがとう」
おしまいです
終わりました
元々低かったクオリティがさらに下がりました
今まで見てくれてありがとうございます
質問あったら受け付けます
楽しかったです!
>>150
マミ「いつか私も…魔女になる…?」
でお願いします
すいませんでした
このSSまとめへのコメント
読むに堪えない中2感
普通に書けば面白いと思う