あおい「ケーキにたっぷり愛情を込めすぎたかもしれない」 (63)

・ヤマノススメのSS

・百合

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──雪村家 台所──

あおい「明日はいよいよ、約束の谷川岳!」

あおい「それから、ここなちゃんのバースデー!」

あおい「頑張ってケーキ作るぞっ」グッ

あおい「教えてもらったレシピ通りに準備したし、後は、愛情をたっぷり込めて作れば完成だね♡」

あおい「でも……愛情を込めるってどうすればいいんだろ?」

あおい(えっと、たしか……食べる人の喜ぶ顔を想像して……)モワモワ


◇◇

「あおいー!」ブンブン

「また一緒になるなんて、運命かも!」

「あれぇ、あおいにはまだ早かったかなぁ?」ニシシ

「あおいー!モタモタしてると置いてくよー!」

「これおいしー!」ホクホク

「ほら、あおいっ!」ギュッ

◇◇

あおい「って、何でひなたの顔ばっかり浮かんでくるわけぇ!?//」

あおい「明日はここなちゃんへのサプライズがメインなんだから!勝手に出てこないでー!//」バフバフ!

あおいママ「何騒いでるの?もう遅いんだから、早く寝なさーい」

──谷川岳 山小屋──

セーノ!

「「「ここなちゃん、誕生日おめでとう!」」」

パチパチパチ!!

オメデトー!





ここな「このケーキ、すっごくおいしいですー♡」

あおい「良かったー、ちゃんとできたかちょっと心配だったの」ホッ

あおい「あ、みんなもどうぞどうぞ!」

かなで「もぐ……本当に美味しい!」

ほのか「……うん」コクコク

ひなた「ふむ、あおいのケーキか……どれどれ、味見してやるとしますかね」ヒョイッ

あおい「何で上から目線なのよ!そんなこと言うひなたにはあげないから!」

ひなた「もう遅いもんねー♪」パクッ 

モグモグ

ひなた(お、ホントにおいしい……なかなかやるじゃん。伊達にお菓子屋さんでバイトしてないわね)

ドクンッ!

ひなた(って、ん……?)

◇◇

「助けてひなたぁぁー!」ウルウル

「ねぇねぇひなたぁ♡」

「あ……ありがと……//」

「ちょっとひなたぁ!」プンプン

「こ、これあげる……この間のお礼……//」

◇◇

ひなた(な……何コレ……!//)

ひなた(ケーキを食べた途端に、やたらとあおいの顔が頭の中に浮かんできて……//)

かえで「ひなたちゃん、どうかしたの?」

ひなた「い、いや何でもないです!何でもありませんから!」アセ

ひなた(お、落ち着け私!)

ひなた(いくらあおいの手作りだからって意識しすぎだよ)

ひなた(こんなのただの普通のケーキだし!無心で食べれば別におかしなことなんて何にも……)ヒョイヒョイパクパク

ドクンドクンッ!!


◇◇

「ひーなた♪」ニコニコ

「ひなたぁ……」グスッ

「ひぃーなぁーたぁー?」ゴゴゴ

「ひ、ひなた……//」ギュッ

◇◇


ひなた「って、何コレ何だコレぇぇー!//」ブフォッ!

あおい「ぶっ!?」ベチョー

ひなた(無心で食べたら余計に事態が悪化したぁぁ!一体どうしちゃったの私?//)ガガーン

あおい「ちょっとひなた!急に吹き出さないでよ、かかったじゃない!」ミ ノリダシ

ひなた「うわわっ!また出た!//」バフバフ!

あおい「あいたっ!?」

ここな「大丈夫ですか、あおいさん?」フキフキ

あおい「ひなたぁ……あんたねぇぇ……」プルプル

ひなた「ご、ゴメン!本物だとは気づかなくてつい……」ワタワタ

あおい「もぉぉぉ!ここなちゃんの誕生日のお祝いなのに勝手に残り全部食べて!」

ひなた「だからゴメンってばぁ……」

ひなた(そんなに怒らなくたっていいじゃんか……)ブツブツ

あおい「謝るのは私にじゃなくて、ここなちゃんにでしょ!」キッ

ひなた「あう……ご、ゴメンね、ここなちゃん……」

ここな「わ、私は大丈夫ですから、顔上げてくださいひなたさん」ワタワタ

かえで「まあまあ、あおいちゃんも抑えて抑えて……」

ほのか「かかあ天下の図……」カシャカシャ



──山小屋二階──

ひなた(消灯しちゃうと本当に真っ暗だ……何も見えないな……)

ひなた「ねぇ、あおい……?」オズオズ

あおい「……何よぉ」ムスッ

ひなた「う゛……まだ怒ってるの……?」

あおい「怒ってるんじゃなくて、あきれてるの!どんだけ意地汚いのよまったくぅ」プクッ

ひなた「あうう……」アセ

あおい「ま、しょーがないわね」クスッ

ひなた「へ?」

あおい「ひなたのおっちょこちょいはいつものことだもんね。特別にひろーい心でゆるしてあげる♪」

ひなた「えー何それー!」ブー

アハハハ…


ひなた「明日朝……きれいに晴れるかなー……?」

あおい「わかんないや……でも……晴れるといいよね……」

ひなた「うん……そうだね……」

あおい「明日……楽しみ……」

Zzz…

ひなた「……あおい?」

ひなた(寝ちゃったのかな……?)

(かすかにあおいの寝息が聞こえる……)

(もっと近づいたら……寝顔も見えるかも?)

ギシッ

ジィーッ

(あおいの髪……柔らかそう……)

サラッ…

(唇も……)

スッ…


ひなた「って、何しようとしてんのよ私ぃー!//」ババッ!

ひなた(い、今、つい魔が差してキスしそうに……相手はただのあおいなのに!//)

ひなた(あのケーキ食べてから、私なんだかおかしくなっちゃってるよ!//)ジタバタ!

あおい「うにゅ……うるさいわよひなたぁ……」ムニャ…

──翌朝 谷川岳 トマの耳──

あおい「ねえ……どうしよっか、これから」

ひなた「これから?そうだなぁ……」

ひなた「下山したら、やっぱり温泉?」

あおい「そっちじゃなくて」

ひなた「あははは、分かってるってば!そうだねぇ……」

ひなた(約束がかなっちゃったら、私たちはどうなるんだろうって思ってた)

ひなた(でも……)

ひなた(終わりなんかじゃないよね。これからもっともっと楽しいことが始ま)

ギュッ

ひなた「ってうぇぇぇ!?//」ビクッ!

あおい「ひぃっ!?//」ドキーッ!

あおい「な、何よぉ!そんなにビックリすることないじゃない……手、手ぇつないだぐらいで……//」

ひなた「う、うん……そだね、ゴメン……//」

あおい「う、ううん……イヤだったら、その、離すけど……」

ひなた「べ、別にいいよ?このままで……//」

あおい「そ、そっか……//」

ひなた(そうだよ、友達ならこんなの普通じゃん)

ひなた(変に意識なんてする必要ないよね)

ひなた(急に手を握られた時は驚いたけど…指先から伝わるあおいの温もりに、昨日からの変なモヤモヤがおさまってきた気がする)

ひなた(うん、きっともう大丈夫)

ひなた「よーし、山頂目指して行っくぞー!」

あおい「うん!」

──下山後 深夜、ひなた自室──

ひなた「と思ったのにぃ……」

脳内あおいA「ひーなた♡」スリスリ

脳内あおいB「ちょっとひなたー、こっちも構いなさいよ!」

脳内あおいC「ひ、ひなたぁ……」ウルウル ジィーッ

ひなた(うううう、下山してみんなと別れるまでは普通だったのに)

ひなた(またおかしくなってきたのはその後だよ……)

ひなた(頭の中にどんどんあおいが浮かんでくるせいで全然眠れないんだけど!//)

ひなた「あーもう、うっとーしーわよ!いいかげんに消えなさいってば!//」バフバフ

脳内あおいA・B・C「きゃー」ポフン

ひなた「ぜぇ、ぜぇ……」

脳内あおいD「ひなたぁ!いきなり何すんのよ!」ポンッ

脳内あおいE「ちゃんと大切にしないと怒るわよ!」プンプン

脳内あおいF「バツとしてもっともっとくっつくからね!」ヒシッ!

ひなた「のわぁ!また増えた!?」ガガーン

ひなた(それにだんだんあおい達が図々しくなってきてるし……)ダラダラ

ひなた(やっぱりあのケーキが原因に間違いないわ)

ひなた(せめて一言文句言ってやんないと!)ピポパ

Rrrrr…

ピッ

ひなた「ちょっとあおいー!一体あのケーキに何入れたのよ!?」

<うにゅ……ひなた……?いきなり何の話ぃ……?>

ひなた「だからケーキ!あれを食べてから次から次にあおいが出てきて大変なんだから!」

<何言ってるのかさっぱりよぉ……ていうかこんな遅くに変な電話しないでぇ……ふわぁ>

ひなた「だからね、あおいが勝手に頭の中に……あれ?」

ひなた(本物のあおいと話し始めたら、消えちゃってる?)

<よく分かんないけど切るわよ……?>

ひなた「ま、待って待って!せっかくだしもうちょっと話しようよ~、ね?」

ひなた(このわけわかんない現象をちゃんと確かめないと!)

<今何時だと思ってんのよぉ……むにゃ……>

ひなた「あおいー、起きてよぉ~」

<……今日は山登りして疲れてるんだから寝かせてよぉ……ケーキだったら今度また作ってあげるから……>

ひなた「そうじゃないんだって!ちゃんと聞いてー!」

<はいはいそれじゃあね……おやすみぃ……>

ひなた「あっちょっ待っ」

プツッ

ツーツー…

ピポパピポパ

オカケニナッタバンゴウハ…

ひなた「あおいのやつ、電源切ったわねぇ……!」グヌヌ

脳内あおいG~J「ひなたぁぁー!」ポンポンポンポンッ

ひなた「げっ!電話が終わったとたんにあおい達が復活した!?」

ひなた「あおいの近くにいるか喋ってる時だけは消えるってことなのかな……」

脳内あおい達「ひなたぁー無視しないでよー」ワラワラ

ひなた「あーもーうるさーい!」

ひなた「こんなんじゃいつになっても眠れないよ」ハァ

ひなた「こうなったら……」

──翌朝 あおい自宅──

「あおい!夏休みだからっていつまで寝てるの?いい加減起きてきなさい!」

あおい「ふわーい……」ムクリ

あおい(昨日はひなたが変な電話掛けてくるからよく眠れなかったよ……何だったんだろ?)モソモソ

トタトタ…

ひなた「おはよーあおいー……遅かったじゃない……」ゲッソリ

あおい「うんおはよー……って、アレ?」メコスリ

あおい「何でうちにいるのよひなた?」

ひなた「私今日からあおいん家に泊めてもらうことに決めたから!」キリッ

あおい「はぁ?」

あおい「何で勝手に決めてんのよ!私聞いてないんだけど!」

ひなた「おばさんはいいって言ってくれたよ?」

あおいママ「ひなたちゃんならお母さんいつでも大歓迎よ♡」ウフフ

あおい「お、お母さぁん……勝手に許可しないでよぉ」ガックリ

ひなた「そういうわけで、よろしく頼むからね……!」ゴゴゴ

あなた(な、何だろこの妙な迫力は……)タラリ

あおい「ってひなた、目の下にクマできてるけどどうしたの?」

ひなた「誰のせいだと思ってんの!?」ピキッ

あおい「?」

──あおい自室──

あおい「ケーキを食べたらおかしくなったぁ?」

ひなた「そうよ!何か変なモノでも入れたんじゃないの!?」

あおい「人聞きの悪い事言わないでよ!別に普通のレシピだし……それに、ここなちゃんたちだって食べてて何とも無かったんだから」

ひなた「う、確かに……」ムムム

あおい「大体、何がおかしくなったっていうのよ」

ひなた「それは……その……」

あおい「?」

ひなた「……ぉいが……」

あおい「は?」

ひなた「だからぁ!あおいの顔が頭に浮かんできて眠れないんだってば!//」

あおい「……え?」

あおい「それってつまり……ひなたは、眠れなくなるほど私の事ばっかり考えてたってこと……?//」

ひなた「いやいや違うから!ケーキのせい!ケーキのせいだし!ていうか、あおいが勝手に出てくるんであって私が考えてるわけじゃないし!//」

あおい「……ひなたのえっち……//」ジトッ

ひなた「ちーがーうー!そういうんじゃないから!」ジタバタ!

あおい(ん?でも相手の顔が浮かんでくるって、どっかで……)

◇◇

「でも……愛情を込めるってどうすればいいんだろ?」

(えっと、たしか……食べる人の喜ぶ顔を想像して……)

「って、何でひなたの顔ばっかり浮かんでくるわけぇ!?//」

◇◇

あおい「あーっっ!も、もしかして……!?」ガビン

ひなた「ん?やっぱり心当たりあったのね?」ギラン

あおい「……いや、別にナイヨ?//」

ひなた「顔赤い!何か隠してる!」

あおい「かくしてないかくしてないよ?(棒)」

ひなた「うそつけー!白状しなさーい!」ガバッ! コショコショコショ

あおい「きゃーちょっと、やめてぇぇくすぐったい!」キャハハハ

ひなた「言いなさーい!」

あおい(い、言えるわけないでしょ)

あおい(ケーキにたっぷり愛情を込めすぎたかもしれないなんて……//)


・今日はここまで

・続きはまた明日以降に書く予定

・再開

──編み物中──

ピトーッ

あおい「ね、ねぇひなた……そんなにくっつかれるとやりにくいんだけど……//」

ひなた「しょうがないじゃん!あおいから離れるとあおいが出てきちゃうんだから」

あおい「いや、そんなこと言われてもわけわかんないし……」

ひなた(まあ、あおいに24時間密着してケーキの秘密を調べる目的もあるんだけどね)

ひなた「とにかく、私のことは気にせず編み物に集中してよ!」ギュー

あおい(ううっ、後ろから抱き付かれてる状況で集中なんてできるわけないでしょ……//)カァァ

──スーパーで買い物中──

ピトーッ

あおい「ね、ねぇひなた……そんなにくっつかれると歩きづらいんだけど……//」

ひなた「しょうがないじゃん!あおいから離れるとあおいが」

あおい「はいはいわかったから」

あおい(ていうか、腕組んで密着して歩いてるからめちゃくちゃ目立っちゃってるよ……恥ずかしい//)

ひなた「アレ?卵も買わなきゃいけなかったんじゃなかったっけ?」

あおい「はっ!わ、忘れてたぁぁー!」ガガン

ひなた「あおいはやっぱりドジねー」ニシシ

あおい「ひなたが気を散らせるからでしょ!」

ひなた「むっ、私のせいにする気ー?」

あおい「事実だもん!」

ムキーッ!

シャーッ!

レジのお姉さん「お客様、レジ前でケンカはお止めくださーい」アセ

レジのお姉さん(この子たち、仲いいのか悪いのかどっちなのかしら?)

──トイレ──

ピトーッ

あおい「ね、ねぇひなた……そんなにくっつかれるとしづらいんだけど……//」

ひなた「しょうがないじゃん!」

あおい「わ、わかったわよぉ……」スルッ…

あおい「ってぇ、んなわけないでしょー!バカ!えっち!出てけぇー!//」ポコポコポコッ!

ひなた「うわっ!いいじゃん減るもんじゃなしー!」

──お風呂──

ピトーッ

あおい「ね、ねぇひなた……そんなにくっつかれると身体洗えないんだけど……//」

ひなた「しょうがないじゃん!」

あおい「ホントにこんなにくっつく必要あるの……?恥ずかしいんだけど……//」

ひなた「何よ今さらー。昔はよく一緒に入ってたし、温泉にも最近行ったじゃん」

あおい「小学生の時の話だし!それに家と温泉じゃ全然違うでしょ!」

ひなた「まあまあ、背中流してあげるからさぁ」

あおい「うう……//」

あおい(ひなため、どんどん調子に乗ってきてるわね……)

あおい(でも私のケーキにも原因あるみたいだし……って断りきれない私のバカー!)ポカポカポカッ!


ゴシゴシ シャワシャワ

ひなた「お客さーん、どっかかゆいところはないですかー?」

あおい「別にないからいい」ブスッ

ひなた(無愛想な客でつまんないなぁ……そうだ)

ひなた「おーっと手がすべったぁ!(棒)」ツルッ

プニプニ 

あおい「ひゃぁぁぁぁ!?ど、どこ触ってんのよぉ!?//」ビクーッ!

ひなた「ごめんごめん手がすべっちゃってさぁー」アッハッハ

モニュモニュ

あおい「で……?いつまですべり続けてるわけ……?」ピキッ

ひなた「それにしてもあおい、相変わらずおっぱいちっちゃいねー。もうちょっと食べて肉付けないとダメなんじゃない?」ニヤニヤ

あおい「余計なお世話よ!// ていうかひなただってそんなに変わんないでしょ!」バッ!

ポヨポヨ

ひなた「ひゃっ//」

あおい「う、ウソ……意外とある……?」マジマジ

ひなた「いやーこないだ測ってもらったらAからCになっててさー」

ひなた「こんなとこからあおいと差が付いちゃうとはねー、ごめんねぇ♪」ホッホッホ

あおい「うぐっ……(こ、このドヤ顔ゆるせない!)」ギリッ

あおい「いい気になってるわね……こうなったら揉んで小さくしてやるー!」ガバッ!

ひなた「うわっ!?普通それ逆じゃないの!?」ツルッ ドターン

モミモミ ギャハハハクスグッタイ! コノー!


あおいママ「二人とも、遊んでないで早くお風呂出なさーい」

──就寝前──

ピトーッ

あおい「ね、ねぇひなた……そんなにくっつかれると眠れないんだけど……//」

ひなた「しょうがな」

あおい「しょうがなくない!//」キッ

ひなた「何でよー、山小屋じゃ一緒に寝た仲じゃん」ブーブー

あおい「変な言い方しないで!//あ、あれはその、寝袋に入ってたし……こんな風に抱き付かれるのはやっぱ違うっていうか……//」

ひなた「あー、こうしてると抱き枕みたいでちょうどいい感じ~」ギューッ

あおい「ちょ、ちょっとぉ……苦しいんだけど……//」

ひなた(結局ケーキの秘密は分からずじまいだったけど、こうしてくっついてれば妄想のあおいに悩ませられることもないし)

ひなた(もうずーっとこのままでもいいかも♡)

ひなた(昨日は登山の後なのに眠れなかったから……もう……)

スピー…

あおい「寝るの早っ!?」ガビン

Zzz…

あおい(……なんか、安心しきった寝顔だなぁ)チョンチョン

あおい(寝てる時はまあまあ可愛いのに、起きてる時は何であんなにくたらしいんだろ)クスッ

あおい(私も寝ようっと……)ポフン…





ドタン!バタン!ドスッ!


あおい「ひなたがすっごく寝相悪いの忘れてた……」ボロッ

──翌日──

ひなた「ええーっ!?これからバイトなのー?」

あおい「そうよ、だから付いてきたらダメだからね!」

ひなた「それじゃあおいがまた出てきちゃうじゃん!」ガーン

あおい「バイト中ぐらいガマンしてよ!とにかく行ってきまーす!」ガチャッ

タッタッタ…


ひなた(行っちゃった……)

ひなた(何か、寝てる時もずっとくっついてたせいかな……)

ひなた(あおいがいないだけで、心にぽっかり穴が空いちゃった感じ……)

ポポポポンッ!

脳内あおい達「ひなたー!あそぼー!」

ひなた「って、感傷に浸る暇もなくまた出てきたぁぁー!?」ガビーン

──商店街──

ひなた「考えたら、バイトしてるのは洋菓子屋さんなんだからケーキの秘密もあの店にあるかもしれないじゃん」

ひなた「見つかるとあおいに怒られるから外からこっそり偵察しよっと」コソコソ

脳内あおいK「ひなた~何やってるの~?」

脳内あおいL「私とも遊びなさいよ!」

ひなた「脳内あおいが邪魔だけど……負けない!」グギギ

ひなた「どれどれ、本物のあおいは何やって……」

ひなた「んん!?」

──華彩菓 すすき──

ひかり「あおいちゃん、お土産ありがとーっ♡」ギューッ!

あおい「ふわわっ!?ど、どういたしまして……//」

あおい(こ、この人相変わらず距離近いなぁ……//)

ひかり「あれ?」クンクン

あおい「どうしたんですか?」

ひかり「むむ、あおいちゃんの匂いがいつもと違う……」

あおい「ひぇっ!?ちゃ、ちゃんとお風呂には入ってますよ!」アタフタ

ひかり「そーゆーんじゃなくてぇ、これはぁ……」フム…


ガーッ(自動ドアの開く音)

あおい「わわっお客さんですよ!離れてくださいーっ//」グイグイ

ひかり「あん、いいところだったのにぃ」

あおい「い、いらっしゃいま……」

ひなた「……」ズモモモモ…

あおい「げっひなた!?」ギョッ

ズンズン

ひなた「……これください」ズイッ

あおい「は、はい……税込で315円になります……」

ひなた「……」ムスッ

あおい(ぶ、無愛想な客だなぁ……)タラリ

カチャカチャ…

ひなた「仕事中に何やってんのよ……ちゃんと働きなよ!」ボソッ

あおい「べっ別に私はお土産を渡しただけで……っていうか何でひなたにそんなこと注意されなきゃなんないのよ!」ボソボソ

ひなた「はぁ!?バイト始めるときは助けてひなたー!とか泣きついてきたくせに……!」

あおい「な゛っ!?それとこれとは関係ないでしょー……!大体ついてこないでって言ったじゃない!」

ひなた「何ですって!?あおいのくせにえらっそうに……!」

あおい「そっちこそ!」

キィーッ!

ガルルーッ!

ひかり「あっれー、二人ともケンカしてるの?めっずらしー」ギュウッ!

あおい「ひゃぁっ!ひ、ひかりさん……//」

ひなた「な゛っ!?」

ひなた(こ、この人またあおいに抱き付いて……ただのバイト仲間にしては馴れ馴れしすぎなんじゃないの!?)ピキッ

ひかり「あっ分かったー!私とあおいちゃんが仲いいから、ヤキモチ焼いちゃったんでしょー?」クスクス

あおい「や、やきもち?」

ひなた「そ、そんなわけないです!私はただ、あおいの勤務態度が悪いから注意してただけで……//」

ひかり「あっれー、そうなの?じゃあ、遠慮なく仲良くしちゃおっと♪」スリスリ

あおい「ひ、ひかりさんってば、店長さんに見つかったら怒られますよ……?//」

ひかり「照れてるとこもかわいー♡ね、ひなたちゃんもそう思うでしょ?」

ひなた「べっつに……」プクーッ

ひかり「素直じゃないなー」クスクス

ひかり「じゃあ、あおいちゃんは私がもらっちゃってもいいよね?」

ひなた「!?」

あおい「ひ、ひかりさんってば何言ってるんですか……//」

ひかり「んー?」ニヤニヤ

ひなた「あ、あおいなんか……」プルプル

ひなた「あおいなんか全然まったくいらないですし!ノシつけてあげますよーだっ!」ベー!

ひなた「あおいも何デレデレしてんのよ!バイト首になってもしらないからね!」ギロッ!

ズダダダ ガーッ

バーカバーカ!アオイノバーカ!

あおい「ちょ、ちょっとひなたぁ!」

あおい「……ひなたのやつ、付いてくるなって言ったのに何なのよもう」

あおい「あんな怒る意味も分かんないし……」

あおい(ていうか、あんなひなた初めてみたかも……)シュン

ひかり「……」

あおい「あ、ご、ごめんなさいひかりさん!ひなたが失礼なこと言って……」ペコペコ

ひかり「んーん」フルフル

ひかり「慌てるあおいちゃんとひなたちゃんが可愛くて、ついからかいすぎちゃった」

ひかり「こっちこそごめんね」

あおい「そ、そんな……」

ひかり「ほら、これ」ポスッ

あおい「あ、これひなたが買ったお菓子……あいつ忘れてったのね。何しにきたのよホントにもー……」

ひかり「それ、追いかけて返してきてあげて?」

あおい「え、で、でも店番は……」

ひかり「ちゃんと私がやっとくから、だいじょーぶ!店長さんにも言っとくから、ね?」ウインク

あおい「ひかりさん……ありがとうございます!」パアッ

ひかり「ほら、早く行かないと!」

あおい「はい!いってきます!」ダダッ!


ひかり「あーあ、嬉しそうな顔しちゃって……」ハァ

ひかり「結構本気なんだけどなー……これは分が悪いかなぁ?」カタスクメ

──公園──

トボトボ…

ひなた(頭の中がグルグルしてわけがわかんない)

ひなた(あの人とくっついてるあおいを見ただけで、何でこんなに胸が苦しくなるんだろ)

ひなた(あおいがいろんな友達と仲良くなるのはいいことのハズなのに)

ひなた(私、ヤなやつだ……)ズーン

タッタッタ…

ヒナター!

ひなた「!?」クルッ

あおい「はぁ、はぁ……ちょっとひなたー、待ってよー!」

ひなた「……何しにきたのよ」ムスッ

あおい「ねえ、まだ怒ってるの?」

ひなた「べっつに……あおいには関係ないでしょ」プイッ

あおい「……!」ギリッ

あおい「関係なく……」

あおい「関係なくなんか、ないわよ!ひなたのバカっ!」

ひなた「あ、あおい……?」

あおい「いつもひなたに手を引っ張ってもらってばっかりなんてヤダ!」グスッ

あおい「ひなたが困ってたら助けてあげたいし」

あおい「ひなたが怒ってたら、謝って仲直りしたいの」

あおい「だってひなたは……私の大事な大事な大事な……」

(友達なんだから……!)


ひなた「あおい……」

あおい「ごめんね、ひなた」ペコッ

ひなた「私こそ……ゴメン」ペコッ

あおひな「……」チラッ

あおひな「……ぷっ!」

アハハハ…

(ときどきにくたらしくってケンカしちゃうこともあるけど)

(すぐに仲直りできるのが、幼なじみのいいとこだよね♪)

あおい「ねえひなた……本当は私、知ってたんだ。ケーキの秘密」

あおい「今まで黙っててごめんね」

ひなた「それはわかってたよ」

ひなた「だってあおい、隠し事すんのヘタクソなんだもん」クスクス

あおい「言ったわねー?」ムゥ

ひなた「教えて、ケーキの秘密」

あおい「う、うん……//」

(それはね……)

ボショボショボショ…

あおい「……//」モジモジ

ひなた「……//」チラチラ

あおい「お、教えたんだから何か言いなさいよ……//」

ひなた「う、うん……えっとぉ……//」

ひなた「ちょっとびっくりしたかも……だって、あおいがそこまで私の事を大好きだなんて知らなかったしぃ?//」

あおい「うぇぇ!?言っとくけど、私はただ『料理は愛情』的な一般的な意味で込めただけなんだからね!// ひなたの方こそケーキ食べたぐらいで私の事しか考えられなくなるなんて、ちょっとアブナイんじゃないのぉ?」

ひなた「はぁ?あおいが私の事を好きなんでしょー!?」

あおい「ひなたが私の事を好きなんでしょ!」

グヌヌヌヌ…!



ひなた「こうなったら……決着つけるしかないわね……」ギラン

あおい「決着?」

ひなた「私家に帰って準備してくるから!あおいはお店に戻ってなよー!」ダッ

あおい「え、ちょっと……準備って何ー?」

ひなた「いいからいいから!それより早くしないと、ホントに首になっちゃうよー!」

ダダダ…

あおい「……何なのよもう」ポツーン

──バイト終了後──

あおい「ひなたのやつ、わけわかんないメール送ってきて……」


【再会の地で待つ! Fromひなた】


あおい「何なのよ再会の地って……?ちゃんと書きなさいよ!」

あおい(えーっと……小学校以来のひなたに久しぶりに会ったのは学校だけど。今は夏休み中だし)

あおい(谷川岳……はいくらなんでも無いよね)

あおい(てことは……)

──天覧山──

ひなた「おーあおいー!よく分かったねーここだって」フリフリ

あおい「もー!暗号みたいなメール送ってこないでよぉ」

ひなた「いやー、忘れっぽいあおいのことだからてっきり分かんないかと……」ニシシ

あおい(うぐっ……チクチクくるわね……)タラリ

あおい(でも、考えてみれば簡単なことだった)

あおい(富士山で挫折しちゃって、もしかしたらダメになっちゃってたかもしれない私たちの関係が)

あおい(ここで再会して、もう一回スタートした場所だもん)

あおい(結局、いつもあおいが、手を差し出してくれるんだよね……)フフッ

あおい「で?決着ってどうするつもりよ?」

ひなた「うん、これ」ズイッ

あおい「何コレ……炭?」

コゲーッ…

ひなた「違うわよ、チョコレートケーキ!」

あおい「ええーっ!?こ、これがぁ?」ガビン

ひなた「お父さんに教えてもらって作ったの!」

ひなた「そ、その……愛情、たっぷり込めて……//」

あおい「!?」

ひなた「だから、食べて食べて!」

あおい「えっとぉ……遠慮シトキマス……」

ひなた「はぁぁ!?何でよー!?」ガビーン

あおい「だってこれ!明らかに失敗作でしょぉ!」

ひなた「そんなことないって!料理は愛情でしょ?」

あおい「それはレシピ通りにちゃんと作っての話よ!」

ひなた「あっれー、もしかして怖いのぉ?」

あおい「怖い?」

ひなた「コレ食べたら私みたいになるんじゃないかって思ってるんでしょー」ニヤニヤ

あおい「そ、そんなことあるわけないでしょ!」

ひなた「だったら食べなってば!」

あおい「いーやー!」グイグイ

ドタバタ

ひなた「あっ!あっちにホタルの妖精がいる~(棒)」ユビサシ

あおい「えっどこどこ?」クルッ

ひなた「隙ありっ」ズボッ

あおい「むぐっ!?」

(ひなたの焼いたチョコレートケーキは、表面は焦げてるし、中はパサパサだし)

(なんかジャリジャリするし、砂糖の分量を間違えたのかやたらと甘ったるくて)

(もう、どう考えてもダメダメな失敗作!でも……どうしてだか……)

あおい「おいしい……?」モグッ

ひなた「でしょー!お菓子作りなんて簡単簡単♪」

ひなた「ただあおいの事だけ考えながら作るだけだもん。それだったらいつもやってることだし♪」

あおい(こ、こいつお菓子作りと人生をなめてるわね……って、アレ?)


ドクンッ!

ポポポポポンッ!

脳内ひなたA~Z「「「あーおいーっ!あおいあおいーっ!」」」

あおい「ぎゃぁぁぁーっ!?変なのが大量に出てきたぁぁー!?」ビクーッ

ひなた「やったー成功だー!これで条件は同じになったわね!」

ひなた「ていうか変なのって何よ、失礼な」ジト

アオイーアオイー! アオイッテバー!

あおい「う、うるさぁーい!何てことしてくれんのよひなたぁ!」キンキン

ひなた「私の苦労がやっとわかったみたいねー」ニヒヒ

あおい「一体どうすれば消えるのよー!」バフッバフッ!

ひなた「こうするの」ギュウッ♪

ポフンッ

あおい「あ、消えた……」

ひなた「ね?」

ひなた「まあしばらく離れてるとまた出てくるけどねー」

あおい「えええええ!?ぜんぜん解決になってないじゃない!」ガビーン

ひなた「いいじゃん別に」

ひなた「ずーっとこうやってくっついてればさ」ギュウウ

あおい「あう……//」

あおい「って、そんなの無理に決まってるでしょ!// 現実を見なさいよ!」

ひなた「何だよームードないなー」ブー

あおい「ひなたに言われたくないんだけど」

ひなた「あ、いいこと思いついた」ピコーン

あおい「いいこと?」

ひなた「抱き合ってるだけじゃ足りないなら、もっともっとくっついたら治るんじゃない?」

あおい「もうすでにこんなにくっついてるのに……もっとって一体どうするのよ……//」

ひなた「はぁ……あおいはホントにニブイなー」ヤレヤレ

ひなた「こうするの♪」

チュッ…

(ひなたとの初めてのキスは)

(とろけるような、甘ったるいチョコレートの味だった)

(って、自分でつまみ食いしてたわね!?まったくしょうがないんだから……)

(これが物語の世界だったなら)

(キスでケーキの魔法は解けて、私たちはただの友達に戻るはず)

(でも、これは私たちに本当に起こった、不思議な話)

(約束がかなっちゃっても、私たちの道がどこまでも続くように)

(私たちの新しい関係も、ずっと続いていく)

(思えばきっと、どこまででも行けるんだよね)

(あの山の稜線の果てまでも……)


あおい「って、全然治ってないじゃないのぉぉ!ひなたのトンチキー!」ガビーン

ひなた「あっれぇぇー?ダメだったねー」アッハッハ

脳内ひなた達「あおいあおいー♪」イエー!

脳内あおい達「ひなた、ひなたぁ♡」スリスリ

──某登山道──

あおい「ね、ねぇひなた……」クイクイ

ひなた「えー、もうなのぉ?早くない?」

あおい「うるさいわね……!ひなただってそろそろでしょ?」

ひなた「しょーがないなー」

ギュッ

チューッ…




ここな「……//」

かえで「……//」

ほのか「……」カシャカシャ!

ひなた「っぷは……」ポー

あおい「はふぅ……」トローン

ひなた「ん……あれ?みんな立ち止まってどうしたのー?早く進まないと日が暮れちゃうよ?」

かえで「あのー、一つ聞いてもいい?」

あおい「なんですか?」

かえで「何で二人は、その……5分ごとに抱き合ってキスしてるの……?」

あおひな「だってそうしないとひなた(あおい)が出てきちゃうんです!しかたないんです!」

かえで「へ、へぇーっ……そういうことぉ……」

かえで(どうしよう、二人の言ってる意味が全く分からないわ……)ダラダラ

あおい「大体、ひなたが無理矢理食べさせるからこんなことになったのよ!」

ひなた「最初はあおいでしょーが!何私のこと考えながらお菓子作りしたりしちゃってんの!スケベ!」

あおい「えっちなのはひなたの方でしょー!」

ひなた「あおいの方!」

グルルルル!

キシャー!

かえで「あ、あの、他の登山客の人たちがみんな見てるし……せめてイチャイチャするのかケンカするのかどっちか一つにしてくれない……?」

ここな「あおいさんもひなたさんも!仲良しなのはいいですけど、ちゃんと山登りに集中しないとケガしちゃいますよ!」キッ

あおひな「ご、ごめんなさーいっ!」ビシッ

ほのか「……その表情、いい」カシャカシャ

ここな「?」

ほのか「……いつもの笑顔も可愛いけど。キリッとした顔も、ギャップがあって……」

ここな「ほ、ほのかさん……//」

ほのか「……一つ、お願いが……」

ここな「はい、何ですか?」

ほのか「今度、撮らせてほしい……その、プライベート、でも……//」

ここな「……はいっ」ニコ

ほのか「本当にいいの?」

ここな「ほんとうですっ」

ほのか(良かった……思い切って、勇気出して言ってみて……)

ここな「私が写るのはちょこっとだけ恥ずかしいですけど……//」

ここな「ほのかさんの写真、見せてもらうの……楽しみです♡」

ほのか「……♪」


イチャイチャ

キャッキャ

カシャカシャ…

かえで「な、なんかすごく疎外感を感じるんだけど……」

かえで「そういえば、ゆうかは何してるのかなー」

かえで「……まだメール送れるかも」ピッピッ

──夜、ゆうか自宅──

ゆうか「ちょっと!泊まりに来るんなら来るでもうちょっと早めに連絡してよね!」

かえで「あははは、ごめんごめん。何か急にゆうかの顔が見たくなっちゃってさー」ヒラヒラ

ゆうか「……っ!//」

かえで「あれ、何か顔赤い?」

ゆうか「うるさい!ご飯が冷めるからさっさと食べて!」プイッ

かえで「うんうんありがと、ってすご!超豪華!」キラキラ

ゆうか「ちっちが……ただの昨日の余り物よ!かえでが急に来るとか言うから……」

かえで「ええー、本当に?」

ゆうか「本当よ!全くかえでは自分勝手なんだから……」ガミガミ

かえで「早速いただきまーすっと」パクパクッ

かえで(本当に美味しい!山登りの後の疲れた体に染み渡るわ~♪)

ゆうか「ちょっと聞いてるの?」

かえで「はいはーい、って、ん……?」



ドクンッッ!



かえで(え……?)

・終わりです

・読んでくれた人、レスくれた人さんくす

・ヤマノススメセカンドシーズン大好評放送中!

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