誠子「…は?」
淡「は?じゃないよ!私が高鴨穏乃を次の試合で100回倒す方法を考えるの!」
誠子「すまん、意味が分からない」
照「…淡、本気なんだね?」
菫「時期エースとして負けたままで終わるわけにはいかない、その心意気や良し。我々も協力してやろう」
尭深「…一試合で100回倒すのは至難の業…しかし、それをやり遂げてこそ淡ちゃんは真のエースになれる」
誠子(え?状況について行けてないの私だけ?)
淡「マジもマジ!ダブリー100回分ぐらいの大マジだよ!」
照「…ダブリー100回分…それは私でも破れない。淡の本気、確認した」
菫「よし、では、作戦会議だ!」
誠子(…いや、100回倒すって比喩っていうか勢いで言っただけじゃなかったの?文字通り100回倒すの?)
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尭深「まず、『倒す』の定義を見直すことから始めましょう」
照「そうだね。麻雀の順位で上回るだけだとどうやっても二回しか倒せない」
菫「もちろん、麻雀の順位で勝つのも倒すうちには含むが、あと98回倒さなければならないな…」
淡「むむむ…でも、とりあえず2回は倒す目途がついたね!大きな一歩だよ!」
菫「100回倒すのもまずは一回から、コツコツと積み上げて行こう」
淡「うん!」
誠子(その二回で満足するという選択肢はないのかって言うか、それが出来なかったから「次は100回倒す」発言に繋がったんじゃ?)
照「あとは…そうだね、勝負手を潰すのも倒したことにならないかな?」
菫「それだ!」
淡「1000点でもいいから、相手の勝負手を潰せばいいんだね?よーし!それなら三回ぐらいは倒せそう!」
咲「私が穏乃ちゃんを倒してから淡ちゃんが私を倒せば、二回倒したことにならないかな?それで私を二回倒せば四回になる」
照「なるほど…確かに」
菫「その発想はなかった。そうか、間接的に倒すことも可能なのか…」
尭深「そんな発想がどこから湧いて来たんですか?」
咲「これを見てください」
―――
【阿知賀編三巻146ページ】
美幸「私に五万点差をつけた園城寺怜―――それを相手に更に7万点差ですって―――!?」
―――
尭深「…これは…」
照「…そうか、私が園城寺さんを倒したのがヒントになったんだね」
菫「良かったな照、お前の頑張りは、後輩の成長につながっていたぞ」
淡「凄い…私、テルについてきて良かった…」ポロポロ
咲「まず、私が調整して末原さんを穏乃ちゃんに勝たせます、そして、更にその末原さんを私が倒します。その私を淡ちゃんが倒せば…?」
照「一度に三回…いや、一度に四回倒せることになる!?」
咲「末原さんが穏乃ちゃんを二回倒す、その末原さんを私が二回倒して、その私を二回倒したら?それが三回になれば?」
菫「凄い、凄いぞ!これなら、半荘二回と言わず、一回で100回倒せるかもしれない!」
咲「それだけじゃないですよ、これは更に応用できるんです」
照「そうか、そういうことか…」
淡「…テルー?」
咲「気付いたみたいだね、お姉ちゃん」
照「…阿知賀を区間四位にすれば、阿知賀を倒した高校と、阿知賀を倒した高校を更に倒した高校、それを更に倒した高校が生まれる」
咲「それが、最後の半荘まで9回繰り返される。そして、最後にそれをすべて倒して優勝すれば?」
菫「阿知賀を9回倒し、それを倒した高校を倒して18回、更にそれを倒した高校を倒して36回…阿知賀を、63回倒せる?」
咲「そういうことです。そして、対局中に37回倒せば…」
淡「高鴨穏乃を100回倒せる!!!!」
照「やったね、淡!」
尭深「あれ?でも、それだと私たちも倒されてませんか?」
菫「いや、阿知賀が四位で我々が三位なら、我々が阿知賀を9回倒して、それを倒した二位の高校が阿知賀を18回倒して、更にそれを倒した1位の高校は36回倒せる」
咲「そう、つまり、阿知賀を四位にしつつ、白糸台が三位になる、これを大将戦前半まで続ければいい」
菫「難しいが、可愛い後輩のためだ、やってみせよう」
照「ありがとう、咲。あなたのおかげで、淡は成長できる」
尭深「でも、いいの?敵に塩を送るような真似をして」
咲「ライバルが強くなった方が楽しいですから」ニコッ
誠子「…そろそろ突っ込んでいいか?」
咲「はい?なんですか亦野さん?」
誠子「なんで宮永先輩の妹がここに居るんだよ!?」
咲「淡ちゃんが穏乃ちゃんを100回倒すことに比べれば、些細なことだと思いませんか?」
照「全くその通り」
菫「亦野、元はと言えばお前が白水を和了らせすぎたのが問題の始まりなんだ、少し黙ってろ」
誠子「いや、おかしい!これは絶対におかしい!」
照「咲、明後日は手加減しないよ」
咲「うん、楽しみにしてるよ」
淡「よーし!100回倒すぞー!」
【翌日 Bブロック準決勝】
なんやかんやで清澄と姫松が無事に準決勝を通過しました
【更に翌日 決勝戦】
照「」タン
漫「ろ、ロン!18000!」
照(よし、これで三位…)
『宮永選手、まさかの放銃ーーー!!!』
『意図が分かりませんね…明らかに面子を崩して差し込みに行ったように見えますが、理由がありません』
『圧倒的強さでチームを引っ張ってきたチャンピオンが、まさかまさかの区間三位でバトンを繋ぐことになりましたー!』
『とはいえ、白糸台は他の選手も強力なメンバーが揃っています。普段は宮永選手が作る大量のリードのため三校からマークされることが多いですが、それでも大抵の相手にはプラスで終わるメンバーです。今回はそれもなく自由に打てるので、期待できるでしょう』
『王者は宮永照だけじゃないーー!五人全員が虎!他校は狩られる獲物に過ぎない、それがチーム虎姫えええ!!!!!!ってことだね!?』
『えっと、そこまでは言ってないけど』
『エース宮永照のまさかの不調で、虎たちがその牙をむき出しに襲いかかるのかー!?次鋒戦以降も目が離せないーーー!』
玄「点棒…また一杯取られちゃったよぉ…」
由子「ロンなのよー」
菫(これで区間三位の阿知賀まで12000差…オーラスで射抜いて決める!)
宥「」ゾクッ
宥(私が狙われてる…?ううん、視線はあっち…狙いは真瀬さんのはず…)タン
菫「ロン、8000」
宥「うそ…」
菫「いつまでも癖が直らないままだと思うな。沈んでもらうぞ、松実宥」
宥(ま、まずい…私までラスで終わったら…)
『不可解な振り込みでラス転落からの三位の阿知賀への直撃、どう見ますか?』
『まあ、常識的には悪手だねい。下で争ってもトップとの差が開いてくだけだ』
『白糸台は先鋒の宮永選手も不可解な振り込みをしていましたが…』
『多分何かしら狙いはあると思うんだけど、それが優勝に繋がらない感じだね。何を狙ってるのやらさっぱりだねい』
『白糸台には優勝より大事な目的があると?』
『多分ね。パッと見、阿知賀を沈めることと、自分たちもそれに合わせて沈むことも狙いに含まれてる。トップと二位は眼中にないんじゃないかね?知らんけど』
『本当にさっぱり分かりませんね…』
『だろー?何考えてんのかねあの子ら?マジわっかんねー』ケラケラ
憧(ここまで区間トップ…我ながら上出来だわ。で、渋谷尭深のここまでの第一打はこう…)
白発白中発白中中発6p
憧(大三元確定…あとは、6筒周りが怪しいぐらいか…二巡目で張ってるってことはないでしょ。ここで直撃さえ喰らわなければ…)タン
打:1萬
尭深「ロン」
憧「は?」
尭深「大三元、32000です」
23m66p白白白発発発中中中 ロン:1m
憧(うそ…でしょ?だって、ツモ切りだったじゃん?清澄が、前巡に4萬切って…山越しでうちを狙うなんて、そんなの…)
『これは阿知賀にとっては手痛い振り込みになりましたね』
『致命的!』プンスコ
『しかし、白糸台はトップの清澄の4萬を見逃して三位の阿知賀から和了りました』
『100回倒す!』プンスコ
『はい?』
『目的!』プンスコ
『目的というのは、不可解な打牌を続ける白糸台の目的でしょうか?』
『そう!』プンスコ
『…さっぱりわかりませんが、とにかく阿知賀は苦しくなりました。また、白糸台も役満和了にも関わらず上位二校との点差は大きく、いよいよ苦しくなってきました』
誠子(狙ってるわけじゃない、狙ってるわけじゃないんだ…しかし…)
和「」ヒュン
誠子(インターミドルチャンプ、原村和…二学年下とはいえ、世代トップの打ち手。白水哩なんかと同様、私より格上の相手だ…)
絹恵「リーチや!」
誠子(愛宕妹…関西の名門姫松で二年生レギュラーになるだけあって地力が高い…そして、今日は運がこいつに偏ってる。原村は地力で渡り合っているが、私は少し苦しい…)
灼(はるちゃんが超えられなかった壁は超えた…あとは私の麻雀を打つだけ…)
誠子(で、鷺森灼…準決勝ほどの気迫がない。地力では私の方が上だから普通に勝ててる)
和「ツモです。500、1000」
絹恵(かわされた…!でも、まだや…まだいける!)
久「予定通りね。あとは下二校に10万差をつけた状態で姫松と一騎打ちよ」
咲「…ここまで見事にはまるものなんですね」
久「優勝候補の白糸台がゲームメイクをして、うちがそれをフォローしてるんだもの、当然よ」
まこ「準決勝の様子を見て咲を白糸台の控室に送り込んだのは正解じゃったな」
優希「先鋒で大暴れできたじぇ」
久「しかも、大将戦前半でも大星さんは三位狙いに徹するはず、姫松の末原さんだけを抑えればいい」
咲「でも、ここまでの四人がこの状況を作りやすいからとはいえ姫松が残ってしまいました。相手が末原さんだし…自信ないです」
久「前半をリードして折り返せば大丈夫、後半は、守りに入ればあっちの魔物が勝手に削ってくれるでしょ」
咲「それはそうですけど…まあ、やるだけやってみます」
清澄 174900
姫松 146200
白糸台 52300
阿知賀 26600
穏乃(なんとかしないと…何とか…とにかく、和了り続けるしかない…)
淡(ふっふっふー…準決勝の時のプレッシャーが全然ないよ…ちょっと拍子抜けかなー?)
咲(…淡ちゃんが親倍張ってる…この1筒は切れない)タン
恭子(筒子が臭いな…オリとくか)タン
穏乃「うっ…」
穏乃手牌
2223456799s東東東 ツモ:1p
穏乃(東一局じゃ全然見えない…これは通るのか!?)
穏乃(いや、ここから優勝するなら、親番で連荘するだけじゃなくて子でも稼いでいかなきゃダメだ!切るしかない!)
打:1p
淡「あはっ、それだよ」パタン
1223344赤567888p
淡「面前清一色・一盃口・赤1。親の倍満は24000」
恭子(阿知賀は完全に終わったな…そして、これは不味いで…)
清澄 174900
姫松 146200
白糸台 76300
阿知賀 2600
恭子(阿知賀がトビ寸前や…最悪なことに阿知賀が下家やから、勝負手でも阿知賀が先に切ってしまって同巡で和了出来ないってこともあり得る)
咲(…これで、簡単にトぶ穏乃ちゃんは勿論、末原さんも自由に打てない。なら…)
淡(ふっふっふー、あの高鴨穏乃の絶望した顔、高い手の直撃だけじゃなくて勝負手でもあったのかな?なら二回倒したことになるこれは幸先がいいよー)
―――
咲「ツモ。900・1700」
淡「あー、私の親がー!?」
咲「次は私の親だね」
恭子(くそっ、この状況、どう打てばいいんや!?)
咲「ツモ、4000オール」
淡「むー…いいもん!満貫ぐらいくれてやる!」
恭子「…」ガクッ
穏乃「あ…うそ…」カタカタ
『決着――――!!!!!清澄高校宮永咲選手、自らの和了りで阿知賀女子をトバして試合を決めました――――!』
『…大星選手のあの倍満は軽率でしたね。リーチをかけていたわけでもないので、山越しで他からの直撃を狙うか、ツモを待つべきでした』
『小鍛治プロの手厳しいお言葉!しかし、結果を見るとそうするべきだったかー!?』
『これは別に辛口コメントじゃなくて事実でしょ!?』
淡「え?」
咲「ごめんね、トビ終了だよ」
淡「あ…ああああああ――――!?100回倒すことに気を取られて忘れてた――――!」
照「…いや、淡は100回倒すことに専念して、100回倒した。目的をやり遂げた以上、悔いる必要はない」
淡「え?」
恭子「宮永照!?どっから湧いた!?」
菫「私も居るぞ!」
尭深「勿論、私も!」
照「…あれ?誠子は?」
咲「居ないみたいだね。じゃあ、私が代わりに入るね」
照「仕方ないね」
恭子「え?なんやこれ?」
淡「テル…どういうこと?私が100回倒したって…?」
照「…この区間の得点を見て」
淡「この区間…あっ!?」
淡 +18300
咲 +15500
恭子 ― 4900
穏乃 ―28900
照「淡は、高鴨さんを倒したんだよ」
淡「で、でも…これじゃ一回だけしか…」
尭深「ううん、あの倍満で阿知賀は死に体になった。あの直撃には、20回倒したぐらいの価値がある」
恭子「…せやろか?」
淡「そ、それでも、まだ21回だよ!?」
菫「いや、あの時の高鴨は勝負手を張っていた。それを潰したから更に倍の価値がある。40回だ」
淡「…でも、100回にはならないじゃん!」
咲「昨日は話してなかったけど、トバしたら10回倒すぐらいの価値があるってことに気付いたんだよ。私は穏乃ちゃんをトバした」
淡「あ…」
咲「そして、穏乃ちゃんを10回倒した私に勝った淡ちゃんは、穏乃ちゃんを更に10回倒したことになる」
淡「で、でも!それでも50回だよ!順位で勝った分とシズノに勝ったスエハラとそれに勝った咲に勝った分を入れても57回、まだ全然足りないよっ!?」
菫「やれやれ…まだ気付かないのか大星?」
淡「な、なに?全然わかんないよ…?」
照「私たちは五人で一つのチーム虎姫、私たちの絆の力で、倒した回数を二倍にするんだよ」
恭子「おかしい、ここまでは100歩譲って認めるとしてもそれは絶対におかしい」
淡「そ、そうか…テル達との絆があれば…」
咲「亦野さんが居ないから私が代わりに入っててちょっと絆パワー弱まってるけど、57回倒してるから、倍にならなくても100回に届くからセーフだよね」
照「うん、私の計算では誠子の代わりに咲でも1.7倍程度にはなるから、57×1.7で100に届く」
尭深「おめでとう、淡ちゃん」
菫「流石、白糸台の次期エースだな」
淡「み、みんな…うわあああああん!」
恭子「いや、色々突っ込みたいところが多すぎてもうどうしたらええかわからんけど、とりあえずいい話っぽく締めるのやめろや」
こうして、私たちのインターハイは幕を閉じた。
高鴨穏乃を100回倒す、そのためにチームが一丸となって戦った。
この経験はきっと、来年以降の白糸台にとって、三連覇以上の大切なものをもたらしてくれるにちがいない。
私に道を示してくれたサキ。
咲が示してくれた道を、切り開いていてくれたテル。
私が進む道に寄り添ってくれたスミレ。
お茶を煎れてくれたタカミ。
五人で一つのチーム虎姫、誰が欠けても、私が高鴨穏乃を100回倒すことは出来なかった。
『来年は、絶対優勝するから!私のために頑張ってくれたみんなのためにも、絶対!』
一つの夏が終わり、また、新しい夏に向けて、季節は巡る。
秋が過ぎ、冬を超えて、春の芽生えを迎えたのち、新しい夏に刻まれるだろう。
私たちの、新しい物語が――――
恭子「いい話っぽく締めるのやめえ言うたやろが!?おい!聞いとんのか大星!おい!?」
一年後に始まる新しいの物語のために、今は、しばしの休息を―――
槓
というわけであわあわの誕生日SSでした。
依頼出してきます。
一番安い上がりで100回阿知賀から点取るのかと思った
>>25
100回直撃するとなると親で20以上の連荘が必須なので…本場を22本積むと、親なら子の満貫以上が確定するので相当酷いことになります。参考までに親で100回連続で30符1翻をロン和了りした場合の点数を示しますと、163万5000点となります。
余談ですが、終局(流局・和了問わず)後にサイコロ振って、出目の数だけ本場が足される(親が流れても消えず、積み棒が場に残り続ける)とかいうクソルールで半荘打ってみると、通常では積まれない非現実的な数の本場がいかにヤバいかわかります。
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