慕「この鳥さんが見えるの?」咏「おう?」(56)

現代 実況解説者控室

咏「いいじゃんよー、解説中にせんべいくらい食べたってさー」

えり「バリバリ食べる音がマイクに入るじゃないですか!だめですよ!」

咏「持ち込みくらい他のプロだってやってるぜぃ~?」

えり「……そうなんですか?」

咏「解説席でカツ丼かっこんだり、唐突に歌いだしたりさ~」

えり「えっ…」

咏「ペットのハヤブサ持ち込む人もいる気がするし」

えり「ハヤ……」

咏「今の途中からでまかせ」ふはは

えり「…………」イラッ

咏「…………」

えり「……?」

咏「…………」ジーッ

えり「……なんですか?」

咏(…ま、でまかせって事にしとこうかねぃ。えりちゃんにゃーちょいっとシゲキが強いだろうしね…)

えり「?」



――いたんだよ。ホントに鳥と一緒に打ってた人が。

ハヤブサだったのかは知らんけど。

今頃…どうしているんかねぃ…――





――「あら? あなたはこの鳥さんが見えるの?」――




――「うん、私の大事なお友達だよ!」――




咏 中学三年生 横浜

友人A「ねー三尋木さん!お願い!」

咏「知らんって言ってんだろーよー」

友人B「高校に行ったらさ、一緒に麻雀部入ろうよ!」

咏「ガッコーの部活でやる麻雀なんか興味ねーってさ」

友人A「三尋木さんがいればきっと全国だって行けるよ!一緒に頑張ろう!」

咏「ハナっから他人に頼ってんじゃねーぜい」

友人B「もー、つれないなー」

友人A「あと一人いれば来年団体戦に出られるんだ!」

咏「いや、知らんし」

友人B「三尋木さん、小学生の時は全国大会だって出てたのにー」

咏「存じ上げぬ」

友人A「中学になってずっと無所属なんでしょ? 勿体ないよ!」

咏「!」

友人B「?」

咏「…………」

友人A「どうしたの?」

咏「…………フン」

咏(……ま、それはそーなんだよね)

咏(中学高校の全国大会ってな、部活の大会しかねーからねぃ。小学生じゃ、んなこたーなかったってのに…)

咏(なーんでわざわざ学校で麻雀打たなきゃいけないんだか…。雀荘でプロと打ってるほうがよっぽどいいってさ…)

咏(あーあ、小学生に帰りたい……)

咏(なんか楽しーことでも無いかねぃ……)

友人B「三尋木さん…?」

咏「……んにゃ、知らんから」

友人A「…………」

友人B「……そう……」

咏「…………」

ワイワイ キャッキャッ ハヤヤ~☆

咏「ん?」

はやり「わー、ランドマークタワーだよっ☆」

杏果「あっちの観覧車も凄く大きいねー」

閑無「いちいち騒ぐなよみっともない…。田舎者丸出しじゃないか」ドキドキ

悠慧「何だよ、いちばん横浜に行きたいって言ってたの閑無だろー」

閑無「う、うるさいな!ランドマークとかはついでだろ!?慕の住んでたところを見に行くんだろ!」

慕「うん…、できれば、友達にも会えるといいな…」

咏(おのぼりさん丸出しだねぃ… 夏休みってなこれだから…)

友人A「ねえ、あの人って…」

友人B「うん、はやりんだ!」

咏「?」

友人A「今注目の女子高生アイドル麻雀部員だよ! インハイ島根代表の!」

友人B「わぁー、初めて見たー!」

咏「……ふーん」

咏(あー… そっか……)

咏(どっかで見た顔と思ったら…。むかーし、こども大会にいたねーさんたちか)

咏(そうそう、小二くらいの全国大会で打った……瑞原はやり、だっけかね)

咏(それにあの後ろのは…その次の年に見た…)

咏(アイドルとかは別に知らんけど…部活麻雀やってたんかい…)

咏(どいつもこいつも部活動ってか… そんなにいいもんかねぃ…)

咏「…………」

友人A「三尋木さん?」

咏(……まーでも、どうせ暇だし……)

咏(このままグダグダしてるよりは、ちったぁ面白そうかもねぃ)

咏(ちょろっと、ついてってみよっか)

友人B「どうしたの?」

咏「悪ぃね、用事できちった」

友人A「えっ?」

咏「今日はもう付き合えねーや。またねーぃ」バイバイ

友人B「あっ、麻雀部の話は…」

咏「来年のことだろー? 前向きに善処しとくってさ」

タッタッタッ

閑無「ところでさ、その友達ってのは、ちゃんとアポ取ってあるんだろうな?」

慕「あぽ?」

杏果「会う約束はしてるの?ってことだよ」

慕「してないよ…」

閑無「はあ!?」

慕「連絡先とか知らないし…。行こうって話になったの、こっち来てからだったし…」

閑無「大丈夫なのかよそれで…」

悠慧「まーいいじゃん、最悪横浜観光でもさ。トラの穴ってこっちにもあるんでしょー?」

閑無「昨日はお前の希望で秋葉原行っただろ! 今日はこっちを優先しろよ!」

悠慧「わかってるってー」

悠慧「ま、それより先に腹ごしらえだよ! ほら、あっちの方でしょ、中華街!」

はやり「わーい、楽しみー☆」

閑無「ったく…しょうがないなお前たち…」ブツブツ

杏果「いいじゃない、せっかくこっちに来てるんだから楽しまなくちゃ」

悠慧「そうだ、慕のオススメのお店とかないの?」

慕「ごはんはいつも私が作ってたから…あんまり外食とかは…」

悠慧「なーんだよー」

杏果「まあ、知らないところを探検するのも楽しみってもんだよ」

閑無「そ、それならさ、まずあっちの…」ドキドキ

ドスン

閑無「うわっ!」

バサッ バサバサッ

通行人「あ、サーセンッス」

閑無「もう!気をつけてください!!」

慕「閑無ちゃん、何か本が落ちたよ…」

杏果「これは…」

閑無「あっ!!」

はやり「……『必勝!中華街ぐるめガイド』……?」

閑無「…………」カァァァ

慕( ´∀`)

はやり( ´∀`)☆

悠慧( ´∀`)ニヤニヤ

杏果( ´∀`)プフー

中華街

ワイワイガヤガヤ

はやり「わー、凄い人ー」

売り子A「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「えっ、あ、はい?」

売り子B「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「わっ、わわっ」

売り子C「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「なんかいっぱい甘栗くれるんだけど!?」

杏果「いちいち相手にしない!」

咏(……危なっかしーねぃ)

閑無「わりと美味いな」甘栗ポリポリ

慕「うん、おいしいね」甘栗ポリポリ

はやり「うちのお菓子にも使えるかな…?」甘栗ポリポリ

杏果「もう…あんたたちってば……」ヤレヤレ

はやり「杏果ちゃんもどう? おいしいよっ☆」甘栗ポリポリ

杏果「そんなに食べたら、肝心の中華が食べられなくなるよー?」

閑無「……はっ!そうだった!」

杏果「やれやれね……」

露天商「見てってヨー、珍しいのあるヨー」

はやり「わー、なにか色々売ってるよー☆」

慕「露天商だねー」

悠慧(ふーん……って、あれは!!)

杏果「どうしたの?」

悠慧(あの本…。噂でしか聞いたことなかった幻の同人誌、『大沼プロ×南浦プロ』だ!!)

悠慧(あの二人の写真と麻雀の絵の表紙……間違いない!!)

スッ

杏果「悠慧?」

悠慧「すみません!この本ください!」

露天商「ほう、お目が高いネお嬢ちゃん、この本に興味アルカ?」

悠慧「はい! いくらですか!?」

露天商「残念だけどこれ、非売品アルネ。お金じゃ買えないヨ」

悠慧「えーっ!? じゃあなんで置いてあるの!?」

露天商「これ、うちの店の景品ネ。欲しかったらうちの店に来て勝つヨロシ」

悠慧「うちの店って…?」

露天商「ここヨ」スッ

悠慧「雀荘じゃん! 麻雀で勝てばいいの!?」

露天商「そうダヨー」

悠慧「やる!やります!!」

閑無「おい何言ってんだ悠慧! そんな時間ないだろ!」

悠慧「大丈夫だって! サクっと勝つからさ!」

露天商「はいはーい、おひとり様ご案内アルネー」

閑無「おい待てって!」

悠慧「~♪」

杏果「しょうがないな…。ちょっとごはん遅くなるけど、みんないい?」

慕「うん」

はやり「甘栗食べちゃったし、大丈夫だよー☆」

露天商「……ニヤリ」

咏(……おいおい、わっかりやすいのに引っかかっちゃって……)

店内

店長(露天商)「一位になったら景品引換券あげるヨ。それと交換ネ」

悠慧「わかった! じゃあ早く打とう!」

閑無「おいおい…」

慕「わぁー、麻雀屋さんだー」

はやり「はやや~☆」甘栗ポリポリ

店長「じゃ、この三人がお相手するネ」

代打ちA「……よろしく」

代打ちB「……よろしく」

代打ちC「……よろしく」

悠慧「よろしくお願いします!」

東一局

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

悠慧(なんか三人とも変な捨て牌……。大したことないや!)

悠慧(よーし……もらった!!)

タンッ

悠慧「ツモ! 2000・4000です!!」

代打ちA「?」

代打ちB「?」

代打ちC「?」

悠慧「?」

悠慧「……えっと、2000・4000だけど……」

代打ちA「…………」フフフ…

代打ちB「…………」ニヤニヤ

代打ちC「…………」ククク…

悠慧「な、なんだよ…」

店長「アイヤー、チョンボアルネ。そんな和了りは無いアルヨ」

悠慧「はあ!? なんだよそれ!?」

店長「さっき渡したルールの紙、見てなかたか」

悠慧「えっ」

店長「ここ、中国麻将専門店アルネ」

悠慧「!?」

店長「罰金払ってもらうアルネ。チョンボは高いアルヨー」

悠慧「なんだよ…。4000オールくらい……?」

店長「チョンボの支払いは点じゃないヨ」

悠慧「?」

店長「場代と別で五万円、払うヨロシ」

悠慧「五万!?」

閑無「はあ!?」

悠慧「待ってよ!そんなの知らなかった!!教えてくれなかったじゃん!!」

閑無「五万なんてボッタクリだろ!?おかしいよ!」

店長「最初にルール書いてある紙渡したヨー。罰金の額も載ってるアルネ」

悠慧「紙って……あっ」

閑無「…そんなのあったのか…?」

店長「そこにサインもしてるネ、このルールで文句は言いませんって」

杏果「悠慧…、サインしたの…?」

悠慧「したけど…ただの利用記帳だと思って……」

はやり「これかな? その紙って…」ピラッ

閑無「げっ、全部中国語…」

杏果「確かに…悠慧がサインしてるね…」

杏果「悠慧、これ中身ちゃんと……読んだわけないよね、中国語だし」

悠慧「う、うん…」

閑無「何やってんだよ…」

悠慧「うう…」

杏果「日本の麻雀といろいろ違うみたいだけど、やる前に気付かなかった…?」

慕「わぁー、花牌が入ってるー」

はやり「点棒って無いんだね~」

悠慧「それはその…本に目がくらんでたっていうか…」

閑無「さすがに花牌ツモったら気付くだろ?」

悠慧「……ツモらなかったし……」

閑無「……ったく……」

店長「さ、どうするネ?」

悠慧「…どうするって…?」

店長「やめて大人しく五万円払って出ていくか、勝ってチャラになるまで続けるか。選ぶヨロシ」

悠慧「チャラになるまでって…」

店長「一位取れば、引換景品にチョンボ無効券もあるヨ」ククク

悠慧「そんな無茶な…ルールわかんないのに…」

店長「それとも…」

店長「代金踏み倒しで、ケーサツ呼ぶか?」ギロッ

悠慧「ぐっ……」

悠慧「どうしよう……」

杏果「……サインしちゃっている以上、やるしかなさそうだね」

悠慧「やだよ! こんなボッタクリ店の言うこと聞くなんて!」

店長「何言うテルカ、ワガママ言ってるはアナタの方アルネ」

悠慧「なんでだよ!」

店長「最初からチョンボしなけりゃ済む話。よく読まずにサインしたのはアナタアルネ」

店長「即ケーサツ呼ばないだけありがたいと思うヨロシ」

店長「おまけに無効券まであるとか、この辺じゃ超優良店アルヨ」クックック

悠慧「くっ…」

店長「さ、続けるヨ。まだ一局終わっただけアルネ」

悠慧「いや…ちょっと待ってよ…」

閑無「おい、誰か中国麻将わかるか…?」

はやり「わかんない」

慕「やったことない」

杏果「私も」

閑無「くっ……」

代打ちA「おいおい、いつまで待たせるんだー?」ニヤニヤ

代打ちB「早くしてくれよ」

代打ちC「…………」クックック

悠慧「うう…」

対局再開

…………

……

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

悠慧(もうわかんない…いつも通りに打つしか…)

スッ

咏「それじゃない!ふたつ左!!」

悠慧「!?」

咏「これさ!」ペシッ

コトッ

悠慧「あっ」

店長「む……」

悠慧「何すんだよ!?」

咏「和了りたかったら、言うとーりに打ちなぃ」ヒソヒソ

悠慧「えっ?」

代打ちA「おい、あれ…」ヒソヒソ

代打ちB「三尋木のお嬢だ…」ヒソヒソ

代打ちC「ちっ、厄介なのが…」ヒソヒソ

咏「いいかい、……じゃなくて……、……が、……ていう役だから……」ヒソヒソ

悠慧「は、はい……」ヒソヒソ

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

…………

……

咏「……そう、これで……」

タンッ

悠慧「ツモ!…じゃなくて、和? えっと、8点?でいいの?」

咏「ん」

咏「んじゃ、ちょろっと休憩ね! いいだろ、そんくらい!」

店長「……10分ダケヨ」

悠慧「あ、ありがとう……」

はやり「あなたは…昔こども全国大会で…?」

咏「まったく、危機感の足りないねーさんたちだねぃ」

悠慧「な、なんだよそれ…」

咏「インハイ選手がこんなボッタクリ雀荘で騙されたなんて…、ちょっとしたスキャンダルだぜぃ?」

悠慧「うっ……」

咏「知らねー土地での行動には、もーちょい気を付けてもらいたいもんだねぃ」

悠慧「……ごめんなさい」

咏「…そんじゃ、さっさとこの場を終わらせようかね」

悠慧「?」

咏「乗りかかっちまったもんはしょーがねーさね。勝って五万をチャラにするしかねーさ」

悠慧「そ、そうだよ! 勝てばいいんだ!」

閑無「いや、簡単に言うけどお前…」

杏果「ルールも役もわかんないでどうするの?」

悠慧「い、今みたいに教えてもらいながら打てばいいいじゃん!」

店長「おっと、相談して打つのはダメヨー。今のは大目に見るけど、次やったらチョンボつけるヨー?」

咏「……ま、普通そうだろうねー」

悠慧「そんな!」

店長「誰でもいいけど、打つのは一人。教えてもらうなら休憩中に終わらすヨロシ」ニヤニヤ

慕「!」

悠慧「そんな短時間で覚えられるわけ…」

店長「言っておくけど、10分以上は待たないヨ」

悠慧「うう……」

咏(……そう来るとは思ったけど……しゃーねーな、私が……)

慕「それなら私が打つよ!」

閑無「慕!?」

慕「打つのは誰でもいいんですよね?」

店長「……かまわんアルが」

慕「ルールと役、教えてくれるかな?」

咏「お、おう…いいけど…」

閑無「おい、慕…」

慕「大丈夫!心配しないで!」キラキラ

閑無(ああ…こいつのこの目……)

杏果(ただ中国麻将をやってみたくてしょうがないって顔だ……)

悠慧(ボッタクリとか心底どうでもいいって顔してる……)

はやり(輝いてるねー☆)甘栗ポリポリ

咏「じゃ、あんま時間ねーから手短に……で…………ていうのが…………」

慕「うん…………じゃあ…………のときは…………」

咏「そうそう、…………で…………だから…………」

慕「うん…………うんうん…………」

咏「あとはそうさね、役は紙に書くか…………」カキカキ

…………

……

閑無「……おい慕、大丈夫かよ?」

慕「うん! 大体わかった!」

対局再開

慕「和! えっと、8点・4点・2点で…14点です!」

代打ちA「ぬぅ……」

代打ちB「むむ……」

咏(いいセンスしてるね…。さすがに、全国大会に出るくらいのことはあるってかぃ)

閑無「よし、やった!」

咏(……だがいかんせん、覚える時間が短かった……)

…………

……

タンッ

代打ちC「和 16点」

慕「えっ? あっ、フリテン無いんだっけ…」

咏(どうしたって、即完璧に対応ってわけにゃいかねーよな……)

…………

……

咏(この代打ちたちも……、さすがにこっちのプロって感じだねぃ)

タンッ

代打ちA「和 24点(中国語)」

慕「えっと、はい?」

店長「にじゅうよんてんネ」

慕「あ、はい…」

咏(だんだん日本語でしゃべらなくなってきてる…)

…………

……

代打ちB「和 18点(中国語)」

店長「じゅうはってんヨ」

慕「…はい」

咏(……それに当然のごとく、こっちばっかり狙い撃ち……。女子高生相手に本気かい)

悠慧「うう…もうラス前……」

閑無「大丈夫か…?」

はやり「はや~…」甘栗ポリポリ

咏(一位にゃちょっと厳しいってとこかな…。しゃーねー、やっぱ私が代わりにもう一戦…)

オーラス(北四局)

悠慧(最後…ここ勝たないと一位になれない…)

慕「…………」タンッ

閑無(索子がかなりきてる…。清一色いけるか……?)

杏果(清一色なら結構いいんじゃないかな……?)

慕「…………」タンッ

咏(いや、清一色に平和ついても足りねー…逆転するにはもうひとつ高い役…)

慕(えっと…ここで鳥さんがくれば…この役がついて…)

咏(一色双竜会…。一索ツモれば逆転だけど…それもうラス1だぜぃ…?)

慕(……大丈夫!)

慕(鳥さんは……今日も来てくれる!)

スウッ


バサッ バサバサッ


咏「……鳥……?」






――そのとき私は、確かに見た。




どこからともなく現れた一羽の鳥が、突然あの人の肩に舞い降りて……




タンッ

慕「和! 64点です!」パサッ

咏(引き当てた…ラス1の一索を…)

悠慧「やったぁ!」

閑無「よーし!! 逆転!!」

慕「……私の一位ですね」

店長「くっ……」

咏(……いやいや、肩にでかい鳥がとまってるってばよ)

杏果「……ふう」

はやり「やったねっ☆」

咏(おっかしーだろうよオイ、なんで誰もリアクションしねーんだ……?)

咏(わかんねー… すべてがわっかんねー……)

咏「……ねえあんた、その鳥は……」

ガッシャーン!!

店員A「うわー!」

店長「どうしたネ!騒がしいアルヨ!!」

店員B「店長ー!裏の養鶏場の柵がー!!」

店員C「鶏が逃げたぞー!!」

店長「なにィ!?」

グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

悠慧「な、なんだこれ!?」

バサッ バサバサッ!! グガァゴゴ!!
グガァゴゴ!! ギャッギャッギャ!!

閑無「鶏がいっぱい店の中に入ってきた!!」

バサバサバサバサッ!! グガァゴゴ!! グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

店長「つ、捕まえるネー!」

グガァゴゴ!! ギャッギャッギャ!! バサバサバサッ!!

店員A「こいつ! 大人しくしろ!!」

ドガッ バキッ クァァッカッカッ!!

店員B「痛っ! 痛い痛い痛い!」

ガッシャーン!! ドンガラガッシャン!!

店員C「あー!! それ高いやつ壊すんじゃないネー!!」

グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

悠慧「ひゃっ! 髪を引っ張るなよ!」

バサバサバサバサッ!! ギャッギャッギャ!!

閑無「うわ…なんだこれ…」

咏(どうなってんだよこりゃ……。わかんねーけど、チャンスだ!)

咏「じゃ、これ以上いちゃもんつけられねーうちに! さっさとおさらばするよっ!」

はやり「うん、行こう!」

杏果「はい、じゃあこれで清算ですねー。お釣りはいりません、それじゃ!」

タッタッタッ

悠慧「あっ、待ってよー! 私の大沼×南浦本はー!」

閑無「この期に及んで何バカなこと言ってんだ! 行くぞ!」グイッ

慕「えー、もう一戦くらい…」

閑無「帰ってからにしろ!」

店長「い、いやちょっと! 助けてアルネー!」

グガァゴゴ!!! グガァゴゴ!!! バサッバサバサバサッ!!!

店の外

杏果「……ふう、やれやれだったね」

閑無「なんとか逃げてきたな…」

はやり「鶏さんに助けられちゃったね~☆」

悠慧「私の本…」

閑無「もういいじゃんかよ本なんて!」

悠慧「でも…」

杏果「私も持ってるから貸してあげるよ、あんな本くらい」

悠慧「えっ!? 杏果もそっちに興味あったの!?」

杏果「そっちって? 物凄く真面目な麻雀の解説本だよ、二人の対談形式の」

悠慧「えっ」

閑無「?」

悠慧「…麻雀の…本…?」

杏果「うん」

悠慧「…………」

杏果「…………」

閑無「?」

悠慧「……しょんなぁぁ……」ヘナヘナ

閑無「? 何だと思ってたんだよ?」

杏果「世の中知らない方がいいこともあるよ、閑無」

閑無「???」

はやり「はやや~…」甘栗ポリポリ

咏「ねえ、あんた…」

慕「ん?」

咏「肩……鳥とまってっぜ……?」

慕「あら? あなたはこの鳥さんが見えるの?」

咏(見えるの?ってなんだよ… 他の人には見えてないのかい…?)キョロキョロ

慕「なかなか見える人、いないんだけどな…」

咏「……いや、知らんし」

慕「そう? でもたぶん…」

咏「ん?」

慕「そこにいるあなたの猫さんと一緒だよ」ウフフッ

咏「!」

咏「……どういう意味かねぃ」

慕「お友達でしょ? その猫さん!」

咏「…………」

慕「?」

咏「…………それだけ?」

慕「そうだよ?」ニコニコ

咏「…………」

慕「…………」

咏「……そーいう風に考えたこたぁなかったね……」

慕「?」ニコニコ

咏「……その鳥は……あんたの友達だってのかい?」

慕「うん、私の大事なお友達だよ!」ニコッ

咏「……さっきの一索ツモってさ…… その鳥が……」

慕「うん。友達を呼んできてくれたね」

咏「…………」

慕「…………」

咏「……んじゃ、あの鶏たちも……?」

慕「うーん? そっちはよくわかんないよ」

咏「…………」

慕「甘栗の匂いとかで寄ってきたんじゃないかな? 知らんけどっ!」ウフフッ

咏「…………おもしれー人だ」

――鳥さんが一索を呼んできてくれた、か。

さっぱり意味わかんねー、どんなオカルトだよと思ったけれど……、でも。

確かにあの鳥は、あの人と一緒にそこにいた。

なんとなく気になって見ちまった、その後の全国大会でも。

あの人が大事な一手をツモるとき、いつもあの鳥がそばにいた。

……あれからだったかねぃ……。

私がオカルトだなんだと関係なく、学生だのプロだのと分け隔てもせず、

誰の麻雀でも真剣に考えるようになったのは。

知らんけど。

…………。

いまでも思うんだよね…。

一索だけじゃなくあの鶏たちも、やっぱりあの人が呼んだんじゃないかって。

……いや、知らんけどさ。

――

…………

……

えり「どうしたんですか、さっきから?」

咏「…ねーえりちゃん、ヒッチコックの『鳥』って映画知ってる?」

えり「ひっ!? なんですかいきなり! そんなの私に見せようっていうんですか!?」

咏「お、知ってたかー。見たことあんの?」

えり「見たことは無いですけど、話くらい知ってますよ! 怖いやつですよね!」

咏「……んじゃ、中華マフィア系の映画とかイケるクチー?」

えり「嫌ですよ!! やめてください、そういうの!」

咏「…………」

咏(……やっぱでまかせでいいや)


カン


咏さんかっけー

中国麻雀面白いのになかなか流行らんよね


鳥さん乗せてる人が全く記憶にないのだがもしかしてシノハユを読まんとあかんのやろか
知らんけどの人が一番可愛いよな

乙です

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