羽川翼「一杯出たね。ふふっ」(16)
「もう一回する?」
机の下からそう訊いてくる羽川。舌先を伸ばして先端をちろちろとなめあげる。まだ出るよね? と言いたげな顔だった。
「……そうだな」
「うん」
清々しいぐらいの笑顔を見せる。一回出した後だが、まだ大きいままの僕のものをいとおしそうに口に含むと、吸い上げながらゆっくり頭を動かす。
どことなくリズム感のあるその動きを見下ろしながら、僕は持っていたシャープペンをくるくると指で回してみた。
「そういえば、羽川。戦場ヶ原の事って何か知ってるか?」
羽川の動きが少しだけ止まる。
ん……という小さな声を出し、強く吸いながら水音を立てて引き抜く。
根本の方に口を寄せ、ついばむようにしながら、
「戦場ヶ原さんが……どうかしたの?」
僕の方に目線は向けない。
ひょっとして怒っているんだろうか。
行為の真っ最中に他の女の名前を出したぐらいで。
羽川はそういうタイプじゃないと思ってたんだけどな。
「いや、今日、戦場ヶ原が階段から落ちてきてさ」
「階段から?」
今度は裏筋を舐めあげる。上目使いの羽川を見たいとも思ったが、まだ顔は上げてくれない。
「そう。それを受け止めたんだけど、異常に軽かったから。何かあるんじゃないかと思って」
「ふーん……」
再びくわえて、さっきよりも早目に上下させる。僕はまたシャープペンをくるくると指で回す。誰もいない教室は夕陽が差し込んでオレンジ色に染まっていた。
「手を使うのは好きじゃなかったんだよね、阿良々木君は」
「そうだな。口だけの方が好きだ」
目の前のノートに手を伸ばし、模擬店、お化け屋敷、など適当に書き連ねる。頭のいい羽川が僕の好みを忘れるなんて事は有り得ない。それがわかってしまうと、何となく気まずいよな。
「羽川。もうちょっと激しくしてくれるか」
無言で応じる羽川。奥の方までくわえこんだり、捻りを加えたりしながら速度をアップさせる。僕はその間、窓の外で群れをなして飛んでいる鳥の数を意味もなく数えていた。
「阿良々木君……ん。……気持ちいい?」
机の下から声。「気持ちいいぞ」と答えて、軽く頭を撫でてやる。少し嬉しそうだ。ただ、戦場ヶ原の事は聞けそうにないな。そんな空気でもないし。
「なあ、羽川」
「ん……何?」
返事がくるまで少しタイムラグ。その間、羽川が何をしていたかは、多分、想像するに難しくないと思う。机の下をふと見ると、床に羽川のよだれが四・五滴。後で拭かせよう。
「ちょっと今、パンツを脱いでもらえないか。その方が興奮するから」
少しの逡巡。だが、やがて羽川の手がゆっくりとスカートの中へと入れられる。口は相変わらず僕のを離さない。そうした方が僕が興奮するのを知ってるからこその行為だ。
「脱げたか?」
くわえたまま小さく首を振る。そして、思い出したかのようにピストン運動を始める。どうやら萎えない様に頑張っているらしい。そして、また机の下でもぞもぞと腰を動かす。片手で体を支えているから、脱ぐのに使えるのはもう一方の片手だけでなかなか脱げないようだ。
「羽川。早くしてくれ。萎えちまう」
やや意地悪げにそう言うと、またピストン運動を始める。それと同時に片手で一生懸命脱ごうともしているようで、あの羽川が珍しい事にも二兎を追うもの一兎も得ずの状態になっていた。
正直、焦ってる羽川がすごく可愛い。
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