哀しい魔物(39)

遠い遠い世界の話。

あるところに悲しい世界がありました。

その世界では悲しいことがたくさんあって

人々は毎日悲しく過ごしていました。


そんな悲しい思いから魔物が一匹生まれました。

魔物はとても小さくて弱くて、

思い出の国の姫様は魔物のことをそれは優しく見守っていました。

魔物は悲しい思い出が大好きで、

悲しい思いをたくさん食べてどんどん大きくなりました。

やがて世界は少し悲しくなくなりました。

それは魔物が思い出をたくさん食べたからなのか、世界が少し落ち着いたからなのか、

わかりません。

世界中の人々も、思い出の国の姫様もみんなみんな喜びました。

魔物以外は。


「おなかがすいた」

だから魔物はもういちど世界を悲しくしようとしました。

姫様は言いました。「ラモエ、そんなことをしてはいけません。あなたはそのために生まれてきたのではありません。」

魔物は言います。「ミオ様、おなかがすいたのです。どうしてもおなかがすいたのです。」

姫様は必死に止めようとしましたが、

魔物はもう大きくて強くて、止めることができません。

魔物は悲しい思い出からたくさんのマモノをつくり、世界中にばらまきました。

やがて世界は前よりも、もっと悲しくなりました。


そうやって、哀しい魔物になりなした。




                  水泡の部屋 ラモエの追憶

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