撫子「意外と忙しい大室撫子の日常」 (79)

撫子「櫻子ー、そろそろ起きな。遅刻するよ」ガチャ


櫻子「んー……」もぞもぞ

撫子「ほら早くしないと、ご飯食べる時間無くなっちゃうよ」

櫻子「寒いよぉ……」

撫子「ひま子待たせちゃ悪いでしょ、ほら起きて」ばさっ

櫻子「うおおおお寒い~~~……!」


櫻子「だっ、だめっ! 寒すぎ!」はしっ

撫子「うわっ! ちょ、ちょっと! 抱きつくな!」

櫻子「だって寒いんだもん! 毛布返して!」

撫子「返したらまた寝ちゃうでしょうが……早く支度しな」

櫻子「お願い、私を連れ去って……洗面所まで……///」ぎゅっ

撫子「何そのセリフ……わかったよもう。よっこらせ」


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花子「撫子ねーちゃん、花子そろそろ……」

撫子「あっ、行ってらっしゃい」

櫻子「ばいばーい……」ふりふり


花子「……なにやってるし櫻子」

撫子「寒いんだってさ」

花子「お姫様抱っこで起こされる中学生って……」

櫻子「あー、バカにしてる目だ!」

花子「まさにバカにしてるし」

撫子「私もあんまり時間無いんだから、櫻子そろそろ自分で歩いて」

櫻子「ちぇー……うーさむさむ」たたた

花子「じゃあ、行ってくるし」

撫子「うん、行ってらっしゃい」



撫子(明日から週末か……何しようかな)とことこ

「撫子おはよーっ!」


撫子「?」くるっ

めぐみ「おはよ撫子!」

撫子「なんだめぐみか。おはよ」

めぐみ「なんだって何!?///」



めぐみ「…………んふふふー」ニコニコ

撫子(……?)

めぐみ「うふふふふ!」ニヤニヤ

撫子「めぐみ……」



撫子「髪切った?」

めぐみ「切ってないよ! ツッコミどころ違うでしょ!」

撫子「わかってるよ。なにさっきから変な顔して」

めぐみ「変な顔してた!? これ一応嬉しいことがあった表情なんだけど」

撫子「嬉しいことってなに? 10円拾ったとか?」

めぐみ「違うよ! 10円でこんな顔しないでしょうよ……」



めぐみ「おほん、撫子、今日の放課後あいてる?」

撫子「放課後? 別に何もないけど」

めぐみ「じゃあ空けといてね! 何も予定入れないで?」

撫子「……なに、何かあんの?」

めぐみ「それは秘密ーっ♪」

撫子「気になるなあ……もう」


めぐみ(うふふふ……///)ニコニコ

撫子(めぐみ……)くすくす



藍「あっ、おはよう撫子」

めぐみ「おはよーぅ!」



美穂(……?)

美穂「撫子、服に長い髪の毛がついてるわよ」つーっ


撫子「えっ……ああ、櫻子のかな。さっき抱いたときに付いたんだ」

美穂「だ、抱いた!?///」

藍「ええっ!?///」どきっ


撫子「え…………って、違うよ!? 抱いたっていうのは……!///」

美穂「撫子!! あなた朝っぱらから中学生の妹ちゃんたらし込んでどういうつもり!?」

めぐみ「欲求不満なの!?」

撫子「ちがーう!! 櫻子が朝起きれないって言ってて……!」


藍「襲っちゃったの……?」

撫子「襲ってない!! ……櫻子が起きてくれないから、私が抱っこして無理矢理起こしたの!」



美穂「うんまあわかってたけど」

藍「お姉ちゃんは大変ね」

めぐみ「櫻子ちゃん可愛いね~」

撫子「わかってるならからかわないでよ……朝から疲れる……///」はぁ


藍「撫子、昨日の課題やってきた? 私ちょっと不安なところがあって……合わせてみたいんだけど、見せてもらえる?」

撫子「あ、やってあるよ。ちょっと待ってね……」ごそごそ

めぐみ「課題……!? やばっ、忘れてたー!」ぴゅーっ

美穂「まったくしょうがない子ねぇ」


撫子「……あ、これこれ。はい」

藍「ありがとう♪」



〈授業中〉


撫子(めぐみが今朝言ってたこと……なんなんだろう)カリカリ

撫子(放課後空けてって……どこか行くのかな)

撫子(やけに嬉しそうだったし、普通のことじゃなさそうだけど……)


ちょんちょん

美穂「撫子、これ……」ヒソヒソ

撫子「えっ? なに?」


撫子(回し手紙……なんだろ……)かさかさ


『絵しりとりしましょ♪ (星の絵)』

撫子(は!?///)

撫子「…………」ちらっ

美穂「…………うふ♪」きゅぴーん


撫子(するわけないでしょ!! 受験生の自覚あるの!?)

美穂「?」


撫子(美穂は天才タイプだからなぁ……でも今は遊んであげられないよ)かきかき


撫子「はい」ぱさっ



美穂(~♪)わくわく

『☆ → 集中しろ!』


美穂「…………」ちらっ


撫子「集・中・し・ろ……!」ぱくぱく

美穂「…………」かきかき



美穂「はい」ぱさっ



撫子「え?」


『☆ → 集中しろ →(ロウソクの絵)』


撫子「続・け・る・な!!///」ぱくぱく


美穂(うふ♪)くすくす


撫子(だめだ、この紙は没収だ……)おりおり

美穂(ああん、もう……釣れないんだから)

撫子(ただでさえ板書が大変な科目なんだからさ……)


美穂(撫子は真面目ねえ……)まじまじ



〈昼休み〉


撫子「授業中に美穂から急に星の絵が描かれた紙が回ってきてさ……」

藍「星の絵?」

撫子「絵しりとりしたかったんだって。まったく……ちゃんとノートとったの?」

美穂「その辺はご安心を♪ めぐみと違って私はちゃんとやることやりながら遊んでるのよ?」

めぐみ「私遊んでないしやることもやってるけど!///」

美穂「朝慌てて課題やってたじゃない」

めぐみ「あれは……そうだけど……」がっくし

撫子「なんで言い返せなくなってんの」

藍「ところでみんな、今週末はどうするつもり?」

美穂「特に予定無いわねえ」

めぐみ「私も普通にバイトかなあ」


藍「撫子は?」

撫子「んー……なんか櫻子と花子が服見に行きたいって言ってたから、その付き添いかな」

美穂「もう、まだ妹離れできないの?」

撫子「妹離れって……花子が私に見て欲しいって言ってるだけだよ。私もちょっと服見たいってのもあるし」

藍「優しいお姉ちゃんねぇ」

めぐみ「私もお金貯まったら撫子に服選んでもらおうかな~♪」

美穂「いいんじゃない? 撫子はセンスあるものね」

撫子「えー? 美穂の方がそういうのあると思うけど」

めぐみ「美穂は確かに可愛いの選ぶけど……可愛すぎるのとかも普通に選んじゃうもん……」

美穂「なんで~? 可愛いに越したことは無いじゃない?」

めぐみ「その人に合ったファッションってものがあるのー!」

美穂「そんなの恥ずかしがってるだけだと思うけど~」

藍「確かにそれもあるかもしれないけど……」



撫子「じゃあ……例えば、美穂が持ってる可愛い服を藍に着せたとこを想像してみれば?」

藍「え……///」

美穂(んー……)


美穂「最高ね」きっぱり

めぐみ「最高なの!?」

美穂「藍は自分を磨くことに関して実は妥協しない子だもの。意外と着こなしちゃうと思うわ♪」


撫子「……うん、確かに一理あるかも……」

めぐみ「おいー! 例題出した撫子が逆に納得させられてどうすんの!」

藍「わ、私はそんな……///」

撫子「めぐみはあれだよね、中学校の体育着とか今着ても似合うと思う」

美穂「あ~ちょっとわかる~」

めぐみ「なんで体育着!? しかも中学の!?///」


撫子「体育着着てさ……バレーボール部の子みたいにテーピングとかしてて欲しい」

藍「足にサポーターとかつけてて欲しいかも」

美穂「ほっぺたに絆創膏つけてて欲しい~」

めぐみ「ボロボロじゃん私!!」


美穂「『私のせいで負けちゃった、ほんっとゴメン……!』って言いながら土下座して欲しい」

めぐみ「ボロボロのくせに敗因なの!?」


藍「面白いわねえめぐみは……」ぷるぷる

めぐみ「藍が本気でツボに入った笑い方をしてるんですけど……ボロボロの私がそんなに面白いですか……!」



〈放課後〉


撫子「めぐみ、今朝のことなんだけど」

めぐみ「あっ、ちょっと待ってて? あのね、準備する時間がいるというか…………少し待ってて欲しいの。18時か……19時くらいまで」

撫子「えっ、そんなに?」

めぐみ「ごめんね!……ダメ、かなぁ……」

撫子(…………)


撫子「……いや、いいよ。図書室で勉強しながら待ってるね」

めぐみ「ほんと!? ありがと~……! じゃあ待っててね、準備できたらすぐに呼ぶからー!」たたたっ

撫子「はいはい」くす


撫子(なにかな……全然想像つかないや)

撫子(とりあえず家に連絡しとかなきゃ……遅くなるって)



〈図書室〉


撫子「あっ」

藍「あっ」

撫子「なんだ、藍ここにいたんだ」

藍「ええ。撫子はどうしたの? 勉強?」

撫子「うん……まあそんなとこ」


撫子(……たぶん、めぐみの件は誰にも言わない方がいいんだろうな。あの子、私だけに何かを画策してしてるみたいだったし……)


撫子「結構最近来てる感じ? 図書室」

藍「そうね。ここってほら、新聞とかもあるから」

撫子「新聞読んでるのか……なんかお父さんみたいだね、藍」

藍「も、もう……///」


撫子「隣、いい?」

藍「ええ、もちろん」



藍「ねえ、撫子……」

撫子「ん?」


藍「撫子は将来、どうなりたい?」


撫子「……ど、どしたの?」きょとん

藍「んーん? ちょっと聞いてみただけ」


撫子「……どうなりたいってのは、将来の夢ってこと?」

藍「まあ、そんなとこね」

撫子「うーん……将来の夢っていう夢は、特に無いんだよな……無いっていうか、見つかってないというか」

藍「昔はあったの?」

撫子「昔って、本当に昔だよ? 小学生とかのさ……お菓子屋さんとか、お洋服屋さんとかって言ってた時代」

藍「えー、撫子にもそんな頃があったんだ……///」

撫子「お、おかしい?」

藍「んーん、全然」

撫子「藍は? 藍は何か夢あるの?」

藍「わたし……」


藍「私も……夢、っていう夢はないの。どういう職業に就きたいとか、数年後こうしていたいっていうビジョンは……まだない」

撫子「えー、私と同じじゃん」


藍「でもね、些細な夢ならたくさんあるの」


藍「それは……私たちが、卒業してからもずっと今みたいに笑っていたいってこと」


撫子「えっ……?」

藍「高校を卒業したら、みんなそれぞれの道に向かって進むと思う。それが嫌っていうわけじゃなくて、だってそれは仕方ないことだもの。いつかは来るとわかっていたことだし」


藍「でもね……それぞれの道に進んでも、たまには皆で集まりたい」


藍「みんなでまた遊びたい。みんなで他愛のない話をしたい。みんなと同じ時間を共有したい……」


藍「これから先も、みんなとずっと一緒。これが私の、今の夢」


撫子(……!)


藍「こういうの……夢って言わないか、あははっ」

撫子「いや……夢だよ。立派な夢」

藍「私ね、将来のこと考えるのとか、好きなの。将来自分がどうしているかとか、あの子はどうなっているんだろうって想像するのが楽しいの」

藍「そうやって未来を想像しているとね、ああ今頑張らないといけないんだなって、すごく思う」

藍「今頑張れば、私が想像している明るい未来が叶うかもしれない」


藍「そうやって自分を励まして、今を頑張っているの」


撫子「藍……」


撫子「……お昼にも美穂が言ってたけどさ、藍って自分を磨くことが好きだよね」

藍「え?」

撫子「今もそうじゃん。新聞読んで、見識広げて……なかなか高校生でやってる人いないよ」

撫子「それ日経でしょ? 私もそこまでよく知らないけどさ」

撫子「……明るい未来を想像して、ちゃんとそれに向かって頑張れてる。藍はちょっと自分のこと消極的に思ってるところがあるけど、本当に立派だと思う。尊敬してるよ」

藍「そ、そんな……///」

撫子「嘘じゃないよ? 藍には勝てないなって、いつも思うもん」

藍「うふふ……でも私は、実は撫子にとても憧れているのよ?」

撫子「えっ、どういうとこに?」

藍「それは秘密♪」

撫子「な、なんでよー……教えてくれてもいいじゃん」

藍「うふふ……」


撫子(……ふふっ)


撫子「……私たちがそれぞれ違う道に進んでもさ」


撫子「また一緒の時間を過ごせるように、また一緒に笑えるように」


撫子「友達にも、自分にも恥ずかしくないような、立派な人になってたいね」


藍「ええ……ほんとそう」


撫子「……ほんとだ、なんか私も勉強頑張ろうって思えてきたよ」

藍「あら、よかった♪」

撫子「藍のおかげだよ、ありがとう」

藍(…………///)

撫子、

私が憧れているのは、そういうとこ。

撫子は人を惹きつける。

それは撫子が誰に対しても優しくて、

誰に対しても、同じ気持ちになることができて、

言葉には乗せないけど、でもしっかりと “好き” を伝えてくれる。

撫子に褒められると、嬉しい。

撫子のためになりたいって、自然に思っちゃう。

カリスマなのかな、人徳なのかな、

それとも、ただ私が、

撫子のことを、大好きなだけかな……?



撫子「ん……? なに、何か面白い記事があるの?」

藍「ふぇっ!? な、なに?///」びくっ

撫子「いや、新聞読みながらニコニコしてるから……楽しい記事が載ってたのかなって」

藍「あ、そ、そうね……ちょっと興味深いとこがあったの」



撫子「ちょ、ちょっと……いつまでこうしてればいいの」よたよた

めぐみ「もうすぐ、もうすぐ着くから!」

撫子「目塞がれたまま動くのって怖いんだよ? もう私今自分がどこにいるか全然わかんない……!」

めぐみ「もうゴール近いよ! あっ、ここ段差あるから気をつけて」

撫子「はやく目隠し取りたい……あれっ? なにここ……」

めぐみ「あっ、ごめん靴脱いで。靴下も脱いで」

撫子「靴下脱ぐの!? ……なに、ほんと何?」

めぐみ「いやもうそこまできてるから! もうゴール目の前!」

撫子「裸足になるってこと……? 良かった今日スパッツじゃなくて」


撫子(ん……この匂い……?)

めぐみ「よし! じゃあ目隠し取るよー……」

ぱさっ


撫子「う、うわっ! プール……!?」

めぐみ「当ったりー!!」ぱちばち

撫子「プールの匂いした! 本当にプールだった!」

めぐみ「いぇーい!」


撫子「え、は? どういうこと?」


めぐみ「あのね、今の水泳部の部長が、私の友達なの! それで、今日は練習の日だったんだけど……練習が終わったらプール使えないかって頼んだら、オッケーな日があるって言ってくれて」

撫子「へえ」

めぐみ「ほら、この学校のプールって室内温水プールで豪華だしすごいでしょ? こんなとこで遊べるなんて滅多にないよ!」

撫子「…………」


めぐみ「あ、でもね、夜の9時から地元のスイミングスクールがここ使うんだって。だからタイムリミットはそれまでなんだけど」

撫子「つまり……ここで遊ぶと」

めぐみ「そう! 朝から秘密にしてたのはこのプールなのでしたーー♪」ぱちぱち


撫子「ああ……さっきまで水泳部が練習してたから、私待たされてたんだ」

めぐみ「そうそう。部活終わるまで……あ、この後そのスイミングスクールの人も来るから、電気とか消さなくていいんだって」


撫子「いや、あのさ」

撫子「朝から話振られて結構期待させられて、でも全然想像つかなくて、その予想を上回るくらい今びっくりしてるんだ」

撫子「サプライズ的には、大成功だよ?」

めぐみ「ほんと!? よかったぁ……」

撫子「いやそれはいいんだけど……」




撫子「私水着もタオルも何も持ってないよ?」

めぐみ「…………」



めぐみ「……え?」

撫子「だってプール入るなんて思ってないもん……プールの授業とっくに終わったし。何にも用意してないから、入れないよ」


めぐみ「…………」

撫子「まさか、その辺考慮してなかった……?」


めぐみ「……ごめん」

撫子「…………」

めぐみ「ご、ごめん、……サプライズで仕掛けようって思ったら、そっちに気を取られちゃって……そりゃそうだよね、水着持ってるわけないよね……あはは」

撫子「めぐみは持ってるの?」

めぐみ「私はバッチリ用意してきたけど……」


撫子「……じゃ、めぐみが泳いでるとこ見て楽しんでるよ」

めぐみ「えーそんなのやだ! 撫子と一緒に潜ったり、撫子と一緒に泳いだりする予定だったのに……」

撫子「だって水着ないんだもん……」


めぐみ「えー……もう……」がっくり

撫子(あ)

撫子(めぐみが泣いちゃう)



めぐみ「なんで私……ばかだなあ。せっかく準備していろいろ進めて……」

めぐみ「肝心なところ、忘れたりして……うまくいかなくて……」

めぐみ「いつも、いつも、うまくいかなくて……」


撫子「めぐみ」

めぐみ「ん…………なに?」ぐすっ


撫子「水泳部ってさ、確かシャワーあるよね?」

めぐみ「うん……そこにあるよ」

撫子「シャワーがあるってことは……たぶん部で使ってるバスタオルとかあるはず。私洗濯機があるの見たことあるもん」たっ

めぐみ「あっ、待って待って」


撫子「あ、ほら! たくさん干してある」

めぐみ「ほんとだ……これ水泳部の共有バスタオルだ」

撫子「バスタオルはある、あったかいシャワーもある」

めぐみ「水着は無い……」



撫子「……いいよ私、パンツで」

めぐみ「えっ」

撫子「今日運良くセーターの下Tシャツなんだ。私Tシャツとパンツで良い」

めぐみ「え、えっ!? じゃあ帰る時どうするの?」


撫子「……まあ、ノーパンノーブラで服着るよ」

めぐみ「そ、そんなの大丈夫!?」


撫子「……いいよ別に。家帰る道中だけでしょ。濡れたパンツ持って帰るレジ袋ぐらいならあるし」

めぐみ「な、撫子男らしい……」


撫子「だってこんな機会滅多にないもん。私だって泳ぎたいよ。ほらめぐみ着替えよ?」

めぐみ「わっ、わかったから押さないで……!」




めぐみ「パンツ濡れたら、透けない?」

撫子「そりゃ多少は透けるよ……別にめぐみになら見られたって構わないし」

めぐみ「え……///」

撫子「その代わり! 言ってたその……スイミングスクール? が来る前には絶対に上がりたいから、遊ぶのは30分だけね! 30分たったら即行シャワーいくよ」

めぐみ「わ、わかった」

撫子「よし…………よっ!」ぎゅーっ

めぐみ「きゃーーーー!! な、何!?」


撫子「暴れんな! よっ、こらせ……!」ひょいっ

めぐみ「ちょ、ちょっと撫子!? 私を抱いてどうする気……!?///」


撫子「そんなの決まってんでしょ……! ふっ!!」ぴょん

めぐみ「いやーーーーー!!///」




ざっぱーーーん


めぐみ「ちょっ、撫子! やだ! 危ないでしょ!?」ざばざば

撫子「危なくないよ。私プール来るといつも櫻子抱いて一緒に飛び込むもん」

めぐみ「え、そんなにダイナミックなプールの楽しみ方してきたの!?」

撫子「え? バックドロップとかしない?」

めぐみ「しないよ!!!///」

撫子「私バックドロップできるよ。ちょっとやってあげようか」

めぐみ「嫌ーーー!! いい! いい!」じゃばじゃば

撫子「あ、こら待て! 逃げるな!」

めぐみ「お、泳ぎなら撫子に負けないもん!」すいーっ

撫子(くっそ、めぐみ泳ぐの速い……!)

ーーーーーー
ーーーー
ーー



撫子「シャワー浴びたから意外とあったかい……これなら寒くなる前に帰れるかも」

めぐみ「ご、ごめんね撫子……もし今度また借りられる時があったら、今度は事前に教えるから水着持ってこようね」

撫子「うん。次こそはね」

撫子「……すごく楽しかった。めぐみ、ありがとう」

めぐみ「えっ……///」

撫子「こういうの一回やってみたかったの。プールとか体育館とか……そういう皆で使う公共の場所を貸し切って、私たちだけで遊ぶの。ちょっとした夢だったんだ」

めぐみ「よ、喜んでもらえた?」

撫子「もちろん。先生とかに見つかったら怒られるのが怖いけど……でもよかった」

めぐみ「うん、よかったね……///」



撫子「じゃあめぐみ、またね」

めぐみ「あ、う、うん! また来週!」

撫子「バイト頑張ってね。課題とかも忘れちゃだめだよ?」

めぐみ「わかった、ありがとー!」

撫子「じゃ、バイバイ」


めぐみ「バイバイ、撫子…………」


めぐみ「…………」

めぐみ「はぁ…………」



撫子、

すき。

だいすき。


撫子は私が泣きそうだったから、

なんとしても私を泣かせまいと、

ちゃんと遊べるようにしてくれたんだよね。


嫌なことも何もかも投げ捨てて、

私を笑わせてくれるために動いてくれたんだよね。


私、わかるよ……撫子って意外と、顔に出るもん。


そういうときの撫子って、

私を助けてくれる時の撫子って、

いつも絶対、世界で一番かっこいいんだもん。

撫子は言わなかったけど、きっと察してると思う。

私が撫子しか誘わなかった理由。

藍も、美穂も誘わないで、撫子だけを誘った理由。


私……一生撫子のことを忘れない。

一生、撫子のことを忘れたくない。

撫子との思い出を、もっといっぱい作りたい。

だから、撫子と二人の特別な時間を作りたかった。


でも、撫子のおかげで、

最初に思ってたより、ずっとずっといい思い出になるような時間が過ごせた。


かっこよすぎ。

撫子はかっこよすぎる。

そんな撫子の前で、私もいい格好したくて、

うまくいかなくて、また撫子が助けてくれて、

どんどん撫子はかっこよくなって……


めぐみ「かなわない……かなわないよ……///」ぽろぽろ


めぐみ「私は……撫子に追いつける時が来るのかなぁ……」


めぐみ「撫子……だいすき……///」


めぐみ「どこにもいかないで……撫子…………」


あんなに近くにいたのに、こんなに遠くに感じるのは、なんでなんだろう。



撫子(だいぶ遅くなっちゃったな……)


撫子「ただいまー」ガチャ

櫻子「あっ、撫子ねーちゃ……!」

撫子「ただいま櫻子。ご飯食べた?」

花子「っ……」



ぽふっ

撫子「わっ、花子……? どしたの?」

花子「ばか、ばかぁ……///」ぎゅーっ


櫻子「ねーちゃんが遅いから……何かあったんじゃないかって心配しちゃって、花子ずっと泣いてて……」

撫子「ええ!? うそ……って、櫻子も少し泣いてるじゃん! どうしたの二人とも……」

花子「遅くなるなら連絡して欲しいし!! 何も言わなかったら心配するに決まってるし……!」


撫子(えっ……?)


撫子「連絡……したんだけどな。遅くなるってメール来なかった? ……見てないの?」なでなで

花子「花子の携帯、今修理に出してるし……」

撫子「げっ! そうだっけ……じゃあ櫻子は?」

櫻子「私ここんとこ携帯の姿見てないもん……どこにあるかもわかんない……」

撫子「それはアンタが悪いでしょ」

花子「ちょっと心配になったら、どんどん不安になっちゃって……嫌なことがいっぱい浮かんできて……すごく怖かったし」ぐすっ

撫子「そっか…………ごめんごめん、ねーちゃんが悪かったね。ちゃんと電話すれば良かったんだ」

花子「ううぅ……///」

櫻子「泣いてる花子見てたら、私も、どんどん心配になっちゃって……」

撫子「そっかそっか。ごめんね……でも櫻子はちゃんと携帯見つけておいてね」ぎゅっ

櫻子「ん……///」


撫子(やっぱり、櫻子もまだまだ子供だな……///)


撫子「じゃあ二人とも、ご飯食べてないんじゃない? ずっと待ってたんでしょ?」

花子「うん……」

撫子「よし、じゃあすぐに支度するから、ご飯食べて、早く寝ようか。明日も出かけるんだしさ」


花子「わ、わかったし」

撫子「はい、顔洗っといで」ぽんぽん

花子「うん!///」たたたっ


撫子(まったくこの子たちは……///)

櫻子「……ねーちゃん、これ何?」ガサガサ

撫子「えっ? あーー! それはダメ!!」

櫻子「うわっ、何これ……びしょびしょのパンツだ!! どゆこと!?」

撫子「やっ、違っ……! さっきプール行ったから……!」

櫻子「えーーー!? ねーちゃんもしかして、今パンツ……」


撫子「…………ま、まあ……履いてないよ……///」

櫻子「わ~~~~!!///」さわさわ

撫子「こ、こら! おしりさわるな!!///」

櫻子「ノーパンだー! ノーブラだーー!」

花子「どうしたし櫻子!?」ばっ


櫻子「花子、ねーちゃん今パンツ履いてないんだって!!」

花子「えーーっ!! な、なんでだし!?///」

撫子「だから話聞いてよ!! あのね、めぐみが放課後に……!」

櫻子「めぐみねーちゃんにパンツびしょびしょにされたの!?」

撫子「ちがーーーう!!///」



〈ベッド〉


撫子(ん……ちょっとだけ髪がまだキシキシするな……)つーっ

撫子(まあでも楽しかったし……今度めぐみにお礼しなきゃね)


撫子(ちょっと今日は……なんかやけに疲れちゃった。早く寝ちゃおう……)


コンコン

撫子「は、はーい?」


花子「撫子ねーちゃん…………」ガチャ

撫子「あれ花子、まだ寝てなかったの?」

花子「ん……」もじもじ



花子「い、一緒に寝てほしいし……///」

撫子「ふふ……わかった、いいよ」なでなで

花子「…………」


撫子「花子、いつも私のこと心配してくれて、ありがとうね」

花子「ん……」

撫子「今日はほんとごめん。なにかして欲しいこととかある?」

花子「そ、そんな……撫子ねーちゃんは連絡してたし……」

撫子「伝わってない連絡なんて意味ないよ。心配させちゃったのは事実だし……遠慮しないで、何でも言っていいよ?」


花子「じゃ、じゃあ……」


花子「明日はずっと、一緒にいて欲しいし……///」

撫子(……!)


撫子「……わかった。約束だね。明日はとことん、花子と櫻子に付き合うよ」

花子「ん……」もぞもぞ

撫子「じゃ、おやすみ」

花子「おやすみ…………」


撫子(可愛いな、花子は……)なでなで

花子「…………」すぅすぅ


撫子(……花子の顔、ずっと見てたいけど……)


撫子(だめだ、私も眠いや……)



撫子「…すぅ………」



ーーーーーー
ーーーー
ーー

〈翌日〉


櫻子「まずどこいくー?」

撫子「迷子になんないでね。ちゃんと携帯持った?」

櫻子「あるもーん。昨日探しておいた!」

花子「とりあえず服見に行きたいし!」

撫子「そうだね。いろいろ見て回ろっか」





花子「どういうのがいいかな……」

櫻子「これ花子似合いそう!」かちゃ

花子「えー?」


撫子(私もなんか、いい服あったら欲しいな……)きょろきょろ

撫子(どういうのにしよう……なんか今持ってるのとは違う感じでもいいかも……)かちゃ


「これなんか撫子似合うんじゃない?」

撫子「え…………うわっ、美穂!!///」びくっ


美穂「ちょっと着てみれば? 試着室はあっちよ」

撫子「着てみればじゃないよ! 何やってるのこんなところで!! え、偶然?」

美穂「偶然でしょ。私が服見てたら撫子たちが入って来たから、びっくりしちゃった」

櫻子「あ、美穂ねーちゃんだ! おーい!」

美穂「妹ちゃんやっほ~♪ どうこれ、撫子に似合わない?」

花子「撫子ねーちゃんは何着ても似合うし」

撫子「いやいや、でもこれはちょっと……っていうか美穂、今日のメインは櫻子と花子だから」

美穂「そういえば昨日言ってたわね! 妹ちゃんたちに服見てくれるように頼まれてたんだっけ」


櫻子「じゃあ私は美穂ねーちゃんに選んでもらおっかなー♪」

美穂「まっかせてー♪ そういえばさっき向こうのお店で良さそうなのがいっぱいあったの! ちょっと来て来て~」ぱたぱた

撫子「花子も美穂に見て貰えば? 美穂は結構いいやつ選んでくれるよ」

花子「う、うん」



美穂「花子ちゃんはねー、こういうふわふわしたやつとか……」

花子「うんうん」

美穂「お髪が長いから、歩くと一緒に揺れる感じの軽めなやつが……」


撫子(……真剣だな、こういうときの美穂は)


櫻子「ねーちゃんどうこれ!」ばーん

撫子「わ、いいじゃん。どうしたの?」

櫻子「美穂ねーちゃんが選んでくれたー」

美穂「あっ、櫻子ちゃん。その服はね、ここが開くようになっててー……」

櫻子「ふんふん」

撫子(昨日めぐみが、美穂は可愛すぎるのも選んじゃうって言ってたけど……本当はちゃんとその人に合いそうなやつを見つけてくれてると思うな)

撫子(ふざけてるときもあるけど、本気になった美穂は凄いんだから……)



美穂「ーーーで、ここからおっぱいの谷間が見せられるようになってるのよ♪」

櫻子「はぁーーーー!?///」

花子「ええええーーーー!?///」


撫子「ちょっ、それ今話題の胸開きタートルネック!? 櫻子になんてもの着せてんのっ!! 真面目に選んでると思ったら!」

美穂「え~? じゃあ撫子が着る?」

櫻子「いや、ねーちゃんが着てもこの服の魅力は出せないよ……」


撫子「…………」


花子「…………」


美穂「……ごめんなさい、ちゃんと選ぶわね」



花子「撫子おねえちゃん、これどう……?///」くるっ

撫子「あっ、すごい! 可愛いじゃん!」

美穂「でしょう? でもこれは花子ちゃんが自分で選んだのよ。とても良いセンスだと思うわ」

撫子「そうなんだ……! うん……すごく良いよ」


花子「こっ、これにするし!」

美穂「いいのが見つかって良かったわね♪」

撫子「櫻子はもうちょっとかかるかな……私も早く決めないと」



美穂「や~ん、これ可愛い~~!」かちゃ

撫子「ん……? わ、ほんとだ……」

美穂「撫子これにすれば!? 似合うと思うんだけど!」

撫子「いやいやいや……私にはちょっと、可愛いすぎるよ……///」

花子「でも意外と行けちゃいそうな気もするし」

美穂「そうよね~! ほらほら、花子ちゃんも認めてくれたわ!」

撫子「だってこんな、フリフリ……///」

美穂「試しに着てみて、お願いっ」ぱんっ

撫子(う……///)


撫子「す、少しだけだからね……///」



撫子「ねぇ、これやだ……恥ずかしい……!///」かああっ

美穂「恥ずかしいことなんか何にもないじゃない! 花子ちゃん見てあげてほらほら」

花子「確かにこういう撫子ねーちゃんは見たことないけど……でもすごく良いと思うし!」

撫子「こ、こんなの……///」


美穂「ちょっと待って撫子、ヘアピン貸してあげる」

撫子「えっ?」


美穂「あのね、服っていうのは、ただ着るだけじゃダメなの。そりゃいろいろ探せば自分に合うものが見つかることもあるわ。でも服を着こなすっていうのは、その服に自分がうまく合うように工夫をすることも時に必要なの」すっ

撫子「あ……///」


美穂「髪、留めるわよ?」ぱちっ

花子「おおー、さっきよりも全然良くなったし!」

美穂「明るくなったでしょ? ほら鏡見てみて」


撫子「!!」


撫子(か、かわ、いい…………?///)


美穂「撫子、すごく似合ってるわよ♪」

撫子(こ、これは、確かに……)



撫子「でっ、でもダメだ! だめ! 私にはまだ早いよ!///」しゃーっ

美穂「あーっ、脱いじゃうのぉ?」

撫子「急にこんなの、私は……///」

美穂「まだ早いって、これから時間が経てばいつかは着るようになるっていうの? 若くて可愛いのは今のうちなのよ?」

撫子「それでも~……///」


花子(撫子おねえちゃんも基本的には相当な恥ずかしがり屋さんだから)ひそひそ

美穂(意外とそうなのよねぇ)ひそひそ



〈カフェ〉


櫻子「おわーー! うめー!」

美穂「櫻子ちゃん、ちょっとこれも飲んでみて? 新しいやつなの!」

櫻子「どれどれ……」


撫子「いい服見つかってよかったね、花子」

花子「うん!」


撫子(……美穂がいてくれて、良かったな)


花子「午後はどうするし?」

美穂「あ、私今日一日暇だからどこでも付き合うわよ」

櫻子「本屋とか行きたい!」

撫子「花子は? 行きたいところある?」

花子「んー……本屋さんは花子も行きたいかも」

撫子「よし。もうちょっと見てから帰ろうか」


撫子(私は……もう少し服を見てこようかな。結局何も買えてないし)



撫子「じゃあ美穂、なるべくすぐ戻ってくるから」

美穂「いいのよ時間かけて。洋服選びは妥協しちゃダメよ?」

撫子「うん……ありがとう。遅くならないようにはするから、櫻子たちのことよろしくね」

美穂「とりあえず本屋に向かうけど、違うところに行くようなら連絡するわ」

撫子「ありがと。それじゃ」

美穂「ばいば~い♪」



撫子(服に合わせて、自分が変わる、か……)かちゃ

撫子(確かに美穂って、髪型とかも結構いじるんだよね)


「あれっ、櫻子ちゃんのお姉さん!」

撫子「?」

ちなつ「こんにちは~!」

撫子「あっ、ちなつちゃん。来てたんだ」

ちなつ「いえ、今来たばっかりなんですけど……今日はお一人ですか?」

撫子「櫻子たちも来てるよ。今は本屋にいるけど……案内しようか?」

ちなつ「あっ、でも……ちょっと先に服を見たくて」

撫子「そっかそっか。そういえばちなつちゃんも結構おしゃれさんだよね」

ちなつ「そんなこと……ありますけどぉ///」きゃーっ

撫子(面白い子だな)くすくす

ちなつ「あっ、じゃあ私がお姉さんに合う服探しましょうか?」

撫子「ほんとに? じゃあちょっと見てもらおうかな」

ちなつ「任せてください! これでもうちのお姉ちゃんにはいつもセンスが良いって褒められるんです~」





ちなつ「あーっ! これなんかどうですか?」

撫子(えっ!? それさっき美穂が選んだのと同じやつ……!!)


ちなつ「どうですかこういうの! すごく似合うと思いますよ!」

撫子(まさかのオススメ被り……え、この服そんなに私に似合うの?)


撫子「じゃ、じゃあちょっと着てみようかな(二回目だけど……)」

ちなつ「どうぞどうぞ~♪」



撫子「や、やっぱり可愛いよ、これは……///」


撫子(あ、美穂がくれたヘアピン……)


撫子「服に自分が寄せることも、大事……」ぱちっ


しゃーっ

ちなつ「きゃーーっ! 良い! すごく良いじゃないですか~~!///」

撫子「い、良いかな……///」

ちなつ「髪もいじったんですね! なんかイメージ変わりますよ~。ちょっと櫻子ちゃんみたい!」

撫子「櫻子と同じ髪の留め方だからかな?」

ちなつ「それもありますけど、なんか雰囲気が……すごく明るくなった感じです!」


撫子(……確かに、明るくなったかも)

ちなつ「お姉さん……あんまりこういう可愛い可愛いしてる服は普段着ませんか?」

撫子「うん、持ってないかな……私には似合わないと思っちゃってて」


ちなつ「あのですね、お姉さん……」

ちなつ「可愛くなるって、自分にとっても周りにとってもプラスなことなんですよ」

撫子「?」


ちなつ「女の子は誰のために可愛くなると思いますか? それはもちろん自分のためでもあるけど、誰かのために自分が可愛くなるっていうこともあるんです」

ちなつ「可愛いって言われたら、嬉しいじゃないですか。可愛いものを見たら、いい気分になれるじゃないですか。可愛い人の隣にいたいって、思うものじゃないですか」

ちなつ「お姉さんが可愛くなることで、きっと周りの人たちもすごく明るくなると思います。この人と一緒にいたいって、思うようになるんですよ」

撫子「周りの人たちも、明るく……」

ちなつ「あああっ、ごめんなさい! 決して今が暗いとかそういうことではなくてですね……!///」わたわた

撫子「……ふふっ、大丈夫。ありがとう」


撫子(自分のためだけじゃない、周りの人たちのために可愛くなる……)



撫子「…………買おう」

ちなつ「えっ?」


撫子「ちなつちゃんありがとう。私これ買うよ」

ちなつ「ほっ…………ほんとですかぁ?///」


撫子「うん。ちなつちゃんのおかげで一歩踏み出せたっていうか……私も別に、可愛いのは嫌いじゃないから」

ちなつ「え~嬉しいです……! お姉さんが私が選んだやつを来てくれるなんてぇ」

撫子(二人の別の人に同じものを勧められるって、もうなんか運命だもん……)

撫子(……いや、それだけじゃない。私自身も、心のどこかで “こういうのも良いかも” って思ってるんだ)

撫子「ちなつちゃんに背中押してもらってよかったよ。この服に似合うように頑張ろうって思えるようになった」

ちなつ「もう、お姉さん褒めすぎですよぉ……私も可愛いやつ選んでもらえて良かったですぅ♪」

撫子「櫻子たちは一階の本屋にいるみたいだから、ちょっと会ってってよ」

ちなつ「はーい!」


ピンポーン

撫子「あっ、ちょうどエレベーター来た」




撫子「そういえば花子もちなつちゃんに会いたがってた気がするな」

ちなつ「花子ちゃんがですか?」

撫子「なんかね、髪のもふもふがどうとか……」


がくんっ!!


ちなつ「きゃーっ!!」びくっ

撫子(なっ!?)

ふっ


撫子「うわ、電気切れた……!」

ちなつ「えっ、な、何があったんですか……!?」


撫子「エレベーター……止まっちゃったみたい」カチカチ

ちなつ「え、え~~~!」


撫子(そうだ、携帯……)


撫子「……うわ、今さっき地震が来たんだって。緊急速報出てる」

ちなつ「ちょうど移動してるときに地震が来たから、止まっちゃったってことですか?」

撫子「たぶんそうだね……あ、非常電源ついた」

ちなつ「と、とっ……閉じ込められちゃった……」

撫子「だ、大丈夫だよ。大きな施設だし……すぐエレベーターの検査に来てくれるだろうから、何分か待ってれば出られるはず」

ちなつ「そうでしょうか……怖い……」ふるふる

撫子「ちなつちゃん……」


撫子(櫻子が言ってたな……ちなつちゃんは怖がりだって)


撫子「大丈夫」ぎゅっ

ちなつ「あっ……?///」


撫子「私がずっと側にいるから。助けが来るまで待ってればいいだけだよ」

ちなつ「お、お姉さん……」

撫子「怖かったら、目を閉じてみて? 背中を私にあずけて、落ち着いてリラックスして」


ちなつ(……///)ぎゅっ

撫子「ちょっと外に電話してみるね。…………あ、もしもし美穂? 実はさっきの地震でさ……」

ちなつ(お姉さん、かっこいい……)

ちなつ(結衣先輩に似てる……でも櫻子ちゃんみたいな優しい安心感もある……)

ちなつ(あったかいなあ、お姉さん……///)


撫子「…………よし、今友達にも伝えたから。お店の人に伝えてくれるってさ。たぶん10分くらいで外に出られると思うよ」

ちなつ「よかったぁ……」


撫子「暖房も切れたのか……ちなつちゃん、寒いでしょ?」

ちなつ「ちょ、ちょっとだけ」

撫子「そうだよね……これ、私の上着きて?」ぬぎぬぎ

ちなつ「そ、そんな悪いですよ!」

撫子「中学生が遠慮なんかしちゃだめ。私は寒がってるちなつちゃんを見てる方が心が痛いよ……ほら、あったかいから」

ちなつ(あ……お姉さんの匂い……///)くんくん

撫子「あ、そうだ。私さっき買った服着ちゃおうかな」

ちなつ「こ、ここで?」

撫子「エレベーターから降りたときにさ、櫻子たちをびっくりさせてあげようよ」がさがさ


ちなつ「……ふふっ」

ちなつ「やっぱり、櫻子ちゃんのお姉さんなんですね」

撫子「え? どういうこと?」

ちなつ「櫻子ちゃんと同じなんですよ。誰かを驚かせようとか、びっくりさせようとかっていういたずら好きな所とか……隣にいるだけで、すごく楽しい所というか」

ちなつ「私、暗いところが苦手だけど……お姉さんがいるからちっとも怖くないです」

撫子「そう。そりゃ良かった」なでなで

ちなつ「えへへ……///」

撫子「着てみたけど……暗くてよくわかんないや。予備電源の明かりでも全然見えないし……大丈夫かな私これ」

ちなつ「大丈夫ですよ、試着したときすごく似合ってましたもん!」

撫子「これ着てるとこ見たら、美穂、なんて言うかな……///」


ぱっ

ちなつ「あっ、電気ついた!」

撫子「エレベーター再起動できたみたいだね。お、動き出したな」


ピンポーン

櫻子「ねーちゃん、だいじょー……」

花子「あれっ!?」

美穂「あっ……ああぁ~~~~~っ!!!///」


撫子「美穂……やっぱりこれ、買っちゃった。似合う……かな……///」


花子「かっ、可愛いしーー!///」

美穂「ちょっ、ちょっと~~! 撫子ったら本当にツンデレなんだからぁ! 私たちの前では買わないのに、後になってやっぱり買っちゃうって何それ! これで落ちない女はいないわよ!!」

撫子「つ、ツンデレとか言うな!///」


ちなつ「櫻子ちゃ~ん!」ぎゅっ

櫻子「あれっ!? ちなつちゃんじゃん! ねーちゃんと一緒に閉じ込められてたの!?」

ちなつ「そうなの、お買い物してたら偶然一緒になって……」

撫子「この服、ちなつちゃんも凄く勧めてくれててさ……それで買うことにしたんだ」

美穂「すっごい似合ってるわよ~! 写真、写真撮っていい?」

櫻子「ちなつちゃんはなんでねーちゃんの服着てるの? 面白いからこれも写真撮っていい?」


ちなつ「ねえ、櫻子ちゃん……わたし、櫻子ちゃんのお姉さんのこと、すごい好きになっちゃった♪」ぽっ

撫子「えっ」

櫻子「えっ!?///」

花子「えーっ!!///」


美穂「まっ! 撫子ったら……暗闇に乗じていたいけな中学生にあんなことやこんなことをしてしまったの!?///」

撫子「するわけないでしょ! ほんの10分くらいだったし!」


ちなつ「お姉さん、私……これからもお姉さんと一緒にお買い物とかしたいです! そのときまた閉じ込められたりしたいです!///」きゃーきゃー

櫻子「ね、ねーちゃんちなつちゃんに一体何したんだよー!」

美穂「キスでしょ! ちなつちゃんの唇を奪ったに違いないわ! 」

撫子「奪うかー!!///」



ちなつ「それじゃお姉さん方、私はここで失礼しますね~」

櫻子「じゃあねー。また学校で!」

撫子「ばいばい、ちなつちゃん」

ちなつ「また今度遊びに行きますね~! 今度は櫻子ちゃんじゃなくてお姉さんと遊びたいですぅ!」

櫻子「こらー!! 私とも遊んでよ!」

美穂「私もここでお別れしようかしら。撫子、今日一日ありがとう♪」

撫子「あっ、そうなんだ。こっちこそありがとうね……美穂がいて本当助かったよ」

美穂「うふふっ、全然いいのよ。櫻子ちゃんや花子ちゃんと一緒にいれて、私も楽しかったわ」


美穂「また今度デートしましょうね、撫子!」ちゅっ

撫子「っ!?///」どきっ

櫻子「わーー!///」

花子「あーー!?///」

ちなつ「きゃ~~~!!///」

美穂「じゃあね~!」ぴゅーっ

撫子「ちょっ、美穂ーー! デートってどういうこと!?///」

櫻子「なんなの!? ねーちゃん今日美穂ねーちゃんとのデートだったの!?」

花子「花子たちとの付き合いはついでだったのかし!?///」

ちなつ「いっつもキスでお別れするような仲なんですか!?///」

撫子「ちがーーーーーう!!!///」



~fin~

撫子さんだいすき

ありがとうございました。

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