のび太「公務員になる」ドラえもん「君はじつに馬鹿だな」 (29)

のび太「しずかちゃんにモテたいしオカネもほしい」

ドラ「どうしてそれが公務員につながるのさ」

のび太「だって公務員はモテるんでしょ?仕事も楽で儲かって」

ドラ「モテはあとからついてくるものだけど……」

のび太「儲かって時間にゆとりがある=モテるだろ?」

ドラ「君はそんな理由でモテて嬉しいのかい? 公務員ならだれでもいいってことじゃないか」

のび太「そうだよ! ぼくなんか誰も見向きしないから公務員になるんだよ! 悪いかよ!」

ドラ「あそこに1つの椅子がある」

のび太「椅子がなんだって? 冷やかしはやめてほしいんだ」

ドラ「いいからいいから。この椅子は一人しか座れない」

のび太「ふんふんそれでそれで?」

ドラ「イラッ……この椅子は公務員の席だよ」

のび太「ふうん。ぼくの席はないって言いたいんだね。ドラえもんってやっぱ屑だわ」

ドラ「そうじゃないよ。このみんなが座りたがる椅子に君が座れると思う?」

のび太「やってみなきゃわからない」

ドラ「ねらーでドジで間抜けで童貞で短小で候の君が?」

のび太「今が悪くても結果が良ければ全て良しでしょ」

ドラ「すでに一発逆転しか頭にないダメなギャンブラーの思考なんだよね」

のび太「今が悪いから良くしたいのは当然だよ」

ドラ「その気持ちは大切だけど、自分を買いかぶると痛い目を見ることもある」

のび太「なんだよ……応援してくれないんだね。親は応援してくれるのに」

ドラ「そりゃ我が子は可愛いし、目標が世間体のいい公務員となったら応援もしたくなるよ」

ドラ「子供の可能性に掛けて、好きなようにやらせてあげたい。当然のこと」

ドラ「しかしきみは自分が受かると思うのかい?」

のび太「……受かる……といいなと思ってる」

ドラ「あの出木杉くんを見てほしい」

のび太「両親が公務員で、自分も公務員になるって言ってたっけ……」

のび太「親戚も立派な人ばかりで、先生にも目をかけられていて……」

のび太「あんな奴とぼくは勝負するのか……」

ドラ「今までどんな相手と戦うのか見えてなかったんじゃない?」

のび太「でもっ……そんなのは受かってしまえば関係ないよ!!」

ドラ「そうだね、でもきみはまだ受かっていない」

のび太「……」

ドラ「受からなければ全て無意味だという強迫観念に囚われて、公務員に執着していないかい?」

ドラ「そもそもモテたい楽したい金がほしいというけど、何故公務員でなければならないのか」

のび太「仕方ないよ! 世の中結果が全てじゃないか! ぼくの理想が公務員なんだ!」

ドラ「公務員以外でも美味しいと言われている仕事はあるけどね」

ドラ「例えば……薬剤師も人気がある」

のび太「そうなんだ。でも無理だよぼくのうちは医療とは縁遠いし。
薬剤師になってる自分なんて想像したこともない」

ドラ「まあ親の職業によって子供の進路も変わりやすいよね。医者の子は医者という風に、環境が職業に導いていく」

のび太「そもそも圧倒的有利だよ。成功者の実例が身近にいるんだからノウハウも得やすいしコネもありそう」

ドラ「よくわかってるじゃない」

のび太「あっ……」

ドラ「うん。きみは残念ながら公務員に導かれる家庭に生まれたわけではないんだ」

のび太「ハードモードだね」

ドラ「そのとおり。しかし戦いは容赦なく、イージーモードとハードモードの二人をガチンコさせるんだ」

のび太「……」

ドラ「きみの勝算は? それだけのことをしてきている?
あるいは才気を感じるのかい?モードをひっくり返すような鮮烈な何かを」

のび太「正直言って……分が悪いね……」

のび太「出木杉に勝てるとは思わない……それはそのまま、公務員の席の取り合いでも……」

ドラ「出木杉くんは公務員になれなかったとしてもその後のことを考えているよ」

のび太「えっ?!」

ドラ「きみは考えているのかい?」

のび太「考えてない……だって、結果が全てだから。結果が出ないことには……」

ドラ「結果が出る前から最悪に備える出来杉君と、
結果にこだわっている君との違いは何かわかる?」

のび太「こだわるのは仕方ないよ……ぼくの人生がかかってるんだから」

ドラ「そこだよ。出来杉君は公務員以外の人生も見てる。君は見てない。
一方で環境からみると明らかに出来杉君は公務員に導かれいる。
なぜ環境が不利な君に公務員以外が見えなくなっているのか」

のび太「……余裕が無いって言いたいの?」

ドラ「もう少し具体的にしよう。
何かに似てると思わない?お正月に神社に行って……」

のび太「くじ引きして……今年の抱負をかたって……」

ドラ「『願掛け』して」


のび太「……ぐぬぬ」

ドラ「公務員にこだわりすぎるのは願掛けと同じなんだ。
公務員になりたい、公務員以外にはなりたくないという強い願い。
それ自体は悪いものではないんだけど、
実際のところ席はきまっている職なんだから現実的な判断も求められる

そして、現実的であればあるほど公務員以外の進路も見るんだ」

のび太「ドラえもんは応援してくれると思っていたのに」

ドラ「応援しているよ。
でも現実的な判断が出来ない状態にまでなっていながら
イージーモードの優秀な人たちに勝てるかどうか」

のび太「……」

ドラ「君は射撃なら出木杉くんに負けないだろう。
射的大会があれば、君はその実力を持ってきっと優勝する。
けどそのときこそ君は物事に絶対はないからといって
負ける可能性も考えられるんじゃないかな?」

のび太「目に砂が入るとか……何が起きるかはわからないもんね……」

ドラ「一番優勝に近い君こそがクールに大会に挑むことが出来る」

のび太「目に砂が入りそうなら、ゴーグルを付けるとか対策もする」

ドラ「そういうところも見えてくる。そうやって勝つべくして勝ちに近づく。
勝負は過去から始まっているんだ。
まさにのび太くんのイージーモードはここにある
天才的な射撃の才能を見せられてきたからね」

のび太「才能に足元をすくわれないように地盤も固める」

ドラ「そのとおり。同じ切れっぷりが公務員志望で出来る?」


のび太「公務員は……ぼくに配られたカードでは不利だ。正直いって」

ドラ「戦う相手を具体的に感じて、自分の不利っぷりが理解できただけで
少し視野が広がったんじゃないかな」

のび太「くやしい……イージーモードに怨みや妬みの感情が湧いてしまうよ」

ドラ「仕方ないよにんげんだもの。
でも、君の射撃の才能を出来杉君は羨んでいたよ。
いつもかっこいいところを持っていかれるってね。
彼にとってもまた、君はイージーモードなんだ。
どこを切り取るかで全く見え方が変わる。
公務員しかみなければ、君は不利なだけで終わるけどね」

のび太「……ほんと、出木杉くんは出来過ぎた人だ」

のび太「それでも……ぼくは公務員になりたい」


ドラ「わかってるよ。それじゃあ必要なことをやっていこうか
君に足りないのは環境、カネ、コネ、協力者、勉強時間、ないものだらけだ

まずは2ちゃんを見るのを辞めることから始めよう。
それから出来る限り周囲の協力を得られるように、
本気で公務員になりたいことを態度と中途成果で魅せていこう
キレキレで大胆に行動しなきゃ、ハードモードは攻略できないよ。

公務員じゃない進路も清々しく考えられるようなやりきりっぷりじゃなくちゃ、負ける」


のび太「え? やめさせようとしたんじゃないの?」

ドラ「君はじつに馬鹿だな。君の願いがかなってほしいからこの話をしたのに」

のび太「ドラえもん……ぼくのアナルほっていいいよ」

ドラ「///」

この後のび太は公務員試験に挑む。
未来を知るドラえもんは結果を知っていたが、
鼓舞もせず慰めもせず、2ちゃんを自省しきったのび太をやさしく見送るのだった。

~FIN~

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