「恋を教えて」 (15)

百合。女の子同士がイチャコラしています。
地の文が多いので気をつけてください。


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私のスカート丈は長めで、それは誰にも肌を晒したくないから。でもあの子もスカート丈が長いけど、それはたぶん女の子らしくしたくなかったからなんじゃないかと思う。
出る杭は打たれるから、スポーツ万能で、少し日焼けして、それでも可愛いその子は他の子からあまり良い噂を立てられていなかった。けれどもそれを物ともせず笑っていたから、友達は多かったと思う。

私は陰口を言う側の人間だった。人のことを悪く言っている間だけ、結束が固まるような、そんな気がしたからだ。おそらく彼女も裏で何かしら言われていることは気付いていたと思う。
私は他の子からその子の話を聞くたびに、その子に視線を向けていたことを思い出す。

「一組の男の子フッたらしいよ」
「スポーツ推薦で大学入るらしいよ」

だいたいがうざいねー、うけるーという言葉が後に続くものだったが、私にとっては彼女への興味を淡々と募らせていく材料でしかなかった。

ある日、その子とすれ違った。夏なのに、汗の匂いが全然しない。代わりに彼女がいたところからは、違うシャンプーの香りがした。私はその日からお気に入りだったシャンプーを使うのをやめた。自分の髪から、あの子と同じ匂いがするのはとても不思議な感覚だった。
興味が指し示すまま私は動いた。陰口をいうのはやめた。友達がひとり、またひとりと話さなくなった。女の友情なんて、こんなもんかな、そもそも友情ですらなかったのかもしれない。それでも私は寂しくもなんともなかった。

「付き合ってください」
私は忘れ物を取りに来ただけだったのに、どうしてこんな場面に遭遇するんだろう。告白する女の子の声は高くていかにも男の子が好きそうな声だ。

「ごめんなさい、でも、ありがとう」

私は心臓がものすごい勢いで跳ねたのを感じた。あの子だ。あの子が女の子からの告白を断っているということなのか。
正直に言うと、予想はしていた。女の子のファンも多そうだ。しかし共学という手前、変に噂にならないように黙っていただけなのだろう。
しばらくして告白した子が教室から出てきた。泣いてはいなかった。教室から出てきたとき目が合って、一瞬だけしまったという表情をした。私が何も言わず目を瞑ると、その子は廊下を走ってどこかへ行った。
教室の中からは小さなため息が聞こえた。こちらに歩いてくる音が聞こえる。私は立ち去ろうとしたが、この短時間でその子の視界から消えるまで移動するのは無理だ。

「あれ、人いたんだ…もしかして、聞いてた?」
教室のドアを開けると彼女はそう言う。私は嘘もつけず、頷くしかなかった。
「そっかーたまにこういうことあるんだよね…」



「きみに聞かれてたから、明日には陰でまた色々言われるのかな?」
心臓がまた早く動き始めた。この子は私が陰に回って話をしていたことを知っている。ハッとして視線を上げたら、その子は含み笑いをしていて、読めない。
違うと言うだけで精一杯だった。声が震えている。
「私はもう、貴女のことを色々言うことはやめた」
「どうして?」
貴女に興味が出てきたからだと言えるはずがない。
「貴女のことを言っても世界は何も変わらないし、時間の無駄」
「ぷっ…なにその理由!」
からから笑う彼女に私も不思議と嫌な気はしなかった。笑みさえ溢れてきた。だから私は油断した。

「一番の理由は…貴女に興味があるから、かもしれない」
「興味? いまさっきの子みたいな?」

この人にとっては、恋も好奇心も同じものなんだろうか。そう考えると少しさっきの子が可哀想だ。

「興味、かあ」
そう言って彼女は伸びをすると、勢いよく机から立ち上がった。
「私、部活抜け出してきてるんだ。そろそろ戻らなきゃ」
「わかっ…」
「興味があるんなら、部活見ていけば?」
思いもよらない発言に私は驚いた。これまで私が(あくまで)秘密裏に観察していたのに、相手から進んでこう言ってくれるのだから、これに乗らない手はない。私は二つ返事でお願いした。

部活で点を入れるたび、その子は他のメンバーと肩を組んで喜んでいた。その女の子と、さっきの告白した女の子と私は、どう違うんだろう。触れるだけなら、誰にでも出来そうなのに、恋とかそういう関係になると意味が変わってしまうのか、そう考えていると、後ろから思い切り背中を叩かれた。

「終わった!から待ってて、着替えてくる」
やっぱり汗の匂いがしない。普段から運動しているとこうなのかな。


「私さー、男の子からは興味あるって言われたことあるんだ」
成り行きで2人で帰ることになって、その子が話し始めたのがその話題だった。
「なんか分かんないけど、女の子らしくないのに可愛いから変なんだって。そいつとは、この前まで付き合ってた」
「1組の男の子フッたのは?」
「それは本当。だってそのときもうそいつと付き合ってたから」
過去形で話す彼女の横顔からは表情が読み取れない。夏で日が長いとはいえ、もうあたりは暗がりだったからかもしれない。
「私は…好きだったのかなーわかんない。でも興味があるって言われて付き合う私もどうかしてるよね」

「でも最近話さなくなってさ、倦怠期みたいな感じなのかな…で、私ももういっかーってなっちゃった」

それ好きじゃなかったんじゃないの、と堪えきれずに言うとまた彼女は笑った。もしこの男の子と付き合ってなければ、たぶん好きでもない1組の男の子に告白されたとき、OKしてたのではないだろうかと思うくらい、彼女はそういうことに無頓着だった。

「きみは私に興味があるの?」
「そうだけど」
「じゃあ私のこと、好き?」
「好きかわからないけど、…というか、その計算式はおかしいよ」
興味があるのは好きの裏返しではない。踏み出す一歩かもしれないが。

翌日、また学校で会った私たちは、その子の部活帰りに一緒に帰ることになった。
「私たぶん恋とかそんなんに疎いんだよね」
今更か、と思ったが声には出さなかった。本当は喉のすこし手前までツッコミが出かかっていたが、飲み込んだ。
「恋ってなんだろうな…セックス?」
「あまりにも極端すぎるよねそれ」
「そっか」


「じゃあさ、私に恋を教えてよ」
恋を教えてといわれた瞬間、私は歩みを止めた。しばらく後に、その子も歩みを止めて、うしろを振り向く。その顔は笑っていた気がする。

「お待たせー」
「今日は何するの」
「デート」
女の子2人で遊びに行くだけなのに、デートも何もない。ただこれも恋を教える一環で、私には間近でその子を観察する機会ということだ。
私は恋愛脳に程遠い頭をフル回転させた。甘いものを食べさせた。その子はクリームの乗ったスプーンをこちらに差し出してきた。どうやらコミカルな知識はあるみたいだ。
そのあとはその子が可愛いと言ったイルカのついたネックレスを買って、プレゼントした。

「きみがつけてよ」
せっかくプレゼントしたのに、と言うとそういう意味ではないらしい。
「私につけて、きみが」
後ろから首に手を回して付けようとするが、身長差が辛い。その子と私では10センチ以上、見ている世界が違う。
「身長高いよ」
もしかしたらコンプレックスかもしれないと思ったけれど、口をついて出てしまった。ゴメンと言ってしゃがむその子の、うなじが少し近くなった。そこからは少しだけ、汗の匂いがした。

次の週は何を思ったのか、2人で遊園地に行くことになった。ただ、彼女が試合があるということで、集合は夕方になったので、それまで私は本屋で遊園地デートの極意とやらを調べることにした。
と、ここまできて今更ながら、私が男役をしていることに気づく。あの子の方が確実に背が高いのに。恋を教わるのは女の子の特権なのかな、なんて考えたりもした。
本当のカップルなら、コーヒーカップで恋の花を満開にしたり、ジェットコースターやおばけ屋敷で吊り橋効果を狙うところなのかもしれないが、私たちはそうじゃない。ただ、雑誌を読んでいるとある箇所に目が止まった。

「観覧車!広い世界に二人きり、夜の星空が2人を祝福!」

そういえば、2人だけで話をしたのはあの教室が最後かもしれない。それからは2人のときも、外にいたからどこか遠慮がちだった。せっかくなら、2人でまた話したい、できれば、ここに書いてある夜に。

「ごめん、遅くなった!」
「いいよ、試合って聞いてたし、私もさっききたとこ」
「いこ!」
「なんか嬉しそうだけど、試合勝ったの?」
「負けちゃった!」
でもこれが楽しみだったから、というその子に不覚にも嬉しいと思ってしまった。今回の相手は、そこまで強くないと言っていた気がするけれど、試合ゆえに流れが狂うこともあるのかもしれない。

それからジェットコースターに乗って、おばけ屋敷に行ったが、その子が無理やり怖いものに総当たりしていることを気づくのに時間はかからなかった。
「もう、怖いなら別にいいんだよ」
「叫んで忘れたいこともあるんだよ…」
「試合のことだよね」
「……」
その子は黙った。多分図星だ。私は無言で立ち上がった。


「はい、これ」
「…クリームソーダ?」
「なんのために遊園地来たの?そういうこと忘れるための場所じゃん」
「……そうだね、遊ぼうっと」

それから、なぜかその子はジェットコースターだけを徹底的に乗りつぶした。最初は本気で怖がっていたが、慣れてくると叫び方にも余裕が出てきたようだった。
あたりはすっかり夜になった。本当なら、私たちは帰らなければいけない時間のはずだ。でも、そんな気は起きなかった。

「…観覧車、乗ろ」
私が口を開く前に、その子から誘いがかかった。私が見た雑誌が頭の中に蘇る。
乗ると、私たちの前後のゴンドラは男女カップルばかりだった。

私たちのゴンドラが中腹に差し掛かったとき、私は外を見ていた。恋を教えて欲しいというその子とは裏腹に、下はカップルだらけだ。あの人たちはどうやって付き合ったんだろう。私も不思議に思っていた。

「これが普通のデート…なんだ」
その子を見ると、同じように下の人混みを見つめていた。
「恋したら、こういうふうに過ごすんだ…」
また、その子の表情からは感情が読み取れない。
「それなら、私はあの男の子に恋してたのかも」
私はなんと声をかけていいか分からなかった。出てきた言葉が意外で、頭が回っていなかった。
「こんな気持ちになるのが恋なら、たぶんあれは恋だったんだよ。私、嬉しかったんだなー…」
目的達成? と聞くと、その子は俯いた。目的は、達成したかもね、そう言うと、私の隣に座った。ゴンドラが少し揺れた。
「でも、こんな気持ちにしたのはきみだから。私がこんな気持ちになったのは、今が初めてなんだよ」

それを言い終わったと同時に、その子は私の頬に手を添えてーー。



何時になったんだろう。時刻を告げる鐘の音が、遠くに聞こえる。その音が止むまで、私は唇に熱さを感じていた。
「これは、お礼、かな」
しどろもどろになっているその子が可愛くて、私は吹き出してしまった。
「ひどいなー」
「ごめん」
そう言って次は私がその子の唇を奪った。瞬間、声を漏らす彼女、自分からしてきたくせに、されるのは慣れないらしい。それを口にすると、ムキになって強引に抱きしめてきた。
冷静な私と裏腹に、彼女はすこし息が上がっていた。うなじを伝う汗が、外のイルミネーションに反射して見えた。それを指でなぞると、彼女は震えて情けない声を出した。
「…こんなことされたことないの」
「…ないなー」
「恋イコールセックスって言ったあれは?」
「セックスは…した」
たぶん、淡白なセックスをする男の子だったのだと思う。そんなことを思っていた。

「私がはずかしくて、いやだって言った、首とか、恥ずかしい」
そう言って私の指が触れたところを手で押さえる姿に私はもう一度キスをした。
私には見せてもいいんだ、と言うと彼女はだまって俯いた。

それからは触れるだけのキスをなんどもして、気付いたら下りる時間だった。キスをしてからの時間は、すごく長かったように感じたが、観覧車の時間は10分くらいしかなかった。

「私は、きみに興味がでてきた。私をどうしてこんなふうにしたのか」
帰り際、手をつないで彼女が言った。言葉は深刻そうなのに、本当に興味があるだけといった風に言う。
「きみは、まだ私に興味があるの…かな?」

「私は貴女にーー」
風でかき消されたようだけど、彼女には聞こえたみたいで、また少しだけ、触れるだけのキスをした。

終わりです。
以前某ジャンルでホモを書いたのでそれの口直しだと思って書きました。
生まれて初めて百合というものを書いたので至らぬ点もあったかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
本当はR-18にする予定だったのですが、至りませんでした。需要があれば後々続編を書こうかと思います。

雰囲気良いね

それに簡潔だけど盛り上がりを押さえていて、単純に読み物として良かった

是非続編をお願いします

ありがとうございます。
そう言って頂けると書いた身として冥利に尽きるというものです。

よかったです
また読みたいなって

乙でした

ありがとうございます。

萌えたよ、是非続きが読みたい。

ええな

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