モバP「パスタや」 (21)
ハ゜チハ゜チハ゜チハ゜チ
P「え、え、お運び頂きましてまことにありがとうございます。皆様この忙しい最中よくいらしてくださいました」
P「なにしろ年の瀬でございますからね。ええ。皆様、いかがお過ごしでしょうか。」
P「私なぞは本当に、ええ、ここんとこ徹夜続きでして本当につらいですよ。こうして喋ってる間に寝てしまいそうですね。まだそういう年でもないってのにね、本当そうですよ」
P「もう12月も近いですね。我々は『師走なんて言葉は私どものためにあるんだなぁ』なんて思うほどのてんてこ舞いでございます。ありがたい限りで」
P「ええ、なにしろそろそろイヴが忙しくなる季節でございますから。そういうのもまあ当然と言ってはなんですが、そういう季節でございますからね」
P「まあ、もっとも皆様には無縁のイベントでございますからあまり気にかける必要もないのかなぁなんて思いますね」
P「しかし、ご縁がないからこそ我々もこうして皆様のためのイベントを開けるんですから。本当に御礼申し上げます。」
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P「さて、ええ、この世の中に色んなアイドルがいらっしゃるように、屋台もまたいろぉーんな種類があるんでございますね。」
P「江戸時代に人気だったのが、お蕎麦屋さんにうどん屋さん、あと意外かもしれませんが、お寿司屋さんなんですよね」
P「なんでも昔はファーストフード感覚で屋台を出して回っていたそうで。江戸の皆さんもちょっと寄って食べていく、くらいのノリで入っていくわけですね」
P「まあまあ、お寿司屋さんと言ってもちゃんと職人さんが握ってるあの皆さんが想像するようなお寿司ではなく、今で言う押し寿司のようなものだったらしいですね」
P「しかもマグロなんかは滅多に使われなかったそうですね。当時はサバやサンマだったそうです。まあ当時のことを考えるとマグロもファーストフード店ごときが使えるような食材ではなかったのでありましょう。仕方の無いことでごさいますね」
P「しかしどの商売もまあ易しいなんてぇものはありませんな。易しいようなものだったら私は今頃床についていることでしょうからね」
P「まあみなさんこのお時間にお集まりになられてるってことは私と一緒に夢で遊んでいるってことはなさそうでございますが」
P「昔も今も仕事が楽ってことはなかなかないと思うんですよ。ええ」
P「やっばり独自の仕事してらっしゃる方はわかるんではないんでしょうか?」
P「私どももイチから事務所を立ち上げましたから。よーくわかるんですよ。最初は上手くいかんものなんですよ」
P「まあ、いつになってもうまくいかん人は、どこか見直す必要があるようで……」
ありす「パスターパスター」
瑞樹「おーい、待ってー。待ってよー。ちょ、ちょっと待ってって言ってるじゃないのよー」
ありす「ちょちょ、お客さんに持つゆさぶっちゃダメですよ。色々入ってて危ないですからね。今下ろしますんで」
瑞樹「あらら、ごめんなさいね……ふふぅぅーー。寒いわねー……ちょっとコンロ当たらせてもらっていいかしら」
ありす「ええ、寒いですかね。どうぞどうぞ」
瑞樹「あらありがとう……ああー、あったかいわ」
瑞樹「いやぁね、今日結婚式があったのよ。あそこの教会で。知ってるでしょ?」
ありす「……いや、教会ってけっこうあちこちあるんで、わからないですね」
瑞樹「あらそう?いいところよ。落ち着くし。シスターはおしとやかだし」
瑞樹「友達の結婚式だったんだけどね、ええ、子供の頃からのほら。みっちゃん。知ってるでしょ?」
ありす「……いえ、存じ上げませんが」
瑞樹「あらそうだったの?小さい頃は泣き虫で弱虫でぴーぴー泣いてたからしょっちゅう慰めてあげたわ」
ありす「はあ」
瑞樹「数少ない友人の私に声かけてきてね。未婚の私に声かけるなんてどうかなぁと思ったけど友達の門出祝いに行かないのもどうかと思ってね。行ったのよ、つらかったわ」
ありす「そうですか」
瑞樹「それでね、そのみっちゃんの友達のよっちゃんも一緒に来てたのよ。驚いたわね何年ぶりだったかしら」
ありす「それはそれは」
瑞樹「それでお茶が出されたと思ったらゴミが浮いてたのよ。気持ち悪いから飲まなかったけどよっちゃんはぐいぐいいってたわね。昔から図太いというか何飲んでも食べてもあたらないから平気だったんでしょうね。昔の胃袋は健在ってことねぇ」
ありす「そうですねぇ」
瑞樹「それで後で聞いたらあれ、桜湯っていうものらしいわ。やだわ私ったらこの年になってそんなことも知らなかったのよ。これからは恥かかないようにしないとね」
ありす「そうですか」
瑞樹「そのうち主役が出てきたわよ。薄いピンク色の花嫁衣装。憧れるわ。」
瑞樹「それでみっちゃんがね、『さて。みなさんこの度は……』ってさ。何だか照れくさくなっちゃったわ。」
瑞樹「子供の頃はしょっちゅうピーピー泣いてて慰めてあげてたあの弱虫のみっちゃんが、あの大勢の前で怖じ気づかずに挨拶出来るなんて。私なんかもういらないのかしらって。まあこの年だし、当然なんでしょうね」
ありす「で、ございますね」
瑞樹「それでね、そのあとの挨拶で私のところに来てね、『今までありがとうね、瑞樹ちゃん』って……。えへへ、私なんだか嬉しくなっちゃって。私でさえ嬉しいんですもの。ご両親はさぞかし嬉しかったでしょうね!うふふふ、あはは!」
ありす「……そうでございますね。ええ、本当に」
瑞樹「そうでしょう?でも本当良かったわ。私も世間が狭いのかしら。もっと色んなところに目を向けていかないといけないわね。」
瑞樹「まあでもいい商売よねあなたなんかは。こうやって屋台を引きずって色んなところ回っていって世間が広いでしょう……あ」
瑞樹「世間が広いって言ったら……えと、あそこ。あそこの教会で結婚式があったのよ。知ってた?」
ありす「……それは今聞いたので。知っていますが」
瑞樹「知ってる!?あらまあ噂になってた!?いいとこよあそこ。シスターはおしとやかで。そこで私の友達が結婚式やってたのよ。みっちゃんっていってね。昔は弱虫で泣き虫だったんだけどねぇ」
ありす「あなたがずいぶんと慰めてあげてたんですよね?」
瑞樹「……あら、知ってたの?あなた私のことよくわかってるじゃない。いいわねぇ話が早くて。せっかちになってきたのよ最近。年のせいかしら」
瑞樹「それで私呼ばれたのよ。未だ未婚だっていうのに何の嫌みかと思ったんだけどこれも義理よ。行ったわ。」
瑞樹「同じ友達のよっちゃんもきてたんだけどね。それでお茶が出てきたと思ったらゴミが浮いてるのよ。いやあねぇと思って飲まなかったんだけどよっちゃんぐいぐい飲んでるのよ」
ありす「よっちゃんさんは何を食べても飲んでも当たりませんからね」
瑞樹「……私に言わせてよそれ。友達なんだし。まあいいわよよくわかってるじゃないそうなのよ」
瑞樹「そしたら真打ち登場よ。花嫁衣装が綺麗だったわねぇ。薄いピンクのウェディングドレス。着てみたいわぁ」
瑞樹「それでみんなへの挨拶っていうの?それで『さて。みなさんこの度は…』って。何だか嬉しくなっちゃったわ。小さい頃よく慰めてたみっちゃんが怖じ気づかずに挨拶出来るなんて。涙が出ちゃうわね」
瑞樹「そのうち私のところに来たわ。やけにかしこまって挨拶してきたわよ」
ありす「今までありがとうと言われたときには、嬉しかったでしょうね」
瑞樹「……私に言わせてよ!一番いいとこじゃないのよー!あはは、まあいいわその通りよ。その勢いでいっぱいお酒飲んじゃって」
瑞樹「うっぷ、ちょっとごめんなさい。水一杯もらえるかしら?酔っぱらってるのよ勘弁してちょうだいね」
ありす「はいはい、どうぞ」
瑞樹「あーあー、酔っぱらいはこれで退散するとするわ。じゃあねー」
ありす「あ、ちょっとお客さん!お客さん!」
瑞樹「んー?」
ありす「パスタ、召し上がってもらえませんか?」
ありす「すいません、この夜更けに店出してるのも、あたってもらうためじゃないので」
瑞樹「あら……そうね。べしゃりかましておいて帰るんじゃいけないわよね。いただくわ」
ありす「えへへ、ありがとうございます。じゃ、どうぞ」
瑞樹「……え?」
ありす「どうぞ?」
瑞樹「なにこれ」
ありす「パスタですが?」
瑞樹「これ、式場でも見たわよ」
ありす「そうでしょうか。料理でパスタが出たんでしょうか」
ありす「どうしたんですか?水ならもう一杯」
瑞樹「……ええ、いらないわ」
ありす「ではどうぞ」
瑞樹「……南無三」ハ゜ク
ありす「まったくひどいお客さんでした。酔っ払った勢いでパスタまで吐いてしまうなんて」
ありす「ぱーすたー。パスターいかがー」
巴「おーい……」
ありす「はい、差し上げますか」
巴「……おう、一つ頼む」
ありす(……この人、なんで小声なんだろう……)
ありす(……あ、そっか。大勢いるんだ)
ありす(今いっぺんに頼んでまずかったらいけないから、まず試食しに一人できてるんだな……)
ありす(……美味しくつくろ)
ありす「……はい、どうぞおまたせしました」
巴「おう、ご苦労じゃ」
巴「ズルル……ズルッ、ズルッ」
巴「ふへぁ……」
巴「ズルルルル……モグモグ」
ありす「……」
巴「ぷはぁ……ごちそうさん」
ありす「ありがとうございます」
巴「おう、いくらじゃ」
ありす「はい、180円です」
巴「おうよ……どうけ」
ありす「……はい、確かに」
巴「パスタ屋よ」
ありす「はい、なんでしょう」
巴「お前も、風邪をひいたんか」
終しまい
ありがとうございました。読んでくれた人に感謝したいです。
初代柳屋恭太郎さんを参考にして書きましたっていうか参考にしすぎました。
幸子Pとして寄席に行ってみたら予想外にハマる幸子を提案します
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