モバマス
朋が、タロットカードに食いついた蘭子を占ってあげるだけのSSです。
・藤居朋
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・神崎蘭子
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http://i.imgur.com/2kKV5CP.jpg
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アイドルになるかどうかさえ、占いで決めちゃったあたしが……
占いを信じないとか、どうかしちゃったかも、ね。
あたしは、予定より少し早く事務所に来ちゃったので、
暇つぶしに、休憩室で最近手を出してるタロットカードを取り出した。
真新しい22枚の大アルカナ。
小アルカナも揃ったの買ったけど、まだ覚えてないんだな。
んー。愚者、魔術師……運命の輪、正義、吊るされた男……審判、世界、と。
よしよし、ちゃんと22種類揃ってるね。
「闇に飲まれよ!(お疲れ様です!)」
「あ、蘭子ちゃんお疲れ!」
あたしが一人でタロットカードをいじっていると、蘭子ちゃんが部屋に入ってきた。
蘭子ちゃんは、何故か固まってあたしの方をじっと見ていた。
「運命の託宣を探る者よ、その手札は、もしや?(朋さん。そのカードって、もしかして?)」
「そうだよー。これはタロットカード! さすが蘭子ちゃん、気付くの早い!」
蘭子ちゃんは、あたしのタロットカードが気になるらしく、
あたしの隣りに座って、目をキラキラさせながら見つめていた。
蘭子ちゃんの食いつきがあまりに良いので、あたしは調子に乗って、
「蘭子ちゃん、せっかくだから一回占ってあげようか?」
「その言は真か? なんという重畳っ!(え、よろしいんですか? 嬉しいですっ!)」
なんて言ってみた。
そしたら、蘭子ちゃんの表情が眩しいほど明るくて、あたしは一層気分がよくなる。
「ま、あたしも覚えたてだから、あんま難しいのできないけど、例えば――」
あたしはタロットカードを軽くシャッフルして、山札を作った。
大アルカナ22枚だけだから――それしか意味覚えてないし――山というほどの厚さじゃないけど。
「蘭子ちゃん、この山札から三枚引いて、裏のまま横一列に並べてくれない?」
「承知した……運命を示す札よ、我が手に従え!(分かりました……こう、でしょうか?)」
蘭子ちゃんは上から三枚カードを引くと、
むむむ……と悩ましげな表情をしつつ、カードを横一列に並べた。
「これはスプレッド――タロット占いの並べ方のこと――ね。
そのなかの一つ、スリーカードよ!」
横一列に三枚並んだカード。
これを一枚ずつオープンして、そのカードの内容と、
向きの上下があってるか逆になってたか、それによって占いを行う。
上下があっていれば正位置、逆なら逆位置。あとは22枚の絵次第。
「スリーカードは、一番左が過去、真ん中が現在、一番右が未来を象徴するの。
ちなみに蘭子ちゃん、何を占って欲しい?」
蘭子ちゃんは、あたしの問いを聞いて何やらもじもじし始めた。
あたしが気になって顔を近づけると、蘭子ちゃんは頬を真っ赤にして、
「ぷ、プロヴァンスの風と我が因縁を、其方に委ねよう……(ぷ、プロデューサーと、私の相性を占ってもらえませんか?)」
「……重大なコトだけど、任されたよ!」
それって今更占う必要あるのかなぁ。
あたしは、蘭子ちゃん担当のプロデューサーについて、そこまで詳しく知らないけど、
蘭子ちゃんの表情とか見てる限りじゃ、上手く行ってるように見えるから、さ。
まぁ、実はコレ、あたしのタロット占いで記念すべき初占いだから、断るのもね……。
蘭子ちゃんも、すぅーはぁー深呼吸しながら真剣な面持ちでカードをめくろうとしてる。
あたしも気合入れて、先を見通してあげなきゃね!
蘭子ちゃんが、右からカードをめくっていく。
その面持ちは真剣そのものだ。
「いでよ、過ぎ去りし日々の象徴! ――んむ……こ、これは……
(うぅ……男の人が逆さになってる。いきなり不吉なカード引いちゃったのかな……)」
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一枚目、過去――“吊るされた男”の正位置。
「私は……どんな答えがあろうと退かぬ! ――これは……跳躍、か?
(人がジャンプしてる……? あ、でも“THE TOWER”って字が逆だから、落ちてるのか……)」
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二枚目、現在――“バベルの塔”の逆位置。
「……わ、我が終焉への道行を示せ! こ、これはっ――て、天使か……?
(天使に、アダムとイヴ? 前二枚よりは良さそうに見えるけど、なんか楽園追放を連想しちゃう……)」
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三枚目、未来――“恋人”の正位置。
蘭子ちゃんはタロットの絵柄を見て、露骨に沈んだ顔をしていた。
あんまり良さそうに見えなかったみたい。
まぁ“恋人”はともかく“吊るされた男”とか“バベルの塔”は不吉に見えるもんね。
でも、このカードの意味合いって――
「カンペキとは言わないけど、かなりいい感じじゃないかな? 蘭子ちゃんとプロデューサーの相性」
「……い、いや、朋さん。気を遣わなくても、私は大丈夫ですから……」
「素、素が出てるって……まぁいいや。一枚ずつ説明したげるよ」
まず一枚目、過去を象徴する“吊るされた男”を読み解く。
「吊るされた男の正位置。意味は……忍耐、努力、試練。これはたぶん……
プロデューサーと蘭子ちゃんが出会って、今までアイドル活動を頑張ってきたことを意味してる」
次に二枚目、現在を象徴する“バベルの塔”を読み解く。
「バベルの塔の逆位置。意味は……突然のアクシデント、誤解か。
最近、プロデューサーとすれ違っちゃったりしてる? その原因がこれだね……誤解だってよ。
意識してプロデューサーと話をする機会、持ったほうがいいんじゃないかな」
最後に三枚目、未来を象徴する“恋人”を読み解く。
「恋人の正位置。意味は……情熱、選択、絆……あ、あと」
「最後の答えを、聞かせ給え……(あ、あと……な、何ですか?)」
「あと……結婚、だね」
「け、けっ、けっこん……っ!?」
蘭子ちゃんは、生命の雫が生命の霧になりそうなほど、真っ赤になっていた。
いやー、こうまで反応してくれると、占った甲斐もあるもんだね。
うーん、そうなると、あたしもちょっと相性の気になる相手が……
今なら、うまく占えそうな気がする! よし、あたしもやろう!
一枚目、過去――“運命の輪”の正位置。意味は……幸運、転機、上昇。
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二枚目、現在――“力”の逆位置。意味は……甘え、人任せ、優柔不断。
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三枚目、未来――“バベルの塔”の正位置。意味は……崩壊、災害、悲劇。
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は? 何ですかコレ。
「と、朋さん、どうしたんですか?」
「い、いやー? 蘭子ちゃん、何でもないよアハハッ」
あたしは、蘭子ちゃんの目を何食わぬ顔で受け流し、もう一度タロットカードを並べて引く。
一枚目、過去――“星”の正位置。意味は……希望、ひらめき、願いが叶う。
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二枚目、現在――“正義”の正位置。意味は……公正、公平、善意。
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三枚目、未来――“女帝”の逆位置。意味は……挫折、虚栄心、嫉妬。
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「……ない……」
「と、朋さん?」
「こんな結果、認めないっ! やり直してやるわ!」
あたしは、もはやたった三枚のカードすら並べず、一枚ずつ引いて、めくる。
引く、めくる、引く、めくる、引く――
「おはよーさーん! お、朋に蘭子じゃないか! ……って、と、朋、目が血走ってるぞ……
ら、蘭子っ、朋はいったいどうしたんだ? あんな形相でカードぺらぺらして……」
「海さん……朋さんは、たぶん、タロット占いやってます……」
「――た、太陽の正位置……よし、やった! これだよこれ、こうじゃないと!」
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「なぁ、蘭子。あいつ、もしかして良い札が出るまでカード引きまくってたのか?」
「カードの結果を読み解くのではなく、願望にカードの結果を従えようとしてるんですね……」
「それ、占いって言っていいのか?」
「あははっ! 蘭子ちゃんばっかりじゃないぞ! あたしだってプロデューサーと――」
あたしが、蘭子ちゃんと海ちゃんに見られてて、しかも軽く引かれてたのに気づいたのは、
太陽の正位置――意味は、成功、祝福、約束された将来――を引いて、思わず叫んだ瞬間だった。
「よ、良かったですね朋さん。プロデューサーと、うまくいきそうなんですよね?」
「朋の執念で、ついにカードが折れたのか」
あたしは、頬が熱くて火傷するかと思った。
きっと、蘭子ちゃんより顔が赤くなっちゃってただろうな……。
(おしまい)
※文中にタロットカードがでてきますが、
>>1はタロットカードに触った経験がないので、
占いの解釈はグーグル先生に教えてもらいました。
読んでくれた人どうもありがとうございます。
HTML依頼いってきます。
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