女「いぇい」女友「いぇい!」(10)
女「……」
女友「ヒマだねえ」
女「……うん」
女友「どうしようねえ」
女「ねえ、うちに来る前に何か食べた?」
女友「ん? たこ焼き食べたよ」
女「そうなんだ。おいしかった?」
女友「すごくね!」
女「歯に青海苔ついてるよ」
女友「あわ、マジか!」
女「……」
女友「どこら辺? 鏡貸して」
女「いいけど……」
女友「もう、もっと早く言いなよ!」
女「ごめんね。言ってもいいのかわからなくて」
女友「なんで?」
女「失礼じゃない?」
女友「私は気にしないけどなあ」
女「ふうん……」
女友「あっ、しかも前歯についてる!」
女「恥ずかしいね」
女友「まあ、女にしか見られてないからセーフだよ」
女「あ、そうなんだ」
女友「なにさ、意外そうに」
女「私だからセーフなの?」
女友「だって親友だもんね!」
女「ふうん……」
女友「でもかっこ悪いから、青海苔はとるよ」
女「爪楊枝持ってくるね」
女友「なんで?」
女「ティッシュでいいの?」
女友「なにが?」
女「え?」
女友「指でとればいいじゃん!」
女「指でいいの? そっか、そうだよね」
女友「もう、変なこと気にする子だなあ」
女「ちがうの。女友が気にするんじゃないかと思って」
女友「私は気にしないよ?」
女「ふうん……」
女友「あら、なにか言いたげだねえ」
女「すごく言いたいな」
女友「何とでも言え!」
女「ずっとずっと言いたかったんだけどね」
女友「うん」
女「女友って、何を気にするの?」
女友「えっ、それはもう色々と」
女「自分の身だしなみは?」
女友「うん、気にしてるね! 女の子だし」
女「おかしいよ」
女友「なんで!?」
女「さっき青海苔ついてたもん」
女友「いや、あの、不注意というか……」
女「私笑いそうになったんだよ。どうしてくれるの?」
女友「笑ってくれてよかったのに……」
女「失礼でしょ!」
女友「で、でも私は気にしないし……」
女「じゃあなんなの。女友は何を気にするの。衛生?」
女友「それは気にしてるね!」
女「おかしいよ」
女友「どうして!?」
女「さっき指で青海苔とってたもん」
女友「いや、だからあ……」
女「もう私、女友がわからないの」
女友「べ、別にいいじゃん……」
女「よくないよ、私たち恋人なのに」
女友「恋人ってなんの話!?」
女「ふうん、そこは気になるんだね」
女友「いや、だって……」
女「歯についた青海苔を指でこすりとるような人が?」
女友「……」
女「他人の言い間違いだけはいちいち気になるんだ?」
女友「気になるっていうか、こう、ツッコミみたいな、ね?」
女「ね? じゃないよ!」
女友「怒んないでよお……」
女「私だって怒りたくない。……こんなこと、言いたくない」
女友「そうなんだ。じゃあもういいよね!」
女「……もっと気にしてよ」
女友「気分によるよ、気分に」
女「女友は私のなにを知ってるの?」
女友「いろんなこと知ってるよ!」
女「でも、知らないこともあるよ」
女友「まあね」
女「気になるよね?」
女友「別に」
女「なんで!」
女友「だ、だって気にしても仕方ないから!」
女「もう言い訳は聞きたくない……」
女友「じゃあ、逆に女は何が気になるのさ」
女「全部だよ、全部」
女友「全部って、どの全部?」
女「わからないこと、全部」
女友「それは疲れそうだねえ」
女「女友は私のことどう思ってるの。女友は私と一緒にいて楽しいのかな。女友はなんで私に構ってくれるんだろう。女友は、女友は、女友は」
女友「私のことばっかり!」
女「そこは気にしないで」
女友「えっ」
女「まだまだあるの。明日の天気、今日の晩御飯、うどんの起源、ソニータイマー、女友の下着」
女友「うわあ、いっぱいあるね」
女「気になることばっかり。頭の中パンクしちゃいそう」
女友「だろうねえ」
女「なのに女友は、なんでそんなに平気そうな顔してるの」
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