【艦これ】響「十二月党員」第二部 (41)

このスレは、


響「十二月党員」
響「十二月党員」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417007847/)



の続きとなっております





また今晩に掛けて投下したいと思います

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417178440

あらすじ



ソビエトに賠償艦として引き渡された特Ⅲ型駆逐艦の響。
駆逐艦として数年間ロシア太平洋艦隊の哨戒任務についた後、試験艦としてシベリア奥地の赤軍の極秘研究所に移送された。
しかしそこでは、海軍後進国のソビエトが艦娘を陸上型の汎用兵器として実用化することを目指して昼夜を問わず、凄惨な人体実験がドイツ人の狂医者の元で行われていた。
彼の「双子手術」によって一度は艦娘としての力を失った響だったが、ソビエトのスパイが極秘に手に入れた細胞によって、無理矢理復元させられた赤城以下一二航戦の肉体を直接摂取することで力を取り戻し、研究所からの脱出に成功する。
しかし、外は冬のシベリア。寒さと疲労に耐えられる筈も無く、響は途中で倒れてしまう。
そんな時、響は一人の初老の猟師に命を助けられる。彼は最初こそただの行きずりの猟師として響に接していたが、彼の言動に違和感を感じた響の詰問に対して、彼は自分はシベリアの反共テロ組織、「十二月党員」のメンバーであることを告白する。
日本への帰還を勧められた響だったが、自分の居場所の無い日本に帰るよりも、壊滅寸前の「十二月党員」の為に戦うことを決意する。



ドラゴンボール並みのクッソ長いあらすじで申し訳ありません

響の装備品


四四式騎兵銃(バヨネッタ銃剣付き)
6.5mm実包弾5×20
毛皮のコート
毛皮の帽子
毛皮の靴
毛皮の手袋

最後の蜂起はシベリアに大寒波が襲来した、ちょうどその時季を狙って行われていた。この寒さに乗じれば、絶望的に足りない戦力や貧弱な装備を地の利でカバーすることも出来るとкомандирは言っていたが、あちらも今回ばかりは見逃してくれる筈も無く、中央から最新鋭の自動小銃を装備した精鋭が派遣されていた。彼らが手に持っていた抜群の信頼性をと動作性を誇るその銃は、容赦無く私達の命を奪って行く。




「なあ響、わしはここまでにすることにしたよ」



後ろに立っていたのはあの猟師だった。
私の、命の恩人。



猟師「穴掘りも博士もみんな死んだ。командирは裏切った。わしは気付くべきだったんじゃ。あやつが既に革命など起こす気は無かったことにな。わしは馬鹿じゃ。大馬鹿じゃ」



彼はそう言って唇を噛み締めた。流す涙は端から凍っていく。



響「貴方は悪くない。私だって気がつけなかった。私にも責任はある。ここまでにするなんて言わないで。私だって最後まで戦う。もう大切な人をこれ以上失いたくはないんだ…」





私だって戦っていたんだ。ずっと、ずっと。どんな形であれ、戦いの中に死に場所を見つけたっていいじゃないか。私だって戦っていたんだ。
最後くらいせめて…





猟師「君たちは同じ失敗を何度も繰り返している。何だと思う?」




響「・・・」






猟師「自分を大切にしないことじゃよ。人の為ならどんなに理不尽なことがあっても自分の命を投げ出してしまうんじゃ。自分が可愛くたっていいじゃないか。自分が大切でもいいじゃないか。君は自分を大切にするべきじゃ」




響「甘えだよ。私は自分なんて気にしていない。あなたの力になりたい。私はそう言ったはず。一緒にいこう」




猟師「そうか…君は…いや、すまない、」







猟師はいきなり私の鳩尾に思い切り手に持った銃を打ち付けた。



猟師「君は甘えてなんかいないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーさらばじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目の前が暗くなった。







私はあまりの寒さにすぐに目を開けた。いや、すぐに開けたつもりだった。







最初に目に飛び込んで来たのは、ソ連兵が銃剣で猟師とおぼしき老人の死体を銃剣で滅多刺しにしている光景だった。
既に息は絶えているだろう。しかし彼らは老人の体に容赦無く冷たい銃剣を突き刺していた。




ソ連兵A「ヒィハハ!!いいざまだ!この糞ジジイ!散々同志を苦しめてくれやがって!死ね!死ね!死ねぇ!」




ソ連兵B「しかし恐ろしいなこのジジイ。ボルトアクションの小銃であの射撃速度と精度とは恐れ入った。おまけに3発しかない銃弾を3発とも命中させるとは…」




ソ連兵C「俺にゃ難しいことは分かんねーよ!隊長が来るまでにこの死体を余ったウォトカで燃しちまおうぜ!ギャハハ!」



気持ち悪い。吐き気がする。少なくとも彼らはまともではないことは確かだ。
彼らは三人。私の銃弾も3発。






殺す。











そこには醜く目を見開いた無様で滑稽な三人のソ連兵の死体が転がっていた。





僕は弁護士だ。名前は唐澤貴広と言う。
早稲田大在学中に学徒出陣、負傷して本土に帰還した折に終戦を迎えた。
いかんせん戦場での要領が悪かった為に、部隊では無能だのうんこ製造機だのケツ毛が濃いだの散々悪口を言われたが、気にはしていない。
今では弁護士となり、弱者を守るべく出来たばかりの法律に基づいた容赦無い開示請求を日々大企業やGHQに対して行っている。
ところで最近、戦後特需景気に沸き、だんだんと戦前の軍国主義の色が薄まって行く中で時代に取り残された一つの気になる人々、いや、兵器と言うべきか、なんとも言い難い存在に僕は関心を寄せ、接触を試みている。
その名は艦娘。
かつては沢山の国民から人気を集め、今では軍国主義の象徴として排斥されている、身勝手な社会の犠牲者である。
人間は体制によっていくらでも主義主張を変える。しかし僕は負けない。
早速もう少しで活動を停止し、慌ただしく引き上げ作業を行うGHQに対し容赦ない開示請求をして、艦娘たる存在の概要をつかむことに成功した。

彼ら、いや彼女達は旧海軍にとっては相当な存在だった様だ。
僕は艦娘と言えば、せいぜい戦艦長門くらいしか知らなかったが、旧海軍は彼女達の育成に相当な予算と持てる技術の全てをつぎ込んでいたらしい。
特に極秘最終決戦兵器として開発された大和型においては、媒体となる少女達だけでも実験段階において300人以上の犠牲があったらしい。
おまけに国家予算の殆どを艦娘の維持費と建造費に費やす荒唐無稽な大艦隊計画すら大正の頃には存在したとも書かれている。
そして現在、報告書によれば彼女達は今の法と倫理に反する酷い迫害を受けているとされている。概要は僕も少しは知っているが、その苛烈さは、想像を絶するものだった。

要点をまとめるとこうだ。



一、日本海軍の超有名艦娘、戦艦長門は軽巡酒匂と共に、終戦直後、広島と長崎を焼き払った原子爆弾爆破実験の実験時の投下標的艦として爆心地付近に配置され、放射線の被害からは何故か逃れたものの、二隻とも重大な熱傷を負った。現在では北海道の網走にある隔離所の病棟で療養中。



二、終戦時に日本に残された艦娘や空爆によって港に着底した艦娘の大半は艤装を解体され、着の身着のままで海軍から放逐された。中には復員船の護衛をするものもあったが、今では殆どの艦娘が先述の隔離所に強制的に収容されている。



三、艤装の損傷によりシンガポール港に残された重巡艦娘二隻は、イギリス軍に引き渡され、艤装は海没処分とされたた後に日本に帰還し、やはり先述の隔離所に収容されている。




四、武装解除された後、賠償艦として駆逐艦二隻がそれぞれ中華民国とソビエト連合に引き渡されている。その後の足取りは不明。





五、これら全員の艦娘はすべて、復員した旧日本軍もしくは連合国軍兵士たちなどの手によって強姦などの性的暴力を受けた可能性がある。

大体の概要は掴めた。彼女達も国の為に必死で戦った筈なのに、いまでは多くの青年誌などで明らかに性的な目線から選別されたであろう艦娘のスナップ写真が掲載され、女性からは金の為に平気で股を開く赤線の売春婦と同じだなどと噂されている。
なるほど人の噂ではあるが、あながち間違ってはいなかったのかと少し驚いた。
もちろん売春婦達の立場を馬鹿にしているわけでは無いが、必要以上に人々から貶められる艦娘達に僕は同情した。







唐澤「とりあえず、彼女達を訪ねて見ることにしよう。長谷川君、汽車の時間を確かめてくれたまえ」



長谷川「はい!わかりました!うわっ先生こんなど田舎の山奥に何しに行くんですか?ここにはせいぜいあの性奴隷艦娘の隔離所くらいしか無いですよ」




唐澤「口を慎むんだ長谷川君。彼女達は性奴隷などでは無い。勿論僕は君が言うその艦娘の隔離所に用があるのだ。さあ、早くしたまえ」





長谷川「は、はい!わかりました!すぐに!」





僕は旅行鞄を倉庫から出すんだったな、と考えながらも安い煙草に火をつけた。

唐澤「本当に山奥にあるんだな…」



僕はは汽車を降りると、周りをすべて葉を落とした木々に埋め尽くされた山々に囲まれた景色に圧倒された。
乗って来た汽車は、長野の過酷で険しい山の傾斜と厳しい寒さで凍った線路に阻まれ、何度も空回りと急停止を繰り返した。亀の歩みのようにのろのろと進む汽車は僕を苛々させるのには十分過ぎた。
しかしこの山の冷たく引き締まった空気は、そんな僕の小さな苛々を簡単にふきとばしてしまった。




馬車ジジイ「やあにいちゃん!こんな寂れた場所に何の用だい!?政府の人かい!?」




気のいい爺さんだ。




唐澤「いや、当職は唯の弁護士です」





馬車ジジイ「なんでえ↑弁護士先生がなんでえこんな田舎に↓少なくともわしの周りにはあんたに仕事を頼んむような金持ちはいないがねぇ!まあとりあえずのってきたいところがあればいいな!わしがこの馬車にのっけてってやる!」





これは有難い。爺さんのお言葉に甘えて楽させてもらおう。



グチョッ











馬車ジジイ「あ!いいわすれてたがこの車はな!いつもは肥やしの馬糞や鳥グソを運ぶのにつかってんだ!まだのこってるかもしれんがきをつけな!」






唐澤「(´・_・`)」






それを先に言えよ。

馬車にゆられてガタゴトと。
僕は暫しこの気のいい爺さんと雑談を楽しむことにした。



唐澤「ところでおじいさん、どうして僕が政府の人間だなんて思ったんですか?」





軽い質問だった。しかしこの質問で、僕は艦娘がこの日本において抱える闇と言うものをしばし見たような気がした。

馬車ジジイ「そりゃおめぇ、わしでもわかるようないい服を着た政府の人がしょっちゅうここに来るからだよ。戦争が終わってからはしばらくして急にそいつらがこの駅で降りるようになったんだよ。ここ7年はずっとだな!」










うん、やはり関係者がこの隔離所を定期的に訪れているのだ。
私は確信した。






馬車ジジイ「んで山奥に変な建物ができてな!わしや村のやつらはそこに米や野菜や鳥を売りに行くんじゃ!なんせふつうにうるのとじゃあわけがちがう。わしの粗末な野菜でさえばかみたいに高い値段で買い取ってくれるんじゃ。菓子売り薬屋なんかもみんな来てな!色々売って行くぞ!」


食料や生活必需品の確保も上手くシステム化されている。



唐澤「成る程、あなたもよく馬車に人をのせるのですか?」






馬車ジジイ「そりゃもう!たくさん乗せたわ!中には気前のいいアメ公さんもいてな!ちっぷとか言ってわしに金をくれたわい!」






どうやらGHQの関係者もここを訪れているようだ。ここで間違いない。
僕は馬車に染み付いたフンの臭いを我慢しながら先に進むことにした。

唐澤弁護士編はここまでです。
投下が遅れて申し訳ありませんm(__)m
しょっちゅうエラーが出るんです(・_・;

行数制限は80行だぞ

すいません
まだありました。







馬車ジジイ「しかしあいつら変な話をしていたなあ。なんでもヒニンヤクってやつをアメリカから持ってきたとかなんとか。
あれはなんだろうな、アメリカの菓子かい?」




僕は驚いた。
いまこの爺さんはっきり「避妊薬」と発音した。
おそらく隔離所で行われているであろうことを想像する勇気は僕にはまだなかった。

>>19
はい、それを踏まえて投稿してるんですが投稿しようとすると変な文字化けエラーがたまに出るんです。

書き溜め無いですが投下します

一つの言葉がある。「後悔先に立たず」


私はこの言葉を身を持って知ることとなる。
命の恩人を失い、挙句の果てにようやくできた友達すら目の前で嬲りものになりながら殺されて行く様子を見れば、私が今までに気づいていたあの裏切り者の不自然な行動を猟師に伝えて警戒を促すことだってできた筈だ。
私は最後の最後まで私達を自分の栄達の道具としてしか考えないような最悪の男を信じてしまったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


また鉄道に乗った。


猟師「さあ、ここだよ」


彼は私が今までに過ごした彼の小屋に少し調度品を足したようなみすぼらしいホテルの一部屋に私を通した。


???「ようこそはじめまして。我が組織に力を貸していただけた事に感謝します」


その男は普通のテロ組織にはとても相応しくないような身なりをしていた。金の刺繍彩られた赤い上品そうな服を着ていて、それがこのホテルのみすぼらしい部屋に恐ろしい程ミスマッチだったので、少し滑稽に見えた。


猟師「紹介しよう、この方はかつてのロシア貴族の子孫であり、ロシア白軍の生き残りであるイリヤノビッチ氏だ」


イリ「やめてくれよ。私が生まれていた頃にはとっくに家は没落、家族はバラバラになっていたんだ。私はかつての栄光なぞ全く気にしていないのだからな」


響「それにしてはかなりいい服を着ているみたいだけど」


イリ「おいおい、勘違いしないでくれたまえ。私はこれでもお尋ね者だぞ。それともあれか?私みたいなテロリストはいかにもそれらしい服装をしているとでも思ったのか?だったらそれは間違いだ。少なくともこの服装でいれば私は外見で官憲に捕まらないことはなくとも疑われることは無い」


彼は早口でそう言った。


イリ「さて、我々の組織はいまほぼ壊滅状態にある。そこのじいさんが久々にここに戻ってきてくれたことは喜ばしいことだが、この状態では我々は蜂起はおろかまともな活動が出来ない。暗く寒い地下にいる我々の仲間は精神的にも身体的にも限界が来ている。このままじゃあ君の国がやった馬鹿げたカミカゼアタックのような理性の無い無計画なおぞましい攻撃をして無駄な犠牲を増やす羽目になる。それは嫌だろう?」


嫌味ったらしく彼は末期に私の海軍が行った特別作戦のことを話題に出して、自分たちのテロ行動の正当化をしたようにも聞こえた。


響「それは早く対策を練らないといけない。シベリアの冬は厳しいからね」


イリ「そうなんだよわかってくれるかね?どうやらあなたは粗暴で独善的な日本人とはまたちが…失礼」


響「私達を貶したいのなら私はあなたには協力は出来ない。他を当たってくれ」


猟師「そうだ。お前は少し偏った見方をし過ぎだ。もっと広い視野を持てと言った筈だ」


少なくとも私の彼に対する第一印象は最悪だった。彼は自分の言動を諌めた猟師に対して口を挟むなとばかりに長い睫毛の毛先を向けて、無言の抗議をしていた。
一方、猟師はまた何時ものあれだよとばかりに溜息をついていた。

イリヤノビッチ氏と半ば喧嘩別れのようになってしまった私達は、ホテルの部屋を出て、寂れた町の冬空の元を歩いていた。


猟師「許してくれまいか、彼は曲がりなりにも元貴族であるからな、必然的に反日になってしまうのだよ。何しろ君の国は一回ロシアに勝っているのだからな」


響「別に私は大丈夫。それよりも私達はどこへ向かっているの?」


猟師「地下だ。奴がさっき話していた隠れ家だよ」


そう言うと彼はまたしばらく歩き、しばらくして豚のシルエットが印象的な看板を掲げた、町外れの飲み屋の二重扉に手をかけた。

今日はここまでで勘弁してください
明日以降もコツコツいきます

???「やあじいさん!よく来たな!」


中に入った途端にウォトカのツンとしたアルコール臭が鼻に突き刺さった。
馴れ馴れしく酒瓶を手に近寄る男は顔を赤くし、明らかに酔っ払っていた。
しかも手は小刻みに震え、目は濁っている。
精悍なカイゼル髭とスッと通った鼻筋は整ってはいたものの、彼は既に酒毒に犯されていると誰もが分かるような風貌をしていた。


???「悪い悪いじいさん、しかし久しぶりだな、ああん?」


なんとも頼りない足取りで近づく男は不安が的中したかのように近くの使い込まれた重厚なテーブルに躓き、上に置いてあった酒の入った汚いコップとギトギトした肉汁の滴る獣肉をひっくり返した。
床は埃や灰が堆積していて、落ちた肉に容赦無く纏わり付いた。
余程のことがない限り食べる気は起き無いだろう。
しかし猟師はその埃と油に塗れた肉を拾い上げるとパクリと一口で食べてしまった。


響「…」


猟師「そんな目で見るな。肉が勿体無いだろう」


???「じいさんは相変わらずだな…うおい!酒もってこい酒!」

一旦響編を切ってまた唐澤弁護士編に行きます








しかし妙だ。
僕は長野県の山中にいるのだが、どうにも話がおかしい。
そもそも隔離所は北海道の網走にあった筈なのにどうして僕は長野県なんかに来ているのか。
おかしい。おかしい。














???「まーだ気づかないのかい、この間抜け弁護士め」













頭に鈍痛が走る。
鈍器で殴られたのだろうか、額に温かいものが伝って行くのが分かる。
しかし瞬時に急所を外した為、気絶はしなかった。
当職を舐めないで頂きたい。
しかし険しい山道で急に襲われたのだから驚いた。
馬車がひっくり返ったために当然僕も荷台から投げ出された。
受け身は取れたのだが、身に纏うスーツは泥だらけだ。







???「よろしくニキーwwwww」

????「よろしくニキーwwwww」

?????「よろしくニキーwwwww」






ひっくり返った荷台の上に金属製のバットを持ったなんとも形容し難い醜い容貌をした猿が跨って奇声を発していた。









???「にいちゃんやきうやろうやーwwwwww」

????「やきうせんのかー!?wwwwwww」

?????「あかん草生えるわwwwwwwwwファーwwwww」





まだ頭の中で状況が整理出来ていなかった。
僕は北海道に行きたかった筈だ。なのにどうしてこんな山奥に来てしまったのだろうか、どうしてだ?どうしてだ?

???「お、ハッセゥーwwwwwwwwww」

????「クソ漏らしのハッセが来たでぇーwwwwwwwww」

?????「マシソンじゃねーかwwwwwwwww」




???「猿が…五月蝿いな」







そう言って馬車の影から現れた男は僕の元で働いていた大学生の長谷川君だった。
ちょうど今は僕の事務所の鍵閉めと留守番中の掃除をお願いしていた筈だ。






長谷川「俺ものバカみたいな学生に騙されるっつかなんつーかバカなの??
バカみてーwwwwいやバカでしょ!?
バカだなーwwwww
いや俺は悪くないからね」






煽るような、しかし頭の悪い人間が発する言葉に僕は直ぐには反応しない。
しかし猿の喚き声ではなく、普通の人間の声を聞いて僕はようやく冷静になることが出来た。

長谷川「いや俺は悪くないから、
俺は政府の人?にっつかあれアメリカ人か?になんか大金渡されたんだわ、
んで頼み事があるってんできいてやったんだわ、んで変なタバコ?をセンセーのタバコといれかえろとかいわれてさ、んで…?????「御託並べてないでさっさと掘らせるんやチンフェ!!
オラ!」





いきなり一匹の猿がぐちゃぐちゃと不明瞭な声で話す長谷川君に襲いかかった。




長谷川「我慢すらできねーのかよこのクソ猿マジうざいな」




長谷川君は懐から十四年式を取り出すとすぐ様弾を込め、猿に向かって発砲した。
猿は絶命した。






???「ヒェーwwwwwww」

????「ヒェーwwwwwwww」




猿達は奇声をあげるのをやめた。




長谷川「んで、入れ替えてからはよくわからん人達がドカドカ事務所に入っできてさ、なんかセンセー連れてっちゃったのよね、でそのアメリカ人さ、俺に仕事紹介してくれてさ、クソ寂れた山奥だけど稼ぎはすごくてさ、東京には帰らせてくれるしおまけに職場の中にいる囚人は掘り放題だぜ!」



彼の話を聞いているとどうやら私は自分のタバコによってずっと眠っていたようであった。
と言うと汽車の旅も馬車ジジイとの会話も夢だったのか?
任意の夢を見させる技術と言うものがあるのか?




長谷川「んで、俺死んだようにねてたセンセーを馬車で運んでたんだけどさ、急に護衛の猿が発情しやがってさ、俺は悪く無いだろ猿がわるいだろ?」




ともかく僕は逃げることにした。



長谷川「逃がすわけねーだろ俺の仕事盗る気かよ生かしてもってこいとかいわれてたけど殺すよマジで俺の知ったことじゃないし」



彼は再び発砲して来たが反動のせいか弾は明後日の方向に飛んでいく。




長谷川「ちょマジでやめろやめろ」



間合いを一瞬で詰めた僕はすかさず長谷川君の首を掴み、ぐるりと回転させた。
枯れ木の折れるような音がすると、彼はぐったりとした。






???「おいチンフェどーすんねんwwwwww」

????「知るかボケwwwwww」



猿は最初こそ戸惑っていたが、死んだ長谷川君の十四年式の口を向けるとすぐに逃げて行った。
命からがら僕は再び元来た道を帰ったが、駅は見つからなかった。
事務所にいて煙草を取り出した時と同じ服装である。勿論金なんて持っていない。あったとしても、こんな山奥では役にも立たないが。


道無き道を進むと、谷を切り拓いて作られたと思われる、巨大な集落を見つけた。

灯りが木造の家屋から漏れていたので、僕は安堵した。
少なくともこんな山奥で野垂れ死ぬことは無くなった。
そう思ったのが間違いだった。


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