ドラえもん「三次元ポケット~!」(33)
~ 空き地 ~
スネ夫「どうだい、このジャケット? かっこいいだろ?」
しずか「わぁ~、ステキねぇ」
のび太「すごぉ~い!」
ジャイアン「おいスネ夫、これどこで買ったんだよ!」
スネ夫「パパの友だちに海外のブランド物を扱ってる会社の社長がいてね」
スネ夫「今度発売する新作ジャケットを特別にもらったのさ」
スネ夫「しかも、ちゃんとボクの寸法に合わせてもらってね」
スネ夫「特にこのポケットがさ……いかすだろ?」
スネ夫「よかったら、ちょっとさわってもいいよ」
ジャイアン「シャレてるよなぁ~」
しずか「さすがスネ夫さんねぇ~」
のび太「ボ、ボクも……」スッ…
スネ夫「のび太はよごすからダメ!」
のび太「ううう……」
スネ夫「そうだ! 実はウチにこのジャケットのメーカーのカタログがあるから」
スネ夫「よかったら一緒に見ない?」
スネ夫「気に入ったのがあったら、パパに頼めば取り寄せられるかもしれないしさ」
ジャイアン「ホントかよ!」
しずか「ぜひ見てみたいわ!」
スネ夫「でさ、そのカタログは三冊しかないから悪いけど──」チラッ
のび太「分かってるよ! ふーんだ!」スタスタ…
スネ夫「理解が早くて助かるよ、のび太。ハハハハハ……」
~ のび太の家 ~
のび太「ドラえもぉ~~~~~ん!」
ドラえもん「どうしたんだい?」
のび太「アウ、オウ、エウ」
ドラえもん「スネ夫の奴がかっこいいポケットのあるジャケットを自慢してきたと」
のび太「エウ、アウ、オウ」
ドラえもん「で、いつものように仲間外れにされたと」
のび太「オウ、エウ、アウ」
ドラえもん「だからボクもかっこいいポケットが欲しいと」
のび太「……よく分かるね」
ドラえもん「長い付き合いだからね」
ドラえもん「かっこいいポケットか……」
ドラえもん「じゃあ、こんなのはどうだい?」ゴソゴソ…
ドラえもん「三次元ポケット~!」
のび太「三次元ポケット?」
のび太「ドラえもんのお腹についてる四次元ポケットにそっくりだけど、どうちがうの?」
ドラえもん「ボクの四次元ポケットは四次元空間につながってるけど」
ドラえもん「このポケットは特につながってはいないんだ」
のび太「そうなの!? へぇ~、すごいなぁ!」
ドラえもん「だから、このポケットにはあまり大きなものは入らないんだ」
ドラえもん「たとえばのび太君の机なんか絶対入らない。はみ出しちゃう」
のび太「すごいすごい!」
ドラえもん「だけど……」ガラッ
ドラえもん「引き出しにかくしてある0点の答案くらいは入れられるよ」ガサッ…
のび太「あっ、ちゃんと入った! すごいなぁ~」
ドラえもん「でしょ?」
ドラえもん「それにこんなこともできるよ」
のび太「なになに?」
ドラえもん「三次元ポケットにビスケットを入れてから」
ドラえもん「叩く」パキッ
ドラえもん「すると、ビスケットが割れるんだ!」ボロッ…
のび太「わぁ~、四次元ポケットじゃそんなことできないよ!」
のび太「すごいや!」
ドラえもん「だろう?」
ドラえもん「あと、この三次元ポケットを頭にかぶると」スポッ
ドラえもん「防災ずきん代わりになる」
のび太「ハハハ、よく似合ってるよドラえもん」
のび太「これなら災害があっても安心だね!」
ドラえもん「じゃあボクの頭を一発殴ってごらん」
のび太「え、いいの?」
ドラえもん「いいよ」
のび太「えいっ!」
ポカッ!
ドラえもん「あいたたたた……」
のび太「痛いんだ」
ドラえもん「布が薄いからね」
のび太「そうなんだ! さっすが三次元ポケットだね!」
ドラえもん「うふふふ……」
ドラえもん「さらにこのポケットには──」
のび太「このポケットには?」
ドラえもん「四次元ポケットとちがって、スペアがないんだ!」
のび太「そうなんだ! ってことはなくしたらもうオシマイってことだね?」
ドラえもん「そのとおり!」
のび太「わぁ~、四次元ポケットより貴重だなんてすごいなぁ!」
ドラえもん「のび太君にしては、いいところに気づいたじゃないか」
のび太「にしては、は余計だよ」
のび太「こんなにすごいポケットなら、絶対スネ夫に勝てる!」
のび太「じゃあ、この三次元ポケット借りるね!」
ドラえもん「はい」
のび太「よぉ~し、さっそく三次元ポケットでスネ夫たちを見返してやる!」スタタッ
ドラえもん(やれやれ……ムチャしなきゃいいけど)
~ スネ夫の家 ~
スネ夫「なんだって? ボクのポケットよりかっこいいポケット?」
スネ夫「面白い! だったらしずちゃんとジャイアンの前で見せてみろ!」
スネ夫「ただし、かっこよくなかったら、どうなるか分かってるよな?」
のび太「いいよ! 君のいうことをなんだって聞いてやる!」
スネ夫「いったな……よし入れよ」
ジャイアン「よぉし見せてみろよ! すごいポケットってやつを!」
しずか「ドラちゃんの四次元ポケットよりもすごいの?」
のび太「もちろんさ! その名も──」
のび太「三次元ポケット!」
スネ夫「さ……」
スネ夫&ジャイアン&しずか「三次元ポケット!?」
のび太「この三次元ポケットはね、なんと四次元空間につながってないんだ!」
しずか「四次元とつながってないですって!?」
ジャイアン「ホ、ホントかよのび太!」
のび太「だから、あまり大きいものを入れることはできないんだ」
のび太「たとえば四次元ポケットならボクが丸ごと入れるけど」
のび太「この三次元ポケットにはせいぜい片足くらいしか入らない」
のび太「ただし、小さいものなら入れることができるんだ」
スネ夫「なんだってぇ……?」
のび太「たとえばここにあるクッキーぐらいなら入る」
ジャイアン「うおおっ!」
のび太「そして、外からポケットを叩くと──」パキッ
のび太「クッキーが割れるんだよ!」
しずか「まぁ、すごい!」
スネ夫「う、ぐぐぐ……こ、こんな……!」
のび太「しかも、かぶれば防災ずきんにもなる」スポッ
のび太「ジャイアン、ちょっとこの上から殴ってみて」
ジャイアン「いいのかよ?」
のび太「いいよいいよ。ガツーンとやっちゃって」
ジャイアン「ならいくぜ!」
ゴツンッ!
のび太「あいたたたたたた……!」
しずか「痛いのね!」
のび太「なんたって布が薄いからね!」
スネ夫「く、くそぉ……!」
のび太「しかも、この三次元ポケット……四次元ポケットとちがってスペアがないのさ!」
しずか「えぇ~!?」
ジャイアン「おいおいおい、マジかよ!?」
スネ夫「つ、つまり……世界に一つしかないってことか……!」
のび太「そのとおり! なくしたらこれっきりなんだ!」
ジャイアン「すげえええ!」
しずか「これが……三次元ポケット……! ステキ!」
スネ夫「ぐ、ぐぐぐ……! の、のび太がこんなポケットを持ってくるなんて……!」
スネ夫「ボクの……負けだ……」ガクッ
~ のび太の家 ~
のび太「──ってわけ! あの時のスネ夫の悔しそうな顔ったらなかったよ!」
ドラえもん「それはよかった」
ドラえもん「これに懲りて、スネ夫も自慢話を控えめにしてくれるといいけどね」
のび太「ホントだね!」
玉子「あらのび太、ドラちゃんとおそろいのポケットをつけてるの?」
のび太「うん!」
玉子「へぇ、ちょっと見せてみて」
のび太「四次元ポケットじゃなくて三次元ポケットっていうんだ」
玉子「すごいわねぇ」
玉子「……ん? 中になにか入ってるわね。何かしら……?」ゴソゴソ…
のび太「…………?」
玉子「こ、この答案は……0点じゃない!」ワナワナ…
ドラえもん「あっ!」
のび太「ゲ!?」
玉子「のび太ぁっ!!!」
玉子「ガミガミガミガミガミ……!」
玉子「クドクドクドクドクド……!」
玉子「ガミガミガミガミガミ……!」
玉子「クドクドクドクドクド……!」
のび太「うへぇ~……助けてぇ、ドラえもぉ~ん」
ドラえもん「ママのお説教をしまえるポケットは……さすがにないなぁ」
~ おわり ~
二次元も四次元もよいですが三次元もよいものです
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