安斎都「うむむむむ……」
古澤頼子「……」
都「ぬぬぬ……」
頼子「……」
都「のののの……」
頼子「あの……?」
都「はい!なんでしょうか!」
頼子「いや……わざわざ私の前に座って悩み始めるとか……都さんの方が何か用事があると思ったのですが」
安斎都
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古澤頼子
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頼子「あの、何をそんなに難しい顔をしているのでしょうか?」
都「頼子さん……探偵が悩んでいるとしたら、それは一つしかないでしょう?」
頼子「はあ、学校の成績に問題が出ましたか?」
都「違います!そんなことはどうだっていいのです!いえ、確かに重要な事ではありますが!」
頼子「それでは……アイドル活動で何か?」
都「それも違います。私のアイドル道は順風満帆そのものです!」
頼子「……」
都「いえ……順風満帆とは大きく出過ぎましたが、それでも問題はないのは確かです」
頼子「では……」
都「事件ですよ!事件の謎に挑んでいるのです!」
都「探偵あるところに事件あり!そうでしょう、頼子さん!」
頼子「私に同意を求められても困りますが……そうなのですか?」
都「そうなのですかって……あっ、まさか頼子さん、私を探偵と認識していないとか、そういうのじゃないでしょうね!?」
頼子「いえ、そういうわけでは……」
都「いや、いいんです。今まで探偵らしいところを発揮出来ていませんでしたから。私にも非があります」
頼子「………」
都「ですが、これからは違います。もっともっと活躍して名をを上げてみせましょう!」
頼子「……それで、今挑んでいる謎というのは、一体何なのですか?」
都「よくぞ聞いてくれました。この謎は事務所の秩序を根幹から揺るがしかねない大事件なのです!」
都「その名も“お菓子消失事件”!」
頼子「……なんとなくどういう事件か想像できますね」
都「それがですね……単純な事件のはずなんですが、どうにも簡単には解けない謎がありまして……
この事件を解決するために、少し協力していただけませんか?」
頼子「……まぁ、話を聞くだけなら……」
都「流石頼子さん!頼子さんの頭脳の助けを借りることが出来るのは心強いですね」
都「早速順を追って事件の流れを説明しましょう」
都「事件は3日前の金曜日の午後、事務所の中で起こりました。
午後5時過ぎに三村かな子さんが事務所に来ました。
近々行われるライブのためにプロデューサーや他のメンバーとの打ち合わせをするためだったそうですが、
あいにく全員事務所にはおらず、ちひろさんがいつも通りかな子さんを迎えてくれたそうです。
事務所で待っている間に、その前日に差し入れ用として買っておいた菓子のことを思い出し、冷蔵庫を開けました」
都「さあ……その辺はどう思っていたんですかね?何か予兆めいたものを感じ取ったのかもしれません」
頼子「つまり、それは……」
都「かな子さんが冷蔵庫を開けると、保管してあったはずのお菓子がなくなっていることにすぐに気が付いたそうです。
お菓子は某有名洋菓子店のロゴが描かれた箱の中に入れてあったのですが、その箱ごと消えてしまったというのです。
かな子さんは意気消沈、その日のレッスンにも身が入らずトレーナーさんに怒られっぱなしでテンションゲージが下がりに下がるという負の連鎖が起こってしまった――」
頼子「お菓子が箱ごとなくなっていたというのがまた……誰かがイタズラで隠したということは?」
都「うーん……その線は考えていませんでした。
なにせ女性であれば誰もが一度は食べてみたいと思う洋菓子店の限定スイーツだったそうですから……
イタズラに命をかけているような人じゃないとそんな真似はするはずがないのですが……」
??「ヘッ クチ」
http://i.imgur.com/XOGKSvD.jpg
都「ですが、今回私が調べた中に容疑者と思われる人の中にはそれらしき人物はいません」
頼子「ちなみに、その容疑者というのは?」
都「ふっふっふ……。聞いて驚かないで下さいよ頼子さん。私の探偵としての調査力は伊達ではないのです!」
頼子「…………」
都「私の調べた結果、容疑者は6人。
桃井あずきさん、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さん、喜多見柚さんの4人のアイドルとプロデューサーさん、ちひろさんの2人の合計6人です。
彼らは事件が起こった時間の1時間前から事務所に出入りしていて、お菓子を手にする可能性が非常に高く……」
頼子「ええと、ちょっと待って下さい。何故その6人が容疑者になるんでしょうか。
そもそも容疑者を事件の1時間前から事務所に出入りしていた人間に限定する理由は?
買ってから丸一日が経っているのなら彼女以外の人がお菓子を手にする時間はたくさんあったわけですよね……」
都「午後3時頃、小学生アイドルたちが事務所に来て、その時かな子さんのお菓子を見つけたそうです。
冷蔵庫から出したのですが、箱の外に『ミムラカナコ』という名前が書かれていたこと、
ちひろさんに人の物を食べてはいけない、と諭されたことでお菓子に手を付けることなくそのまま戻されたようです」
都「ちひろさんによると『冷蔵庫に戻そうと箱を持った時に確かに何かが入っている重みがあった』とのことです。
ちひろさんの言葉を信じる限り、お菓子はその時点で箱の中にあったと思われます」
頼子「なるほど……」
都「ですが、調べれば調べるほどに6人の証言などから見えてくるのは全員お菓子に近づく時間がなかった、という事実です。アリバイがあるのです」
都「これを認めると犯人は魔法を使ったとしか思えず……私が悩んでいたのも、最初に事務所の秩序を揺るがしかねない、と言ったのもそれです」
頼子「ああ……大げさに言ったわけじゃないんですね、それ」
都「ちなみに、これがこの事件についてわかったことをまとめたメモです。
最初の1枚目は容疑者6人の事件が発覚までの行動をまとめたものです
15:50:Pさんが事務所に戻る
15:59:桃井あずきさん、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さん、喜多見柚さんの4人が事務所にやってくる
16:00頃:ちひろさんがPさん宛の電話を取る
16:00頃:4人が編み物を始める
16:03:Pさんが事務所から出る
16:15頃:ちひろさんが事務所のエアコンの修理のために部屋を出る
16:33:桃井あずきさん、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さんが事務所を出る
16:37:穂乃香さんが事務所に戻る
16:40:穂乃香さんが事務所から出る
16:45頃:ちひろさんが持ち場に戻る
16:48:Pさんが事務所に戻る
16:53:Pさんが事務所から出る
17:03:かな子さんが事務所にやって来る
17:09:菓子の消失を知る
上のレスにミスが有りました。正しくはこちらです
15:50:Pさんが事務所に戻る
15:59:桃井あずきさん、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さん、喜多見柚さんの4人が事務所にやってくる
16:00頃:ちひろさんがPさん宛の電話を取る
16:00頃:4人が編み物を始める
16:03:Pさんが事務所から出る
16:15頃:ちひろさんが事務所のエアコンの修理のために部屋を出る
16:33:桃井あずきさん、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さん、喜多見柚さんが事務所を出る
16:37:穂乃香さんが事務所に戻る
16:40:穂乃香さんが事務所から出る
16:45頃:ちひろさんが持ち場に戻る
16:48:Pさんが事務所に戻る
16:53:Pさんが事務所から出る
17:03:かな子さんが事務所にやって来る
17:09:菓子の消失を知る
頼子「ずいぶんと正確な時間までメモされていますね」
都「監視カメラからの情報です。この事務所が入っているビルの入口に監視カメラが設置してあって、そこの画像をプロデューサーさんに無理を言ってもらって来てもらいました」
頼子「え、そんなこと出来るんですか?」
都「入り口に警備会社の人がいますよね?そこで監視カメラの確認が出来るそうなのですが、そこで頼んでもらったらしいです。記録の確認をするためには監視カメラを止めなければならないので、特別なことがない限りそういうことをしてはならないそうなのですが」
頼子「へぇ……よく許可してくれましたね」
都「プロデューサーさんの働きが無ければ情報収集にもっと手間取ったことでしょう。
探偵のために色々としてくれるその姿は推理小説の中の助手のようでしたね!」
頼子「……しかし、これだけの情報では6人のアリバイというものがはっきりしませんが……」
都「その通りです。監視カメラはビルの入口にしかありませんでしたから、事務所の中でどのような行動をしていたのかまではわかりません。
そこでその時間帯に事務所の中で何をしていたのか、6人に話を聞いてみました」
都『3日前の金曜日の午後、確かあずきさんは4人で事務所に来ていましたよね?』
あずき『そうだよー。学校が終わった後穂乃香ちゃんたちと事務所で編み物してたんだ』
都『編み物ですか……それはどういうものを?』
あずき『ふっふっふ……それは秘密なんだなー。作ったものをクリスマスパーティでみんなに配るから、それまでのお楽しみ』
都『なんと』
あずき『名づけて、プレゼント大作戦!』
都『それは楽しみですね。ところで、その時冷蔵庫に近づいた人がいませんでしたか?』
あずき『どうだったかなー。短い時間だったから集中してやってたし……。
あんまり覚えてないや。柚ちゃんが何度か飲み物を取りに席を外したくらいかな?』
都『なるほど……ありがとうございます』
都『柚さんは金曜日の午後、事務所にいましたよね?
フリルドスクエアのみんなでクリスマスのための準備をしていたとか……』
柚「あれー?誰から聞いたの?」
都『いえ、先ほどあずきさんからお話を聞きまして……。
現在訳あって金曜日の午後に誰が何をしていたのか、探偵活動中なのです』
柚『へー。確かにアタシは金曜日、学校が終わった後事務所に寄ったはずだよ」
都『その時のことなんですが……誰か変わった動きはしていませんでしたか?
何かを隠すような素振りを見せていたとか……』
柚『さあ?結構周り見てたけど、そういう変なことしてたのは居なかったと思うけどね。
みんな編み物に集中してたし』
都『そうですか……』
柚「あー、でも一度だけ忍チャンが編み物止めてたなあ。
なんか部屋の外に行くのは見た、かも」
都『……それで、忍さんにお聞きしたいのですが、その時に部屋の外に行ったのは、何かあったのですか?』
忍『あの時は……確か実家から電話がかかって来たっけ。
みんな集中してたからその場で電話するのも悪いと思って部屋の外に出たんだ』
都『へぇ。どんなお話を?』
忍『大したことじゃないよ……実家から離れて暮らしてると、親も心配になるみたいでさ。
体調の事とか、その程度のことだよ』
都『忍さんは実家が青森でしたね……どれくらいの時間お話をされていたんですか?』
忍『そんなに長い時間話してなかったはずだけど……。すぐにみんなでレッスンしに行く時間になったし』
都『そういえば、編み物の時間はずいぶん短い間だったんですね。
30分ぐらいではあまり作業が進まなかったのでは?』
忍『あずきの提案だったんだよね、それ。短い間の方が集中する訓練になる、とか言って』
都『ふーむ。なるほど……』
都『……穂乃香さんは、あの日一度事務所を出て行ってから、一旦戻ってきていますよね?
これがどうしてなのかをお聞きしたいと思いまして』
穂乃香『あれは、事務所に忘れ物をしたことに気付いて……大事なお守り代わりのものだったので』
都『ああ、分かりました。あの緑色のぬいぐるみですね?事務所に忘れたというのは』
穂乃香『ええ。ぴにゃこら太です。事務所を出る時にばたばたしてしまったので、ついうっかり置き忘れたようで……』
都『……と、なると、事務所を出る間際は誰が何をしていたのか分からない状態にあった、ということでよろしいですね?』
穂乃香『え、ええ。そうだと思います』
都『ちひろさんには何度もお聞きして申し訳ないのですが……。
かな子さんのお菓子が消えた件について、あの日のこと、何か思い出したことはありますか?』
ちひろ『うーん。前に話した通りよ。エアコンの修理業者さんが来て、15分頃から30分くらい事務室から離れてたから、部屋の中のことは全くわからないわ』
都『そうでしたね……。もう冬が来るのに冷房しか使えないエアコンなんて無用の長物ですからね』
ちひろ『結局あの日は修理しませんでしたけど。ビル全体のエアコンの修理が必要だからまた後日ってことになって……。
だから、冷蔵庫の前で何かしていた人を見つけるなんてことは出来ませんね』
都『でしたら、それ以前や、戻ってきてからどうでしたか?事務所にいる間、誰か不審な動きをしている人は……』
ちひろ『特別気になる人はいませんでしたけどね。
強いて言うなら、柚ちゃんが冷蔵庫まで飲み物を取りに行っていた、くらいかな……』
都『……最後にプロデューサーさんに聞いておきますが……まあ、無駄だとわかっています。
わかっていますが、一応聞かないといけないのが探偵の性っていうものでして……』
モバP『何をブツブツ言っているんだ?』
都『いえ、こちらの話で……それで、プロデューサーさんは、金曜日の午後16時から17時までの間、どこにいましたか?』
モバP『ライブの打ち合わせのために、会場に出向いていて事務所にはいなかった。
正確には、17時前に一度戻ってきたが、それも資料を取りに戻っただけだ。
またすぐに出て行ったのも確認しているだろ?』
都『ええ、そうでしたね。監視カメラにもそのようなプロデューサーさんの姿が写っています。……あの日はずいぶんと忙しいかったようですね』
モバP『ライブも近いからな。その日は事務所に寄ったのがその時間くらいで、後はずっと外を走り回ってたよ』
都「……以上が6人の証言で、誰の口からも直接犯人に繋がるような手がかりは得られませんでした」
頼子「ただ、あずきさんやちひろさんの証言から柚さんが怪しい行動をしていること証言していますが……」
都「ええ、そうですね。
その他にも強引にこじつければ、柚さんが忍さんを、忍さんがあずきさんを怪しいと仄めかすような証言をしてくれているのですが……。
果たしてどこまで、というか誰を信じればいいのやら……」
あずき・ちひろ→柚が出歩いていた
柚→忍が電話のために席を外した
忍→あずきが事務所に行こうと言い出した
頼子「その3人だけではなく、ちひろさんと穂乃香さんのアリバイも不確かですね。
ちひろさんは監視カメラに写っていませんから、時間も自己申告で良く、誤魔化せる余地があります」
都「穂乃香さんを疑うとしたら……あのぴにゃこら太を取りに戻った時でしょうか?
あの時間帯は、ちひろさんが修理業者さんといた時間なので穂乃香さんが何をやっていたのか知る人はいない……」
頼子「唯一アリバイが確かなのはプロデューサーさんだけですね。監視カメラの映像にも、他の人の目撃情報もありますから……」
穂乃香・ちひろ→目撃者不十分
プロデューサー→アリバイ十分
都「正直誰かが虚偽の証言をしている、としか考えられないのですが、それが誰なのか皆目検討もつかず……」
頼子「あるいは全員が嘘を付いている、とか……」
都「ははあ、容疑者全員が犯人という『そして誰もいなくなった』ですね?」
頼子「いえ、それを言うなら『オリエント急行の殺人』ですが……まぁ、ある意味間違ってないのですが」
頼子「こんな時は動機を考えてみましょうか、都さん。
推理小説でもおなじみでしょう?『どうして犯人はこんなことをしたのか』を推理することが犯人を捕まえる第一歩でしょうし」
都「そんなこと単純じゃないですか。『お菓子が美味しそうだったから』犯行に及んだんでしょう。
動機のへったくれもありませんよ」
頼子「………………。
……そういえば、まだ聞いていなかったのですが、なくなってしまったかな子さんのお菓子って、どういうものだったんですか?
ケーキとか、そういう類ですか?」
秋限定のモンブラン味やさつまいも味、それにチョコと抹茶味がそれぞれ1つずつ入っていた、と聞きました」
頼子「ちょうど4つ……各種1つずつで4つ……」
都「それが、全部なくなっていたのですから……。
それを考えると、あの4人に疑いの目を向けたくなるのですが……」
頼子「正直、あずきさんや忍さん、穂乃香さんが人の物を食べてしまうということは考えられません」
都「……柚さんは?」
頼子「……多分ないと思います」
頼子「いえ、柚さんにしても1人でお菓子を4つも食べるということはないでしょうから……。
常識的に考えて、あの4人の中に犯人がいるというのであれば、共犯者がいるか、もしくは4人全員が関わっているかのどちらかです」
都「そう考えるとどうも手詰まりなんですよね……。
あの4人のアリバイを崩せる決定的な何かがあればいいんですが……あまり決めつけるような調査はしたくないですし……」
頼子「……何か他に手がかりはないのですか?事務所の中にいた人の動向をより詳しく知っていそうな人とか……」
都「そういう人がいれば苦労しませんようー。監視カメラがある以上事務所に出入りしたのはあの6人だけっていうのはわかりきったことなんですから……」
頼子「何か他に……調査の中で気付いたこととかありませんか?まだ調査をまとめたメモがあるようですが……」
都「うーん……あ、そういえば監視カメラの映像をプロデューサーさんから見せてもらった時に、アドバイスのようなものをもらいました」
モバP『まずはこの写真を見てくれ。この写真をどう思う?』
都「単なる女性の後ろ姿ですが……なるほど、これは盗撮されたものですね?』
モバP『違うに決まってるだろ。ちゃんと許可を取ってから撮ってるわ』
都『そうですか……うーん、これといって何か事件性があるような感じはしませんが……』
モバP『そうそう簡単に事件が起きてもらっても困るんだがな』
都『わかりました!プロデューサーさんは殺人事件の犯人を見つけ、それを後ろから追け、逃げられる寸前に後ろから盗撮した……ですね?』
モバP『人の話を聞いてくれよ』
モバP『ちなみにこれがさっきの女の人を前から撮った写真だ』
都『あっ、時子……様だ!』
モバP『何故そこで詰まる』
都『なんか……カメラの方をすごい怖い顔で睨んでますよ?』
モバP『急な撮影だったからな……予定が狂ってご機嫌ナナメなんだろう』
都『こ、この2枚の写真って本当に時子様なんですか?確かに髪の色とか同じ感じですけど……』
モバP『1枚目の写真をよく見てみろ、肩から下げたカバンから鞭の柄っぽいのが見えてるだろ?』
都『ほ、本当だ……』
都『うわー……後ろから見た写真だとどこかのOLっぽく見えるけど、前から見るとばっちり時子様だってわかるなあ……。
撮る方向を変えただけでこんなに印象が違って見えるのは驚きです』
モバP『お、良い発見だな、都。流石は名探偵、鋭いじゃないか』
都『え?えへへ……それほどでも』
モバP『カメラのような機械は人間の主観が混ざることなくありのままの姿を写しとる事ができる』
都『だからこそ事件の資料としてあげられた場合、信用できる証拠になるわけですよね。写真は嘘をつきません』
モバP『だが実際にはどうだ?この写真みたいに同じものを別の方向から写した場合、違うものが2つあるように見える。
機械はありのままの真実を写しているかもしれないが、撮る人・見る人によって本当の真実は見えてこないこともある』
都『はぁ……』
モバP『で、なんでお前がかな子のお菓子の事件の推理を始める前にこの写真を見せたかっていうとだな……』
―――
都「その続きを聞く前にプロデューサーさんは行ってしまいました。頼子さんが来るちょっと前のことです」
頼子「え?どうしてですか?」
都「どうしてでしょう?思い出したように『やらなきゃならないことがある』って言い出して行っちゃったんです」
頼子「はぁ……まだライブに向けて色々あるんでしょうか」
都「それで、このアドバイスはどのように取ればいいのでしょう?」
頼子「うーん……物事を一面だけで判断してはいけない、という単純なことだけではなさそうですね」
都「“第一に全てを疑ってかかる”。探偵の基本原則ですよ!改めて言われるまでもありません」
頼子「それとも……もっと具体的な何かを示そうとして……?
プロデューサーさんは何を考えてあのアドバイスを……?」
プルル
都「あ、かな子さんから電話が……しばしお待ちを……」
都『はい、もしもし?』
都『ええ!?そんな……いいんですか、それで!?
……ええ、まぁかな子さんがそれでいいなら……はい、はい。
わかりました……』ポチッ
頼子「かな子さんはなんと?」
都「その……今かな子さんから電話がかかって来て、お菓子の件はもう大丈夫だから、と……」
頼子「え、それはつまり……?」
都「かな子さん宛に、お菓子を食べた犯人から謝罪の電話が来たそうです。
誰からの謝罪だったか聞いても教えてくれませんでしたが……」
頼子「そんな……せっかく都さんがここまで頑張っていたのに……」
都「……いえ、いいんです。犯人が見つかった以上、探偵の出番はそれでおしまいです。お役目御免です」
頼子「……それで、これからどうするのですか?」
都「むむむ……事件の謎を解けなかったのは探偵として非常に情けないのですが……。
依頼者がいいと言う以上何も出来ませんし……帰って、寝ます!」
頼子「そ、そうですか……。その、もしよろしければ、そのメモを貸していただけませんか?
ちょっと自分なりに推理をしてみたいのですが……」
都「ああ、ええ。いいですよ。しかし……
これらのメモだけで手詰まりだったのに、まだ何か考えることがあるんですか?」
頼子「ええ……。なんとなくですが、何か掴めかけている、そんな感じがするのです」
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