死霊術士「でもオレ娘なんていないんスけど」
神「というか彼女もいなけりゃ両親からも勘当同然じゃろ」
死霊術士「そりゃまあ・・・世を忍ぶ死霊術士ですから、フフッ」
神「何かっこつけてんの? おまえ今いくつ? 社会的にはクズ同然じゃよ?」
死霊術士「フンゥ! フンゥ! メンタルポイントに大ダメージ!」
神「そんなド底辺の死霊術士くんに起死回生の設定を与えてやろうと思ってな」
死霊術士「設定ってアンタね・・・」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416831145
んほぉ前書き忘れてた
・オリジナルです
・60レスほどで書き溜め終了しております
・前半ギャグ後半シリアスの打ち切り展開なので嫌いな方はスルー願います
では再開します
死霊術士「フン、まあオレぁ神聖なお神様のお恵みなんて受けねえからな」
神「おや、そんなこといっとる場合かの? おまえの未来なんて二通りしかないぞ」
死霊術士「ほう、どんな未来か言ってみるがいい」
神「まず一つは、官憲に捕まって拷問の末八つ裂きにされて悲惨な死を迎える未来」
死霊術士「・・・。も・・・もう一つは死霊術士として最強の闇の魔導神に・・・」
神「もう一つは作り出したゾンビに首根っこ噛まれて残念な死を迎える未来じゃ」
死霊術士「なんでどっちも死ぬんだよ!! この神ひどい!」
神「人はいずれ死ぬ。それは避けられぬ運命じゃ」
死霊術士「くっ・・・いきなりそれらしいことを言って・・・」
神「じゃからどうせ死ぬなら、こんな結末はどうじゃ」
勇者『追い詰めたぞ死霊術士! 愚かな妄念はもう捨てろ! そうすれば・・・』
死霊術士『愚かだと!? 私のこの想いは誰にも否定させんっ!』
魔法使い『失われた命はどんな魔法も取り戻すことはできない! あなたも知っているはずよ!』
死霊術士『私は魔法など捨てた! 私に必要なのは・・・闇の力だっ!』
勇者『くっ! これは・・・』
魔法使い『いけない! この力は・・・術士自身も蝕む負の力・・・!!』
勇者『やめろ・・・! こんなことをしてあなたの娘さんが喜ぶのか!』
死霊術士『喜んでくれなくともいい・・・私はあの子が生き返るのなら・・・なんだって・・・』
魔法使い『・・・。だめ・・・あの人の身体は、もう・・・』
勇者『・・・』
死霊術士『ああ・・・見える・・・。・・・そうか、気付かなかった・・・私があの子のもとへ行けば・・・。・・・』
魔法使い『可哀想な人・・・その力を正しい道に役立てていたなら・・・』
死霊術士『・・・。・・・・・・』
勇者『せめて祈ろう・・・。彼が同じ場所に・・・天国に逝けたことを・・・』
神「ポチッ(ビデオ停止)」
死霊術士「・・・」
神「どうじゃ?」
死霊術士「・・・いい・・・。いいねえ、あーいうのもカッくいいなあ!!」
神「じゃろ?」
死霊術士「うんうん! オレ、こっちの道でもいいや!」
神「さすが、中坊の頃の暗黒精神のままに死霊術士なんて道を選んだアホは言うことが違うのう」
死霊術士「フゥォ! フゥォ! メンタルポイントに大ダメージ!」
神「わかってるならそのフニャフニャした信念しかないメンタルを改善したらどうじゃ」
死霊術士「うっせーよ! だいたいアンタはオレにこっちの道を行かせたいんだろ」
神「確かにそれはそうじゃ。では本当にいいのじゃな? 最終的には倒されるんじゃぞ」
死霊術士「フッ。人はいずれ死ぬ・・・ならば己の信念に従って死にたいものだ」
神「言葉というのはその内容ではなくて言う人間が大事なんじゃぞ」
死霊術士「あーん!! 神がひどいことしか言わないー!!」
神「ではさっそくじゃが、娘を作ってこい」
死霊術士「は?」
神「娘を生き返らせるんじゃから、まず娘がいてそれから死んでくれなければ話にならん」
死霊術士「そりゃまあそうだけど、それって設定だけの話じゃないの?」
神「神と読者にとってはそれでいいが、当の登場人物にとってはガチの経験でなけりゃいかんじゃろ」
死霊術士「し、しかしそれはつまり・・・ガチで子作りしなけりゃいけないわけ?」
神「当然じゃ」
死霊術士「というかそれって、少なくとも一年弱はかかるよね」
神「生まれてすぐに死なせるのもなんじゃし、五、六年は待ちたいのう」
死霊術士「・・・。その間、オレは子育てするわけ?」
神「そりゃそうじゃ。だいたいちゃんと愛情を持って育てねば話に説得力がない」
死霊術士「・・・なんだか思ったより遠大な話に・・・」
神「申し訳ないがすでに後戻りはできんぞ」
死霊術士「うう・・・しょうがない、しかし子供か・・・」
シスター「は? 孤児?」
死霊術士「はい、できれば五、六歳くらいの女の子で」
シスター「・・・」
死霊術士「・・・何か?」
シスター「えっと・・・あなた、死霊術士ですよね」
死霊術士「そりゃ名前欄もそうなってるでしょ」
シスター「・・・。あなたのような冒涜者の生贄に、子供たちを差し出すつもりはありません! 帰ってください!!」
死霊術士「えっ!? い、いや、今回はホント、ちゃんと育てますから!」
シスター「だいたい死霊術以前に、まともな定職にもついてない独身男が子育てなんてできますか!」
死霊術士「・・・。・・・」
シスター「それも幼い女の子を指定するなんて! いったい何を考えてるのか・・・ああおぞましい!!」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
神「何か言いたいなら言ったらどうじゃ」
死霊術士「・・・。どうも失礼しました・・・」
死霊術士「うーむ・・・予想はしていたが、なかなか困難だな」
神「あんなゴミを見るような反応されて、よくそんなすましたツラしてられるのう」
死霊術士「うっせー!! どーせオレなんか社会の鼻つまみ者ですよ!」
神「そりゃ否定はできんが」
死霊術士「・・・ぐっすん!」
神「まあ子供をもらうのが無理なら、作るしかあるまいて」
死霊術士「し、しかしそれは・・・相手があることだし・・・」
神「あるの、相手?」
死霊術士「・・・」
神「ねえあるの? ねえねえ?」
死霊術士「あーん!! どうせ彼女いない歴イコール年齢ですよーだ!!!」
神「しかし困ったのう。どうやって相手を探すか」
死霊術士「あのさあ・・・そうやって『オレに彼女を作るのは神にすら難しいこと』アピールやめてくんない?」
神「アピールするまでもなく世界の真理なんじゃけど」
死霊術士「オレ、もう、ハゲそう・・・」
神「アッハッハ、不信心者だけに神、いや髪もなくなりそうか」
死霊術士「これオレの人生よ! 真面目に考えてんのぉ!?」
神「今まで真面目に生きてこなかった奴が悪い」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
神「で、せめて何かアテでもないのか?」
死霊術士「うーむ・・・オレ、女友達もいないし・・・あ、そうだ。あいつに聞いてみるか・・・」
幼馴染「は!? アンタに、彼女・・・?」
死霊術士「いやさ、いろいろあって、作らなきゃいけねーんだよ」
神「・・・」
幼馴染「か、彼女って・・・アンタの遊び相手のために紹介できる子なんて・・・」
死霊術士「いやいや、ちゃんと子供も作って養うから」
幼馴染「こ・・・!! そ、そんな本気の相手なの・・・」
死霊術士「そうそう。幼馴染の縁と思ってさ、おまえならオレよりは女のコに顔がきくだろ」
幼馴染「それは・・・まあ、そうだけど・・・その」
死霊術士「で、いるの、いないの? できれば美人でオッパイ大きい子」
神「・・・。こいつ、ただ者でない。ホームラン級のバカじゃ」
幼馴染「・・・そんな子がいたとしてっ! あんたなんぞに紹介するわけないでしょうがぁっ!!」
死霊術士「い、いってぇ!? ひっぱたくこたないだろぉ!」
死霊術士「くっそ~、やっぱりダメか。だからってぶつこたないよな」
神「おい、アホ。ヘンなところでエロゲーの主人公みたいな特性を発揮するでない」
死霊術士「神だからメタを言うのはいいとして、もっと世界観にあった発言をなあ」
神「じゃかましいわ。おまえの目の前におったそこそこ美人でそれなりにバストのある娘を忘れたか」
死霊術士「は? ああ・・・あいつもまあ、悪くないけどさあ。一生の伴侶だぜ?」
神「童貞『一生の伴侶だぜ?』だぜ』だぜ』 彼女いない歴=年齢『一生の伴侶だぜ?』だぜ』だぜ』(残響音含む)」
死霊術士「ぐほぁ! そういう方向のメタもやめろって!」
神「なんにせよこのままじゃ一生伴侶なしで過ごすことになりかねんぞ。あれで決めろあれで」
死霊術士「え~、でもぉ~」
神「童貞『え~、でもぉ~』でもぉ~』でもぉ~』(残響音含む)」
死霊術士「ほんとそれやめて、傷つく」
神「だったらはよせぇ」
死霊術士「まあオレの方はいいとして、向こうは絶対イエスとは言わないと思うけどなあ~・・・」
死霊術士「というわけで、しょーがないからおまえでいいや。オレの子を産んでくれ」
幼馴染「・・・死ねぇっ、このロクデナシアホ男ーッ!!」
死霊術士「わーっ!! 刃物はいかん刃物はーっ!!」
死霊術士「やっぱりダメだったじゃないか!」
神「ほんといっぺん死んだ方がいいのと違うか」
死霊術士「それが神のセリフか!」
神「あれがかりにも求婚するセリフか。中学生だってもっとマシなこと言うわ」
死霊術士「でもさあ、別に実際、愛してなんかないしぃ~」
神「神罰」
死霊術士「おぎょぁーっ!! い、いきなりなにすんじゃボケ!!」
神「わしが子供を作れと言ったら作れ、妻を愛せと言ったら愛するんじゃよ。それが子羊たちの義務なんじゃよ」
死霊術士「いまさら慈愛に満ちた顔でいっても説得力ねーんだよ!!」
神「とにかく何度でも行ってこんかい。死ぬまで行け」
死霊術士「やっぱ神ってクソだわ・・・」
死霊術士「しょーがねえなあ、もう一度・・・あれ?」
幼馴染「・・・」
死霊術士「なんだ、おまえか。どうしたんだよ、今ちょうど・・・」
幼馴染「・・・さ、さっきのことなんだけど」
死霊術士「は? ああ、オレも実は・・・」
幼馴染「あ・・・そ、その、アンタがどーしてもって言うなら、まあ、オーケーしてあげないわけじゃ・・・ないんだけど」
死霊術士「・・・。オーケー・・・してあげない・・・わけじゃない・・・って結局どっちなんだよ」
幼馴染「大事なのは! 『どーしてもって言うなら』の部分!」
死霊術士「まあ・・・どーしてもというか・・・もうどーしようもないというか・・・」
幼馴染「・・・」
死霊術士「わ、わかったわかった。どーしても、おまえじゃなきゃダメだ。急にそんな気がしてきた」
幼馴染「それなら、その・・・」
死霊術士「ん? あーはいはい、誓いのキスってやつだな。ほれ」
幼馴染「わ、ちょ、あ、・・・!!」
死霊術士「ふう・・・。いやー、意外とチョロいもんだな、恋人作るのって!」
幼馴染「・・・」
死霊術士「このぶんなら、子供なんてすぐだな! なあ?」
幼馴染「・・・」
死霊術士「な・・・なんだよ、怖い顔して」
幼馴染「・・・あんたねえ・・・デリカシーとか雰囲気ってのをどこの世界に置き忘れてきたのよーッ!!!」
死霊術士「ちょ、いかんいかん、その魔法はいかんって! せめてオレが防御できる魔ほ・・・んほーっ!!」
死霊術士「くっそー、黒コゲにはされたがなんとか妻を作ったぜ」
神「やっとじゃな。この調子じゃいつこのSSが終わるのかわからんな」
死霊術士「といっても、あとは子作りして娘を育てて・・・。・・・」
神「なんじゃ」
死霊術士「いや・・・割とガチで長いなって・・・」
神「やめるって言ってくればぁ? あのコにさぁ」
死霊術士「やっぱり神って(略)」
神「あのな、おまえ割と幸せじゃぞ? パイオツカイデー(死)で顔も悪くない幼馴染を妻にできるなんてそうないぞ?」
死霊術士「でもあいつ、剣と魔法の達人だから、ケンカになったらオレが絶対負けるんだよ」
神「ほほぉ、しかしベッドの上のプロレスではどうなのじゃあ? んん?」
死霊術士(・・・こいつホントに神なんかな・・・実は悪魔の方だったりして・・・)
神「神罰」
死霊術士「んぎょぉあーっ!!!」
死霊術士「というわけでさっさと子作りすんぞ!」
妻「・・・もうあんたに雰囲気を期待するのはやめとくわ」
死霊術士「まあまあ。オレも妻になったオンナに悪くはしねぇぜ?」
妻「じゃあ、やったことあるの?」
死霊術士「・・・。まあ、誰だって最初ははじめてだし・・・」
死霊術士「(18禁)・・・」
妻「(18禁)・・・(18禁)」
死霊術士「・・・(18禁)? (18禁)」
妻「(18禁)! ・・・(18禁)・・・」
死霊術士「(18禁)! (18禁)・・・!」
妻「(18禁)! (18禁)! (18禁)!」
死霊術士「(18禁)・・・! ・・・(18禁)・・・」
妻「(18禁)・・・。(18禁)・・・(18禁)」
神「この部分は心の清い人だけが全部読めるらしいぞ!」
妻「・・・その・・・できたみたい」
死霊術士「ホントにやればできるんだ・・・」
神「腐っても妻帯者が小学生並の感想はやめてくれんか」
死霊術士「でもとりあえず、あとは産まれるのを待つだけだな」
妻「ちょっと待ってよ。産まれた後のことはどーすんの」
死霊術士「そりゃ育てるに決まってるだろ」
妻「そこを聞いてるんじゃないの。そのためのお金はどうするつもり?」
死霊術士「え? いやー、そこはファンタジーだし、適当に・・・」
神「わしはそういうのリアルにやるんで」
死霊術士「・・・。そういえばオレの奥さんって、剣も魔法もすげーんだよな」
妻「私、身重なんだけど」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
死霊術士「えーん! 死霊術士の仕事くださいって言っても、誰も話さえ聞いてくれないよー!!」
妻「・・・将来が不安になってくるアホさだわ・・・死霊術の仕事がそこらに転がってるわきゃないでしょ」
死霊術士「でも、肉体労働なんてヤだし」
妻「あんた死霊術士とはいえ魔法使いの端くれでしょ? 基礎魔法が使えるならそっちの方を当たってみなさいよ」
死霊術士「うーん・・・普通の魔法使いってなおさら死霊術士を嫌ってるんだけどなあ・・・」
妻「そのあんたと結婚した私のことを考えなさいよ」
死霊術士「そーいやよく、そんなオレと結婚する気になったな、おまえも」
妻「・・・。それはその・・・まあ・・・」
死霊術士「とにかく、魔法使いの仕事を当たってみるかなあ・・・」
魔法使い「は? 死霊術士?」
死霊術士「いやいやいや! 今は魔法の道を歩む者ですから!」
魔法使い「・・・。今空いてるのは基礎魔法が必要な単純作業だけですが」
死霊術士「それでいいです! ぜひぜひ働かせてください!」
魔法使い「あ、ちなみに通勤手当は出ないです。それとお給料は最低時給で昇給もありませんから」
死霊術士「おほーっ!! ブラックじゃねーか!!」
魔法使い「やめときます?」
死霊術士「い、いや・・・黒の魔法使いってなんか闇っぽくていいじゃないですかぁ」
神「やけくそじゃな」
死霊術士「うるせー、ほっとけっ!!」
死霊術士「クリスタルに魔法をかけて次へ・・・クリスタルに魔法をかけて次へ・・・」
神「楽しそうじゃな」
死霊術士「クリスタルに魔法をかけて次へ・・・クリスタルに魔法をかけて次へ・・・」
神「労働の喜びをかみしめとるな」
死霊術士「クリスタルに魔法をかけて次へ・・・クリスタルに魔法をかけて次へ・・・」
神「・・・。やめときゃよかったって思ってるんじゃろなあ、わかるわ」
死霊術士「わかるならなんとかしろこのクソ神ーっ!!」
魔法使い「はい、手ぇ止めた。罰金ね」
死霊術士「うぐぐぐ・・・これも偉大な死霊術士になるためだ・・・ううう」
死霊術士「はあ・・・仕事についてあっちゅーまに半年・・・身も心もボロ雑巾だ・・・」
妻「家族を支えるって大変よね」
死霊術士「今のところおまえしか支えてないんだけど」
妻「・・・その・・・もうすぐ、産まれるからね」
死霊術士「ああ。元気な女の子だといいなあ」
妻「そうね。でも、男の子かもしれないし」
死霊術士「えっ?」
息子「オギャー!!」
死霊術士「あっ・・・」
妻「見て・・・元気な男の子!」
死霊術士「あ、うん・・・すげーな、がんばったな」
神「よかったな」
死霊術士「・・・。あの、息子でも・・・」
神「世間にはなぜか、父親が失って悲しむのは息子より娘だという風潮があるんじゃ」
死霊術士「アハハ! アハハハ!」
妻「ほーら、パパも喜んでる」
息子「んぎゃあ・・・」
死霊術士「おいっ! 二人目! 二人目いくぞぉ!!」
妻「ま、まだ退院したばかりよ!? ちょっとはいたわりなさいよ!」
息子「ふぎゅ・・・」
死霊術士「う・・・で、でも、オレ、女の子も欲しいなって」
妻「・・・。そういうこと、考えてくれるようになったんだ」
死霊術士「いやまあ、最初っからそうだったんだけど」
妻「ちゃんとこの子も可愛がってよね。私が仕事に行ってるあいだ」
息子「んーま、んーま」
死霊術士「そりゃまあ・・・仕事?」
妻「あんたに仕事をさせてたらいつまで経っても二人目なんて養えないわよ。私が稼いでくるわ」
死霊術士「あ、そう・・・ま、あの人格崩壊しそうな仕事を辞められるのはよかった・・・」
死霊術士「・・・って全然よくなかったーっ!!」
息子「んぎゃあああ!! ぎゃあああああ!!!」
死霊術士「な、なに? 今度はなに? ごはん? うんち? おしっこ!?」
神「単にさびしいだけじゃろ」
死霊術士「それであんな泣くのぉ!? というかパパ、他の家事もあるんですけど!」
息子「んぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」
お隣さん「ちょっと死霊術士さん!? ちゃんと子育てしてるんですか、役所呼びますよ!」
死霊術士「い、いやいやいや、今日はちょっと機嫌が悪くてぇ・・・てへへ」
神「大変じゃなあ、パパになるのって」
死霊術士「こ、これも偉大な死霊術士になるため・・・ひぃぃ」
妻「はいこれ、今月の稼ぎ」
死霊術士「えっ何これは・・・オレの月給の何倍あるんだ」
妻「ケタが違うんだけど」
死霊術士「・・・人間って不平等過ぎる・・・」
息子「あーあー、ぱーぱ」
妻「あら! パパって言ってるわよ、やっぱり先に懐いたわね」
死霊術士「そりゃあねえ! 一日中ガッツリお世話してますからねえ!!」
妻「で、その・・・二人目って、本気なの?」
死霊術士「当たり前だろ!?」
妻「そ、そう・・・それじゃ、その・・・」
死霊術士「□■□□□■■■□?」
妻「□□・・・■■□。□■■□□」
死霊術士「□? ■■・・・□□■□■」
妻「・・・。□■」
死霊術士「■■■□□・・・!」
妻「■■! □■□! ■■・・・」
死霊術士「□! ■□・・・。□■□□□・・・」
妻「■□□■・・・。・・・」
神「この部分は心の清い人にだけモザイクが取れるらしいぞ!」
妻「・・・またできたみたい・・・」
死霊術士「・・・。また十月十日働くのか・・・」
神「育児とどっちが辛いかの?」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
死霊術士「魔法をクリスタルにかけて次へ・・・魔法をクリスタルにかけて次へ・・・」
娘「んぎゃー!」
死霊術士「わああ! 娘! 娘だ! やったぁーっ!」
妻「・・・なんだかあの子のときとはずいぶんな違いねえ」
死霊術士「いやいや! オレもやっと親の自覚がでてきたってかさあ」
娘「んみゅ・・・」
死霊術士「いやー、これでようやく、あと・・・」
妻「あと?」
死霊術士「五、六年、か。・・・」
息子「ふぎゃああああああ!!」
娘「んぎゃああああああああああ!!!!!」
妻「それじゃ私、仕事行ってくるから。泣きやませといてよ」
死霊術士「・・・子作りは計画的に・・・子作りは計画的に・・・ブツブツ・・・」
神「あと五、六年かあ・・・」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
神「~それから七年の歳月が過ぎた~」
死霊術士「え? ああはいはい、今日も遅くなんのね。わかった、晩飯は? はいはい、それじゃ!」
娘「パパ・・・ママ、今日も遅くなるの?」
死霊術士「そうみたいだなあ。ママもいつのまにか騎士団長に出世したからなあ」
娘「そうだね・・・」
死霊術士(こいつらももう七歳だもんなあ・・・オレもそのぶん老けたし・・・)
息子「・・・。父さん、ボク、今日は夕飯いらない」
死霊術士「え? なにか用事でもあるのか?」
息子「塾で補講があるから。どこかで買って食べる」
死霊術士「でもおまえ、補講が必要なほど遅れちゃいないだろ? 何も無理して・・・」
息子「・・・ちゃんと勉強しないと、父さんみたいな人になるもん。それじゃ」
死霊術士「・・・。はあ・・・まあ、そのとおりなんだけどな」
娘「パパ・・・」
死霊術士「おまえもパパみたいに、一日中家にいるようなおっさんになっちゃいけないぞ」
娘「・・・」
死霊術士「ま、おまえは女だから、おっさんにはなれないか。ははは・・・」
娘「・・・。私、パパが家にいるの、いいと思うけどな」
死霊術士「え・・・」
娘「いつ帰ってきても、おかえりって言ってくれて・・・さみしくないもん」
死霊術士「・・・。パパがちゃんとしてれば、ママがそういう役をやれたんだけどな」
娘「うちはそこが逆なだけじゃない。何もおかしくなんかないよ」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
妻「ただいま・・・あら、まだ起きてたの」
死霊術士「さっき二人とも寝かしたところだ」
妻「なんかあったって顔ね」
死霊術士「別に・・・息子に嫌われてる父親ってだけだ」
妻「・・・。あの子もねえ、学校でいろいろ言われてるみたいだから。ま、だいたいあなたのことだけど」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
妻「そのうちあの子にもわかるわよ。子育てや家事がどんなに大変なことかって」
死霊術士「そうかなあ」
妻「あなたでさえわかったことじゃない」
死霊術士「・・・それはそうだ、な。はは・・・」
死霊術士(あれからもう七年か・・・なんだかあっというまだったな・・・)
死霊術士(しばらくあの神も姿を見せないし・・・いったいどうしたんだか・・・)
死霊術士(・・・。娘を失った死霊術士、か・・・)
死霊術士(ホントに・・・死んじまうのかな・・・。・・・)
死霊術士(・・・。・・・・・・)
死霊術士「ほれ、お弁当」
娘「パパ、ありがと! 行ってくるねっ、今日は校外学習なんだ」
死霊術士「ん、行ってらっしゃい。ほら、おまえも」
息子「・・・。ありがとう」
娘「ふふ。今日はお兄ちゃんの大好きな、たまご焼きが入ってるんだから!」
息子「ぼ、ボクは別に・・・行ってきます!」
死霊術士「ハイハイ、気をつけて。・・・ふう、とりあえず一段落か・・・」
テレビ『・・・今日も死霊術使いのしわざと見られる事件が・・・警察の発表によりますと・・・』
死霊術士「・・・。死霊術か・・・オレ、最後に使ったの、いつだっけかなあ・・・」
教師「この遺跡は古代のお墓と言われています。実際にご遺体もありますから、失礼のないようにね」
娘「昔の人はこんな大きいお墓を立ててたんだね、お兄ちゃん」
息子「・・・そのお兄ちゃんっての、やめろよ。一年も歳は違わないのに」
娘「でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃない」
息子「まったく、父さんはともかく、母さんまで何を考えて、こんな続けて子供を作ったんだか・・・」
娘「でも、そのおかげで、学校でもいつもいっしょだし」
息子「おまえはいいかもしれないけどな・・・母さんも言ってたけど、おまえは父さんに似てるよ」
娘「えへへ、そうかなあ」
男「・・・。ちょうどいい、小学校の見学か・・・いい見世物になるな・・・ふふふ」
騎士「団長殿、急ぎのご報告があります」
妻「どうかした? 例の死霊術の件?」
騎士「はい・・・実は、これを・・・」
妻「・・・。この場所は、まさか・・・!!」
騎士「勝手ながら、私の独断ですでに部隊を送りました・・・ただ、間に合わないかもしれません」
妻「・・・。・・・・・・」
死霊術士「はあ・・・昼はラーメンだな、あんまりやる気起きないし」
テレビ『こちらは現場です。緊急生中継でお送りさせていただいております』
死霊術士「ん? なんだ、地震か何かか」
テレビ『現在この古代遺跡で、死霊術使いを名乗る男が違法な魔法を使用して立てこもっており・・・』
死霊術士「・・・。こ、この場所って、まさか・・・!!」
テレビ『見学に来ていた小学生数名が遺跡に取り残されており、現在警察が・・・』
死霊術士「・・・!!」
娘「ふえっ・・・お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
息子「・・・大丈夫。どうやらあいつ、ボクらには気付いてないみたいだ」
娘「・・・でも・・・」
息子「何をするつもりかしらないけど、こんな街中で騒ぎを起こしたんだ。すぐに警察が来るよ」
娘「うん・・・」
息子「おなかすいたろ? お弁当、食べよう」
娘「うん・・・。ありがとう、お兄ちゃん」
息子「・・・ホントにたまご焼きだ。父さんも毎朝よくやるよなあ」
娘「・・・。お兄ちゃん、ホントにパパのこと、嫌いなの?」
息子「・・・。そうじゃないけど・・・ボクが思ってる父親ってやつとは、違う気がするってだけだよ」
娘「じゃあ、ママのことも嫌いなの? ママもけっこう、特別だよね」
息子「それは・・・また別の話で」
娘「私は・・・パパもママも大好きだよ。もちろん、お兄ちゃんも」
息子「・・・。・・・・・・」
男「くく・・・この遺跡に眠る巨人を目覚めさせれば、私の力は天下に轟くだろう」
遺骸「・・・」
男「これは神の啓示なのだ! 預言なのだっ! 私は神に導かれて私のなすべきことをなす!」
遺骸「・・・」
男「現世に舞い戻るがいい、大いなる王よ! そして私のしもべとなれっ!!」
遺骸「・・・。グゴゴゴ・・・」
娘「お・・・お兄ちゃん、何か・・・揺れてるよ!?」
息子「・・・!」
娘「わあっ! こ、怖い・・・怖いよぉ」
息子「大丈夫・・・大丈夫。きっと助けてくれるから・・・」
娘「・・・。・・・・・・」
妻「そこのあなた。状況の報告をお願い」
警官「あっ、これは騎士団長どの・・・どうにも中の様子がわからんことには」
騎士「先行した部隊も入り口で足止めを食っているようです」
妻「・・・。中で何をしているのだか・・・」
警官「あの・・・公務中とは思いますが、実は、逃げ遅れた子供というのが・・・」
妻「わかってる・・・なんとなくそんな気はしたわ。でも今は気にしないで」
騎士「・・・閣下、あれを・・・! 遺跡から・・・!!」
妻「うっ!? まさか・・・あれはこの遺跡に眠る古代の王・・・!」
死霊術士「おいおい、ウソだろ・・・あんなのを蘇らせたら、罰金じゃすまないぞ」
警官「ちょっとあんた! 今は立ち入り禁止だ、あれを見てわからんか!?」
死霊術士「オレも関係者なんだよ! あの中にオレの子供がいるんだ!」
死霊術士(・・・そしておあつらえ向きに、死体がたくさんな・・・!)
娘「お、お兄ちゃん!」
息子「大丈夫・・・だ、大丈夫だよ、きっと・・・」
娘「うう・・・パパ、ママ・・・助けて・・・!」
男「うわははは!! どうだ、見たか、私の力っ!」
巨人「ウゴゴゴォ・・・」
男「私の秘術を冒涜などと言って見下した罰を受けるがいい、愚民どもっ!!」
死霊術士「おい、待ちな!」
男「ンッ!? なんだ貴様・・・警官ではないな」
死霊術士「オレもあんたと同じ死霊術使いさ」
男「ほう。では私の部下になりにきたか」
死霊術士「アホ抜かせ。あんたを倒しに来たんだよ、ここにはオレの子供がいるんでな」
男「なるほど・・・で、どうやって私を・・・この巨人を倒すつもりだ? この王の従者どもでも蘇らせるか?」
死霊術士「そのとおり・・・!」
遺骸「ウガガ・・・」「クカ・・・カ」「オオオ・・・」
男「フン! 本当に死霊術士だとはな・・・しかしそんな雑魚が何体いようとこの巨人にかなうものか」
死霊術士「バカかてめーは。倒すのはそのデカブツじゃない、おまえだ!」
男「え・・・!?」
死霊術士「行け、しもべたち! あの男をボコボコにしろ!!」
遺骸「ウガアア!」「クカカカカ!」「オオオオオ!!」
男「うっ! し、しもべよ、連中を踏み潰せ!」
巨人「ウゴゴォオ!!」
死霊術士「そんなとろい動きで、こいつら全部を潰せるかよ! ご先祖様にゃ悪いが、いくらでも代えはあるんだぜ!」
遺骸「ウガアア・・・!!」
男「ひぃっ!」
娘「・・・パパって、ホントに死霊術士だったんだ・・・」
息子「うん・・・」
娘「・・・でも、なんかかっこいいね」
息子「・・・。うん・・・」
遺骸「ウガウガッ!」「クカカッ!」「オオーッ!」
男「や、やめてくれっ、食わないでくれーっ! ・・・きゅう」
死霊術士「なんだ、甘がみされただけで気絶してやんの。まあミイラ何十体にひっつかれりゃそうなるか」
巨人「・・・ウゴゴ・・・ゴ」
死霊術士「術士が倒れてしもべも倒れる、か・・・オレが言うのもなんだが、まったく、ド素人め」
息子「・・・父さん!」
娘「パパーっ!!」
死霊術士「! おまえら・・・無事だったか」
娘「うんっ! パパ、ありがとう・・・すごくかっこよかったよ!」
息子「・・・」
死霊術士「おまえらが無事なら、オレはいくらでもかっこ悪いマネもするさ」
息子「・・・。父さん・・・ごめん。あんなこと言って」
死霊術士「・・・いいんだ。気にすんなよ」
息子「ボク・・・父さんみたいになりたいって、ちょっとだけど、思ったから」
死霊術士「そうだなあ・・・。どうせなるなら、ちゃんとした魔法使いになれよ、はは」
娘「でも、パパの力のおかげで、助けてもらったんだよ! 私はやっぱり、パパみたいになりたいっ!」
妻「・・・今日はいろいろ、大変だったわね」
死霊術士「まあな。・・・で、オレの手首に手錠はかかるのか?」
妻「古代の遺体への無許可の死霊術は、いうまでもなく違法ね」
死霊術士「・・・」
妻「ただ、人命救助のための緊急措置ということで、なんとか取り計らってはみるわ」
死霊術士「・・・すまん。前科者の子供にはしたくねえからなあ・・・」
妻「そうね。でも、法律的な問題は別として・・・私、ちょっとあなたのこと、見直したわよ」
死霊術士「なんだよ、今さら」
妻「あんなテキトーな結婚したときはどうなるかと思ったけど・・・ちゃんと父親してるじゃない」
死霊術士「まあ、人間、やらなきゃいけない状況になると、意外とやれるもんだ」
妻「うん、あなたにしては上出来よ」
死霊術士「はいはい。それじゃ、子供たちを見てきますかね・・・」
息子「・・・。すぅ・・・」
娘「・・・。んみゅ・・・」
死霊術士「やれやれ。寝顔はよく似てるよなあ、こいつら」
娘「・・・パパぁ・・・んふ、だぁいすき・・・」
死霊術士「・・・。どんな夢見てんだか・・・。・・・」
死霊術士「・・・オレ、よかったなぁ・・・この道選んで・・・。・・・・・・」
死霊術士「・・・。はっ? こ、ここは・・・?」
神「久しぶりじゃの」
死霊術士「あんたは・・・」
神「さて、ようやくすべての条件が揃ったな」
死霊術士「条件って・・・まさか」
神「ウム。愛すべき娘・・・深い愛情を注がれて育った命・・・失われるべき命じゃ」
死霊術士「・・・!!!」
神「彼女を失ったおまえは、その復活に取りつかれ、本当の死霊術士となれるじゃろう・・・」
神「記憶も魂すらも蘇らせようと、神の領域に触れんとする禁忌の鬼にな・・・」
死霊術士「・・・。・・・・・・」
神「案ずることはない。彼女に罪はない・・・与えられるのは痛みも苦しみも無い死じゃ」
死霊術士「ま・・・待ってくれよ」
神「なんじゃ」
死霊術士「確かにオレは言ったよ、そういう死霊術士になりたいって・・・」
神「・・・」
死霊術士「でも・・・なんで今なんだよ。今になって、そんなよ・・・」
神「わしはまさにこのときを待っておったのじゃ。おまえが真に娘を愛するときをな」
死霊術士「・・・!」
神「しかし、当のおまえにもこうなることはわかっていたはずじゃぞ。それこそ今さらのことではないか」
死霊術士「そうだけど・・・でも・・・あんまりじゃないかよ・・・?」
神「・・・」
死霊術士「あ、ああ! これも冗談なんだよな? ネタなんだろ? そうだろ?」
神「・・・。・・・・・・」
死霊術士「・・・。・・・やめてくれ・・・死なさないでくれ。なんでもするから・・・!」
死霊術士「オレの命ならいくらだってくれてやる。だからあの子は・・・」
神「しかし、ならば・・・おまえは何のためにあれほどの苦労をしてきたのじゃ」
死霊術士「苦労はしたよ。でも・・・それ以上にいろいろあったんだよ! いいことが!」
死霊術士「なんだかんだあいつはいい奥さんだったし・・・子供だって・・・」
死霊術士「オレなんかにゃ・・・とても分不相応な家族だよ。苦労のかいはあったよ!」
死霊術士「あいつらには・・・オレのせいで死んでいい人間なんか一人もいないだろうが!」
神「では・・・平凡な人生と死を望むのか? 歴史のページの端にも残らず消えていくことを?」
死霊術士「・・・。・・・平凡な人生か・・・」
死霊術士「オレは平凡な父親になって・・・そのうち娘からもきたねーだの、くせーだのって言われて・・・」
死霊術士「でもそれだって、あの子が生きてなきゃできないことじゃねえかよ・・・!」
死霊術士「オレは死ぬまであの子の父親でいられるなら・・・他の誰にも覚えてもらわなくていい・・・」
死霊術士「あの子に嫌われたっていい! あの子が幸せならそれでいいんだよ!」
死霊術士「オレに・・・いや、あの子に・・・平凡な人生ってやつをよこしてやってくれよ!!」
神「・・・フム。そこまで言うなら、勝手にするがいい」
死霊術士「・・・!!」
神「神の思し召しを捨てるとはいい度胸じゃ。もっとも・・・おまえはもう、十分にできた人間になったようじゃがの・・・」
死霊術士「え・・・あっ、おい・・・!」
死霊術士「はっ! あ・・・あれ」
娘「・・・」
死霊術士「・・・!! お、おい・・・!」
娘「・・・。ふにゅ・・・どうしたのぉ、パパ?」
死霊術士「あ・・・」
娘「パパ、私まだ眠いよぉ。いっしょに二度寝しよーよぉ」
死霊術士「あ・・・ああ・・・」
娘「・・・パパ・・・? なんで泣いてるの・・・?」
死霊術士「ああ・・・ううっ、うう・・・! うああああ・・・!」
妻「・・・本気なの? 今から魔法使いの試験受けるって」
死霊術士「うん・・・今さらだけどな」
妻「あの子の言ってることを気にしてるなら・・・」
死霊術士「別にいいじゃねえか。あいつの求める父親にもなってやりたいんだよ、できる限りな」
妻「どういう風の吹き回しか知らないけど・・・立派なことを言うようになったもんね」
死霊術士「そりゃな。親なら誰でも、子供が健康で育ってくれりゃ、それでいいんだろうけどよ・・・」
死霊術士「オレはやっぱり、喜んでほしくてさ・・・そのためなら、なんだってできる」
死霊術士「やっと気付いたんだよ・・・そんな簡単なことに。オレ、バカだからさ・・・はは」
天使「・・・やれやれ・・・やっと一段落ですね」
天使「いくら全知全能の神様でも、一人の人間にかかずりあうほどヒマじゃないんですよねえ」
天使「そんなときのために、私たち天使がいるわけですけど・・・」
天使「まったく、一人のロクデナシを更生させようと思ったら、こんな時間と手間がかかるだなんて!」
天使「いくら天使の仕事とはいえ、費用対効果ってのを考えなきゃいけませんよねぇ!」
天使「ま、私もこれで、ちょっとはボーナス出るし・・・悪いことばかりじゃないんですけど」
天使「さてさて・・・次はどこのバカを叩き直しに行ってやりますかね! うふふふふ・・・」
父「おーい、もう時間だぞ。ほら、お弁当」
息子「ありがとう、父さん」
娘「ちょっとパパ! また私の洗濯物、いっしょに洗ったでしょ!?」
父「えっ? あー・・・そういえばそんなことも・・・」
息子「別にいいだろ、それくらい。やってもらってるんだからさ」
娘「よくないっ! っとにもう・・・」
父「わ、悪かったよ・・・気をつけるから。ほら、おまえの分」
娘「・・・。行ってきます!」
父「ああ、気をつけて。・・・やれやれ、昔はあんなに懐いてくれてたのになあ」
妻「悪いわね、家にいるのに手伝えなくて」
父「かまわないさ。・・・お母さんには、三人目を大切に守ってもらわないといけないからな」
娘「ホントにパパってば、女の子の気持ちがわかってないんだから・・・」
息子「そりゃ父さんは男なんだから、わかるほうが不思議だろ」
娘「そういう問題じゃなくって!」
息子「・・・。母さんも自分で言ってたけど、おまえ、最近母さんに似てきたよなあ」
娘「・・・どういう意味よ、それ」
息子「やっと覚えた愛情表現がそれなんだってさ」
娘「だ、だからどーいう意味!?」
息子「少なくともうちの父さんは、手のかかる子じゃなくたって、可愛がってかまってくれる人だろ」
娘「・・・」
息子「素直にしてりゃいいものを、ヘンに突っかかるから・・・って、母さんが言ってた」
娘「・・・。・・・・・・」
息子「ま、俺も男だからわからないけど・・・父親が好きな女の子がいたって、いいと思うけどな」
娘「す、すすす・・・! ・・・お兄ちゃんだからって、言っていいことと悪いことがねえっ!!」
息子「そ、そーいう意味の好きじゃないって! 魔法はやめろ魔法・・・わーっ!!」
父「・・・」
妻「・・・」
父「なあ・・・昔な、こんな話を聞いたことがあるんだ」
妻「うん・・・?」
父「ある男がいて・・・そいつは愛娘を失った死霊術士で・・・娘を蘇らせるために自分のすべてを捧げた・・・」
妻「・・・」
父「オレな・・・今ならそいつの気持ちがわかるよ。いや、最近になって、もっと強くわかるようになった」
妻「・・・」
父「脅すわけじゃないけどよ、家族が死んだら・・・オレ、きっと同じようになると思う。だからおまえも無理しないで・・・」
妻「ふ・・・バカね、父親ってのはみんなそう思ってるものよ」
父「・・・」
妻「それにね・・・私たちの方だって、同じことを思ってるわ。ね、立派なお父さん」
父「・・・お父さんか・・・。偉大な死霊術士になるより・・・いいもんだな・・・」
息子「ただいま」
娘「・・・ただいま」
父「・・・」
娘「・・・何よ、私は別に・・・わっ!?」
父「・・・なあ。オレ、おまえを愛してるからな」
娘「ふえっ・・・!? い、いきなりなにを・・・」
父「おまえが死んだりしたら・・・オレはもう生きていけないから」
父「だから、怒ってもいいし、オレを嫌ってもいいから・・・長生きしてくれよ。オレの一生のお願いだ」
娘「・・・あ・・・は、はい・・・。・・・パパ・・・。・・・」
息子「・・・はあ。これが嫌ってる人間にする顔かなあ」
妻「まったく・・・誰に似たんだかねえ」
娘「・・・!!! な・・・ななな、何すんのよっ、このバカ親父っ!! 離しなさいよぉーっ!!」
父「ぐほっ!? ・・・ま、親父って呼んでもらえるなら・・・いいか」
天使「・・・さて、けっきょくこの元ロクデナシの元死霊術士は、めでたく天寿を全うし・・・」
天使「孫にも恵まれ、それなりに幸せな人生を過ごしたそうな・・・経過報告、おわり」
(終)
投下は以上です。
読んでいただきありがとうございました。
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