メイド「死にたいんですか、御主人様」 (26)

男「うーん」

男「はっ、ここは一体」

メイド「気が付きましたか」

男「メイドじゃないか、どうしたんだ一体?」

男「返り血的な物で真っ赤だけど」

男「ケチャップ?」

メイド「正真正銘、モンスターの返り血ですよ」

メイド「舐めてみますか?」

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男「」ペロッ

メイド「ひゃん!」ビクッ

男「うーむ、これはグレムリンの血の味」

男「するとここは」

メイド「ダンジョンの中ですよ……そんな事も忘れたんですか」

メイド「ていうか本当に舐めないでください」

男「合法セクハラのチャンスを逃すなんて男じゃない」

メイド「うるさいよ」

男「で、なんで俺はダンジョンの中で仮眠を取ってたんだっけ?」

メイド「御主人様が気まぐれで探索しようって言い出したんでしょうが」

メイド「あげく一人で突っ込んであっけなく気絶してるし」

メイド「手間を取らせないでください、動揺して返り血を避けそこなったじゃないですか」

男「ああ、だからいつもと違ってそれ浴びてたのか」

メイド「納得したなら、謝罪をどうぞ」

男「ごめんなさい」

メイド「まったく、許します」

メイド「それで、どうしますか?」

メイド「ここのダンジョンの敵は、あらかた片付け終わりましたけど」

男「さっすが」

メイド「宝箱と素材集めて、帰ります?」

男「あーいや待って、だんだん思い出してきた」

メイド「?」

男「俺って趣味で占い師のまねごとやってるじゃん?」

メイド「そうですね、取り寄せたモンスターの骸骨やら変な粉やらの掃除が大変です」

男「昨日の夜から朝まで、新しく手に入った古代本の占い試してみたのよ」

メイド「またそんな体に悪い……」

メイド「ていうか、今朝やたらとテンションが高かったのは徹夜明けだったからですか」

男「で、その結果によると、この辺りにすげーアーティファクトが一つ眠ってるらしいのよ」

メイド「それがこのダンジョンにあると?」

男「そうそう」

メイド「でも、一通り見て回りましたけど特におかしな物はありませんでしたよ?」

男「あぁ、占いによるとアーティファクトは地下に埋まってるらしい」

男「たぶん古代の地下祭壇かなんかが、地形の変化で埋もれたんだと思うんだけど……」

男「とりあえず穴さえ空ければ、地下の空間があるっぽい」

メイド「地下って、どのくらいの深さかはわかってるんですか?」

男「長命樹の根の一番深い所ぐらいだと」

男「掘削装置で三日分くらいかな?」

メイド「あー、それなら」

メイド「まぁ、いけますね」

男「だろう?」

― ダンジョン 地下三階 ―

メイド「ここも割と広いですね」

男「頑丈そうだし……崩落はしないか、たぶん」

メイド「生き埋めになったら、私が掘り出して教会で蘇生してもらいますよ」

男「できればそうならないように頼む」

メイド「じゃ、いきますね」

メイド「えーっと」


メイド「えい」

――ッズゴン

・数時間後・

男「見事に崩落したな」

メイド「貧弱な地盤でしたね」

男「お前瀕死の俺を見捨てて地下祭壇探しに行ったな」

メイド「だって御主人様蘇生させてからだと二度手間でしょう」

男「教会の神父さん『またかよ……』みたいな顔してたぞ」

メイド「そんなに死にたくないなら素直に外で待ってればいいでしょうに」

男「まぁ、冒険心に抗えなかったのが悪いというのは、一理ある」


男「さて、そんなわけで」

男「これが、そのアーティファクトか」

メイド「祭壇って言っても朽ちかけた石の台があるだけでしたけど」

メイド「保存状態は良さそうでしたよ」

男「……見た感じでは……剣、か?」

メイド「黒い鞘に入った黒い柄の剣、に見えますね」

男「持っただけでは、何もなかったのか?」

メイド「至って普通の剣でした」

メイド「あ、いや多少軽かったような?」

男「軽い、ね……素材が鉄じゃないのか?」

男「まぁ簡単に抜いて呪われるのも嫌だし、じっくり調べるか」

メイド「じゃあ、お茶淹れてきますね」

男「おう、頼む」

男「……あれ、そういえば」

カタン

メイド「どうぞ、ブリュエールで春採れたばかりの茶葉ですよ」

男「ああ、ありがとう」

男「……なぁ、服はどうしたんだ?」

メイド「え、そりゃ着替えましたけど」

メイド「モンスターの血と泥でぐちゃぐちゃでしたし」

男「いや、俺の服」

メイド「着替えさせましたけど」

男「………」

男「……お前、自分がやる分には躊躇ないんだな」

メイド「メイドですから、職務に私情は挟みません」

男「……若干恥ずかしい」

メイド「そうですか」

男「……まぁ、いいや」

メイド「そういえば、薬屋のドワーフさんから御主人様に言伝がありますよ」

メイド「なんでも新しい古代書が手に入ったから、鑑定して欲しいとか」

男「ほう」

男「そういや最近薬屋のあの娘にも会ってないな」

メイド「割と屋敷に引きこもってましたからね」

男「んー、じゃ、今から行くか」

メイド「剣はいいんですか?」

男「別の誰かに掘り出される前に手に入れたかっただけだしな」

男「調べるのはいつでもできる」

メイド「なるほど」

テクテク

メイド「いやー、良い天気ですね」

男「快晴快晴、新緑が色付いておるわ」

メイド「誰だアンタ」

男「ん……?あれは」

子供A「あー!領主のにーちゃんだ!」

子供B「ついにひきこもりがなおったんですか!?」

男「よー坊ちゃん嬢ちゃん、元気そうだな」

子供A「先祖だいだい領主の家系だけどぼつらくして
     今じゃ町外れに屋敷があるただの小金持ちであだ名が領主のにーちゃんだ!」

男「誰に説明してるんだお前は」

子供B「よかった……!よかったです……!」ヒッグ 

子供B「メイドさんにきくたびにひきこもりがあっかしてるっていうから」

子供B「てっきり、もうだめかと……!」エッグ

男「何言ったのメイドさん」

メイド「御主人様は夜な夜な部屋の中で謎の儀式を行い、
    食べる物も食べずほとんど寝ずに骸骨と向き合っていると」

男「……間違ってはいない」

子供B「おにーちゃん、だっこー!」

男「はいはい」グイッ

メイド「ロリコン」

男「おい」

子供A「てりゃー!」ボスッ

男「おーおー力強くなったなー」

メイド「ショタコン」

男「どうしろと」

男「ま、俺達は用事があるからそろそろ行くぞ」

子供B「どこにいくんですか?」

男「ちょっと薬屋のじいさまのトコにな」

子供A「あー、にーちゃん薬屋のねーちゃんに会いに行くんだろー!」

男「ちげーよ頼まれ事をしたんだよ」

メイド「でも会いに行きたいとも言ってましたよね?」

子供A「やらしーなにーちゃんは!」

男「ぐぬぬ」

子供A「じゃーなー!領主のにーちゃんにメイドのねーちゃん!」

子供B「さよならー、またねー!」

男「おう、またなー」

メイド「兄妹仲がいいですねぇ」

男「俺とお前のようにな」

メイド「え?えーっと」

メイド「……お兄ちゃん?」

男「!?」

メイド「顔が気持ち悪いことになってますよ御主人様」

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