楓「コホッ、コホッ……」

ちひろ「っていうかコレ、バッチリ感染してますよね？」

P「ええ。楓さん、今日は休暇にしましょう。レッスンもキャンセルしておきますから」

楓「ですけど、今はライブに向けて追い込みを……コホッ！」

P「ほら、言ったそばから咳してる。我々は体が資本ですから、まずは体調を……」


ｶﾞﾁｬｯ


瑞樹「…………」

のあ「おは……っくしゅん！！」

ちひろ「お、おはようございます」

P「のあさん、斬新な挨拶でしたね……」

のあ「……失礼。今日も私の力、見せつけっ、へ、へくしゅんっ！」

P「なんですか、そのかわいいくしゃみは」

のあ「こっ、これはっ……へぷしっ！」

ちひろ「珍しく余裕が無さそうですね、のあさん」

瑞樹「………………」

のあ「……ふ、不覚にも、風邪にかかってしま……へ、へっ、ぷしゅん！」

ちひろ「完全に感染してますねぇ。予想はつきましたけど」

P「のあさんも今日は休みで。ところで、川島さんは大丈夫なんですか？」

瑞樹「…………」

のあ「……彼女、酷い咳が出るからあまり喋りたくないって、へっ……へくしっ！！」

P「え、なんでまた？」

瑞樹「じょっ……女子アナ時代は、咳払いがタブーでッ、カッ、ゲホッ！ゴホッ！」

P「む、昔取った杵柄ってヤツですか。無理して喋らなくていいですから」

ちひろ「この調子だと、他にも感染した子がいるんじゃないですか？

P「おそらくは。発症した場合は出社を控えるよう、みんなに連絡しておきましょう」

１時間後――


ちひろ「他の子たちの様子はどうでした？」

P「留美さんは予想通りとして、茄子や周子も感染したみたいです。そちらは？」

ちひろ「こっちは、文香ちゃんや藍子ちゃんが……」

P「そうですか……くそっ、ウチのアイドルのルックスが仇になったな……」


ｶﾞﾁｬｯ


幸子「おはようございまーす！」

P「…………」

ちひろ「…………」

幸子「あれっ？　他の皆さんは例の風邪とかでお休みですか？」

P「まあな……幸子は元気そうで何よりだよ」

幸子「当然です！　よくわかりませんが、ボクの可愛さには流行りの風邪もタジタジですよ！」

P「……そうだな。お前はそれでいいと思うよ」

ちひろ「まあ、元気なのはいいことですから」

幸子「二人とも、何かひっかかる言い方ですね……」


P（……なんで幸子は感染してないんだろう。結構ルックスいいのになぁ）

P「幸子。実は例の風邪って、美人にしか感染しないウィルスが原因らしいんだ」

幸子「……何言ってるんです？　仕事のし過ぎで頭がヘンになっちゃったとか……」

P「割とマジだ。実際、クールビューティなお姉様たちは軒並み感染してたぞ」

幸子「……あ゛っ！　ん゛ん゛っ！　なんか急に喉の調子が！　ゲホゲホ！」

P「いやお前、今頃演技しても……」

幸子「そういえば今日は熱っぽかったんですよ！　あっ、ちょっと体温測ってみますね！」

ﾋﾟﾋﾟｯ

ちひろ「36.3度。平熱そのものですね」

幸子「……ぼっ、ボクはカワイイですから。美人というより、カワイイですから！」ｸﾞｽｯ

P「泣くな泣くな……って、あれ？　それ案外当たってるんじゃないか？」

幸子「はい……？」

ちひろ「ああ……なるほど。なんだか分かったような気がします」

幸子「……？？」

P「そういえば総選挙一位の愛梨や蘭子、凛も感染してなかった。どうして気付かなかったんだ」

ちひろ「美人というより、むしろカワイイと評される子は感染しないんですね！」

P「そうみたいです。今回は幸子のお手柄だな！」

幸子「は、はぁ……お手柄ですか？　ならもっとボクを褒めてくれてもいいんですよ？」

P「うんうん。幸子は本当にえらいな！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

幸子「あっ…………」

P「幸子はカワイイ。これは間違いない！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

幸子「…………」

ちひろ（あらら。幸子ちゃん、借りてきた猫みたいに大人しくなりましたね……）