男「死にたいな…」女「殺人してみたい…」(140)

男・女「えっ。」

男「今なんて?」

女「そっちこそ。」

男「死にたいなって。」

女「殺人したいなって。」

男・女「……」

男・女「うぇーいっ!」パチンッ

男「いやービックリだよっ!」

男「まさか同じクラスの天才である
  女さんが殺人をしたがってたなんて!」

女「私もびっくりだよ。いつもニコニコ男君が
  自殺しようとしてたなんてー。」

男「じゃあ?」

女「早速?」

男・女「やっちゃいましょー!」

女「とりあえず刺す?」つ包丁

女「刺身包丁だよー。100均だから切れ味悪いけど。」

男「切れ味悪いってことは、痛いのかあ…」

女「やめる?」

男「いーや、試してみようっ!」

女「そうこなくっちゃ!」ブスッ!

男「いだあっ!?」バッ!

女「あれ?そんなに?」

男「結構痛い。というよりいきなり刺されてびっくり。」ズキズキ

女「んー、力加減わかんないな。」ズブブ…

男「いたいいたいいたいいたいいたいいたっいだあ”あ”あ”あ”っ!!」ジタバタ

女「ん?一回抜こうか?」ズプッ

男「はあ…すごく痛かったよ。」ダラー…

女「出血ひどいね。」

男「絆創膏貼っとこう。」ペタペタ

男「刺すのはやだ。死ぬまでの痛みが長いもん。」

女「うーん、じゃあ……首絞め!」

男「あ!いいねそれ!」

女「でしょ?」

女「じゃーロープの片方を柱にくくりつけて…」

男「あ、僕がやるやる。」ギュッギュッ

女「あ、ありがとー。」

女「で、これを男君の首に巻く。」グルッ

男「すでに圧迫感があるよ!」

女「そして私が…綱引きの要領でもう片方を引っ張る!」

男「ぐっ…ぅえ……!」ギュウッ!

女「むぐぐ……」グイイ…

男「…が……あ……」ギチギチギチ…

女「ぐむうう……」グイイイ…

男「……ぁ…………」ギチギチギチ…

女「………」グイイイ…

男「…………」ギチギチギチ…

女「……っはあ…疲れたー。」パッ

男「うえっ。」ドサッ

女「あ、生きてた。」

男「ごほごほっ…苦しいだけで死ねなさそう。」

女「うーん残念。」

男「他にも何かある?」

女「うーん…」

女「ハンマーとか?」つハンマー

男「よさげだね。」

女「じゃあ行くよ。」

男「うん、いいy」ガゴンッ!!

男「っづあ…いだ」バキィッ!!

男「がふっ……」ズガンッ!!

男「」ドサッ

女「どうかな?」バキッ!ドガッ!ゴスッ!

男「」

~30分後~
男「…んん……ぅあ、頭いたい…」

女「あれ?起きた…」

男「うーん…駄目だ。気絶はできるけど死ねないや。」

女「なかなか手強いね。」

女「じゃあ焼く?」

男「?」

女「オイルかけてー、炎でボワーって。」

男「うん!やってみよう!」

女「チンケな油しかないけど、えい。」バシャッ

男「うえ、ベタベタだね。」

女「で、着火。」ボワッ

男「……あ、目の前が真っ赤だ。」メラメラ…

女「熱くないの?」

男「そんな熱くn…あつづづづあ”づい”い”い”っ!!」メラメラ…

女「やっぱ熱いんだ。」

男「うわあ”あ”ぁあ!!あづっ!あづい”い”い”い”!!」メラメラ…

女「どう?逝けそう?」

男「逆に目が冴えてきたああ”あ”あ”ぁあ”!」メラメラ…

女「駄目か。…消そっか?」

男「おねがぃい”い”い”いい”!!!」メラメラ…

バシャッ!!

男「ふぅ……」

女「皮膚がただれてるよ。」

男「冷却スプレーかけて…」シュー…

男「絆創膏貼れば大丈夫だよ。」ペタペタ

女「髪の毛燃えなくてよかったね。」

男「ハゲは辛いよ。」

男「うーん、どうしよう。」

女「なかなかしぶといね。」

男「痛くて挫折しちゃうんだ。」

女「痛くないやつかー。」

男「何かある?」

女「薬物投与?」つ注射

男「おおー。」パチパチ

男「どんなの注射するの?」

女「科学室から、くすねてきたコレ。」つクロロホルム

男「なんかすごそう。」

女「じゃーいくよ。」

男「うわあ…僕注射痛いから嫌いなんだ。あっち向いてよ。」プイッ

女「そーれ、ぷすっとな。」プスッ

男「…あれ?痛くない。女さん注射うまいねー!」

女「看護士目指してたからねー。」

男「目指して『た』?」

女「今は殺人鬼になりたい。」

男「応援してるよ!」

女「ありがとう。」

男「さ、どうなるかな。」

女「成功かな。」

男「わくわく。」

女「わくわく。」

男「わくわk……うぇ……」ヨロッ…

女「お?」

男「……ちょっとトイレ……」ヨタヨタ…

女「ここで吐けば?」

男「処理めんどい…」ヨタヨタ…





男「全部出しちゃったみたい。」

女「残念。」

男「一瞬で死ぬと思ったのに。」

女「そこまで強い薬品じゃないしねー。」

女「よし、屋上いこう。」

男「え?立ち入り禁止じゃなかったっけ?」

女「殺人行為してる私に恐いものはないっ!」

男「確かにー。」パチパチ

<屋上>
女「眺めいいね。」

男「もうこんなに暗くなってたんだ。」

女「9:00だって。」

男「生徒は帰る時間だね。」

女「私達帰ってないけどね。」

男・女「あはははは!」

女「じゃ、そこに立って。」

男「はい。」

女「えーい。」ドンッ

男「わー。」ヒュー




ドサッ




女「どうかな?」








男「ただいまぁ……」ヨロヨロ…

女「失敗しちゃったかー。」

男「全身が痛いよ。」ヨロヨロ…

女「4Fからじゃ後頭部直撃でも死ねないか。」

男「湿布と絆創膏を身体中に貼り付けとかなきゃ…」ペタペタ…

女「もう遅いし続きは明日で。」

男「そうだね。じゃあまた明日。」ノシ

女「うん、またねー。」ノシ




男「じゃあね、って言ったけどさ。」テクテク

女「道同じなんだね。」テクテク

男「ここら辺?」

女「ここら辺。」

男「もしかして△▽中学出身?」

女「そうだったかも。」

男「わあ!一緒だ!」

女「全然気がつかなかったー。」

男「なんか嬉しいね。」

女「だねー。」

男「あ、信号赤だね。」ピタッ

女「信号は面倒くさいね。渡っちゃう?」

男「車きてるよ?」

女「じゃあ、えいっ。」ドンッ

男「わわっ…」ヨロッ

ププーーー!!ガンッ!!




「や、やべえ!人ひいちまった!!」

「はあっ!?ど…どーすんだよおい!!」

女「……さてさて?」

「…に、逃げよう!」

「し、正気かよ!逃げるって……」

「ここら辺人気ねーし大丈夫だろ!逃げるぞ!!」

ブルルッ……パキッ…ブーーンッ!!キュルルルルッ!!



女「最低だね。人ひいて逃げたよ。」

男「」

女「…あれ?今回はもしかして…」



男「…いたい…」

女「デスヨネー。」

男「ねえねえ…何が痛かったか聞いてくれる?」

女「どうぞどうぞ。」

男「あの人たち急発進したでしょ?」

女「うんうん。」

男「逃げるときにも僕の右腕と右脚ひいていったんだ。」

男「骨折れたよ…」

女「あ、パキッてその音だったんだ。」

男「湿布貼っとこう。」ペタペタ

女「もしかして湿布とか絆創膏に魔力宿ってる?」

男「100均だよ?」

女「なるほど。」

女「…あ、家ここだから。また明日。」ノシ

男「あ、そーなんだ!またね!」ノシ

~次の日~
男「じゃあ行ってくるね!」

男父「うるせえな…喋らないでくれよ……」

男母「ほんとジャマ。帰ってこなくていいから…そのまま死んで。」

男「うん!行ってきまーす!」ガチャ…バタン!




男「父さんと母さんは優しいよね。」テクテク

男「僕のこと嫌いなのに、僕の言葉に反応してくれるからね。」テクテク

男「僕には真似できないよ。」テクテク

女「……パンかたい…」モグモグ

女母「……」

女「…あ、そーいえばパパは?」モグモグ

女母「最近はずっと忙しくて、こっちには帰ってこれないらしいわ。」

女「へー。」モグモグ

女母「じゃ、これ今日のお昼代ね。勝手に食べてて。」つ1万円

女「ん。」パシッ

女「あ、そういえば昨日ねー、テストで…」

女母「じゃ、会社行くから。」スタスタ

女「…うん、いってらーしゃーい。」

<学校>
ワイワイ

男「それでねー!こんなでっかい毛虫がさー!」

男子たち「なんだよそれ気持ちわりいwww」アハハハハ!!




女「あー、この問題?この公式を応用するだけだよ。」カキカキ

女子たち「あっ!なるほどー!やっぱ頭いいねー。」カンシン

女「逆に勉強しか取り柄ないけどね。」

-放課後-
男「じゃーねー。」ノシ

男子たち「あれ?男はかえんねーの?」

男「家だと宿題さぼっちゃうから、ここでやってから帰るー!」

男子たち「そっか、頑張れよー!」ノシ



女子たち「女さん帰ろー。」

女「あー、ごめんね。復習するの癖になっちゃってるからー。」カキカキ

女子たち「すごいねー…じゃあ仕方ないね。また明日ー!」ノシ

女「ばいばーい。」ノシ




男「さて、今日は何しよっか!」

女「まずは感電とか?」

男「いいかもね!」

女「やっちゃいましょー!」

前に自殺系ほのぼのあったな
同じ人?

女「コードの端を剥いて?」

男「はいはい。」ベリベリ

女「それを心臓近くに貼り付けてー。」ペタッ

男「なるべく多く貼り付ける?」ペタペタ

女「うんうん。そんな感じ。」

男「これって、いたくないn」

女「えい。」カチッ

男「」ピクッ

女「……どう?」

男「……体のコリがほぐれたよ!」

女「それは良かった。」

>>37
多分そうです。

男「さ、元気になったからどんどんいこー!」

女「じゃー、ちょっと手荒な方法で。」

男「?」

女「…爆弾。」つばくだん

男「おおー。」パチパチ

女「学校だとばれるからー、どっかいこう。」

男「だね。」



<ひとけの無いとこ>
女「うん、よさげ。」

男「楽しみだよ!」

女「これを取り付けて…」カチッ

男「結構重いね。」

女「5こぐらいでいいかな?」カチカチ

男「1こでも足りるんじゃない?」

女「うーん、無理そう。」

男「そっか。」

女「……」タッタッタッ…ポチッ

男「あれ?どこいk」ボンッ…ドガガンッ!!

男の姿は、一瞬で炎に隠された。

こちらまで熱風が伝わってくる。





女「……あんま期待できないねー。」





男「ごほっ!かはっ……喉熱い…」

女「凄まじい生命力だねー。」

男「……最初の爆音で耳がやられたんだ。」

女「ふむふむ。」

男「それで、気づいたら燃えてて、体が宙を舞っててー…」

女「うんうん。」

男「あれ、これお腹えぐれてない?なんか違和感あるよ。」

女「え?あー、どれどれ?…爆弾の破片めりこんでるね。」

男「あー、やっぱり。」

女「抜く?」

男「おねg」

女「でいっ。」ズボッ

男「あぐう”っ…」

女「抜けたよ。」

男「いつも行動が早いね。」

女「せっかちなのです。」

男「絆創膏&冷却スプレー&湿布ー。」シュー…ペタペタ

女「フルコースだね。」

女「次どーしよ。」

男「ネタ切れ?」

女「爆弾でいけると思ったんだけどね。」

男「逝けなかったね。」

女「あ、じゃあこれは?」つ銃

男「うわあ!どうやって手に入れたの?」

女「企業秘密。」

男「だよね。」

女「ちなみにショットガンだよ。」

男「ショットガン?」

女「弾がいっぱいでる。」

男「致死率高そうだね!」

女「そうだね。」バキュンッ!

男「ぐふうっ!……ごぽっ………」ブシャッ!!

女「……」バキュンッ!バキュンッ!

男「……かはっ……ぐぶうっ!?」グヂュウッ!ブシュッ!

女「……」バキュンッ!バキュンッ!

男「……」ビクンッ……ビクンッ…

女「…あ、弾切れ。」カチッカチッ

男「……ぅあ…」

女「…やっとマシな反応したね。」

男「…いたい……ごぽっ…げほ……」

女「本当は痛いじゃすまないんだけどね。」

女「死ねそう?」

男「…出血死で死ねるかな?それが無理なら駄目そう…かはっ…」

女「…ほとんど出血止まってるよ……」

男「…あー…残念だね。」

女「脳とか心臓に当たらなかった?」

男「当たったような気もするけど、わかんない。」

女「そっか。」

男「処置しとこ。」ペタペタ

女「弾、体に埋まってないの?」

男「多分いつか溶けるよ。」

女「そっか。」

男「もう大分暗いし…帰ろっか?」

女「そうだね。」

女「…あ、その前に聞きたいことがあるんだー。」

男「あ、奇遇だね!僕もなんだ。」

女「あ、そうなの?先にいいよ。」

男「いや、女さんからでいいよ。」

女「じゃあ聞かせてもらうね?」

女「なんで死にたいの?」

男「……やっぱそれかー。」

男「うーん…改めて聞かれると……」

男「『何となく』かなあ……」

女「…ほんとに?」

男「……」

男「……なんかね?つまんないんだ。この世界。」

女「……」

男「起きて、食べて、歩いて、笑って、帰って、寝て。」

男「おなじことの繰り返しなんだ。」

男「今日より辛い明日がくるわけでもないけど…」

男「かといって今日より楽しい明日もこない。」

男「…ね?この世界つまんないでしよ?」

女「……」

男「しょうがないから子育て。」

男「表面上の笑顔。」

男「つまんない。どれもつまんないものばっかりなんだ。」

男「だから思ったんだ。」

男「『死んだあとの世界は面白いかな?』って。」

男「それ考えてたらなんだかワクワクしてきて。」

男「死んだら別の世界に行けるかもしれない。」

男「早く逝きたいなぁ……別の世界に。」

女「…それが理由だったんだ。」

男「うん。…あ、僕の質問m」

女「『殺人したい理由』でしょ?」

男「うん!」

女「簡単だよ。」

女「注目してもらいたかったの。」

女「ニュースとかでも、こーゆーこと言ってる人よくみるでしょ?」

女「悪い意味でいいから、注目してほしかった。」

男「女さんは女子の皆から注目されてるよ?」

女「ううん、親に注目されたかったの。」

女「必要最低限の関わり。」

女「その壁を破りたかったんだー。」

女「私は昔から頭が良かったみたいで…」

女「テストは90~100が当たり前だった。」

女「手も器用だった。苦手な事が全然無かった。」

女「だから『凄い』のが『当たり前』になった。」

女「一回100点とると、次95じゃ誉められない。」

女「同じ100でも誉められない。」

女「じゃあ誉められるには?」

女「…わからなかった。」

女「そのうち、誉められるどころか見向きもされなくなった。」

女「そのとき思った。」

女「『見向きされるだけでいいや』って。」

女「誉められなくてもいいから。」

女「私の方を見てほしかった。」

女「私の事を見てほしかった。」

男「……」




男「……じゃあさ?殺そうよ!僕のこと!」

女「?既に何度も失敗してる…」

男「あれは女さんが途中でやめてくれたからだよ。」

男「僕が痛いって騒いでもやりつづければ殺せるよ!」

男「そうだね…そのノコギリで
  僕の首を切り落とす?さすがに死ぬと思うよ?」

女「…なるほど。」

男「さっそく開始だね!」




一瞬にも永遠にも感じられる時間の中

私はただ、ノコギリを前後に動かしつづけていた。



何が起きたかあまり覚えていない。

目の前には、人のようなものが転がっていた。

少し違うのは、首から上が無いこと。

「…もしもし?警察ですか?」

「人を殺しました。」

「住所…どこだろ。○○駅の近くの森林です。」

「…え?名前?女です…」

「……そうですか。わかりました。」

「……」ピッ

「…隠蔽…かー。」

「お父さん…警察署長だったんだね。」

「…怒られるかなあ?」ワクワク…

そのあとどうなったか?


まだ見向きしてくれなかったから…





殺しちゃった。






殺人鬼END

>>54から
男「…じゃあさ…僕と一緒に違う世界にいかない?」

女「…違う世界…か。」

男「きっと楽しいよ。」

女「……」

男「ほら!この崖見てよ!凄く深いし下が岩だから…」

男「絶対に助からないよ?」

女「……」

男「こわい?大丈夫だよ。別の世界への入り口なんだ。」

男「そ、ここに立って。下は見ない方がいいかもね。」

男「じゃ、せーの。」


タンッ






グシャッ

『速報です。○○市の森林から男女の死体が発見されました。』

『調べたところ、△▽高校の
 男さんと女さんであることがわかりました。』

『現場の状況から、自殺の可能性が高いです。』

『またのちほど、詳しい報告を…』

男父「…こんなニュースでとりあげられやがって…」

男母「…っはあ!メンドクサイ!死んでまで迷惑…」



女母「…自殺?何が不満だったのかしら…」

女父「飯は食わして、金もやってたんだろ?」

女父「私達は何も悪くないだろ。」




別世界END

>>54から
男「……」キュルルル…

男「おなかすいたね。」

女「よくこの雰囲気で言えたね。」

男「KYって言うんだっけ?」

女「空気読めない。だね。」

男「空気読める。とも言えるね!」

女「確かに。」

男「それにしても暗いよね。」

女「森だしね。真っ暗だよ。」

男「…あ!その変わりに星がキレイだよ!ほらっ!」

女「…」チラッ…

夜空を見上げると、確かに星が綺麗だった。
今の季節(冬)の方が星は綺麗に見えるんだって。

女「…はー……」ゴロンッ

夜空を見上げたまま寝転がる。

男「よいしょっ。」ゴロンッ

女「自然って美しいね。」

男「周りには森、空には星、近くには底無し崖!自然だね!」

女「崖いらないね。」

男「このまんま寝ちゃおー。」

女「帰らなくていいの?」

男「うーん…今の気持ちのまま帰りたくないかな。」

女「ふむふむ……」

女「まあ…私も気持ちは同じだけど。」

男「女さんも野宿すれば?きっと楽しいよ!」

女「そうだねー。楽しくはなさそうだけど。」

男「やった!一人より二人のが楽しいはずだしね!」

女「ぼっちは辛いね。」




女「寒くないの?」

男「なんで?」

女「半袖だから。」

男「よくわかんない。半袖しか持ってないし。」

女「なるほど。」

男「女さん寒いの?」

女「凍りそう。」

男「これ使う?」つ学生服

女「持ってたんだ。」

男「持ってるよ?」

女「着てたとこ一回も見てないからね。」

男「暑いしね。」

女「異常だねー。」

とりあえず学生服を布団変わりにする。

女「おー、暖かいね。」

男「役に立ててよかったよ!」

女「じゃー寝るね。おやすみ。」

男「うん!おやすみっ!」

まぶたをとじる……






『……じゃあさ?殺そうよ!僕のこと!』

…なんだろう?


『そのノコギリで僕の首を……』


夢……か。


『さっそく開始だね!』


どうやら夢でも、私は男君を殺そうとしているらしい。

…あ、死んじゃった?


夢では簡単だけどねー……


このあと私はどうなるんだろう?


……………………




目を開ける。多分朝だ。

女「……」

横を向くと、座りながら空を眺める男君がいた。

男「……」

今までに見たことないくらい、真剣な顔をしてる。

女「…どーしたの?」

男「…あ、おはよ!」パッ

すぐさま、いつもの顔に戻った。

男「…あれ?なんで泣いてるの?」

女「…え?泣いてる…?」ポロ…

涙が一粒こぼれ落ちる。

女「…本当だ。……なんで…」ポロポロ…

泣いてる事に気づいたら、更に涙が溢れてきた。

女「うぅ……ひっぐ………なんで…」ポタポタ…

男「悪い夢でも見たの?」

女「…わるい…ゆめ………」ポタポタ…

女「…そうかもね……ぐすっ…」ポタポタ…

男「どんな夢見たの?話すと楽になるって聞いたことあるよ。」

女「…殺しても無駄だった……」

女「見向きも…されなかった……」

女「虚しさ…悲しさ…怒り…罪悪感…悔しさ………」

女「そういうのが…一気に押し寄せてきて……それで…」

女「……私は…両親も……殺した…」

男「…夢で良かったね!」

女「……?」

男「?何で意外そうな顔してるの?」

女「……『みんな別の世界に行けたんだ!やったね!』」

女「…とか言うのかと思ってた。」

男「昨日までの僕なら言ってたかもね。」

女「…もしかして、男君も何か夢見たの?」

男「わ、鋭いね!」

女「でしょ?」

女「そっちはどんな夢?」

男「んーとね……飛んだよ。」

女「なるほど。わかったよ。」

男「ほんとに?」

女「そこの崖とか?」

男「うん、大正解。」

女「私に殺されずに自殺したんだ。」

男「二人で飛んだよ。」

女「なるほど。」

女「…それで、そのあとどうなったの?」

男「わかんない。」

女「そっか。」

女「…で、尚更死にたいと思ったんじゃないの?」

男「うーん…逆だね。」

女「なんで?」

男「…つまんなかった。全然面白くなかった。」

男「…それにね、死ぬよりもっと面白いことみつけちゃったから。」

女「もっと面白いこと?」

男「うん。それはね?女さんにずっと…」

女「……え?」











男「殺されつづけることっ!」

男「…あ、正確にいうと、殺されそうになること!かな?」

女「……まあ、君らしいといえば君らしいね。」

…?私は何を期待してたんだろう?

男「それで、女さんはこのあとどうするの?」

女「このあと?」

男「殺人しても無駄だったんでしょ?」

女「夢だけどね。…でも、現実でもそうなる気はする。」

男「まだ僕を殺す?」

女「…どうしようかな。」

女「なんかね…私夢で男君を殺したときに…」

女「もちろん、罪悪感はあった。
  …でも、それとは別のなにかが…内側からこみあげてきて…」

女「その『何か』がなんなのかは…わからないけど…」

女「…とにかく…死んでほしくない……」

男「…それって……死んだ僕の顔が
  予想以上に気持ち悪かったから…とか?」

女「すごい被害妄想だね。」

男「それほどでも!」

…ちらり。

腕時計を見ると、その短針は9を指している。

女「学校遅刻だねー」

男「あ、そっか!平日だったね!」

女「まあいいや。今日は休む。」

男「僕も休もうと思ってたんだ!気が合うね!」

男・女「いぇーいっ!」パチンッ




女「学校サボったことで、怒ってもらえるかなあ。」

男「そうなるといいね!応援するよ!」

女「男君は怒られる?」

男「学校から連絡の電話が入ったら
  『面倒かけやがって…死んでくれよ』って言われるかな。」

女「ふむふむ。」

女「親と仲良くしたい?」

男「仲良く?」

女「家族全員笑顔になりたい?」

男「うん!」

女「じゃあさ、うまくいく確率のほうが低いけど……」

男「……!」




男「すごいね!面白そうだよ!」

女「じゃあ、早速行こっか。」

ピンポーン…

男母「…誰?」ガチャ

女「はじめまして。男君の友達の女って言います。」

男母「……あなた、学校は?」

女「男君の事が気になったので、休んできました。…男君いますか?」

男母「…?あいつに何があったの?」

女「…今週ずっと元気無くて……昨日は特に酷かったんです。」

女「いつも一緒に帰ってるのに、昨日はとっくに帰っていたし…」

女「それで、今日の朝学校に行ってみたら…いなくて…」

女「それで、様子を見に来たんですけど…」

男母「……」

男母「大丈夫。男はさっき夫が病院に連れていったから。」

女「…本当ですか?」

男母「…なに?」

女「私、さっき嘘つきました。」

女「昨日の帰り…本当は男君を追ってたんです…」

女「男君が思い詰めた様子で学校から帰るのを見かけたので…」

女「そしたら、男君は森に入っていきました。」

女「見失っちゃって……それで、次に見つけたときには…もう…」

男母「……え?」

女「……」

男母「…それ、本当なの?」

女「……」コクリ…

男母「…ふ……ふふ…ねぇ、本当なのよねえ?」

男母「生きてましたとか言わないわよね?」

女「…え?はい……」

男母「そう!ふふ、ふふふふ……」

女「何で笑ってるんですか?」

男母「…機嫌が良いから教えてあげる。」

男母「あの子はね…もともと産むつもりじゃなかった。」

男母「あの子のせいで高校も中退して…私の人生は狂った…」

男母「いらなかった…いらなかったのよあいつは!」

女「…だってさ。」

男「ね?僕の予想通りだったでしょ?」

女「うん。心配しなかったね。」

男母「!?な…生きてるじゃないの!!騙したのね…!」

女「でも、死んでほしいみたいなので…」

女「男君には死んでもらおうと思います。」

男母「……?」

女「今日はこれです。」つマシンガン

男母「なっ…なんでそんな物を!」

女「はい、こう持ってくださいね。」

男母 「!?」

女「そして、男君に向けて、ここを押す。」

男母「…はっ!?」カチッ

ダダダダダダダダダダダンッッ!!

男「…ぐっ……が…はぁっ…」ポタポタ…

血まみれのまま、立ち尽くす男…

男母「は…ああ…?ええ?な、何が、私が殺し…?」

女「…」

男母「な……」

女「な?」

男母「何てことしてくれたの!私は悪くない…
   あなたよ!あなたが殺したの!
   そう…私は何も悪くない……!」

女(ここまでして自分の心配かー)


そのとき、不意に男が口を開く……

男「…ぅ…おかあ……さ…」

男母「…!」

男「…今まで…僕の……こと…」

男「嫌い…なのに……育ててくれて…ありが……と…」ニコッ

男「……」ドサッ…

男母「……っ…」ズキッ…

女「…男君、多分死んじゃいましたね。」

男母「……」

女「良かったですね。望み通りになって。」

男母「……ぁ…」

女「?」

男母「ぁ…ああ…う”あ”あ”あ”あぁぁぁあああ”あ”あっっっ!!!」

頭を押さえ込みながら、
奇声を上げてうずくまる母…

女「どうしたんです?」

男母「…ちがう……ちがう…」

男母「…私は…本当は……そう…最初は……」

女「……」

男母「なんで……こんな酷い…違うのに……私…」


そのとき


男「さてっ、もういいかな!?」ガバッ!!

男母「!?」

女「…あーあ。」

女(計画ぶち壊しだね。)

男「…あれ?早かったかな?」

男母「…お、男!生きてるの!?」

男「え?うん、多分生きてるよ!」

男母「本当に!?無事なの!?」

そう言って、男を抱き締める母…

男「…!?わ、わっ……え?どうしたの?
  もしかして……熱とかある…?」

男母「違うの……ごめんね…今まで本当にごめんなさい……」ポロ…

男「…泣いてるの?僕のことで?」

男母「そうよ……本当に良かった…生きててくれて…」

女(…状況が飲み込めない。)

落ち着いたお母さんは、
男君を嫌っていた理由を話してくれた。

高校生で妊娠してしまい、
家族に相談したときにはもう中絶もできなくなっていて…

親からは縁を切られ、夫(男父)からは何故中絶しなかったと責められた。

それでも、男の事はずっと守っていこうと決めていた…


が、夫からの暴言・暴力が毎日続き……

矛先を男に向けさせて、自分は逃げてしまったのだという。

男母「謝って済むことじゃないけれど…本当にごめんなさい…」

男母「私はあなたが大好きだった…なのに、夫が怖くて…夫に賛同してあなたを嫌うフリをしていたら…本当にわからなくなってしまって……」

男「……」

男「…あはは!僕は幸せ者だね!お母さんに好かれてたなんて!」

母「男…」

女(……)

そのあと、銃と血は偽物だとちゃんと説明しておきました。

まあ、本物だったけどねー。



女「私が予想してたより、ずっとハッピーエンドだったよ。」

男「女さんのおかげだね!ありがとう!」

女「それで、このあとどうする?」

男「もう決まってるよ!」

女「?」

男「女さんの家!」

女「……え?」

ガチャ

女「ただいま。」

女母「あら、お帰りなさい女。」

女「…あ、お父さんもいたんだ。珍しいね。」

女父「今日は仕事が早く終わってな。」

女「…」


『僕に考えがあるんだ!あのね…』


女(本当に大丈夫なのかな…)

女「お父さん、お母さん。」

父・母「…?」

女「私って…嫌われてる?興味ない…?」

女父「…どうしたんだ?誰にだ?」

女母「学校で何かあったの?」

女「…違う……私は…」

女「……あなたたちに嫌われてるって…思って…」

女父「…なんでだ?私たちが暴力でもふるったか?」

女母「ご飯だって…つくれないときはお金置いてるじゃないの。」

女「……」

女「…3回。何の数字だと思う?」

父・母「……?」

女「……」

女「私が誉められた回数。だよ。」

女「転んで泣かなくなったとき。」

女「初めて100点取ったとき。」

女「一人で留守番できるようになったとき。」

父・母「……」

女「全部小学生にもなってないときの記憶。」

女「小学生の私は…そんなこと出来て当たり前だったもんね?」

女「どんなに良いことをしても…どんなに成績をあげても…」

女「何をしても……二人はこっちを見てくれなかった。」

女「でも……」





女「死ぬ瞬間なら心配してくれる?」ザクッ

父・母「!!」

隠していたナイフを取りだし、手首に深く突き刺す。

女「……っ」ズキッ…

そのまま手前にひく…突き刺す…ひく…



パシッ!


手を掴まれた。降り下ろせない……

女父「やめなさいっ!!」

女「……!」

今、この瞬間。

対等な立場で私は見られてる。

私に怒ってくれてる。

私を見てくれてる。

私という一人の人間に対して、話しかけてくれている。



価値観がおかしいのは分かってる。

嬉しい。

女父「私たちは……お前にこんなことをさせるまで…追い込んでいたのか…」

女母「お願いだから…自分の身は傷つけないで…」

女「……?」

思ってたのと違う反応。

『何馬鹿なことしてるんだ!』みたいな感じで
叩かれて怒られるのかと思った。

女母「私たちはアナタを嫌ってなんかいないの……」

お母さんの目からは涙がこぼれていた。

女「じゃあ…なんで私に無関心なの?私のことが嫌いだから…興味ないからじゃないの?」

女父「無関心……確かに私がしていたのはそう呼ぶべき行為だったな……すまない…」

女父「でもな、女…私たちはお前を嫌っていないし、興味がない訳じゃないんだ。」

女父「…言い訳でしかないが…私たちはどちらも忙しい身だということは女も分かってると思う…」

女父「仕事は早く始まり、遅く終わる……疲れて自分の事で精一杯になってしまっていた……」

女父「もちろん、そんな境遇で子供をしっかり育てている親はいくらでもいる…だからこれは言い訳にしかならない。すまなかった、女…」

女「……」

女母「あなたは昔から物覚えが良かったから…なんでも任せられて…」

女母「確かに、『できて当たり前』だと思ってしまっていた…全然誉めてあげてなかったわね…本当にごめんなさい…」

女「…もう…いいよ。私の方こそごめんなさい。急に変なことして…二人に心配かけて…」

女父「女が謝る必要はない…」

女母「…ほら、手首みせて?」

お母さんが小さめの包帯やキズ薬を持ってきた。

女「あ、いいよ、自分でやるから…」

女母「…ふふ、子供の頃なんでも女自身にやらさせてた分、今から少しずつ返していきたいのよ。」

お母さんはそう言いながら私の手首に、薬を塗ってくれた。
……よかった、染みないやつだ。

女父「私にできることは……」

女母「…何もないかしらね?」

女父「……」

女「……ふふっ。」

こんなに簡単だったなんて……

心の声を表にだすだけで…変わってたんだ。




男「…あ!女さん、どうだった?」

女「ばっちり…なのかな?よく分かんないけど…仲直りできたよ。」

男「そっか!おめでとう!」

女「うん、ありがとう男君。」

男「…それで、これからどうするの?」

女「これから?」

男「もう殺人しないの?」

女「んー…殺人が趣味な訳じゃないしなー。」

男「そっか…」

女「…?どうしたの?珍しく落ち込んでるね。」

男「え?よく分かったね!?」

女「顔に全部でてるよ。」

男「僕ポーカーフェイスは一番苦手なんだっ!」

女「ふむふむ。…それで、何で落ち込んでるの?」

男「……」

少しうつむいて考えた後…

男「僕は死にたかった。」

女「?」

男「女さんは殺人したかった。」

女「うん?…うん。」

男「そんな奇跡が起こって、僕たちは一緒に行動するようになった。」

女「ギブ&テイク…かな?」

男「でも、もうその繋がりがなくなっちゃったね。」

女「……」

男「正直言って僕も死ぬ理由は無くなったしね。」

男「お母さんを守っていかないと。」

女「繋がり……か。」

女「……」

女「確かにそういう関係は無くなったけど…」

女「私は…あなたとの繋がりが無くなったとは思ってないよ?」

男「…え?」

女「別に、殺す・殺されるの関係じゃ無くなっても…私は男君と会話するし、なんなら家に遊びに行ったりもする。」

男「女さん…」

女「まだ色々と知りたいしね。男君のことについて。」

男「…僕も女さんと、もっと色々な話がしたい。」

男「人と話してて『楽しい』って思えたのは初めてだったから。」

女「これが『友達』っていうのかな?」

男「ううん!違うよ!」

女「?」

男「友達以上……『親友』とかかな!」

女「親友……」

男「…すごいや!今日一日だけで一気に世界が変わっちゃった!」

男「つまらなかった世界に色がついて…僕なんかが愛されてて…親友までできた!」

女「私も…本当にこんな未来が訪れるなんて思ってなかった。」

女「私達には奇跡が起こりすぎてるみたいだね。」

男「いつか一気に反動がくるのかもね!」

女「ありそうだね。」

そのあとも、くだらない会話を延々と交わす。


どうでもいい話。


…なのに楽しい。矛盾だね。


時間はあっという間に過ぎていく…

男「夕日が眩しいね。」

女「今の時間帯が、車の事故発生率が一番高いらしいよ。」

男「本当に!?気を付けないとね!」

女「昨日までなら飛び込みたがってたのにね。」

男「死にたくないからね!」

女「最初に言った言葉覚えてる?」

男「?」

男「…あ!思い出したよ!」

男「死にたいな…だよね?」

女「そう。それ。」

女「今じゃ180度逆のこと言ってるよね。」


男「生きたいな。」

女「人を助けてみたい。」


男・女「……なんてね。」アハハ

女「上手い言葉が思いつかなかったなー。」

女「…ねー男君。」

男「え?何?」

女「このあと時間ある?」

男「僕はいつでも暇だよ!」

女「じゃ…散歩でもしない?」

男「…?もちろんいいよ!」

女「…」スッ…

男「……?」

女「死にたくないんでしょ?死なないように守ってあげる。」

男「手を繋ぐのと守るのって関係あるn」グイッ


言い終わる前に、私は男君の手を引っ張り歩き出す。


はー…あんな言い回しじゃなくて、正直に言えたらなぁ…


男「おっとと…相変わらず早いね!」

女「せっかちなのです…ふふっ。」


ま、これから言えるようになっていけばいーよね。




To be continued……

『To be continued』は、
二人の人生はまだ始まったばかり…
的な意味合いだと思ってくだされ。別に続編は書きません。

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