花陽「くるりんMIRACLE」 (31)
時期的には二期の五話以降でございます
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小泉花陽です
さいきん、凛ちゃんがとってもかわいいです
あ、いえ……凛ちゃんはもともとかわいいんですが、女の子っぽくなってきて、ってことですよ!
休日に遊ぶときもかわいいスカートとかワンピースとかで、少し前の凛ちゃんから見違えるようで……えへへ、写真を何枚も撮っちゃいました♪
そんな乙女に目覚めたかわいい凛ちゃんなんですけど……
まだまだおしゃれに関しては初心者マークの女子ロード!
にこ❤ぷり女子道を行くにこちゃんに目をつけられちゃうのです!
・・・
それは、凛ちゃんが学校にかわいいヘアピンをつけてきた日のことでした
凛ちゃんが髪につけたのは、かわいいんだけど……少しだけ地味なヘアピンで
もうちょっと派手でもいいんじゃないかな?
私がそう問いかけると、凛ちゃんは
「えへへ……こ、これより派手なのはまだ恥ずかしくて……」
と照れて頭を掻いちゃいました
かわいいのに、もったいないです
……でも、これからもっと可愛くなるんだろうなあって思っていた、その日の放課後
「ねえ、凛」
その日はたまたま、部室で三人……私と凛ちゃんとにこちゃんだけの日でした
二年生組は生徒会で大きなお仕事
絵里ちゃん希ちゃんはそのお手伝い
どうせ練習出来ないんだから……と真姫ちゃんはおうちに帰ってしまいました
ちょうど用事もあったのだそうです
そんな放課後
凛ちゃんの髪につけられたヘアピンを目ざとく発見したにこちゃんが、じっとりした視線を投げかけました
「なにかにゃ?」
にっこり笑顔で首を傾げる凛ちゃん
それを見て、にこちゃんはため息を吐きます
「……あんた、それでおしゃれのつもり?」
に、にこちゃん……ちょっといきなりすぎじゃないかな……
「だ、だって……」
「だってじゃないの!」
凛ちゃんの返答に、にこちゃんは声を荒げて机をバンッと叩いて立ち上がりました
人差し指を凛ちゃんへ突きつけて、腰を手を当てて
「あんた……まだまだ恥じらいがあるわね!!」
……うん?
「恥じらいって……なにが?」
「そのヘアピンよ!」
にこちゃんの指先が示すのは、凛ちゃんが付けてきたヘアピンでした
かわいいけどちょっと地味で、少しだけ子供っぽいヘアピン
それをビシッと指差してにこちゃんは言います
「もっとかわいいヘアピンとか、色々あるじゃない! なんでそんな地味なやつなのよ! 最近女の子に目覚めたとか言うけど、おしゃれ舐めてんの!?」
「ぇ、ええぇぇっ……か、かよちーん……」
いきなり責められて困惑する凛ちゃんが、私に助けを求めてきます
うう、ごめんね凛ちゃん……私もちょっと同じこと思ってたの……
だから私は気まずくて、視線をそらしちゃいました
するとにこちゃんは目つきを変えて、凛ちゃんに詰め寄りました
「凛!」
「ひゃいっ!?」
「……今からあんたに、にこがおしゃれってものを教え込んであげるわ!」
……いま思えば、これって、にこちゃんなりの優しさなんじゃないかな?
かわいくなることに目覚めた凛ちゃんに、もっとかわいくなってもらおうって……そんな、ちょっと遠回り気味な、にこちゃんの優しさなんじゃないかなって
ふふふ、よかったね凛ちゃん♪
「よくないにゃー……」
「ほら、いくわよ!」
「どこに行くのー!?」
「ショッピングモール!」
「うぇぇえ……」
そうして凛ちゃんが、初心者マークながら、おしゃれの道を歩き始めたのです
……なかば強制的にではありますが
・・・
「ねえにこちゃん……」
「なによ」
「凛、このままでいいよー……」
「そんなんじゃダメダメよ」
「なんでー」
「なんでも」
「ぶぅ……」
そんなやりとりをしながら、近くのショッピングモールまで
ずっと駄々をこねる凛ちゃんを引っ張って、私たちはにこちゃんのお気に入りというアクセサリーショップへ入店
さっそくにこちゃんはあれやこれやと、かわいいアクセサリーを手に取っては戻してを繰り返します
「んー……これは派手すぎるし、こっちは似合わない……」
手に取ったひとつを凛ちゃんに合わせてみたり、自分に合わせてみたり
アクセサリーを選ぶにこちゃんの横顔は、なんだかとっても楽しそう
でも……
「もういいよにこちゃん……凛にはまだ早いよ……」
凛ちゃんはちょっと面倒そうで
嫌ってわけじゃないけど、あんまり嬉しくもないんだろうなぁ……なんて表情
凛ちゃんは、こんなことになるなんて……って思ってるんじゃないかな
……たしかに、ちょっと無理やりかなって私も思うけど
でも、それはにこちゃんなりの思いやりなんだとも思います!
「あ、これとかどうかしら! 凛、こっち来て!」
私たちのいる向こう側の棚で呼ぶので二人でそちらへ行くと、にこちゃんは大きな白い花のモチーフがついたヘアピンを掲げて待っていました
「これ、これ付けてみて!」
「にこちゃーん……」
「いいから、絶対これ似合うから!」
うふふ、にこちゃん、本当に楽しそう
おしゃれに目覚めた妹のお世話をしたがるお姉ちゃんって感じかな……?
そして凛ちゃんも、お世話をされて嫌がる妹みたいな反応で……ふふ、まるで本当の姉妹だね!
「ほら、付けてあげるから」
「自分で出来るよ……」
「いいからいいから」
抵抗する凛ちゃんに、にこちゃんは有無を言わせず髪をいじくります
カバンから取り出した櫛で凛ちゃんの髪を少し右に流し、その耳元にヘアピンを差し込むと……
「こ、これ……凛……?」
凛ちゃん本人がびっくりするほどに見違えちゃいました!
「どう?」
ふふん、と腰に手を当てて満足そうに胸を張るにこちゃん
「す、すごいにゃ……えへへ……」
凛ちゃんは頬に手を添えて、少し恥ずかしそうに身をよじります
恥ずかしいけど、ちょっと嬉しそうで……見てる花陽も嬉しくなっちゃいました
「ね、ねえ……にこちゃん?」
おずおずと凛ちゃんがにこちゃんを見ます
「なに?」
「ほ、他にも……かわいいの、選んでほしいにゃ……」
そう言った凛ちゃんのほっぺたは、ほんのり赤色に染まっていました
にこちゃんは大きく頷き、にっこり笑って答えました
「まかせなさい! もっとかわいくしてあげるわ!」
そこから、にこちゃんによるヘアアレンジが始まりました
小さなアクセサリーショップをひっくり返すような勢いであちらこちらへ歩き回り、目に留まったヘアピンやシュシュなんかを凛ちゃんに合わせていくのです
そのたびに凛ちゃんは、いつもとは違う凛ちゃんに早変わり!
カチューシャで活発な女の子っぽさを強調してみたり
櫛とドライヤーで髪をふんわりさせて伊達眼鏡と合わせて大人っぽくしてみたり
どれも印象の違う魅力で、花陽の心もきゅんきゅんしちゃいましたっ
しばらく色んな凛ちゃんを堪能してから、私も何か付けてみようかなーってアクセサリーを探していると……
「見て見てかよちん! えくすて? っていうのつけてみたよー!」
そう言ってくるりんと回って見せる凛ちゃんの髪の毛は、ゆるいパーマのかかった長髪になっていました
エクステという付け毛を装着したのだそうです
「どう? エクステひとつでこんなに印象も変わるの」
にこちゃんも誇らしげに胸を張ります
うふふ、とってもかわいいよ凛ちゃん!
「えへへ〜♪」
私が褒めてあげると、凛ちゃんは顔を赤くして身をくねらせて照れちゃいました
それからまたしばらくアクセサリーを付けたり外したりを繰り返して、にこちゃんは満足げに鼻から息を吐き出しました
「ふふん……やっぱりおしゃれって楽しいわよね!」
うんうんと私も頷いて同意します
「こういうとき、自分がヘアアレンジ得意でよかったーって思うのよ」
そうなの?
「だってほら、かわいい後輩をたくさんイメチェンさせてあげられるじゃない? 私、けっこう好きなのよね」
そうなんだ……じ、じゃあ私もお願いしてみちゃおうかな……なんて、えへへ
そう考えたとき、凛ちゃんが私たちのもとへスキップしながらやってきました
「えへへ……にこちゃんありがとにゃ! なんか凛、すっごく女の子っぽい気がする!」
鏡に映る、ゆるふわヘアーの自分の姿を眺めながら、凛ちゃんは嬉しそうに言います
「バカね、あんたは元から立派な女の子よ。いままでそれから目を逸らし続けてたんだから、これからはたくさんたくさん、おしゃれを楽しみなさいよ」
にこりと微笑むにこちゃんは、少し恥ずかしそうでした
にこちゃんは前から、ずっと凛ちゃんの髪をいじりたいと思っていたのだそうです
ショートヘアというのは何かといじりやすいらしく、触りたくて仕方なかったのだとか
今日のにこちゃんの喜びようを見ていて、なるほどーって思っちゃいました
だって、にこちゃんに髪をいじられた凛ちゃんはどれもとってもかわいかったんですから!
いいなあ……私もちょっと、やってみたくなっちゃったかも
……なんてね♪
「なに言ってんのよ」
……え?
「今度はあんたの番よ、花陽」
えええぇぇぇぇぇっ!!?
「そうだよかよちん! 凛ばっかりいじられて……凛も色んな髪型のかよちん見たいにゃ!」
そう言って凛ちゃんは私を引っ張り、無理やり鏡の前の椅子に座らせました
「さあにこちゃん先生、よろしくお願いします!」
「よーし! この私に任せなさいっ!」
腕まくりをして意気込むにこちゃんと、目をキラキラさせて私の髪型が変わっていく様を楽しむ凛ちゃん
少し恥ずかしくて照れちゃうけど、なんだか楽しかったです♪
その日は、凛ちゃんが女の子としての二歩目となった……そう私は思っています
スカートや服装だけじゃない、女の子のおしゃれを教えてもらった凛ちゃん
ねえ、凛ちゃん
これから凛ちゃんはどんなおしゃれさんになるのかな?
私は凛ちゃんがどんな風に変わっていくのか、とっても楽しみなの
小さな頃からずっとおしゃれを怖がってたんだもん……これからは、たくさんたくさん、女の子としておしゃれを楽しんでほしいな
「にこちゃんにこちゃん、次はねー!」
「ああ、それなら……」
いまは私をおしゃれにするのを楽しんでるんだね……でも、いままでこんなこともなかったからやっぱり大きな一歩だね!
「これとかどうかにゃ?」
「あー、あんたなら似合うけど花陽なら……」
こんな風におしゃれを教えてもらってるうちに……凛ちゃんもすぐな自分ひとりでおしゃれできるようになるよっ
みんな、新しい凛ちゃんを楽しみにしてるんだ
だからおしゃれを楽しんで、そして私たちも楽しませてほしいなっ
「ちょっと花陽、見てみなさい!」
「かよちんかよちん、これとかどうかな!」
「うんうん、かわいいよ凛ちゃんっ!」
おしまい
凛ちゃんお誕生日おめでとうございます
即興だったので変なところがいろいろあるかも……すみません
読んでいただいてありがとうございました
今更ですけど、エクステじゃなくてウィッグだったかも
ごめんなさい
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