ブラックジャック「何、豊胸手術!?」 千早「……くっ」 (74)

BJ「ピノコ、飯は?」

ピノコ「待っちぇ。いまテレビ見てゆから」

BJ「奥さんならテレビより旦那さまの食事を優先して欲しいもんだがね……」

BJ「何見てるんだ? ……ななひゃくろくじゅうご」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413978748

ピノコ「も~、ちがうわよのさ! 765プロおーるちゅたぁかんちゃちゃい!」

ピノコ「765プロ、今時の若者なら知ってて当然なのよさ。ちぇんちぇー知らないの?」

BJ「知らんね。私は今時の若者じゃないしアイドルにも興味ない」

BJ「それより何か食い物がないのか? ……お、ボンカレーか」

ピノコ「はぁ~、この中の誰かうちに来てくんないかちら……」

BJ「うちにアイドルが来る時は難病か整形かどっちかしかないぞ」パクパク

ドア「来客でごんす」

BJ「ん、人が飯食ってる時に……。ピノコちょっと出てくれ」

ピノコ「え~?今テレビ見てゆって言ったでちょ」

BJ「アイドルなんていつ見ても同じだ。わがまま言うとテレビ取り上げるぞ!」

ピノコ「わ~ん!ちぇんちぇーの馬鹿ぁ~!」タッタッタ

BJ「やれやれ……」

                       

                           アッチョンブリケー!>

BJ「今度は何だ!?」

ピノコ「あわわ……」

BJ「ピノコ、どうした! ……ん、あんたは」

千早「あなたがブラックジャック先生……ですか?」

BJ「そうだが」

ピノコ「あ、あ、あ、本物?本物の如月千早……?」

千早「ええ……そうです」

BJ「知ってるのか?ピノコ」

ピノコ「アッチョンブリケー!!急いでちきち買ってくゆのわさ!」

BJ「おい!こら、ピノコ!?」

BJ「あっという間に行っちまいやがった」

千早「あの……」

BJ「ん?ああ、すいませんね。で、急患ですか?」

千早「いえ……病気じゃなくてその……」

BJ「なら整形かい?私はあんまりそっちの仕事は気が乗らないんだがね」

千早「整形、なんですけど……」

千早「あの! 先生はお金さえ出せば色んな手術をしてくださるって本当ですか!?」

BJ「まぁ私の手におえればやりますよ」

千早「じゃ、じゃあ……じゃあ! 私の胸を大きくしてください!!」

~時間経過でごんす~

BJ「――なるほど、君はアイドルなわけか」

千早「はい。765プロというプロダクションに所属しています」

BJ「うちの助手もそこのファンだよ。人気プロダクションらしいね」

BJ「そんな人気アイドルが何だって整形手術なんかしなきゃいけないんだい?」

千早「先生……私16歳なんですよ」

BJ「へぇ、それで?」

千早「事務所には私より年下なのに私より…が大きい子もいて……」

BJ「くだらんね。私は18歳なのに君より遥かに胸の小さい子を知ってるよ」

千早「え!? そんな人いるんですか!」

BJ「ああ、今色紙を買いに行ってる」

千早「! 馬鹿にしないでください!」ヒョウタンツギー!

BJ「別に嘘は言ってないがね……それぐらいくだらん話だってことさ」

千早「私だって、私だってくだらないと思いますよ!」

千早「でも!」

~回想~

千早『ふぅ、今日のレッスンも充実してたわね』

春香『千早ちゃん動きキレッキレでうらやましいよ』

千早『そう?なら春香も腹筋に付き合ってみる?ボイストレーニングにもなるし』

春香『ん~私は……あ、亜美、真美お疲れ!』

亜美『あ、はるるんと千早おねぇちゃん』ジー

真美『お疲れ~』ジー

春香『熱心に何見てるの?』

亜美『この前のネットライブの動画だよん』

真美『色んなコメント流れるから面白いよね~』

春香『あ~、あれか。でも中傷コメとかあったら怖いよね』

真美『ん~まぁそれはやっぱ少しはあるけど気にしてらんないよ』

千早『そうよ、春香。匿名性の高い場ではわざと酷いことを言う人なんて沢山――!」

亜美『ん?どったの千早おねえちゃん?……あ」

~千早ソロパート~

『72』『まな板絶唱』『壁』

亜美『……OH』

真美『……これは』

春香『ち……千早ちゃん、こんなの気にせず――」







千早『――――え、してませんけど?』


~回想終わり~

千早「……くだらない、本当に……くっ」ギリ!

BJ「なら気にしなくていいじゃないか」

千早「コメントなんて気にしませんよ!でもね、皆の労わる空気には耐え切れないんですよ!」

千早「せめて2cm……いえ、3cm……!」

BJ「はぁ……わかったよ」

千早「え!本当ですか!?」

BJ「740万」

千早「え」

BJ「正確には胸囲×10万だ。74cmなら740万」

BJ「しかしいきなり大きくなったら不自然だからな」

BJ「もっと大きくしたいなら段階ごとに750万、760万と貰う」

千早「2cmごと大きくしたとしたら3080万……」

BJ(80cmまでいくつもりか?)

BJ「どうだ、これでもやるかい?」

千早「…………やります! やりますよ!!」

BJ「よし、なら手術は3日後だ。それまでにこの口座に振り込んどいてくれ」

千早「わかりました! さっそく振り込んできます」

BJ「ああ、振り込んでも止めたくなったら言ってくれ。あまりに馬鹿馬鹿しいんで金は返すよ」

千早「余計なお世話です。それじゃあ!」バタン

BJ「ふぅ……馬鹿だなあいつ」

ピノコ「たらいま~! あれ、千早ちゃんは?」

BJ「帰ったよ」

ピノコ「えぇ~! なんでぇー!? ちぇっかくちきち買ってきたのにぃ!」

BJ「心配しなくてもあの子が本当に馬鹿なら3日後また来るさ」

千早「よし、まずは740万。一気に高槻さんと並んでみせるわ!」

千早「……馬鹿なことにお金使ってるわね」

千早「いいえ! これは私がアイドルの仕事に本気で取り組んできたって証拠よ!」

千早「今までは歌えれば何でもよかった。けど今は違う」

千早「舞台の仕事だって、バラエティだって、ぐ……グラビア撮影だって全力で取り組んでみせるわ!」

千早「そのために胸を――」

子供「あの……」

千早「大きく……うん?え、あ! な、何ですか!? 私は何も――」

子供「もしかして、千早ちゃん!?」

千早「え……あ、そうだけど」

子供「すごい!本物だぁ! お母さぁ~ん!」

千早「あ、ちょっと」

母親「こら!す、すみません。この子が失礼を……」

千早「ああ、いえ。でもあまり通りで名前を叫ばれるのは……」

母親「本当にごめんなさい。この子、千早さんの歌が好きで」

子供「違うよ!歌だけじゃなくて全部!」

子供「私765プロの中で一番千早ちゃんが好きだもん!かっこいいし、可愛いし!」

千早「え……あ、ありがとう!嬉しいわ」

母親「ほら、もう迷惑だから行くわよ!」

子供「え~、もっと話したいー!」

母親「ダメ!ほらっ」

千早「ごめんね。私も行かなくちゃだから」スッ

子供「あ……」ギュ

千早「ありがとう。これからも私がんばるわ」

子供「――うん!私ずっと応援してる!」

母親「あ、そんな握手なんかしてもらって、すいません!」

千早「いいえ、ファンあってのアイドルですから」

子供「わ~い!!」タッタッタ

母親「こら! 走らないの!」

千早(嬉しいわ……胸の小さい私でも好きって言ってくれる人が)

千早(こんな事……本当にくだらないことだったかも)

千早(そうよ。なんでこんなことにあんなムキになって)

千早(恥ずかしい、頭に血が上ってたわ……やっぱり先生に謝って手術は無しに)









<キキッー!!>バァーン!

『いやぁぁぁぁぁ!!』

『子供が!急に飛び出して!!』

『救急車、早く!』

『動かすな!!』


千早「え……」

千早(何?車?)

千早(子供?握手した?)

千早(子供?轢かれた?)

千早(優と同じくらいの)

千早(―――優 )

千早「――――あ」バタッ

『こっちでも人が倒れたぞ!』

『気を失ってるみたいだ』

電話「ジリリリーン!」

ピノコ「あ、千早ちゃんかも!」ダッ

ピノコ「はい、もちもち?……え?なぁんだ」

ピノコ「ちぇんちぇー、病院」

BJ「何だとは何だ。はい、もしもし」

BJ「ああ、君か。うん、子供が交通事故?」

BJ「君のところでやればいいじゃないか。ん?保ちそうにない?」

BJ「しかし今先約があってなぁ……は?もう一人?そんなこと聞いちゃいない」

BJ「待て、誰だって?……そうか、わかった」

BJ「気が変わったよ。すぐ行く。手術の準備をしておいてくれ」ガチャ

~病院~

春香「……千早ちゃん、大丈夫?」

千早「…………」カキカキ

春香「なんで謝るの?千早ちゃん何も悪くないよ」

千早「…………」カキカキ

春香「ッ! それは違うよ!握手してなかったらなんて関係ない!!」

千早「…………!」ポロポロ

BJ「聞いたとおりみたいだね」ガラッ

千早「!」

春香「え……どなたですか?」

春香(ツギハギに黒コート……怪しい)

BJ「いや、そこのお嬢さんにある手術を頼まれた医者だよ」

BJ「金が振り込まれてたんでね。手術の段取りを説明しようかと」

千早「…………!」キッ!

BJ「それどころじゃない? 何のことかな」

春香「あ、あのこの病院に千早ちゃんのファンの子が車に轢かれたのを運ばれて――」

BJ「へぇ。それこそ私の知ったこっちゃない。私に依頼されたのはお前さんの手術だからね」

春香「え?そんな……貴方お医者さん……なんですよね? なのに知ったことじゃないって……」

BJ「君の言いたいことはなんとなくわかる。だけど聞き慣れてるよ、そんなのは」

BJ「私はモグリ、無免許医で金をたくさん受け取らなきゃ手術しないって有名な男だからねぇ」

春香「そんな!」

BJ「それじゃあ3日後にまた。何か他に言いたいことは?」

千早「…………!!」カキカキ!

BJ「ん……?」

千早「…………!」カキカキ!

BJ「私にその親子の手術を依頼する……か」

BJ「いいのかい? 高くつきますぜ? しかも赤の他人のために」

千早「コクッ」

BJ「……わかった。交渉成立だ」

手塚「遅かったじゃないか。ブラックジャック」

BJ「悪いな。患者が大勢いる身でね」

BJ「これよりオペを始める!患者は推定5歳、少女。腹部への強い衝撃によって―――」


~手術開始~



千早「……」ギュ

春香「あの先生、手術大丈夫かな……」

~数時間後~

BJ「終わったよ」

千早「!」

春香「ど、どうなんですか?」

BJ「あまりよくないね」

千早「!!」

BJ「体のほうは綺麗に治したはずだけど、まだ幼いからかショックが大きいと思う」

BJ「明日、麻酔が切れたときに目を覚ますかどうか」

春香「そんな……」

BJ「まぁ私は依頼どおり手術はした。請求は明日にしよう」

春香「か……帰るんですか?」

BJ「ああ、明日また来るよ」ガチャ

春香「ま……待ってください!」タッタッタ

BJ「ん?」

春香「あの……千早ちゃん声が出なくて」

BJ「ああ、らしいね」

春香「昔、千早ちゃんには先生が手術した女の子と同じくらいの弟さんがいたらしいんです」

春香「でも、その子も交通事故で亡くなっちゃって……」

春香「きっとその時のショックを思い出して声が出なくなっちゃったんだと思う……」

春香「なんとかならないんですか!?」

BJ「君の言ったとおりショックによる精神的なものなら私の専門外だ」

BJ「素直に精神科にでも行くんだね」

春香「…………」

BJ「まぁ最悪、声なんて無くても今の時代意思疎通は割りと簡単にできるさ」

BJ「目が見えれば、だがね……」

~翌日~

BJ「やぁ、おはよう。請求に来たよ」

千早「…………」カキカキ

BJ「ん、確かにそろそろ麻酔が切れる時間だ。見に行くか?」

千早「…………」コクッ

BJ「OK。だが昨日も言ったとおり目が覚めなくても手術料は君から頂くがね」

BJ「どうだい?」

手塚「それが……」

母親「いやぁ! 起きて! 起きてぇ!!」

子供「…………」

BJ「何! くそ、ダメだったか……」

千早「!!!」

千早(そんな……)

千早(また、なの……?)

千早(また、私のせいで優が――)

千早「……ぁ……ぁぁ……」

BJ「お前さん……声が!」

BJ「 なら、頼む!呼びかけてくれ!!」

千早「!!」ブンブン

BJ「聞け!意識が無くとも声によって目を覚ます事例は数多くあるんだ!」

BJ「この子はお前さんのファンなんだろ? アイドルは人を笑顔にする仕事なんだろう!?」

千早(無理よ……だって)ブンブン

千早(だって……声が……)ポロポロ

BJ「あんたの弟さんは……あんたの声が好きだったんだろう?」

千早「!!」

千早(――――優)



優『お姉ちゃんはほんとに歌が上手だね!』



千早「――――ぁ、ぉきて……おきて!」

千早「おきて!起きて!! ねぇ、目を覚まして!!!」







子供「……ん」

手塚「!!」

母親「あ、ああああああ!! 目を、目を開けました先生!!」

千早「ブラックジャック先生!」

BJ「たいしたもんだ……」

千早「え?」

BJ「君は私の無駄になるところだった手術をきっちり仕上げちまった」

BJ「だけど依頼は別だ」

千早「あ……おいくらですか」

BJ「手術料は普通なら3千万のところおおまけにまけて740万」

BJ「確認したらもう振り込まれていた。悪いけどきっちりいただいてくよ」

千早「! ふふ、大金ですね」

BJ「まぁお金の使い道の勉強料と思いなさいな」

BJ「何、死にかけの人間だって聞くために戻ってくる美声だ。740万なんて安い安い」

BJ「じゃ、私はこれで」ガチャ

千早「先生、ありがとうございました……!」

~病院外~

母親「先生~!このたびは本当に娘を救ってくださって……」

BJ「なぁに、仕事ですからね」

BJ「私のほうこそ奥さんにお礼を言わなきゃ」

BJ「娘さんともども、演技に乗ってくれてありがとうございました」

BJ「おかげであの子の声も戻った」

母親「いいえ、あの子は千早さんのファンですから! あの子のためでもありますよ」

BJ「お二人にはギャラを支払わなきゃな」スッ

母親「まぁ!20万も受け取れませんよ!?」

BJ「見舞金と……余るようなら如月千早のグッズでも買ってあげてください」

~BJ宅~

ピノコ「でもわかんないわよのさ」

BJ「何がだ?」

ピノコ「なんで20万なんて中途半端なお金なの?」

ピノコ「いつもなら悪い癖で全額バサッとあげちゃうのに」

BJ「なぁに、20万分は実はぼったくりだからさ」

ピノコ「ふぇ?」

BJ「いいか、あのお譲ちゃんには胸囲×10万が手術料だと言った」

ピノコ「うん」

BJ「しかし結局豊胸手術はしてない」

ピノコ「じゃあタダなんじゃないの?」

BJ「だけど私は声を治してみせた」

ピノコ「んん?」

BJ「だから元のサイズ分、720万が適正価格ってわけさ」

ピノコ「んん~~?よくわかんない」

BJ「実は私も同じ感想だ」

                            

                               ~終わり~

これで終わりです
お付き合いいただきありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom