【ごちうさ童話】チノずきんちゃん (20)
ナレーション:青山ブルーマウンテン
むか~しむかし、ある街に、可愛いチノちゃんがおりました。
チノ「か、可愛くないです……///」
ある時、友達のシャロちゃんが、子供の頃に着ていた服をばらして青いずきんをチノちゃんに作ってくれました。
シャロ「余り物の布で悪いけど、どうかしら」
チノ「ありがとうございます。可愛くてとっても素敵です」
ずきんを気に入り、ことあるごとに被っていたチノちゃんは、みんなからチノずきんちゃんと呼ばれるようになりました。
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そんなある日の事、お父さんがチノずきんを呼んで言いました。
タカヒロ「チノずきん、シャロくんが風邪を引いてしまったらしい。この間のお礼も兼ねて、お見舞いに行ってあげなさい」
チノ「はい、お父さん」
タカヒロ「お店に置いてるメロンパンと、風邪に効きそうなトマトジュースを一本持って行ってあげると良い」
チノ「わかりました」
メロンパンとトマトジュースをバスケットに入れ、いつも通り青いずきんをしっかり被り、チノずきんは出かける支度をしました。
チノずきんはシャロちゃんの家へ行くのも初めてではありませんし、大して遠くも無いのであまり心配していません。
しかし、お父さんには一つ気になることがありました。
タカヒロ「いいかいチノずきん。途中で道草したらダメだぞ。最近、近所にココアオオカミが出ているらしい」
チノ「ココアオオカミ?」
タカヒロ「なんでも、可愛い女の子をいきなりモフモフするんだそうだ」
タカヒロ「ココアオオカミにモフモフされると幸せな気分になって、無理やり妹にされてしまう。話しかけられても無視しなきゃダメだぞ」
チノ「大丈夫です。ちゃんと行って来れます」
チノずきんちゃんは元気に歩き出しました。
シャロちゃんの家は、チノずきんちゃんの家から二十分ほど歩いたところにある甘味処、甘兎庵のお隣です。
その日はとても良いお天気で、チノずきんが石畳の赤いところをスキップして歩いていると、ココアオオカミさんが現れました。
ココア「こんにちは。青いずきんの可愛いチノずきんちゃん」
ココアオオカミさんは獣耳をぴこぴこ動かし、にっこりと笑みを浮かべて、チノずきんちゃんに話しかけました。
優しそうな笑顔に、チノずきんちゃんは思わず返事をしようとしましたが、お父さんに言われた事を思い出し、無視は得意なのでココアオオカミさんを無視しました。
ココア「ちょ、まっ、チノずきんちゃん待って~!」
チノずきんちゃんはスキップのまま逃げようとしましたが、偶然側にいたうさぎに気を取られ、街頭に頭をぶつけて気絶してしまいます。
チノ「うぐっ」バタッ
ココア「ちょっ、チノずきんちゃん大丈夫? ……ありゃ、気を失っちゃってる」
ココア「ん、これは……メロンパン。それにトマトジュースもあるよ。そういえば近所に住んでるシャロちゃんが風邪引いてるんだっけ」
ココア「……良いこと考えた♪ これでみーんなまとめて、私の妹だよ♪」
ココアオオカミさんは、気絶してしまったチノずきんをお隣の甘兎庵まで連れて行きました。
ココア「道端で寝てたら風邪引いちゃうもんね。放っておけないよ」
ココア「未来の妹だもの! お姉ちゃんとして当然だよ~」ヨシヨシ
チノ「んぅ……」
甘兎庵に辿り着いたココアオオカミさんは、チノずきんちゃんを地面にそっと寝かせ、扉を叩きました。
千夜「はぁい、どなた……ち、チノずきんちゃん! どうしたの!?」
千夜「って、寝てるだけだわ。何があったのかしら……とりあえず中で寝かせてあげましょう」
こうして、チノずきんちゃんが家の中へ運ばれたのを確認したココアオオカミさんは、開いた扉から中へ入り、戻ってきた千夜ちゃんをモフモフしてしまいました。
ココア「ふははー、千夜ちゃんを妹にしてやるぅー!」モフモフ
千夜「きゃー! ……ふあぁ……なんだかあったかくて……幸せ~」ホニャー
ココア「これで千夜ちゃんは私の妹だよ!」
千夜「ええ、ココアお姉ちゃん♪」
千夜ちゃんを無理やり自分の妹にしてしまったココアオオカミさんは、千夜ちゃんを連れてお隣のシャロちゃんの家へと向かいます。
トントン、と戸を叩くと、
シャロ「誰ー? 新聞の勧誘ならお断りよー」
と、シャロちゃんの声が聞こえました。それに返事をしたのは、ココアオオカミさんでなく千夜ちゃんです。
千夜「私よシャロちゃん。開けてー」
シャロ「なんだ千夜か……はいはーい」
ココアオオカミさんの妹になってしまった千夜ちゃんは、シャロちゃんに家の鍵を開けさせてしまいます。途端に、家の中に飛び込んだココアオオカミさんはシャロちゃんをモフモフしてしまいました。
ココア「そーれ、モフモフ~♪」
シャロ「えっ、オオカミ!? ちょっ、ダメ、風邪染っちゃ……あ、温かい……ぽえーん」ホニャー
ココア「これでシャロちゃんも私の妹だよねー」
シャロ「ココアお姉ちゃ~ん♪」スリスリ
こうして、まんまと千夜ちゃんとシャロちゃんを妹にしてしまったココアオオカミさんは、風邪を引いているシャロちゃんを寝かせ、チノずきんちゃんが起きてくるまで三人でお喋りを楽しみました。
ばばぬきで負けたココアオオカミさんが、ポカリを買いにスーパーとシャロちゃんの家を往復した頃、千夜ちゃんの家でチノずきんちゃんが目を覚ましました。
チノ「あれ……ここは」
チノ「……千夜さんの家? どうしてここで寝ていたんでしょうか」
チノ「そうだ。それよりシャロさんの家にお見舞いに行かないと」
チノずきんちゃんは側に置いてあったバスケットを手に取り、千夜ちゃんの家の人にお礼を言って、シャロちゃんの家へ向かいました。
その気配を感じ、ココアオオカミさんは千夜ちゃん、シャロちゃんと三人でベッドの中に隠れます。
シャロ「さ、さすがに狭いんだけど」
千夜「くっついてれば案外平気よ」
ココア「あったか~い♪」
チノずきんちゃんは、家の中で何が起きているかも知らず、シャロちゃんの家の戸をトントンと叩きます。
チノ「シャロさん、起きてますか」
シャロ「チノちゃんね。起きてるわよ。鍵も開いてるからどうぞ」
チノ「では、お邪魔します」
扉を開けたチノずきんちゃんの目に真っ先に飛び込んできたのは、異様に盛り上がったお布団でした。
チノ「し、シャロさん? 一体どうしたんですか。まるでお布団の中にあと二人は入っているような……」
シャロ「え、ええ。ちょっと……そういう病気なの」
チノ「た、大変じゃないですか! どんな重病ならこんなことになるんですか!?」
シャロ「ええっと……」
千夜「大丈夫。珍しい病気だけど、寝てれば治るからー」(裏声)
チノ「なんか声もちょっと変です。本当に大丈夫ですか……?」
ココア「大丈夫だよ。シャロちゃんはそんなに悪い病気じゃ無いよー」
チノ「……シャロちゃん? その声、も、もしかして……」
ココアオオカミさんの言葉に思わず後ずさりするチノずきんちゃんを、お布団から飛び出したシャロちゃんと千夜ちゃんが捕まえます。
チノ「ちょっ、どうしちゃったんですか二人とも!」
シャロ「さぁ、チノずきんちゃんも私たちと一緒にココアオオカミの妹になりましょう」
千夜「温かくてふわふわで、とっても気持ち良くなれるのよ~」
チノ「や、やめてください! 離してください! 二人とも正気に戻ってくださいっ!!」バタバタ
ココア「ふっふっふー。可愛い可愛いチノずきんちゃん。チノずきんちゃんも私の妹になるのだー!」
チノ「ひいぃ!」
ココアオオカミさんがチノずきんちゃんをモフモフしようとしたその時です。タンターン、と音がして、千夜ちゃんもシャロちゃんも、ココアオオカミさんもうずくまってしまいました。
千夜「痛っ!」
シャロ「はうあっ!」
ココア「きゃんっ!」
何が起きたのかと思えば、家の外にエアガンを構えた猟師のリゼちゃんがいました。
チノずきんちゃんのお父さんが、やはり心配になって、お父さんのお店でバイトしながら猟師をしているリゼちゃんをシャロちゃんの家へ向かわせていたのです。
リゼ「今だチノずきん! お前の持っているトマトジュースを使えば、ココアオオカミを倒せるはずだ!」
チノ「なるほど、トマトジュースを使えばいいんですね!」
チノちゃんはバスケットからトマトジュースを取り出すと、うずくまるココアオオカミさんの口を開けさせ、トマトジュースを流し込みました。
ココア「あがっ……むげっ……きゃうーーん!!」
苦手なトマトジュースを無理やり流し込まれたココアオオカミさんは、その味に思わず気絶してしまいました。
そして、ココアオオカミさんの妹にされていた二人は、正気を取り戻します。
千夜「あら……私は一体」
シャロ「げほっげほっ……なんかちょっと熱が上がった気がするわ」
チノずきんちゃんはシャロちゃんにお見舞いのメロンパンを渡し、後の看病を千夜ちゃんに任せ、そしてリゼちゃんと一緒に気絶したココアオオカミさんを家に連れて帰りました。
ココア「うう……ごめんなさい」
リゼ「一体なんで人を妹にするようなマネしているんだ」
ココア「私にはお姉ちゃんやお兄ちゃんはいても、妹がいなかったんです」
ココア「それで、可愛くて私を慕ってくれる妹が欲しくて……」
チノ「なんで病人のシャロさんまで巻き込んだりしたんですか」
ココア「シャロちゃんも千夜ちゃんも可愛かったし……何より、チノずきんちゃんが小さくて可愛くて、理想の妹だったから」
ココア「二人に手伝ってもらえれば、チノずきんちゃんをいっぱいモフモフできて、みんなまとめて妹にできるかなって……」
ココアオオカミさんは申し訳無さそうに話します。チノずきんちゃんは、諭すように言いました。
チノ「ココアオオカミさん。無理やり人を妹にしたところで、それは本当の妹とは言えません」
チノ「お姉ちゃんを想う気持ちだって、自分勝手に作り出したものでは意味がありません」
チノ「あなたがお姉ちゃんとして正しく振舞うことができれば、自然と本当の妹のように慕ってくれる心優しい人も出てくるはずです」
ココア「チノずきんちゃん……」
リゼ「全く……とりあえず、今後モフモフは一切禁止だな」
ココア「そ、そんな! ……うぅ……えぐっ。ごめんなさいぃ……」
ココアオオカミさんは告げられた罰に対する悲しみのあまり、思わず泣き出してしまいました。
ココアオオカミさんにとって、可愛いものをモフモフできないことは、それだけ辛いことだったのです。
チノ「……お父さん。確か最近、お店で新しく人を雇おうとか話してましたよね」
タカヒロ「ああ、確かにそうだが」
チノ「ココアオオカミさん。私たちのお店で働きませんか」
ココア「い、良いの……?」
チノ「はい。ココアオオカミさんを近くで監視する必要もありますし」
チノ「それに、働く中でココアオオカミさんがきちんと反省をして、お姉ちゃんらしくできていたなら……別にモフモフされても良いですし、お姉ちゃんと呼んであげるのも……その、やぶさかではありません」
ココア「!!」
リゼ「いいのか、それで」
チノ「ええ。私は倒れた時にココアオオカミさんに千夜さんの家まで運んでもらいました。……それがどんな理由であれ、恩返しはします」
チノ「しかしココアオオカミさん、お姉ちゃんと呼んでもらうには、お姉ちゃんらしくできていなければいけませんよ。できますか」
ココア「もちろん! 今日から頑張って、チノずきんちゃんの本当のお姉ちゃんを目指すよ!」
本当はちょっとココアオオカミさんにモフモフされてみたかったチノずきんちゃんは、自分の働くお店に彼女を誘いました。
そしてココアオオカミさんは、チノちゃんたちの働く喫茶店で、本当のお姉ちゃんとなるべく必死に頑張りました。
しばらくして、ココアオオカミさんはみんなからオオカミと呼ばれることもなくなり、ココアお姉ちゃん、とチノずきんちゃんから呼ばれるようになったということです。
おしまい
――千夜ちゃんとシャロちゃんに捕まり、無理やりモフモフされてしまうチノずきんちゃん。口では嫌がっていても、心も体もどんどん素直にココアオオカミさんの妹になっていきます
ココアオオカミさんの温かな体に身を委ね、ほのかな甘い香りを肺に満たすと、もう頭の中はお姉ちゃんのことでいっぱいでした。チノずきんちゃんの小さなお口が、ココアお姉ちゃん、と言葉を紡ぎます
もう誰にも邪魔なんてされない。みんな私の妹だよ。そう言ってにんまりとココアオオカミさんは笑みを浮かべます。かりそめの妹、その存在がやがて生み出す悲劇も知らずに――
青山ブルーマウンテン『シスター・コンプレックス』
とかいう展開も考えたけど、エロ同人みたいだなあと思いやめました。
このSSまとめへのコメント
乙
面白かった