アカギ「ククク……夢限少女か」 (46)

アカギ「ウィクロスいうカードゲームで勝ち続けることによって……どんな願いでも叶えられる存在になれるという都市伝説」

アカギ「いかなる願いも成就させる存在……夢限少女……!」

アカギ「ククク……面白い!」

アカギ「願いとやらに興味はないが……夢限少女候補であるセレクター」

アカギ「奴との勝負なら生を実感できる可能性がある」

アカギ「なら夢限少女を目指すのも悪くない……!」


こうしてアカギ決断……夢限少女になることを決断する……!


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アカギ「ウィクロスをする上でまず一番に必要になるのはカード……!」

アカギ「それを購入しなければセレクターバトルをすることができない」

アカギ「しかもただのカードではなく動くルリグのカード……それを入手する必要がある」


カードを買うだけなら誰にでもできる……が、それだけでは駄目!

夢限少女候補である存在、セレクターになるためには動くルリグを手に入れなければならない!

否、セレクターの資格がある者のみが動くルリグのカードを手に入れられるといった方が正確か

どちらにせよ……アカギにとっては非常に困難なこと


アカギ「それにしても……ククク、夢限『少女』ね」


そう、夢限少女……少女……すなわち……ガール……!

つまり夢限少女とは本来であれば女子しかなれない存在

男性であるアカギが夢限少女になれる可能性は限りなくゼロに近い……!

少なくともこれまで男が夢限少女になったという事実はない

アカギ「もしセレクターの資格がないのならオレはそれまでの男だったということ」

アカギ「その時は高層ビルから身投げでもして潔く死を選ぶだけ……!」


命懸け……敵のセレクターに会う前からアカギは自らの命を懸けた

動くルリグのカードを引くというギャンブル……それを実行すべくカード屋に向かう

ウィクロスのデッキ価格は定価の1000円に消費税の8%がついた1080円

しかし店によっては定価以下で販売している所もある


アカギ「ククク、ここの店はデッキが950円、パックは250円か」


定価より50円安い……本来であれば喜ぶべき価格

だが、しかし……


アカギ「ククク、デッキはともかく、パックはこの店じゃ買えねえな」

アカギ「奴らはレアカードの入ったパックを抜いている可能性がある……!」

TCG初心者でありながらアカギは既に見抜いていた

カード専門店の店員がレアカードを抜き取り転売しているであろうことを


アカギ「箱を開けてレアカードだけを抜き取り、残りを客に売る」

アカギ「人を嵌めることばかり考えてきた人間の発想……痩せた考え!」

アカギ「ここは駄目だな。こんな店じゃ動くルリグのカードは引けない」


結局、アカギは何も買うことなく店を後にする

アカギ「カード専門店は駄目……かといって親子連れが足を運ぶスーパーではウィクロスのカードは売ってない」

アカギ「となるとあそこか」


アカギが向かったのは今やオタクの街である某電気街の駅前にある巨大な電化製品店

カード専門店以外でウィクロスを取り扱っている店の一つ


アカギ「ククク、見つけた……ウィクロスのデッキ……!」

白……赤……青……黒……青……黒


アカギ「ふーん、緑は品切れか」


緑デッキは汎用性が高いカードが入っているため現在は品薄になっている


アカギ「でも関係ねーな、そんなこと」


アカギは求めない……誰もが欲しがるようなカードなど

アカギ「青デッキ、ブルーアプリ……!」

アカギ「これを購入だ……!」


青は最近出た緑のカードのせいで逆風に立たされている

アカギはそのことを知らないものの、現在は青が不利な環境であるということを直感で察していた

だからこそあえて青を選択……自ら不利な色を選ぶ……!

アカギ「来たぜ、ぬるりと……!」


自ら不利な状況に身を置き、命まで懸ける

そんなアカギの狂気が呼び寄せたか

引き当てる、動くルリグのカード……!


「こんにちは、セレク、ター?」

アカギ「成程、確かに動いている……面白い!」

「どういうこと?」


セレクターとルリグが出会った場合、通常はセレクターの側が困惑する

都市伝説で内容を知っていようが、実際に動くカードを見て戸惑わないはずがない

しかしアカギは戸惑うどころか、この状況を楽しんでいた

逆に困惑したのはルリグの方……それも当然のこと

夢限少女候補であるセレクターになれるのは本来であれば女のみ

男がセレクターになるなどあり得ない……!

圧倒的イレギュラー……!

ここに、この瞬間、世界初、宇宙初の男性セレクターが誕生した……!


アカギ「アカギ、赤木しげる」


まずは自己紹介……意思疎通を図る


「私は……ピルルク」


ピルルク、それがこのルリグの名前……かつては読者モデルの蒼井晶のカードであったが彼女がセレクターの資格を失ったのでフリーのルリグとなっていた

ピルルク「こんなことがあり得るの? どうして男性のセレクターが」

アカギ「ククク、そんなこともある」

ピルルク「……それで、あなたはウィクロスのルールを把握している?」

アカギ「いや、ぜんぜん」

ピルルク「そう。ならこれから説明を」

「あきらっきー、あれがセレクターで間違いないわけ?」

「みっるるーん! そうみたいね。何故か男だけど、動くカード持ってるし」

ピルルク「っ……! こんな時に、しかもあれは」

晶「あれぇ、どこかで見た顔だと思ったらピルルクじゃん」


登場……蒼井晶……!


晶「何? あんた男のルリグになっちゃったわけ。あはは、いい気味」

晶「あたしが以前あのクソ野郎に負ける羽目になったのは、あんたのスペックが低いからじゃん」

晶「今のあきらっきーはあきらぶりーに進化して、ルリグもグレードアップしたから」

晶「あきらぶりーは誰にも負けない! ウリスの役に立つことができるの」

晶「それじゃあ、さっそくしようか」

ピルルク「待って、まだ彼はウィクロスのルールを把握していない」

ピルルク「せめて、説明する時間を」

晶「駄目、駄目、勝負の世界は弱肉強食、ルールを知らないなんて甘えは通用しないの」

ピルルク「そんな勝手な――」

アカギ「ククク、その通り……!」

アカギ「戦場で銃の使い方が分からないと嘆くなど愚の骨頂」

アカギ「受けよう、その勝負」

こうして始まる……後に裏の夢限少女界を震撼せしめる赤木しげる……その初めてのバトルが


ウィクロスはまず互いのカードを5枚引くところからスタート

先攻、後攻を決めた後、手札を一度だけチェンジする権利が与えられる

不要なカードが2枚なら2枚チェンジ……3枚なら3枚チェンジ

全てが不要なカードであれば全部変えてもいいし、逆に不要なカードがなければノーチェンジでも問題はない

互いに引き直しを行った後、バトル開始……!

この時、アカギはカードを入れ替えライフクロスをセットする30秒程度の時間で、ピルルクからウィクロスのルールを簡単に説明されただけの状況

用語など一切知らない、ド素人以前の状態だったという


アカギ「先攻は一枚ドローだったな」

ピルルク「」コク


ウィクロスはターンごとにカードを2枚ドロー、すなわちカードを2枚引くが、先攻の1ターン目のみは一枚のみのドローとなる


アカギ「エナをチャージ、ピルルクをグロウ……!」


実戦の中でアカギは少しずつウィクロスのルールを覚えていく

まず第一に行うのはエナチャージ、エナいわゆるエネルギーのようなものを貯蔵……蓄える!

そしてグロウ……! ルリグのレベルを上げて自らの行動範囲を広げる

例えばレベル1、リミット2の場合はレベルが1のシグニ、女形モンスターを2体までしか出せないが、レベル2、リミット4になるとレベル2のシグニを1体、レベル1を2体出すことができる

簡単な足し算……リミットとはすなわち場に出せるシグニのレベルの合計値

このカードゲームの勝利条件は7枚のライフクロスを破壊して、プレイヤーにダイレクトアタックすることにある

プレイヤーはアーツと呼ばれる妨害手段やサーバントという防御手段を用いてライフクロスを守らなければならない


アカギ「ククク、先攻に攻撃は許されていない……!」

アカギ「オレはこれでターンを終了する」

晶「それじゃあ晶のターン! 2枚ドロー」


そして数ターン経過……!

バトル描写圧倒的キンクリ……!


アカギ ライフクロス7枚

晶 ライフクロス1枚

晶「な、何で、何でこんな不条理が」

アカギ「ククク」

晶「ちぃ、ミルルンでプレイヤーにダイレクトアタック」

アカギ「ノーガード、ライフバースト発動、『修復』……!」


ライフバースト……それはデッキに20枚のみ投入できる罠カード

ライフクロスが破壊された瞬間に効果を発揮する……!


晶「はぁ? 何だよ、それ! それで4度目の修復じゃねーか」


修復はライフクロスを張り直す緑のライフバースト


晶「ビギナーズラックかよ、ざけんな!」

ピルルク(違う、これはそんな次元の話じゃない)

ピルルク(そもそも青の初期デッキに修復なんて入ってない)

ピルルク(彼がやったこと、それはイカサマ。ポケットの中に隠し持っていたカードをライフクロスとすり替えた)


セレクター同士の戦いでイカサマは事実上不可能と言っても過言ではない

セレクターとルリグ、二人の目を掻い潜ってカードをすり替えるのは至難の業

見つかった時点でペナルティを受けることになる

ピルルク(でも彼は、赤木しげるはそれを平然と行っている)


ピルルクでさえ1回目と2回目は見えなかった……3回目でようやくその神技を視認する


ピルルク(初めてのセレクターバトルでイカサマをしようなんて発想が既に異常)

ピルルク(しかも、イカサマ用にきっちりと修復を4枚買っている)


ここに来る前にアカギは別のカードショップに寄り修復をシングルカードで購入した

シングルカードとはカード屋のショーケースに並んでいるカード……値段こそ張るものの欲しいカードを確実に手に入れることができる


アカギ(動くルリグが手に入れば、いつ他のセレクターがバトルを仕掛けてくるか分からない)

アカギ(ならばデッキを買う前に必要なカードを購入しておくのは当然のこと)

結果として完勝……パーフェクトゲーム……アカギはライフクロスを一枚も減らすことなく勝利した

否、実はまだ終わっていない


晶「……ろしてやる」

アカギ「ククク、ここからが本番、本当のセレクターバトル……!」

晶「殺してやるよ、アカギィィィィ!」


ナイフを取り出す晶……そうここまでの戦いは余興に過ぎない


晶「負けただなんてウリスに報告できるわけない、だったらお前を殺すしかないだろ!」


リアルファイト……命懸けのデスバトルが幕を開ける


アカギ「面白い……まさに狂気の沙汰!」

晶「死ね、クソ野郎!」


晶の先制攻撃……!

ナイフをアカギの喉に突き立てる……!


アカギ「ククク」


アカギはそれを左に移動して回避……!

次の瞬間、アカギのヤクザキックが炸裂……!


晶「遅せぇ!」


が、晶は後ろに飛びのいて蹴りを躱す!

晶「オラ、くらえ……!」


投擲……手に持っていたナイフを晶は投擲!

アカギの右肩に命中……!


晶「やった……!」

アカギ「ククク、どうかな」


肩に刺さったナイフをアカギは引き抜く!


晶「まさか、武器を奪うためにわざと攻撃を受けて」

アカギ「形成逆転だ……!」

地面を蹴って肉薄……! アカギ、晶に急接近!


晶「畜生ぉぉぉぉぉぉ……なんてな」

アカギ「っ……!」


鮮血が舞う……血を流したのはアカギ……!


晶「いつからナイフが一本だと思ってた、三下」

アカギ「……成程、そういうことか」


ブラフ……! 晶は2本目のナイフを隠し持っていた……!

今の攻撃でアカギが奪ったナイフは地面を滑り側の川に落ちていた

アカギ、再び武器を失う


晶「形勢逆転だな、クソ野郎」

アカギ「……どうかな」

アカギ「この状況、一見すればオレが不利に見えるが、案外そうでもない」

晶「何虚勢張ってんだよ、三下ァ!」


アカギにトドメを刺すべく、晶はナイフを片手に突進……!

対するアカギは……


晶「何だと!?」


ジャンプ……! 飛び上がった……!

必殺の飛び膝蹴り……!


晶「くそがァ……!」


ナイフを両手で握り直し、晶はそれを前に突き出す

鋭利に尖ったナイフはアカギの膝に突き刺さった


晶「勝った……! 私のか、何ィ……!」


が、ナイフが刺さったにも関わらず、アカギの勢いは衰えない……!

飛び膝蹴りが晶の顔面に命中……!

晶「うげぇぇぇぇぇぇぇ!!」

後方へと吹っ飛ばされた晶、そこにあったのは……川!

圧倒的、川……!


晶「お、覚えてろよ、アカギィィィィィィィィィィ!」


捨て台詞を吐きながら晶は川に落下した

ピルルク「……終わったの」

アカギ「カードゲームに負けたからといって暴力にはしる輩の末路はこんなもの」

アカギ「所詮は2流……凡夫にすぎない」

アカギ「それよりも気になるのはウリスという人物」

アカギ「そいつを探し出す……!」


蒼井晶との死闘すらアカギにとっては余興でしかなかった

未知ならセレクター、ウリスとの対決を望みアカギは行動を開始する

後に神域のセレクターと呼ばれる赤木しげるの伝説がここに幕を開けた

第一部、完

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