本の匂い。
私が物心ついた時から嗅いでるこの匂い。
その匂いを嗅ぐと、私はどんな時でも落ち着くことができた。
大好きな匂い。
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テストの前も。
体育大会の前も。
その匂いを嗅ぐだけで安心できた。
でも、今は違う。
その匂いを嗅ぐと、私の胸はまるで私の物では無いように早鐘を打つ。
あの人今日もいるのかな。
そう考えてしまうから。
最初はただ一言お礼が言いたくて。
『本取ってくれてありがとうございます』ってそれだけを言いたくて。
でもあなたが好きな本が私の好きな本で。
あなたのその本を読む仕草がたまらなく魅力的で。
だからかな。
私の恋愛小説にプロローグが書きこまれたのは。
予約してた本は返ってきてるかな。
新しい本はどんなのが入ってきてるかな。
そんなことしか考えてなかったのに。
遠目でその背中を見つける。
早鐘はいっそう早く打ちつける。
あっ、その本。私が前借りてたやつだ。
話しかけてみようかな、なんて。
出来もしない妄想話を頭の中で膨らます。
『ゆっくり、ゆっくりと私は彼に近づいていく。一歩踏み出すごとに…』
出来の悪いモノローグが頭に書かれる。
話しかける勇気なんて、これっぽっちも無いのに。
あぁ。
願わくばあなたがその貸し出しカードの『七尾百合子』の名前に気づいてくれますように。
私の恋愛小説がプロローグから一つでも章が移りますように。
今はただそれが私の精一杯だから。
短いのですいません。
大好きな『空想文学少女』で書いてみました。
百合子、ユニットCD入りおめでとう!
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