召喚士「出でよ!!可愛い獣娘!!」(1000)

事の始まりは狭苦しい一室からだった。

窓は天井近くの壁に開けられた小さな四角い穴だけ。そこから見える空の色は黒く染まっている。

空気が淀んだ部屋。灯りは床に並べられた蝋燭の小さな炎だけ。

仄かな灯火の下には星が描かれている。

薄汚れた長いコートを着た男はその絵の外側に立ち、黙していた。

置物と見紛うほど男は身動ぎ一つしない。ただ時折、彼の双眸だけが暗闇の中で小さく動く。

そろそろ時間か、と呟く声が室内に響いた。

風が吹くことのない場所で、蝋燭の火が揺れる。

男はゆっくりとコートの中に隠れていた右腕を動かし、描かれた星へ手のひらを翳す。

数年の歳月をかけて練り上げた言の葉を告げる。

するとただの絵だったそれは常闇に輝く星のように光を帯びた。

淡い光は瞬く間に光度を増し、部屋を白色に染め上げる。

数刻の後、光明は霧散し、男は眩しさのあまり閉じていた瞼を持ち上げる。

「ここはどこ?」と獣が唸る。

光の中から現れたのは剛毅な四足を持ち、黄金の鬣を揺らす猛獣と呼ぶに相応しい者だった。

男は膝から崩れ落ちた。僅かに呻き声にも似た嘆きも漏れていた。

部屋の中央に毅然とした態度でいる獣は、不思議そうに薄暗闇になった自身の居場所を見渡した。

先ほどまでいた大平原とは違う。狭く、劣悪な臭いが染み付いた場所。獣にとってここは最も唾棄すべきところなのだと察した。

瞬時に変化した自身の環境。見えざる外敵に神経を研ぎ澄まさなければならない。

そうすること数秒、獣はふと肩の力を抜いた。こんな嫌悪しか抱くことのないところに来てしまったのは不幸でしかない。

とはいえ獣にとって一つだけ幸運なことがあった。ここには自分に害を為す者はいない。

異なる場所に来て敵がいないのは素直に喜ぶべきだろう。未知の相手に自身の牙がどれほど役に立つのか測ることはできないからだ。

獣はその場に腰を下ろした。視線を落とすと左前足の毛並みが気になったので、豪放なその舌で毛づくろいを始めた。

また、そうすることで獣は気分が落ち着いていくのを感じた。

すると、今まで気づかなかった存在が目に入った。その者は卑小で、眺めるにも値しないような者だった。

獣は卑下するような目を男に向ける。

「ここはどこですか?」

そう訊ねるも、男は蹲ったまま何も答えない。

獣は右前足を男の背中に乗せ、揺すってみた。それでも反応はなく、呻いているだけだった。

「なんて失礼なヤツだ」と獣は見限り、体を伏せた。

しばらくすると寝息が聞こえてきた。

男は顔を上げる。やはり部屋にいるのは獣。人型をした獣ではなく、歴とした野獣である。

豪腕の四足に黄金の毛並み、湿っているからなのか少し光沢がある鼻頭。

そしてなにより、猛獣特有の巨大な口。人の腕など簡単に食いちぎることができる牙がその中に納められているのだろう。

この狭小な部屋では到底飼育など望めるはずもない獣類がここにいる。

「こんなはずでなかった」

男は奥歯をかみ締め、表情を恨事によって歪ませる。

すぐに返還しようと決意し、男は立ち上がった。

召喚者にはその権限と責任がある。呼んだ以上はいつか返さなくてはならない。

それが召喚士の掟。

先ほどと同様に右手のひらを翳し、呪文を唱える。

何度も繰り返したこと。失敗することはまずない。呪文を間違えることなど考えられない。

なのに、眼前の獣は退屈だといわんばかりに大口を開けて、欠伸をした。思ったとおり、大木であろうと穿てるほどの刃が生えている。

男は狼狽する。何故、この獣を返すことができないのか。失敗なら失敗なりの手ごたえがあってもいいはず。

すべてが空を切った。何もないところを殴ったに等しいほど、彼の返還術は何の反応も示さなかった。

召喚士「………」

……「……zzz」

召喚士「何故なんだ……」

召喚士「……間違える筈無いのに」

召喚士「………」

召喚士「もう一度だ……」

召喚士「幻想の彼方より来たりし者よ……うつし世から幻想の地へいざ送り出さん!」ババッ!

シーン……

召喚士「………」

召喚士「グゥ……いったい……」

召喚士「………」

……「……グワゥ……zzz」

召喚士「駄目だ……返還術が発動しないなんて……」

召喚士「……こんな者……喚んだつもりは無かったのに」

召喚士「………」

召喚士「そうだ……こいつはほっおってもう一度喚ぶか……」

召喚士「………」

召喚士「常世の声を聞こえし幻想の者よ……その姿現さん!」ババッ!

シーン……

召喚士「……あれ?」

召喚士「召喚陣も反応しなくなってる……」

召喚士「何故……」

……「……zzz」

召喚士「………」



召喚士「………」

……「悪足掻きは終ったか?」

召喚士「………」

……「ふん……」

召喚士「……喚んでない」

……「ああ?」

召喚士「お前なんか喚んでいないのに何故ここにいるんだッ!」

……「知るか」

召喚士「くっ……帰れよッ!」

……「……還せばいいだろ」

召喚士「還せないんだよ……何故なんだよ……クソッ!」

……「……ならば貴様は死ぬな」

召喚士「………」

……「聞こえなかったか?私を還せぬようなら死ぬぞ?」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「は?意味がわからない……」

……「……死ぬと言うのはこの世に魂を留めておけぬ事を言う」

召喚士「そこじゃ無いッ!何故俺が死ななければいけないんだッ!」

……「……お前は召喚者なのだろ?」

召喚士「そうだ……それが……」

……「……召喚した者を留めておくのに必用な物は?」

召喚士「魔力だろ……それぐらい知ってる!」

……「ならば……私を召喚し、還せぬならどうなる?」

召喚士「魔力が尽きる……だから?」

……「魔力尽きた後は?」

召喚士「……知らない」

……「そんな事も知らずに召喚など……まぁいい……」

召喚士「………」

……「魔力が無いなら代わりの物を消費し続ける事になるな」

召喚士「……代わりの物?」

……「貴様の命……」

召喚士「………」

……「命と言うのは寿命など

召喚士「余計な説明はいい……」

……「そうか……」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「……どうすれば……どうすればいいんだッ!」

……「知らぬ」

召喚士「………」



召喚士「………」

……「人間というのは面白いものだな。足掻き諦めた時、そのような顔をする」

召喚士「……こんな筈じゃ……無かったのに」

……「………」

召喚士「お前なんか……喚んで無いのに……」

……「こうしている間にも無駄に魔力を消費しているな」

召喚士「………」

……「クククッ……」

召喚士「悪魔め……笑うな……」

……「悪魔か……そうかもしれぬな。天使を五匹程喰ろうてやったからな」

召喚士「………」

……「グワッフゥ……今一度眠りに……」

召喚士「……待てッ!」

……「……なんだ?」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「俺は……どうすれば助かる……?」

……「私を還せばいい」

召喚士「それは聞いたッ!……もっと別の方法は無いかと聞いているんだッ!」

……「………」

召喚士「………」

……「……私と契約し使役するか?」

召喚士「……嫌だ」

……「ならば死ね」

召喚士「………」

……「私は貴様がこのまま死のうが契約しようが……どちらでも構わぬが」

召喚士 (こんな奴と契約なんて……)

……「………」

召喚士「契約するのなら……何か対価が必用なんだろ……」

……「そうだな」

召喚士 (こいつ……人間と喋れるし上級の化物に違いない……)

……「………」

召喚士 (きっと……とんでもない物を選んでくるぞ……)

……「対価か……」

召喚士「………」

……「………」



……「どうする?」

召喚士「せめて対価が何なのか教えてくれ……」

……「……貴様の左腕ではどうだ?」

召喚士「………」

……「良い条件だと思うが」

召喚士 (左腕……だけ?確かに死ぬよりかはましだけど……)

……「さぁ……死か左腕か選べ」

召喚士「………」

……「……早くしろ」

召喚士「……?」

……「………」

召喚士 (早くしろって何だ?……何かおかしい)

……「………」

召喚士「………」



召喚士 (こいつ……何か隠してるな……)

……「どうした?」

召喚士「………」

……「………」

召喚士「……決めた」

……「そうか。ならぱ私の名を……」

召喚士「このままでいい」

……「……あ?」

召喚士「このまま……俺の魔力も命も尽きるまで付き合ってくれ」

……「……ふざけているのか?」

召喚士「別に……お前とは契約したくないと思っただけ」

……「………」

召喚士「………」

…… (この破格の条件で何が不満なのだッ!死と左腕……比べるまでも無いだろうが人間ッ!)

召喚士「……お腹空いたなぁ」

……「くっ……おい、真面目考えたのか?」

召喚士「………」

……「何か答えろ……」

召喚士「んー?いいだろどっちだっていいだろ?お前に損は無いんだから」

……「そ、そうだが……」

召喚士「………」

……「グルルゥ……」

召喚士「脅しか?……死ぬ人間にそれは無駄だろ」

……「……ガァッ!」

召喚士 (やっぱり……何か隠してる……)

……「………」

召喚士「……そんなに契約して欲しいのか?」

……「………」

召喚士「お前……上級の魔物だよな?それが俺ごときに使役されてかまわないと……」

……「話してやる……その代わり契約しろ」

召喚士「………」

……「……なんだ?」

召喚士「それが物を頼む態度かよ……なぁ?」

……「ググッ……人間……」

召喚士「ふふふ……どうせ俺が死ぬって言うのも嘘なんだろ?」

……「それは本当だ」

召喚士「………」



召喚士「……で、天使を喰って追われていると」

……「そうだ。元々あちらが悪いのだが……」

召喚士「へぇ……」

……「天使め……私を使い勇者候補を抹殺しようなどと……」

召喚士「……勇者候補?」

……「ああ……女神が選定した勇者候補だな。訳あってその事は流れてしまったけどな」

召喚士「……それは天使を喰ったのと関係ある?」

……「まぁな。天界を

召喚士「それ以上はいいや……聞きたく無い」

……「そうか?私の武勇伝に加わりそうなエピソードだぞ?」

召喚士「………」

……「だから、私を匿うのに契約しろ」

召喚士「そんな話聞いて契約なんて出来るか……」

……「何故だッ!」

召喚士「俺まで追われる事になるんじゃないのか……?」

……「……そのような事は無い」

召喚士「ちゃんとこっち見て言えよ……」

……「………」

召喚士「………」

……「大丈夫だ。その為にお前の左腕を代償とするのだからな」

召喚士「意味がわからない……」

……「……お前本当に召喚者か?魔力の事といい……物を知らな過ぎでは無いのか」

召喚士「それは……うん……あれだよ」

……「……?」

召喚士「いいだろ別に……それよりもだ!……お前と契約した場合俺の左腕はどうなるんだ?」

……「……特に変わった事はしない。私が匿える……もとい、宿る召喚器を装着してもらうだけだ」

召喚士「………」

……「はぁ……召喚器と言うのはだな、悠久の源を再現し幻想世界の一部を武具に昇華させたクドクドクド……」

召喚士「ま、まて!」

……「……なんだ?」

召喚士「もっと簡単に……お願いします……」

……「………」

召喚士「ごめんな……」

……「いい……その程度知識で召喚しようなど……」

召喚士「………」

……「ようは私の住みかをお前の左腕に作るだけだ」

召喚士「……それで俺にどんな影響が出る?」

……「安心していい。他の召喚をい出来なくなるだけだ」

召喚士「………」

……「私を還せる程の魔力を有しているのならば話は別だが」

召喚士「あああぁぁ……俺の長年の努力が……」

……「………」

召喚士「こんな事で無駄になるなんて……」

……「無駄とは失礼だろ……」

召喚士「………」

……「まぁいい……召喚器とはこんな物だ。お前の左腕には然程干渉しなから心配無用だ」

召喚士「………」



……「さぁ私と契約を!グズグズしていると追っ手に気付かれてしまう……?」

召喚士「………」ズーン……

……「……時が立ち魔力も蓄積すればまた召喚も出来るようになる。元気を出せ」

召喚士「本当か?」

……「………」

召喚士「……黙るなよ」

……「安心しろ……大丈夫?だ……きっと多分……」

召喚士「確証なんて無いんじゃないか……」

……「こればっかりはお前次第だからな」

召喚士「最初っからそう言え……」

……「………」

召喚士「ほら……契約してやるから名前」

……「あ……ああ、そうだな」

召喚士「………」

……「私と契約しせし者よ……幻想の名をうつし世で語れ……」

召喚士「幻想の地に根を張る者よ!我にその名を教えよ!」

……「我が名は……ネメア!」

召喚士「……幻想と常世!今、ネメアと契約したり!」

ネメア、召喚士「………」

召喚士「……これでいいんだよな?」

ネメア「完了だ」

召喚士「そっか……意外と呆気ないんだな……」

ネメア「そうだな……」

召喚士「それにしても……ネメアって可愛らしい名前だな」

ネメア「………」



ネメア (こいつ……私の名前も知らんのか……)

召喚士「で?召喚器ってのはどうなるんだ?」

ネメア「説明するより見せた方が早いだろ」

召喚士「………」

ネメア「行くぞ?」

バシュンッ!……カキンッ!

召喚士「おお……いや、手甲になるのか……」

ネメア「そうだ。この状態ならば追っ手に悟られる事も無い」

召喚士「………」

ネメア「……不満か?」

召喚士「いや……そうじゃ無い」

ネメア「……?」

召喚士 (超格好いい……なんてこいつに言ったら調子に乗りそうだからな……)



召喚士「……なぁちょっといいか?」

ネメア「なんだ?」

召喚士「この召喚陣でお前みたいに偉そうな魔物を喚び出す事なんて出来るのか?」

ネメア「……はぁ……本当にお前は無知なのだな」

召喚士「無知で悪かったな……」

ネメア「何の為に召喚などしておるのかわからんが、お前は召喚について知識を身に付けた方がいい」

召喚士「………」

ネメア「そんなんでは早死にするぞ?」

召喚士「………」

ネメア「召喚獣や私みたいに契約して使役する時はどうするのだ?」

召喚士「それは……一匹の召喚獣を召喚するだけだったから覚えなかったんだ」

ネメア「ふむ……」

召喚士「……その召喚獣を喚んだらそれ以降は召喚もしないつもりだった」

ネメア「なるほど……」

召喚士「………」

ネメア「ならば私を使役するのだから色々と覚えなければな!」

召喚士「……ぇぇぇ……ぃぃょ」

ネメア「そんな小声で拒否しても駄目だ!お前と私の為だ!しっかり覚えろよ!」

召喚士「………」

ネメア「返事ッ!」

召喚士「あい……」

ネメア「……ったく。このような人間に使役される事になろうとはな!」

召喚士「………」



ネメア「まずは……あの召喚陣だったな」

召喚士「そうだね……」

ネメア「結論から言うと無理だ」

召喚士「ならなんでお前いるんだよ……」

ネメア「それは割り込んだからだな」

召喚士「……は?」

ネメア「いやぁ追っ手に追われている所に偶然召喚陣が現れて!」

召喚士「………」

ネメア「獣の小娘には悪いと思ったが私も危なかったし割り込まらせて貰った」

召喚士「………」

ネメア「本当、危ないところであった。うん」

召喚士「………」

ネメア「どうした?」

召喚士「お前……」

ネメア「……?」

召喚士「ふざけんなよッ!」

ネメア「ふざけてなどいない」

召喚士「俺の召喚成功していたんじゃないかッ!……ぐぁぁぁ」

ネメア「誰も失敗したなど言っていないだろ。それに……」

召喚士「うわぁぁぁ!こんな……こんな事ってえぇぇぇ!」

ネメア「……おい?」

召喚士「この召喚の為に何年費やしたと思ってるんだぁぁッ!」

ネメア「………」

召喚士「あの娘に会う為だけに頑張ってきたのに……こんな事って……」

ネメア「……は?」

召喚士「うぐぅ……うぅ……」

ネメア「……おい、まさかあの獣の小娘を喚び寄せるだけの為に召喚などしたのか?」

召喚士「そうだよッ!……おぉぅ」

ネメア「………」

召喚士「……うぅ」

ネメア「く、くだらぬ……」

召喚士「下らないとはなんだこの野郎ッ!」

ネメア「ただ会うだけの召喚など愚の骨頂ではないか……」

召喚士「逢うだけじゃないッ!ずっと側に……だな……」

ネメア「………」

召喚士「……その……何て言うか」

ネメア「………」

召喚士「一目惚れだったんだよ……」

ネメア「………」

召喚士「数年前に一度見た姿でもうな……絶対召喚してやろうって……」

ネメア「人間と言うのは下らぬ事に心血を注ぐというが……誠だったのだな……」

召喚士「下らなく無いッ!俺は……大真面目だったんだよッ!」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「……わからぬ。あの獣の小娘を召喚するより私を召喚した事の方が価値があるのではないのか?」

召喚士「……価値なんて無い」

ネメア「グガッ……」

召喚士「………」

ネメア「………」

ーー

召喚士「………」

ネメア「おい……」

召喚士「喋りかけるな……」

ネメア「……ぐぬぬ」

召喚士「………」

ネメア「……ふむ」

召喚士「………」

ネメア「……折入って頼みたい事があるのだが聞いてくれぬか?」

召喚士「………」

ネメア「まぁ……そのままでいい」

召喚士「………」

ネメア「私は天使に操られ勇者候補を抹殺しそうになった。これは覚えているな?」

召喚士「………」

ネメア「そしてこの世界に放たれたのだが……それを阻止してくれた者がいた」

召喚士「………」

ネメア「……地獄の君主セーレ。この者が我を忘れ暴走していた私を止めてくれた」

召喚士「……?」

ネメア「うむ、ここで疑問が沸くだろ?」

召喚士「……地獄の君主って言うくらいだから……悪魔だよな?」

ネメア「そうだ」

召喚士「………」

ネメア「この世界には……簡単に来れぬ程の上級の悪魔だ」

召喚士「そんなもんが何故……」

ネメア「……召喚されたからだ」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「へ、へぇ……世の中には凄い奴もいるんだな……」

ネメア「……上級の悪魔を召喚しても尽きぬ魔力、暴走した私を逸早く察知し対処出来る力……本当に凄い奴だと思う」

召喚士「………」

ネメア「で……頼みと言うのはだな……」

召喚士「嫌だ……」

ネメア「ほう……話も聞かずに断るか」

召喚士「……そいつに会いに行く!とか言うんだろ?」

ネメア「……そうだ」

召喚士「なんで俺がお前何かの為に……」

ネメア「悪い話では無いと思うがな……」

召喚士「………」

ネメア「恐らく召喚術の使い手だろうが……それ程の力を持った奴だ」

召喚士「………」

ネメア「お前が召喚しようとしていた獣の小娘を召喚するなど造作も無い事だと思わぬか?」

召喚士「………」

ネメア「ああ……もしかしたら喚び寄せるだけでなく!……獣の小娘と契約を結べる手助けもしてくれるかもしれんな!」

召喚士「………」

ネメア「だが……お前が嫌なら!……私も無理強いする事は出来んな」

召喚士「……ちょっと

ネメア「いや!本当に無理をしなくていいから!私が!諦めればいいだけの事だ!」

召喚士「……いや

ネメア「ああぁ!残念だ!本当残念だ!行きたくないなら仕方が無いな!」

召喚士「一緒に行かせて下さい……」

ネメア「うむ」



召喚士「……大丈夫だよな?」

ネメア「大丈夫!大丈夫!」

召喚士「……ところでさ、何でそいつに会いたいの?」

ネメア「礼を言いたい」

召喚士「………」

ネメア「私を止め、天使への仕返しまで手伝ってくれたのだからな」

召喚士「ふぅん……」

ネメア「………」

召喚士「どんな奴なんだろうな」

ネメア「お前より立派なのは確かだ」

召喚士「………」

ネメア「自分の魔力の増減がわからぬような奴よりかはな」

召喚士「どういう事だ?」

ネメア「……魔力減っているか?」

召喚士「ん……わかんない……」

ネメア「わからぬと……それは基本ではないか……なら教えてやるがお前の魔力は殆んど減っていない」

召喚士「……そう?」

ネメア「………」

召喚士「……ん?なら俺は死なないんじゃ……」

ネメア「………」

召喚士「……騙したのか」

ネメア「騙してなどいない。私を使役しているのだ、それなりには減っている」

召喚士「………」

ネメア「このままではいずれ魔力が枯渇して死ぬな」

召喚士「それ……どうにかならないの?」

ネメア「残念ながら……ならぬ」

召喚士「俺の魔力は後どれぐらいもちそうなんだ……?」ゴクッ

ネメア「そうだな……早くて三百年程で枯渇するな……」

召喚士「………」

ネメア「すまぬな……」

召喚士「い、いや気にしなくていいよ……」

ネメア「………」

召喚士 (これは……笑わせようとしているのか?)

ネメア「………」

召喚士「………」



召喚士「そいつはどこにいるかわかってるんだよな?」

ネメア「大体はな。地図はあるか?」

召喚士「……待ってて」ガサゴソ……

ネメア「………」

召喚士「確かこの辺に……」

ネメア「良くもまぁ……このような劣悪な環境で暮らせるものだな……」

召喚士「うるさい……」

ネメア「………」

召喚士「ん……昔買ったのが……」

ネメア「……まだか?」

召喚士「……あった!」

ネメア「………」

召喚士「でぇ……ここが今いる場所だけど」

ネメア「ならばこの辺りだな」

召喚士「………」

ネメア「どうした?」

召喚士「……遠くないか?」

ネメア「そのような事は無いだろ」

召喚士「………」

ネメア「ほら、お前の掌分だけだろ?」

召喚士「あのさ……縮尺って言葉知ってる?」

ネメア「馬鹿にするな。そのぐらい知っている」

召喚士「……どうやって行くんだ?」

ネメア「馬なり歩きなり好きな方法で行けばいいだろ」

召喚士「………」

ネメア「まぁ、私の脚なら二日で着くな」

召喚士「俺の脚だと二年はかかるよ……」

ネメア「ならばそれでもいい」

召喚士「良く無いだろ……まだ色々問題あるぞ?」

ネメア「ふむ、例えば?」

召喚士「路銀とかさ……」

ネメア「蓄えは無いのか?」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「……あったら聞いてない」

ネメア「なるほど……」

召喚士「どうするのさ……」

ネメア「な、何とかなる!さあ!準備をはじめろ!」

召喚士 (最悪……この手甲売れば……)



召喚士「………」ブツブツ……

ネメア「……?」

召喚士「……常世の声を聞こえし幻想の者よ……その姿現さん! 」

シーン……

召喚士「やっぱり駄目か……」

ネメア「………」

召喚士「お前に魔力減って無いって言われたから出来るかなって思っただけ」

ネメア「なるほど……」

召喚士「はぁ……ここで出てくれれば行かないで済むのに……」

ネメア「残念だったな」

召喚士「……じゃあ行くか」

ネメア「うむ」

ーーー

召喚士「さて……取り合えず街まで来てみたが……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「……どうするか」

ネメア「何か人より優れている事は無いのか?」

召喚士「ん……」

ネメア「………」

召喚士「特には……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「仕方が無い……少し手伝ってやろう……」

召喚士「どうするんだ?」

ネメア「………」

召喚士「……?」

ネメア「聴け皆の者ぉッ!私を倒せた者には金貨一枚を進呈しようッ!!!」

召喚士「おおおおいッ!」

ザワザワ……

ネメア「参加料は銅貨二枚だッ!腕に自信がある者はいないかぁッ!!!」

召喚士「むむ無理だよ!」

ネメア「いいから……」

ザワザワ……ザワザワ……

召喚士「おおおおい!何かいっぱい集まって来ちゃったぞ!」

ネメア「………」



召喚士「あわわ……」

ネメア「………」

剣士「おい!」

ネメア「ハイ、なんでしょ?」

召喚士「ひ、人の声真似るなぁ!」

剣士「……?本当にお前ぶっ倒したら金貨貰えんのか?」

ネメア「ホントですよー」

召喚士「あぁぁ……」

剣士「……なら」ポイッ

ネメア「………」

剣士「武器の使用は?」

ネメア「イイデスよー」

剣士「……わかった」ザッ……

ネメア「おい……左腕を突き出せ……」コソコソ

召喚士「なな何言ってるんだ!あんなんに勝てるか!」コソコソ

ネメア「……いいから」コソコソ

召喚士「無理無理無理!あいつの腕俺の腿より太いんだぞ!」コソコソ

剣士「………」ザザッ……

ネメア「早くしないと本当に死ぬぞ?」コソコソ

召喚士「あわわわわわ……」

ネメア (うむ、これでいいな)

剣士 (左腕を突き出しただけ?……こいつこの身なりで拳法家か?)

ネメア「ハヤクこいボケー」

剣士「……ぐッ!」

ネメア「キンニクだるまーキンニクだるまー」

剣士「弱っちい見かけだから手加減してやろうと思ったが……骨一本覚悟しろよ……」

ネメア「おまえモナー」

剣士「………」ジリ……

ネメア「………」

召喚士「はわわわ……」

剣士「デエリャァァァアッ!」

召喚士 (し、死んだぁぁッ!)

ズキャャァッ!ズザザザ………

ネメア「……ふっ」

召喚士「………?」

ワアアアァァ……ッ!

召喚士「……え?」

ニイチャンスゲエナッ!フットンダゼッ!

召喚士「ッ?ッ?」キョロキョロ

剣士「グカァ……ゲホッゲホッ!……ハァハァ……」

召喚士「な、何これ?」

剣士 (なんだ今のは……左腕から白いモヤが出て来たと思ったら吹っ飛ばされていた……)

ネメア「………」

召喚士「おい!何が起きた!?」

ネメア「少しばかり私の脚で撫でてやっただけだ」

召喚士「………」

ネメア「さぁどんどん行くか」

召喚士「いやもういいって

ネメア「次はいないかぁッ!私を倒せた者には金貨三十枚だッ!!!」

召喚士「さささ三十ッ!!!」

ワアアアァァアアッ!

ーー

召喚士「………」

ネメア「四十人程吹っ飛ばしておいたが、それで足りそうだろうか?」

召喚士「う、うん……」

ネメア「そうか」

召喚士「………」

ネメア「……なんだ浮かない顔して」

召喚士「あれだけ死の瀬戸際に立たされればこうなるよ……」

ネメア「死んで無いだからいいだろうに」

召喚士「………」

ネメア「最近の人間は脆くていかんな」

召喚士「………」

ネメア「最初の人間以外触ってもいないのに吹き飛びおって……情けない……」

召喚士「………」

ネメア「昔は三日三晩人間と戦い続けたものなんだけどな」

召喚士 (柔らかいベットで横になりたい……)

ネメア「……凄かったんだぞ?もう首を締め上げられてな」

召喚士 (そっと夢の中へ行きたい……)

ネメア「おい!聞いているのか!」

召喚士「………」

ネメア「………」

剣士「……探したぜぇ」

召喚士「………」

ネメア「………」

剣士「……?」

ネメア (こいつ現実逃避しだしたな……)

剣士「……敗者にかける言葉は無いって訳か」

ネメア「スマン考え事シテター」

剣士「そうかい……」

ネメア「ナニかようかー」

剣士「……あの俺を吹っ飛ばした技は何なのか教えてくれ!」

ネメア「……オシエン!」

剣士「………」

ネメア (何やらめんどくさい事になりそうだな……適当にあしらっておくか……)

剣士「何となく見当は付いているんだ……あの技は東方の山に住むとういう仙人の技なんだろ?」

ネメア「………」

剣士「………」

ネメア「ソウダー」

剣士「やはり……」

ネメア「………」

召喚士「ふ……ふふふ……ふふふ」

剣士「……何がおかしい?」

ネメア「イ、イヤ!……ヨクゾ見抜いたートナ!」

剣士「まぁな……伊達に死線はくぐり抜けてない」

ネメア (馬鹿がッ!)

剣士「……あんたそんな身なりだが凄い奴なんだろ?」

ネメア「凄くはナイゾー」

剣士「謙遜しなさんなって……」

召喚士「ふふふ……もう少しで空も飛べそうだ……」

ネメア、剣士「なッ!」

剣士「あんた……そんなに凄い達人だったのか……」

ネメア「アア、ソレハあれだ……例えだー」

剣士「ほう……空を舞うような何か……だと」

ネメア「ソウダー」

剣士「なるほど……」

ネメア (ぐぬぬ……こいつ……)

剣士「………」

召喚士「あはは……付いて来いよ……」

剣士「ッ!!!」

ネメア「?」

剣士「まさか……読心術まで身に付けているとはな……恐れ入った……」

ネメア (何を言っておるのだ……こやつは……)

剣士「決めた!」

ーー

召喚士、ネメア「………」

剣士「ふふん!」

召喚士「ねぇ……何でこの人いるの……」

ネメア「……お前が幻想世界へ旅立っている時に来た」

召喚士「………」

ネメア「剣士よーチョット離れてくれるかー」

剣士「そうだな!弟子は三寸離れてって言うもんな!」

ネメア「それを言うなら三尺だ……」

召喚士「……弟子?」

ネメア「弟子だな」

召喚士「誰が?」

ネメア「筋肉が」

召喚士「……お前の?」

ネメア「違うな。お前だ」

召喚士「意味がわからないんだけど……」

ネメア「お前があれを弟子にすると言ったんだ。仕方が無いな」

召喚士「いいい言って無いよッ!」

ネメア「言ったんだ!……全く余計な事をしてくれたものだ」

召喚士「断ってよッ!無理だよッ!筋肉だよッ!」

ネメア「私はもう知らん。自分でなんとかしろ」

召喚士「………」

ネメア「ああ、それとな」

召喚士「……まだ何かあるの?」

ネメア「あの筋肉に、お前が凡人以下だという事は絶対悟られるな」

召喚士「何それ……」

ネメア「少しは否定をしろ……どうやらあの筋肉はお前を何かの達人と勘違いをしている」

召喚士「………」

ネメア「だから気を付けろよ」

召喚士「あのさ……もしも弱いって悟られたらどうなるの?」

ネメア「怒り狂うであろうな……私は助けんが」

召喚士「………」

ネメア「骨一本持っていかれるのは確実だな……私は助けんが」

召喚士「………」

ネメア「最悪、致命傷となる骨をやられるであろうな……私は助けんが」

召喚士「致命傷って……例えば?」

ネメア「首の骨をこうコキッとな……私は助けんが」

召喚士「………」サー……

ネメア「はぁ……首の骨を折られたら人間は頚椎損

召喚士「……そんなの説明しなくてもいいから」

ネメア「そうか……私は助けんぞ」

召喚士「どうすれば………」

剣士「師匠よ!これから飲みに行かねえか?」

召喚士「ええ遠慮しときます!」

剣士「そう言わずに!師弟になった記念って事でさ!」

召喚士「いいです!本当にいいですから」

剣士「そうか!じゃあ行くぜぇ!」

召喚士「そっちの良いですじゃ無いよッ!」

ーー

剣士「乾杯ッ!」

召喚士「………」

剣士「どうしたんだよ師匠!そんな暗い顔する場所じゃねえだろ!」

召喚士「そうですね……」

剣士「かぁー!なんだよその返事は!」

召喚士「ごめんなさい……」

剣士「人が嬉しくてたまんねえって思ってるのにそれは無いだろ!」

召喚士「……嬉しいの?」

剣士「そうだぁッ!あんたに付いて行けば俺はもっと強くなれる!」

召喚士「………」

剣士「こんなに嬉しい事は無いんだぜッ!!!」

召喚士「そうなんだ……」

ネメア「………」

剣士「その事も兼ねてだ!だから飲み明かそうぜ!」

召喚士「お、おう……」

剣士「改めて乾杯ッ!」

召喚士「乾杯……」

剣士「ウグッウグッウグッ……うめーっ!な、師匠よ!」

召喚士「あのさ……その師匠って言うのやめようよ」

剣士「なんでぇぇ!」

召喚士「俺はそんなに偉い人間じゃ無いしさ……召喚士でいいよ」

剣士「そうかい?じゃあ召喚士よろしくな!」

召喚士「うん……」



剣士「大だ!大行ってくるッ!」

召喚士「そんな事大声で言わないでいいから……」

ネメア「………」

召喚士「はぁ……」

ネメア「お前……あの者を受け入れたみたいだが良いのか?」

召喚士「うん……」

ネメア「そうか」

召喚士「あんなに喜んでるのにさ……言えないよ。俺は弱いからなんて……」

ネメア「………」

召喚士「……だからさ時々助けてよ」

ネメア「助けんと言った筈だ」

召喚士「契約者として命じても?」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「少しだけだぞ……」

召喚士「うん……ありがとうネメア」

ネメア「全く……私を当てにするな……」

召喚士「ごめん……」

ネメア「………」

召喚士「………」

……「あの……ここ宜しいでしょうか?」

召喚士「え?」

……「………」たゆん

召喚士「どどどどうぞッ!凄い宜しいですッ!」

……「では失礼して……」たゆん

召喚士「どういたしましたお嬢さん!」

……「昼間の……あれを見ましてお話をお伺いしたいと思いまして」

召喚士「ふむ!なるほどなるほど!」

ネメア「………」

……「あ……私、喚起士と言います」

召喚士「ほほう!何とも良い響きのお名前ですな!」

喚起士「いえ……そんな……」

召喚士「俺……おほん!私は召喚士と言うのですよ。召喚を生業としてましてね!」

喚起士「あら、奇遇ですね。私もなんですよ」

召喚士「そうなんですか!いやぁ本当に奇遇だ!ははは!」

ネメア「………」

喚起士「昼間のアレ、本当凄かったですね。体術か何かおやりになっているのですか?」

召喚士「アレですか……アレは私の一族に伝わる秘技でしてね……」

喚起士「………」

召喚士「……一子相伝の技なのですよ」

喚起士「そうなんですか……」

召喚士「これは秘密なのですがね……貴女にだけ!お教えしましょう……」

喚起士「………」ゴクリッ……

召喚士「アレは……相手の五点を突き相手が五歩歩くと……心臓が破裂すると言う恐ろしい技なのです……」

喚起士「そんな技を素人相手に……」

召喚士「いえ、その辺りはご心配無用です。皆、一撃目しか当てていないので」

喚起士「………」

召喚士「ふふふ……少し大人気なかったと思っていますよ」

喚起士「お、お強いのですね……」

ネメア (馬鹿め……そんな大嘘を堂々と……)



召喚士「まぁ私にかかればお茶のこさいさいなんですよ。ハハハ!」

喚起士「うふふ。……そろそろおいとまさせて頂きますね」

召喚士「ええあ!ま、まだ……」

喚起士「では、失礼します」たゆん

召喚士「お気を付けて!」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「まあ……何も言うまい……」

召喚士「そうして……」

ネメア「しかしあの女……立派なものだな」

召喚士「ああ……本当立派だな……」

ネメア「わかるのか?」

召喚士「わかるさ……」

ネメア「そうか……」

召喚士「………」

ネメア「良く学び良く鍛えなければあそこまでにはなっていないだろうな……」

召喚士「へぇ、良く学び良く鍛えるとあそこまでになるのか……」

ネメア「……?」

召喚士「………」

ネメア「お前もあれ程の者になって貰わねば困るぞ」

召喚士「俺は男だからあんなにならないよ……」

ネメア「………」

召喚士「……?」

ネメア「お前何の話をしてるんだ……」

召喚士「え?おっぱいだろ?あのたゆんたゆんって……」

ネメア「何故私が人間の脂肪の話をしなければいけないのだ……」

召喚士「脂肪って言うなこの野郎ッ!」

ネメア「お前という奴は……私が話していたのは召喚の話だ」

召喚士「………」

ネメア「あの女の背中見たか?」

召喚士「うん、セクシーだった!」

ネメア「背中に彫り込まれていた魔方陣な……恐らく召喚陣だ」

召喚士「………」

ネメア「……あれこそ真の召喚術だな」

召喚士「へぇ……」

ネメア「お前わかっていないだろ……」

召喚士「……今更聞くなよ」

ネメア「………」



召喚士「………」

ネメア「だからお前はだな!」クドクド……

召喚士「……うっせぇよローカル召喚獣」ボソ

ネメア「………」ピタッ

召喚士「………」

ネメア「今何て言った?」

召喚士「別に何にも……」

ネメア「ローカル召喚獣とか聴こえたが?」

召喚士「………」

ネメア「貴様……教えを説いてやっていると言うのに……言うに事欠いてローカル召喚獣などと……」

召喚士「……その通りだろ」

ネメア「グッ……私を知らぬのは貴様ぐらいだ馬鹿めがッ!」

召喚士「へぇ……なら剣士に聞いてみようか」

ネメア「ふん!貴様の無知が露呈するだけだ!」

召喚士「おし……何賭ける?」

ネメア「賭けだと?いい加減しろ!」

召喚士「怖いのかぁ……あ?」

ネメア「こいつ……いいだろう賭けてやるッ!」

召喚士「おっけー」

ネメア「私が勝ったならば貴様の心臓喰らってやるからなッ!」

召喚士「おう!いいともいいとも……俺が勝ったら……そうだな」

ネメア「………」

召喚士「……ん」

剣士「いやぁ出た出た!それにしてもよ……さっきすれ違った姉ちゃん凄かったぜぇ!」

召喚士「……そこへ座れ」

剣士「あ、ああ……。どうかしたのかい……?」

召喚士「ちょっと聞きたい事があるんだ」

剣士「何でも聞いてくれッ!」

召喚士「……ネメアって名前知っているか?」

剣士「ネメア?ネメアねぇ……」

召喚士 (この筋肉が知っている筈が無いだろッ!)

ネメア (くだらぬ勝負を受けてしまったな……私の圧勝で間違いは無いのに。少々大人気無かったか……)

剣士「ん……」

召喚士 (知っている筈……無いよな……?)

ネメア (ふふふ……この馬鹿者にキツい灸でも添えてやれば少しは召喚術に身を入れるだろ)

剣士「その名前聞いた事あるな」

召喚士「ッ!」

ネメア (クククッ……焦り出しおったわ!)

剣士「なんだっけかな……どこかで聞いたんだよな……」

召喚士 (ま、まさか……やめろよ……)

ネメア (さて……どのような罰がよいかなクククッ!)

剣士「ああ!思い出したぜッ!」

召喚士 (ああぁぁぁ……)

ネメア (ふふふ……)

剣士「確か北の方にいる娼婦の婆さんの名前だな!」

ネメア「………」

召喚士「ば……」

剣士「あれは良かった!うん」

ネメア「………」

召喚士「………」

剣士「どうした?」

召喚士「いや……何でも無いよ……」

ネメア「……追えッ!!!背中に刺青がハイッタ女を捕まえるノダーッ!」

剣士「は?」

ネメア「イイカラーッ!間に合わなくなっても知らんゾーッ!!!」

剣士「ああ……?よくわかんねえけどあんたが言うなら……」

タタタタッ

召喚士、ネメア「………」



タタタッ

ネメア「ええいッ!もっと早く走らんかッ!」

召喚士「………」

ネメア「クソッ!あの筋肉馬鹿も知らんとはどうなっているんだッ!」

召喚士「………」

ネメア「あの女なら私の凄さがわかる筈!私がどれだけ偉大かッ!」

召喚士「………」

ネメア「……なんだ?」

召喚士「筋肉のストライクゾーンが広すぎて……正直お前の事はどうでもよくなってきた……」

ネメア「よく無いッ!」

召喚士「………」

キャアアァァッ!

剣士「グヘヘェ……いいじゃねえか姉ちゃんよぉ……」

喚起士「や、やめてください!」

剣士「俺の師匠がよ!お前の体見て欲情したみたいなんだわ……だからよ相手頼むわッ!」

喚起士「嫌ですッ!」

召喚士「お前……何やってんだよ……」

剣士「ああ!」

喚起士「た、助けてください!」たゆん

召喚士「……お任せくださいッ!」

剣士「いやぁ捕まえようとしたんだけどよ……中々話を聞いてくれなくてな」

召喚士「………」

喚起士「……お知り合い……何ですか?」

召喚士「……知りません」

剣士「あんたが追えってよ……言った……」

召喚士「黙れ蛮賊ッ!このようなか弱き女性に手を出すなどッ!」

剣士「ええぇぇ……」

喚起士「………」

召喚士「行くぞ蛮賊ッ!」

剣士「ま、待てって!」

召喚士「はあぁぁぁあ!」

べちんっ!

剣士「……?」

召喚士「クッ!やるじゃないかッ!」

剣士「………」

召喚士「これで終わりだッ!」

べちんっ!

剣士「何やってんの……?」

召喚士「倒れろ!……後で奥義教えてやるから!」コソコソ

剣士「ッ!……ぐ、ぐああ!やらたあ!」バタッ!

召喚士「………」

ネメア (酷いな……色々と……)



召喚士「大丈夫ですか?」キリッ

喚起士「ええ……ありがとうございました……」

ネメア「早く聞け!」コソコソ

召喚士「……もういいよ」コソコソ

喚起士「……?」

ネメア「よく無いッ!」コソコソ

召喚士「めんどくさいな……」

喚起士「すいません……面倒な事を……」

召喚士「え?い、いえ!貴女の事じゃないですよッ!ははは……」

喚起士「………」

召喚士「そのですね……お訊きしたい事があるんですが……」

喚起士「何でしょうか?」

召喚士「ネメアって名前ご存知ありませんか?」

喚起士「ネメア……ですか?」

ネメア「………」

召喚士「………」

喚起士「アレですかね……」 

召喚士「アレ??」

喚起士「あそこに見える」

召喚士「……夜空?後は星ぐらいしかありませんが?」

喚起士「ええ、そうですよ。その星で出来てる星座ですね」

召喚士「星座……?」

喚起士「獅子の星座の事ではありませんでしたか?」

ネメア (ふふふ……)

召喚士「……その事をもう少し詳しく」

喚起士「はい……?……後は神話の事とかしか」

召喚士「神話ッ!?」

喚起士「どうかいたしました?」

召喚士「い、いえ……続けて」

喚起士「……続けてと言われましても有名なお話しですし……ご存知なのでは?」

召喚士「………」

喚起士「……?」

ネメア (やはりこの馬鹿二人が知らなかっただけなのだ!)

召喚士「……あれですよ。ちょっとド忘れを……」

喚起士「はぁ……?」

召喚士 (何だよ神話って!どっかド田舎のぺーぺー召喚獣じゃ無かったのか!)

……ォォァズズズッ!

……「………」

喚起士、ネメア「ッ!」

召喚士「?」

……「ミツケタ……」

召喚士「ななななッ!」

ネメア「……落ち着け、私の追っ手だ」

召喚士「に、逃げなきゃ!」

ネメア「待て!……あの女を見ろ。やる気だぞ?」

喚起士「……眠れる……よ……」

召喚士「おおい助け

ネメア「黙って見ていろッ!」

召喚士「………」

喚起士「いざッ!我の元にッ!」

バシュンッ!

ネメア「ほう……凄いな。武具召喚か……」

召喚士「何だよあれ!?」

ネメア「あれが本来、召喚の在るべき姿なのだ。しっかり見ておいた方がいい」

召喚士「………」

……「……ニヒキ?」

召喚士「に、二匹って……?」

ネメア「……?」

喚起士「……ジノ……お願いしますッ!」

ネメア「ジノだとッ!?」

ズハシュンッ!!!

ジノ「………」

喚起士「……いけますか?」

ジノ「大丈夫ぅ!ごめんね毎度毎度」

喚起士「いえ、慣れましたから。それに修行にもなりますし」

ネメア「………」

召喚士 (何かヤベぇ……全然付いていけない……)

ーー

……「……ウガグゥゥ」

シュゥゥ……

ジノ「お疲れちゃん!」

喚起士「いえ、いつものようにジノが助けてくれましたから」

召喚士「すげぇ……」

ネメア「………」

召喚士「なぁ……あのジノとかって言うのスフィンクスじゃないの?」

ネメア「そうだ。……何故そっちを知っていて私を知らん……」

召喚士「どっかのマイナー召喚獣じゃ無いからな……」

ネメア「こいつは……」

召喚士「いいな……オッパイだよ……」

ネメア「………」

ジノ「……あの人間に見られちゃってるけどいいの?」

喚起士「あの方も召喚を生業としているようなので……」

ジノ「そっか……」

喚起士「お怪我はありませんでしたか?」

召喚士「……オッ……ええ!いやぁお強いのですね!ははは!」

喚起士「………」

召喚士「……?」

喚起士「……よろしければ貴方の召喚獣……拝見させて頂けませんか?」

召喚士「………」

ネメア「構わん。出るぞ」

ズバシュンッ!

ネメア「………」

ジノ「のあ!?」

喚起士「ッ!」

ネメア「……久しいなジノ」

ジノ「兄ちゃん……何でいるの……」

召喚士「兄ちゃんって……?」

ネメア「私とジノは兄妹なんだ……」

ジノ「……ごめんなさいッ!」

ネメア「はあ?」

ジノ「あのね……違うんだよ!……本当だよ?」

ネメア「……何の事だ?」

ジノ「………」

ネメア「………」

ジノ「怒りに来たんじゃ無いの?」

ネメア「……怒られるような事したのか」

ジノ「してないよ!全然してない!うん!」

ネメア「何をしたんだ……」

ジノ「……ちょっとパイアをね」

ネメア「………」

ジノ「探してたら……イタズラしたくなって……」

ネメア「またか……」

ジノ「人間だと思って食べたら天使で……」

ネメア「………」

ジノ「それでね……」

ネメア「追われて、あの女に匿って貰ってるのか?」

ジノ「そう!」

ネメア「………」

召喚士「誰かと同じだな」

ネメア「同じでは無い!」

喚起士「……ここでは何ですので私が泊まっている宿へ行きませんか?」

ーー

喚起士「………」

召喚士「………」

剣士「……酷いぜ!あのまま置いてこうとしただろ召喚士!」

喚起士「やはり……お知り合いでしたか」

召喚士「……知りません」

剣士「流石にもう誤魔化せねえだろ……」

召喚士「………」

喚起士「もういいですよ……先程はいきなり召喚獣を見せろなどと失礼いたしました……」

召喚士「いえ……」

剣士「やっぱあんた凄えな!強い上にあんな化物従えてるんだから!」

召喚士「余計な事は言うな……」

剣士「なんでだ?」

召喚士 (嘘ってバレたら色々困るんだよ!)



喚起士「先程は申し訳ありませんでした……」

ネメア「いや、いい。……女、ジノが世話になっているな」

喚起士「そんな事はありませんよ。私も色々と助けて貰っていますし」

ネメア「そうか……」

喚起士「お訊きしても宜しいでしょうか?」

ネメア「なんだ?」

喚起士「何故……貴方のような召喚獣がこの世界にいらっしゃったのですか?」

ネメア「……話すとちょっと長くなる」

喚起士「………」

ネメア「………」



召喚士「巨乳と手甲が向かい合って話してるって……シュールだな……」

ジノ「あたし腕輪だし、この会話もそうなんじゃ無いの?」

召喚士「………」

剣士「凄えな……腕輪が喋ってるぜ……」

ジノ「ふふん凄いでしょ!恐れておののけ人間よ!」

剣士「そこまでじゃねえよ……」

ジノ「………」

召喚士「おい、ジノとやら」

ジノ「……何?」

召喚士「あの……喚起士さんは……」

ジノ「ああ!あたし以外は召喚獣持ってないよ」

召喚士「違うッ!……お付き合いしている男性等はいるのか!」

ジノ「………」

召喚士「どうなんだ!?」

ジノ「あ……いるよ。既婚で子供が五人だったかな!」

召喚士「……ぐあぁぁ」

ジノ (嘘だけど)

剣士「なんだ人妻か……つまんね」

召喚士「なぁぁ……何故良い物は全て他人の物なんだぁぁッ!」

ジノ「………」

剣士「まぁ仕方無いな」

召喚士「うぅ……剣士も狙ってたのか……?」

剣士「狙う?違うぞ」

召喚士「じゃあ何?」

剣士「最近してねえからお願いしようかなってな!」

召喚士「………」

剣士「人の物じゃあ無理だよな……そうだ!」

召喚士「………」

剣士「召喚士相手してくれよ!」

召喚士「……は?」

剣士「三回くらいでいいからよ!」

召喚士「……俺は男だぞ?」

剣士「関係ねえって!出せればいいからな!」

召喚士「冗談やめろよ……」

剣士「冗談なんて言うかよ」

召喚士「………」

剣士「駄目か?」

召喚士「こいつに頼め……」

ジノ「あたしッ!?」

剣士「そっか。頼むわ!」

ジノ「……やだよ」

剣士「なんだよ……連れねえな……」

召喚士、ジノ (こいつ有り得ない……)

剣士「我慢するか……はぁ」

召喚士「一人ですればいいだろ……」

剣士「一人だといけねえんだよ!」

召喚士「あっそ……」

ジノ「………」

召喚士「ちょっとネメアに契約事項の追加申請してくる……」

ジノ「い、一緒に持ってってッ!」

召喚士「剣士はそこに座っててくれ……」

剣士「おう!」



喚起士「……なるほど」

ネメア「恐らくお前が先程戦った者は私の追っ手だと思う」

喚起士「ジノの追われる身ですのでどちらのとは……」

ネメア「……そうなのか。迷惑をかけるな……」

喚起士「いえ、いいんです。ああいう者と戦い続ければ私、強くなれますから……」

ネメア「………」

喚起士「………」

召喚士「……おい……ネメア様」

ネメア「何だ……様?」

召喚士「お願いがあるんだけど……いいかな?」エヘッ

ネメア「………」

召喚士「頼むよぉぉ貞操の危機なんだよぉお!」

ネメア「またくだらぬ事だろ……知るか」

召喚士「違うよ!……剣士に襲われそうになったら助けてくれ!」

ネメア「……知らん」

召喚士「あいつヤバいんだよ!ジノって奴でもウエルカムなんだ!」

ネメア「………」

召喚士「お願いだッ!」

ネメア「……わかった。ジノに手を出したら殺すと伝えておけ」

召喚士「自分で言えよ……」

ネメア「ならば助けん」

召喚士「了解しましたッ!」

喚起士「……ジノでもいいって」

ジノ「恐いよあいつ……あたし下半身ライオンなのに……」

喚起士「………」



召喚士「これか先ガチムチアニキと一緒になんて耐えられないよぉお……」

ネメア「うるさいッ!こっちは真面目な話をしているんだ!静かにしろ!」

喚起士「……何処かへ向かわれている途中なのですか?」

召喚士「ええ、そうなんですよ。この下僕の恩人へお礼をですね。ふふふ」

ネメア「………」

喚起士「なるほど」

召喚士「何やら凄い召喚士の方みたいでしてね……まぁ私程!では無いでしょうが」

喚起士「……召喚」

召喚士、ネメア「……?」

喚起士「……その召喚士の方でしょうか?……どのような方なのですか?」

ネメア「……詳しくは知らない。ただ……とんでもない召喚術の使い手であろうとくらいしかな」

喚起士「そうですか……」

ネメア「………」

喚起士「……もし、宜しかったらでいいんですが……私もご同行してもよろしいでしょうか?」

召喚士「ええ!?いいんですか!」

喚起士「はい……」

召喚士「……でも旦那さんやお子さんはいいんですか?」

ジノ「あああ!故郷で仲良くやってるから大丈夫だよ!」

喚起士「……ジノ?」

ジノ「いいから!」コソコソ

喚起士「……?」

召喚士「そうなんですか……」

ジノ「そう!強い子達なの!」

ネメア「……女、理由はなんだ?」

喚起士「………」

ネメア「召喚と言う言葉に反応していたようだが……」

喚起士「……仇なんです」

ネメア「ふむ……」

喚起士「私の兄の……」

ネメア「……仇とは召喚術を使う者なのか?」

喚起士「はい……」

ネメア「ならその者を探せ……もしや従えている召喚獣しか手懸かりが無いのか?」

喚起士「そうです……」

ネメア「なるほど……召喚士に私を見せろと言ったのも納得がいった」

喚起士「………」

ネメア「たが、私が探している召喚術を使う者とお前の仇が同じとは限らんぞ?」

喚起士「召喚に携わっている者全てに聞いて回る覚悟なので構いません」

ネメア「………」

喚起士「それに……貴方が認める程の召喚術の使い手なのですから何か知っているのかもしれませんし」

ネメア「……そうか」

喚起士「………」

ネメア「私は構わんが……一応決定権は召喚士にある」

召喚士「俺?……ああ、私かね?」

ネメア「………」

喚起士「いかがでしょうか?」たゆん

召喚士「もちろん喜んで!一緒に仇とやらを成敗いたしましょう!」

喚起士「ありがとうございます……」

召喚士「いえ!喚起士さんみたいなお強い方と一緒ならこちらも心強いですよ!ははは!」

ネメア「……おい」

召喚士「……何?」

ネメア「あの獣の小娘

召喚士「あああ!下僕よッ!もう夜も深い!この辺でおいとましようではないか!」ガタッ!

ネメア「………」

喚起士「………」

召喚士「では、失礼しますよ喚起士さん!また明日!」

喚起士「は、はぁ……おやすみなさい……」

召喚士「剣士行くぞ!」

剣士「おう!」



召喚士「余計な事言うんじゃないよ!」

ネメア「……お前はその為に召喚士になったのではないのか?」

召喚士「そうだけどさ……あの甘い魔力に当てられてどうにも……」

ネメア「……最低だと思うが?」

召喚士「わかってるよ……」

剣士「何の相談だ?」

召喚士「何でも無い」

剣士「仲間外れにするなよ……襲っちゃうぞ?」

召喚士「冗談でもそう言う事は言うな!わかったなッ!」

剣士「はいよ……」

召喚士「………」



召喚士「うん……何となくわかっていたんだ……」

剣士「良かったな、飛び込みで宿とれて」

召喚士「同じ部屋なのは百歩譲って許そう……だがベットが一つしか無いってのはどういう事だよ……」

剣士「まぁ仕方無い仕方無い。我慢して寝ればいいだろうよ」

召喚士「お前……下で寝ろよ……」

剣士「いいけど?だけどな、いつの間にかベットに入ってても文句言うなよ?」

召喚士「なら俺が下で寝る……」

剣士「そうか?俺、寝相悪いからベットから落ちたらごめんな!」

召喚士 (ね、眠れる場所が無い……)

剣士「なぁ召喚士、あんたどこに行こうとしてるんだ?」

召喚士「……襲わないなら教える」

剣士「嫌がってるもん襲わねえよ!」

召喚士「………」バサッ

剣士「……?」

召喚士「ここだ」

剣士「また遠い所行こうとしてるんだな」

召喚士「だろ?本当は行きたくないんだけどな……」

ネメア「……今更行かぬなど言うなよ?」

召喚士「………」

剣士「ここだと……北へ回って行くな……」

召喚士「それ以上は言わないでくれ……」

剣士「何でよ?」

召喚士「お前の性体験なんて聞きたく無いんだよ!」

剣士「別に話くらい……」

召喚士「普通の話ならな!だがお前の性の相手は特殊過ぎなの!」

剣士「そうか?老若男女魔物だけだから普通だろ」

召喚士「……どこが普通だ」

剣士「みんなやってんじゃん」

召喚士「悪いが……お前だけだ……」

剣士「そんな事無い。偉い奴なんかは人間みたいな魔物捕まえて好き勝手やってるぜ」

召喚士「………」

剣士「俺何か可愛いもんだぞ?そいつら何か切断解体当たり前よくわからん道具の実験台にしたりな」

召喚士「……お願いだからそれ以上は言わないでくれ」

剣士「………」

ネメア「………」



召喚士「………」

剣士「ぐごごごごぉぉ……」

召喚士「うるせえよッ!」

ネメア「召喚士よ……こいつ意外と相当な修羅場を潜っているのかもしれんな」

召喚士「何?いきなり……」

ネメア「……先程の話、普通の生活をしていて見たり聞いたりすると思うか?」

召喚士「思わない……」

ネメア「ふむ……」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「俺もさ……剣士が言ってた人間と同じ事しようとしてたし……色々言えないよね」

ネメア「……切断や解体とかか」

召喚士「嫌々ッ!そんな事しない!出来ないし!」

ネメア「………」

召喚士「こちらから好き勝手に召喚してな……あれこれやろうとしてたし」

ネメア「あれこれ?」

召喚士「イチャイチャしたり話したり……たまにエッチな事したり」

ネメア「………」

召喚士「だからさ言え無いなって」

ネメア「そうか」

召喚士「うん……」

剣士「ぐごごごごッ!」

召喚士「……うるさいッ!」

ーー

喚起士、剣士「………」

召喚士「待ってくれぇ……歩くの早いよ……」

剣士「……まだ街出たばっかりじゃねえか」

召喚士「そ、そんな事言われても!」

喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「……大丈夫ですか?お体の調子が悪いなら……」

召喚士「いええ!大丈夫ですよ!もうピンピンッ!」

喚起士「そうですか?」

召喚士「いやぁ……ははは……」

ネメア「………」



召喚士「はぁはぁ……」

剣士「だらしねえなぁ……まだちょっと歩いただけだろ!」

召喚士「俺は剣士と違って虚弱体質なの!」

剣士「は?……あんなに強いのにか?」

召喚士「……それはあれだよ」

剣士「なんだ……?」

召喚士「………」

剣士「………」

召喚士「ほら……一瞬に全てを賭けるから他の事は駄目なんだッ!」

剣士「なるほど……それであの時は皆一撃だったのか……」

召喚士「そうそう!」

剣士「すげえな……」

ネメア (またそんな嘘を平然と……)



剣士「北の村まで後一日ってとこか」

喚起士「そうですね」

召喚士 (後一日こんなに歩かないといけないのか……)

剣士「ん……召喚士よ、そろそろ暗くなるしここら辺で野宿か?」

召喚士「へ?野宿?」

剣士「……その方がいいだろ?」

召喚士「………」

喚起士「私の事ならお気になさらず」

召喚士「はい……剣士任した……」

剣士「おう……?」

召喚士 (野宿なんてしたことねぇ……)

ネメア「………」

剣士「じゃあ二時間交代で見張りでいいよな?」

召喚士「お、おう!」

喚起士「はい、私から見張りしておきますので」

剣士「そうか、姉ちゃん頼んだ」

喚起士「……その言い方は止めてください。私には喚起士と名前があるんです」

剣士「いいじゃねえか……」

喚起士「よくありません」

召喚士「ま、まぁ二人とも!」

喚起士「………」

剣士「……ちょっくら薪でも集めてくるわ」

たたた……

召喚士「………」

喚起士「すいません……」

召喚士「いいですよ喚起士さん!剣士がちゃんと名前を言わないのが悪いんですから!」

喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「あの……どうしてあの方と一緒に旅をしているのですか?」

召喚士「成り行き上仕方無くです……」

喚起士「……旅の目的などは知っているのですか?」

召喚士「いえ……でも強くなれるって言ってたのでそれが理由だと思います」

喚起士「そうですか……」

召喚士「変わった奴ですけど悪い奴では……」

喚起士「………」



召喚士「……見張りって喚起士さんだけに任せていいのかな?」

剣士「構わんだろ。やってもらわにゃ困るし。それに慣れてるみたいだしな」

召喚士「そっか……。剣士さ、何で旅をしてるの?」

剣士「なんだい突然」

召喚士「ちょっと気になってさ……言いたくないならいいけど」

剣士「ん……何でかって言われたら強くなりたいからだろうな」

召喚士「………」

剣士「強くなれば色々自分の物にしたり出来るだろ?」

召喚士「だろ?って言われても困るけど……」

剣士「……あんた程強けりゃそんな事考えないでいいのか」

召喚士「………」

剣士「俺も早くそこまで強くなりてえな……うらやましいぜ」

召喚士「……そんな事無いけど……そこまでしてまで何が欲しいの?」

剣士「………」

召喚士「………」

剣士「さぁ……何かな」

召喚士「何だよそれ……」

剣士「欲しい物が欲しいだけかもってな……」

召喚士「意味がわからないよ」

剣士「俺にもよくわからね。まぁ寝るぜおやすみ」

召喚士「………」



召喚士「………」

ネメア「周りには特に変わった気配は無いな」

召喚士「夜の森の近くってこんなに不気味なんだな……」

ネメア「そうか?」

召喚士「……こんな事するの初めてだからそう思うのかもしれないけど」

ネメア「………」

召喚士「喚起士さん……仇を探してるって言ってたけど……こういう生活して長いのかな?」

ネメア「……あの様子なら長いであろうな」

召喚士「そうだよね……何か慣れてるみたいだし」

ネメア「………」

召喚士「………」



喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士 (な、ななにか話た方がいいのか!)

喚起士「召喚士さん……起きてますか?」

召喚士「はははい!?」

喚起士「……ごめんなさい……寝てましたよね」

召喚士「いえぇ!全然寝てないですはい!」

喚起士「……?……少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」

召喚士「何をですか?」

喚起士「召喚に携わって……どれくらい何ですか?」

召喚士「……五年くらいですかね!ははは!」

喚起士「凄いですね……五年でネメア程の召喚獣を従えてしまうなんて……」

召喚士「そんな大した事は……喚起士さんはどれ程?」

喚起士「私は……物心付いた時には既にですね……」

召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士「じゃあ……自分がなりたかったとか無くてですか……」

喚起士「そうですね……幼い頃から召喚に携わって生きてきましたから」

召喚士「こんな事聞くのは失礼かもしれないですけど……嫌になったりしなかったんですか?」

喚起士「……多々ありましたよ」

召喚士「………」

喚起士「でも今は……」ググッ

召喚士「………」

ーー

剣士「ングー……さて!行くか!」

喚起士「……はい」

召喚士 (眠い……全然寝れなかった……)

剣士「何事も無く村に着いたらいいな」

喚起士「そうですね……」

剣士「何だよ……そんなに俺が気に食わないか?」

喚起士「………」

剣士「……別に構わんけど」

ジノ (なぁんか不協和音だよね……)

召喚士「ねぇ剣士……何事もって例えば何があるの……?」

剣士「ああ?わかるだろうに……」

召喚士「……今までトラブルっぽい物に巻き込まれた事が無いのでな!」

剣士「そういう事か。本当凄いなあんた……」

召喚士「いや、いいから教えてよ」

剣士「ん……追い剥ぎとか山賊とかかな。たまに魔物なんかもだな」

召喚士「………」

剣士「後は国同士のめんどくせえゴタゴタに巻き込まれたり、奴隷商の人間狩りに出会したりか」

召喚士「……人間狩りって」

剣士「召喚士程強けりゃ関係無いだろ」

召喚士「そそそそうだね……」

剣士「そっちの姉ちゃん何かあぶねえんじゃないか?」

喚起士「……ご心配無く。これでもその類いの物は退けてまいりましたので」

剣士「あっそうかい」



剣士「………」

喚起士「………」

召喚士 (凄い空気が重い……)

剣士「………」

召喚士「け、剣士さ!北の村って何か名物みたいのあるの!」

剣士「……さぁ?」

召喚士「さぁって……行った事あるんじゃないの?」

剣士「あるにはあるが……婆さんとこに入り浸ってたからなぁ……」

召喚士「………」

剣士「凄いだぜその婆さんッ!」

召喚士「言わなくていいよ……」

剣士「そうかい?」

ジノ「喚起士、どうかしたの?」

喚起士「あれ……」



兵士「歩けッ!クズ共ッ!」

ピシッ!

奴隷「あぐぅ……」

兵士「……早く立てッ!」

奴隷「……うぅ」フラフラ……

兵士「……ったく」

チャラ……チャラ……

剣士「……あれが国同士のめんどくせえゴタゴタってやつだな」

召喚士「………」

喚起士「………」ググッ

剣士「おい……変な気起こすなよ……」

喚起士「貴方はあれを見て平気なんですかッ!」

剣士「……平気じゃねえよ」

喚起士「ならッ!」

剣士「やめとけや……あいつら助けてどうなる?」

喚起士「どうなるって……ほおっておけとでも言うんですかッ!」

剣士「そうだよ」

喚起士「………」

剣士「何だよ……姉ちゃんそんな事も知らねえで旅してたのかよ」

喚起士「……クッ」

剣士「あれを助けるとな……あれの周りにいた人間が殺されるな」

喚起士「………」

剣士「だから見て見ぬふりがいいんだよ」

喚起士「そんな……」

召喚士「喚起士さん……」

剣士「……行くぞ」

召喚士「剣士さ……何とかならないかな……」

剣士「……ならねえよ。それにもう周りは殺されていないかも知れないのに助けてどうするってんだ」

召喚士「………」

喚起士「……闇夜にかかる……」

剣士「……ッ!」

ドガッ!

喚起士「………」ドサッ……

召喚士「剣士何をッ!」

剣士「チッ……」

兵士「貴様ら何をしている……?」

剣士「な、何でも無いでさ!ちょこっと内輪揉めなんで気にしないでくだせえ!」



召喚士「喚起士さん……大丈夫ですか……」

喚起士「……ええ」

剣士「………」

召喚士「剣士……何か言えよ……」

剣士「余計な事するんじゃねえ……」

召喚士「剣士……お前ッ!」

喚起士「召喚士さん……いいんです……」

召喚士「………」

喚起士「確かに……私がやろうとした事は余計な事でした……」

召喚士「そんな……」

喚起士「………」

剣士「そろそろ北の村だ。姉ちゃんを休ませてやっといてくれ」

召喚士「お前はどうすんの……」

剣士「村の外れの小屋にいるから何かあったら呼んでくれ」

召喚士「こんな時に……」

剣士「じゃあな」

タタタッ……

召喚士「……喚起士さん、宿へ行きましょう」

喚起士「はい……」

ネメア「………」

ジノ「こりゃ参ったねぇ」

ネメア「ジノよ、よく耐えたな」

ジノ「何の事?」

ネメア「隠さずともわかる」

ジノ「……うん、喚起士にはまだ生きてて欲しかったから」

ネメア「………」



喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「あの……もう大丈夫ですので一人にしてもらってもよろしいでしょうか……」

召喚士「あ、ああ……男女同じ部屋にいるのはまずいですよね!」

喚起士「そうでは無いんですが……」

召喚士「失礼しました!」

喚起士「……ジノも連れて行って貰えますか」

ジノ「えええ!」

召喚士「いいんですか?」

喚起士「少し……考えたい事もありますので……」

召喚士「わかりました……」



召喚士「喚起士さん……大丈夫かな……」

ネメア「わからぬ。だが、あの者にも何か思う所があるのだろう。そっとしておいてやれ」

召喚士「うん……」

ジノ「………」

召喚士「あのさ、ネメア」

ネメア「なんだ?」

召喚士「喚起士さんが剣士に叩かれる前……何か出そうとしてた?」

ネメア「そうだな……筋肉もまずいと思ってあのような行動に出たのだろう」

召喚士「そっか……それとさ……」

ネメア「うむ?」

召喚士「あの奴隷達……本当に助けなくて良かったのかな……」

ネメア「それは人間同士が解決する問題だ。私が口出しする事は出来無い」

召喚士「………」

ジノ「おい召喚兄さん!」

召喚士「俺?」

ジノ「お前しかいないだろ!」

召喚士「……何?」

ジノ「あたしとナゾナゾ勝負しようよ!」

ネメア「ジノ……やめなさい……」

ジノ「つまんないの!喚起士に追い出されちゃったし!」

召喚士「ナゾナゾか……解けなかったらどうかなるんだよな?」

ジノ「もちろん!臓物抉り出して食べちゃうよ!」

召喚士「……そんな闇のナゾナゾなんてやる訳無いだろ」

ジノ「……やってよ」

召喚士「そんな伝説の決闘王も真っ青な闇のナゾナゾなんてやりません!」

ジノ「………」

召喚士「第一俺に得が無いだろ!」

ジノ「……ならこうしようよ」

召喚士「何だよ……」

ジノ「あたしは喚起士のオッパイを賭けよう!」

召喚士「な、何だとッ!」

ジノ「どうかね?」ニヤリ

召喚士「………」

ネメア「止めておけ……」

召喚士「うるさい……やってやるさ……来いや!」

ジノ「そう来なくっちゃ!」

召喚士 (オッパイ!オッパイ!)

ジノ「じゃあいくよ!……朝

召喚士「人間ッ!」

ジノ「………」

召喚士「これで

ジノ「だ、第二問ッ!」

召喚士「……ズルいぞ」

ジノ「一問だけなんて言って無いからね!」

召喚士「くっ……」

ジノ「素晴らしい木

召喚士「ステッキッ!」

ジノ「空の上

召喚士「ドッ!」

ネメア「………」

ーー

バタンッ

剣士「婆さんまた世話になりに来たぜ……?」

剣士「………」

剣士「いねえのか……」

ガタッ……

剣士「ん?……誰だおめえ?」

……「………」

剣士「まぁいいや。婆さんは出掛けてるのか?」

……「………」

剣士「……?」

……「……窓の外」

剣士「あ?そこにいるのか……」

……「………」

剣士「……なるほど」

……「………」

剣士「まさかおっちんじまってるとはな……参ったぜ……」

……「………」

剣士「……婆さん逝く時笑ってたか?」

……「………」コクッ

剣士「そうか。ならいい人生だったんだな」

……「………」

剣士「……お前、婆さんの子供……
な訳ねえよな。孫か?」

……「………」フルフル

剣士「あん?じゃあ何なんだ?」

……「一緒に暮らしてた」

剣士「そうか。……婆さん何してたか知ってるよな?」

……「………」コクッ



剣士「こんな事言うのもあれだが……マジでいいの?」

……「………」コクッ

剣士「いや……お前いくつよ?すげえ小さいしさ……」

……「……名前」

剣士「名前?」

……「名前をくれたら貴方に従う」

剣士「なんだそりゃ……」

……「婆ちゃんも名前くれたから」

剣士「……じゃあその名前でいいだろ」

……「駄目」

剣士「はぁ?……名前なんてな……」

……「ならしない」

剣士「………」

……「………」



剣士「ん……じゃあ盗賊でいいか?」

……「………」コクッ

剣士「適当に考えたからな……嫌だったら別の名前に……」

……「……いい」

剣士「そうか。なら盗賊な」

盗賊「………」コクッ

剣士「早速だがお願いするかな!……大丈夫だよな?」

盗賊「………」コクッ

剣士「痛かったら言えよ」

盗賊「………」コクッ

剣士「よっしゃ!」

ーー

召喚士「ちくしょぉぉぁおッ!」

ジノ「ふふふ……残念だったね召喚兄さん!」

ネメア「………」

召喚士「クソォ……オッパイが目の前まで来てたのに……」

ジノ (あ、危なかった……負けてたら喚起士に怒られるとこだった……)

召喚士「………」

ジノ「じゃあ!臓物抉り出すね!」

召喚士「やだよ……」

ジノ「えええ!あたし勝ったじゃん!」

召喚士「……お前……最後の問題の答言ってみろよ」

ジノ「………」

召喚士「………」



召喚士、ジノ「………」

喚起士「……何かあったんですか?」

ネメア「何も無い……それより殴られた箇所はまだ痛むのか?」

喚起士「少し……」

ネメア「そうか」

喚起士「………」

ネメア「……何かあれば話すのもいいと思うが」

喚起士「はい……」

ネメア「………」

喚起士「私は間違っているんでしょうか……」

ネメア「………」

喚起士「今は兄の仇を討つために旅をしています……ですが……」

ネメア「………」

喚起士「この力があるのですから……もっと違う道へ進むべきなのではと……」

ネメア「あの奴隷達を見て思ったのか?」

喚起士「そう……ですね……」

ネメア「……それが迷い揺らぐ覚悟ならば旅は止めた方がいいと思う」

喚起士「………」

ネメア「先へ進むのは誰でも無い……お前自身だ。良く考えればいい」

喚起士「………」

ネメア「………」

喚起士「ありがとうございます……」



召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士 (い、いいのか!同じ部屋に男女一緒に寝ちゃっていいんですか!天国のお爺ちゃん教えてください!召喚士の召喚士を召喚してしまいそうです!)

喚起士「……寝れませんか?」

召喚士「お、えええ!目がギンギンに冴えてしまって!ははは!」

喚起士「……はぁ?」

召喚士「……別の部屋用意してもらった方がよかったんじゃ無いんですか?」

喚起士「お金勿体ないですよ……もしかして私と一緒では嫌でしたか?」

召喚士「そんな事無いです!絶対無いです!ええ無いですとも!」

喚起士「……そうですか」

召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士「ち、ちょっと外で風に当たってきますよ!」

喚起士「……はい」

召喚士「はははは!」

ガチャ

喚起士「………」

ジノ「………」

喚起士「迷惑でしたよね……」

ジノ「……かもね」

喚起士「………」

ジノ (下半身的にだけど!まぁ……喚起士に手を出すようなら玉をぐちゃぐちゃに潰して喰ってやるから!)



召喚士「はぁ……」

ネメア「中々、安息の睡眠は取れぬな」

召喚士「うん……」

ネメア「………」

召喚士「……喚起士さん悩んでたね」

ネメア「そうだな」

召喚士「人より力があると悩み事も多くなるのかな……」

ネメア「お前にもあるだろ。私と言う力が」

召喚士「でも……それは俺自身の力じゃ無いし……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「ならば力を付けたらどうだ?」

召喚士「今更無理だよ……それにあまり力は欲しくないかなって」

ネメア「何故だ?」

召喚士「……戦うの怖いし」

ネメア「私を使役しているのだからいずれは戦う事になる」

召喚士「やっぱり……ネメアの追っ手と?」

ネメア「そうだな」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「ネメアが戦うだけじゃ駄目なの?」

ネメア「もし……私でも捌ききれない火の粉がお前に降りかかったらどうする?」

召喚士「………」

ネメア「……やってみるか?」

召喚士「何を?」

ネメア「……真の召喚術を」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「それさ……よくわからないんだけど、どういう意味なの?」

ネメア「ふむ……どう説明したものか……」

召喚士「………」

ネメア「お前の行っていた召喚術は厳密に言うと召喚術では無いのだ」

召喚士「……は?」

ネメア「喚起士の扱っている物もそうだな」

召喚士「余計意味わかんないんだけど……」

ネメア「………」

召喚士「俺がやってた召喚術って何?ってなるじゃん……」

ネメア「お前の行っていたものは本来『喚起術』と言う物なのだ」

召喚士「………」

ネメア「術者の外部へ呼び出し使役する事を『喚起術』と言う」

召喚士「へぇ……喚起士さんが武器を喚んでたのもそれになるの?」

ネメア「そうだな」

召喚士「じゃあ召喚術って……」

ネメア「術者の内部へ呼び出し……術者と呼び出した者との融合を召喚術と言う」

召喚士「………」

ネメア「もっと細かく言ってしまうと、憑依召喚と言って……」

召喚士「もういいよ……何と無くわかったから……」

ネメア「そうか?」

召喚士「……それをやるの?」

ネメア「そうだ!楽しみだな!」

召喚士「あのさ……何で楽しみなの?」

ネメア「それは初めてやるからに決まっているだろ!」

召喚士「え……」

ネメア「さぁどうなるか……ふふふ、何やらこう心踊るな!召喚士よ!」

召喚士「………」

ネメア「どうした?」

召喚士「大丈夫なんだよなそれ?俺に害は無いんだよな?」

ネメア「初めてやるのだからわかる訳無いだろ。何を言っておるのだ」

召喚士「……失敗例とか無いの?」

ネメア「知らん」

召喚士「………」



召喚士「本当……今度にしようよ……」

ネメア「駄目だッ!早く先程教えた呪文を言え!」

召喚士「………」

ネメア「資質が無ければ何も起きないだろうから大丈夫だ!」

召喚士「お腹痛い……」

ネメア「いい加減にしないか……」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「わかったよ……」

ネメア「………」

召喚士「じゃあやるよ……」



召喚士「……解放と同調織り成す時……」

ネメア「………」

召喚士「……うつし世の波声を聞きし幻想の者よ……」

ネメア「………」

召喚士「……やっぱやめない?」

ネメア「早くしろッ!」

召喚士「へぇい……我身中に降臨しせり!」

………ゥゥ

召喚士「………」

ネメア「………」

ズバァァァァァアッ!………



召喚士「…………」

ネメア「おお……」

召喚士「……何か変わった?」

ネメア「凄いぞこれは……お前の体が感じている感覚が私にも伝わってくる」

召喚士「……それだけ?」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「な、何か試せばわかるやも知れぬ!あの池の隣にある木を叩いてみよ!」

召喚士「本当かよ……せーの……」

ドガシュッ!………

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「何か……触った部分が削れ取れちゃったけど……」

ネメア「成功だな。私の力をお前自身が使えるようになったみたいだ」

召喚士「す……」

ネメア「……?」

召喚士「すげぇぇぇぇえッ!こんな事出来るなんてッ!……ふふ」

ネメア「……どうした?」

召喚士「ふふふ……」

ネメア「………」

召喚士「この力があれば何でも出来るぞネメア……」

ネメア「………」

召喚士「よっと!」

バシュンッ!

召喚士「こんなに高く飛べる!うう……」

スタッ

召喚士「行こう……ネメア……」

ネメア「どこへだ……?」

召喚士「……女性専用公衆浴場……略して女湯だッ!」

ネメア「……何の為に?」

召喚士「言わせるなよ恥ずかしい……」

ネメア「………」

召喚士「さぁっ!」

ズダダダダダッ!

召喚士「はえぇぇえッ!こんなに早く走れたら追われても巻けるな!」

ネメア「………」

召喚士「うひょょぉぉお!」

ネメア「こんな真夜中に人などいるのか?」

召喚士「………」

キキィィィッ!……

ネメア「………」

召喚士「早く言えよ……」



召喚士「本当……この力凄いね……」

ネメア「………」

召喚士「……何?」

ネメア「くだらぬ事に使うなッ!」

召喚士「へぇい……」

ネメア「………」

召喚士「あのさ……喚起士さんの術を召喚のあるべき姿って言ってたけどこれとは違うの?」

ネメア「それか……あの者は恐らく今お前が行っている召喚術も出来ると思う」

召喚士「……うん」

ネメア「双方の術を使い分けられるのだろう……だからそう言ったのだ」

召喚士「ならジノを召喚すれば……」

ネメア「何かしら理由があるのだろう。……そこまでする必要が無かったのかもしれんしな」

召喚士「なるほど……」

ネメア「この事に関してはあの者の方が詳しいのかもしれんな」

召喚士「………」

ネメア「より深く知りたいのならば聞いてみるがいい」

召喚士「そうだね……そうしてみるよ」

ネメア「……そろそろ解くが?」

召喚士「もうちょっとこのまま……」

ネメア「何かあるのか?」

召喚士「いやぁ……色々出来るから楽しくなってきてね……」

ネメア「………」

召喚士「強くなった自分をもう少し堪能したいなって」

ネメア「……勝手にしろ」

ーー

召喚士「………」

喚起士「……おはようございます」

召喚士「お……おはよう……ございます……」

喚起士「……?」

召喚士「いやあ……夜中に鍛練を……張り切り過ぎましてね……はへは……」

喚起士「そうなんですか?」

召喚士「……もう少し横になっていますよ」

喚起士「はぁ……なら私は下へ降りていますので」

召喚士「は……い……ぐぐぐ……」

喚起士「……では」

ガチャ

召喚士「……イダダダダ……ネメア」

ネメア「なんだ?」

召喚士「少しでも動くと……激痛が走るんだけど……イダダ」

ネメア「ふむ……なるほど」

召喚士「………」

ネメア「夜中のあれは術者の体に相当負担をかけるみたいだな」

召喚士「首動かす……だけでイダダダダ……痛いんだけど」

ネメア「よい勉強になった」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「治してよ……」

ネメア「そんな力は無い。我慢しろ」

召喚士「………」

ーー

剣士「おっす!召喚士!」ツヤツヤ

召喚士「ぐぐ……おはよう……来てたのか……」

剣士「なんだぁ?お前も派手にやったのか?」

召喚士「そうじゃ無い……イダダ……」

喚起士「………」

剣士「そっか?召喚士ッ!今回は凄かったぜえ!」

召喚士「話さなくていいから……」

剣士「ええ?聞けよ!」

召喚士「レディの前でそういう下品な話をするなッ!……イテェ……」

剣士「いいじゃねえか……」

召喚士 (朝っぱらからババアと性交した話なんて聞きたく無いんだよ!)



剣士「もうキツくてな!全然長持ちしねえの!俺そんなに早漏じゃねえのに!」

召喚士「マジでやめろってッ!……イデデ」

喚起士 (この男……最低です……ん?)

剣士「でもな……婆さんみたいに声出さねえからそこだけが不満だったな!」

召喚士「いい加減に……ああ……違ったのか。いや、それでもやめ……あ?」

盗賊「………」ヒョコッ

剣士「表情もなあんまり変わらねえからこっちも嘗めるなよって頑張ったんだけどな……駄目だったぜ……」

召喚士、喚起士「………」

剣士「まぁそれでも一晩中付き合ってくれたから感謝だな!」

召喚士「剣士さ……」

剣士「おう?なんたい?」

召喚士「もしかしてした相手って……子供だったの……?」

剣士「子供?ん……ちっちゃかったしそうかな!」

召喚士「………」

剣士「それがどうかしたか?」

召喚士「どうかしたかって……笑えないんだけど……」

剣士「笑わせるつもりなんてねえよ?」

召喚士「………」

剣士「?」

召喚士「でもさ……気に入って連れて来ちゃうのはどうかと思うよ……」

剣士「はあ?」

盗賊「………」

剣士「……何でいるんだ?」

盗賊「………」

喚起士「……表へ出なさい」

剣士「あ?」

喚起士「このようないたいけな少女を手にかけた挙げ句……人拐いのような事まで……」

剣士「し、してねえって人拐いなんて!」

喚起士「いい訳は聞きません!その汚らわしい物を……討ちますッ!」

剣士「召喚士!何とか……」

召喚士「この犯罪者めッ!」

剣士「………」

ネメア「またくだらぬ事を……」

ジノ「兄ちゃん……あれ……」

ネメア「何だ?」

ジノ「パイアだよ……」

ネメア「なん……だと……ッ!」

ジノ「………」

召喚士「犯罪者!犯罪者!」

剣士「違えって!こいつがいいって言うから!」

喚起士「言葉巧みに騙してまで……なんて人ですか貴方はッ!」

剣士「ええぇ盗賊よ……こいつらに何とか言ってくれよ……」

盗賊「………」

喚起士「可哀想に……ショックで言葉を失ってしまったのですね……」

剣士「いやこいつあんまり喋らないから……」

喚起士「問答無用ッ!こいつらにが人間の心を取り戻す為にも貴方を此処で討ちますッ!」

ネメア「人間では無い……」

喚起士「そうですッ!人間ではありませんッ!……え?」

訂正……

喚起士「問答無用ッ!こいつらにが人間の心を取り戻す為にも貴方を此処で討ちますッ!」

喚起士「問答無用ッ!この子が人間の心を取り戻す為にも貴方を此処で討ちますッ!」

おおお……

ネメア「……我々と同じ者だ」

喚起士「………」

剣士「は?お前人間じゃねえの?」

盗賊「………」コクッ

剣士「へぇそうだったのか……別にいいけどな」

ネメア「それとな……それは私の妹だ……」ゴゴゴゴ……

剣士「そうなのか、世間は狭いな!」

ネメア「………」ゴゴゴゴ……

召喚士 (な、なんだ?この左腕の重圧は!)

ネメア「貴様……表へ出ろ……」

剣士「お前かよ……」

ネメア「ジノに手を出そうとしただけで無く……パイアに貴様の毒牙を……グガァァ……」

剣士「………」

ネメア「召喚士ィィ……召喚術を使え……」

召喚士「無理です!」

喚起士「お、落ち着いてください!」

ネメア「女……貴様もこいつを討つのでは無かったのかッ!」

喚起士「……人間では無か

ネメア「手を貸してやる……この屑の存在自体を共に消しさろうではないか……ッ!」

喚起士「ひぃぃ……」

盗賊「………」バッ!

剣士「……?」

ネメア「どけパイア……今、辱しめを受けた……」

盗賊「……名前貰った」

ネメア「なッ!」

召喚士、喚起士「………」

剣士「そう言えばそんなのあったな」

盗賊「………」

ジノ「そうなんだ!」

ネメア「くっ……それでもだなッ!」

召喚士「……どういう事だ?」

ネメア「………」

ジノ「そこの筋肉がパイアを使役しちゃったんだよ!」

召喚士「へぇ……」

ジノ (こいつわかってないな……)

喚起士「……パイア……確かクロミュオーンの猪……でしたよね?」

ジノ「そうだよ!」

ーー

ネメア「………」ブツブツ……

召喚士「さっきからうるさいよ!」

ネメア「……何故あんな筋肉馬鹿なんぞと契約など」ブツブツ……

喚起士「………」

ジノ「兄ちゃん……ショック受け過ぎだよ……」

剣士「お前いつまで付いてくんの?」

盗賊「………」

剣士「何か言えよ……」

盗賊「剣士が死ぬまで」

剣士「へぇ……まあいいけど。召喚士よ、これから西へ向かうのか?」

召喚士「そうだね。地図みたけどこのまま北へ向かうと山越えしないといけないからね」

剣士「そうだな」

召喚士「だから西へ行って海沿いを行こうかなって」

剣士「なるほど」

盗賊「………」

喚起士「凄いですね……」

ジノ「なにが?」

喚起士「……神話に出てくる者達が三体もいるのですから」

ジノ「そう?結構そこらじゅうにゴロゴロしてるかもよ?」

喚起士「ゴロゴロされいたらまたりませんよ……ジノだけでも驚いているんですから……」

ジノ「そっか!」

喚起士「ジノ……パイアを探していたのですよね?これからどうするんです?」

ジノ「いや……探してたのは……」

喚起士「……?」

ジノ「暇潰しの為だったから……このまま喚起士に付いて行くよ?」

喚起士「そんな理由で探していたのですか……」

召喚士「……喚起士さん、あの盗賊?パイア?って何者何ですか?」

ジノ (やっぱりわかって無かったか……)

喚起士「ネメアに聞いてみては?」

召喚士「………」

ネメア「………」ブツブツ……

喚起士「な、なるほど……ジノの方が詳しいと思いますのでお願いします」

ジノ「オッケー!」

召喚士「あの子は全然ライオンしてないけど本当に兄妹なのか?」

ジノ「本当本当!ちなみにあたしの姉ちゃんだよ」

召喚士「あっちの方が上なのか……」

ジノ「上なのよ……」

召喚士「で、何であの子だけ人間の姿なの?」

ジノ「パイアは人間に育てられたから、それでじゃないかな」

召喚士「………」

ジノ「可哀想とか思わなくていいからね。あたし達の世界じゃ普通の事だし」

召喚士「そうなのか?」

ジノ「うん、結構複雑なのよこれが。まぁそれは置いておいて……」

召喚士「………」

ジノ「人間と暮らして人間のようになり……パイアって名前も一緒に暮らしてたお婆さんの名前だからね」

召喚士「へぇ……」

ジノ「いつしか名前をくれる人に使役するようになったんだよ」

召喚士「……使役するのはいいとして……魔力はどうしてるんだ?剣士に魔力は無いと思うんだけど」

ジノ「……パイアは色んな所から魔力を引っ張り出してこれるから契約した人間が魔力無くても平気なんだよ」

召喚士「便利だな……」

ジノ「本当……便利だよ……」

召喚士「どこから魔力引っ張り出してるんだろうな……」

ジノ「さあ?もうやってるから筋肉の精からじゃない?」

ネメア「………」

召喚士「………」

ジノ「………」

ネメア「やめろ………」

ジノ「な、何をやめるの兄ちゃん?」

ネメア「パイアと筋肉の性交の話はするなッ!!!」

召喚士「落ち着けよ……!」

ネメア「落ち着いていられるかぁぁッ!グガァァッ!パイアがいつ孕んでしまうかッ!」

召喚士、ジノ「………」



剣士「やっぱり人間だよな?」

盗賊「………」

剣士「どう見ても化物には見えないぜ……」

盗賊「………」

剣士「しかしまあ……あっちの方は人間と変わらないんだな」

盗賊「………」

剣士「もう少し顔に表情があればな……文句はねえんだけど」

盗賊「………」

剣士「ん……なに考えてるかわかんねえなお前」

盗賊「………」

剣士「………」

ーー

喚起士「どうもありがとうございました」

召喚士「どうでした?」

喚起士「ええ、今の旅の方がこの先に小さな村があるそうですよ」

召喚士「そうですか……良かった」

喚起士「本当ですね」

召喚士 (いや……喚起士さん頼りになるなぁ……)

喚起士「あまり野宿はしたくありませんから」たゆん

召喚士 (オッパイ大きいし……オッパイ大きいし……オッパイ大きいし……)

喚起士「……?」

召喚士「いやぁ……オッパイさんは素晴らしい人だなと!ははは!」

喚起士「………」



召喚士「………」ジンジン……

喚起士「………」

ジノ (召喚兄さん普通に馬鹿なのかな……)

ネメア「大丈夫か?」

召喚士「まだグーで殴られなくて良かったよ……」

喚起士「………」

ネメア「……おい女」

喚起士「何でしょう?……叩いた事は謝りませんよ」

ネメア「それはいい。この馬鹿が悪いのだから」

召喚士「馬鹿って言うなよ……」

ネメア「召喚術を使えるか聞きたいのだが」

喚起士「……今は武具などしか出来ませんが」

ネメア「そうでは無い。喚起術では無く召喚術をだ」

喚起士「そちらの召喚術は……一応出来ますが低級の者を呼べるくらいですよ」

ネメア「そうなのか?ジノを召喚すれば……」

喚起士「無理ですよ……ジノ程の召喚獣を憑依召喚なんて……私の体が持ちません」

ネメア「……?」

喚起士「余程魔力が潤沢にある方でなければ耐えられないと思いますよ」

ネメア「………」

召喚士「どういう事?」

ネメア「黙っていろ……」

喚起士「……何故そのような事を聞かれたのですか?」

ネメア「いや……私の不足している知識を補おうとな」

喚起士「……なら召喚士さんにお聞きになられたら?」

ネメア「………」

喚起士「なるほど……」

召喚士「……??」



喚起士「今は……喚起と召喚の意味を知っている方も少ないと思います」

ネメア「ふむ……」

喚起士「この二つの術は召喚術として同混されてしまっていますから」

ネメア「そうだったのか……」

喚起士「……召喚術を使おうとお考え何ですか?」

ネメア「………」

喚起士「失敗した時の事を考えたら……止めた方がいいと思いますよ」

召喚士「喚起士さん……失敗したらどうなるんですか?」

喚起士「……四散します」

召喚士「何が……?」

喚起士「召喚者の身体が……」

召喚士、ネメア「………」

喚起士「最悪の場合ですね」

召喚士「……驚かせないでくださいよぉ」

喚起士「後は、召喚者の魂がこの世に留まりきれなくなったりですか……」

召喚士「……それはどういう事ですか?」

喚起士「召喚者の体に召喚獣が入る訳ですから……召喚者の魂が押し出される形で外に出てしまうんですよ」

召喚士「……つまり?」

喚起士「死です」

召喚士「………」

ネメア (私には害は無いみたいだな……)

喚起士「召喚獣の方にも影響が出る場合もありますよ」

ネメア「ッ!!!」

喚起士「召喚獣は召喚者の魂に触れた時に……」

ネメア「……何が起きるのだ?」

喚起士「召喚獣の存在自体にズレが生じて元の状態に戻らなくなりますね」

ネメア「……つまり?」

喚起士「消滅します」

ネメア「………」

喚起士「その前に魔力の消耗が激し過ぎて召喚者が気を失ってしまうので滅多に起きませんけど」

召喚士、ネメア「………」

喚起士「……どうかいたしました?」

召喚士「い、いやぁ……喚起士さんは博識だなぁと……は……はは……」

ネメア「本当に……か、関心するな……」

喚起士「そのような事は……」

召喚士、ネメア (笑えん……)



剣士「召喚?とかな……ああ言う話題だとさっぱりわからねえぜ……」

盗賊「………」

剣士「何か仲間外れみたいで嫌だな。そう思わねえ?」

盗賊「………」

剣士「……まぁいいや。お前ってさ、化物なんだから……強いよな?」

盗賊「………」

剣士「……弱いのか?」

盗賊「……強い」

剣士「そうか!ならよ、村に着いたら手合わせしてくれよ!」

盗賊「………」コクッ

剣士「おし!約束な!」

盗賊「………」



召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「……おい」

ネメア「何も言うな……」

召喚士「死んでたらどうするんだよッ!」

ネメア「私だって消滅していたかもしれないのだ!……知らなかったとは言え……すまなかった」

召喚士「………」

ネメア「……お前、あの後体の痛み以外は何とも無かったのか?」

召喚士「……無いよ?」

ネメア「………」

召喚士「何?」

ネメア「魔力は?」

召喚士「……わからない」

ネメア「………」



剣士「よっしゃ!村に着いたぜ!」

喚起士「明るいうちに着いて良かったですね」

召喚士、ネメア「………」

喚起士「……?」

ジノ「召喚兄さんどうしたの?」

召喚士「人は……知らないうちに死の淵に立たされるとどんな感情を持てばいいのかわから無くなるってね……」

ジノ「……はあ?」

喚起士「私は宿へ向かいますが、召喚士さん達はどうします?」

召喚士「……一緒に行きます」

剣士「行くか!荷物置いたら頼むな盗賊!」

盗賊「………」コクッ



剣士「おし!行くぞ盗賊!」

盗賊「………」コクッ

召喚士「どこ行くんだ?」

剣士「この宿の裏側はちょっと広いからな!そこにだ!」

召喚士「へぇ……」

剣士「召喚士よ、一緒にどうだ?」

召喚士、ネメア「………」

剣士「二人より三人でやった方がいいと思うんだわ!」

召喚士、ネメア (なんだと……?)

剣士「どうする?」

召喚士「い、いいのか?色々と準備とかしなくて大丈夫なのか!俺初心者だけどッ!」

剣士「……?」

ネメア (この筋肉めが……ッ!)

剣士「何言ってんだよ。召喚士ぐらいならいつでも大丈夫だろ」

召喚士「………」

剣士「ん……あれやるか。縄使ってよお互い縛って!」

召喚士 (縄ッ!……お互い縛ってなんて一体どんなプレーなんだッ!)

剣士「中々楽しいぜあれ!」

召喚士「そうなのか……」ゴクリ

剣士「じゃあ行くか!」

召喚士「あ、ああ……」

盗賊「………」

召喚士 (さ、三人でだなんて!しかも野外緊縛プレーだなんてぇえッ!)

ネメア (喰い殺す……)

剣士「楽しみだな!」

盗賊「………」コクッ



剣士「セアァァッ!」

ガギィッ!ガッ!

盗賊「………」

召喚士、ネメア「………」

剣士「凄えなお前ッ!そんなちっちぇ体なのにびくともしねえなんてッ!」

盗賊「………」

剣士「ダアァァッ!」

盗賊「………」ヒョイ

剣士「避けてもこいつがあるんだせッ!」グイッ

盗賊「……!」

剣士「喰らえぇぇッ!」

ズバンッ!ズザザァァ……

盗賊「………」

剣士「どうだッ!」

盗賊「………」ムクッ

剣士「平然と立ちやがる……ちったあ痛がれよ……」

召喚士「ねぇネメア……」

ネメア「なんだ……」

召喚士「俺……ちょっと心が汚れてたみたいだ……」

ネメア「そうか……」

盗賊「………」

ズガッ!ガギギ……

剣士「グゥッ!化物がッ!」

盗賊「………」グイッ

剣士「うおッ!」

ズドムッ!

剣士「ガハァッ!……ゲハッ参った!」

盗賊「………」

剣士「はぁ……素手対棒きれで負けるなんてなぁ……」

盗賊「………」

剣士「ん……盗賊よお」

盗賊「………」

剣士「戦った相手に勝った時はこうするんだぜ!こう腕を上げてな!」バッ!

盗賊「………」バッ!

剣士「そうだぜ!ガッツポーズだ!」

盗賊「………」バッ!

召喚士「何か……いいコンビだね」

ネメア「……そうだな」

盗賊「………」バッ!



召喚士、喚起士「………」

剣士「………」

盗賊「………」バッ!

剣士「もうやらなくていいぜ……」

盗賊「………」コクッ

喚起士「この子は私と同じ部屋でいいですね?」

盗賊「………」フルフル

喚起士「……嫌ですか?」

盗賊「剣士と一緒」

喚起士「……わかりました」

召喚士 (あれ……随分簡単に引いたな……)

喚起士「なら……私と召喚士さんで同じ部屋を使いますので」

召喚士「ッ!!!」

剣士「おう!行くか盗賊」

盗賊「………」コクッ

カチャ

召喚士「………」

喚起士「はぁ……」

召喚士「いいいいんですか?」

喚起士「……あの二人の事ですか?」

召喚士「この部屋を二人で使う事ですよ!」

喚起士「それは構いませんよ。もし……何か起きても私が言った事ですから……私の責任です」

召喚士「………」

喚起士「前回は何もありませんでしたし……召喚士さんなら大丈夫かなって」

召喚士「………」

喚起士「……大丈夫ですよね?」たゆん

召喚士「だだだ大丈夫です!」

喚起士「良かった……」

ネメア「……私は反対だ」

喚起士「………」

召喚士「喚起士さん、前は剣士とパイアの関係を許せなかったんじゃ……」

喚起士「それですか……」

召喚士「………」

喚起士「それは……あの子は人間じゃ無いのでいいかなと……」

ネメア「良くだろッ!!!」

召喚士 (喚起士さん……意外といい加減なのかな……)

ネメア「アアアアッ!あの獣筋肉にパイアがぁぁッ!」

召喚士、喚起士「………」



召喚士「………」

喚起士「……zzz」

召喚士「これから先ずっとこんな感じなのかな……」

ネメア「………」

ジノ「……喚起士に近寄ったら喰う!」

召喚士「お前らに囲まれて近寄れる訳無いだろ……」

ネメア「………」

ジノ「……兄ちゃんパイアの事いい加減あきらめたら?」

ネメア「グググッ……パイアが私達の母のようになったらどうするんだ!」

召喚士「……?」

ジノ「それは大丈夫だと思うよ……」

ネメア「アアアア……」

召喚士「……お前達の母親って何か凄そうだな」

ジノ「凄いね……色々な意味で」

ネメア「………」

召喚士「……どんな感じで凄いんだ?」

ジノ「バツ2の子沢山……」

召喚士「………」

ジノ「あたしの父ちゃん……母ちゃんの息子だし……」

召喚士「複雑な家庭なんだな……」

ネメア「………」

ジノ「あたしの母ちゃん超有名だけど知らないの?」

召喚士「……知らない」

ジノ「ええぇ……」

ネメア「こいつにその類い事は聞かない方がいい。一々説明せねばならんからな」

ジノ「めんどくさい召喚兄さんだなぁ……」

召喚士「………」

ネメア「因にだ、私達は19の兄弟がいる」

召喚士「喚起士さんも多いと思ったけど……お前の母親産みすぎだろ……」

ネメア「産み過ぎとは失礼な……待て、この女それ程子がいるのか?」

ジノ「………」

召喚士「ジノが言ってたぞ。五人いるって」

ネメア「まだ若そうなのに……人は見掛けによらぬな……」

召喚士「本当そうだな……」

ジノ「………」



剣士「ぐごごごがぁ……」

盗賊「………」

剣士「ぐごごごがぁ……ふがぁ……」

盗賊「………」ムクッ

剣士「ぐごご……」

盗賊「………」

ズドムッ!

剣士「ゴガッ……」

盗賊「………」

剣士「………」

盗賊「………」ススッ

剣士「………」

盗賊「……zzz」

ーー

召喚士「剣士おはよう?……どうしたんだ?」

剣士「おは……ぐあぁ……何か起きたら脇腹が痛くてよ……」

盗賊「………」

召喚士「昨日のダメージが残ってたんじゃないのか?」

剣士「そんな事はねえと思うんだが……イテテ……」

盗賊「………」

剣士「……お前、俺が寝てる時に何かした?」

盗賊「………」フルフル

剣士「そっか……ぐぅ……」

喚起士「今日は海辺の街まで行きますか?」

召喚士「そうですね……喚起士さんはここ行った事あります?」

喚起士「はい、ありますよ。結構大きい港町ですね」

召喚士「そうなんですか」



喚起士「………」

召喚士「喚起士さん……聞きたい事があるんですけど……」

喚起士「何でしょう?」

召喚士「……喚起士さんの仇が使っていた召喚獣ってどんな奴なんですか?」

喚起士「………」

召喚士「言いたくありませんか……?」

喚起士「いえ……カンヘルと言う名前の召喚獣です」

召喚士「カンヘル……ネメア知ってる?」

ネメア「………」

召喚士「ねぇ?」

ネメア「女、カンヘルで……間違いないのか?」

喚起士「はい……」

ジノ「………」

召喚士「……教えてくれよ」

ネメア「………」

ジノ「………」

召喚士「そんなにヤバい奴なの?」

喚起士「この世界を神と一緒に作った竜の一族と言われていますね……」

召喚士「……それ洒落にならないんじゃ」

喚起士「………」

ネメア「……女、悪い事は言わない。諦めた方がいいと思うが」

喚起士「いいえ、目の前に現れたのなら必ず討ちます」

ネメア「………」

喚起士「………」



剣士「デアアァァッ!」

ガギィッ!

盗賊「………」

剣士「……お前相手だと歩きながら稽古出来るから助かるぜ!」

盗賊「……戦う相手を倒したいの?」

剣士「お?珍しいな!」

盗賊「………」

剣士「そうだな!倒したい!」

盗賊「なら……命令すれば私が倒す」

剣士「はぁ?そんなん意味ねえだろ」

盗賊「………」

剣士「やっぱ自分の手で倒さなきゃな!勝った実感ってのがねえだろ?」

盗賊「………」

剣士「わかるか?」

盗賊「………」フルフル

剣士「かぁー!化物にはわかんねえか!」

盗賊「………」

剣士「まぁ……これは俺の戦い方だ」

盗賊「………」

剣士「あぁ……もっと強くなりてえなぁ……」

盗賊「………」

剣士「せめてお前をのせるぐらい強くなりてえなッ!」

盗賊「そう……」

剣士「さて、もういっちょ行くぜ!」

盗賊「………」

ーー

召喚士「は……凄いなぁ……」

喚起士「あの……あまりキョロキョロされない方が……」

召喚士「え?ああ……すいません。予想外に大きい街だったので……」

喚起士「………」

ネメア「召喚士よ」

召喚士「なに?」

ネメア「女は今こう思っている。田舎者丸出しの奴と歩くのは恥ずかしいと!」

召喚士「………」

喚起士「そ、そんな事思っていませんよ!」

ネメア「ハッキリ言ってやった方がいい」

ジノ「後、こうも思ってる。人の胸ばかり見てんじゃねえよこの童貞野郎と!」

喚起士「ジノ!違いますよ召喚士さん!そんな事思っていませんからね!」

召喚士「………」

ジノ「ハッキリ言ってやった方がいいって!」

喚起士「やめなさい!本当にそんな事は……」

召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士「……海を見てこようと思います」

喚起士「え?」

召喚士「フジツボと戯れたら楽しいだろうなぁ……」

喚起士「召喚士さん……?」

召喚士「……アハハハ」ガチャ……

ふらふら……

喚起士「………」

ネメア「……置いて行くな!」

ジノ「………」

剣士「あれ?召喚士は?」

喚起士、ジノ「………」

ネメア「幻想の世界へ旅立った」

剣士「なんだそりゃ……」

喚起士「私追います!」

ネメア「待て!……そっとしておいてやるのも優しさだ」

喚起士「ですがあれでは!」

ネメア「ほおっておけばいい」

喚起士「………」

ジノ「兄ちゃんの言った事……優しさの欠片も無かったよ?」

ネメア「とどめ刺したのはジノの言葉だと思うがな……」

ジノ「………」

剣士「……?盗賊よ……あら?あいつもいねえし!」

ーー

ザザザザァ……

召喚士「アハハハ……」

召喚士「はは……は……」

召喚士「………」

召喚士「……仕方無いじゃないか」

召喚士「色々珍しかったんだしさ……見ちゃうよ……」

召喚士「………」

召喚士「……仕方無いじゃないか」

召喚士「あんな魔力たっぷりでボリューム満点のオッパイがあればさ……見ちゃうよ……」

召喚士「田舎者で童貞なんて言わないでも……本当の事だけどさ……」

召喚士「………」

召喚士「……ん?」



盗賊「………」カキカキ

盗賊「………」カキカキ

召喚士「……お前こんな砂浜で何やってんの?」

盗賊「………」

召喚士「………」

盗賊「………」カキカキ

召喚士「喋れよ……」

盗賊「剣士……」

召喚士「え?……これ?」

盗賊「………」コクッ

召喚士「へぇ……絵書くの上手いな」

盗賊「あっちがお化けオッパイ……」

召喚士「誰だかわかるけど……喚起士さんってちゃんと言えよ……」

盗賊「ジノ……ネメア兄……」

召喚士 (見た目子供だけど……やる事も子供なんだな……)

盗賊「………」

召喚士「………」

盗賊「………」

召喚士「俺は……?」

盗賊「………」

召喚士「………」

盗賊「あっち……」

召喚士「……あっち?……ぐあッ!」

盗賊「………」ふふん

召喚士「や、やめろよッ!なんだよあれ!」

盗賊「自信作……」

召喚士「岩場に俺の顔掘ってんじゃ無いよ!」

盗賊「………」

召喚士「早く壊してくれ!恥ずかしいだろ!」

盗賊「……嫌」

召喚士「人に見られる前にマジで壊してくれってッ!」

盗賊「………」

召喚士「だあぁ!お願いだから!」

盗賊「………」カキカキ

召喚士「無視するなッ!」

盗賊「……出来た」

召喚士「そうか!なら早く俺の顔を壊してくれ!」

盗賊「………」ジー

召喚士「な、なんだよ?」

盗賊「………」

召喚士「……?」

喚起士「召喚士さん!」

召喚士「………」

喚起士「探しましたよ!……パイアも一緒でしたか。良かった……」

召喚士「……喚起士さん」

喚起士「もう……心配させないでください」

召喚士「………」

喚起士「……ネメアやジノが言った事は気にしないでくださいね。あんな事……本当に思っていませんから」

召喚士「………」

盗賊「………」?

喚起士「パイア……貴女は何故剣士さんを離れたんですか……」

盗賊「……これ」

喚起士「……絵ですか……?」

盗賊「………」

喚起士「これは……私?」

盗賊「………」コクッ

喚起士「そっちが……剣士さん……ネメアジノパイアですか……」

盗賊「………」

喚起士「……召喚士さんは?」

盗賊「あそこ……」

喚起士「うわ……いえ……」

召喚士 (うわって言われた……あああ……)

喚起士「……何故こんな事を?」

盗賊「王の魔銀杭……」

喚起士「……それは何ですか?」

盗賊「………」

喚起士「……?」

盗賊「………」



喚起士「召喚士さん……戻りましょう……」

召喚士「………」ズーン……

喚起士 (さっきの……うわって聞かれちゃったのかな……)

召喚士「………」

喚起士「あ、あの……さっきのは……ごめんなさい……」

召喚士「いいんですよ……俺も同じ事思いましたから……」

喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士 (どうすれば召喚士さんの機嫌を治せるのでしょうか……)

盗賊「………」バチャバチャ!

召喚士「おい、水辺で遊ぶのはいいけど転ぶなよ……」

盗賊「………」ツルッ……ダパァンッ!

召喚士、喚起士「………」

盗賊「………」ビシャビシャ……

召喚士「言ったそばから転ぶんじゃないよ……」

盗賊「……冷たい」

召喚士「ほら……拭いてやるからこっち来い……」ゴシゴシ……

盗賊「………」

召喚士「……こうしてるとお前人間と同じだな。ネメアやジノと同じとは思えないよ」

喚起士「………」

召喚士「……どうしました?」

喚起士「いえ……」

召喚士「喚起士さんの子供もこんな感じ何ですか?」

喚起士「………」

召喚士「……?」

喚起士「その……私に子供がいると言うのは嘘なんです……」

召喚士「……え」

喚起士「ジノが私を守ろうと……」

召喚士「………」

喚起士「ごめんなさい……」

召喚士「い、いいですよ!……なら旦那さんがいるって言うのも嘘なんですか?」

喚起士「はい……」

召喚士「………」

喚起士「………」

召喚士 (嘘だったのか……あの下半身猫科め……)

喚起士「すいません……」

召喚士「も、もう謝らないでください!いやぁははは!」

盗賊「………」グゥ……

召喚士「……え?」

喚起士「今のは……」

盗賊「……お腹すいた」

召喚士「お前人間だろ……」



剣士「いつまでこんな所にいればいいんだ?」

ネメア「女が戻ってくるまでだ」

剣士「そうかい。こんな広場でボーっと待ってるとあれだな」

ネメア「なんだ?」

剣士「職のねえ奴等みてえだなって」

ネメア「……広場でボーっとしている者誰しも職が無い訳ではあるまいに」

ジノ (パイアいないと普通に会話するんだ……)

剣士「暇だな……」

ジノ「なら、あたしとナゾナゾ勝負しようよ!」

剣士「あ?ナゾナゾぉ?」

ネメア「またお前は……やめなさい」

ジノ「いいから!……やる? 」

剣士「やんねえよ……ガキじゃあるめえし……」

ジノ「ガキって!……この筋肉ムカつく!」

剣士「んあーっ……腹減ったな!何か食いに……」

ドンッ!

剣士「あん?」

……「……ご、こめんなさい!」

剣士「構わねえ……ってお前どこに行ってたんだよ……」

……「え?」

剣士「一人でどっかふらふら行くんじゃねえよ。盗賊よ」

盗賊?「………」

ネメア「パイアよ……心配させるな」

盗賊?「な、何この声?……どこから」

剣士「飯食ってまた戻ってくればいいよな?」

ネメア「それぐらいなら構わないだろ。もし私達がいなくてもこの場所で待っているだろうからな」

剣士「おし!じゃあ行くか!」

盗賊?「ちょっと……待って……」

剣士「いいからよ!その服どっかから貰ってきたのか?」

ジノ「……兄ちゃん」

ネメア「なんだ?」

ジノ「パイアじゃ無いよ……この子」

ネメア「………」

剣士「そうだ……盗賊よ!今日こそはその顔歪ませてやる!」

盗賊?「……?」

剣士「あんまり俺をナメんなよ!その小せえ穴をガバガバにしてやるからな!」

盗賊?「………」

剣士「どうした?」

盗賊?「い、嫌ッ!近寄らないでぇッ!」

剣士「はあ?何言ってんだよ……」

盗賊?「………」ガタガタ……



盗賊「………」グゥゥゥッ!

召喚士「人間じゃここまで腹の虫は暴れないよな……」

喚起士「戻りましょう……」

イタゾッ!コッチダ!

召喚士「ん?」

ダダダダダッ!

召喚士「ななななんだ!?」

兵士「………」

喚起士「……私達に何か?」

兵士「お前達……その娘をこちらへ引き渡せ!」

召喚士「……お前何かやったの?」

盗賊「………」フルフル

喚起士「この子は私共の連れでございます。どなたかとお間違いになられてるのでは?」

兵士「……そんな事無い!」

喚起士「……そう言われましても」

兵士「何も聞かずその娘を寄越せばいいんだ!」

喚起士「………」

兵士「どけッ!」

ドンッ!

喚起士「きゃっ!」

召喚士「何をするんだ!」

兵士「うるさいッ!貴様……楯突くなら……」

盗賊「………」スゥ……

兵士「……そうだ、最初から大人しくこちらへ来てれば手荒な事はしない」

召喚士「喚起士さん大丈夫ですか!」

喚起士「ええ……」

召喚士「パイア……あいつ何を……」

盗賊「………」

兵士「ここまでは上手く逃げ出せたみたいだが残念だったな!」

盗賊「………」グゥゥゥ……

兵士「………」

盗賊「………」クルッ

タタタ……

兵士「おいッ!どこへ……」

盗賊「………」

喚起士「な、何か?」

盗賊「……魔力貰う」

喚起士「ええ?どうやっ……んんッ!」

盗賊「……ん」

兵士、召喚士「………」

兵士「おいお前……あれがお前の国で行われる別れの挨拶か?」ゴクリッ

召喚士「そ、そうだ!……」ゴクリッ

喚起士 (あっ……そんな……舌を絡ませ……)

盗賊「……ふぁ……ちゅぅ……」

喚起士 (こんな……ぁあ事をされたら……私……私ぃぃぃ……)

兵士、召喚士「………」

兵士「凄いな……」

召喚士「本当に……」

喚起士 (あぅ……本当におかしく……なっちゃ……)

盗賊「……ぷはっ」

喚起士「……え?」

盗賊「……ありがとう」

喚起士「………」

盗賊「………」クルッ

兵士、召喚士、喚起士 (も、もう少し……やって欲しかった……)

兵士「あ、ああ……そうだったな……」

盗賊「………」

兵士「………」

召喚士「……?」

兵士「チッ……やめだ」

盗賊「………」

兵士「お前らこいつを連れてどこかへ行け……」

召喚士「……さっきまで捕まえる気だったのに……何故?」

兵士「……いいから!」

喚起士「……色々説明して貰わなければここから動けませんよ。この子を何故捕まえようと?」

兵士「………」



剣士「悪かったって……」

盗賊?「近寄らないで!」

剣士「なんだよ……そんな大声だしたら人集まってくるぞ?」

盗賊?「……くっ」

ネメア「まさか……パイアでは無かったとは……」

ジノ「……本当そっくりだよね。あたしじゃなかったら見分け付かないもん……」

ネメア「………」

ジノ「ねぇ兄ちゃん……この子に兄ちゃんの存在バレちゃったけどどうするの?」

ネメア「グガァァ……仕方あるまい……」

剣士「本っ当……お前盗賊にそっくりだわ……」

盗賊?「………」

剣士「ネメアよ……これはどうしたらいいんだ?」

ネメア「……どうしたらと言われてもな……これは……」

盗賊?「……この声、魔術か何か?」

剣士「違えし。化物の声だぜ!」

盗賊?「化物……」

ネメア「そういう言い方をするな!……失礼な奴だ!」

盗賊?「………」

剣士「だって本当だろ?」

ネメア「ぐぬぬ……こいつは……」

盗賊?「……ぷっ」

ネメア「………」

盗賊?「クスクスッ変なのぉ」

ネメア「笑うな……」

剣士「こいつ、盗賊の偽物ってわかったから行かせていいよな?」

ネメア「構わん……まったく最近の人間の教育は一体どうなっているのだ……」ブツブツ……

ジノ「兄ちゃん……それおっさん臭いから止めた方がいいよ……」

剣士「悪りいな引き止めちまって」

盗賊?「………」

剣士「行かないのか?」

盗賊?「……おじさん強いの?」

剣士「なんだいきなり……まぁそれなりだな。今は俺なんかより強い奴等と一緒にいるからな!」

盗賊?「………」

剣士「……?」

盗賊?「なら……私達を助けてッ!」

剣士「はあ?助ける?」



兵士「さっきはすまなかったな……」

喚起士「いえ……」

召喚士「お前お姫様なの?」

盗賊「………」フルフル

兵士「………」

喚起士「貴方は逃げ出した捕虜のお姫様を探しにここまで来たのですか?」

兵士「そう言う事になるな。俺一人で追っていた訳では無いが」

喚起士「そのお姫様が……パイアに似てると……」

兵士「本物だと思うんだが……他人の空似にしては似過ぎなんだよな……」

喚起士「この子は違います」

兵士「なんでそう言い切れるんだ?」

喚起士 (人間では無いとは言え無いですね……)

兵士「………」

召喚士「そのお姫様って強いのか?」

兵士「子供だぞ?強い訳無いだろ」

召喚士「パイア……あそこの岩殴ってくれよ」

盗賊「………」

召喚士「……?」

盗賊「喚起士が言うならやる」

召喚士「……何故?」

盗賊「魔力くれたから」

召喚士「……なるほど。喚起士さんいいですか?」

喚起士「はい……パイア……お願いします……」

兵士、召喚士 (何故顔を赤くするんだ……)

盗賊「………」グッ!

バガァンッ!……パラパラ……

兵士「………」

召喚士「な?違うだろ?」

兵士「………」

召喚士「あんた……捕まえるの止めて良かったな」ボソッ……

兵士「………」

召喚士「あのままパイアを捕まえていたらお前がああなっていたもんな……」

兵士「………」

召喚士「………」

喚起士「おわかり頂けたでしょうか?」

兵士「あ、ああ……わかった」

喚起士「……それと、お聞きしたいのですが」

兵士「何を?」

喚起士「何故パイアと私達の事を逃がそうとしたのですか?」

兵士「………」チラ……

盗賊「………」

兵士「はぁ……嫌になったんだよ。故郷でも無い国の為に戦い……女子供を捕虜や奴隷にして……」

喚起士「………」

兵士「それを逃がせばこんな子供の尻追い掛け回さなきゃならない事にな」

召喚士「やりたくないって言えばいいんじゃないのか?」

兵士「下っぱがそんな事言えるか」

召喚士「………」

喚起士「……こんな事をなさっては貴方が危なくなるのでは?」

兵士「いいよいいよ……バレてないし。気にしないでくれ」

喚起士「……ですが」

兵士「それに本物じゃ無いのに捕まえても仕方無いしさ」

喚起士「………」

兵士「何かすまなかったな」

喚起士「いえ……」

召喚士「あんたこれからどうするんだ?」

兵士「そうだな……取り合えず仲間の所に戻るかな」

召喚士「そっか……」

盗賊「………」

兵士「じゃあな嬢ちゃん。お前達も気を付けて帰れよ」

召喚士「おう!」

タタタ……

喚起士「………」



剣士「………」

盗賊?「お願い……私達の国を……」

剣士「……俺はお断りだな」

盗賊?「………」

ネメア「お嬢、悪いが私も同意見だ」

盗賊?「………」

剣士「俺達は人間3人に化物3匹だけだぞ?いくら強いつったってよ国相手に喧嘩なんか出来るか」

ネメア「………」

盗賊?「……うぐ……うぅぅ……」

剣士、ネメア「………」

ジノ「あぁあ……女の子泣かしちゃった……」

剣士「し、仕方ねえじゃねえか……」

ネメア「そうだ……」

盗賊?「もう……うぅぅ……頼れる人がいないの……」

剣士「そんな事言われてもな……」

ネメア「………」

ジノ「どうするの兄ちゃん……」

盗賊?「ふうえぇぇん……」

剣士「や、やめろよ……人が見てるだろ……」

ネメア「……困った事になったな」

剣士「………」

盗賊?「うぅぅぐすっ……」

盗賊「………」

剣士「おッ!」

ネメア「パイアッ!」



召喚士、喚起士「………」

盗賊?「ぐすっ……」

剣士「お前どこ行ってたんだよ!」

盗賊「………」

喚起士「これ程似ていたとは……」

召喚士「なんで一緒にいるんだよ……」

ネメア「……全てお前のせいだ」

召喚士「……なんで?」

ネメア「貴様がふらふらと何処かへ行かなければこのような事にはなっていなかったのだ!」

召喚士「………」

喚起士「と、取り合えずこんな所ではなんですので……宿に。パイア様とこの子に何か布を被せて行きましょう……」

ネメア、ジノ (パイア……様?)

召喚士「………」

ーー

盗賊?「へぇぇ……」

盗賊「………」

喚起士「……この子はどうやら追われている身のようですね」

ネメア「何かあったのか?」

喚起士「はい……パイア様と一緒にいたところ……どこかの国の兵士さんに引き渡せと言われまして」

ネメア「ふむ……」

喚起士「パイア様とこの子を間違えていたらしく……」

ネメア「女よ……」

喚起士「はい?」

ネメア「先程からパイア様と……一体何なのだ?私達に様等付けていなかっただろ?」

喚起士「それは……」

ネメア「……?」

喚起士「………」

召喚士「………」

ネメア「召喚士よ……何か知っているな?」

召喚士「いや……知らない……」

ネメア「………」

ジノ「あの子何者なの?」

喚起士「……捕虜にされている……何処かの国のお姫様だと聞いていますね」

ジノ「お姫様ッ!」

剣士「最悪だな……」

召喚士「なんで?」

剣士「………」

召喚士「……?」

ネメア「……これで天界とこのお嬢を捕虜にしていた国から追われる事になるな」

剣士「天界って何の事だ?」



剣士「聞いて無いぞ……」

ネメア「言ってないからな」

剣士「そっちは……まぁいいか」

ネメア「いいのか……良くないだろ……」

剣士「こっちの方が問題だ。おい偽盗賊!」

盗賊?「………」ビクッ

盗賊「………」

剣士「お前何者だ?」

盗賊?「………」

剣士「何もしねえよ……偽物にはな」

盗賊?「……こっちにはしてるの?」

剣士「おう!してるしてる!」

盗賊「………」

盗賊?「………」ガタガタ……

召喚士「お前は喋るな……」

剣士「なんで?」

召喚士「いいから……この子怖がってるだろ!何言ったんだよ……」

剣士「盗賊だと思ってたからガバガバにしてやるって言っただけだぞ?」

召喚士「………」

喚起士「貴方は……向こうへ行っててください!」

剣士「なんだよ……盗賊行くか……」

盗賊「………」コクッ

盗賊?「駄目ッ!」

盗賊「……?」

盗賊?「………」

剣士「何でだよ……って捕虜だったっけお前?」

盗賊?「そう……」

剣士「盗賊は奴隷じゃ無い。なぁ盗賊よ」

盗賊「………」コクッ

剣士「……人を見た目で判断すんな」

盗賊?「………」

召喚士「……どういう事?」

ネメア「一々聞くな。……うっとしい」

召喚士「………」

剣士「行くぞ盗賊……」

盗賊「………」コクッ

盗賊?「………」



盗賊?「………」

召喚士「変わってる奴だけど……あれでも悪い奴じゃ無いからさ……」

喚起士「……お聞かせ願いますか?」

盗賊?「うん……」

喚起士「貴女は一体何者でしょうか?貴女を追っている方に……お姫様だと聞きましたが」

盗賊?「………」

喚起士「………」

盗賊?「私は……谷の国の姫宮をしてたの……」

喚起士「………」

召喚士「……姫宮って何?偉いの?」

ネメア「……いい加減にしておけよ……王女の意味だ」

姫宮「………」

召喚士「この子が女王?マジ?」

姫宮「今は……違うけど……」

召喚士「………」

喚起士「その女王が何故捕虜などになられていたのですか?」

姫宮「………」

喚起士「谷の国でしたか……あの辺りでは戦争があったなんて聞いた事が無いのですが……」

姫宮「……国を……乗っ取られたの」

喚起士「まさか……そんな事……」

姫宮「………」

召喚士「どういう事?」

ネメア「喋るな。黙って聞いていろ」

召喚士「……最近お前……冷たいよな」

ネメア「気色悪い事を言うな……」

召喚士「………」

姫宮「………」

喚起士「乗っ取られたなんて……そんな事あるのですか?」

姫宮「……あの魔法使いが来て」

喚起士「………」

姫宮「お父様や周りの人間もおかしくなっちゃって……」

喚起士「………」

姫宮「……それでね……将軍と名乗る人が私の国を動かし始めたの」

喚起士「………」

姫宮「邪魔な人や女子供を人質に取ったりして……」

喚起士「もう……いいですよ。わかりましたから」

姫宮「………」

喚起士「………」

ネメア「災難だが……私達は力になれそうも無いな」

姫宮「後ね……見ちゃったの」

召喚士「何をだい?」

姫宮「魔法使いが白い魔物を呼び出しているところを……」

喚起士「ッ!」

ネメア「……召喚士、何か書くものを持ってきてくれ」

召喚士「わ、わかった」

喚起士「……その魔物の名前はわかります?」

姫宮「わからない……」

喚起士「………」



召喚士「持ってきたよ」

喚起士「貸してください!」

召喚士「はい……?」

喚起士「………」カリカリ……

ネメア「………」

喚起士「その魔物はこんな容姿ではありませんでしたか!」

姫宮「………」

喚起士「………」

姫宮「……ううん、ウサギさんじゃ無かったよ?」

喚起士「ウサギじゃありませんッ!」

召喚士、ネメア (ウサギだな……)

喚起士「あああ!……パイア様の所に行ってきます!」

ダダダッ……



喚起士「この魔物で間違い無いですね?」バッ!

姫宮「これ……この魔物だよ!」

喚起士「そうですか……」

ネメア「………」

召喚士「……?」

ネメア「……召喚士よ、言われる前に言っておく。これがカンヘルだ」

召喚士「人の心を読むなよって……そいつ……」

ネメア「そうだ」

喚起士「………」

姫宮「……どうしたの?」

喚起士「貴女はこれからどうするおつもりですか?」

姫宮「……国を取り戻して……国を救いたい!」

喚起士「………」

姫宮「でも……力を貸してくれる人がいないの……」

喚起士「……他の国へ願い出ては?」

姫宮「……駄目だったの。将軍や魔法使いに手を回されていて……」

喚起士「………」

姫宮「貴方達強いんでしょッ!お願い……私に力を貸して……」

ネメア「………」

喚起士「召喚士さん……」

召喚士「はい?」

喚起士「私……姫宮様と一緒に行こうと思います」

姫宮「……いいの?」

喚起士「はい……」

ネメア「女よ、道がひとつに重なったか……」

喚起士「……その通りです」

姫宮、召喚士「……?」

ネメア「ならば歩めば良い」

喚起士「……はい」

召喚士「………」

姫宮「ありがとう……うぅ……」

喚起士「………」



召喚士「………」

喚起士「………」

ネメア (双方聞けぬか……)

ジノ「召喚兄さんいなくても喚起士はあたしが守るよ!」

ネメア「ジノ……今は黙っていなさい」

ジノ「何で?」

ネメア「いいから」

召喚士 (俺は行くべきなんだろうか……)

喚起士「……お悩みになってしまいますよね」

召喚士「……はい」

喚起士「ごめんなさい……」

召喚士「謝らないでください……」

喚起士「………」

ネメア「召喚士よ、朝までにまだ時間はある。良く考えて答えを出すがいい」

召喚士「………」

ジノ「召喚兄さん、悩む事なの?」

召喚士「……仕方無いだろ」

ジノ「ふぅん……」

召喚士「………」

姫宮「………」

召喚士「喚起士さん……悪いけど今日は剣士の所で寝ます……明日、必ず……」

喚起士「わかりました……」

召喚士「………」



剣士「チッ……盗賊来い」

盗賊「………」

剣士「今日は乱暴にするが我慢しろよ」

盗賊「………」

コンコンッ

剣士「あぁ?……開いてるぜ」

カチャ

召喚士「入るよ……悪いけどさ……今日は一緒に寝ていいか?」

剣士「……なんだ?やっぱり俺と

召喚士「それは絶対無い!」

剣士「つまんねえなぁ……」

召喚士「楽しまれてたまるか……」

剣士「……で、めんどくせえ事になってんだろ?」

召喚士「わかる?」

剣士「そんな顔してるからな」

召喚士「………」

剣士「俺は行かないぞ。国相手に喧嘩なんて勝てる訳ねえ……」

召喚士「そうだよね……」

ネメア「………」

召喚士「ねぇネメア……どうしたらいいかな……」

ネメア「私にお前の進む道を選べと言うのか?」

召喚士「どうしたらいいか……わからないんだよ……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「……私が女に道が重なったと言ったのを覚えているか?」

召喚士「うん……あれはいったいなんなの?」

ネメア「喚起士は……自分の進むべき道に迷い……心が揺らいでいたのだ」

召喚士「………」

ネメア「仇の事……ここまでの道中で見た奴隷達の事……他にもあったのかもしれない」

召喚士「………」

ネメア「だが、仇を見つけ……討つ事……奴隷達を救う事」


召喚士「………」

ネメア「その道が喚起士の前で重なりひとつになったのだ。後は進む覚悟を……」

召喚士「……どうしたの?」

ネメア「いや……」

召喚士「……?」

剣士「あの姉ちゃんは行くのか」

召喚士「……そうだね」

剣士「ふぅん……」

召喚士「………」

剣士「……召喚士みたな強い奴でもそんなに悩むのか?」

召喚士「俺は……強くなんか無いよ」

剣士「へぇ……」

召喚士「………」

剣士 (まだ自分を弱いって言うのか……どんだけだよ)

ネメア「……召喚士よ」

召喚士「……なに?」

ネメア「お嬢と喚起士に着いて行った方がいいかもしれん……」

召喚士「何だよ……突然……」

ネメア「もしだ、喚起士が仇を討てたとしよう……」

召喚士「喚起士さんなら……必ず出来るよ……」

ネメア「……そうだな。問題は仇を討った後どうなるかだ……」

召喚士「……どうなるの?」

ネメア「恐らく……召喚者を倒す事は出来るがカンヘル自体は無理であろうな……」

召喚士「じゃあ仇なんて……」

ネメア「いや、召喚者を倒せばカンヘルとの契約はそこで終りになるからいいんだが……」

召喚士「何がいいんだよ……カンヘルは残るんだろ?」

ネメア「……契約を解除したのに残る訳無いだろ。魔力を供給する者がいないんだぞ?」

召喚士「………」

ネメア「だが……これが非常にマズイ」

召喚士「何でさ?仇が討てて一件落着じゃ無いの?」

ネメア「………」

召喚士「……?」

ネメア「そのカンヘルが私達の追っ手になる可能性があるんだ……」

召喚士「……何で?」

ネメア「カンヘルは一応……天使の仲間だからな」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「……ネメア」

ネメア「何だ?」

召喚士「お前と契約を解除しようと思う……」

ネメア「言うと思った……」

召喚士「………」

ネメア「薄情者め……だがもう遅い!」

召喚士「……聞きたく無いけど、なんで?」

ネメア「私の匂いが染み着いてしまっているからな!」

召喚士「………」

剣士「へぇ……やる事はやってんだな!」

召喚士「誤解するなッ!お前とは違うッ!」

剣士「同じだろ?」

ネメア、召喚士「全然違うッ!」

剣士「ハモんなよ……」

召喚士「ネメアが変な言い方するから悪いんだよッ!」

ネメア「……悪かった」



召喚士「……どういう事なの?」

ネメア「私と契約を解除したらお前にも天使の牙が向くと言う事だ」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「……じゃ喚起士さんも同じなんじゃないの?」

ネメア「ジノは……天界にとって有益な力を持っているのでな……」

召喚士「………」

ネメア「そのうち犯した罪は消えると思う」

召喚士「ネメアにその力は?」

ネメア「無い」

召喚士「使えねぇ……」

ネメア「………」

召喚士「……でもさ、それで付いて行ったら喚起士さんに迷惑かけるんじゃないの?」

ネメア「それはあれだ……」

召喚士「………」

ネメア「皆で力を合わせれば撃退する事も少しは容易い!」

召喚士 (こいつ……意外と考え方が最低だ……)

ネメア「……お前の為にも付いて行った方がいいと思うが」

召喚士「………」

ネメア「………」

ーー

盗賊「……zzz」

ネメア「………」

剣士「なぁ召喚士……」

召喚士「何……」

剣士「何故……俺と盗賊の間にネメアを置くんだ……」

召喚士「俺に聞くなよ……」

剣士「………」

召喚士「………」

ネメア「………」

剣士「……邪魔くせえんだけど」

ネメア「私がいる前でパイアに手を出したら殺す……」

剣士「………」

召喚士「……剣士さ」

剣士「何だ?」

召喚士「俺と一緒に行かない?」

剣士「………」

召喚士「俺……喚起士さんに付いて行こうと思うんだ。だからさ……」

剣士「………」

召喚士「………」

剣士「強くなりてえけどよ……死んじまったらそこで終わりなんだぜ……」

ネメア「……その死と向き合った先に真の強さがあるのではないのか?」

剣士「そんな簡単にいくかよ……」

ネメア「そうだな……」

剣士「………」

ネメア「試しもしない輩に言っても無駄か……」

剣士「………」

ネメア「……お前一体何をしたいのだ?勝てぬ簡単に出来ぬと」

剣士「………」

ネメア「それで本当に強くなどなりたいのか?」

剣士「うるせえよ……」

ネメア「先程から随分と苛立っているな。……まさかパイアを手荒に扱おうなどとしてはいないだろうな?」

剣士「……うるせえって言ってんだろうがッ!」

召喚士「や、やめろよ両方共……」

ネメア「……最低ではないか。どこぞのホラ吹きより各が下だな」

剣士、召喚士「………」

剣士「誰の事だか知らねえが……そんな屑みてえな嘘つき野郎と一緒にすんなッ!」

召喚士「………」

ネメア「一緒では無い!お前はその屑でホラ吹きで童貞野郎より下だと言っておるのだッ!」

召喚士「………」

剣士「ふざけんなよテメェ……化物だからって言っちゃ悪りい事ぐらいわかんねのか!なあ召喚士!」

召喚士「あ、ああ……」

ネメア「貴様みたいな輩に言葉の良し悪しなどわかるのか?そう思うであろう召喚士よ」

召喚士「そうだね……」

剣士「ぐっ!……表出ろ!叩き斬ってやるッ!」

ネメア「やれるものならやってみろッ!」

ーー

召喚士「………」

剣士「………」

ネメア「………」

剣士「来いや……」

ネメア「構えろ……出るぞ……」

召喚士「俺……心的ストレスが半端無いから横になりたいんだけど……」

ネメア「ならば地面に寝ていろ!」

召喚士「そうする……」

ズバシュンッ!……

ネメア「グルァゥゥゥ……」

剣士「なるほどな……こりゃ化物だ」

ーー

剣士「グウァァ……ガバッ……」

ネメア「馬鹿が!現世の武器ごときで私に傷を付けられると思っていたのかッ!」

剣士「うるせえぇぇッ!まだ終わってねえんだよッ!」

ズバガンッ!

ネメア「何度同じ事をしても無駄だッ!」

剣士「ウオォォォッ!」

ズバ……ガギッ!

ネメア「………」

剣士「クソォォォオッ!」

ネメア「………」

剣士「何で俺は弱えんだよおおぉぉッ!」

ネメア「………」

剣士「ズズゥゥ……うぅ……何で化物ごときに傷ひとつつけらんねえんたよ……」

ネメア「泣く程悔しいのなら強くなればよかろう……」

剣士「………」

ネメア「強くなりたいと語っておきながらグダグダとッ!」

剣士「ぐぐぅぅ……」

ネメア「………」

剣士「うおぅぅ……」バンッ……

ネメア「………」

召喚士 (ああ蟻さん……こんばんは……)

召喚士 (うふふ……今宵はお盛んですなぁ……)



喚起士「姫宮様……大丈夫ですか?」

姫宮「うん……ありがとう。嬉しくって泣いちゃっただけだから……」

喚起士「………」

姫宮「ねぇ喚起士……私の事は呼び捨てでいいよ?」

喚起士「それはいけません!」

姫宮「……今は王女じゃないからやめて」

喚起士「ですが……」

姫宮「お願い……」

喚起士「……わかりました」

姫宮「………」

ジノ「いいよねぇお姫様って……」

喚起士「……やめなさいジノ」

姫宮「………」

ジノ「ええ?いいじゃん……どっしたの?」

姫宮「ジノ……ジノ・スフィンクス?」

喚起士「あら?ご存知なんですか?」

姫宮「……うん」

ジノ「ほぇ……名前だけでわかるんだ」

姫宮「お伽噺で聞いた事あるから……」

ジノ「そう!どんなお伽噺!?」

姫宮「谷から身投げしたお話」

ジノ「………」

喚起士「ふふふ……」

ジノ「……やめてよ。あれ恥ずかしかったんだから……」

姫宮「……この腕輪の中にいるの?」

ジノ「そうだよ!」

姫宮「………」

喚起士「これは……ある出逢いがありましてジノを使役する事になったのですよ」

姫宮「……へぇ」

ジノ「そうだ!あたしとナゾナゾ勝負しようよお姫様!」

喚起士「ジノやめなさい……」

姫宮「答えられなかったら食べられちゃうんでしょ?」

ジノ「当たり!お姫様だから美味しいんだろうなぁ……」

姫宮「……絶対やらない」

ジノ「ええぇ!」



盗賊「……ん」

盗賊「………」ムクッ

盗賊「………」

盗賊「………」キョロキョロ

盗賊「………」

盗賊「………」?

盗賊「………」

盗賊「………」ススッ……

盗賊「……zzz」

ーー

剣士、ネメア「………」

喚起士「……何かあったんですか?」

召喚士「ちょっと……」

姫宮「……傷だらけ」

剣士「ああ?……ほっとけ」

姫宮「………」

ジノ「パイア眠そうだね!」

盗賊「ん……」グゥゥゥ……

ジノ「ああ……魔力少なくなってんだ!」

盗賊「………」コクッ

喚起士、召喚士「………」



盗賊「……ごちそうさま」けふ……

召喚士「食い過ぎだろ……」

姫宮「うわ……」

喚起士「………」

ジノ「喚起士どうしたの?」

喚起士「ななななんでもありませんよッ!」

ジノ「そう?」

召喚士 (喚起士さん……)

姫宮「………」チラ……

剣士「………」

召喚士「喚起士さん……俺、喚起士さん達に付いて行こうと思います」

喚起士「……いいんですか?」

召喚士「あまり力になれないですけど……」

喚起士「ありがとうございます……」

召喚士「迷惑をかけるかもしれませんが……よろしくお願いします」

喚起士「迷惑だなんて……ネメアもいますし、それに……」

召喚士「………」

喚起士「達人の召喚士さんに同行していただければ心強いですよ」

召喚士「そ、そうですか……」

喚起士「如何なる敵もその拳で薙ぎ倒してきた召喚士さんですから」

召喚士「………」

喚起士「きっと……国をも救える活躍をするでしょうから」

召喚士「いやぁ……それは……」

喚起士「……え?」

召喚士「……容易い事です!ははは!は……はは……」

喚起士「ですよね!ふふ」

ネメア (馬鹿め……取り返しが付かなくなるぞ……)



姫宮「………」

剣士「なんだ……人の顔をジロジロ見るな……」

姫宮「……昨日はごめんなさい」

剣士「………」

姫宮「………」

剣士「もういい……」

姫宮「……その傷」

剣士「………」

姫宮「私に治させて!」

剣士「……いい」

姫宮「昨日のお詫びだと思って……お願い……」

剣士「勝手にしろ……」

姫宮「………」

剣士「……?」

姫宮「動かないで……」

剣士「ああ……」

姫宮「……テムペラートゥスルークス……」

パァァァア……

姫宮「………」

剣士「………」

姫宮「……終わりだよ。少ししか治せなかったけど……」

剣士「………」

姫宮「………」

召喚士「……今のは?」

喚起士「魔術ですね……回復系の」

召喚士「へぇ……魔術……」

姫宮「……どうかな?」

剣士「大分ましになったぜ……あんがとよ」

姫宮「うん……」

剣士「………」

喚起士「魔術……お使いになるのですね」

姫宮「これと……ちょっとした解毒しか出来ないけど」

喚起士「いえ……立派だと思います」

ネメア「本当だな。どこぞの馬鹿に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ」

召喚士「………」

ジノ「喚起士、これからどうするの?」

喚起士「そうですね………」

ネメア「………」

喚起士「召喚士さん、地図いいですか?」

召喚士「は、はい」パサッ

喚起士「私達が向かおうとしてるのがここ……谷の国ですね」

ネメア「……私の目的地を大分それてしまうな」

喚起士「そうですね……なら」

ネメア「いや、気にしないでくれ。そう思っただけだからな」

喚起士「……はい。ここからだと谷の国まで一週間くらいでしょうか」

召喚士 (ネメアだと私の脚なら一時間だ!ふはは……だろうな)

ネメア「………」

喚起士「出発は姫宮さんの準備をしたらでいいですか?」

召喚士「準備……ですか?」

喚起士「お顔を晒しての旅は危険ですから……」

召喚士「なるほど……」

ジノ「お?ならお買い物だね!」

召喚士「………」

喚起士「……?」

召喚士「ジノを借りていいですか?……ネメア持ってっていいので」

ネメア「物を扱うように言うな!」

喚起士「構いませんが……何故です?」

召喚士「ちょっと……」

喚起士「はぁ……?」

ネメア「……?」

喚起士「では少し出掛けて来ますので」



ジノ「……あたしも買い物行きたかったんだけど」

召喚士「………」

ジノ「……何?」

召喚士「お前……嘘付いたろ……」

ジノ「なんの事やら……」

召喚士「惚けるなよ……喚起士さん独身じゃないか!」

ジノ (喚起士ばらしちゃったのか……)

召喚士「……子供までいるなんて言って!」

ジノ「それは……ほらあれだよ!」

召喚士「ああ?」

ジノ「召喚兄さん童貞まるだしで喚起士見てたから!危険を感じて!」

召喚士「……てめえ」

ジノ「本当の事だし!」

召喚士「……グッ!本当の事でもついていい嘘と駄目な嘘があるだろ!」

ジノ (うわ……認めちゃった……)

召喚士「あああ!こいつどうしてくれよう!」

ジノ「………」

召喚士「………」

ジノ「……?」

召喚士「そうだ……オッパイ触らせろよ」

ジノ「……絶対やだ」

召喚士「肉きゅう触らせろよ……」

ジノ「それもやだ……」

召喚士、ジノ「………」



召喚士「オッパイ触らせろよ……」

ジノ「だからやだって……」

召喚士「…………」

ジノ (もうぅ!こいつめんどくさいなぁぁぁあ!)

召喚士「オッパイ……」

ジノ「召喚兄さん……」

召喚士「触らせてくれるのかッ!?」

ジノ「違うけど……」

召喚士「なんだよ……触らせろよ……」

ジノ「……喚起士の秘密を教えてあげる」

召喚士「ッ!」

ジノ (バカめ!かかった!)

召喚士「い、いや!今度はだだだ騙されないぞ!」

ジノ「嘘だと思うんだ……それでもいいよ?」

召喚士「………」

ジノ「あたしはずっと喚起士の側にいるからね……色々な喚起士を知っているのだよ」

召喚士「色々な喚起士さん……だと……」

ジノ「もうそれはそれはあんな喚起士とか!こんな喚起士とか!」

召喚士「………」ゴクッ……

ジノ「……女性の部分を大胆にかつあらわにさらけ出してる喚起士とか」ボソッ……

召喚士「ッ!!!」

ジノ「別に信じなくてもいいよ?……オッパイとそっちどちらがいいのかなぁフフフ」

召喚士「あ……あああ……」

ジノ「……どうする?」

召喚士「………」

ジノ「………」

召喚士「喚起士さんの秘密を教えて下さい……」

ジノ「おっけぇ……クククッ……」

召喚士「本当に信じていいんだな!今度は嘘付くなよ!」

ジノ「大丈夫だってぇ!」

召喚士「………」

ジノ「実はね喚起士……」

召喚士「おおおう……」



剣士「………」

姫宮「さあ!コインはどっちの手?」

盗賊「……こっち」

姫宮「当たり……隠す時見て無かったのにどうしてわかるの……」

盗賊「………」バッ!

姫宮「く、悔しい……」

盗賊「貸して……」

姫宮「うん……はい」

盗賊「………」

姫宮「………」

シュパッ!

盗賊「どっち……」

姫宮「……早過ぎて全然わからない」

剣士「……右だな」

盗賊「……あたり」

姫宮「えええ!よくわかったね!」

剣士「………」

姫宮「……あのね」

剣士「姫さんよ……俺と賭けをしねえか?」

姫宮「賭けって……」

剣士「お前が勝ったら何でも願いを聞いてやる」

姫宮「……負けたら?」

剣士「お前を奴隷の様に扱う」

姫宮「………」

剣士「拒否してもいいが……代わりに盗賊を奴隷みたいに扱うぜ」

姫宮「………」

剣士「奴隷の様に……捕虜だったお前なら意味はわかるよな?」

姫宮「なんで……」

剣士「……いいから黙ってやれ」

姫宮「………」

剣士「………」

姫宮 (なんで……なんでこんな事!)

剣士「盗賊よ、やってくれ」

盗賊「………」コクッ

シュパッ!

剣士「………」

姫宮 (わ、わからない……)

剣士「姫さんよ逃げてもいいぜ。……王族なら人を身代わりにしても平気だろ?」

姫宮「身代わりなんてそんな事……」

剣士「………」

姫宮「うう……」

剣士「早く選べ」

姫宮「………」ブルブル……

剣士「右か左か……」

姫宮「む、無理だよ!何でこんな事させるの!?」

剣士「……お前の本性を知りたいのと……俺の為だ」

姫宮「貴方の為……?」

剣士「………」

姫宮「………」

剣士「やってくれ」



喚起士「これでいいですね」

ネメア「………」

喚起士「ちょっと痛い出費でしたけど……」

ネメア「……一着は無駄になるかもしれんな」

喚起士「どういう事でしょう?」

ネメア「……パイアは付いて来ないかもしれん」

喚起士「え……」

ネメア「昨日の夜……少しゴタゴタがあってな」

喚起士「………」

ネメア「その……剣士とやり合ってしまった……」

喚起士「それで傷だらけになっていたんですね……」

ネメア「大人気なかったと思っている……」

喚起士「………」

ネメア「だが……あの燻っている様を見ていたら我慢出来なかったのだ……」

喚起士「………」

ネメア「……後……召喚器から出たので追っ手に気付かれているかもしれない」

喚起士「追っ手に関しては構いませんが……」

ネメア「………」

喚起士「………」



召喚士「……嘘だな?」

ジノ「本当本当!」

召喚士「流石にそれは騙されないぞ……」

ジノ (クソッ!)

召喚士「処女だって言うのは本当だろうけど……いや、本当だ!そうに決まってる!」

ジノ (うわ……こいつ……)

召喚士「それで……エッチな事に興味津々で俺を誘おうとしたが恥ずかしくて言い出せず、俺が寝静まった後に自分を慰めてるって言うのはにわかに信じがたい!」

ジノ「うん……それは信じなくていいや……嘘だし」

召喚士「てめぇ……」

ジノ「………」

召喚士「………」

ジノ「……?」

召喚士「……待った。エッチな事に興味津々かもしれん」

ジノ「え……?」

召喚士「……喚起士さんな昨日パイアに魔力をあげたんだ」

ジノ「……うん」

召喚士「パイアがこうガバッと喚起士さんとキースーをしてだな……」

ジノ (それで喚起士おかしかったのか……)

召喚士「もうそれがエロいの!こうパイアが舌を!ヲロヲロって!」

ジノ (こいつ気持ち悪いな……)

召喚士「ありゃ喚起士さん……確実に目覚めたね……ヤックデカルチャだね!」

ジノ「何に目覚めの……」

召喚士「……言わせるなよ」

ジノ「………」

召喚士「………」



姫宮「左……」

剣士「なら右だ」

盗賊「………」

姫宮、剣士「………」

盗賊「………」バッ!

姫宮「ひ、左にあったぁ……」

剣士「……俺の負けだな」

姫宮「ひっ……ひっぐぅ……良かったぁぁ……うぅ……」

剣士「………」

盗賊「……これでいい

剣士「馬鹿ッ!黙ってろッ!」

姫宮「ふえぐぅぅ……?」

剣士「………」

姫宮「……うぅ……どういう事なの?」

盗賊「………」

剣士「余計な時に喋べんじゃねえよ……ったく」

姫宮「………」

剣士「……悪かったなこんな事させて」

姫宮「……どうして……ふぇぇ」

剣士「………」

ガチャ……

喚起士「ただいま戻りま……」

ネメア「………」

姫宮「うぁぁッ!怖かったよぉぉ!」ガバッ

喚起士「……この男に何かされたのですか?」

剣士「ち、ちげえって!……ちょっと遊んでた……」

姫宮「私……ひっぐ……盗賊をうぅ奴隷にってぇえ……うぐぅぅ……」

喚起士、ネメア「………」

剣士「バカ野郎!ちゃんと言えってッ!……そんな事は」

喚起士「貴方という人はどこまで……」

ネメア「屑め……」

剣士「いやあッ!これは本当にちげえんだってえッ!」

姫宮「無理……って本性うぐぅ自分の為……どうしてふぇぇ」

喚起士「……鬼畜が……ここで屠りますッ!」

ネメア「パイアだけで無くお嬢にまでとはな……」

剣士「ご、誤解だッ!」

喚起士「……闇夜に架かる……」

ネメア「………」

剣士「待てって!」



剣士「………」

姫宮「……ぐすっ」

ネメア「……で?」

剣士「あれだよ……こいつが本当に国を救いたいのか知りたかった」

喚起士「それでも……こんな事をする必要は無かったと思いますが?」

剣士「………」

ネメア「言わぬのなら……」

剣士「言うから!……今まで行かねえってよ言ってていきなりやっぱ付いて行く何て恥ずかしくて言えねえだろ?」

ネメア「………」

剣士「だからよ……勝負してこいつに勝たせて付いて行けるようにすれば……」

ネメア「くだらぬ……」

剣士「おめえは強えからいいよ。……俺は弱えから……何か付いて行く理由が欲しかったんだよ」

ネメア「………」



召喚士、ジノ「………」ヒソヒソ……

喚起士「……いかがなさいました?」

召喚士「何でも……」

ジノ「そうそう……」

喚起士「そうですか?」

召喚士、ジノ「………」ヒソヒソ……

喚起士「………」

姫宮「そんな……理由だったんだ……」

剣士「怖がらせてすまねえ……悪かった……」

姫宮「………」

剣士「………」

姫宮「……私が勝負に勝ったら何でも願いを聞いてくれるって言ったよね?」

剣士「ああ……言った」

姫宮「なら……」

剣士「………」

姫宮「私を守って!……私……」

剣士「………」

姫宮「私……弱いから……」

剣士「………」

姫宮「………」

剣士「わかった。その願い叶えてやるぜ」

姫宮「………」

剣士「……死んでも叶えてやる」

姫宮「ありがとう……」

剣士「………」

ネメア (目付きが変わったな……なるほど……ふふふ)

召喚士、ジノ「………」ヒソヒソ……

喚起士 (召喚士さん……何故あんな目付きで私を……)

ーー

剣士「さあ!行くかぁぁッ!」

召喚士「気合い入り過ぎだろ……」

喚起士「パイア様……これを」

盗賊「……いらない」

喚起士「余計なトラブルに巻き込まれないようにですね……」

盗賊「………」

喚起士「……?」

盗賊「剣士があれを守るなら私も守らなければいけない」

喚起士「………」

盗賊「………」

喚起士「わかりました……」

盗賊「………」

喚起士「………」



召喚士「………」

剣士「悪いな召喚士……昨日あんだけグダグダやってたのに結局付いて行く事にして……」

召喚士「………」

剣士 (やべえ……かなり怒ってんなこりゃ……)

召喚士 (やべえ……昨日って何だ?蟻しか記憶に無い……剣士は何を言ってるんだ……)

剣士「………」

召喚士「……いや」

剣士「………」

召喚士「気にしないでいいよ。強くなりたいんだろ?……何も言わないで付いてくればいい」

剣士「召喚士……」

召喚士「………」

剣士 (男だぜぇ……流石だな……)

召喚士 (こう言っておけば……)

ネメア「……お前」

召喚士「………」ビクッ!

ネメア「あの夜は寝て……」

召喚士「ネメアよッ!貴様も黙って付いてくればいいのだぁぁッ!」

ネメア「………」

召喚士「………」

剣士 (あの化物を黙らせる辺り……やっぱ凄え奴なんだな……)

ネメア (馬鹿め……後で覚えておれ……)

召喚士「………」



ジノ「ねぇ喚起士、ここからどう行くの?」

喚起士「ここから北へ進み、途中分かれている道を西にですね」

姫宮「………」

喚起士「……お聞きしたかった事があるのですがいいでしょうか?」

姫宮「うん……」

喚起士「どうやって……あの場所まで逃れて来たのですか?」

姫宮「………」

喚起士「……言えませんか?」

姫宮「ううん……」

喚起士「………」

姫宮「……途中まで城の蒼頭が一緒にいたんだけどはぐれて」

喚起士「蒼頭?」

姫宮「召し使いなんだけど……ちょっと変わってるの」

喚起士「そうなんですか」

姫宮「………」

喚起士「出来ましたら……その蒼頭と言う方にお逢いしたいですね……」

姫宮「………」

喚起士 (どう言う逃走経路を使ったかわかれば……)

ジノ「お姫様!その蒼頭って格好いいの?」

姫宮「……知らない」

ジノ「何で?一緒だったんでしょ?」

姫宮「いつも青い頭巾を被ってて顔見たこと無いから……」

ジノ「……ちょっとどころか大分変わってそうだね」



ネメア「………」

剣士「……盗賊よ、今日あたりやっとくか!」

盗賊「………」コクッ

ネメア「………」

召喚士「ネメアさ……妹の事気になるのはわかるけど諦めなよ……」

ネメア「うるさい………!?」

剣士「今日はヒイヒイ言わせてやるぜッ!」

盗賊「………」

ネメア「剣士よーケイコをつけてやるー」

召喚士「おまっ!何を!」

剣士「おおおッ!本当かッ!」

ネメア「ゼンリョクでこいー」

剣士「やっとその気になってくれたか……嬉しいぜッ!」

召喚士「……どどどう言うつもりだよ!」

ネメア「……頑張ってくれ。健闘を祈る」

召喚士「は……無理無理無理無理!」

ネメア「ゼンリョクでこいーそれこれコロスつもりでー」

剣士「……わかったぜぇ。それぐらいの覚悟でって事だな……」

召喚士「まままままッ!」

剣士「行くぜえぇぇッ!」

ブフォシュンッ!

剣士「チッ……流石に避けるか……」

召喚士「ああ……あがが……」

剣士「………」チャキン!

召喚士 (や、やべえ!マジ殺る気だ……)

ネメア (クククッ……存分に恐怖するがいいッ!)

剣士「オオオオォォォォオッ!」

シュバッドズンッ!

召喚士 (ひあぃぃぃぃッ!)

剣士「………」

召喚士「………」ガタガタ……

ネメア (フハハハッ!愉快だ……実に愉快ッ!)

召喚士「ま、待て!」

剣士「待てねぇぇぇえッ!」

召喚士「はぁぁぁぁんッ!」

ズガッ……パキンッ……

召喚士「いつっ……」

剣士「………」

召喚士「……?」

剣士「………」

召喚士「……剣士?」

剣士「おおお……」

召喚士「おおお?」

剣士「俺の剣が折れちまったぁぁぁぁぁあッ!」

召喚士「………」

剣士「うおおぉぉ……」バンバンッ!

召喚士、ネメア「………」

ネメア「お、お前が私の召喚器で防ぐから……」

召喚士「あ、アホかぁ!防がなかったら死んでるわッ!」

ネメア「何故避けんのだ!」

召喚士「避けられるか!」

剣士「うおぉぉ……何も折らないでもいいのによぉぉ……」

召喚士、ネメア「………」

ネメア「……お前が悪い」

召喚士「お前の方が悪い……」

ネメア「貴様……」

召喚士「お前が稽古なんて言うから!」

ネメア「ぐぬぬ……」

剣士「俺が未熟だからか?なぁ?」

ネメア「………」

召喚士「……そうだ。もっと精進していればこんな事にはならなかったのだ!」

剣士「……うぅ」

ネメア (召喚士め……思った以上に酷い奴だ……)



剣士「ぉぉぉ……」ションボリ……

盗賊「………」

ネメア「………」

召喚士「……悪かったよ。次の人がいる場所でさ買おうって……な?」

剣士「俺……そんな金ねえよ……」

召喚士「買ってやるから……」

剣士「………」

召喚士「………」

剣士「切っ先両刃の剣で最新式ナイトメアモデル009『リザルチメントスパーダ (償いの剣) 』がいい」

召喚士「リザ……なんて?」

剣士「切っ先両刃

召喚士「最初から言わなくていいから……そのリザ何とかっていくら位なんだ?」

剣士「ナイトメアモデルにしては安い方だぜ!なんとお値段金貨100枚!凄えリーズナブルだろ!」

召喚士「………」

剣士「どうしたい?」

召喚士「あのさ……それ普通に家が買えるよね?」

剣士「買えるな。下手したら村も買えるぜ!」

召喚士「そんなお金ある訳無いだろ……」

剣士「ぇぇぇえッ!買ってくんねえのかよ!」

召喚士「買えるか!」

剣士「ぉぉぉ……」ションボリ……

召喚士「………」

ネメア「買ってやればよかろうに」

召喚士「……わかってないなお前」

ネメア「何がだ?」

召喚士「例の賞金稼ぎで何人吹っ飛ばせばいいと思ってんだよ……」

ネメア「さあ知らぬ」

召喚士「ざっと五万人だぞ?」

ネメア「……嘘だな?」

召喚士「本当だよ……」

ネメア「………」

召喚士「それをこいつは欲しいって言ってるんだよ……」

ネメア「馬鹿か貴様はッ!」

剣士「買ってくれるって言ったからよ……」

ネメア「物には限度があるだろうがッ!」

剣士「………」

召喚士「それと剣士……そのリザ何とかってその辺に売ってる物なの?」

剣士「いや、世界に一本だけだから流石にねえだろ」

召喚士「………」



喚起士「召喚士さん……」

召喚士「はい?」

喚起士「ちょっと……ペースが遅いので野宿になってしまいそうですが……」

召喚士「そうですか……」

喚起士「すいません……」

召喚士「喚起士さんのせいじゃ無いですよ!………」

剣士「………」ションボリ……

姫宮「あっち向いてホイッ!」

盗賊「………」ギュルッ!

姫宮「早く動かしすぎて気持ち悪いよ……」

喚起士「……と、取り合えず野宿に良さそうな場所を探しましょう」

召喚士「了解しました!」

ーー

召喚士「真ん丸お月さん綺麗だなぁ……」

ネメア「………」

召喚士「ねぇネメア」

ネメア「……なんだ?」

召喚士「剣士の剣……何とかしないとね……」

ネメア「そうだな……」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「後さ……あのお姫様の谷の国って……そんなに酷い事になってるのかな」

ネメア「……わからんが女王が捕虜にされ……自身の国から逃げ出しているんだ。それなりに酷い状況なのだろう」

召喚士「………」

ネメア「あのお嬢の説明では詳しくわからんが……たった二人で国を乗っとるなど出来はしまい」

召喚士「………」



喚起士「清暗に輝く望月は……現世も常世も……照らし微笑むのか……」

ジノ「なにそれ?」

喚起士「東方に伝わる詩ですね」

ジノ「へぇ……喚起士、仇見付かって良かったね」

喚起士「まだ確かじゃありませんが……」

ジノ「それとさ……兄ちゃんやパイア達も付いて来てくれて良かったね」

喚起士「……はい」

ジノ「召喚兄さんに会うまで喚起士いつもひとりだったから心配してたんだよ?」

喚起士「………」

ジノ「いつか心が折れちゃうんじゃないかって。でも……もう大丈夫かな?」

喚起士「ジノ……心配して貰ってありがとうございます……」

ジノ「いいよいいよ!……あたしと喚起士の仲じゃん!」

喚起士「………」



剣士「今日は無理だな……」シャリシャリ……

盗賊「………」

剣士「人の事情なんだから勝手にやらせろってーの!」シャリシャリ……

盗賊「………」

剣士「おし!こんなもんか!」

盗賊「………」?

剣士「木の剣だけど……ねえよりましだろ。……よっ!」

ブオンッ!

剣士「中々だ!………はぁ」

盗賊「……なに?」

剣士「いやぁよ、まさか折れちゃうとは思わなくてな。なんか……召喚士に弱いままなら剣を置けって言われたみたいで……やだなぁてな」

盗賊「………」

剣士「……頑張らないかんよなぁ」

盗賊「………」

ーー

姫宮「おはよう……何してるの?」

盗賊「………」カキカキ

姫宮「へぇ、上手だねぇ……なら私も!」

喚起士「おはようございます……?」

盗賊、姫宮「………」カキカキ

喚起士「ふふ……私もお仲間に入れさせてください」

召喚士「ぶぁぁ……おはようござます……?」

盗賊、姫宮、喚起士「………」カキカキ

召喚士 (朝から……何か微笑ましいな……)

盗賊「………」カキカキ

召喚士「パイアは本当絵が上手いな」

盗賊「………」ふふん

召喚士「ほう……」

姫宮「あんまり見ないで!」

召喚士「お姫様も上手だよ」

姫宮「………うう」

喚起士「………」チラチラ……

召喚士「………」

喚起士「……どうでしょう?」

召喚士「これは……?」

喚起士「これがネメア」

ネメア (グガァ……ウサギではないか……)

喚起士「これがジノ……」

ジノ (ウサギじゃ無いよ!ウサギじゃ無いよ!)

喚起士「そしてこれが……召喚士さんです……」

召喚士 (全部ウサギじゃないですか……)

喚起士「で……パイア様とあの方です」

召喚士、姫宮、ネメア、ジノ「………」

喚起士「……あまり上手くはありませんが」

召喚士「そそそんな事ありませんよ!……なあ!」

姫宮「う、うん……」

喚起士「本当ですか?嬉しい……」

召喚士「……ははは」

喚起士「ふふふ……」

ネメア「………」

喚起士「私、朝食の作りますね!うふふ!うふふ!」

召喚士「………」

ネメア「あれはハッキリ言ってやれば良かったのではないのか……」

召喚士「言わない優しさもあるんだよ……」



召喚士「ぜぇ……ぜぇ……ちょっと休みませんか……」

剣士「だらしねえな……こんな坂道余裕だろ……」

喚起士「……大丈夫ですか?」

召喚士「だ、大丈夫です!」

喚起士「召喚士さんでは無くて……」

召喚士「をえ?」

姫宮「はぁはぁ……」

喚起士「……休みましょう」

姫宮「私の……っはぁ事は気に……」

剣士「休んどけって」

姫宮「………」

剣士「子供が大人に気を使う事なんてねえからな」

姫宮「……うん」



姫宮「………」

喚起士「はい、お水です」

姫宮「ありがとう……」

喚起士「……気になさっているんですか?」

姫宮「………」

喚起士「大丈夫ですよ。……私達は気にしていませんから」

姫宮「ごめんね……お願いした私がこんなんで……」

喚起士「………」

剣士「おーいっ!盗賊よぉッ!」

召喚士「……静かにしろ!」

剣士「あいつまたどっか行っちまいやかったんだよ……」

召喚士「またか……」



召喚士「俺行かなくて良かったのかな?」

ネメア「仕方無いだろ。お嬢を一人に出来ないからな」

姫宮「………」

召喚士「パイアどこ行ったのか……」

ガサガサッ……

召喚士「のぉぁぁあ!?」

盗賊「………」

召喚士「……ビックリさせるな!ってお前またフラフラとどこ行ってたんだよ……」

盗賊「………」カチャ

召喚士「なんだそれ?」

盗賊「……剣士に」

召喚士「………」

盗賊「………」グゥゥゥゥウッ!

召喚士「………」

盗賊「……ネメア兄」

ネメア「なんだ?」

盗賊「魔力頂戴……」

ネメア「やれる訳無いだろ……」

盗賊「………」

召喚士 (こ、これはあれかッ!喚起士さんを冥府魔道へ誘ったあのッ!)

盗賊「………」ジー

召喚士「………」ゴクリッ

盗賊「………」

召喚士 (ききき緊急事態だからな……仕方無い……仕方無い事だッ!)

ネメア「……?」

召喚士 (人生初キースーが人間じゃ無いのは不本意だがッ!……うん……カモンパイアッ!)

盗賊「………」

召喚士 (んうー………)

盗賊「………」クルッ

姫宮「……な、なに?」

盗賊「……ん」

姫宮「んんんーーッ!」

召喚士 (ん……??)

姫宮「んんんッ!んー!」ジタバタッ!

盗賊「……ちゅっ…」ガバッ

姫宮「んん……ぁふ……」くた……

召喚士 (まだかパイアッ!早く来ないと目を開けられないじゃないか!)

姫宮 (あぁぁ……こ、こんなのって……)

召喚士 (パイア?……)チラッ

盗賊「……ふぁ……ぐちゅ……」

召喚士「………」

姫宮「……あぁっ……うぁ……」ブルブル

召喚士「約束が違うじゃないか……」

姫宮 (も、もう駄目……何か来ちゃ……)

盗賊「……ぷはっ」

姫宮「………」へた……

盗賊「……ごちそうさま」

姫宮「………」

召喚士「………」

盗賊「………」

召喚士「パイア……空気読めよ……」

盗賊「………」



剣士「おめえはフラフラとどっか行くんじゃねえよッ!」

盗賊「………」カチャ

剣士「んあ?なんだそりゃ?」

盗賊「……剣士に」

剣士「おう?……ブレード?」

盗賊「………」

剣士「ん……刀ってやつか……」

召喚士「刀って?」

剣士「あぁ東の方の武器でよ、ここいらの武器と作り方と研ぎ方が違う物って話だな」

召喚士「へぇ……」

盗賊「………」

剣士「……お前これどうしたんだ?」

盗賊「………」クイッ

召喚士、剣士「………」

盗賊「………」クイッ

召喚士「あのさ……人差し指曲げてるけど……」

剣士「……盗ってきたのか?」

盗賊「………」コクッ

剣士「バカ野郎ッ!直ぐに返してきやがれッ!」

盗賊「………」

剣士「人様の物をギってくるんじゃねえッ!」

盗賊「………」

剣士「……ほれ返しに行ってこい」

盗賊「………」コク……

剣士「………」



剣士「バカ野郎が……」

ネメア「……あまり言ってやるな。お前の為にやったのだから」

剣士「だがよ……泥棒はマジいだろ」

ネメア「そうだが……それしかお前を助ける方法を知らなかったのかもしれん」

剣士「どういうこった?」

ネメア「……パイアは昔、女盗賊として生きていた時代があってな。冷血、残虐、無慈悲な女盗賊と言われていたんだ」

剣士「盗賊がか?……想像出来ねえな」

ネメア「……恐らくパイアと言う名を貰い受ける前の話しだと思うが詳しくは私も知らん」

剣士「………」

ネメア「助けたいと言う気持ちがあっても……やり方がわからない……」

剣士「………」

ネメア「なら……自分の出来る事は何か?……物を盗り相手に与える事」

剣士「………」

ネメア「……今までパイアに関わってきた人間にも同じ事をしていたのかもしれんな」

剣士「……そうか」

ネメア「それを正すのはお前だ。……パイアを叱ってくれてありがとう」

剣士「礼なんてやめてくれ……」

ネメア「………」

剣士「………」

喚起士「……パイア様は見付かったで……姫宮さん!いかがなさいました!」

姫宮「………」ポケェ……

召喚士「………」

喚起士「召喚士さん……これは……」

召喚士「……聞かない方がいいです」

喚起士「ですが……こんなに顔を赤らめて……」

召喚士「………」

喚起士「先程から焦点も合っていないですし……何か病気に!」

召喚士「違うと思いますよ……」

喚起士「何故そう言えるんですか!」

召喚士「……パイアに魔力をあげたんですよ」

喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「そ、そうだったんですか……そう……」

召喚士、ジノ「………」



ザザザザッ

……「不覚……なんと言う不覚!」

……「己の得物を盗まれるなど……ぐぐう……」

……「……しかも盗人を追い掛けた挙げ句……見失うとは」

……「………」

……「どうしたものか……」

……「おおおぉぉぉ……」

……「……いた。あの人影間違いないッ!」

ザザザザッ!



盗賊「………」トボトボ……

……「待たれいッ!」

盗賊「………」?

……「……そのまま振り向く事無く……手に持っている物を地面に置け」

盗賊「………」カチャンッ!

……「静かに置かんか!……ぐぬ」

盗賊「………」

……「まだ子供ではないか……子供がこのような事をするとは……」

盗賊「………」

……「恐らく……頭となる人間に言われたのだな……」

盗賊「………」

……「脅され……罵られ……恐怖でこの子供を支配し……なんと……」

盗賊「………」

……「断じて許せんッ!」

盗賊「………」

……「お子よ……お前の主の元へ案内せい」

盗賊「………」

……「某が成敗致すッ!」

盗賊「………」

たたたッ

……「………」



盗賊「………」

剣士「返してきたか?」

盗賊「………」コク……

剣士「そっか……もうすんなよ?」

盗賊「………」

剣士「怒ってねえよ。安心しろ」

盗賊「………」コクッ

喚起士「そろそろ行きませんと……また野宿しなければいけなくなりますので」

召喚士「……はい」

姫宮「………」

ジノ「お姫様?」

姫宮「な、なに?」

ジノ「……大丈夫?」

姫宮「大丈夫!大丈夫!」

盗賊「………」

姫宮「あの……えっと……」

盗賊「……なに?」

姫宮「ううん何でも無いよ!ごめんね!」

盗賊「………」?

喚起士「………」

召喚士、ジノ「………」

剣士「盗賊よ、あの刀の持ち主ってどんな奴だった?」

盗賊「……そこにいる」

剣士「あ?……誰もいねえぞ?」

盗賊「………」??

剣士「まあいいや。行くか」

盗賊「………」コクッ



喚起士、盗賊、姫宮「………」

剣士「……二人邪魔くせえんだけど。もっと盗賊と離れて歩けねえのか?」

喚起士「貴方の方こそ……パイア様と離れて歩かれたらいかがですか?」

姫宮「そうそう!」

剣士「そんな事言ってもよ……なあ盗賊」

盗賊「………」

召喚士「………」

ネメア「なにやら……由々しき事態か?」

召喚士「そうかもね……」

ネメア「ふむ……」

ーー

喚起士「まだ早いうちに着けて良かったですね」

召喚士「そうですね」

喚起士「私と姫宮さんは宿に向かいますが、召喚士さんはどうします?」

召喚士「一緒に……」

ネメア「待て。私と召喚士は用事があるので宿に行くのは後にする」

召喚士「はあ?何だよ用事って」

ネメア「……いいから」

剣士「ん……俺らは暇だからんなあ……盗賊よ召喚士に付いてくか」

盗賊「………」コクッ

喚起士「……わかりました」

姫宮「ええ……ねえ盗賊一緒に行かない?」

盗賊「行かない……」

姫宮「そっかぁ……」

喚起士「………」

盗賊「……それ貸して」

喚起士「え?……服ですか?」

盗賊「………」コクッ

喚起士「はい……どうぞ」

盗賊「………」パサッ

喚起士 (そうか……パイア様……)

剣士「行くぞ盗賊」

盗賊「………」

タタタ……

姫宮「ねえ喚起士……盗賊は何で服を着て行ったの?」

喚起士「……姫宮さんを守る為ですよ」

姫宮「……え?」

喚起士「人の多い場所へ出る場合、一緒におられる時にはお顔を晒し……いないのならお顔を隠し」

姫宮「そんな事したら盗賊が捕まっちゃうよ……」

喚起士「それが狙いなんですよ」

姫宮「………」

喚起士「姫宮さんの身代わりになるようにですね。パイア様はそう考えているみたいです」

姫宮「………」

喚起士「姫宮さんがあの方……剣士さんと約束なされた事を守る為にパイア様も同じ……」

姫宮「なんで……剣士にはお願いしたけど盗賊は……」

喚起士「………」

ジノ「言ってもいいんじゃない?」

喚起士「そうですね」

姫宮「……?」

喚起士「パイア様は……人では無いんです」

ジノ「あたしの姉ちゃんだよ!」

姫宮「………」

喚起士「クロミュオーンの猪と言うジノ達と同じ者なんですよ」

姫宮「まさか……」

喚起士「本当です。それとパイア様はあの方が使役していますね」

姫宮「………」

喚起士「ですから……契約主が守ろうとした者をパイア様も守る……」

姫宮「そうだったんだ……」

喚起士「………」

姫宮「………」



召喚士「何やるんだよ……」

ネメア「ここは前の街ほど大きく無いが人はそれなりにいるな」

召喚士「……あれやるの?」

ネメア「そうだ。剣士の剣を買わねばならんだろ?」

召喚士「………」

剣士「おおお……盗賊よ!凄げえもん見れるぜ!」

盗賊「………」

剣士「楽しみだなッ!」

召喚士 (まぁ……ネメアいるしいいか……)

ネメア「聴け皆の者ぉぉッ!!私を倒せた者には金貨十枚だ!!!」

ネメア「参加料は銅貨三枚だッ!腕に自信がある者はいないかッ!!」

召喚士「こっそり値上げするなよ……」

ネメア「いいだろうが……」



街人「グゲェェェッ……」

ズザザザァァァッ……ワアアアアァ!

召喚士「はん……トロいな人間……」

ネメア「………」

剣士「見たかよ盗賊!あれで三十人吹き飛ばしてるぜッ!」

盗賊「………」

剣士「あの技凄げえなぁ……教えてくんねえかな……」

盗賊「………」

剣士「あれ仙人の技なんだぜッ!」

盗賊「……剣士」

剣士「おん?なんだ?」

盗賊「お金頂戴……」

剣士「ああ?……そうか、なるほどなぁ。お前面白い事考えんな!」

盗賊「………」



ワアアアアァ……

召喚士「クククッ……こう脆くてはつまらんな……」

ネメア「馬鹿が……調子に乗るな!」

召喚士「へぇい……」

盗賊「………」

ネメア「パイアどうしたのだ?」

召喚士「……?」

盗賊「……これ」

召喚士「これ?」

盗賊「………」チャリ

召喚士「………」

ザワザワザワ……

盗賊「………」ザッ……

ネメア、召喚士「………」

ネメア「ヤバイぞこれは……パイアめやる気だ……」

召喚士「ななな何とかしてよ!」

ネメア「………」

召喚士「今までみたいにちゃちゃっとさ!」

ネメア「出来る訳無いだろ!力だけならパイアの方が上だぞ?」

召喚士「………」

盗賊「………」バッ!

ズガッガギンッ!

召喚士「ひやぁぉぁあ!」

ネメア「避けんか!」

召喚士「出来るか!」

ワアアァァ……チビッコスゲー……

盗賊「………」

召喚士「あわわわわ……」

ネメア「ぐぬぬ……緊急事態だ!召喚術を使え!」

召喚士「やだぁぁあ!」

盗賊「………」ヒュッ!

ドゴンッ!パラパラ……

召喚士「ひぃぃぁぁ……」

ネメア「パイアめ……手加減無しか。早く召喚術を使わねば死ぬぞ!」

召喚士「そそそそんな事言われても!」

ネメア「パイアに撲殺されるのと一か八か召喚術を使って死ぬのとどっちがいいんだ!」

召喚士「どっちとも嫌じゃッ!」

盗賊「………」



……「なんたる事か……お子を見失ってしまうとは……」

……「またしても不覚……」

……「………」

……「せめてお子の顔だけでも見ておくべきであった……」

……「それにしても……なんと足の速いお子であろうか……」

……「某の足でも追い付けぬとは……」

……「まさか……お子を操る悪などいなくお子が一人で……」

……「いやいや!そんな事は無い!」

……「おのれ悪党……お子よ必ず救い出してみせるからなッ!」

……「姫は無事であろうか……」

……「………」



盗賊「………」ババッ!

ガスッガギッ!

ネメア「ぐっ!止めんかパイア!」

召喚士「ひぃぃ……」

盗賊「………」

ネメア「何の為にこんな事をする!」

盗賊「……勝ってお金貰う為」

ネメア「お前には必要無いだろ!」

盗賊「剣士の剣買いたいから……」

ネメア「………」

盗賊「………」

召喚士「そそそそれならお金はやるから止めてくれぇぇ!」

盗賊「……駄目」

召喚士「何でだよッ!」

盗賊「自分の手で倒せば勝った実感があるって剣士が言ってた」

ネメア「………」

召喚士「アホか!」

ネメア「ならば来いパイア!」

盗賊「………」コクッ

ネメア「……召喚士すまん。犠牲になってくれ……」

召喚士「は?え?はぁぁぁあ!?」

盗賊「………」ザッ!

ズドンッ!……

召喚士「」バタ……

ワアアアアァ!アノチビカッチマッタ!

盗賊「………」バッ!

ネメア「パイアよ……持って行け」

盗賊「………」



タタタタッ

盗賊「………」バッ!

剣士「中々面白かったぜ!」

盗賊「………」

剣士 (召喚士……最後、ありゃわざと喰らってくれたな……)

盗賊「……これ剣士に」

剣士「お前の金だ、俺は貰えねえよ」

盗賊「………」

剣士「……だが……その金で買ったもんをくれるって言うんなら貰ってやる」

盗賊「……なら買う」

剣士「そうか。……行くか」

盗賊「………」コクッ

剣士 (召喚士とネメア……ありがとな……)

盗賊「………」

タタタ……

ネメア「……ふう」

召喚士「」

ネメア「まぁ……結果が同じなのだからいいだろう……」

ネメア「甘いな私は……」

ネメア「おい……起きていいぞ?」

召喚士「」

ネメア「………」

ネメア「………」

ネメア「もしや……こいつあれをまともに喰らったのか……?」

ネメア「……お、おい!召喚士しっかりしろ!」

ネメア「………」

ネメア「剣士とパイアは行ってしまったし……どうしたものか……」



剣士「ぬふふふ」

盗賊「………」

剣士「なぁに買って貰うかな!ぬふふふ!」

盗賊「剣士……気持ち悪い」

剣士「大丈夫か?どっか打ったのか?」

盗賊「………」フルフル

剣士「……?」

盗賊「………」

剣士「……違うのか。それならいいや」

盗賊「………」

剣士「ぬふふふ!行くか!」

盗賊「………」

……「………」



……「お子よ、見付けたぞ」

……「成る程……あの梟雄な男がそうなのだな……」

……「………」

……「武器屋?……何故武器屋などに」

……「そうか……悪漢め許すまじ!」

……「幼気なお子を……くっ!……折檻する道具を……」

……「待っておれお子よッ!今助けに参るッ!」



剣士「これいいなぁ……そう思うだろ盗賊」

盗賊「………」

武器屋「お客様……そう商品に近付かれては……」

剣士「いいだろうがよ……勝手だろ?」

武器屋「はぁ……そうですが……」

剣士「いいなぁ……高けえなぁ……」

盗賊「……これ頂戴」ヂャリン!

武器屋「……お足りになりませんが」

剣士「値段ちゃんと見ろよ……」

盗賊「………」

剣士「買えそうなのはあっちだな。あれだと……また折れそうなんだよな……」

盗賊「………」

武器屋「………」チラッ

盗賊「………」?

剣士「………」

武器屋「こちらの武器……手持ちの金額でも構いませんが……」

剣士「……が?なんだ?」

武器屋「そちらのお嬢さんをですね……」

剣士「は……行くぞ盗賊」

盗賊「………」

剣士「悪りいなオヤジ。そんな欲しくねえんだ。ただの冷やかしだからよ……後、それ以上言ったらお前を殺す」

武器屋「………」

剣士「……チッ」

盗賊「………」



盗賊「……よかったの?」

剣士「ああ、構わねえよ気にすんな」

盗賊「………」

剣士 (召喚士達といたせいか……ああいう屑の匂いわかんなくなってんのかなぁ……)

盗賊「………」

剣士「あそこで買うよりよもっと良いところで買いたいからその時頼むぜ!」

盗賊「………」コクッ

剣士「暫くこいつの世話になんのか……」

盗賊「………」

……「待たれよ、そこの男……」

剣士「……俺か?」

……「そのお子を……此方へ渡して貰おう……」

剣士「………」

盗賊「………」

剣士「なんだ……盗賊よ今日は随分とモテるな」

……「………」

剣士「誰だか知らねえが渡すつもりはねえよ。悪りいな」

……「そうか……ならば力ずくで……」

剣士 (なんだこいつ……頭巾で顔隠して……)

……「構えよ……」

剣士「ん……ほらよ」ザッ

……「………」チャッ……

剣士「あああ?……その刀お前の?」

……「いかにも。……貴様がそのお子に盗ませた物だ」

剣士「い、いや違げえって!……こいつがな……いやぁ悪かったな……」

……「言い訳は聞かぬ!……貴様を成敗しお子を助け出す!行くぞッ!」

剣士「待て!誤解だ!」

……「ハアァァアッ!」

シュガスッ!ギギギ……

……「グギギ……」

剣士「聞けぇぇぇッ!」

……「聞く耳持たんッ!」

剣士「ぐうぅう!」

ガギンッ!……ざざ……

……「………」

剣士 (殺すつもりは無いみたいだな……刀の背……って言うのか、そこを使って……)

……「きえぇぇえいッ!」

剣士「……チィッ!」

シュガスッ!



剣士 (やべえ……こんな木剣じゃもたねえ……)

…… (あんな玩具のような物でよく……)

剣士「終わりかい?……まだまだこっちは行けるぜ?」

……「………」ザッ……

剣士 (さて……どうすっかな……)

……「………」チャキッ……

剣士 (刃をこちらに向けるか……)

……「悪いが……手加減無用のようなのでな……」

剣士「いいぜぇ来いッ!」

……「………」

スシャッ!ガスッ……

……「……ッ!」

剣士「こんなもんいくらでもくれてやるッ!」

ドボグゥッ!

……「グウァァゥゥ……」

剣士「チッ……また作んなきゃなんねえな」

…… (刀が木刀に食い込んだ瞬間……木刀を捨て某の腹部へ当て身……)

剣士「………」

……「ウゲッゲホッ……」

剣士「終わりでいいな?」

……「ぐう……待て……そのお子には手を……」

剣士「それな……おめえの勘違いだって……」

……「………」

剣士「どうせ俺が盗賊を良いように使って暴力を降るってるって思ってんだろ?」

……「……違うのか」

剣士「はぁ……俺ってそんなに悪い奴に見えるのかねぇ……やだやだ」

……「………」

盗賊「……剣士」

剣士「あ?なんだ?」

盗賊「……これ」バッ!

剣士「ああそうだな!勝ったぜ!」バッ!

……「……くぅ」

盗賊「………」

……「……お子よ」

盗賊「………」

ズドムッ!

……「グゲッグァァァ……」

剣士「お前何をッ!」

盗賊「……止め」

剣士「バカ野郎!そこまですんじゃねえよ!相手をよく見ろ!」

ポカッ!……ハラリ

……「なっ!ガハッ……ひ、姫……うぐぅ……」バタッ……

剣士「お、おい!しっかりしろ!」

……「………」

剣士「あーあ……のびちまってるぜ……」

盗賊「………」

剣士「盗賊よ……やり過ぎだ。こいつ起きたら謝っとけよ?」

盗賊「………」コクッ

剣士「……お前見て姫とか言ってたな。あの姫さんの関係者か?」

盗賊「………」

剣士「どちらにしろこのままにはしておけねえな……お前にやられちまったんだから」

盗賊「………」

剣士「盗賊よ、もう戦う意思がねえ奴に止めはやめとけよ?」

盗賊「………」コクッ

剣士「おし。……よっと、行くか」



喚起士「………」

姫宮「………」

喚起士「ですから……それは譲れません!」

姫宮「なんで!ズルいよ!」

ジノ「やめなよ二人共……」

喚起士「ジノは黙っててください。姫宮さん……王女なのですから威厳を持ち一人で寝るべきです!」

姫宮「喚起士は大人なんだから一人で寝れば良いでしょ!」

喚起士「それは出来ません!」

姫宮「私こそ!」

ジノ「………」

喚起士「それにパイア様はきっと私の方がいいに決まっています。ですから……」

姫宮「そんな事無い!私と一緒に寝たい筈だもん!」

喚起士、姫宮「グルルル……」

ジノ (パイア……モテモテだね……)

喚起士「姫宮さんは何故パイア様と一緒に寝たいのですか?」

姫宮「……喚起士こそ何で?」

喚起士、姫宮「………」

喚起士「そ、それは……これ!があるのできっと寝やすいかと思いまして!」たゆん

姫宮「ぐぬぬ……」

喚起士「ふふん」

ジノ「パイアを真ん中にしてさ……二人で寝ればいいじゃん……」

喚起士、姫宮「ッ!!」

ジノ (パイア恐るべし……)



ネメア「召喚士よ……」

召喚士「」

ネメア「人とは……冷たいものだな……」

召喚士「」

ネメア「通りがかる人皆無視だ……」

召喚士「」

ネメア「なんだか……お前が哀れになってきたぞ……」

剣士「んあれ?何やってんだ?」

ネメア「剣士!」

剣士「……召喚士どうしたんだ?」

ネメア「先程な……パイアの一撃、防がず喰らったらしい……」

剣士「あれをか……凄げえな……」

ネメア「………」

剣士「流石の召喚士だな……」

ネメア「それはいいから召喚士を運んでくれ」

剣士「ああ、わかった」

ネメア「ん……誰だこいつは?」

剣士「色々と勘違いして盗賊にのされた奴」

ネメア「はぁ?」

剣士「なんか……姫さんの関係者みたいだぜ」

ネメア「お嬢のか……追っ手では無いのか?」

剣士「倒れる前の雰囲気だと違うみたいだぜ?」

ネメア「そうか……」



姫宮「何でそんなに大きくなるのッ!」

喚起士「し、知りません!……勝手になったんです」たゆん

姫宮「なんか凄い悔しい……」

ジノ「お姫様はこれからだよ!」

姫宮「……そうかな?」

ジノ「たぶん……」

姫宮「………」

コンコンッ……

喚起士「どちら様でしょうか?」

……「俺だぁ開けてくれ!」

喚起士「………」

カチャ

剣士「ああ!流石に二人は重めえ!」

喚起士「召喚士さん!どうなされたんですか!?」



喚起士「これは一体……それにこの方は?」

剣士「こいつは誰だか知らねえが……召喚士はちょっとな」

喚起士「ちょっととは……」

姫宮「蒼頭ッ!」

喚起士「え?」

姫宮「蒼頭しっかりして!」

喚起士「この方が蒼頭……ですか」

姫宮「なんで蒼頭がこんな事に……」

剣士「いやぁ……な?」

盗賊「………」



召喚士「王の命令が聞けぬのか……愚か者どもめ……ムニャ……」

ネメア「………」

剣士「どんな夢見てんだよ……」

喚起士「パイア様がこの方を殴ってしまったと……」

盗賊「………」コクッ

姫宮「良かった……蒼頭が見付かって……」

喚起士「そうですね……」

ジノ「あのさ……」

喚起士「どうしました?」

ジノ「頭巾取らないの?」

姫宮「蒼頭に怒られるよ……」

ジノ「顔とか……怪我してるかもよ?」

ネメア「見られたく無い事情があるやもしれん。やめておけ……」

ジノ「……あたしは見たいの!」

喚起士「ジノ、何故そこまでこだわるんですか?」

ジノ「ん……この蒼頭っての人間じゃ無いかもしれないよ……」

姫宮「え?」

喚起士「………」

ジノ「お姫様と逃げてきたんなら悪い奴じゃ無いと思うんだけど……気になるじゃん!」

姫宮「蒼頭が人間じゃ無い……」

喚起士「ジノ……やめておきましょう」

ジノ「なんで!」

喚起士「この方が人間で無いなら今まで苦労して生きてきた筈です。ですから……」

蒼頭「………」



剣士「ちょっと盗賊と汗かいてくらぁ!」

ネメア「……稽古の方だな?」

剣士「そうだぜ?他にあるか?」

ネメア「いや……行ってこい」

剣士「おう?盗賊行くぜ!」

盗賊「………」コクッ

喚起士「私は桶の水を変えてきます」

カチャ……

姫宮「………」

ネメア「お嬢……大丈夫か?」

姫宮「うん……何でジノはあんな事言ったの?」

ネメア「あれか……ジノにしか見えていない物を見たんだ」

姫宮「見えていない物?」

ネメア「魂の色相……と言う物だな。魂あるもの全てに付いている色や形などだな」

姫宮「………」

ネメア「人間には人間の、そうでない者にはそうでない者の魂の色相があるらしい」

姫宮「……蒼頭の魂は人間じゃ無いって事?」

ネメア「そう言う事になるな」

姫宮「………」

蒼頭「………」

召喚士「ネメア……お手……ムニャ」

ネメア「お嬢……こいつを一発殴れ……」

姫宮「えぇ……いいよ……」



召喚士「……う」

蒼頭「………」

召喚士「うぅ……ネメアァァ……」

蒼頭「………」

召喚士「はあぅっ?」キョロキョロ

蒼頭「………」

召喚士「ここは……暗い……ん?」

蒼頭「………」

召喚士「……あああんた誰だッ!」

蒼頭「其方こそ誰だ?」

召喚士「俺は!……え?ここは?」

蒼頭「……どこぞの旅籠のようだ」

召喚士「……旅籠?」

蒼頭「宿屋の事だ……」

召喚士「へぇ……ってなんで?」

蒼頭「知らん」

召喚士「………」

蒼頭「………」

召喚士「あんた……何でそんなの被ってるの?」

蒼頭「……遠慮が無いのだなお前は」

召喚士「遠慮なんてしてもしょうがないだろ」

蒼頭「そうだが……普通何かあるのだろうと思い聞けぬぞ……」

召喚士「そう?」

蒼頭「………」

召喚士「で、何で被ってるの?」

蒼頭「素顔を晒したく無いからだ……」

召喚士「なんで?」

蒼頭「何ででもだ!……しつこいぞ」

召喚士「………」

蒼頭「………」

召喚士「見せてよ」

蒼頭「見せん」

召喚士「ちょっとだけ!……ね?」

蒼頭「しつこいと言っておるだろうがッ!」

ガチャッ!

喚起士「な、何かありましたか!?」

召喚士、蒼頭「………」

喚起士「お二人共お起きになられたんですね……」



剣士「よう!起きたな!」

蒼頭「……こ、これはッ!」

姫宮、盗賊「………」

蒼頭「姫が二人……いや……こちらが姫か」

盗賊「………」

姫宮「こっちだよ……蒼頭……」

蒼頭「なんと!……失礼つかまつった……」

姫宮「蒼頭……生きてて良かったよぉ……」

蒼頭「姫……」

召喚士「……どうなってるんです?」

喚起士「実は……」



蒼頭「姫の事……お守り頂き感謝いたす……」

喚起士「いえ……」

蒼頭「お主にも悪い事を……なんと詫びればいいか……」

剣士「気にすんな!元はこいつが悪いんだからよ」

盗賊「………」

蒼頭「だが、お子が刀を持って行かなければ……このように姫と再開することは難しかったであろう」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ、感謝する」

盗賊「………」バッ!

剣士「感謝されても盗みはもうすんなよ……」

蒼頭「………」



ネメア「………」

喚起士「貴方は何故……姫宮さんとはぐれてしまったんですか?」

蒼頭「お恥ずかしい話なのですが……姫を置いて買い物をしていた隙に見失いましてな……」

喚起士「………」

蒼頭「姫のお側にと命されたのに……なんとも不覚のいたすところ……」

喚起士「……命?誰にでしょうか?」

蒼頭「………」チラ……

姫宮「………」

喚起士「……なるほど、それは後程」

姫宮「蒼頭……」

蒼頭「姫、心配召されるな」

姫宮「………」

蒼頭「……喚起士殿、お訊きしたい事がある」

喚起士「なんでしょう?」

蒼頭「不思議な声の正体を知りたい」

喚起士「……なんの事でしょうか?」

蒼頭「某を人間では無いと見破り……某の頭巾を取るのを宥め、姫を励ました声の主の事を……」

喚起士「………」

蒼頭「ネメアジノ……と言っていたか……」

喚起士「起きていらっしゃったんですね……」

蒼頭「……盗み聞きするつもりは無かったのだが聴こえてしまったのでな」

喚起士「………」

ネメア「構わん、既にバレてしまっているようだからな。それに害も無いであろう」

蒼頭「……なんと」

ジノ「ネメアジノじゃ無くてネメアとジノ様だよ!」



召喚士 (あいつ人間じゃ無いのか……へぇ……)

ジノ「よし!あたし達の事は話したから今度は蒼頭の番だよ!」

蒼頭「ジノ様が仰られた通り……某は人間では無い」

姫宮「………」

蒼頭「姫……申し訳無く……今まで騙すような……」

姫宮「……いいよ蒼頭。中身が蒼頭ならどっちだっていい」

蒼頭「……おぉ……姫ぇぇ」

ジノ「じゃ!……その頭巾取ってみようかッ!」

蒼頭「……御断り致す」

ジノ「なんで!?」

蒼頭「それはですな……ああ……その……」

ジノ「……?」

喚起士「ジノやめなさい……」

ジノ「気になるじゃん!喚起士だって見たいでしょ?」

喚起士「………」

召喚士「………」

剣士「……気になるよな」

姫宮「取ってみようか蒼頭……」

蒼頭「姫までッ!なんと……」

ジノ、喚起士、召喚士、剣士、姫宮「………」ジー

蒼頭「ああぐぅ……そんなに視線を向けられても……」

ネメア「お前達は……止めぬか!」

蒼頭「ネメア殿!」

ネメア「人が嫌がる……人では無かったな。それでも嫌がっているのだから」

蒼頭「………」

ーー

剣士「もぉぉぉおッ!何だよあいつら盗賊持ってくなよッ!」

ネメア「………」

剣士「せっかくよ……盗賊としようと思ってたのによぉぉ!」

ネメア「黙れッ!」

剣士「うぁぁぁあ召喚士やらせてくれよぉぉ!」

召喚士「黙れッ!」

剣士「………」

蒼頭「……?」

剣士「お前でいいや……やらせてくれよ!」

蒼頭「何をで御座ろう?」

剣士「セックス」

蒼頭「………」

剣士「な?いいだろ?」

蒼頭「人間では無いと言っておるだろ……」

剣士「全然構わねえって!」

蒼頭「………」

召喚士「剣士さ……頼むから俺達で性欲満たそうとするのやめてよ……」

剣士「いいじゃねえか……」

召喚士「よくない!……あんた、こいつ何でもありだから気を付けろよ……」

蒼頭「肝に命じよう……」

召喚士「……寝る時も頭巾付けたままなの?」

蒼頭「如何にも」

召喚士「へぇ……」

蒼頭「………」

召喚士「………」



姫宮「蒼頭の顔……結局見れなかったね……」

喚起士「そうですね……」

ジノ「………」

喚起士、盗賊、姫宮「………」

喚起士「姫宮さん……もう少し離れては如何ですか?」

姫宮「喚起士こそ離れてよ……」

喚起士、姫宮「………」

喚起士「パ、パイア様?……魔力まだあります……?」

姫宮「………」ゴクッ

盗賊「……大丈夫」

喚起士「そうですか……」

姫宮「そっかぁ……」

喚起士「遠慮……なさらなくてもいいんですよ……」

姫宮「そうだよ……」

盗賊「………」

ジノ (由々しき事態だ!……召喚兄さん喚起士取られちゃうよ!)

喚起士「………」ぐにぐに……

姫宮「……?」

喚起士「………」ぐにぐに……

盗賊「………」

姫宮「喚起士さ……おっぱい押し付けられるの嫌がってるよ盗賊……」

喚起士「そ、そんな事してません!それに……嫌がってなんていませんよねパイア様?」

盗賊「………」

姫宮「……ほら」

喚起士「何も言ってないじゃないですか……」

姫宮「嫌だよねぇ盗賊ぅ!」

盗賊「………」



剣士「ぐごごががぁ……」

召喚士「………」

蒼頭「こやつは……いつもこうなのか?」

召喚士「そうだね……」

カチャ

盗賊「………」

召喚士「パイア?どうかしたのか?」

盗賊「………」スタスタ……

ズドムッ!

剣士「アガッ……」

盗賊「………」ススッ……

剣士「………」

盗賊「……zzz」

召喚士「酷ぇ……」



蒼頭「……zzz」

召喚士「………」

蒼頭「……zzz」

召喚士「………」ソ……

シュピン……

召喚士「あがが……」

蒼頭「……お主はそう言う奴か。なるほど」

召喚士「ここここれ……」

蒼頭「どうした?もう少しで頭巾に手が届くぞ?」

召喚士「はははも刃物を退けて……」

蒼頭「……もうしないと誓うのなら引こう」

召喚士「しししません!絶対しません!」

蒼頭「次は無い。覚えておけ」

召喚士「………」

ーー

召喚士「おは……」

喚起士、姫宮「………」ズーン……

ジノ「………」

召喚士「……何かあったのか?」

ジノ「まあね……パイアに振られた?かな……」

召喚士「………」

剣士「おうっ……あだぁ……また脇腹がいてえよ……」

盗賊「………」

剣士「なんなんだろうな……変な病気じゃねえだろうな……」

召喚士「それは無いよ剣士……」

剣士「何か知ってんのか?」

召喚士「知らないけど……」

蒼頭「……何とも緊張感の無い朝で御座いますな」

ネメア「いつもの事だ……気にしない方がいい」



剣士、盗賊「………」ガツガツガツッ!

ジノ「はぁ凄い食べっぷりだね……」

召喚士、喚起士、姫宮「………」

蒼頭「……何で御座ろう?」

召喚士「別に何でもないよ。早く食べろよ……冷めるぞ……」

蒼頭「……はぁ?では」

召喚士、喚起士、姫宮「………」

蒼頭「………」モグモグ……

姫宮 (くぅ……もうちょっと!)

召喚士 (見えそうで見えねえ!)

喚起士「………」

蒼頭「……喚起士殿」

喚起士「え?は、はい?なんでしょうか?」

蒼頭「後程、色々とお聞かせ願いたい」

喚起士「……色々ですか?」

蒼頭「貴殿達の……目的などを」

喚起士「わかりました。……ジノ、召喚士さんと一緒にいてもらえますか?」

ジノ「良いけど?」

喚起士「お願いします。召喚士さん、ネメアをお貸しくださいますか?」

召喚士「はい……なんでネメアを?」

喚起士「……それはですね」

ネメア「ジノとお前がいては話が進まないからだ」

召喚士、ジノ「酷ッ!」

喚起士「……わ、私の意見ではありませんからね?」

召喚士、ジノ「………」



剣士「行くぞ盗賊!」

盗賊「………」コクッ

剣士「召喚士よぉ、稽古してくるぜ!」

召喚士、ジノ「………」

剣士「なんだぁ?……まあいいや」

カチャン……

召喚士「……なぁ」

ジノ「……なに?」

召喚士「俺達って……邪魔かな……」

ジノ「召喚兄さんだけ……邪魔なんだよ……」

召喚士「喚起士さんにネメアと交換させられたお前に言われたくないよ……」

ジノ「………」



召喚士「パイアに振られたってあれはなんだ?」

ジノ「ああ……喚起士とお姫様がパイアをサンドイッチして寝てたんだけど」

召喚士「パイアめ……」

ジノ「……パイアが二人に気持ち悪いって言ったんだよ」

召喚士「………」

ジノ「………」

召喚士「それはへこむよな……」

ジノ「………」

召喚士「二人が秘密の花園へ足を踏み入れようとしたのに拒否されたんだから……」

ジノ「あのさ召喚兄さん……」

召喚士「なんだ?」

ジノ「喚起士の事……好き?」

召喚士「………」

ジノ「………」

召喚士「ばばばば馬っ鹿 何聞いてんだよ!」

ジノ「喚起士の事……心配なんだよね……」

召喚士「……何が心配なんだ?」

ジノ「喚起士、喚起士の兄ちゃんが死んじゃってからずっと一人だったんだよ」

召喚士「………」

ジノ「それでさ……今はいいんだけどね、この先……全部終わったらどうなるかなぁって」

召喚士「……変わらないだろ?」

ジノ「そう思う?……あたしは喚起士がまた一人になるんじゃないかなって思うよ」

召喚士「………」

ジノ「終われば皆もとの場所に戻るでしょ?……でもね喚起士にはそれが無いんだよ」

召喚士「……故郷へ帰れば」

ジノ「帰っても喚起士は一人なんだよ……」

召喚士「そうなのか……」

ジノ「……全部終わったら喚起士……壊れちゃうんじゃないかな」

召喚士「………」

ジノ「今まで自分を支えてた物が無くなっちゃうからね……」

召喚士「………」

ジノ「だからさ……良かったら召喚兄さんが支えになってくれないかなって」

召喚士「……俺なんかじゃ駄目だろ。多分……相手にしてもらえないよ……」

ジノ「そうかな……脈ありだとしたらどうする?」

召喚士「まさか……」

ジノ「………」



蒼頭「なるほど……仇を……」

喚起士「………」

蒼頭「ならば……こちらもお話せねばなりませんな」

ネメア「お嬢の谷の国と言うのは今酷い状況なのか?」

蒼頭「……まだ表立っては酷くは御座らん。だが……」

ネメア「………」

蒼頭「裏では魔喚士なる輩が暗躍し……国はほぼ奴の手中に……」

ネメア「………」

蒼頭「何かしらの術で王、その周りにいる有力者を操り……それ以下の人間に対しては人質を取るなどして従わせているのです……」

喚起士「………」

ネメア「なら……お前とお嬢は何故平気なのだ?」

蒼頭「将軍……この者の名前は姫より伺っておりますか?」

喚起士「はい……」

蒼頭「この将軍が姫をお守りしたのです……」

ネメア「何故?敵では無いのか?」

蒼頭「それは某にもわかりませぬ。……この者何を企んでいるのか」

ネメア「………」

蒼頭「某に姫を逃がしお守りするよう命じたのも将軍……」

喚起士「………」

蒼頭「魔喚士が操り……将軍が指揮をする……今、谷の国はこのようになっておりまする」

ネメア「なるほど……」

蒼頭「……後、某が平気だったのは操る対象にならなかったと思われます」

喚起士「……貴方は姫宮さんの御付き等では無いのですか?」

蒼頭「いやぁ……只の雑用係で御座ります……」

喚起士「………」

蒼頭「そう、疑問に思われますよな。何故某のような雑用に姫を任せたのか」

ネメア「そうだな」

蒼頭「恐らく将軍……あの輩は某の正体を見破っていたのではないかと……」

ネメア「操るに及ばない者でお嬢を守る事が出来る者……と?」

蒼頭「左様で御座ります」

喚起士「……それでも将軍と言う方の目的はわかりませんね」

ネメア「そうだな……逃がさずとも自分の傍らに置いておけば良さそうなものだが」

蒼頭「………」



剣士「どうすっかなぁ……」

盗賊、姫宮「………」

剣士「また木剣ってのも芸がねえよなぁ……」

姫宮「ならあれ使ったら?」

剣士「……丸太?」

姫宮「そう!吸血鬼をも倒せる伝説の武器だよ!」

剣士「あのな……吸血鬼倒しに行く訳じゃねえんだろ?丸太なんて使えるかよ……」

姫宮「そっか……残念……」

盗賊「……剣士これ」バババッ!

剣士「お前と一緒に素手で戦って言うのか?」

盗賊「………」コクッ

剣士「やだよ……」

ーー

ジノ「さっき見た地図のとこまで行くの?」

喚起士「そうですね。北と西へ行く道が分岐する所にある街までですね」

ジノ「そっか!」

召喚士「………」

ネメア「……どうかしたのか?」

召喚士「ふえ?な、何でも無いよ」

ネメア「珍しく考え事をしているように見えるが?」

召喚士「……うん、ちょっとね」

ネメア「……?」

蒼頭「……その丸太はなんだ」

剣士「仕方無くだよ。気にすんな」

蒼頭「そう言えばお主、自分の得物は持っていないのか?」

剣士「ああ……折られちまった……」

蒼頭「誰に?」

剣士「召喚士。……俺が未熟だから仕方無かったんだけどよ」

蒼頭「………」

剣士「どうした?」

蒼頭「……あやつ其程強いのか?」

剣士「強えなんてもんじゃねえぜ!仙人の技を使えたりするんだぜ!」

蒼頭「……あやつがか?」

剣士「そう!俺なんか束になっても敵わねえって!何たって達人だからな!」

蒼頭「ほう……」ヒョイ

剣士「石なんか拾ってどうするんだ?」

蒼頭「……投げる」

剣士「無駄だと思うぜ?避けられるって」

蒼頭「………」

ビュバッ!

召喚士 (お?銅貨発見!)ヒョイ

蒼頭「なッ!」

剣士「な?」

バシンッ!

喚起士「な……」バタッ……

剣士、蒼頭「………」

姫宮「か、喚起士!どうしたのッ!」

召喚士「……おい何かあったのか!?」

姫宮「わからない!突然倒れて……喚起士!喚起士!」

召喚士「喚起士さんしっかりしてくださいッ!」

剣士「……お前ちゃんと謝っとけよ」

蒼頭「ああ……心の底から謝ろう……」



喚起士「………」

蒼頭「………」ドゲザッ!

喚起士「もう……頭をお上げになって宜しいので……」

蒼頭「誠に申し訳無かった!」

喚起士「………」

召喚士 (やべえ……喚起士さん超怒ってるよ……)

蒼頭「あの……」

喚起士「女だから……私が気に食いませんか?」

蒼頭「そ、そうでは御座らん!」

喚起士「女の癖にでしゃばるなと……石を投げつけ!」

蒼頭「本当にそうでは……」

喚起士「………」

蒼頭「それに某も人間で言えば女に成るゆえ、決して侮辱するような事は御座らん!」

召喚士、姫宮「……え?」

喚起士「は?」

蒼頭「……何かおかしな事がありましたでしょうか?」

剣士「はあ?お前抱えたけど全然肉無かったぜ?」

蒼頭「悪かったな……喚起士殿程成長せんで!」

喚起士「……し、信じられません!」

蒼頭「信じられないと言われましてもな……」

姫宮「………」

蒼頭「姫ならわかりますな!」

姫宮「ううん……全然……」

蒼頭「なんと……」

剣士「脱いだ方が早いんじゃねえのか?」

蒼頭「………」

召喚士「剣士……お前さ……」

剣士「……な、なんだ?まずかったか?」

召喚士「たまには良い事言うな!俺もそう思うよッ!」

剣士「だよな!」

蒼頭「………」

喚起士「………」

蒼頭「……仕方ありませんな。お目汚し失礼……」

喚起士「ま、待ってください!」

蒼頭「………」

喚起士「……少し疑問に思っていた事がそれで晴れましたので」

蒼頭「疑問?」

喚起士「姫宮さんと行動を共にしていたのですから……なんて言うか……」

蒼頭「………」

喚起士「間違い……みたいな事が起きるとまずいではないですか……」

蒼頭「………」

喚起士「………」

蒼頭「確かに異性同士なら……起こり得るかもしれませんな」

喚起士「姫宮さんを守らせるならそれなりに強いだけで無く……同性と言う条件もあったのではと」

蒼頭「……なるほど」

喚起士「ですから……脱がないで結構ですよ」

蒼頭「承知致した」

召喚士 (えええええ……)

剣士「……なんだ脱がねえのか」

喚起士「貴方と言う方は!少しは召喚士さんを見習ったらいかがですか!」

剣士「何を見習うんだ……?」

喚起士「召喚士さんみたいに煩悩を消し去り間違いを起こさない事です!」

剣士「俺は間違いなんて起こしてねえだろ……」

喚起士「起こしそうだから言っているのです!」

召喚士「………」

剣士「なんだよそれ…」

蒼頭「お二方そこまでで!……元は某が悪かった故……」

喚起士「………」

剣士「………」

ネメア (元からあった溝がまた深くなったか……)

姫宮「蒼頭……女だったんだ……」

蒼頭「姫はわかっていると思っておりました……」

姫宮「……ごめん。全然わからなかったよ」

蒼頭「左様ですか……」



召喚士 (あの二人……何とか仲良く出来ないのかぁ……)

剣士「盗賊喰らえぇッ!」

ドガンッ!

盗賊「……ッ!」

召喚士 (喚起士さんが言ってた……お姫様守らせるってなんだろ?……後で聞いてみるか)

ひゅゅん……ドカッ!

召喚士「イタッ!ななななんだ!?」

盗賊「………」

剣士「悪りいな召喚士!盗賊ぶっ飛ばし過ぎたぜ!」

召喚士「そんな物振り回すなよ……ってお前武器買わなかったの?」

剣士「……ちょっとな。後、いい物無かったからよ」

召喚士「そうなんだ」

盗賊「………」クイッ

剣士「やんじゃねえぞ……俺は盗んだ物を持ってこられても嬉しくねえって」

召喚士「………」

盗賊「………」

剣士「そうだ!次の街で買って貰うからな!」

召喚士 (なんでそれで意志疎通出来てんだよ……)

剣士「ん……」

召喚士「どうした?」

剣士「盗賊よ、お前今まで盗んだ物で一番凄けえもんてなんだ?」

ネメア「……何故そんな事を聞く?」

剣士「ちょっと気になるだろ?どんだけ凄け女盗賊だったかって」

ネメア「………」

剣士「本当だって。盗賊使って金儲けしようなんざ考えてねえよ」

ネメア「ならいいが……」

剣士「で、なんだ?」

盗賊「………」……?……?

剣士「………」

盗賊「………」!

剣士「お?思い付いたか!」

盗賊「……喋る斧」

剣士「喋る斧だぁ?」

盗賊「………」コクッ

剣士「へぇ、喋る斧か。欲しいな……」

召喚士「剣士さ……ここに喋る手甲があるぞ?」

剣士「いらねえよ……」

ネメア「………」

剣士「それで喋る斧ってのはどうしたんだ?」

盗賊「……売った」

剣士「かぁー!勿体ねえ!」

召喚士「あのさネメア……ネメアの仲間じゃないよね?」

ネメア「違うと思うが……いくらなんでも仲間を売ったりはしないだろ……」

召喚士「………」

ネメア「………」

ーー

喚起士「すっかり暗くなってしまいましたね……」

召喚士「宿取れたらいいんですけど……」

喚起士「そうですね……」

剣士「ああッ!腹減った!」

盗賊「………」グウゥゥアッ!

蒼頭「なんとも……恐ろしき音を出す腹の虫だな……」

姫宮「………」ビクッ……

蒼頭「いかがなされた姫様?」

姫宮「な、なんでも無いよ……」

蒼頭「………?」

喚起士「私は宿へ向かいますね」

剣士「飯だッ!行くぞ盗賊!」

盗賊「………」コクッ!

蒼頭「姫様、某達は如何しましょう?」

姫宮「喚起士に付いて行くよ」

蒼頭「かしこまりました」

召喚士「喚起士さん、俺は剣士に付いて行きますよ。……何かあるといけないので」

喚起士「わかりました。……お任せしますね」

召喚士「じゃあ後で……」

喚起士「はい」



喚起士「困りましたね……」

蒼頭「……そうですな」

喚起士「一部屋しか空いて無いなんて……」

ジノ「困る事なんて無いじゃん!」

喚起士「何故です?」

ジノ「野郎共は夜空の下に仲良く寝かせればいいよ!」

喚起士「そう……いえ、それは可哀想じゃないですか……」

ジノ (……結構酷いな喚起士)

喚起士「召喚士さん達が帰って来たら相談してみますよ」

姫宮「蒼頭……頭巾を取る事ってあるの?」

蒼頭「湯浴の時ですな……流石に頭巾を着けたままでは入られんので」

姫宮「そうなんだ……」

喚起士、ジノ「………」



剣士「ほれは俺のだッ!ふほんじゃねえよッ!」ガツガツッ!

盗賊「………」バババッガツガツッ!

召喚士「………」

ネメア「口の中に物を入れたまま喋るな!」

召喚士「ひい……ふう……みい……」

ネメア「どうした?」

召喚士「お金足りないかも……」

ネメア「………」

召喚士「………」

剣士「はだか!みせろっつーの!」モグモグッ!

盗賊「………」バババッガツガツッ!

召喚士「ちゃんと喋れよ!誤解されるだろ!」

ネメア「………」



召喚士「………」

剣士「いやぁ喰った喰ったッ!」

盗賊「………」ケフッ

剣士「召喚士って少食なんだな!」

召喚士「お前らが手当たり次第食いまくるからこっちまで回って来なかったんだよッ!」

剣士「早く食わねえから……」

召喚士「少しは遠慮しろよッ!しかもお前ら……人のお金で食いまくるから俺はすっからかんだよ!」

剣士「ごちッ!」バッ!

盗賊「……ごち」バッ!

召喚士「こいつらは……」

ネメア「………」



召喚士「……マジですか」

喚起士「はい……マジです……」

召喚士、喚起士「………」

蒼頭「……姫様は確定なのでこのままで」

姫宮「う、うん……」

剣士「野宿嫌だな……」

召喚士「……部屋を使う人をどうやって決めます?」

喚起士「………」ドンッ!

召喚士「それは……?」

喚起士「四本の棒のうち、二本印を付けてあります。印が付いた物を引けば宿に……」

召喚士「四本ですか?……何故です?」

喚起士「パイアは小さいので誰かと一緒に寝てもらいます」

召喚士、ネメア、ジノ (様が取られてる……)

喚起士「後は言わなくてもわかりますね?」

召喚士、剣士、蒼頭「………」

喚起士「では……皆さん一斉に……」

剣士「恨みっこ無しだぜ……」

セーノッ!!

蒼頭「姫様をお守りしなければいけない身なのだから当然の結果だなッ!」

剣士「お?ラッキー!」

召喚士、喚起士「………」

蒼頭「ではお二方、出口は彼方で御座ります」

召喚士「そんなの言わなくてもわかっとるわ!」

蒼頭「左様ですか。くふふふふ」

召喚士、喚起士「………」イラッ



召喚士「蒼頭の野郎……」

喚起士「……今度無理矢理頭巾を剥がしましょう」

召喚士「それはちょっと……」

喚起士「蒼頭さん、本日私を二回苛立たせたのでフフフ……」

召喚士 (目が怖いよ……)

ジノ (これはチャンスか!)

召喚士「あの喚起士さん……」

喚起士「なんでしょうか?」

召喚士「お姫様を守らせる条件とか言ってましたげど……あれは何です?」

喚起士「あれですか……実は蒼頭さんに姫宮さんを守るように言った方がいたんですが……それが将軍と言う方だったんです」

召喚士「悪い奴じゃ無かったんですか……」

喚起士「わかりません……召喚士さん、この事は姫宮さんの耳に入れないようにお願いします」

召喚士「……わかりました」



蒼頭「ささ!姫様!」

姫宮「う、うん……ありがとう……」

剣士「いやぁ外じゃ無くて良かったぜぇ」

蒼頭「……剣士」

剣士「なんだ?」

蒼頭「……これよりこちら側に入ったなら斬る。心得ておけ」

剣士「……なんで?」

蒼頭「お主に襲われたくは無いのでな」

剣士「無理矢理なんてしねえよ……」

蒼頭「………」

剣士「それにその刀使いこなせてねえ奴に斬られるかってんだ」

蒼頭「……何故使いこなせて無いとわかった?」

剣士「まあ……お前と立ち合ったからな。それぐらいならわかるぜ」

蒼頭「………」

姫宮「二人……戦ったの?」

剣士「おう戦った!こいつ酷いんだぜ!俺が木剣なのに刀で向かってきて!」

姫宮「………」

剣士「その時な、こいつ刀を使いこなせて無いなってわかったんだ」

蒼頭「………」

剣士「その刀よ……お前には重過ぎるんだろ?」

蒼頭「その通りだ……意外と凄いのだなお主は」

剣士「誰だってわからぁ」 

蒼頭「………」

剣士「ところでよ、なんで自分に合ってない武器何か使ってんだ?」

蒼頭「幼少より……この刀を使っていた故。……これがあったから今日姫様と一緒出来ている訳だがな」

剣士「どう言うこった?」

蒼頭「某はこの刀より軽く強靭な刀を求め旅をしていたのだが……途中路銀が尽きてな……」

剣士「………」

蒼頭「その時に拾ってくださったのが谷の国だったと言う訳だ」

剣士「へぇ……で、お前の求めてる刀はまだ見付かってねえ訳か」

蒼頭「そう……なのだが……」

剣士「……?」

蒼頭「この地方の何処かにナイトヘッドモデル?とか言う豪剣を制作している者がいると噂を聞いた」

剣士「その噂本当かよ?……後、それはナイトメアモデルな」

蒼頭「それそれ。……あくまでも噂だ。本当にいるのかは知らん」

剣士「………」

蒼頭「その者を探し出せれば……某の求めている刀を手に入れられるのではないか……とな」

剣士「………」



喚起士「……zzz」

召喚士「………」

ジノ「ほれ!レッツダイブ!」

召喚士「出来るか……」

ジノ「情けない!……白くて良い匂いして柔らかき肉の海がそこにあるじゃん!」

ネメア「ジノ……やめておけ……」

ジノ「兄ちゃんは黙ってて!」

召喚士「流石に夜這いは駄目だろ……こう言うものはちゃんと手順を踏まえてだな……」

ジノ「………」

召喚士「………」

ジノ「……チッ」

召喚士「舌打ちするなよ……」

ジノ「………」

召喚士「……喚起士さんってさ、寝付きいいよね」

ジノ「そりゃそうだよ魔力回復してんだもん。召喚兄さんだって同じでしょ?」

召喚士「ああ……いや、ん……どうなのかな……」

ジノ「……?」

ネメア「こいつは自分の魔力の増減がわからないのだ」

ジノ「はぁ?」

召喚士「……悪かったな」

ジノ「………」

ネメア「どうした?」

ジノ「それってさ……ヤバいんじゃないの……?」

召喚士「……なんで?」

ジノ「魔力を限界以上使ってもわからないんだよ?知らない間に命まで消費しててもわからないし!」

召喚士、ネメア「………」

ジノ「……突然死んだりするかも」

召喚士「やややややめろよ!」

ネメア「ジノ!冗談が過ぎるぞ!」

ジノ「……ああ大変!召喚兄さんの魂が夜空に消えていく!」

召喚士「ギャァァァアッ!俺の魂帰ってこいぃぃいッ!」

ネメア「………」

召喚士「カンバァァァアックウウゥゥ魂ぃぃいッ!」

ジノ「うっそぉー」

召喚士「………」

ネメア「魂が体から離れたら喋れる訳無いだろ……少しは考えろ……」

召喚士「………」

ジノ (そっか……)



……「こんばんは。良い夜ですね」

召喚士「……はあ?そうですね」

……「こんな夜だと……心が勇む気分になりますね」

召喚士 (だ、誰だ?)

……「月明かりが銀ら金らと……」

召喚士「……あの、何方ですか?」

……「天界からの刺客と言えばおわかりでしょうか?」

ネメア「ッ!」

召喚士「ネネネメアッ!」

……「シー……お静かに。このお嬢さんが起きてしまいます」

召喚士「……ぁぁ」

……「………」

ネメア「ガルゥゥ……」

……「ネメアのライオン……本当に人間といたのですね……」

ネメア「誰だ貴様は……」

ジノ「に、兄ちゃん!こいつ……」

……「こちらは……魂の守護獣……」

ジノ「………」

……「……御察しのようですね。そう私は天使ではありません」

ネメア「………」

……「私……マルコシアスと言う者です」

ネメア「なぁッ!」

召喚士 (聞きたいけど……聞いたらまた馬鹿がって言われるんだろうな……)

ネメア「何故ッ!冥界の住人が天界の刺客などしているッ!」

マルコシアス「……色々と事情がありましてね」

召喚士「おいジノ……あれ悪魔?」

ジノ「そうだよッ!それぐらい知っとけこの童貞野郎ッ!」

召喚士「ぐはぁ……ネメアに聞けば良かった……」

ネメア「召喚士ッ!構えろ!」

召喚士「おぅ……」ふらふら……

ネメア「貴様はこんな時に何をやっているんだッ!」

召喚士「心に楔を撃ち込まれて……ぁぁぁ……」

マルコシアス「………」

ジノ「喚起士ッ!起きてッ!」

マルコシアス「待ってください。……お二方、誤解なさずに」

ネメア「………」

ジノ「そうやって油断させようと!」

マルコシアス「していません」

ネメア「……ならなんだッ!貴様は私を捕らえに来たのではないのかッ!」

マルコシアス「………」



召喚士「……?」

マルコシアス「面白い人間に使役されているのですね」

ネメア「そんな事はどうでもいい……貴様は何をしに来たのだ!」

マルコシアス「単刀直入に言います……ネメア、貴方のタテガミを頂きたい」

ネメア「……何故?」

マルコシアス「貴方は私を倒す事は出来ない」

ネメア「そうだな……貴様も私を倒す事は出来ない」

マルコシアス「そう……そして貴方に勝つ事も出来ない」

ネメア「………」

マルコシアス「ならどうするか?……貴方を倒した事にすればいいと」

ネメア「それでタテガミを寄越せと言うのか……」

マルコシアス「はい」

ネメア「………」

マルコシアス「これならお互い損も無く……私は目的を達成し、貴方は天界から追われる事も無くなると」

ネメア「なるほど……」

マルコシアス「……如何でしょう?」

ネメア「………」

ジノ「兄ちゃん……」

ネメア「貴様は何故……天界に加担している?理由を教えろ」

マルコシアス「………」

ネメア「………」

召喚士「何が何だかわからないんだけど……」

ジノ「今は黙ってろ!この

召喚士「だ、黙ってるからそれ以上言わないでくれ……」

マルコシアス「私……元々主天使の座に付いていました」

ネメア「………」

マルコシアス「………」

ネメア「なるほど。……どこぞの天使に私を倒すなり捕獲したなりしたらその座に戻すと言われたのか」

マルコシアス「その通りです。……それだけではありませんが」

ネメア「……?」

マルコシアス「馴染みの……親類が困っているのですから助けにとですね」

ネメア「………」

召喚士、ジノ「どういう事?」

ネメア「……祖父の知り合いだ」

ジノ「じいちゃんの!……こいつ凄い偉い奴じゃん!」

召喚士「お前らの爺さんってどんな奴だ?」

ジノ「……地獄の番犬」

召喚士「……首が三つあるやつ?」

ジノ「そう……」

召喚士「………」

マルコシアス「お願い出来ますでしょうか?」

ネメア「わかった……渡そう」

マルコシアス「ありがとうございます……本当に……うぅぅ」

ネメア「……泣く程の事なのか?」

マルコシアス「主天使の座に戻る事……私の悲願でした……」

ネメア「………」

マルコシアス「これで……これでようやく……ぐぅぅ……」

ジノ「………」

召喚士「………」



召喚士「何か凄い喜んでたね……」

ジノ「めっちゃ紳士的だったのにタテガミ貰った瞬間……ひゃっほう!って……」

ネメア「………」

召喚士「ネメア……色々聞きたいんだけどさ……」

ネメア「……なんだ?」

召喚士「あの人何者なの?……両方揃って倒せないって言ってたけどあれは?」

ネメア「あれは……地獄の侯爵だ。あの姿をしているのを見るのは初めてだったが」

ジノ (やべえ……地獄の侯爵にこいつとか言っちゃったよ……)

ネメア「あれと戦闘になっても……決着は着かないからああ言ったのだ」

召喚士「………」

ネメア「お互い……相手を傷付けるだけの力は無いからな」

召喚士「へぇ……」

ネメア「……これで天界から追われる事も無くなればいいが」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「ネメア……追われなくなったらどうするの?」

ネメア「………」

召喚士「還る?ねぇ還る!?還ってくれる?ねぇネメア!」

ネメア「還らんッ!」

召喚士「ぇぇぇ……」

ネメア「お嬢の事や喚起士の事があるだろうがッ!……仕方無いからな手伝ってやる」

召喚士「……いいよ」

ネメア「貴様は……本当に天界からの刺客が来ないとも限らないのに良くそんな事が言えるな!」

召喚士「………」

ーー

喚起士「申し訳ありません……」

召喚士「良いですよ!気にしないでください!」

喚起士「夜通し見張りを……本当にすいません……」

召喚士「女性を守るのは男として当然の役目ですから!ふふ!」キリッ

ネメア、ジノ「………」

召喚士「良く眠ってましたけど……そうとう疲れてました?」

喚起士「……かもしれないです」

召喚士「なら宿へ行って御飯食べたら、もう少し寝てたらどうですか?」

喚起士「ですが……」

召喚士「良いですって。剣士達もわかってくれますよ」

喚起士「………」

ネメア (馬鹿が……先程まで爆睡していた癖に……)



剣士「まぁいいぜ!街を見て回りたかったしな!」

召喚士「そっか、良かった」

蒼頭「………」

召喚士「……行きたいのか?」

蒼頭「ば、馬鹿な事をッ!姫様をお守りしなければならない某が……」

召喚士「行って来いよ。お姫様は見とくからさ」

蒼頭「しかし……」

召喚士「良いって!ネメアもジノもいるし安心しろって」

蒼頭「………」

召喚士「なッ!」

蒼頭「わかり申した……ならば姫様の事宜しくお頼み申します」

召喚士「ああ!任せとけ!」

ネメア「……?」

召喚士「………」



ネメア「……どう言うつもりだ?」

召喚士「……何が?」

ネメア「お嬢と二人きりになろうと言う魂胆が見えるが……」

召喚士「………」

ネメア「お前まさか……お嬢に手をッ!」

召喚士「違うわいッ!……俺は胸の脂肪が多い女性の方が好みだし!」

ネメア「そうか……なら何故だ?」

召喚士「………」

ネメア「言えぬのか……」

召喚士「あれだよ……ほらあれ……」

ネメア「………」

召喚士「お姫様って……あるじゃん?」

ネメア「……何が?」

召喚士「魔力……」

ネメア「……で?」

召喚士「俺の変わりに召喚してもらないかなぁって……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「馬鹿か貴様はぁッ!お嬢に喚起術を使わせようなどとッ!」

召喚士「……いいじゃん」

ネメア「もしもの事があったならどうするのだッ!」

召喚士「……お前やジノがいるじゃん」

ネメア「そう言う問題で無いだろがぁッ!」

バタンッ

姫宮「な、何かあったの?怒鳴り声聞こえたけど……」

召喚士「お?丁度いい時に来たね」

姫宮「え?」

召喚士「お姫様ぁちょっといいかな?」えへっ

姫宮「……なに?」

召喚士「喚起士さんみたいに……格好良く!召喚してみないー?」

姫宮「………」

ネメア「お嬢やめておけ……」

召喚士「こうさバババッ!って……どう!」

姫宮「でも……」

ネメア「こいつの言う事は聞かない方がいい」

召喚士「……召喚出来たらパイアが頼って魔力吸ってくれるかもよ」ボソ……

姫宮「やるッ!」

ネメア「………」

召喚士「さっすがお姫様……話がわかりやすなグヘヘヘ……」



召喚士「わかった?」

姫宮「うん……」

ネメア「お前……この召喚陣……」

召喚士「喚起士さんには頼めないだろ?だから……」

ネメア「まだ諦めて無かったのか……」

召喚士「誰かが還ればすぐにでも喚ぶのに還らないからな!」

ネメア「………」

姫宮「やってみるよ?」

召喚士「おう!」

姫宮「……常世の声を聞こえし幻想の者よ……その姿現さん!」

召喚士、ネメア「………」

姫宮「………」

召喚士「駄目かぁ……」

姫宮「……失敗?」

召喚士「ん……」

ネメア「お嬢のせいでは無いだろ」

姫宮、召喚士「そうなの?」

ネメア「またお前は……わかっていないに……」

召喚士「………」

ネメア「お嬢は魔術が使えるのだから何かしら召喚に対して妨げになる要素があったのかもしれんな」

召喚士「へぇ……」

姫宮「なら私……召喚術使えないんだ……」

ネメア「そう言う事になるな」

姫宮「残念……」

ネメア「お嬢、二兎追うものは一兎も得ず。お前には必要の無い物だ」

召喚士、姫宮「………」

ネメア「どうした?」

召喚士「いや……喚起士さんの書いた絵を思い出しただけ……」

ネメア「………」



喚起士「お陰様で大分楽になりました」

召喚士「良かったですね……はは……」

喚起士「……何かあったのですか?」

ネメア「何も無い……」

喚起士「はぁ……」

ジノ「何この召喚陣?」

召喚士 (しまったッ!片付けるの忘れてたぁぁぁッ!)

喚起士「………」

召喚士「こここここれはですね!違うんですよ!」

喚起士「ん……」

召喚士「あわわわ……」

喚起士「この召喚陣……書き方が間違っていません?」

召喚士「……え?」

ネメア「……なんだと?」

喚起士「これでは……発動しませんよ……」

召喚士「………」

ネメア「………」

喚起士「この召喚陣の模様からすると……呼び出そうとしてたのは妖精のロー

召喚士「喚起士さんッ!」

喚起士「は、はい?」

召喚士「本当にその召喚陣は発動しないんですか!?」

喚起士「そうですね……無理だと思います」

召喚士「がぁぁぁぁ……」ドサ……

喚起士「だ、大丈夫ですか!召喚士さん!」

召喚士「俺の努力が……俺の努力が……」

喚起士「………」

ネメア「………」



ジノ「召喚兄さん……頭抱えてジタバタしてたけど大丈夫かな……」

喚起士「あの召喚陣が間違っている事に相当ショックを受けていたみたいですけど……」

姫宮「………」

喚起士「姫宮さん、どうしました?」

姫宮「召喚士……私に召喚させようとしてたんだけど……」

喚起士「なんて事を……」

姫宮「もし召喚が成功してたら何が出てきたの?」

喚起士「ローンと言う妖精ですね。アザラシの皮を纏っていて美しい女性の姿をしていると言われ……」

姫宮「そうなんだ……妖精さんかぁ。見てみたかったな」

喚起士「………」

姫宮「……?」

喚起士「ジノ……召喚士さんは何故ローンを呼び出そうとしていたのでしょうね……」

ジノ「……知らない方がいいと思うよ」

喚起士「………」

ジノ「………」

喚起士「聞いてみましょう……」

ジノ「やめときなよ……」

喚起士「もし私欲の為ならば……」

ジノ「……ならば?」

喚起士「その根性叩き直さなければいけません!」

ジノ「………」

喚起士「行きましょう!」

ジノ (召喚兄さん……無事を祈る……)



剣士「中々よ、こうしっくり来るってもんは見つかんねえなぁ」

蒼頭「そうだな」

剣士「んあー!どっかに落っこてねえかな!」

蒼頭「……落ちている訳無いだろ」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ、どうした?」

盗賊「………」クイッ

蒼頭「………」

剣士「お前よ……いい加減それやめろよ……」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ……釜茹でにされてしまうぞ?だからそれはやめておけ」

盗賊「………」コクッ



剣士「お前さ、人間じゃ無かったらなんなんだ?」

蒼頭「なんだ突然……」

剣士「いやぁよ、盗賊も人間じゃねえからさ気になってよ」

蒼頭「お子が人では無いと……冗談は好きでは無い」

剣士「本当だって。なぁ盗賊」

盗賊「………」コクッ

蒼頭「まさか……どう見ても人であろう……」

剣士「信じないならそれでもいいぜ?盗賊の一撃を喰らったお前ならわかる筈だろ?」

蒼頭「………」

盗賊「………」ググッ……

蒼頭「お子よ……構えんでもよい。そうか……」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ……お前も同じなのだな……」

盗賊「………」?

蒼頭「この人の世に溶け込み暮らす苦労……痛い程わかるぞ……」

盗賊「………」

蒼頭「姿や素性は晒せず……いらぬ勘繰りをされ生きて行かなければならぬ苦労……」

盗賊「………」

蒼頭「おいたわしや……」

剣士「……お前苦労なんかしてた?」

盗賊「………」フルフル

剣士「だよな」

蒼頭「………」

剣士「で?やっぱその頭巾の下は化物面なのか?」

蒼頭「……そうだな」

剣士「へぇ」

蒼頭「反応はそれだけか……」

剣士「あ?怖がった方が良かったか?」

蒼頭「そうでは無いが……」

剣士「別にいいじゃねえか、化物でも中身は普通だろ?……見た目綺麗な人間でも化物みたいな奴もいるしな」

蒼頭「………」

剣士「………」

蒼頭「……喚起士殿の事か?」

剣士「違げえよ……。まぁ一部は化物みてえだけどよ」

蒼頭「………」



召喚士「グアアァァァァ……」

ネメア「………」

召喚士「お爺ちゃん話が違うじゃないかよぉぉぉ……」

ネメア「おい……」

召喚士「召喚獣とキャッキャウフフ出来るぞって嘘っぱちじゃないかよぉぉぉ……」

ネメア「おいと言っているだろッ!」

召喚士「なんだよ……今それどころじゃ無いんだよ……」

ネメア「私の話を聞け!」

召喚士「やだよ……これからクソお爺ちゃんをどうやって天国から地獄へ落とすか考えないといけないんだから……」

ネメア「いい加減にしておけよ。……こちらの方が大事な事なのだから」

召喚士「………」

ネメア「何故……私はここにいるのだと思う……?」

召喚士「喚んでもいないのに無理矢理割り込んで来たから!」

ネメア「……そうだな。なら発動しない筈の召喚陣で来られたのは……何故だ?」

召喚士「………」

ネメア「おかしいだろ……私がここにいる事が……」

召喚士「偶然発動したとか?」

ネメア「……そんなにうまい事いくかな」

召喚士「……俺が喚ぼうとしていた女の子はいたんだろ?」

ネメア「そうだが……」

召喚士「なら上手く発動したんだよ」

ネメア「………」



喚起士「召喚士さん……何故妖精を召喚なさろうとしていたのかお聞かせ願いますか」

召喚士「………」

喚起士「どうしました?」

召喚士 (やべぇ……何か超怒ってるよ……何で?)

喚起士「………」

ジノ「喚起士さ……召喚兄さんもそこまでじゃ無いと思うよ?」

喚起士「ジノは黙っててください」

ジノ「まさか召喚獣呼び出して……恋愛ゴッコしようなんでさ……」

召喚士「………」

ジノ「ましてや召喚獣相手にキャッキャウフフしたりさ……あわよくば童貞捨てられるなんて考えて無いと思うよ?」

召喚士「………」

喚起士「そうですが……召喚士さん、私欲の為に呼び出そうなんてしてませんよね?」

召喚士「………………はい」

ジノ (こいつやる気だったのか!最低だ……)

喚起士「なら何故呼び出そうとしていたのですか……しかも姫宮さんを使ってまで!」

召喚士「……それは」

喚起士「それは?」

召喚士 (どどどどどうするか!はい、そうですよなんて言えねえ……)

ジノ「………」

召喚士「……あれですよ?」

喚起士「あれとは?」

召喚士「あれ……そう!あれ!」

喚起士「………」

召喚士「お姫様が自分で身を守れるようにする為ですよッ!」

喚起士「……本当でしょうか?」

召喚士「本当本当!剣士や蒼頭ばかりに頼らせては限界がいつ来るかッ!」

喚起士「………」

召喚士「それにお姫様が自分で身を守れたら……その分、俺が喚起士さんを全力で守ってあげられますのでね!はははッ!」

喚起士「………」

召喚士「はは……は……?」

喚起士「………」

召喚士 (この嘘はキツかったか……)

ジノ「……喚起士?」

喚起士「……ううあ」

ダダダダッ……

召喚士「な、なんだ?」

ジノ「置いてかないでよ!」

召喚士「喚起士さん……どうしたんだ?……てっきりぶん殴られるかと思ったけど……」

ジノ「………」

召喚士「……おーい」

ジノ「喚起士……ああ言うのに弱かったのか……」

召喚士「……?」

ーー

蒼頭「喚起士殿は如何なされた?」

召喚士「わかんない……」

ジノ「………」

蒼頭「なにやらお顔が真っ赤だったが……」

召喚士「そうなんだ……何でだろうな……」

ジノ「……おい、蒼頭!」

蒼頭「ジノ様、何で御座ろう?」

ジノ「あたしとナゾナゾ勝負しようよ!」

蒼頭「ナゾナゾ……ああ、謎かけですな」

ジノ「そう!で、あたしが勝ったら……顔見せろ!」

蒼頭「御断り致す」

召喚士「お前さ……前にも言っただろ。勝負しても相手に得が無いんだよ」

ジノ「ぐぬぬ……じゃあ!……何か欲しい物ある?」

蒼頭「軽く強靭な刀なら欲しいですぞ」

ジノ「あたしが持ってる物で!」

蒼頭「うぬ……」

召喚士「お前……何か持ってるの?」

ジノ「人間の脊髄とか頭蓋骨とか?」

召喚士「そんな物誰が欲しがるんだよ!」

ジノ「そんな物って失礼だよ!立派なハンティングトロフィーなのに!」

蒼頭「ほう!」

ジノ「お?興味ある?」

蒼頭「あれはいい物です。勝利者のみが得られる物……」

ジノ「そうそう!」

蒼頭「人間の頭蓋骨は艶が命で御座ろう?」

ジノ「わかってるねぇ!」

召喚士「怖いよお前ら……」



蒼頭「ならば……朝昼夜共に四本、謎を駆け遠きを見詰める半ばの王とは?」 

ジノ「いや!え?な!」

召喚士「ジノぉ……問題出されたなら答えなきゃなぁ……たまには答える側になってみろよ」ニヤリ

ジノ「………」

蒼頭「さぁ!さぁ!さぁ!」

ジノ「えっと……朝昼夜四本……???」

蒼頭「わかりませんかな?」

ジノ「黙ってて!」ブツブツ……

蒼頭「ふふふ……」

召喚士「蒼頭……答えそれだろ?」

蒼頭「ほう、わかりましたか。中々やりますなぁ」

召喚士「お前こそ……くくくっ……」

召喚士、蒼頭「クハハハハッ!」

ジノ「ぐぎぎ……」

ーー

ジノ「謎を駆け……謎を駆け……」ブツブツ……

喚起士「全力で守って……全力で守って……」ブツブツ……

蒼頭「ささ!姫様、就寝のお時間ですぞ」

姫宮「うん……二人どうしたの?」

蒼頭「さぁ?どうしたので御座ろうな。わかりませぬ」

姫宮「そう……。ねえ蒼頭……」

蒼頭「何で御座ろう?」

姫宮「これから先……私達はどうなるのかな……」

蒼頭「………」

姫宮「喚起士達に助けてって言ったけど……」

蒼頭「姫様……それ以上は言葉にしてはいけませんぞ」

姫宮「……でも」

蒼頭「姫様の心情おわかり申すが……それはこの者達に大変失礼な事かと」

姫宮「………」

蒼頭「わかりましたな?」

姫宮「ごめん蒼頭……」

蒼頭「姫様……どうしても我慢出来ない時が来たのなら……」

姫宮「………」

蒼頭「某が受け止めますので。……御安心あれ」

姫宮「うん……ありがとう蒼頭……」

蒼頭「………」



ジノ「半ばの王ってなんだよ!あああわからない!」

喚起士「………」

ジノ「………」ブツブツ……

喚起士「ジノ……」

ジノ「……なに?」

喚起士「………」

ジノ「……召喚兄さんに言われた事?」

喚起士「はい……」

ジノ「そんなに気になっちゃう?」

喚起士「はい……女だから守ってでは無く……私だから守ってやると」……」

ジノ「へぇ……」

喚起士「………」

ジノ「喚起士もちゃんと女の子してるんだね」

喚起士「失礼ですよジノ……」

ジノ「そお?喚起士は全然そんな素振り見せないからどっかに女の子の部分を捨ててきちゃったのかと思ったよ」

喚起士「……そんな事ありません……私だって」

ジノ「だって?」

喚起士「………」

ジノ「喚起士……もう少し楽に生きたらどう?仇とか奴隷をとか人の為にってのも大切だと思うけどさ……」

喚起士「………」

ジノ「やっぱり一番大切なのは自分じゃん。……そんなんだと一人になった時辛いよ?」

喚起士「そう……ですかね……」

ジノ「……あたしだっていつまでも側にいる訳じゃ無いんだし」

喚起士「………」

ジノ「………」

ーー

ネメア「………」

召喚士「まだ気にしてるの?」

ネメア「そうだ……」

姫宮「おはよう盗賊!」 

盗賊「おは……」

剣士「ぐぁぁ……何で起きる度に脇腹痛えんだぁ……」

召喚士「パイアと離れて寝ればいいだろ……」

剣士「ぁあ?そうすれば痛くならねえのか?」

召喚士「知らないけど……そんな気がするだけ……」

剣士「なんだそれ……」

蒼頭「ジノ様おはようございます。お答えは出ましたかな?ぐふふふふ」

ジノ「こいつムカつく!……悔しいぃぃ!」



喚起士「後はこのまま西に向かい……」

蒼頭「村を二つ越えた先が谷の国になり申す」

剣士「………」

蒼頭「どうなされた?」

剣士「いやぁな?……それまでにこいつをどうにかしてえなってな」

蒼頭「……そうですな。お互い良き出逢いがあればよろしいが………」

剣士「だな」

姫宮「………」

召喚士「大丈夫かい?」えへっ

姫宮「それ気持ち悪いからやめて……」

召喚士「………」



ネメア (本当に偶然だろうか……私がこいつの元に来たのは……)

召喚士「………」

姫宮「気持ち悪いって言ってごめん……」

ネメア (偶然では無く何かしらの意図みたいな物があるのだろうか……)

召喚士「……お姫様、お城に美人っている?」

姫宮「いるけど……何で?」

ネメア (もしあるのならそれは何なのか……それにこいつの魔力もそうだ……)

召喚士「紹介してよ」

姫宮「……嫌だけど」

ネメア (魔力の増減がここまでわからぬ事などありえるのか?)

召喚士「メイドさんでいいから!むしろメイドさんがいいから!」

姫宮「嫌!……喚起士に言うよ?」

ネメア (私がこの姿なら魔力の消費は押さえられるが……それでも限度がある筈……)

召喚士「かかか喚起士さんは関係無いだろ!」

姫宮「へぇぇぇぇ!」

ネメア (召喚術を使った時もそうだ……魔力の変調は無いみたいだった……)

召喚士「な、何だよ!」

姫宮「……いつもジロジロ見てるのに関係ないの?」

ネメア (わからぬ……召喚士よ貴様は何者だ……)

召喚士「………」

姫宮「喚起士ぃぃッ!」

召喚士「馬鹿!やめろよ!」

姫宮「ほう……私に馬鹿って言っちゃう?」

召喚士「………」

姫宮「ほら、こう言う時って何て言うの?ねえ?」

召喚士「馬鹿って言ってすいませんでした……」

姫宮「ふふふ……」

召喚士「ぐぬぬ……」



ジノ「まだ気にしてるの……」

喚起士「仕方無いじゃないですか……あのような事言われたの二回目なんですから……」

ジノ「二回目?……へぇ、過去にそう言う人いたんだ!」

喚起士「違いますよ……」

ジノ「じゃあ誰に言われたの?」

喚起士「……兄にですね」

ジノ「そうなんだ……」

喚起士「………」

ジノ「ごめんね……」

喚起士「いいですよ」

ジノ (召喚兄さん……高ポイントゲットしたみたいですぞ!)



剣士「ドラァアッ!」

ブオンッ!

盗賊「………」ヒョイ

剣士「当たんねえッ!」

蒼頭「こちらもお忘れ無くッ!」

シュビンッシュガッガスッ!

剣士「ぐうぅッ!軽い武器だと動きが違うな蒼頭よっ!」

蒼頭「これが枝では無く刀なら良いのだが」

盗賊「………」シュッ!

ドズッボグッ!

剣士「ぐがぁあ……」

蒼頭「ぐぁぁ……お子よ……」

盗賊「……よそ見は駄目」

剣士「ちったあ手加減しろよ……」



ネメア「………」

召喚士「困るだろ!保険だよ保険!」

姫宮「うわ……」

召喚士「喚起士さんは好きだ。うん、これは揺るぎ無い。だがな!」

姫宮「………」

召喚士「振られたらどうするか、相手にされなかったらどうするか!」

姫宮「………」

召喚士「それで傷付いた俺を慰めてくれる優しくてオッパイの大きいちょっとエッチなメイドさんに側にいて欲しいだろ!」

姫宮「だろって言われても……」

召喚士「だから紹介してって言ってるの!お子様にはわからないか!」

姫宮「大人でもわからないと思うけど……」

ネメア「くだらぬ事をグダグダと……」

召喚士「俺には大事な事なの!」

ネメア「貴様は……私がこんなに悩みぬいてるのに……」

召喚士「悩んでもわからない事はわからないんだから仕方無いんじゃないの?」

ネメア「そうだが……」

召喚士「それよりもさ……谷の国に着いたらどうするのか決まってるの?」

ネメア「……喚起士に聞けばよいだろ」

召喚士「そうなんだけどね……何か避けられてる雰囲気みたいなのが……」

姫宮 (だからしつこく紹介しろって言ってきたのか……)

ネメア「何かしたのか?」

召喚士「してないよ!……多分」

ネメア「ならば……お前が獣の小娘を召喚しようとしていた理由がバレたのだな」

召喚士「……ああ……やっぱりそうかぁぁぁ!そうかぁぁぁ……」



剣士「………」バッ……

蒼頭「………」スゥ……

盗賊「………」ザッ!

剣士、盗賊、蒼頭「………」

蒼頭「ハァァァアッ!」

シュガッ!

盗賊「………」ヒョイッ

剣士「そっちに跳ぶとこれがあるぜッ!デアアアッ!」

ズゥドンッ!……

剣士「チッ!」

盗賊「………」シュッ!

バババッ!ガスガスッ!

蒼頭「ほ!は!」

グラ……

剣士「やるな蒼頭!」

盗賊、蒼頭「………」ズサッ!

剣士「お?来いやッ!」

シュバッガガッ!

蒼頭「なんと!同時に受けるか!」

剣士「へっ!これだけ丸太の幅がありゃな!ダァァアアアッ!!!!」

盗賊「………」!

蒼頭「そんな大振りでは当たらん!」

ズゥゥゥンッ……

剣士「ああ!使いずれえな!」

グラグラッ………

蒼頭「な、なんだ?」

剣士「揺れてるぜ……?」

ガラガラガラッ!!!!



ガラガラ……パラパラ……

剣士「盗賊ぅッ!蒼頭ぉッ!」

召喚士「……まさか二人落ちたのか?」

剣士「そうだぜ!うおぉぉおいッ!」

喚起士「今凄い音ッ……こ、この穴は……」

召喚士「パイアと蒼頭が落ちゃったみたいです……」

喚起士「ええ!……なら追い掛けなければ!」

剣士「……これを行くのか?」

召喚士「深そうだよね……」

喚起士「しかしですね……」

召喚士「ここはネメアに任せましょうか……」

ネメア「は?何を言っている?」

召喚士「ロープ付けてさ……降ろすから!」

ネメア「待て待て待て!」

ジノ「兄ちゃん頑張って!」

喚起士「なら私が行ってきます!」

召喚士「駄目ですよ!危ないですから!」

ネメア「私は危なく無いとでも言うのか……」

召喚士「頼むよネメア!」

ネメア「………」

喚起士、剣士「………」ジトー

ネメア「わかった!わかったから……そのような目で見るな」

召喚士「じゃあ降ろすからな!見付けたらパイアか蒼頭にロープ引っ張って貰って!」

ネメア「ああ……何故このような事を……」ブツブツ……



蒼頭「………」

盗賊「………」ユサユサ……

蒼頭「ぐぅ……お子か……ここは……」

盗賊「……あれ」

蒼頭「……なるほど。あそこから落ちたのか……ハッ!」

盗賊「………」?

蒼頭「お子よ怪我は無いか!」

盗賊「……平気」

蒼頭「そ、そうか……某は!……ん、何とも無い……」

盗賊「………」

蒼頭「何故……かなりの高さから落ちたようだが……」

盗賊「……私が支えたから」

蒼頭「そうか……お子よ助けて頂き感謝する……」

蒼頭「しかしこれでは……戻れんな。お子は戻れそうか?」

盗賊「………」フルフル

蒼頭「そうか……」

盗賊「………」

蒼頭「こう暗くてはな……まずは灯りを……」カザカザ……

盗賊「………」?

蒼頭「待っておれ。今……」

カチッカチッ……ボッ……

蒼頭「……これなら少しはましか」

盗賊「……それは?」

蒼頭「提灯と言う。……この空洞……洞窟か?」

盗賊「………」

カツーン……カツーン……



召喚士「ネメアぁぁ!まだぁぁあ!」

……「まだだッ!」

姫宮「大丈夫かな……」

喚起士「大丈夫ですよ……きっと……」

剣士「二人共人間じゃねえんだ。平気だって!」

姫宮「………」

剣士「盗賊は頑丈だしな!蒼頭だって身が軽りぃし」

姫宮「でも……」

喚起士「姫宮さん……」

召喚士「ネメアぁぁ!……ネメアぁぁ!?」

剣士「……どうしたんだ?」

召喚士「いや……返事が無くなったんだけど……」

剣士「ロープ……切れてねえよな?」

召喚士「………」スルスル……

剣士「………」

召喚士「……うん、切れてる」

喚起士「ええ!」

剣士「どうするんだよ……」

召喚士「どうしよう……」

喚起士「と、取り合えずお湯を沸かして!」

姫宮「喚起士落ち着いて!」

召喚士「………」

剣士「………」

喚起士「………」

姫宮「………」



ガランッガランッ!ドウンッ……

蒼頭「………」

ネメア「馬鹿がッ!私を粗末に扱いおってぇぇッ!」

蒼頭「ネメア殿……」

ネメア「おお!パイアと蒼頭無事だったか!」

蒼頭「まぁ何とかは。しかし……」

ネメア「上へは上がれないか?」

蒼頭「そのようで」

ネメア「ふむ……」

カツーン……カツーン……

ネメア「……この音は?」

蒼頭「わかりませぬ。この空洞、どうやら洞窟になっているようでして。音は奥から響いてきたものかと」

ネメア「……なるほど」

蒼頭「………」

ネメア「進むしかあるまい。音の正体が何であれな」

蒼頭「そうですな……」

盗賊「……剣士は?」

ネメア「上にいるが?」

盗賊「そう……」

ネメア「……?」

蒼頭「この先が極楽か地獄か……地獄へ続く道で無い事を祈りましょうぞ」

ネメア「そうだな」

蒼頭「まだどちらとも行きたくは無いですがな」

ネメア「……ふふふ」

蒼頭「何か可笑しかったで御座ろうか?」

ネメア「考え方が人間と同じだと思ってな」

蒼頭「………」



カツーン……カツーン……

蒼頭「何やら金属を叩いている音のようで御座いますな」

ネメア「そうだな。……それに奥は明るいみたいだが」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ、大丈夫か?いつもと感じが違うように見えるが」

盗賊「……まだ大丈夫」

ネメア「まだ?何がまだなんだ?」

盗賊「………」

蒼頭、ネメア「………?」

カツーン……カツーン……



カツーン……カツーン……

蒼頭「こ、これは……」

ネメア「乱雑に並べられた武器の数々か……」

蒼頭「………」

ダダダダッ!

ネメア「どうしたッ!」

盗賊「………」

ネメア「パイアよ、蒼頭を追ってくれ!」

盗賊「………」コクッ

ダダダダ……

ネメア「この奥に何があるかわかったのだな蒼頭は……」

盗賊「………」

カツーン……



……「………」カツーンッ!

蒼頭「………」

……「………」カツーンッ!

蒼頭「……もし、そこの御仁よ」

……「………」

蒼頭「もしやナイトメアなる武器の数々を製作している鍛冶匠とお見受けするが如何か?」

……「………」カツーンッ!

蒼頭「………」

……「………」カツーンッ!

蒼頭「答えよッ!」

……「……そんな物は知らん。邪魔だ」

蒼頭「そうか……」

……「………」

盗賊「………」

……「また人間か……出て行けぇえッ!お前らがわしの物を盗み邪魔ばかりするからぁッ!」

蒼頭「御仁よ……」

……「言い訳なんぞ聞かんッ!グゥゥ……わしにお前らを潰せる力があればぁぁ……」

蒼頭「………」

……「何故……わしの静寂の鍛冶場を荒らすんだ……」

蒼頭「……御仁……苦労しておるようだな」

……「誰のせいだと思っているッ!全部お前ら人間のせいだろうがッ!」

蒼頭「申し訳無いが……ここに人間はいない……」

……「はぁぁぁあ?人間だろッ!」

蒼頭「某とこのお子は人間では無い」

……「………」

蒼頭「……証明は出来んが」

……「信じられん……」

蒼頭「………」

ネメア「聞きたい事がある。いいか?」

……「………ぁぁ」

ネメア「……何だ?」

……「ノオオオオッ!おいお前!今この手甲から声が聞こえたぞッ!」

ネメア「そうだが……」

カバッ!

……「貸せッ!おおおお……」

蒼頭「……御仁?」

……「初めて見たぞ……魔王の魂の破片が込められた武具を……」

ネメア「……??」

蒼頭「ネメア殿……魔王だったのですか?」

ネメア「そんなものになった事は一度たりとも無いが……」

……「はぁぁぁぁあ凄………ん?」

蒼頭「どうした御仁よ?」

……「これもしかして……召喚器か?」

ネメア「そうだが?」

……「なんじゃ……つまらん」ポイッ

ネメア「投げるなッ!」

……「がっかりだわい……」

ネメア「………」

蒼頭「召喚器とはなんで御座ろうか?」

ネメア「それはな……召喚獣が宿る武具などを召喚器と言うのだ。召喚獣自体が召喚器になる事もあるがな」

蒼頭「……なるほど。ならばネメア殿はどちらで御座ろう?」

ネメア「私は後者だな」

蒼頭「ほう……」

盗賊「……これ」

……「なんじゃ……その剣がどうかしたのか?」

盗賊「売って」

……「売り物じゃ無いわい。……それにそんな鈍らを手にしてるようじゃお前見る目が無いな」

盗賊「………」

蒼頭「某は中々の物だと思うのだが……」

……「……お前、その腰の物見せてみろ」

蒼頭「はぁ?どうぞ」カチャ

……「………」スゥ……

蒼頭「………」

……「なるほど。確かに人間じゃ無いみたいだな」

蒼頭「……何故、刀を見てわかるのですか!」

……「魂の色相って知ってるか?」

蒼頭「魂を持つ者にある色や形……と聞き申したが……それが何か?」

……「武器ってのはな、使えば使っただけ持ち主の色相が染み付くもんなんだよ」

蒼頭「………」

……「……知らんのか?」

蒼頭「某は未熟者故……知りませぬ……」

……「そっか。こんな刀……だったか、使ってるようじゃわからんわな」

蒼頭「………」ムッ……

……「……ん」

蒼頭「何を……」

……「……えい」ガシッ!……パキィィンッ……

蒼頭「うわああああッ!某の刀をぉぉぉあッ!」

……「必要無いだろ。もう武器を解放してやれ」

蒼頭「かたかたかたかた……おおおら折られ……あばばば……」

……「………」

蒼頭「な、何故ぇぁあッ!某の大切な刀をぉぉおッ!」

……「この刀……泣いていたぞ?」

蒼頭「ふうぅ……泣いてとはどう言う事で……グスッ御座ろうか……」

……「お前この刀を使いこなせ無いのに振り回してたろ」

蒼頭「如何にも……」

……「巧く扱われない武器の気持ち考えた事あるか?」

蒼頭「……ありませぬ」

……「所詮武器は物だと思っているんだろうが……違うんだぞ。これは使い続ければ使用した者の魂の残留物が蓄積されていくんだ」

蒼頭「………」

……「どんな武器でもな。そして心を持つ……」

蒼頭「まさか……」

……「お前はあの刀を手放す事は考えていなかっただろ?」

蒼頭「無論!某の大切な刀ですからな!」

……「大切なら何故泣かせる?……ってわからなかったんだよな」

蒼頭「左様で……」

……「代弁してやるが……もう戦いたく無いだとさ」

蒼頭「………」

……「この刀が幾つの命を奪ったかは知らん。……お前の側にいたくも無かったみたいだ」

蒼頭「………」

……「お前が修羅の途へ堕ちないようにとな」

蒼頭「………」

……「だから……理解し解放してやれ」

蒼頭「ぐぅぅ刀よ……」



蒼頭「………」

……「………」

蒼頭「……刀よ、今まで御苦労であったな。緩くりと休まれよ……」

……「……わしが言うのもなんだが、お前丸腰だと困るだろ?」

蒼頭「そうですな……」

……「どっこいせ!あぁ……どこ置いたかな」ズリズリ……

蒼頭「御仁、左足をどうにかしたのか?」

……「ちょっと太陽の光に当ててな灰にしちまった」

蒼頭「灰?」

ネメア「……お前ドヴェルグか?」

ドヴェルグ「そうだ。よくわかったな」

ネメア「それでか。このような場所で……よく生き残っていたものだな」

ドヴェルグ「………」

ネメア「滅びたとばかり思っていたが」

蒼頭「ネメア殿……お知り合いなのですか?」

ネメア「いや、知らん。だが……こいつの一族は有名だからな」

ドヴェルグ「どうせ有名って言っても悪い方でだろ。嬉しく無いわい」

ネメア「……お前はまだ作り続けているのか?」

ドヴェルグ「………」

ネメア「もうそのような物が必要な時代では無いと思うが」

ドヴェルグ「仕方あるめえ……それがわしの存在意義だ。それにそれしか生き方を知らん」

ネメア「……そうか」

蒼頭「ネメア殿……どう言う事で御座ろうか?」

ネメア「こいつは神殺しの武器を造る一族なんだ」

蒼頭「なんと……」



ドヴェルグ「こいつを持ってけ。刀じゃ無いが似てるだろ?」

蒼頭「こ、これは……なんと……」

ドヴェルグ「気に入らないか?」

蒼頭「いえ……なんと言う軽さと……」

ドヴェルグ「そいつは結構自信があるんだ。何てったってレヴィアタンの鱗より削り出した物だからな!」

蒼頭「よくわからんが凄いな……」

ネメア「待て。蒼頭よ……その武器を返せ」

蒼頭「何故で御座ろう?このような逸品……」

ネメア「レヴィアタンは女性を呪うぞ?」

蒼頭「……ッ!」カチャーンッ!

ドヴェルグ「こいつ女なのか!……すまねえわからんかったから……」

蒼頭「くれるのはいいのですが……呪いとか……そのような類いの武器はやめてくだされ……」

ドヴェルグ「わかった……」

蒼頭「………」

ドヴェルグ「どれにすっかな……容姿がわかりゃ決めやすいんだが、晒したく無いからそんなもんつけてるんだろうし……」

蒼頭「………」

ドヴェルグ「ん……」

蒼頭「なら……これで宜しいか?」パサッ……

ドヴェルグ「………」

ネメア「………」

蒼頭「………」

ドヴェルグ「なるほど。じゃあ、こいつだな。持ってけ」カチャ

蒼頭「拝見致す……」スゥ……

ドヴェルグ「そいつも軽いだろ?……白く淡い月の石を使ってるんだわい」

蒼頭「……呪いとかは?」

ドヴェルグ「無いから安心しろ」

蒼頭「………」カチンッ……

ドヴェルグ「………?」

蒼頭「ハァァッ!」バッ!

………ィィィイイン……

ドヴェルグ「こんな所で振り回すな!」

蒼頭「凄い……」

ドヴェルグ「だろ?」

蒼頭「軽いのにブレが無い……抜刀しても僅かな反響音しかしないなんて……」

ドヴェルグ「それに……お前にピッタリだ」

蒼頭「……そうで御座ろうか?」

ドヴェルグ「その白い刀身とお前は似てるだろ?」

蒼頭「や、やめてくだされ!」

ドヴェルグ「ガハハハッ!」

ネメア「……どうした?パイア」

盗賊「………」

ネメア「……?」

盗賊「………」ググッ!

バギンッ!

ネメア「な、なにをしているのだ!」

バギンッ!バギィィンッ!

ドヴェルグ「やめてくれぇぇぇッ!わしの剣がぁぁッ!」

盗賊「………」

ドヴェルグ「どうして剣を割るんだッ!?」

盗賊「折れなければ鈍らじゃ無い……」

ドヴェルグ「……は?」

バギンッ!

ドヴェルグ「うわぁぁぁああッ!こいつを止めてくれッ!」

盗賊「………」ググッバッ!

ネメア「恐らく……見る目が無いと言われた事が気に入らなかったのだな……」

蒼頭「なるほど……」

バギンッ!

ドヴェルグ「そんな事言って無いで止めろぉぉぉおッ!」

盗賊「………」バッ!

ガギッ!

盗賊「……ッ!」

ドヴェルグ「おおおお……」

盗賊「………」

ドヴェルグ「勘弁してくれぇ……」

盗賊「……この剣売って」カチャ

ドヴェルグ「……これだけしといて言う言葉がそれか!」

盗賊「………」バッ

ドヴェルグ「わかった!わかったから!売るから!」

盗賊「……はい」チャリ



ドヴェルグ「うおおぉ……わしの剣達が……」

蒼頭「まぁ……解放してやったと思って……」

ドヴェルグ「思えるか!……しかもいいやつを持って行くし!」

盗賊「………」バッ!

ネメア「やめないかパイア……誉めていない……」

ドヴェルグ「こんな銅の小銭と交換なんて割に合わんわい……」

蒼頭「やはりあれも特殊な材料で制作されたのですか?」

ドヴェルグ「そうだな……この世界には存在してはいけない魔物の鱗で造ってある」

ネメア「天界か冥界の奴か?」

ドヴェルグ「どちらも違う。……人間の世界の魔物だ」

ネメア「どう言う事だ?」

ドヴェルグ「昔、馬鹿な人間が魔物を混ぜまくって新しい魔物を造っちまったのさ。そいつの鱗だ」

ネメア「そんな事が……いや、人間だから出来るのか……」

ドヴェルグ「そうだ……」

蒼頭「人間だからですか?」

ネメア「そう、人間だから。奴らはあらゆる術を使いこなせるだろ?」

蒼頭「言われてみれば……確かに」

ネメア「その中で稀に……何種類もの術を扱える者が産まれるんだ。そう言う者が……その新しい魔物を造りだしたんだろうな」

蒼頭「……なるほど。なら某達のような人間で無い者だと出来ないと?」

ネメア「出来るには出来るが……」

蒼頭「出来るが?何で御座ろう?」

ネメア「まぁ……例えばだ、お前が私の子を産めば恐らく存在していない魔物が産まれる」

蒼頭「………」バッ!

ネメア「構えるな……例えばと言ってるだろ……」

ドヴェルグ「その女は見た目は良いから側に置いとくなら目の保養になるな!ガハハハッ!」

蒼頭「………」

ネメア「そう言うつもりで言ったのでは無いッ!……で、その魔物の名はあったのか?」

ドヴェルグ「ああ有ったよ。ドラコベヒーモスって名だな。こいつは鱗は硬いわ魔法は効かないわで、倒すのは一苦労らしいが」

ネメア「聞いた事は無いな」

ドヴェルグ「そいつの鱗で造った剣がそれだ。……お前が使うのか?」

盗賊「………」フルフル

ドヴェルグ「なら誰が使うんだ?」

盗賊「剣士……」

ドヴェルグ「……人間か?」

盗賊「………」コクッ

ドヴェルグ「………」

盗賊「………」

ドヴェルグ「何故お前は人間なんぞの為にそこまでしてやる?」

盗賊「………」

ドヴェルグ「いい事など無いだろ!残虐非道で物を盗むわ!それを売りさばき私腹を肥やすわ!」

盗賊「………」しゅん……

ドヴェルグ「それとな!」

ネメア「ドヴェルグよ……それ以上言わないでやってくれ……」

ドヴェルグ「ああ?何でだ!人間とはどう言うものか教えて!」

ネメア「パイア……こいつはそれをしていた時期があったのだ。だからな……」

ドヴェルグ「………」

盗賊「………」

ドヴェルグ「取り合えず……人間は信じるな。いいな!」

盗賊「……嫌」

ドヴェルグ「だぁぁあ!何でだ!」

蒼頭「善き人間もいまする。今、御一緒している方々も……」

ドヴェルグ「どうせ裏切る!でなければ見捨てる!人間はそう言うもんだ!」

ネメア「………」

ドヴェルグ「……帰ってくれ。人間と馴れ合ってるお前らといたくないわい……」

ネメア「ドヴェルグよ、お前と人間の間に何があったのかは知らんが……」

ドヴェルグ「………」

ネメア「帰るにも今はその道が無くなってしまっているんだ」

ドヴェルグ「はぁ?道が無いのにどうやって来た?」

ネメア「それはだな……」



召喚士、喚起士、剣士、姫宮「………」

ジノ「……嫌だけど」

召喚士「頼むよ……お前しかいないんだよ」

剣士「そうだぜ!今度はロープ切らないようにするからさ!」

ジノ「………」

喚起士「ジノ……」

ジノ「あのさ……わざわざ召喚器にロープ着けて降ろす事無いと思うんだけど……」

召喚士「どうすりゃいいんだよ?」

ジノ「あたしか兄ちゃん召喚しちゃえば良かったんじゃないの?」

召喚士、喚起士「ッ!!」

ジノ「なんでそんなに驚くの……」

召喚士「召喚なんてほとんどして無いから頭に無かったよ……」

喚起士「そうですね……」

ジノ「………」

喚起士「なら……ジノ、お願いできますか?」

ジノ「はいはい……」

バシュンッ!

ジノ「じゃあ行ってくるから……」

召喚士「頼んだぞ!無駄にいいオッパイ!」

ジノ「黙れ!どう

召喚士「あああーッ!ああ!」

剣士 (どう?……ど……導師!召喚士……お前やっぱり……)

ジノ「………」

ダダダッ……

喚起士「………」

召喚士「普通に駆けて行きましたけど……」

喚起士「それがどうかしましたか?」

召喚士「いや……背中の羽使って飛んで行くじゃないのかと……」



ドヴェルグ「なるほど……」

蒼頭「ここへ来たのも偶然なのです」

ドヴェルグ「……どうするんだ?わしは人間が簡単に入って来れなくなったか嬉しいが、お前ら帰れんぞ?」

蒼頭「他に出入り口は……」

ドヴェルグ「無い」

蒼頭「なんと……困り申したな……」

ネメア「せめて召喚士がいれば私が出たものの……」

ドヴェルグ「……お前もしかして人間に使役してるのか?」

ネメア「そうだ。……不本意だがな」

ドヴェルグ「そこの小娘で無く?」

ネメア「そうだ。パイアも人間に使役してる」

ドヴェルグ「ならネメアと言うのはあのネメアか!」

ネメア「どのネメアの事か知らんが多分そのネメアが私だろうな」

ドヴェルグ「ほほほうッ!」

ネメア「……何だ?そんな目を輝かせて……」

ドヴェルグ「お前の毛皮くれ!」

ネメア「やれる訳無いだろ……」

ドヴェルグ「ちょっとでいいからッ!シッポのところをなッ!」

ネメア「ふざけるな。誰がやるか……」

ドヴェルグ「つまらんわい……」

ネメア「………」

蒼頭「……ネメア殿の毛皮はそれ程価値のあるものなのですか?」

ドヴェルグ「知らんのか?こいつの毛皮はな、わしらみたいな者にとっちゃ最高な物なんだぞ」

蒼頭「ほう……数々の素材を扱ってきた御仁が言うのですから相当な物なのですな」

ドヴェルグ「おうとも!だからくれッ!」

ネメア「やらんッ!」

ドヴェルグ「つまらんッ!」

ネメア「知るかッ!」

蒼頭 (ネメア殿の毛皮でいったい何が出来るので御座ろうか……)

ネメア「……そうだ、お前に聴きたい事があったのだ」

ドヴェルグ「毛皮をくれたら答えてやるわい」

ネメア「しつこいッ!……先日、喋る斧と言う物の存在を知った。造ったのはお前か?」

ドヴェルグ「わしにはそんな物造れんわい。喋るって事はそれも召喚器じゃ無いのか?」

ネメア「………」

盗賊「違う」

ドヴェルグ「……本当か?」

盗賊「………」コクッ

ネメア「なら我々の仲間でも無いのか……」

ドヴェルグ「………」

ネメア「どうした?」

ドヴェルグ「それどこで知った?」

ネメア「昔……パイアが売ってしまった物にそれがあったらしい」

ドヴェルグ「売ったッ!……そ、その斧は赤い宝石が付いてて!女の子供の声だったか!」

盗賊「そう……」

ドヴェルグ「……それ売ったのか……がああ勿体無い!勿体無いぃぃ!」

ネメア「そんなに価値のある物なのか?」

ドヴェルグ「あるあるあるッ!……それがあれば神を殺し放題だッ!」

ネメア「なッ!そんな危険な物なのか!」

ドヴェルグ「いや……言い方が悪かったな。それがあれば完全なる神殺しの武器を造るのに一歩近付く!」

ネメア「……全然違うではないか」

ドヴェルグ「がああ勿体無いぃぃい!」

蒼頭「喋る斧……それ程凄い物とは思えんのですが」

ドヴェルグ「ただ喋るだけじゃ無いぞ?そいつらの力が凄いんだよ!」

蒼頭「ほう……そいつら?他にも同じような物があるのですか?」

ドヴェルグ「わしが知ってるだけで槍と剣があるな!一度でいいから見てみたいものだわい……」

ネメア「そいつらの力とは何だ?それ程凄いものなのか?」

ドヴェルグ「凄いな。神留、召喚、分身等だ」

ネメア「召喚か……」

ドヴェルグ「それとな、それがさっき言ってた魔王の魂の破片が込められた武器なんだが……欠点もある」

ネメア「欠点?」

ドヴェルグ「……人間にしか扱えない」

ネメア「魔王の魂と言うぐらいだから魔王が造ったのだろ?何故人間だけなのだ?」

ドヴェルグ「ん……なんと言うか魔王が魔王を倒す為に造ったらしい」

ネメア「なんだそれは……意味がわからんぞ……」

ドヴェルグ「詳しくは知らんが……今、魔王と言われてる者は本当の魔王では無いらしいぞ」

ネメア「………」

ドヴェルグ「その今の魔王に身体を乗っ取られたらしい」

ネメア「それなら自身で倒したらよさそうなものだが……」

ドヴェルグ「偽魔王の根城に近寄れ無いんだと。それで魔王が造った武器を人間に託しと言う訳だ」

ネメア「……なるほど。だが……お前、やけに詳しく知っているな」

ドヴェルグ「そりゃ本人に聞いたからな。時々ここに来るんだわい」

ネメア「は?」

ドヴェルグ「わしが大事にしてる酒を飲みにな」

ネメア「………」

ドヴェルグ「迷惑な事だわい……武器を見せんのにただ酒飲みおって……」



ネメア「人間だけにしか扱えない物を何故欲しがる?」

ドヴェルグ「もしだ……これが魔物にも扱えたら強大な力になると思わないか?」

ネメア「………」

ドヴェルグ「きっと神さえも凌ぐ力になるぞ!」

ニイチャーンッ!

ネメア「この声……」

蒼頭「………」パサッ……

ネメア「……蒼頭よ、その顔ならば隠す必要は無いと思うが」

蒼頭「いえ……これを見られたら……きっと皆の側にいられなくなる故……」

ネメア「私はそのような事は無いと思うがな」

蒼頭「………」



ジノ「無事で良かったね!」

ネメア「まあな……」

ドヴェルグ「………」

ジノ「この子汚いおっさんは何?」

ドヴェルグ「いきなりそれか!」

ネメア「ジノ……やめなさい……」

ジノ「本当の事だし!」

ドヴェルグ「ぐぬぬ……」

ジノ「さ!帰ろうよ!」

ネメア「ああ。ドヴェルグよ、騒がせて悪かったな」

ドヴェルグ「いいわい。目の保養にもなったからなグハハ!」

蒼頭「………」

ジノ「兄ちゃん……何故おっさんは蒼頭見て言ったの?」

ネメア「さあ?何故だろうな」

ジノ「………」

ドヴェルグ「女、それ大事に使えよ」

蒼頭「勿論。もう……使われて辛いと思わせないよう精進致す故」

ドヴェルグ「そうしてくれ」

蒼頭「御仁……その刀の供養お頼み申す……」

ドヴェルグ「ああ、任せとけ。……小娘、裏切られないよう気を付けろよ」

盗賊「………」

ドヴェルグ「………」

ジノ「ほらパイアと蒼頭!背中に乗って!」

蒼頭「わかり申した。では御仁……達者で!」

ドヴェルグ「気を付けて帰れよ!ネメアッ!気が向いたら毛皮くれッ!」

ネメア「やらんと言ったッ!」

ドヴェルグ「グハハ!またな!」



ダダダッ……

ジノ「パイア!あんまり強く掴まないでイタタッ!」

盗賊「………」グッ!

ジノ「痛いって!せめて肉じゃなくて毛を掴んで!」

ネメア「パイア……乗せて貰っているのだから優しくしなさい……」

蒼頭「ネメア殿……」

ネメア「なんだ?」

蒼頭「御仁は……あのまま連れて来なくても良かったのでしょうか……」

ネメア「構わん。ドヴェルグの一族は太陽の光に当たると灰になってしまうんだ。私達とは同じように暮らしてはいけない」

蒼頭「なるほど……」

ネメア「………」

蒼頭「………」

ネメア「それと完全なる神殺しの武器と言っていたが……完成はしないだろうな」

蒼頭「何故で御座ろうか?……あのように心血を注いでいると言うのに」

ネメア「そんな物がもし誕生したならば全ての世界を混乱させてしまう。魔王もそれがわかっていて見せんのだろう」

蒼頭「………」

ネメア「蒼頭よ、それがドヴェルグの生き方だ。お前が落ち込む事は無い」

蒼頭「……そうですな」

ジノ「……?」

盗賊「………」グリッ!

ジノ「ギャァァァアッ!な、何すんの!?」

盗賊「面白かったから……」

ジノ「バカッ!」

盗賊「………」グリッグリッ!

ジノ「イタタダダダッ!やややめて……」



姫宮「蒼頭ぉぉッ!」

蒼頭「姫様……御心配お掛けしました……」

姫宮「ふぁぁん無事で良かったよぉ……うぅ……」

蒼頭「……すみませぬ」

剣士「やっぱ無事だったか!凄えな盗賊よ!傷ひとつねえし!」

盗賊「……剣士これ」カチャ

剣士「この剣……どうしたんだ?」

盗賊「買った……」

剣士「買ったってお前……」

ネメア「剣士よ、本当だ。買ったかと言われると微妙だがパイアの持っていた金と交換したからな」

剣士「なんだその微妙って……まぁいいや。ありがとな盗賊!」

盗賊「………」バッ!

剣士「どれどれ……中々いい重さだなおいッ!へぇ……」シャァ……

盗賊「……気に入った?」

剣士「………」

盗賊「………」?

剣士「………」

蒼頭「剣士、どうなされた?」

剣士「お前これ……ナイトメアだぜ……」

蒼頭「………」

剣士「ここ見ろよ、ほら柄の所に刻印打ってあるだろ?」

蒼頭「なるほど。御仁……やはりナイトメアの製作者であったか……」

剣士「凄えなぁ……この剣の名前ってなんだ?」

盗賊、蒼頭「………」

剣士「無いのか?」

蒼頭「恐らく無銘かと……あの御仁だから名など付けんだろうし……」

剣士「そっか……でもナイトメアなんて初めて持ったぜッ!」

蒼頭「お子よ、喜んでいるようで良かったな」

盗賊「………」コクッ

剣士「……お前も買ったのか?」

蒼頭「某のは……まぁ……交換だ」

剣士「………」

蒼頭「………」

剣士「やっとくか?」ジャァッ!

蒼頭「……あの木が良さそうだな」スゥ……

剣士「じゃあ……行くぜぇぇッ!」



ジノ (クッソォ……羽むしって!もう絶対パイア背中に乗せない!)

喚起士「無事で何よりです……」

ネメア「心配をかけたな。蒼頭もパイアもあの通り無事だ」

喚起士「それにしても……あの武器は何でしょうか?この穴で何かあったんですか?」

ネメア「少しな……もう辺りは暗くなり初めているのか……」

喚起士「はい。結構な時間、あの穴にいましたからね」

ネメア「ならば野宿か?」

喚起士「いえ、もう少しで村に着きますのでこのまま進もうと思います」

ネメア「そうか。……あの馬鹿の姿が見えんが」

喚起士「彼方に……」

ズズゥゥゥゥゥゥン……

「あやつ下敷きになったぞ!」

「召喚士なら大丈夫だって!」

喚起士、ネメア「………」



剣士「悪りぃ悪りぃ!」

召喚士「こ、殺す気かッ!」

剣士「いやぁ予想以上にこの剣の切れ味が良くてよ!」

召喚士「ちゃんと周りを見てやれ!」

剣士「いいじゃねえか……下敷きになったの召喚士だけだったんだから……」

召喚士「いい訳無いだろッ!」

剣士「いざとなったらこんな木の一本や二本吹っ飛ばすなんざ訳無いだろ?」

召喚士「………」

剣士「……出来ないのか?」

召喚士「……………出来るよ」

剣士「だよなぁ!」

喚起士「召喚士さん大丈夫ですか!」

召喚士「ええ!大丈夫ですよ!」

喚起士「良かった……」

ネメア「………」

剣士「大丈夫に決まってるだろ。召喚士たぜ?」

喚起士「貴方って人は……でも、一子相伝の秘技を使える召喚士さんですから杞憂でしたね」

召喚士「まぁ……はは……」

剣士「召喚士ぃぃ!一子相伝の秘技って何だよぉぉ!」

召喚士 (なんだっけ……そんな事喚起士さんに言ったか……?)

剣士「俺にも教えてくれよッ!」

召喚士「教えんッ!」

喚起士「ごめんない……私余計な事を……」

召喚士「良いですよ……それ程凄い技じゃありませんから……?」

喚起士「あれが凄い技では無いとッ!召喚士さん……なんて人……」

召喚士「………」

剣士「どんな技なんだよッ!教えてくれよぉぉなあッ!」

召喚士「………」

喚起士「駄目です!あのような技……無闇矢鱈に!」

召喚士「か、喚起士さん……説明しても良いですよ?」

喚起士「……しかし」

召喚士「真似出来ませんから?大丈夫ですよ?」

喚起士「召喚士さんがそう言うなら……」

召喚士 (よし!これでどんな事言ったかわかるぞ!)

喚起士「なら……この技は召喚士さんの一族のみ伝わる一子相伝の秘技で……」



喚起士「……だそうです」

剣士「マジかよ……」

召喚士 (マジかよ……)

喚起士「………」

剣士「俺……一発喰らっちまったよ……」

蒼頭「なんと……」

剣士「お前聞いてたの?」

蒼頭「聴こえてしまったのでな。しかし……あのッ!秘技を使える者がいたとは……」

喚起士「知っているのですか?」

蒼頭「勿論……秘技中の秘技、もう使える者はいないと聞いたが……」

召喚士「………」

蒼頭「凄絶なる故……途絶えたらしい……」

喚起士「そんな技が使えるなんて……召喚士さん何者なんですか……」

召喚士 (こっちが聞きたいです……)

剣士「流石にこんな技……教えて貰う訳にはいかねえな……」

ジノ「ねえ!行かないと村に着かなくなっちゃうよ」

召喚士「い、行きましょう!ほら!この話は終わりにして!」

喚起士、剣士、蒼頭「………」

召喚士 (思い出した……喚起士さんと初めて会った時そんな事言ったっけ……マジで有ったなんて……)

喚起士 (召喚士さん……貴方は何を企んでいるのですか……)

剣士 (召喚士……お前が本気を出したらどんだけ強えんだよ……)

蒼頭 (本物か……恐ろしきものだな……)

ネメア (嘘が真になるとはな……)

ーー

剣士「着いたぜッ!盗賊!飯だッ!」

盗賊「剣士……」

剣士「何だ?」

盗賊「……こっち」

剣士「ああ?何にかあるのか?」

盗賊「………」

たたたっ……

剣士「おいって……あいつらまだ来てねえけどいいか。待ってくれ!」

ダダダッ……

蒼頭「姫様着きましたぞ!」

姫宮「うん、この村って有名だから来てみたかったんだよね」

召喚士「何が有名なんだ?」

姫宮「温泉!」

召喚士、喚起士「ッ!!!」

ジノ「……?」

召喚士「混浴か!お姫様!」コソコソ

姫宮「……初めて来るからわからないけど違うと思うよ」

召喚士「なんだよぉ……大事な事だろ!知っとけよ!」

姫宮「………」

喚起士「………」ジィ……

蒼頭「……何で御座ろうか?」

喚起士「いえ……」

姫宮 (そうかッ!)

喚起士 (来ましたね……遂に!)

姫宮「さあ!蒼頭、早く行こ!」

喚起士「そうです蒼頭さん!早く行きましょう!」

蒼頭「はあ?わかり申した」

ネメア「………」



剣士「どうしたんだ?こんな人が来なそうな所に来て」

盗賊「………」

剣士「おい?」

盗賊「剣士……」パサッ……

剣士「………」

盗賊「頂戴……」グゥ……

剣士「……飯か?」

盗賊「違う……それ」

剣士「何だぁ?お前溜まってんのか?」

盗賊「………」

剣士「まぁ溜まるよな!何だかんだで邪魔されてたもんな!」

盗賊「………」ジィ……

剣士「仕方ねえなッ!……俺も溜まってるから覚悟しろよ!」



召喚士「剣士とパイアいないんだけど……お前どこ行ったか知ってる?」

姫宮「さあ……知らない」

召喚士「二人揃ってどこ行き……」

ネメア「………」

姫宮「どうしたの?」

召喚士「……何でも無いで御座る」

蒼頭「何故、某の真似をするか……」

喚起士「……宿取れましたよ」

召喚士「良かった……?喚起士さん何かあったんですか?」

喚起士「はい……何か最近、ここら辺りに訪ねて来る人達が減っていると」

召喚士「それが?」

喚起士「……谷の国の影響みたいなんですよ」

姫宮、蒼頭「………」

喚起士「噂だと……他の国へ進軍しようとしていると聞きました……」

蒼頭「なんと……」

姫宮「そんな事したら戦争になっちゃうよ……」

喚起士「………」

召喚士「噂なんですよね?なら……本当かどうかは……」

喚起士「そうですね……」

姫宮「………」

蒼頭「姫様……」

ジノ「ほら!こんな所で固まってないで宿行こうよ!」

喚起士「はい……」

召喚士「………」



剣士「悪りぃな召喚士!」ツヤツヤ

召喚士「………」

剣士「いやぁ外だと開放的でいいなッ!」

召喚士「あっそ……」

剣士「あいつ軽いからさ!」

召喚士「もう言わなくていいから……」チラッ

ネメア「………」

剣士「ええ!聞けよ!」

ネメア「剣士よ……」

剣士「なんだ?」

ネメア「……程々にしておけよ」

剣士「あ、ああ……?」

召喚士 (えええ!ネメア……何だよその反応……)

ネメア「………」



喚起士「……蒼頭さん!お風呂行きましょうッ!」

姫宮「そうだね!それがいいよ!」

蒼頭「某……後程一人で……」

喚起士「駄目ですッ!温泉と言うものは多人数で入ってこそ意義があるんですから!」

蒼頭「………」

姫宮「そうだよ!意義があるの!」

蒼頭「そう言われましてもな……」

喚起士「それに!お互いに親睦を深めあうと言う意味もあるんです!今後、戦闘になった時に背中を預けられないような事になったらどうするんです!」

蒼頭「………」

姫宮「喚起士?そこまでは……」

喚起士「姫宮さんは口を挟まないでください!」

蒼頭「………」

ジノ (喚起士……ノリノリだね。そんなに蒼頭の顔見たかったんだ……)

蒼頭「困り申した……」

姫宮「蒼頭……そんなに私達とお風呂入るの嫌?」

蒼頭「姫様……」

姫宮「うぅ……ただお風呂に入るだけなのに……」

喚起士「姫宮さん……泣かないでください……」

蒼頭「………」

姫宮「ふぇぇん……グスッ……」

蒼頭「わ、わかり申した……然らば御一緒させていただきます……」

姫宮「……良かった……蒼頭ならそう言うと思ったよ」ニヤ……

蒼頭「なッ!」

喚起士「では行きましょう……フフフ……」

蒼頭「あああ……」

ジノ (悪どい……)



チャポーン……

喚起士「遂に!蒼頭さんの真の姿を見られる時が来ましたね!」たゆん

姫宮 (くっ!化け物め……)

喚起士「それにしても……蒼頭さん遅いですね」

姫宮「……そうだね」

ジノ「ふっ……ふふ……」

姫宮「………」

ジノ「お姫様悔しいの?ププッ」

喚起士「ジノ?何の事ですか?」

ジノ「何でも無いよ。ねぇお姫様ぁ!」

姫宮「ぐぎぎ……」

……「ほほう……中々に広く良い浴場ですな」

喚起士、姫宮「ッ!!!」

蒼頭「御待たせ致しました」

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「………」

喚起士「あの……そ、それは……?」

蒼頭「やはり気になりますか……」

喚起士「………」

蒼頭「某の……この脚……」

喚起士「いえ……そうで

蒼頭「人間の脚では無く……獣のようなこの脚が……」

喚起士「………」

蒼頭「某の種族は皆このような脚なのですよ……ふふふ、これを見たら化け物と言われてしまいますかな?」

姫宮「そんな事は無いけど……」

蒼頭「………」

喚起士 (その顔に巻いている布はなんですかッ!)

姫宮「………」

蒼頭「失礼をば……」ちゃぷ……

喚起士「………」

蒼頭「はぁぁ……いい湯加減ですな……」

姫宮「蒼頭……顔いや……凄い肌が白いね……」

蒼頭「……あまり見ないでくだされ。恥ずかしいで御座る……」

姫宮「あ!ピンクになってきた!」

蒼頭「ほ、本当止めてくだされ……」

喚起士 (残念……完膚無き迄に残念ッ!……しかし顔の輪郭は人間ですね)

蒼頭「………」チラッチラッ

姫宮「なに?」

蒼頭「姫様……完敗で御座いますな!」

姫宮「蒼頭には勝ってるからいいのッ!」



剣士「おお!凄えなッ!」ぶらん

召喚士 (くっ!化け物め……)

剣士「行くぜぇッ!」

バチャーンッ!

召喚士「静かに入れッ!」

剣士「あああ……」

召喚士「……ったく」

ネメア「何故……私までここに連れて来るのだ……」

召喚士「……ネメアも入りたいかと思って」

ネメア「………」

召喚士「本当だよ……僕ウソ付かない……」

剣士「かぁー!召喚士は優しいな!」

ネメア (何がウソ付かないだ!嘘しかないではないか!)

剣士「そう言えば、蒼頭の奴あいつらに両脇抱えられて風呂場行ったぜ」

召喚士「へぇ……」

剣士「風呂入る時もあんなん付けてんのかな?」

召喚士「……どうだろね?」

剣士「今頃、女どもは蒼頭の顔見てたりしてな!」

召喚士「………」

ネメア「………」

キャーッ!アオトウピンクダヨッ!

召喚士「ッ!!」

剣士「どうしたんだ?」

召喚士 (な、何がピンクなんだッ!俺もそのピンクな部分を激しく見たいよぉぉッ!)

剣士「……?」

召喚士「……ネメア」

ネメア「断る!」

召喚士「察するなよ!……ちょっとだけでいいから!」

ネメア「ふざけるな!そんなくだらぬ事に己の存在を捧げられるかッ!」

召喚士「大丈夫だから!召喚術やろうよ!」

ネメア「絶対にやらんッ!」

ヒメサマカンパイデゴザイマスナッ!

召喚士「………」

ネメア「そこまでして何が見たいのだ貴様は……」

召喚士「色々あるだろッ!ピンクの所とか!お姫様が完敗してる所とか!喚起士さんの美曲線とか!蒼頭の顔とか!」

ネメア「………」

召喚士「頼むよネメアぁぁ!」

ネメア「その熱情をもっと他の方に活かせぬのか……」

剣士 (何か必死だな……)



喚起士「………」

蒼頭「姫様、しっかりと肩まで浸かりませんと湯冷めしますぞ」

姫宮「……しないよ」

喚起士 (何故なんでしょうか……人間のような顔の輪郭なら隠す必要は無いと思うんですが……)

姫宮「蒼頭って目が真っ赤なんだねぇ!」

蒼頭「……怖いでしょうか?」

姫宮「ううん、ちょっと格好いいよ!」

蒼頭「格好いいと……何か照れますな……」

姫宮「あ、またピンクになった!」

喚起士 (あの赤い目……それに白過ぎる肌……もしかして吸血鬼!?それならば口元を晒せないからと隠す理由にもなりますね……)

蒼頭「喚起士殿?」

喚起士「………」

蒼頭「……それにしても随分と自己主張の激しい胸で御座るな」

喚起士 (しかしそれでは……私達といる意味がわかりません……)

蒼頭「戦う時に邪魔になりませぬか?」

喚起士 (それに将軍と言う方に命されたと言ってましたが……何か従う理由なんてあったんでしょうか……)

蒼頭「………」す……

喚起士「………」

蒼頭「おおお……」モミモミ……

喚起士「キャァッ!……な、何をするんですかッ!」

蒼頭「いや……自分には無き物故どのようなものかと……」モミモミ……

喚起士「やめ……やめてくだ……ぁ……」

蒼頭「なるほど……」モミモミ……

姫宮「………」



召喚士「くそぉ……」

ネメア「………」

チャプ……

剣士「お?」

召喚士「ん?……他のお客……ぶはあ!」

盗賊「………」

召喚士「おおおおお前何入ってきてんだよ!向こうだろッ!」ジー

盗賊「剣士と一緒……」

召喚士「それでもだな……ん……」

剣士「………」

ネメア「パイアよ……向こうに入りなさい……」

盗賊「……嫌」

召喚士「やっぱり無いとつまらないな……」

盗賊「………」ジー

召喚士「な、なんだよ?」

盗賊「……負け」

召喚士「うるさいわッ!」

剣士「ぶっ……」

召喚士「笑うなッ!」

ネメア「気にする事は無い。それの大きさで器が決まるのでは無いからな」

召喚士「余計なお世話だッ!」

剣士「そうだぜ!本当!」

召喚士「……と言うか剣士さ」

剣士「おう!なんだ?」

召喚士「いや……やっぱいいや……」

剣士「なんだよぉ!ちゃんと聞くぜ?」

召喚士 (そんな物入れようしたのかって聞いても答えは決まってるからな……)



ウルサイワッ!

蒼頭「何やら向こうは騒がしいですな」

喚起士「はぁ……んぅ……はぁぁ」

ジノ「喚起士……大丈夫?」

喚起士「え、ええ……」

姫宮「蒼頭……謝ろうよ……」

蒼頭「何を謝る事が御座ろうか?」

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「先程も申しましたが……喚起士殿はそのような物が付いてて戦えるのですか?」

喚起士「勿論……戦えます」

蒼頭「失礼ですが得物は?」

喚起士「弓です」

蒼頭「……射る時、邪魔になりませぬか?」

喚起士「別にそんな事はありませんよ……」

蒼頭「そうですか。……得物が弓となると手合わせ願えないですな」

喚起士「………」

蒼頭「あのような物では……」

喚起士「………」ムッ……

蒼頭「何か期待外れと言いましょうかな……」

喚起士「……何が期待外れなんでしょうか?」

蒼頭「いや、気にせんでくだされ。某が勝手に思ってた事故」

喚起士「弓では大した事が無いと言いたいのですか?」

蒼頭「まぁ……そうで御座ろうか。それにプルンプルンと振るえる物が付いていては動きも鈍重かと」

喚起士「そんな事はありません!」

蒼頭「……どうでしょうな」

喚起士「……グッ!」

蒼頭「ささっ!姫様、もう上がりませんと逆上せてしまいますぞ」

姫宮「うん……」

ジノ「………」

喚起士「……待ってください。蒼頭さん、手合わせお受け致します」

蒼頭「無理をなさらなくても結構。某より下の輩と手合わせしても無意味ですからな」

喚起士「下……ですか……」

蒼頭「………」

ジノ「………」カタカタ……

姫宮「……ジノ?」

ジノ「な、なんでも無いよ……ふ」

喚起士「私の戦い方を見てもいないのによくそんな事が言えますね……」

蒼頭「見なくともわかりまする。某と戦っても手も脚も出ず……少女のように泣き喚く姿が浮かびます故」

喚起士「言わせておけば……」

蒼頭「ほう……来ますか?」

喚起士「表へ出なさい!その私に対して嘲弄とした態度許せません!」

蒼頭「ふふ……別に許して貰わなくても構いませんが」



ジノ「ああぁ……行っちゃった……」

姫宮「ジノ!何で止めてくれなかったの!」

ジノ「お姫様だって止めなかったじゃん」

姫宮「それは……」

ジノ「ふふっ……でも大丈夫だって」

姫宮「……なんで?」

ジノ「二人供お芝居してたから」

姫宮「お芝居?」

ジノ「笑っちゃうよね。二人供、挑発するのはいいんだけど……お芝居下手過ぎププッ!」

姫宮「………」

ジノ「まぁ……あれでお互いの実力がわかるからいいのかな」

姫宮「……そう」

ーー

召喚士「おい、なんか喚起士さん怖い顔して蒼頭と出てったけど何かあったのか?」

姫宮「ちょっと……」

召喚士「ちょっと?……まぁそれはいいとして」

姫宮「良くないよ!」

召喚士「蒼頭の顔……見れたのか?」

姫宮「見れなかった……布巻いて顔隠してたから……」

召喚士「なんだよそれ……」

姫宮「そう言われても……」

召喚士「後な……喚起士さんのオッパイはどんなんだったッ!?」

姫宮「………」

召喚士「ち、違うぞ?ほら!当り判定とか気になるじゃん!」

姫宮「……意味がわからない」

召喚士「いいから言えって!」

姫宮「……化け物だった」

召喚士「やっぱり……」

姫宮「………」

召喚士「蒼頭のは?」

姫宮「あのさ……女の子にそう言う事聞くの最低だよ!」

召喚士「最低か……ふふ」

姫宮「………」

召喚士「男って言うのはな……女性の体の神秘を探求し、最低と罵られようがその求道を突き進むものなんだよッ!」

姫宮「うわ……」

召喚士「……ふっ」キリッ

姫宮「………」

召喚士「で、蒼頭のは?」

姫宮「……無かったよ」

召喚士「お姫様と同じか」

姫宮「同じじゃ無いしッ!……見たの?」

召喚士「見てないよ」

姫宮「……じゃあ何でわかるの」

召喚士「パイアの見たから」

姫宮「は?」

召喚士「お姫様とパイアって同じだろ?だから」

姫宮「………」

召喚士「………」

姫宮「このロリコンがぁぁッ!盗賊を男湯に連れ込んでなにやってるかぁぁッ!!」

召喚士「お、お姫様口調が……」

姫宮「黙れ!このゲス野郎がッ!」

召喚士「ゲス野郎って……」

姫宮「恥を知れッ!……そして私の盗賊に手を出した事あの世で侘び続けろぉッ!」バババッ!

召喚士「ななななにするんだ!」

姫宮「ヘレ・アインエッシェルングッ! 」

グボボグアァァッ!



蒼頭「………」スゥ……

喚起士「その腰の物を使わなくてもいいんですか?」

蒼頭「構いませぬ。怪我をさせてはつまらないですからな」

喚起士「そうですか……私は自分の武器を使わせて貰いますよ」

蒼頭「どうぞどうぞ」

喚起士「……闇夜に架かる初月の如く眠れる射の牙よ……いざ我の元にッ!」

バシュゥン……

蒼頭 (なんと……背が光り、そこから武器を……)

喚起士「………」

蒼頭「随分と変わった武器をお持ちですな」

喚起士「……貴女の顔程ではありませんよ」

蒼頭「……ぬ」

喚起士「では……」

蒼頭「参ろうか……」

喚起士「………」ザッ……

蒼頭「………」

喚起士「………」

蒼頭 (弓ならば……射った後そこに隙がある筈。初撃をかわせば!)

喚起士「………」ググッ!シュバッ!

蒼頭「……これならッ!」ザッ!

喚起士「………」

蒼頭「貰いましたッ!」ヒュッ!

シュバンッ!……バキッ!

喚起士「………」

蒼頭「なんと……」

喚起士「私の矢がただの矢だとは……思わない方がいいですよ」

蒼頭 (一度放った矢が戻って来たのか?……某の使っていた枝が射抜かれるとは……)

喚起士「……まだやりますか?」

蒼頭「まだ始まったばかりで御座ろう。……それにこれを使っていませんからな」

喚起士「そうですか……」

蒼頭「然らば……」スゥ……

喚起士 (あれを使われて……どこまで耐えられるか……)

蒼頭「チェェリャァアッ!」ザッ!

喚起士「はッ!」

ヒュッ!……

蒼頭「……やはりこの刀は凄いな。某の思いどうりに動く」

喚起士「……あぅ」

蒼頭「そう……ぼんやりしていますと首が飛びますな」

喚起士 (剣先が見えなかった……)

シュヒィンッ!……

蒼頭「ぐぬッ!背後から……」ズサ……

喚起士「蒼頭さんもぼんやりしていますと……心臓を撃ち抜かれますよ」

蒼頭 (あの矢……勝手に動くのか……)



蒼頭「………」ザッ……

喚起士 (やはり近付かれるのは危険ですね……)

蒼頭「……?」

喚起士「不変の軌道を沿いし上弦の沈塊よ……いざ我の元にッ!」

シュバッバババッ!……ゥゥゥゥ

蒼頭「こ、これは……」

喚起士「私の周りを飛び交う四つの盾……これを抜けなければ私に傷を付ける事は出来ません!」

蒼頭 (なんと言う事か……喚起士殿の言う通りこれでは近寄れん……)

喚起士「……後ろッ!」

シュバッ!

蒼頭「くッ!」ヒョイ

喚起士「前ッ!」

シュバッガギンッ!

蒼頭「ぐぬぬ……何とかせねば疲弊するだけだな……」



召喚士「あがががが……か、壁が……」

プスプス……

姫宮「チッ……地獄の火葬……次は外さんぞぉぉッ!」バババッ!

召喚士「まままま待てッ!話を聞け!」

姫宮「なんだ……」

召喚士「剣士と一緒……って言ってあいつが勝手に入って来たんだ!」

姫宮「………」

召喚士「それで見えちゃったんだよ……不可抗力だったんだ!」

姫宮「………」

召喚士「………」

姫宮「……本当?」

召喚士「本当本当!俺は指一本触れてないし!」

姫宮「そっか……」

剣士「何か凄え音したけど?……なんだこりゃ!」

召喚士「………」

剣士「何かあったのか?……敵か!」

召喚士「嫌……違うよ……」

剣士「ッ!」

召喚士「お姫様がちょっと勘違いしてね……」

剣士「し、召喚士……かみかみかみ髪の毛が……」

召喚士「あ?」サワサワ

剣士、姫宮「………」

召喚士「………ん……俺の後頭部に髪の毛ある?」

剣士「無いな……」

召喚士「………」

姫宮「あ、あの……ごめ

召喚士「なんじゃこりゃぁぁぁあッ!!!」



蒼頭「とりゃうぁぁッ!」ダッ!ガガガッ!

ガッガギンッ!

喚起士「そんな物では!……横ッ!」

蒼頭「チイッ!」ガスッ!

喚起士「………」ゥゥゥ……

蒼頭「戦闘中ただ見ているだけとは……大層な身分ですな!」

喚起士「なら……その見ているだけの私の身分を打ち崩してみては?」

蒼頭「……仰る通りですな。これは一本取られました」

喚起士「………」……ゥゥゥ

蒼頭「では……行きまする。グゥゥアッ!」グググッ!

喚起士 (あんなに前屈みになって何を……)

蒼頭「ハァァァァアッ!」シュ……

喚起士「消え……ッ!どこに!」

蒼頭「上ぇぇぇえッ!」

喚起士「はッ!」

蒼頭「………」ピタッ

喚起士「くっ……」

蒼頭「これで詰み……某の勝ちですな」

喚起士「それはどうでしょう……」

蒼頭「このまま斬って矢を一本かわす事など……」

喚起士「……なら後ろをご覧ください」

蒼頭「……ぬあッ!」

喚起士「この数の矢なら……蒼頭さんがいくら早く動けようとも当たらない事は無いと思いません?」

蒼頭 (一体何百の矢があるのだ……それにいつの間に……)

喚起士「………」

喋る槍とかの人なのか?

蒼頭「……では引き分けですかな?」

喚起士「そうですね……」

蒼頭「………」

喚起士「………」

蒼頭「くくく……」

喚起士「ふふふ……」

蒼頭「いやぁ!喚起士殿お見事で御座った!」

喚起士「いえ、蒼頭さんの方こそ凄かったですよ」

蒼頭「このような試す事をして申し訳なかった……」

喚起士「構いません。私も同じでしたから……」

蒼頭「しかし……召喚と言うのは便利な物ですな。あのような事が出来るとは……」

喚起士「……それなりに代償は必要になりますけどね」

>>569
そうです。
これはあれの番外編になります。
剣編の最後に、ここのurlが貼ってありますよ。
もう落ちてしまっていますけど。

蒼頭「代償ですか……」

喚起士「この背中に彫られている法陣……これが代償になってるんです」

蒼頭「………」

喚起士「召喚には魔力を消費する事はわかりますか?」

蒼頭「それくらいなら……」

喚起士「では、魔力には人それぞれに持てる量が決まっているのは?」

蒼頭「それも何となくは……」

喚起士「私は……その持てる魔力の量が少ないんです……」

蒼頭「………」

喚起士「それを補っているのが背中にある転遷魔法陣と言う物で……」

蒼頭「転遷……魔法陣?」

喚起士「………」

蒼頭「す、すいませぬ……某はそっちの方の知識は疎い故……」

喚起士「……いえ、そうでは無いんです。少し思い出してしまって……」

蒼頭「………」

喚起士「続けますね。この魔法陣は……色々な法陣に変化するんです。召喚を行う召喚陣……」

蒼頭「………」

喚起士「魔力を自然回復してくれる魔法陣……」

蒼頭「凄いですな。いつでも万全な状態で……ん……」

喚起士「………」

蒼頭「魔力の量が少ないと言っていましたが、いくら回復出来たとしても足りなくなるのでは御座ろうか?」

喚起士「そうですね……そこは無理矢理増やしているので……」

蒼頭「なら代償と言うのは……」

喚起士「私の魂です」

蒼頭「なんと……」

喚起士「この力を得る為には仕方無かったんです……」

蒼頭「………」

喚起士「この法陣に込められたジノとの約束事なんです……」

蒼頭「それは全て仇を討つためで御座ろうか?」

喚起士「召喚士さん達に会うまでは……ですね……」

蒼頭「………」

喚起士「………」

蒼頭「なるほど。……ああ、月があのような位置に、そろそろ戻らねば心配させてしまいますな」

喚起士「そうですね……あの」

蒼頭「なんで御座ろうか?」

喚起士「最後の攻撃を決めたあの動き……あれは何ですか?早過ぎて消えたように……」

蒼頭「あれはただ脚に力を溜め解き放っただけ。それだけで御座ります」

喚起士「そうなんですか……」



ジノ「何かさ……こう兄妹だけだとあれだよね……」

ネメア「何がだ?」

ジノ「妙に居心地が悪いって言うか……」

ネメア「それはジノに後ろめたい事が有るからではないのか?」

ジノ「そんな事無いって!」

盗賊「………」

ジノ「パイアもそう思わない?」

盗賊「……別に」

ジノ「………」

ネメア「ふふふ……」

ジノ「しっかし蒼頭って上手い事顔隠すよねぇ。あれだとこっちが絶対見てやるって気に

盗賊「見た……」

ジノ「……え?」

盗賊「見た」

ジノ「……蒼頭の顔を?」

盗賊「………」コクッ

ジノ「どこで!?」

盗賊「洞窟」

ネメア「………」

ジノ「パイア!蒼頭どんな顔してた?兄ちゃんみたく怖かった?」

盗賊「普通……」

ジノ「普通じゃわからないよ!もっとこうさ特徴的な何かあったでしょ!」

盗賊「………」?

ネメア「やめないかジノ」

ジノ「兄ちゃんも見たんだよね?教えてよ!」

ネメア「普通だったな……な、パイアよ」

盗賊「………」コクッ

ジノ「………」



蒼頭召喚士「………」

蒼頭「………」

剣士、姫宮「………」プルプル

蒼頭「何故……某の真似をするのか……」

蒼頭召喚士「……別に真似してるんじゃないよ」

剣士「そ、そうだぜ……ぐふ……別になぁグググッ……」

姫宮「本当だよ……蒼頭ぅププッ」

蒼頭召喚士「お前ら……」

蒼頭「ならば理由は?」

蒼頭召喚士「………」

剣士「……もももう駄目だぁぁ耐えらんねえギャハハハハひぃ」

姫宮「アハハハハッはぁっフフフッ笑っちゃヒッ駄目だよ!」

蒼頭召喚士「………」

蒼頭「クフフフフッ……」

蒼頭召喚士「お前わかってないのに笑うなよ!」

蒼頭「つい……釣られ……」

蒼頭召喚士「それと!お姫様は笑う権利なんて無いだろ!」

姫宮「……だから謝ったよ?」

蒼頭召喚士「謝って済むか!」

剣士「まぁまぁ。ぶはっ……腹痛え……」

蒼頭召喚士「いい加減にしろよ……怒るぞ」

剣士「悪かったよ……ぐふっ」

蒼頭召喚士「……。お姫様さ、攻撃魔術?っての使え無かったんじゃないのか?」

姫宮「それなんだけど……怒った時に頭の中に言葉が浮かんできて……」

蒼頭召喚士「魔術ってそんな事あるの?」

姫宮「さあ……」

蒼頭召喚士「自分の事なのにわからないの?」

姫宮「うん……」

蒼頭召喚士 (まぁ俺も魔力うんぬんわからないしな……)

蒼頭「………」スゥ……

パサッ

召喚士「うわッ!取るなよ!」

蒼頭「なッ……そ、それは……」

召喚士「………」

蒼頭「逆月代で御座ろうか……」

召喚士「……なにそれ?」

蒼頭「某の国では兜を被る時、そのように髪を剃るのだが……それの逆である故……」

召喚士「別に兜はかぶらないよ……お前んとこのお姫様にやられたの!」

蒼頭「………」

召喚士「………?」

蒼頭「貴様……姫様に手を出そうとしたのか!」

召喚士「違うわッ!お姫様が勘違いして俺に手を出したの!」

蒼頭「なんと……」

姫宮「謝ってるのに許してくれないの……」

召喚士「だから謝って済む問題かって!」

蒼頭「練達の士なのだからそう心の狭い事を……」

召喚士「………」

蒼頭「な、なんで御座ろうか?」

召喚士「俺の頭巾取ったんだからお前も取れ……」

蒼頭「御断り致す」

召喚士「ズルいで御座る!」

蒼頭「真似するな!」

剣士「まぁまぁ落ち着けで御座るぜ!」

蒼頭「お前もッ!」



喚起士「……zzz」

盗賊「………」プニプニ

ジノ「あらら、ベットに倒れたと思ったらもう寝ちゃったよ」

盗賊「………」

ジノ「あたしが側にいないのに無茶したのかなぁ……」

ネメア「ジノ、それはどう言う事だ?」

ジノ「ん?ん……兄ちゃん怒らないで聞いてくれる?」

ネメア「……それは事と場合によるな」

ジノ「………」

ネメア「………」

ジノ「喚起士ってね、魔力が普通の人と同じかそれより少ない量しか持って無いんだよ……」

ネメア「………」

ジノ「それでね……あたしが力を貸してあげてるんだよ……貸してって言うとおかしいけど……」

ネメア「……呪縛か」

ジノ「うん……」

ネメア「………」

ジノ「喚起士の魂と引き換えに……」

ネメア「それ以上はいい。恐らく喚起士の方から頼んだのだろ?」

ジノ「………」

ネメア「ならばそれは喚起士の覚悟なのだろう。何者にも止められぬな」

ジノ「………」

ネメア「………」

盗賊「………」プニプニ

ジノ「……パイアやめてあげて」

盗賊「………」コクッ

ネメア「こう言うのもあれだが……喚起士はカンヘルを操る者に対してどのような対策をしているのか……」

ジノ「喚起士……カンヘル自体を討つつもりみたいよ……」

ネメア「何ッ!?」

ジノ「その時はあたしも手伝ってあげるんだけどね」

ネメア「ジノよ……カンヘルを討つすべなど存在するのか?」

ジノ「レラジェの魔矢……」

ネメア「そうか!その手が……なるほど……。その為のジノ……か」

ジノ「………」

ネメア「確かにそれならば可能性もあるが……」

ジノ「………」

ネメア「………」

ジノ「ごめんね兄ちゃん……」

ネメア「それはジノが自身で決めた事なのだろ……ならば私からは何も言うまい……」

ジノ「………」

ネメア (代われるものなら代わってやりたいが……私では無理だな……)



剣士「………」

蒼頭「どうした?先程から剣を見つめいるが」

剣士「んあ?ん……これよ、人間嫌いの魔物のじいさんが作ってたんだよな?」

蒼頭「そうだが……それが?」

剣士「なんで嫌いな人間の間にいくつも剣が流れてるのかなってな」

蒼頭「それは……御仁の話からしたら人間が盗みに入ったみたいだったが」

剣士「なるほど……なら今人間が持ってるナイトメアは盗まれた物って訳か……」

蒼頭「………」

剣士「それで剣と名前が合って無い物が有ったり、作った奴の名前が明かされなかったのか……」

蒼頭「……剣士、詳しいな」

剣士「ちょっとな。あれだマニアってやつだよ」

蒼頭「………」

剣士「しっかしなぁ……まさか魔物が作ってたなんてな」

蒼頭「魔物が作った物は使えぬか?」

剣士「そうじゃねえよ。なんて言うかな……強えだけじゃ無い魔物もいるのかって」

蒼頭「………」

剣士「なんか人間でも魔物でもやってる事は変わんねえなって思っただけだよ」

蒼頭「………」

剣士「……ああ!お前魔物だったっけ。すっかり忘れてたぜ」

蒼頭「忘れるな……」

剣士「そうだ、お前の刀見せてくれよ」

蒼頭「……ん」カチャ

剣士「うを!なんだこれ軽ぅ!」

蒼頭「………」

剣士「これだと俺にゃあ使えねえな。軽過ぎだわ」カチャ

蒼頭「そう言うものか?軽ければ軽いだけ使いやすいと思っていたが」

剣士「そりゃ人によるだろうけどよ……」

蒼頭「ふむ……どれ、剣士の剣も持たせてくれ」

剣士「ほれ。落とすなよ」カチャ

蒼頭「この程度の物落と……ぬあ!」ズシッ

剣士「………」

蒼頭「お前これ……重過ぎでは……」ググッ

剣士「そっか?俺には丁度いいぞ?」

蒼頭「ほら……早く受け取れ……グッ」

剣士「なんだよだらしねえな。これぐらい片手で振れよ」カチャ

蒼頭「貴様化け物か……」

剣士「普通だって」

蒼頭 (そう言えばこやつ……丸太も軽々振り回していたな……)

ーー

喚起士「おはようご……召喚士さんそれは……」

召喚士「これですか!ちょっとイメージチェンジをと思いましてね!」

喚起士「……その帽子でですか」

召喚士「ええ!どうです?」

喚起士「い、いいと思いますよ……」

ネメア「……はっきり言ってやればいい」

喚起士「私には出来ません……」

姫宮 (妖精さんの帽子だよね……)

剣士「ああ……今日も脇腹痛えな……」

盗賊「………」

蒼頭「なんとも……変わらずいつもの朝で御座いますな」

ジノ「ウウウ……ウウ……」

蒼頭「ジノ様……如何なされた……」

ジノ「あの召喚兄さんの頭に付いてるポンポン見ると……パンチしたくなるんだよね……」

蒼頭「何故で御座ろう……」

ジノ「わかんないけど……ウウウ!」

姫宮「猫さん?」

ジノ「………」

蒼頭「なるほど。ならばネメア殿も……」

ネメア「なんだ?」

ジノ「兄ちゃんアレ見て平気なの?」

ネメア「別になんとも無いが」

ジノ「なんでぇ!こうパシパシしたくならないの!?」

ネメア「ならん」

ジノ「兄ちゃんの方が猫の割合多いのに!」

ネメア「猫と言うな!」



召喚士「後は村ひとつ過ぎたら谷の国ですねぇいッ!」ルン!

喚起士「そうですね……」

剣士「なんで召喚士あんなに御機嫌なんだ……」

姫宮「……あの帽子相当気に入ったみたいだよ」

剣士「あんなのをか……ダセェだろ……」

姫宮「あれで笛持ったらお伽噺に出てくる笛吹きだよ……」

剣士「ネズミ連れてくやつか。ところでよ、あんな帽子どっから持ってきたんだ?」

姫宮「さっきの村の宿屋のお姉さんに貰ったの。なんか優しくされてたけど……」

剣士「あの御機嫌の正体はそれだな。召喚士……お前の弱点女かよ……。俺は情けないぜぇ……」

姫宮「しかも胸が大きいのがいいみたいよ……」

剣士「………」

ジノ「あああ……ああ……あああ!」

喚起士「……ジノ?」

ジノ「あああ!あのポンポンパシパシしたい!」

喚起士「駄目ですよ……召喚士さんに怒られますよ」

ジノ「あれどうにかしてよ!気が散るの!」

喚起士「そう言われても……」

召喚士「ふふん♪ ふふんん♪」

喚起士「召喚士さん……気に入っているみたいですし……」

ジノ「ウウウ……」

喚起士「困りましたね……」

剣士「なぁ……」

喚起士「……何でしょうか?」

剣士「お前……召喚士を何とかしてくれよ」

喚起士「何とかとは?」

剣士「あの帽子だよ。ダセェから取ってもらってくれ」

喚起士「……何故私に言うんですか。ご自分でやったらいかがです?」

剣士「まぁ……そうなんだけどよ……」

喚起士「………」

剣士「召喚士……お前の事が好きみたいでよ」

喚起士「なッ!な、何を言っているんですか!」

剣士「俺らとかにダセェから取れって言われるより好きな奴に言われた方がダメージ少ないと思うんだわ。な?だから頼む」

喚起士「冗談はやめ

剣士「冗談じゃねえよ。本当だぜ?」

喚起士「………」

ジノ「喚起士?」

喚起士「あああ……」



姫宮「………」

剣士「召喚士に言ってくれればいいけどなぁ……」

姫宮「……ねえ」

剣士「あ?」

姫宮「召喚士が喚起士の事好きだなんてよく知ってたね……」

剣士「さっきお前言ったじゃねえか」

姫宮「ええ?言って無いよ!」

剣士「召喚士は胸がデケェ女が好きだって」

姫宮「それは言ったけど……喚起士とは言って無いよ?」

剣士「この中の女でアイツが一番胸がデケェんだから好きなんだろ。多分」

姫宮「……それは肉体的にだよね」

剣士「それ以外で好きなのか?」

姫宮「………」



召喚士 (むふふ、いやぁ困ったなぁ……格好良くて可愛いだなんて!)

召喚士 (あの娘さんは本当良い子だったなぁ……)

召喚士 (可愛くて……喚起士さんには敵わないけどオッパイ大きくて……それにローンちゃんに似てたんだよなぁ……)

召喚士 (声は幼い感じだったけどそれもまた良かった!)

召喚士 (何か変な斧持ってたけど……あれかな美声少女戦士ってやつかな)

召喚士 (お姫様にはこの帽子貰ったって言ったけど……あの子と仲良くなれたんだからヘソクリはたいて買ったかいがあったってもんだよな!)

召喚士 (ああ……斧子さん……)

喚起士「………」

召喚士 (だけど……後から来た夫婦みたいな人達って斧子さんとどう言う関係だろ……)

喚起士「あの……召喚士さん……」

召喚士 (エロい格好したお姉さんと冴えないオヤジ……)

ネメア「おい、呼んでいるぞ」

召喚士 (兄弟にしては似てなかったし……まさか二人の子供?いやいやあり得ない)

喚起士「召喚士さん?」

ネメア「どうせくだらない事を考えているのだ。放っておけ」

喚起士「ですが……ジノとかあの方が召喚士さんのダサ……いえ、変わった帽子が気に入らないみたいで……」

召喚士 (旅にしてはそれらしく無いんだよなぁ……)

ネメア「ならば剣士にやらせればいいだろうに」

喚起士「それが……」

ネメア「……?」

喚起士「………」

ネメア「顔を赤くしてどうしたと言うのだ?」

喚起士「……す、すす」

ネメア「………」

盗賊「………」

召喚士 (まあいいか。また会う約束もしたし!ククク……)

盗賊「………」グワシッ!

召喚士「がっ!なななな何するんだ離せってパイアッ!」バシッ

盗賊「忌むべき物を滅す……御座る」

召喚士「ハァ!?お前ッ!愛しの斧子さんがくれた物が忌むべき物な訳無いだろ!」

喚起士「………」

召喚士「か、喚起士さん助け……」

喚起士「………」ゴゴゴ……

召喚士「ええぇぇ……」

喚起士「パイア……手伝いましょうか?」

盗賊「……いい」

蒼頭 (何故お子まで真似を……)

喚起士「愛しの……斧子さんとはどなたです……?」

召喚士「……村の宿屋で知り合った男の子ですよ?」

喚起士「へぇ……」

召喚士「い、いや……女の子だったかな……はは……」

喚起士「ジノ……パシパシお願いしますッ!」

ジノ「待ってましたぁぁぁッ!」

バシュンッ!

召喚士「………」

ジノ「ウヘヘ……パシパシ……パシパシ……」

召喚士「パシパシって何だよ……」

ジノ「ちょっとその頭に付いてるポンポンをこうパシパシっとね!」シュッシュッ!

召喚士「やめろよ……」

ジノ「パイアどいて……あたしに獲物を譲って……」

盗賊「……わかった」

召喚士「……ネメア」

ネメア「くだらん事に巻き込むな」

召喚士「じゃあ命令だ!ジノからこの帽子守ってくれ!」

ネメア「嫌に決まってるだろ……」

召喚士「なぁ!お前ッ!」

ネメア「何故私がそんなふざけた帽子為にジノを止めねばならんのだ」

召喚士「……お願いしますよ」

ネメア「嫌だ」

ジノ「ウヘヘッ!」ガバッ!

召喚士「しまっ……」

バシーン……

ジノ「はぁぁぁ……幸せ!」パシパシ!

喚起士、ネメア「………」

召喚士「か、返せッ!」

ネメア「……お前……その頭はなんだ?」



ネメア「見事に後頭部だけ……」

召喚士「見るなッ!」

喚起士「こう言う理由もあったんですね……」

ネメア「何かの儀式か?」

召喚士「違う……」ジロ……

姫宮「……私がやったの」

ネメア「何の為に……お前お嬢に手をッ!」

召喚士「それは誰かにも言われたね。はいはい違いますよ」

喚起士「なら何故なんですか?」

姫宮「私が勘違いして……」

喚起士「そうですか……それとどうやってこのように?」

姫宮「魔術で……」

喚起士「攻撃系のものは使えなかったのでは?」



姫宮「………」

ネメア「そんな事が有り得るのか?」

喚起士「わかりません……私もそちらの知識はあまり無いので……」

ネメア「ふむ……」

召喚士「返せぇーッ!」ダダダッ!

ジノ「やだぁーッ!」ダダダッ!

蒼頭「お二方鎮まりなされ!」

剣士「ほっとけよ」

蒼頭「しかしあれでは召喚士殿があまりにも惨め……もとい可哀想ではないか……」

剣士「そっか?帽子被ってた方が惨めだと思うぜ」

蒼頭「………」

……「ムアテェェェ……」

……「こっちまでおいでぇぇ……」

蒼頭「は!お、お二方どこへ!」



召喚士「はぁはぁ……」

ジノ「頑張るねぇ!」

召喚士「返せっつーの!愛しの斧子さんから買っ……貰った大切な帽子なんだぞ!」

ジノ「………」

召喚士「な、なんだよ」

ジノ「何が愛しのだよ……その子の事好きになったの?」

召喚士「まぁ……」

ジノ「へぇ……じゃあ喚起士はどうするの?」

召喚士「……そっちも好きだ」

ジノ「なにそれ……」

召喚士「………」

ジノ「………」パシパシ……

召喚士「パシパシするな……」

ジノ「喚起士はどうするの。喚起士はどうするの。喚起士はどうするの」

召喚士「………」

ジノ「か!ん!き!し!はどうするの!?」

召喚士「だからさ……」

ジノ「ああ!?なに!」

召喚士「……両方」

ジノ「バカッ!」

召喚士「なんだよ……」

ジノ「じゃあ……今から問題出すから……」

召喚士「は?」

ジノ「喚起士とこの帽子くれた子……どっちを取る?」

召喚士「………」

ジノ「間違えたらこの場で食ってやる!」

召喚士「ま、間違えって……」

ジノ「………」

召喚士 (やべぇ……この状況逃れようが無い……)

ジノ「………」

召喚士「お……」

ジノ「………」パシパシ……

召喚士「か……」

ジノ「………」ピクッ

召喚士「……喚起士さんでお願いします」

ジノ「………」

召喚士「………」

ジノ「じゃあコレいらないね?」

召喚士「えあ!おまッ!」

ジノ「……なに?」

召喚士「何でも御座いません……」

ジノ「よし」

召喚士 (おおおおぉぉぁぁ……)

ジノ (ん……中々に良いポンポンだからあたしが貰っておこう!)

召喚士 (くそぉ……高かったんだぞ……)

ジノ「まったく童貞のくせに二股掛けようなんてね……」

召喚士「………」

ジノ「夢見過ぎでしょ。絶対うまくいく訳無いじゃん」

召喚士「いや……」

ジノ「ん?」

召喚士「喚起士さん……意外と抜けてそうだから……」

ジノ (こいつ……ちょっと懲らしめないと同じ事やるな……)

召喚士「………」

ジノ「召喚兄さんさ……」

召喚士「なに?」

ジノ「あたし……今凄く爪磨ぎたいんだよね……」

召喚士「勝手にやればいいだろ……」

ジノ「そう……」

召喚士「……?」

ジノ「じゃあ喚起兄さんの背中貸して」

召喚士「……は?」

ジノ「聞こえなかった?召喚兄さんの背中貸してって言ったの」

召喚士「そこら辺の木でガリガリやれば……」

ジノ「人間の背中が丁度いいんだよね……ふふ」

召喚士「………」

ジノ「こう人間の背中に爪が食い込むとことか結構いい感じなんだよ」

召喚士「……ネメア」

ジノ「………」

召喚士「ネメア?……しまった!お姫様が持ってたんだ……」

ジノ「あらら?じゃあ止められる事も無いね!フフフフ……」

召喚士「……ま、待て!」

ジノ「だぁーめ!」ガバッ!



召喚士「どどどど退いてくれぇえ!」

ジノ「やーだー。さっ!バリバリっといっとこっかッ!」グイッ

召喚士「イタタタッ!な、なんでそんなに喚起士さんとくっ付けたがるんだよ!」

ジノ「理由はこの前言ったじゃん」

召喚士「あのさ……相手にされなかったらどうするんだ?」

ジノ「ん……大丈夫だと思うよ。六割方だけど」

召喚士「残り四割は?」

ジノ「振られる」

召喚士「………」

ジノ「童貞で冴えなくて童貞でバカで童貞で弱っちい童貞召喚兄さんだと勝率六割なんだよ?」

召喚士「………」

ジノ「喚起士みたいな子とキャッキャウフフ出来るかもしれないんだから賭けるべきだと思うね!」

召喚士「……勝率六割か」

ジノ「いい感じだと思うよ!」

召喚士「フフフフ……」

ジノ「……?」

召喚士「六割なら振られたも同然!悲惨な未来が透けて見える!」

ジノ「………」

召喚士「保険も無しに賭けられるか!だから勝率十割の斧子さんとキャッキャウフフした方がいいと思わないかねジノよ!」

ジノ「………」グイッ

召喚士「イダダッ!」

ジノ「そんなにその子が良かったの?」

召喚士「………」

ジノ「聞き終わるまで爪立てないから」

召喚士「良かった……」

ジノ「へぇ……」

召喚士「その子な、俺が喚ぼうとしていた妖精にそっくりだったんだよ……」

ジノ「ローンって奴?」

召喚士「そう……」

ジノ「で、その子に優しくされちゃったんだ?」

召喚士「うん……初恋の相手にそっくりな上に優しく好きですなんて言われたらさ……」

ジノ「……その子と初めて会ったんだよね?」

召喚士「そうだけど?」

ジノ「初対面でいきなり好きですなんて言われたの?召喚兄さんが?」

召喚士「まぁね!いやぁ……俺って意外ともてるんだなって驚いたよ!」

ジノ (絶対騙されてるよ……)

召喚士「ああ……斧子さん……」

ジノ「召喚兄さんさ……何でローンが初恋なの……」

召喚士「それか……」

ジノ (どうせくだらない理由だろうけど……)

召喚士「子供の頃な、お爺ちゃんが召喚したんだよ。何で召喚したかは忘れちゃったけど」

ジノ「………」

召喚士「でさ……俺の方見て優しく笑ってくれたんだ。言葉は何言ってるかわからなかったけどな」

ジノ「………」

召喚士「手を繋いで散歩したり俺と遊んだり色々してな、子供心に好きになっちゃったんだな……」

ジノ「………」

召喚士「それと母親ってのがいたらこう言うものなのかなとも思ったね」

ジノ「………」

召喚士「それからだな……お爺ちゃんが残した文献漁ってもう一回ローンちゃん喚ぼうとして……」

ジノ「………」グイッ

召喚士「イタッ!ななな何するだよッ!」

ジノ「あ……ごめん。意外と真面目な話だったからムカついて……」

召喚士「………」

ジノ「召喚兄さん独りぼっちだったの?」

召喚士「お爺ちゃん死んでからな。両親は俺が生まれる前に死んじゃったんだってさ」

ジノ「へぇ」

召喚士「……それに似た子が俺の事を好きになってくれたんだ。だからそっちに……」

ジノ「へぇッ!」グイグイッ!

召喚士「ギャッ!痛いってッ!」

ジノ「話終わったね?じゃあバリバリいっとこっかッ!」

召喚士「……お前俺の話聞いてた?」

ジノ「聞いてたよ。でもそれはそれこれはこれ」

召喚士「………」

ジノ「大丈夫だって!喚起士以外に手を出そうとしたら……言葉よりも記憶よりもこの傷が覚えてるって程度にするだけだから!」

召喚士「アホかッ!そんな事されたらフラッシュバック祭りだわ!」

ジノ「いっくよーッ!」

召喚士「たたたた助けてーッ!」

シュバンッドカッ!……ズザザ……

召喚士「……??」

ジノ「イツツ……」

……「坊や大丈夫ぅ?」

召喚士「た、助けてください!」

ジノ「……!」

……「へぇ……最近のキマイラって固いのねぇ」

ジノ「キマイラじゃ無いしッ!」

……「………」チャキッ

召喚士 (おおおッ!天の助け!しかも美人!)

ジノ「……邪魔しないでくれるかな?」

……「うふふごめんなさいねぇ。あたしもちょっとこの坊やに用事があるのよぉ」

ジノ「………」

召喚士「……?」

…… (奇抜な髪型の青年って言ってたからこの子よねぇ……奇抜過ぎる気がするけど……)

召喚士「あ、あの……」

……「なぁに?」

召喚士「俺に用事って……何ですか?」

……「後で教えてあげるぅ。まずは目の前のキマイラ何とかしないとねぇ……」

ジノ「だからキマイラじゃ無いしッ!あたしはスフィンクスッ!」

……「………」

ジノ「……?」

……「そんな大層なもんがこんな所にいる訳無いでしょ……馬鹿なの?」

ジノ「こいつムカつくぅぅッ!」

……「さぁいらっしゃい。ぶっ飛ばしてあげるからぁ!」

召喚士「スフィンクスって言うのは本当ですよ……」

……「………」

ジノ「シッポが蛇じゃ無いしッ!」

召喚士「………」

……「………」

召喚士、ジノ「……?」

……「坊や……あんた何やったのぉスフィンクスに襲われるってぇ……」

召喚士「何って……別に何も……」

ジノ「………」

……「じゃあ何でこんな所にスフィンクスなんているのぉ……」

召喚士「それは……」

ジノ「……召喚兄さん」

召喚士「……なに?」

ジノ「そいつにあまり近付かない方がいいかもよ……」

……「………」

召喚士「お前を殴ったからか?」

ジノ「人間じゃ無いから」

召喚士「ッ!?」バッ!

……「あら……人間じゃ無いってわかっちゃう?」

ジノ「お前何者だあッ!そんな変な魂の色見た事無い!」

……「………」

召喚士「ジノ……」

ジノ「あたしの後ろに隠れないで……」

召喚士「えぇぇいいだろ!」

ジノ「よく無いし!」

……「なんだぁ……知り合いなのねぇ……」

ジノ「………」

……「それなら平気よねぇ。うふふ」

ジノ「何が平気なの……」

……「あんたが襲ってこないって」

ジノ「………」

……「さっきはぁ叩いてごめんなさいねぇ!ほら!襲われてる人間見たら助けないとね!」

ジノ「キマイラと間違えた事も謝って……」

……「ごめんねぇ……これでいい?」

ジノ「……オッケー」

召喚士 (ええぇぇ……)

ジノ「……本当に何者なの?敵意は無いみたいだけど」

……「ん……何て言ったらいいかしらねぇ……」

ジノ「それに男

……「女よぉッ!今は身も心も女ぁッ!」

召喚士「………」

……「いい!わかったぁ!?」

ジノ「う、うん……」

……「んもう!やんなっちゃう!」

召喚士、ジノ「………」

……「……そうだぁ坊やに話があるんだけどぉ!」ヨリ

召喚士「何ですか……近付かないでください……」ハナレ

……「なんでぇ?」ヨリ

召喚士「何ででも……」ハナレ

……「………」ヨリ

召喚士「………」ハナレ



召喚士「………」

ジノ「でね!蒼頭ってのが絶対顔見せないの!」

……「そうなのぉ!うちも変わってるのと一緒にいるのよぉ!」

ジノ「どんなの?」

……「女騎士って言うんだけど……騎士なのに馬に乗れないのぉ!」

ジノ「なにそれぇ!カッコ悪い!」

……「本当そうよぉ!笑っちゃうわよねぇ!」

召喚士「……盛り上がってるとこ悪いんだけどさ」

……、ジノ「なに?」

召喚士「お前はその人の正体聞かなくていいのかよ……貴方も俺に用事があるんじゃ?」

ジノ「だれ?」

剣騎士「剣騎士って言うのぉ」

ジノ「へえ。でさ!」

召喚士「待て待て待て!そこで終わらすなよ!」

ジノ「今いいところなんだけど!」

剣騎士「そうよぉ!」

召喚士「もういいや……俺が聞くから。……俺に用事ってなんですか?」

剣騎士「………」

召喚士「………」

剣騎士「なんだったっけ……」

召喚士「………」

……「剣さん!剣さん!」

剣騎士「ああ!そうそう!あれよ!」

召喚士「あれ?……なッ!」

……「………」

剣騎士「ほらぁ!」

召喚士「おおおおおおおのおの斧子さんッ!」

斧子?「………」

ジノ (この子が件の……ってッ!)

召喚士「ごごごご機嫌麗しゅう!」

斧子?「はは……そうだね……」

召喚士「いやぁ!あの方は斧子さんのお知り合いだったんですね!」

斧子?「まぁ……」

ジノ「召喚兄さん……」

召喚士「それにしても斧子さんはこの青空の如く晴れやかで美しいですね!」

斧子?「曇ってるけど……」

召喚士「何を仰います!斧子さんがいれば周りはいつでも春の陽射しを受け光輝いていますよ!」

ジノ「ねえ召喚兄さんたらッ!」

召喚士「なんだよ!今忙しいんだよ!」

ジノ「この子……おかしいよ……」

召喚士「おかしいなんて失礼だろッ!」

斧子?「………」

ジノ「人間じゃ無いし……魂が二つもある……」

召喚士「………」

斧子?「………」

召喚士「で?」

ジノ「で?って……魂を二つ持ってるなんてあり得ないんだよ!?」

召喚士「そんな事……些細な事だ!」

ジノ「………」

召喚士「例え斧子さんが人間で有ろうが無かろうが!魂二つ持っていようが俺は一向に構わない!」

ジノ「………」

召喚士「流石に男だったら悩むがな!」

ジノ (うわ……そこは悩まないで拒否しようよ……)

召喚士「男なんて事はありませんよね斧子さん!」

斧子?「そうだね……」

召喚士「ほら!な!」

ジノ「………」

剣騎士「斧ぉ……早く言っちゃいなさいよぉ」

斧子?「………」

召喚士 (これは……)

斧子?「あのね……」

召喚士 (あれか……普通は伝説の木の下で行われる愛の告白ってやつかッ!)

斧子?「………」

召喚士 (来たな……来た……長い冬だった……)

斧子?「………」

召喚士「斧子さん……その長く暗い洞窟から抜けたらそこは雪国では無いんですよ……」

斧子?「?」

召喚士「夜の底が白くなる事も誰かに遮られ止まる事も無いんです……」

斧子?、ジノ「??」

召喚士「冬の冷気を感じながらも遠くへ叫ぶように言ってもいいんです……」

斧子?、ジノ、剣騎士「???」

召喚士「さぁ!召喚士さあん召喚士さあんってこの胸に飛び込んで来てくださいッ!!!」キラキラ……

斧子?「………」

ジノ、剣騎士 (うわ……キラキラって……)

召喚士「親譲りの無鉄砲

斧子?「ごめんなさい……」

召喚士「二階から飛び降りて……?」

斧子?「剣さん……私こんな事するのもうやだよ……」

召喚士「一週間程腰を……」

剣騎士「斧ぉ!」

斧子?「お兄さん……騙すような事してごめんなさい……」

召喚士「………」

斧子?「あのね……お金返せないけど……」

召喚士「何の事でしょう?」

剣騎士「………」

ジノ「……どう言う事なの?」

斧子?「………」

剣騎士「仕っ方無いわねぇ……坊やが斧を気に入ったみたいだからぁ斧の物をまた売ろうかなってぇ来たのよぉ」

ジノ「………」

召喚士「………」

ジノ「またって……召喚兄さんこれ買ったの?」

召喚士「みんなには内緒な……」

剣騎士「はぁ……お小遣い稼ごうと思ったのにぃ……」

召喚士「……因みに次なる品は何だったんですか?」

剣騎士「……下着」

召喚士「買ったッ!!!」

ジノ「バカッ!」グバシッ!

召喚士「ぎゃぁッ!」

斧子?「………」

剣騎士「後々面倒になりそうねぇ……あたし達の正体も言っておこうかぁ……」

斧子?「剣さん……それは……」

剣騎士「大丈夫だってぇ。あたし達の声聴こえてるしスフィンクスと一緒にいるくらいなのよぉ?」

斧子?「………」

召喚士「斧子さん?」

斧子?「お兄さんごめんなさい……私……この子が持ってる斧なの……」

召喚士「……?」

斧「……剣さん持って」

剣騎士「はいはい……」

召喚士「………」

斧「………」

召喚士「み、見事な腹話術ですね!」

剣騎士「違うわよぉ本当にこの斧が喋ってるのぉ」

斧「………」

召喚士「………」

斧「騙すような事してごめんなさい……」

召喚士「じ、じゃあ……こっちの人はッ!?」

ローン「………」

斧「この子は私の召喚獣だよ……」

召喚士「ッ!?!」

ジノ「……詳しく聞かせてよ」

剣騎士「まぁ……あたし達ちょっと宿代が足りなくなっちゃってぇ!それをどうするかぁ」

ジノ「うん」

剣騎士「で、お金稼がないといけないじゃない?」

ジノ「………」

剣騎士「そこでみんなで勝負したのぉ」

斧「………」

ジノ「この斧が見事に負けたんだね?」

剣騎士「そう……笑っちゃうくらいボロ負けぇ!」

斧「私はやりたくないって言ったのに……」

剣騎士「あんたぁ……あんだけ熱くなってたのによく言うわねぇ……」

斧「だっておかしもん!私だけ全然勝てなかったんだよ!」

剣騎士 (まぁイカサマしてたからねぇ……)

ジノ「で?その斧と魔物の子を使って偶然居合わせた間抜け面召喚兄さんにこの帽子を売ったと?」

剣騎士「あたりぃ!」

ジノ「………」

剣騎士「それでぇあたしもそれにあやかりたいってぇ坊や追い掛けて来たって訳」

ジノ「……どっちともどうしょうも無いね」

召喚士「斧子さん……」

斧「……なぁに?」

召喚士「格好良くて可愛いって言ったのは嘘だったんですか……」

斧「うん……ごめんなさい……」

召喚士「優しくしてくれたのも……」

斧「………」

召喚士「また逢った時にはその逞しい腕で私を抱いてくださいって言ったのも……」

斧「……え?」

召喚士「俺と夫婦となり一生を仲睦まじく寄り添って生きたいって言ったのも……」

斧「なななな何を言って

召喚士「日常的にセクハラしても笑って許してくれて!尚且つそのままエッチな事に雪崩れ込んでも不思議では無い生活をしようねって約束したのも全部嘘なんですかぁぁぁぁッ!」

剣騎士「斧ぉ……あんた……」

斧「いや!私そんな事一言も言って無いよ!」

召喚士「おおおぉぁぁぁ……」

斧「お兄さん!デタラメ言わないでよッ!」

剣騎士「あーあ……」

ジノ「かわいそうに……」

斧「………」

召喚士「それは置いといて、ローンちゃんは同じじゃ無いですよね!?」ビシッ!

ジノ、剣騎士、斧「………」

召喚士「ローンちゃんが斧子さんみたいな性悪な事考えていないとハッキリ言えますが!」

斧「性悪……私だってそんな事考えて無いよ!言えって言われたから言っただけだよ!」

ローン「……!」

斧「え?ローンちゃん……このお兄さんの事知ってるの?」

召喚士「おおおおおおッ!」

ローン「……!!」

斧「そうなんだ……」

召喚士「なんて言ってるんですか!」

斧「昔会った事があるって……」

召喚士「覚えててくれたんだぁぁぁぁッ!」

斧「………」

剣騎士「どう言う事よぉ?」

ジノ「……初恋の人……じゃないな、初恋の魔物なんだってさ」

剣騎士「へぇ……だからあんなに簡単に引っ掛かったのねぇ……」



召喚士「斧子さん、ローンちゃんをお嫁さんにくださいッ!」土下座ッ!

斧「お嫁さんって……」

召喚士「きっと幸せにしてみせますから!」

斧「………」

ローン「……!?」

斧「………」

ローン「……!!」

斧「………」

ローン「……??」

斧「………」

召喚士「なんて言ってるの!?」

斧「………」

剣騎士、ジノ「………」

召喚士「???」

斧「うん……聞かない方がいいよ……」

召喚士「なんでッ!」

剣騎士「あたしもそう思うわぁ……」

ジノ「右に同じく……」

召喚士「ええぇ!ズルいだろ!教えてくれよ!」

剣騎士「斧ぉ言いなさいよぉ……」

斧「やだよ……」

ジノ「仕方無いなぁ……あたしが言うから……」

剣騎士「言うの……?」

ジノ「このままだとさ……召喚兄さん貴女達に付いてっちゃう勢いだし……」

剣騎士、斧「………」

召喚士「早く教えてくれ!」

ジノ「はぁ……言うよ?」

召喚士「おう!来いや!」

ジノ「確かこいつ変態クソジジイの馬鹿孫だよな?俺、こいつ嫌いなんだよ」

召喚士「………」

ジノ「あん時は殺さないでいたが、随分と俺に悪い事してくれたな。ガキだと思ってこっちが手出さないでいたら好き勝手やってくれてよ」

召喚士「………」

ジノ「それにでっかくなってもそんなバカ面して恥ずかしくないのかねぇ……」

ローン「……!」

ジノ「……なんか俺を嫁にとか言ってたけど気持ち悪りい奴だなお前。召喚獣を嫁になんて童貞丸出しの発言だぞ」

ローン「……?!」

ジノ「今度……俺の前でそんな事一言でも言ってみろ、ぶっ殺してやるからな。あぁぁ!気分悪ぅ!」

召喚士「………」

ジノ「………」

召喚士「嘘だ

ジノ「本当だよ……」

召喚士「嘘だ

剣騎士「本当よぉ……」

召喚士「嘘

斧「本当に言ってたの……」

召喚士「………」

剣騎士「坊や……元気出しなさいってぇ……」

斧「そうだよ……」

召喚士「」バタッ……

ジノ「まぁ……ショックだよね……」

剣騎士、斧「………」

ジノ「ほら、召喚兄さん起きて」ユサユサ……

……「パイア!あそこだ!」

ジノ「この声……」



ジノ「パイア……他の面子は?」

盗賊「違うとこ探してる」

ジノ「そう……」

ネメア「ジノ無事か?」コソコソ

ジノ「無事だけど?」

ネメア「なら何故召喚士が倒れている?」コソコソ

剣騎士「なぁにこのチビッ子。それと何コソコソしてるのよぉ?」

ジノ「な、何でも無いよ。パイアはあたしのね……使役してる人間なの!」

剣騎士「へぇ……このチビッ子凄いのねぇ……」

ネメア「……こいつらはなんだ」コソコソ

ジノ「兄ちゃん黙ってて!」コソコソ

斧「あわわわわわ……」カタカタ

剣騎士「斧ぉ?」

斧「な、なんで……」

剣騎士「?」

盗賊「………」

斧「ここここの人私を売った人だよ……」

剣騎士「あらま。……ん?おかしくないかしらぁ?あんた売られたのって百年くらい前じゃないのぉ?」

盗賊「あ……」

斧「ッ!!」

ネメア「どうしたパイア?」

盗賊「あれ……売った喋る斧」

ネメア「なんだと!?」

剣騎士「………」

ジノ「……兄ちゃん声聴こえちゃってるよ」

ネメア「………」

剣騎士「なぁにこの声ぇ……」

ジノ「………」

剣騎士「……随分と渋い良い声ねぇ素敵ぃ!」

ネメア「………」

剣騎士「ねぇあんた!この声の主どこ!」

ジノ「……ここ」

剣騎士「………」

斧「剣さん……逃げようよ!」

盗賊「………」ジー

斧「………」カタカタ……

盗賊「………」ガシッ!

斧「ひぃぃッ!」

ネメア「パイア……やめなさい……」

盗賊「………」

ネメア「喋る斧よ……」

斧「な、なに?」

ネメア「昔……パイアがお前に対して行った事……詫びよう」

斧「………」

ネメア「パイア……この喋る斧に謝りなさい」

盗賊「……ごめん」

ネメア「後な、パイアは人間では無い」

斧「………」

剣騎士「それでぇ……人間なら生きてる筈無いものねぇ」

ネメア「喋る斧よ、すまなかった……」

斧「………」

剣騎士「謝ってるんだから許してあげればぁ?」

斧「うん……」

ネメア「良かった……パイアもう一度謝りなさい」

盗賊「ごめん」

斧「もういいよ……」



剣騎士「なんで嘘ついたのぉ?」

ジノ「めんどくさい事になるかと思って……」

剣騎士「あたし達も人間じゃ無いからならないわよぉ」

ジノ「そお?……ところでさ剣騎士って何者?」

剣騎士「あたしは喋る剣なのよ」

ジノ「あの斧の子と同じ?」

剣騎士「そう」

ネメア「……そして魔王の

剣騎士「あああああッ!」

ネメア、ジノ「……?」

剣騎士「あたし達はね!精霊様ってのが造ったのよぉ!」

ネメア「なんだそれは……」

剣騎士「ちょっとその手甲貸して……」

ジノ「ほい」

ネメア「ジノ!物みたいに扱うな!」

剣騎士「渋い声の……聞いて」

ネメア「なんだ?……あまり近付かないでくれるか?」

剣騎士「どこまであたし達の事知ってるのぉ?」

ネメア「大体なら聞いた。お前達の力の事等な」

剣騎士「誰に?」

ネメア「お前達を造った者が親しくしている魔物だ。ドヴェルグと言う奴だな」

剣騎士「なるほどぉ……なら斧には魔王が造ったって事は内緒にしてちょうだい……」

ネメア「何故だ?知っているので無いのか?」

剣騎士「あの子は知らないのよぉ……知ってしまったら力が使えなくなってしまうかもぉ……」

ネメア「………」

剣騎士「何百年生きてるって言っても中身は子供なのよ……」

ネメア「………」

剣騎士「何で自分が生まれたか……誰に造られたか……」

ネメア「………」

剣騎士「本当の事を知ってしまったら自分のしようとしている事を放棄しちゃうかもしれないのよぉ……」

ネメア「そうか……」

剣騎士「ね?だから言わないで」

ネメア「わかった。私も無理に言うつもりは無い」

剣騎士「そう……良かった」

ジノ「………」

剣騎士「ところでぇ……この手甲の中身はいい男ぉ?ね?」

ネメア「………」

剣騎士「渋い声からして……そうねぇ筋肉が引き締まった感じで長身金髪切れ長ちょっとダンディなハンサムお兄さんと見たけど……どお!?」

ジノ「……ライオンだよ」

剣騎士「ええぇぇ……有り得ないし最悪ぅぅぅ……」

ネメア「………」

剣騎士「んもう……あたしそっちの趣味は無いのよねぇ……」

ネメア「……私を馬鹿にしているのか?」

剣騎士「いいえ!残念って思っただけですぅ」

ネメア「………」

剣騎士「どこかにいないかしらねぇ……筋肉ムキムキ絶倫剣士やってるみたいないい男ぉ……」

ネメア、ジノ (いるなんて言えないな……)

剣騎士「はぁ……ライオン?」

ネメア「私はな……」



斧「あの……聞いていいかな……」

盗賊「………」コクッ

斧「何で私を売ったの?」

盗賊「………」

斧「………」

盗賊「……お腹減ってたから」

斧「………」

盗賊「………」

斧「それだけ……?」

盗賊「………」コクッ

斧「………」

盗賊「………」

……バシュンッ!

ネメア「召喚士が側にいて良かった。見せた方が早いだろう」

剣騎士「ほへぇ……立派なライオンねぇ」

ネメア「……それだけか?」

剣騎士「それだけよぉ?何?あんた有名なの?」

ネメア「………」

ジノ (兄ちゃん……)

斧「あわわわわゎゎゎゎ……」カタカタ……

剣騎士「またなによぉどうかしたの斧ぉ?」

斧「ネネネネメネメネメアのラララライオン……」カタカタ

剣騎士「このライオン?」

斧「つ、剣さん逃げないとぉぉッ!!」

剣騎士「なんでぇ?」

ネメア「……?」

斧「おじさんやられちゃうからッ!早く!」

剣騎士「あんた……あたし達の仲間狙ってんの?」

ネメア「何の事だ?」

斧「……おじさんやお姉さん達の世界を壊しに来たんじゃ無いの?」

ネメア「話が見えないな……その事を話して貰えるか?」

斧「………」

ネメア「………」

ジノ「兄ちゃん……昔の癖が再発したの……」

ネメア「癖とは何だ……人間と戦い渡っていただけだろうが……」

ジノ「へぇ……あんだけ暴れ廻って?」

ネメア「……昔の事だ。退治され大人しくしていただろう……」

斧「大人しくしていたのに……なんで襲って来たの……」

ネメア「お前を襲ったと言うのか?」

斧「そう……」

ネメア「……そうか。なるほど、なんなくだがわかった」

斧「……?」

ネメア「喋る斧よ、お前の持っている力は……召喚だな?」

斧「そうだけど……何でわかるの?」

ネメア「それはある魔物に聞いた。後でそいつから説明して貰え。……それとセーレを召喚出来るな?」

斧「今は出来ないけど……セーレと契約はしてたよ……」

ネメア「そうか……これで話は繋がったな」

斧「私にはわからないんだけど……」

ネメア「説明するとだな……」



ネメア「と言う訳だな。私を使って……思い出しただけでも腹立たしい……」

斧「………」

ネメア「理解したか?」

斧「うん……」

ネメア「………」

斧「なら何で……貴方はここにいるの?」

ネメア「わからぬ……この馬鹿に喚ばれ居るのだと思うのだが」

斧「なにそれ……」

ネメア「この世界に喚ばれたならしなければいけない事はわかっている」

斧「……それは?」

ネメア「お前に謝礼する事だ」

斧「………」

ネメア「操られていたとは言え……お前に牙を向けるような事をして申し訳無かった……」

斧「………」

ネメア「それに……セーレに私を天界の門まで運ばせ仕返しの機会まで与えて貰った事も礼を言う」

斧「え……」

ネメア「恐らく私を操るのに関わったであろう天使を食らう事も出来た。……まぁそれに無関係な天使だったかも知れんがな」

斧 (セーレ……何やっちゃってくれてるの……)

ネメア「………」

斧「………」

ネメア「喋る斧よ……ありがとう」

斧「い、いいよ……ははは……」

ネメア「………」

ジノ (兄ちゃん……何で喚ばれたかわからないって……)

剣騎士「斧ぉ……あんた色々と因縁持ってるのねぇ……」

斧「ごめん……今はちょっと話掛けないで……」

ジノ (召喚兄さんは両親は生まれる前に死んだって言ってるくらいだから自分の出生は興味無いみたいだし……)

ネメア「……お前達はこれからどうするのだ?」

剣騎士「待ってるのがいるのよぉ。だから戻るけど」

ジノ (つーか、両親先死んでたらお前はその両親の子じゃ無いだろって!)

ネメア「そうか……」

剣騎士「お小遣いは稼ぎ損なったけどねぇ……まぁいいでしょ。こんなんなっちゃったし」

ネメア「こんなん?」

ジノ (何故自分がいるのかわからない、自分が何者なのかわからないでお互い一緒してたんだね……)

アルミラージ「………」ふん

斧「あ、あれ?アルミラージなんで出てるの?」

アルミラージ「………」ふんふん

斧「ローンちゃんと交代って……」

召喚士「ああ……ウサギさんこんにちは……うふふ」

アルミラージ「………」

召喚士「俺ね、さっき好きだった魔物に気持ち悪いって言われちゃったよアハハ」

アルミラージ「………」

召喚士「しかも殺すって言われたよ。可笑しいよねアハハハ」

アルミラージ「………」

召喚士「もう生きてるの辛いなぁ……」

ネメア「……これは酷いな」

剣騎士、斧「………」

ジノ (まぁそのうちわかる事だから放っておいていいよね……)

ネメア「これはこちらで処理しておこう……」

剣騎士「お願いするわねぇ」

ネメア「………」

剣騎士「なに?」

ネメア「お前は神留の力を使うのか?」

剣騎士「あたしは違うわよぉ。あたしは分身ね」

ネメア「……どちらにしてもその体の持ち主は難儀してそうだな」

剣騎士「失礼ねッ!難儀してるのはこっちなのよぉ!……もっとガチガチのいい男が良かったのに!」

ネメア「………」

斧「……そろそろ行かないと置いてかれちゃうよ」

剣騎士「そうねぇ」

ネメア「斧よ……ではな。お前と会えて良かった」

斧「うん……」

ネメア「………」

ジノ「じゃあね!」

剣騎士「またねぇスフィンクスとおかしなライオンさん」

ネメア「私におかしな所など無いだろ!」

剣騎士「うふふ……ンチュッ!」

ネメア「………」ゾゾゾ……

ジノ「………」

ネメア (な、なんだ!?この全身を駆け巡る悪寒は……)

タタタッ……

ジノ「ありゃ兄ちゃんに気があったね」

ネメア「……やめてくれ」

ーー

喚起士「召喚士さん……どうなされたんですか?」

ネメア「ジノに聞いてくれ。私は戻る」

ジノ「あたしも」

バシュンッ!

召喚士「」グデェ……

喚起士「ジノ……これは?」

ジノ「現実が理想をフルボッコしちゃっただけだよ」

喚起士「意味がわかりません……」

蒼頭「召喚士殿は見付かり……これは?」

喚起士「現実が理想を打ち砕いたみたいです?」

蒼頭「意味がわかりませぬ……」

剣士「召喚士見付かった……これは?」

蒼頭「何らや現実が理想を玄翁のごとき所業を行ったとか?」

剣士「はぁ?意味わかんねえぜ……」

姫宮「……召喚士どうしたの?」

剣士「現実と理想と情熱の狭間だってよ」

姫宮「ジノ……どう言う事?」

ジノ「………」

ネメア「どこぞの馬鹿のせいでもう辺りは暗くなっているがどうするのだ?」

喚起士「そうですね……」

蒼頭「この辺りだと村と村の中間辺りで御座ろうから進むにしても戻るにしても同じで御座いまする」

喚起士「なら野宿ですかね……」

ネメア「そうか。剣士よ」

剣士「なんだ?」

ネメア「こいつを運んでくれ」

剣士「ああ、わかった」



パチッ……

剣士「………」

蒼頭「………」

剣士「……今日は召喚士見張りしねえから組み合わせがおかしいな」

蒼頭「某とは嫌だったか?」

剣士「そうじゃねえよ。思った事を口に出しただけだよ」

蒼頭「………」

剣士「ただじっと周り警戒しながら焚き火見てるだけじゃ暇だろ?」

蒼頭「……そうだな」

剣士「なんかねえかなぁ……」

蒼頭「……?」

剣士「お前、全部終わったらどうするんだ?刀見付かったしここいらに用はねえだろ?」

蒼頭「某は……帰ろうと思う。この地を離れるのは名残惜しいがな」

剣士「なんで名残惜しいんだ?」

蒼頭「この刀を探す旅の途中、路銀が尽きてな……谷の国で雑用として登用して貰ったのだがな……」

剣士「お前雑用って……そんなに強えのにか?」

蒼頭「この身なりで兵士などになれる訳無いだろう……某のような身元も容姿も解らぬ輩を雇って貰っただけでも有り難いのに」

剣士「そりゃそうだな」

蒼頭「そこでだな某は人間で無いと隠し勤めていたのだが……周りの諸人は某を快く受け入れてくれたんだ」

剣士「………」

蒼頭「素性の解らぬ某をな。……嬉しかった」

剣士「………」

蒼頭「………」

剣士「それで姫さんの護衛なんてしてるのか?」

蒼頭「そうだ……いくら命されたとしてもこのような大役、義理が無ければ引き受けていない」

剣士「命されたってなんだい?」

蒼頭「ネメア殿や喚起士殿から聞いていないか?」

剣士「何も聞いてないぜ」

蒼頭「谷の国を乗っ取り今国を動かしている将軍と言う輩に命されたのだ」

剣士「………」ピクッ

蒼頭「………」

剣士「………」

蒼頭「……どうした?」

剣士「何でもねえ……将軍……」

蒼頭「……?」

剣士「………」

蒼頭「某も聞いていいか?」

剣士「……なんだ?」

蒼頭「お前は何故強くなりたいんだ?」

剣士「召喚士にも聞かれた事があったがよ……強くなれば何でも手に入るからだな」

蒼頭「……物欲の為か」

剣士「ん……それがな、自分でも何が欲しいかわからないんだわ。欲しい物が欲しいってやつ?」

蒼頭「………」

剣士「強くなれば……それが手に入るんじゃねえかなってな」

蒼頭「……もし、それが手に入らなければどうするのだ?」

剣士「そんときゃまた考えるさ」

蒼頭「手に入るといいな……」

剣士「ああ」

蒼頭「………」

剣士「………」



喚起士「はぁ……」

ジノ「なに?溜め息なんかついちゃって」

喚起士「………」チラッ

召喚士「」

ジノ「召喚兄さんがどうかしたの?」

喚起士「私の事が……好きだと……」

ジノ「……あれ?」

喚起士「はい……あの方が言ったあれですね……」

ネメア「何の事だ?」

ジノ「兄ちゃんは興味無いだろうから黙ってて」

ネメア「………」

喚起士「………」チラッ

ジノ「そんなに意識しない方がいいよ?」

喚起士「ですが……こんな事初めてで……」

ジノ「………」

喚起士「それに私以外の方も好きな人がいるんですよね……」

ジノ「そっちの方は終わったから気にしないでもいいよ……」

喚起士「終わったですか?」

ジノ「まぁ……あれだったんだよ。召喚兄さんの初恋の相手だったんだよね」

喚起士「そうだったんですか……」

ジノ「こっぴどく振られたけど」

喚起士「………」

ネメア「それで召喚士はこの状態なのか」

ジノ「そうだね……」

喚起士「……ジノ」

ジノ「ん?」

喚起士「男の人は……皆、何人も好きな人が出来るんでしょうか……」

ジノ「………」

喚起士「………」

ジノ「そうかもね……」

ネメア (ジノが私の方を見ている気がするのは気のせいだろうか……)

喚起士「なら私は……召喚士さんにお応えするのは無理かもしれません……」

ジノ「そんなに早く答えを出すのは早いんじゃない?」

喚起士「………」

ジノ「全部終わってからでも十分間に合うと思うよ。何年先でも間に合うかも」

喚起士「そうでしょうか……」

ジノ「気に食わなかったら召喚兄さんに死ねって言えばいいし!」

喚起士「………」

ジノ「なるようになるって」

喚起士「はい……」

ーー

盗賊「だからこう……」カリカリ

姫宮「なるほど」

盗賊「………」カリカリ

姫宮「ふむふむ」

喚起士「おはようございます」

姫宮「おはよー」

盗賊「おは……」

喚起士「何をなさっているんですか?」

姫宮「盗賊に絵の書き方教えて貰ってたの」

喚起士「なら私が

姫宮「喚起士はいいよ……」

喚起士「……何故です?」

姫宮「………」

盗賊「………」

姫宮「か、喚起士の絵って私だと真似出来ないから!」

喚起士「そうですか……」

姫宮「そう!」

喚起士「ですがそう言わずに真似てみるのもいいと思いますよ。模倣から始めると言うのもありますし」

姫宮「本当にいいよ……」

喚起士「遠慮はいりません。さぁ姫宮さん真似てください!」

姫宮 (どどどどうしよう……)

喚起士「………」カリカリ

姫宮「………」

喚起士「……はい!」バッ!

姫宮「……何を描いたの?」

喚起士「見ればわかるじゃないですか!」

姫宮「………」

喚起士「どうしました?」

姫宮 (あああ……どうみてもウサギさんだけどウサギさんじゃないんだよなぁ……)

喚起士「……?」

姫宮 (困った……そのまま描いたら喚起士何て言うかな……)

蒼頭「お三方、おはようございまする」

姫宮「……蒼頭おはよう!」

蒼頭「姫様、何をなさっておいでで?」

姫宮「盗賊に絵の書き方教えて貰ってたの……」

蒼頭「ほう、どれどれ……」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ、お主はこのような才があったのだな。見事な物だ」

盗賊「………」フフン

喚起士「………」サッ……

蒼頭「喚起士殿……何か?」

喚起士「いえ……」

姫宮「喚起士にも描いて貰ったの……」

蒼頭「ほうそうで御座いますか。で、喚起士殿のは?」

喚起士「………」

姫宮 (喚起士には悪いけど……誰かがハッキリ言ってあげないとね……)

喚起士「………」ペラッ……

蒼頭「………」

姫宮 (蒼頭なら……きっと蒼頭ならハッキリ言ってくれる筈!)

蒼頭「………」

姫宮「……蒼頭?」

喚起士「いかがでしょう……」

蒼頭「そうか……」

喚起士「はい?」

蒼頭「……すでに某の姿知り申していたか」

喚起士、姫宮「?」

蒼頭「ならば……隠す必用も無いで御座ろうな……」

姫宮「蒼頭何を言って……」

蒼頭「………」パサッ……

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「………」

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「………」

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「声も出ませんか……」

喚起士、姫宮「………」

蒼頭「このように……醜く……」

喚起士、姫宮「えええええええッ!」

蒼頭「………」

喚起士「かかわ……わわッ……」

姫宮「かかかかっ……かかっ……」

蒼頭「申しありませぬ……このような姿を晒してしまい……」

喚起士、姫宮「可愛いぃぃぃッ!」

蒼頭「これではもう御側に置かせては貰えませんか……は?」

姫宮「何この耳ッ!何この耳ぃぃッ!」

喚起士「蒼頭さんこんな武器を隠し持っていたなんてズルいですよッ!」

蒼頭「………」

姫宮「蒼頭!屈んで!」

蒼頭「……何故で御座ろう?」

姫宮「いいから早くッ!」

蒼頭「………」

姫宮「はぁああッ!」グワシッ!

蒼頭「………」

姫宮「キャー!キャー!本当みたい!」

蒼頭「本当で御座りまする……」

喚起士「姫宮さんズルいですよッ!私も!」グワシッ!

蒼頭「………」

喚起士「キャー!モフモフですよ姫宮さんモフモフッ!」

蒼頭「あの……」

姫宮「私、剣士呼んでくる!」

喚起士「私もジノを!」

ダダダダッ!

蒼頭「………」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ……」

盗賊「………」

蒼頭「何故この姿を見て……姫様や喚起士殿は平気なのか……」

盗賊「………」

蒼頭「それに可愛いなどと意味がわからぬ……」

盗賊「………」

蒼頭「お子よ……某は醜いだろ?」

盗賊「……普通」

蒼頭「普通か……」

盗賊「………」

蒼頭「………」



ジノ、剣士「………」

蒼頭「………」

ジノ「人間じゃん……」

剣士「何処が化物なんだよ……」

蒼頭「………」

喚起士「それに美人ですし」

姫宮「そうそう!」

剣士「なんだよ……どんなん出てくるかと思ったけどガッカリだぜ……」

ジノ「本当だよ……隠す必用無いんじゃん」

蒼頭「……この耳を見てもそのような事が言えるのですか?」

剣士「ウサギの耳がどうかしたのか?」

蒼頭「どうかしたのかって……」

剣士「そんなの高え酒場行けばいくらでもいるだろ」

蒼頭「なんと……」

姫宮「喚起士……高い酒場にはいるの?」

喚起士「私に聞かれても……」

蒼頭「………」

ジノ「何で顔隠してたの?理由がわからないよ」

蒼頭「理由は……この耳は忌むべき物故……」

喚起士「忌むべき物……ですか?」

蒼頭「負の証で御座りまする……」

喚起士「………」

蒼頭「同胞を……人間を……騙し裏切り陥れる証……」

喚起士「ウサギの耳を見てそんな事を思う人はいないと思いますが……」

蒼頭「………」

剣士「意味わかんねえ……」

蒼頭「……某の一族では幼少の頃より、この耳は醜く人前で晒せば蔑まれると教えられてたが」

剣士「へぇ……けどよそんな事するやついねえだろ……」

蒼頭「………」

喚起士「何故そのように蒼頭さんの一族では教えているんでしょうか?」

蒼頭「某の祖先が起こした罪からで御座ろうな……」

喚起士「………」

蒼頭「同胞の背中に火を付け泥の船に乗せ……かたや言葉巧みに騙し海を渡り……」

喚起士「………」

蒼頭「駆けては亀に負け、獅子に揶揄され……」

剣士、姫宮、喚起士「最後のはネメア?」

蒼頭「………」

剣士「まぁお前の好きなようにしろよ」

蒼頭「好きなようにとは?」

剣士「これから先、その耳を隠そうが隠すまいがお前の自由だって事だよ」

蒼頭「………」

姫宮「私はそのまま耳を出してた方が好きだよ」

蒼頭「姫様……」

剣士「そうだ……お前さ」

蒼頭「……何で御座ろう」

剣士「それで召喚士起こしてきてくれよ」

蒼頭「………」

姫宮「………」

蒼頭「わかり申した……」



姫宮「絶対ろくな事にならないよ……」

剣士「そう言うなら止めろよ。大丈夫だって!召喚士がどんな反応するか楽しみじゃねえか!」

喚起士「………」

ジノ「……喚起士どうしたの?」

喚起士「いえ……蒼頭さん、私の絵を見て既に姿を知っていたって言ってたんですよね……」

姫宮、ジノ「………」

喚起士「何故なんでしょう……」

姫宮「……蒼頭が見間違えたんだよ」

ジノ「きっとそうだよ……」

喚起士「そうでしょうか……ウサギ何て描いていないのに……」

姫宮 (やっぱりウサギじゃ無かったんだ……)

ジノ (それで蒼頭は姿がバレてると思って頭巾取ったんだ……)

喚起士「………」



召喚士「」

ネメア「いい加減起きないか!」

蒼頭「………」

ネメア「ったく……ん?……お前」

蒼頭「………」

ネメア「皆に見せたのだな?」

蒼頭「左様で御座ります……」

ネメア「そうか……」

蒼頭「………」

ネメア「……杞憂だったか?」

蒼頭「はい……」

ネメア「良かったな」

蒼頭「………」

ネメア「何か用か?」

蒼頭「ネメア殿……」

ネメア「なんだ?」

蒼頭「某は……皆に己の存在を否定されると思っておりました……」

ネメア「ふむ……」

蒼頭「それが……どうとも無く受け入れられ戸惑っておりまする……」

ネメア「………」

蒼頭「剣士には好きなようにすればよいと言われたのですが……某はどうすればいいのか……」

ネメア「蒼頭よ」

蒼頭「……はい」

ネメア「お前はその姿で生涯を過ごさなければならないのは当然の事だがわかるな?」

蒼頭「はい……」

ネメア「ならば自身が醜く思おうともお前がお前で生き続ければいい」

蒼頭「………」

ネメア「その姿の事を他の者に何を言われようが先へ進むのはお前自身なのだ」

蒼頭「………」

ネメア「私から言えるのはここまでだ。後は自分で考え進めばいい」

蒼頭「ネメア殿……」

ネメア「………」

召喚士 (……蒼頭とネメアか。なんだ?姿とかって)

ネメア「こう言うのもあれだが……蒼頭、お前は綺麗な顔をしているではないか」

召喚士 (なッ!か、顔!?)

蒼頭「そうような事は……」

ネメア「私はお前の姿、嫌いでは無い」

蒼頭「………」

ネメア「……?」

蒼頭「……う」カァァ……

召喚士「………」

ネメア「どうかしたか?」

蒼頭「な、なんでもありませぬ!某、召喚士殿を起こさねばならんのでしたぁッ!召喚士殿!召喚士!」ユサユサ

ネメア「………」

蒼頭「召喚士殿ぉッ!」ズドンッ!

召喚士「ゲバラッ!げほ……な、何するんだよッ!」

蒼頭「あああ!起き申したか!」

ネメア「やっと起きたか……」

召喚士「………」

蒼頭、ネメア「……?」

召喚士「……誰?」

蒼頭「……蒼頭で御座りまする」

召喚士「嘘ぉ……」

ネメア「本当だ」

召喚士「………」

ネメア「お前意外と驚かないのだな」

召喚士「ん……うん……まぁそうだね」

ネメア「何かあるのか?」

召喚士「何でも無いよ……」

ネメア「………」

召喚士 (なるほどなぁ。確かに蒼頭がバニーガールなのは少し驚いたが……ネメアが蒼頭をとはねぇ……そっちの方が驚きだよ!)

ネメア「蒼頭よ、他の者達は?」

蒼頭「皆、仕度しておりまする」

ネメア「そうか。召喚士よ早くせねば置いていかれるぞ」

召喚士「わかった……」

ネメア「………」

蒼頭「某は皆の所へ戻ります故」

ネメア「ああ」



蒼頭「………」

姫宮「頭巾取った方が良いって!」

蒼頭「そう申されても……この耳を晒して御天道様の下を歩くのは抵抗があると申そうか……」

姫宮「勿体ないよ。綺麗な顔をしてるのに……」

蒼頭「しかし……」

喚起士「ならこうしたらいかがです?」

蒼頭「その布で何を……」

喚起士「はい後ろを向いてください」

蒼頭「はあ……」

喚起士「ん……これで……よし!」

蒼頭「………」

姫宮「おお!」

喚起士「手鏡を。どうです?」

蒼頭「………」

喚起士「耳だけ隠すようにすればいいと思うんですよ!」

蒼頭「はあ……」

姫宮「何か三刀流とか出来ちゃいそうだよ!」

蒼頭「それは何で御座ろうか……」

喚起士「それなら蒼頭さんが仰っていた耳も見えなくていいと思うんですけど」

蒼頭「ですがこれでは……某の瞳が隠れず……」

姫宮、喚起士「………」

蒼頭「………」

喚起士「あ、あれです!それは疲れ目と言う事で誤魔化せますから!」

蒼頭「疲れ目……」

姫宮 (無理だと思うな……)

喚起士「それにしても、東方の女性は髪を命のように大事にすると聞いた事がありますが蒼頭さんは肩までしか伸ばして無いんですね」

蒼頭「これで御座ろうか。これは尼削ぎと言われる物で御座ります」

喚起士「尼削ぎ?」

蒼頭「こちらでは修道女と言った方がわかりやいか。その方達が行っている髪型ですな」

喚起士「そうなんですか。……東方の僧は坊主にするのでは?」

蒼頭「何でもかんでも坊主にと言う訳では御座らん」

喚起士「はあ……」

姫宮「じゃあ蒼頭……僧侶なの?」

蒼頭「いや、これは真似ているだけなので関係は無いで御座ります」

姫宮「へぇ」

蒼頭「………」ソワソワ

姫宮「……落ち着きなよ。大丈夫だから」



剣士「どうよ?」

召喚士「何が?」

剣士「蒼頭の顔だよ。ありゃ中々の上玉だと思うぜ!」

召喚士「そうだね」

剣士「………」

召喚士「……?」

剣士 (あれ?召喚士は女に弱いんじゃねえのか?)

召喚士「………」

剣士 (それに全然驚いてねえし……つまんねえなぁ)

召喚士「剣士、俺が驚かないのがつまらない?」

剣士「う……そ、そんな事思ってねえよ……」

召喚士「そう」

剣士 (やべえ……見透かされてるぜ……流石だな)

召喚士「………」

剣士 (この程度で驚いてたらどうしょうもないって訳か……)

召喚士 (ネメアと蒼頭の関係の方が気になるんだよ!)

剣士「………」

召喚士「………」

剣士「し、召喚士よ蒼頭は……好きになったりしないのか?」

召喚士「……なる訳無いだろ。何言ってんだ」

剣士「そうかい……」

召喚士「………」

剣士 (じゃああの姉ちゃんだけが好きなのか……?)

召喚士 (いくら美人でもオッパイ無いとつまらないだろうが!何言ってんだ!)

剣士「………」

召喚士 (まったく何でもアリの人間はこれだから……。全てはオッパイだろうがッ!)



蒼頭「この村より……谷の国になり申す」

喚起士「………」

姫宮「………」グッ……

剣士「大丈夫だぜ。俺が守るからな!」

姫宮「うん……」

蒼頭「………」ソワソワ……

ジノ「落ち着きなって……」

蒼頭「いやはや……こう顔が涼しいとなんとも……」

喚起士「蒼頭さんはそのままの方がいいんですから大丈夫ですよ」

姫宮「そうだね……顔を知ってるの国にいないんでしょ?」

蒼頭「そうで御座りますが……」

姫宮「じゃあ!行こう!」

蒼頭「姫様は確りとお顔をお隠しに!」

姫宮「……わかってるよ」

喚起士「パイアもここからはお顔を隠していた方がいいかと思いますが」

盗賊「………」コクッ

剣士「で、これからどうすんだ?」

喚起士「……この村で少し情報を仕入れたいと思います」

剣士「じゃあ派手に稽古とか出来ねえなあ……わかったぜ」

喚起士「………」

剣士「ま、大人しく宿屋で待機してっか。行くぞ盗賊」

盗賊「………」コクッ

蒼頭「……某は野暮用を」

喚起士「野暮用ですか?」

蒼頭「大した事では無い故……」

喚起士「……?」



召喚士「………」チョイチョイ

姫宮「……何?」

召喚士「蒼頭を付けよう……」

姫宮「何で……」

召喚士「いいから……」

姫宮「……じゃあ私じゃなくてもいいよね?」

召喚士「駄目だ!……この村は来た事あるよな?」

姫宮「あるけど……」

召喚士「決まりだな。案内よろしく」

姫宮「嫌!」

召喚士「……ほう?」

姫宮「………」

召喚士「………」キョロキョロ

姫宮「……?」

召喚士「お姫様は知ってるかい?」

姫宮「……何を?」

召喚士「蒼頭の真なる秘密を!」

姫宮「………」

召喚士「……案内してくれたら教えよう」

姫宮「どうせろくでもない事でしょ?」

召喚士「……蒼頭が慕ってる相手なんだけどなぁ」

姫宮「なッ!?そんな人がッ!」

召喚士「声がデカイ!」

姫宮「……誰なの?」

召喚士「………」

姫宮「………」

召喚士「来る?」

姫宮「行くッ!」

召喚士「オッケー……ふふっ」

姫宮「ねぇ……」

召喚士「慌てなさんなって!じゃ行くぞ!」

姫宮「……喚起士に

召喚士「言わないでいいから……」

姫宮「でも……」

召喚士「大丈夫!蒼頭の後追ってすぐに帰って来るから」

姫宮「………」



姫宮 (ネメアまで置いてきて……何かあったらどうしよう……)

召喚士「付いてきたのはいいけど……蒼頭のやつ原っぱに座り込んでなにやってんだ?」

姫宮「そろそろ教えてよ……」

召喚士「……なにを?」

姫宮「蒼頭が慕ってる相手を!」

召喚士「ああ……秘密だからな?」

姫宮「うん……」

召喚士「ネメアだよ……」

姫宮「まさかぁ……」

召喚士「本当!聞いちゃったんだよ俺」

姫宮「………」

召喚士「……ネメアがな蒼頭に綺麗な顔だって」

姫宮「それだけ?」

召喚士「後な……蒼頭よ、お前の事嫌いでは無いフフッって!」

姫宮「………」

召喚士「この旅が終り……召喚士との契約が切れたならお前と一緒に……ってぇッ!」

姫宮「へ、へぇ……そうなんだ……」

召喚士 (ちょっと違うけどネメアもこのくらい思ってるだろうからいいか)

姫宮「………」

召喚士「驚きだよね!いつの間にそんな関係になったんだか……」

姫宮「……あの穴に落ちた時かな」

召喚士「それだ!なるほどなぁ」

ガサッ……

……「お前ら……そんな所で何してる?」

召喚士、姫宮「ッ!」



剣士「召喚士どこ行ったんだよ……」

ネメア「お嬢もいないとなると……あの馬鹿が連れ出したのだな……」

喚起士「こんな時に何を……」

剣士「まさか二人で情報でも探ってるのか……」

喚起士「……有り得ますね」

ネメア (一番有り得んだろ……)

喚起士「召喚士さん……髪型以外はあまり目立ちませんから」

剣士「ああ……地味だもんな」

ジノ (二人ともさらっと酷い事言ってるね……)

喚起士「それに、姫宮さんを連れ出したのは案内が必要だったからではと……」

剣士「なるほど。土地勘を持ったやつが必要だった訳かい」

喚起士「………」

剣士「なら召喚士に情報収集は全部任せていいな」

喚起士「そうですね……あまり多人数でと言うものよくありませんから」

ネメア「………」

ジノ「なんだか二人、今日は一緒に喋るね」

喚起士「たまたま意見が一致しただけです……」

剣士「………」

ジノ「そう……」

剣士「ね……喚起士でいいか?」

喚起士「それで構いません……」

剣士「……ちっと話があるんだかよ。あの二人がいない間に話してくわ」

喚起士「……何でしょう?」

剣士「喚起士は仇を討つんだったよな?」

喚起士「そうですが?それが?」

剣士「悪いけど……俺だけ別行動になるかもしれねえから」

喚起士「それでも構いませんが……何故です?」

剣士「実はな……」



……「なーんてな!後ろ姿で違うかなって思ったけど、やっぱりあの時の奴だったか」

召喚士「………」

姫宮「し、知り合いなの?」コソコソ

召喚士「多分知らない人だと思う……」コソコソ

……「そっちの嬢ちゃんも久し振りだな」

召喚士「知り合いなの?」コソコソ

姫宮「知らないよ!」コソコソ

……「ん……思い出せないって顔してるな。ほれ、手で額を隠して……何も聞かずその娘を寄越せばいいんだ!」

召喚士「ああああッ!砂浜で会った兵士の人!」

……「ふふ、思い出したか?」

召喚士「思い出した思い出した!」

姫宮「………」

……「お前らこんな所でなにやっているんだ?」

召喚士「ちょっとね……」

姫宮「………」

……「ふーん……。その嬢ちゃん連れているなら、この辺いない方がいいそ?」

召喚士「なんでって……おおおお姫様にそっくりだったね!ああ!そうだった!」

……「……?」

召喚士 (これマズイよな……?)

姫宮 (何かしまったって顔してるけど……)

……「まぁいいや。忠告はしたからな」

召喚士「……うん。あんたは今、見回りか何かか?」

……「俺かい?俺は国に帰るとこだよ」

召喚士「そう……え?兵士の仕事は?」

……「やめたよ」

召喚士「………」

……「何だか戦争になりそうな雰囲気だったからな。それだけじゃ無いけど」

召喚士「………」

……「それで国に帰るって訳さ」

召喚士「そうなのか……」

蒼頭「お二方……このような所で何をやっているのか……」

召喚士、姫宮「ッ!」

蒼頭「……しまったと言う顔をしている事は……某を付けて」

召喚士「ぐ、偶然だよ……な?」

姫宮「……うん!」

蒼頭「はぁ……」

……「………」グイッグイッ

召喚士「……何?」

……「お前さん……随分と美人の知り合いがいるな」

召喚士「まぁ……で?」

……「紹介してくれよ」

召喚士「嫌だけど」

……「……何で?」

蒼頭「やややッ!これは兵士殿では御座らんか!」

……「ななな何で俺の名前を知って……」

蒼頭「何を言って……ああ、こうすればおわかり頂けるかと」パサッ

……「………」

蒼頭「どうですかな?いやぁ久しぶりで御座いますな!」

……「ええええぇぇぇ……なんだとッ!?お前あの蒼頭かよッ!」

蒼頭「如何にも。其ほど驚かれる事など無いと思いますが」

……「………」

姫宮「……知り合い?」コソコソ

蒼頭「同じ釜の飯を食べた友で御座いますな」

姫宮「そうなんだ……」

……「………」

蒼頭「あれからインキンタムシやらマタズレやらは治ったで御座ろうか?」

……「………」

召喚士「………」

蒼頭「相も変わらず兵士殿は女子衆の尻を追い掛けておりますかな?」

……「ぉぅ……」

蒼頭「ふふふ、晩飯の愚痴やらを寝床で語り合ったり下劣な話に花を咲かせたり……」

……「それ以上は言うなよ……」

蒼頭「はて?何故で御座ろう?」

……「いいから……」

召喚士「あんた女相手になんて事を……」

……「野郎だと思ってたから……」



蒼頭「なんと……」

……「そう言う訳でさ、俺兵士やめたんだよ」

蒼頭「………」

……「国に帰ってまた一から傭兵でもやろうかなってな」

蒼頭「なるほど……」

傭兵「最後にお前さんに会えて良かったよ」

蒼頭「………」

傭兵「友にさらばってな挨拶したかったし……」

蒼頭「……兵士殿」

傭兵「じゃあな蒼頭」

召喚士、姫宮「………」

傭兵「お前さんもまた会えたらいいな……ほれ嬢ちゃんサヨナラだぞ?」

姫宮「……へ?」

傭兵「ほらほらウチューッ!」

姫宮「い、嫌ぁッ!」

傭兵「……?」

蒼頭「何をやっておるかッ!」

傭兵「へ?あ?……別れの挨拶だけど」

召喚士「………」

蒼頭「貴様……己がいた国の姫の顔を忘れたのかッ!」

傭兵「姫……え?」

蒼頭「………」スゥ……

傭兵「ままま待て!これ本物の女王なのかッ!?」

蒼頭「本物も偽物も無かろうがッ!」バッ!

傭兵「本当に

蒼頭「ハァァァァァッ!」ズガッ!

傭兵「」ズダン!

召喚士「………」

蒼頭「愚か者が……」

召喚士「うん……蒼頭さ」

蒼頭「……何で御座ろうか?」

召喚士「この人……一回なパイアをお姫様と間違えて捕まえようとした事があったんだよ……」

蒼頭「………」

召喚士「だからパイアとお姫様を間違えてただけだと思うんだ……」

蒼頭「………」

召喚士「………」

蒼頭「へへへ兵士殿!すみませぬ!」ユサユサ!

傭兵「」

蒼頭「あぁぁ……某なんて事を!兵士殿!兵士殿!」

召喚士「………」

姫宮 (盗賊と間違えてたんだ……でも何でキスしようとしたんだろ……)



召喚士「重……」

蒼頭「あぁぁ……起きたらなんと言えば……」

召喚士「取り合えず宿屋連れてくけど……あのままに出来ないし」

蒼頭「そうですな……」

姫宮「……ねえ蒼頭?」

蒼頭「なんで御座ろうか?」

姫宮「あの場所で座って何してたの?」

蒼頭「あれですか……あの場所から見た風景が某の故郷に似てる故、ただ思いに耽っていただけで御座ります……」

姫宮「……そうなんだ」

蒼頭「かの山々、鮒を釣りし川などありまして某は忘れる事の出来ない故郷で御座いますな」

姫宮「………」

蒼頭「父上、母上はお変わり無く暮らしているだろうか。故郷の友はどうしているだろうか……」

姫宮「……蒼頭の家族」

蒼頭「某の願い必ず叶えいつか帰ろうと……」

召喚士、姫宮「………」

蒼頭「青々とした山がある故郷へ……澄し清浄の川が流れる故郷へ……そのような事を考えておりました」

召喚士「……何かいいな故郷」

姫宮「うん……」

召喚士「俺のは町外れの一軒家だけど……」

姫宮「私のはデッカイお城だけど……」

蒼頭「………」

姫宮「……蒼頭は願い叶えちゃったんだよね?」

蒼頭「はい……」

姫宮「なら故郷に帰っちゃうの……?」

蒼頭「そのつもりでおりまする……」

姫宮「そっか……」



剣士「………」

喚起士「………」

ネメア「どうするのだ?」

剣士「どうすればいいかわかんねえんだよ……」

ネメア「そうか……そうだな……」

剣士「てめえの野心の為にこんな事するなんてよ……」

喚起士「貴方は魔喚士と言う方はご存じなんですか?」

剣士「知らねえ……俺が家を飛び出した後に親父の所に来たんじゃねえかな……」

喚起士「そうですか……」

ジノ (確かにこれは……お姫様と蒼頭いたら話せないよね。まさか将軍って言うのが剣士の親だなんて……)

剣士「………」

ネメア「……剣士よ」

剣士「ああ……?」

ネメア「迷うならば、お前は行かなくてもいい」

剣士「……でもよ!」

ネメア「お嬢を守るのだろ?そう約束をしたのだろ?」

剣士「………」

ネメア「恐いか?」

剣士「ああ……恐えよ。あの親父、自分の為なら何でもやりやがるからな……」

ネメア「……それでもお前が将軍を止めるべきだと私は思うがな」

剣士「………」

ネメア「………」

剣士「身内の始末はって訳かい……」

ドンドンドンッ!

喚起士「何方ですか?」

……「あ、開けてください!」

喚起士「召喚士さん何を急いで……」

カチャッ



召喚士「はぁはぁ……腰痛い……」

蒼頭「……あれしきの事でだらしがないですぞ!」

召喚士「じゃあお前が背負えばよかっただろ!お前がやったんだから!」

蒼頭「それはそれでは御座らんか……」

喚起士 (蒼頭さんを連れて来た時もこんな感じでしたね……)

剣士「誰だいそいつ?」

召喚士「この国の兵士だよ。もう元かな?」

喚起士、剣士「ッ!」

召喚士「……?」

剣士 (す、凄えな……いきなり城の内部者連れて来るなんて……)

喚起士 (なんて事ですか……)

召喚士「喚起士さんとパイアは会った事ありますよ」

喚起士「……え?」

召喚士「あのパイアとお姫様を間違えた兵士ですよ」

喚起士「あの方なんですか!」

召喚士「はい、それでなんか兵士やめて田舎に帰る途中だったみたいですけど……」

喚起士「……その兵士さんが何故こんな事に?」

召喚士「まぁ……誤解ですよ」

蒼頭「あああああ……」

剣士「お前また勘違いしたのかよ……」

蒼頭「……仕方あるまい。まさかお子と以前に会っていおうとは思わなかった故」

喚起士「こう言っては何ですが……丁度良かったかもしれませんね」

蒼頭「何故で御座ろう?」

喚起士「今の谷の国の城の内部がどうなっているか聴けるかもしれませんし」

蒼頭「なるほど……」



傭兵「……う」

蒼頭「……兵士殿」

傭兵「あ……お前さんか……イテテ」

蒼頭「申し訳無かった……誤解でその……」

傭兵「………」

蒼頭「………」

傭兵「……謝るならふざけるな」

蒼頭「ふざけてなどいませぬ!」

傭兵「ならその頭の物はなんだ」

蒼頭「これは……某が顔を隠していた理由で御座ります……」

傭兵「ああ?そんな玩具付けてる事がか!?」グイッ!

蒼頭「玩具などイタタタッ御座らん!」

傭兵「……あれ?」グイッグイッ……

蒼頭「引っ張らないでくれんか……」

傭兵「………」

蒼頭「………」

傭兵「……本物か?」

蒼頭「本物で御座ります……」

傭兵「わかった……」

蒼頭「何がわかったので御座ろうか……」

傭兵「……謝らなくていいからピョンって言え」

蒼頭「………」

傭兵「………」

蒼頭「御断り致す」

傭兵「あああ?人殴っといて!」

蒼頭「だから謝ったでは御座らんか……」

傭兵「なら!ピョンって言ったら許す」

蒼頭「御断り致す……」



傭兵「………」

姫宮、盗賊「………」

傭兵「お前……これは誰でも間違えるぞ……」

蒼頭「そのような事は無いで御座ろう!貴様は忠誠心が足りないんだ!」

召喚士「蒼頭さ……お前は人の事言えないだろ」

傭兵「しかしまぁ……何故女王といるのかは聞かないでおいてやるよ。もう俺には関係無い事だからな」

蒼頭「………」

傭兵「そんな顔するなよ。別にもう会えない訳じゃないだろ?」

蒼頭「それは……そうなればいいな……」

傭兵「あん?どう言う事だ?」

喚起士、剣士「………」

蒼頭「実はな……某達は……」



傭兵「国を救うって……」

蒼頭「………」

傭兵「無理だろ……」

蒼頭「こちらにも色々事情がある」

傭兵「だからってよ……そうか、誰か強力な後ろ楯がいるんだな?」

喚起士「いえ……ここにいる者だけです」

傭兵「………」

喚起士「言いたい事はわかります……ですが……」

傭兵「それ以上言わなくていい。巻き込まれたく無いからな」

喚起士「………」

傭兵「ん……お前さんは俺と会った事あるか?」

剣士「俺か?ねえけど?」

傭兵「そっか?俺の勘違いか……」

喚起士「お話だけでも聞いて貰えませんか……聞きたい事があるんです」

傭兵「………」

蒼頭「兵士殿……」

傭兵「もう兵士は止めたんだ。傭兵でいい」

蒼頭「なら傭兵殿……この頼み某の顔を立て聞いて貰えんか?」

傭兵「はぁ……何が聞きたいんだ?」

蒼頭「……傭兵殿有難う」

傭兵「いいよ。お前さんの顔……いや、世話になったからな」

蒼頭「……?」

喚起士「……では、今、お城はどのような状態にあるのですか?」

傭兵「戦争しようとしているとしか言いようが無いな。あれは」

喚起士「噂は本当だったみたいですね……」

傭兵「……噂は?やっぱ周りの村にまでそれは広がってたかい?」

喚起士「はい……」

傭兵「そうかい……」

喚起士「進軍しようとしているのですよね?なら……かなりの兵力がお城にいるのですか?」

傭兵「ざっと千くらいかな」

剣士「少なくねえか?」

傭兵「今、城にいるのだけだ。大将自身の軍隊も後から合流するらしい」

剣士「なるほど……大将ってのは将軍か?」

傭兵「ああ。……そうか!お前大将に似てるな。それで見た事あると思ったのか」

剣士「………」

蒼頭「喚起士殿どう致す?」

喚起士「兵士もろとも強行突破……とはいきませんよね……」

蒼頭「城にいる兵士達を外へ誘き出せればよいが……」

剣士「その隙にってか?無理だろ……」

蒼頭「地下から行けば城の中に入り込めるがな」

喚起士、剣士「………」

蒼頭「何で御座ろうか?」

喚起士「……そんなものがあるんですか?」

蒼頭「姫と逃走を図る時に使いましたな」

姫宮「私は知らないけど……」

蒼頭「それは姫様は気を失っていた故」

姫宮「そうなんだ……」

剣士「お前そう言うのは早く言えよ……」

蒼頭「聞かれなかった故……」

喚起士「……そうなると色々作戦が立てやすくなりましたね」

剣士「例えば何だ?」

喚起士「例えば……」



召喚士 (暇だ……話に入れないよ……)

ネメア「………」

召喚士 (何か無いかな……)

盗賊「………」

召喚士「………」にや……

盗賊「………」

召喚士 (紙を丸めて……よし!)ポイッ

盗賊「………」

召喚士 (パイアの頭に命中!十点ゲット!)ポイッ

盗賊「………」

召喚士 (肩に当たったから……五点!五点ゲットだ!)ポイッ

盗賊「………」イラッ……

召喚士 (おほほッ!鼻に命中だから二十点!)

盗賊「………」

召喚士 (次はッ!)

盗賊「………」カバッ!

召喚士「なななな何だよパイア!」

盗賊「………」グバッ!

召喚士「は、離せ!服引っ張るな!」

カチャ!バタンッ!

……「ひぃぃぃや、やめろ!」

……「………」

……「たたた助けてくれぇぇッ!」

……「………」

……「髪の毛むしらないでくれぇぇッ!」

蒼頭、剣士「………」



喚起士「何方かが陽動し城の兵士達を外へ誘き出す……とか」

蒼頭「なるほど」

傭兵「向こうは放っておいていいのか?」

剣士「大丈夫だろ。髪の毛何だかって言ってたがよ今さら生える訳じゃねえし」

喚起士「………」

蒼頭「ならばその役目、某が承ろう」

喚起士「まだこれと決まった訳では……」

傭兵「本当に城に乗り込むつもりなら早くした方がいいかもな」

喚起士「何故でしょう?」

傭兵「明日進軍するらしいからな」

喚起士「……明日だなんて」

剣士「進軍しちまったら手を出せなくなるぜ……」

喚起士「………」

蒼頭「やはり某が承ろう」

喚起士「……いえ、蒼頭さんがいくら素早く動けるとしても1軍隊を相手になんて」

蒼頭「………」

剣士「じゃあ俺だな!」

喚起士「私が引き受けようかと思います」

剣士「お前は仇を伐つのに力を温存しておかねえとマジイだろうが」

喚起士「貴方も同じの筈です……」

剣士「……だがよ」

喚起士「………」

剣士「………」

蒼頭「………」

ネメア「ならばその役目、私がやろう」

傭兵「……?な、なんだ?他に誰がいるのか?」

喚起士「ネメア……」

ネメア「構わぬ。この人間に聴かれても害は無いだろう」

傭兵「……なんだよこれ」

蒼頭「なんと説明すればよいか……」

剣士「気にすんなよ」

傭兵「気になるわ!」

喚起士「……私達は魔物に力を借りています。それがこの声の主なんです」

傭兵「………」

蒼頭「傭兵殿……某も魔物なのですぞ……」

傭兵「………」

ネメア「話を戻すが、私と召喚士とで城の兵士達を引き付けよう」

喚起士「ですが……」

剣士「確かに召喚士なら大丈夫そうだけどよ……」

喚起士「もしもの事が召喚士さんにありましたら……」

ネメア「大丈夫だ。実はなお前に隠していた事がある」

喚起士「隠していた事……ですか?」

ネメア「私と召喚士はかなりの時間召喚術が使える」

喚起士「まさか……そんな事召喚士さんでも……」

ネメア「本当に出来たのだ。これならば大丈夫だと思わないか?」

喚起士「確かにそうですが……」

ネメア「なら決まりだ」

剣士「……そんなに凄えのか?その召喚術ってのは」

喚起士「私の知る限りネメア程の召喚獣を従えて召喚術が使える方はいません……」

剣士「召喚士……やっぱ凄えんだな……」

ネメア「一度見せた方がいいか?」

喚起士「そうですね……」



召喚士「………」

盗賊「………」バッ!

召喚士「ひぃぃぃ……悪かったからもうやめてくれ……」

カチャ

剣士「召喚士……ッ!おおおおお前!」

召喚士「グスッ……」

剣士「………」

姫宮「髪の毛が……」

盗賊「………」

剣士「やり過ぎだぜ……盗賊よ……」

盗賊「………」バッ!

剣士「誉めてねえから……」

ネメア「何をしているんだ。早く外へ……」

喚起士「………」

ネメア、剣士「………」

召喚士「そんな哀れんだ目で見ないでくれよ……」

ネメア「……ま、まあそれは置いておき。やるぞ召喚士よ」

召喚士「……なにを?」

ネメア「召喚術をだ」

召喚士「お断り致すで御座る」

蒼頭「………」

ネメア「いいからやるんだ!」

召喚士「やる必要が無いじゃないか……」

ネメア「ある。これよりお前は千近い兵士達を相手にするのだから」

召喚士「……なにそれ」

ネメア「それとも私と別々で相手にしておくか?」

召喚士「喚起士さん……ネメアが何か訳のわからない事を……」

喚起士「………」フイッ……

召喚士「剣士、ネメアが……」

剣士「………」フイッ……

召喚士「蒼頭、お姫様……」

蒼頭、姫宮「………」フイッ……

召喚士 (な、なんで誰も目を合わせてくれないんだ……?)

喚起士「……もし召喚士さんが召喚術を使えるのら私に見せて頂きたいです」

召喚士「なら目を……」

喚起士「出来ませんッ!」

召喚士「な、何故です?」

喚起士「………」

召喚士「………」

喚起士「蒼頭さん……これから人気の無い場所へ案内して頂けますか?」

蒼頭「わかり申した」

召喚士 (何かあったのか?……何か俺を見られない程の重要な何かが……)

剣士 (流石に鳥の巣みたくなってる髪を直視出来ないよな……)



召喚士「マジでやるの……?何でやんなきゃいけないの?千近い兵士達ってなんの事?」

ネメア「成功したら話してやる」

召喚士「失敗したら聴けないじゃないか……」

ネメア「いいからやれ!生身の体で私の影に隠れ戦うよりいいだろう?」

召喚士「そうだけどさ……」

剣士「召喚術ってのはよ……どうなるんだ?」

喚起士「召喚士さんとネメアが融合します……」

剣士「へぇ……で?」

喚起士「……多分誰も召喚士さんに勝てなくなります」

剣士「そんなにかよ……」

喚起士「今から召喚士さんが行う召喚術と言うのはそれ程の事なんですよ」

蒼頭「………」

召喚士「やるけど……」

ネメア「うむ」

召喚士「……解放と同調織り成す時……うつし世の波声を聞きし幻想の者よ……」

ネメア「………」

召喚士「我が身中に降臨しせりッ!」

ネメア「………」

召喚士「………」

……ゥゥ

喚起士「なんて事……」

ズバァァァァァァアッ!

召喚士「……出来た?」

ネメア「異常無しだ」

喚起士「本当に……凄い……」

剣士、蒼頭、姫宮「ッ!?」

剣士「あ……ああ……」

蒼頭「なんと……」

召喚士「……なに?」

喚起士「この凄さ……蒼頭さん達にもわかりますか……」

姫宮「喚起士……そうじゃなくて……」

喚起士「そうじゃなくて?」

剣士「し、召喚士よ……ああ頭……」

召喚士「言うなよ……今は気にしたくもないんだから……」

剣士「違えってッ!髪の毛生えてんだよ!」

召喚士「……は?」バッ!

剣士「………」

召喚士「………」さわッ!さわッ!

剣士、蒼頭、姫宮「………」

召喚士「う……うおおぉぉぉぉおッ!俺の髪の毛が戻ったぁぁぁッ!」



召喚士「ぐうぁ……ひぐっうぅ……」

ネメア「泣く程の事か……」

召喚士「だってぇぇ……だってぇぇさぁ……」

蒼頭「………」バッ……

剣士「ま、そうだよな……」バッ……

召喚士「……?」

喚起士「お二人とも恐らく無駄だと思いますが」

剣士「そう言われると余計に試したくなるよな蒼頭よ」

蒼頭「そうだな」

召喚士「なななな何!?棒なんか構えて!」

剣士「ん?手合わせをしようかなってな」

召喚士「………」

ネメア「お前は以前相手したのだからわかるだろ」

剣士「……それでも試したい。わかるだろ?」

ネメア「そうか。ならば棒などではなくそれを使え」

剣士「……いいのか?」

ネメア「構わぬ」

召喚士「構えよ!」

ネメア「全力で来い。蒼頭も遠慮はいらんぞ?」

蒼頭「わかり申した」

ネメア「………」

召喚士「お、おいおい!ネメア!」

ネメア「心配をするな。大丈夫だ」

召喚士「するわ!どこら辺が大丈夫でどう言う風に大丈夫なのか細かく説明しろ!」

ネメア「面倒な奴だ……。いいか?お前は私を召喚すると言う真の意味を知るべきだと思うから申し出を受けたのだ」

召喚士「真の意味をって……ネメアを召喚したらネメアの力を使えるだけじゃないの?」

ネメア「お前はその力が何なのかわかっているのか?」

召喚士「強くなったりとか?早く走れたりとか?」

ネメア「そんな物では無い。私はな何者にも負けぬ……」

蒼頭「ハアァァァァッ!」ザッ!

剣士「二人がかりだがハンデと思って相手してくれよッ!」ザッ!

召喚士「ひぇぇぇ!どどどど」

ネメア「落ち着け。このまま防がず攻撃を受けよ」

召喚士「はぁぁぁ!?い、いやあ!」

ズガァッドスゥッ!

剣士、蒼頭「………」

召喚士「痛い痛い痛い死ぬから!」

ネメア「だから落ち着け、本当に痛いのならもう死んでいる」

召喚士「……え?……あれ?」

蒼頭「顔面で某の刀を受けるとは……」

剣士「かぁー!やっぱ駄目か。俺もちっとは強くなってると思ったんだがよ」

召喚士「………」



傭兵「なんだよこれ……」

盗賊「………」

傭兵「俺は夢でも見てるのか……なぁ嬢ちゃん……」

盗賊「………」

傭兵「………」

盗賊「……殴っとく?」

傭兵「それは遠慮しとくぜ……」

盗賊「そう……」

傭兵「嬢ちゃんは人間……だよな?」

盗賊「違う」

傭兵「……そっか」

盗賊「………」

傭兵「巷じゃ魔王とか騒いでるが……人間じゃあ無いのが普通に側にいるものなんだな……」

盗賊「………」

傭兵「そう言うのは本当……他人事だと思ってたわ……」

盗賊「………」

傭兵「……ここにいるのみんな魔物じゃ無いよな?」

盗賊「3.5人は人間……」

傭兵「……?点5はなんだい……」

盗賊「………」

傭兵「………」

盗賊「………」

傭兵「言わなくていいよ。俺が知る必要も無いからな……」

盗賊「………」コクッ

傭兵「………」



召喚士「……どう言う事?」

ネメア「これが私の力だ」

召喚士「痛くないのが?」

ネメア「違う……何者にも負けぬ防御力がだ」

召喚士「………」

ネメア「私を召喚すると言う事はそれを手にする事が出来る事だ」

召喚士「何か地味だな……」

ネメア「貴様!地味とは失礼なッ!」

召喚士「だってさぁ……手から光線とか出せた方がかっこいいじゃん……」

ネメア「お前はどれ程の事なのかわかって無いな……」

召喚士「なんか期待して損した気分だよ……」

ネメア (この馬鹿がぁぁ……今に見ておれ……)



蒼頭「……剣士よ」

剣士「あ?なんだ?」

蒼頭「某は弱いだろうか……」

剣士「そんな事ねえだろ。ははぁ、さてはお前自信無くしちゃったの?」

蒼頭「某は本気で斬り込んだんだぞ……。それを意図も容易く……しかも顔面で……」

剣士「召喚士とネメアが異常なだけだぜ。気にすんなよ」

蒼頭「………」

剣士「多分あれで……半分も力使ってねえんじゃねえかな……」

蒼頭「………」

剣士「召喚士動いてねえし……」

喚起士「お二人の攻撃に対して何も防御反応を起こしてない……と言うのも凄いですね」

蒼頭「確かに……腕で防ぐなり何かしらの反応も無かった……」

喚起士「余程ネメアを信頼していなければ出来ない事でしょう……」

蒼頭「なるほど……」

ジノ (それってただボーっとしてただけだと思うけど……事実を知ったらみんなどんな反応するかね……)

剣士「もういっちょ頼んでみるか?」

蒼頭「やめておこう……実力が違い過ぎて某の自信が砕けそうだからな……」

剣士「そうだな……」

ジノ (……言いたい。凄く言いたい!)

喚起士「ジノ……召喚士さんはあれで平気なんでしょうか……」

ジノ「んへ?……大丈夫だよ!」

喚起士「もしかして無理をして召喚術を……」

ジノ「それは無いから大丈夫だよ……」

喚起士「何故わかるんです?」

ジノ「まぁ……ちょっとね」

喚起士「……?」

盗賊「………」

ジノ「パイア?」

盗賊「………」クイクイッ

剣士「お?」

蒼頭「……やるのか?」

盗賊「ネメア兄……」

ネメア「なんだ?」

盗賊「………」ババッ!

召喚士、ネメア「………」

盗賊「………」

ネメア「無駄だやめ

召喚士「こおぉぉい!パイアッ!貴様の拳受けてやるッ!」

ネメア「………」

召喚士「ふふふッ!」クイッ

盗賊「………」バッ!

ズガッ!ググッ……

召喚士「ふはははっパイアよそんなものかぁッ!」

盗賊「………」

ネメア「………」

召喚士「貴様の拳ごときでは我に傷をおわす事など不可能なのだよッ!」

盗賊「………」ザッ!

召喚士「無駄ぁぁぁぁッ!」

ネメア「……解除する」

召喚士「あははははッ!……は?」

ズドムッ!!ヒュゥ……

盗賊「………」

剣士「凄え吹っ飛んでったけど……」

喚起士「あれでも無傷でしょう……」



剣士「悪りけどよ、先帰っててくれや」

喚起士「それは構いませんが……何故です?」

剣士「あれだ、さっきのでちょっとな」

喚起士「……はぁ?」

姫宮「蒼頭?」

蒼頭「某も残ります故……」

姫宮「………」

喚起士「……無茶はしないでください」

剣士「おう」

喚起士「姫宮さん行きましょう」

姫宮「でも……」

喚起士「いいですから」

姫宮「うん……」



剣士「あんなん見せられたら……静かになんかしてらんねえよな」

蒼頭「うむ……」

剣士「……ほれ棒」ポイッ

蒼頭「………」

剣士「どうした?受け取れよ」

蒼頭「………」カチャッ……

剣士「……そうだな。そっちの方がいいか」

蒼頭「行くぞ……」

剣士「ああ、来いよ」チャッ……

シャッ!ガギッギギッ……

剣士「………」

蒼頭「ぬあああッ!」ガッ!

剣士「おっと……そんな殺気立ってんだ?」

蒼頭「……悔しさを晴らす為」



喚起士「ジノ……召喚士さんは本当に何者なのでしょうか……」

ジノ「………」

喚起士「先程の言いかけた事は……それですか?」

ジノ「そう。でも、喚起士は知らない方がいいかもね」

喚起士「………」

ジノ「そんな顔で見ないでよ……言わないといけないような感じになっちゃうじゃん……」

喚起士「……もしかして召喚士さんは人間では無いんですか?」

ジノ「ん……半分当たりかな」

喚起士「半分……?」

ジノ「はぁ……喚起士」

喚起士「はい……」

ジノ「教えてあげるけど……絶っっっっ対に召喚兄さんに言っちゃ駄目だよ?」

喚起士「わかりました……」

ジノ「召喚兄さんね……ゴニョゴニョ……」

喚起士「………」

ジノ「………」

喚起士「ふ」

ジノ「……?」

喚起士「ふふふふ今のはジノの冗談の中で一番面白いですよ!」

ジノ「……本当だけど」

喚起士「………」

ジノ「別に信じなくていいよ。本当あり得ないもんね……」

喚起士「………」

ジノ「………」

喚起士「………」

ジノ「召喚兄さんと接する時は普通にしてね喚起士。例えアレでも!」

喚起士「はい……」



召喚士「ねぇ……」

ネメア「なんだ?」

召喚士「何で木の上にいるの……?」

ネメア「どこぞの馬鹿が調子に乗ってパイアの一撃をモロに喰らったからだな」

召喚士「そっか……後さ、凄い体が痛いんだけど……」

ネメア「どこぞの馬鹿が調子に乗ってパイアの一撃をモロに喰らったからだな!後、召喚術の後遺症?か」

召喚士「そっか……」

ネメア「………」

召喚士「あのさ……どうやって降りよう……」

ネメア「知るか」

召喚士「………」

ネメア「日が暮れるな。ここからの景色は中々に良いものだ」

召喚士「……んぐぐ」

ネメア「はぁ……出るぞ」

召喚士「はえ?」

バシュンッ!

召喚士「うおッ!おあああッ!」

バキバキバキッ!トスン……

ネメア「今日だけ特別だ」

召喚士「ナイスキャッチ……助かったよ……」

ネメア「………」

召喚士「ネメア……千近い兵士達って何の事だったの?」

ネメア「恐らく明日早く城に突入をする。それで私達は外で陽動し城の兵士達を外に誘き出す」

召喚士「………」

ネメア「その兵士達が千近くいるからそう言ったのだ。わかったか?」

召喚士「わかったけど……俺とネメアと後誰?」

ネメア「私とお前だけだ」

召喚士「……は?千対二?」

ネメア「そうだ」

召喚士「いや……無理

ネメア「先程、私の力を見せただろうが……無理では無い」

召喚士「………」

ネメア「うまい事誘い出さねばな……」

召喚士「喚起士さん達は……?」

ネメア「何やら地下道があるらしい。そこから城へ潜り込む寸法だ」

召喚士「みんなでそこから……」

ネメア「もう決まった事だ。諦めろ」

召喚士「………」



蒼頭「ツアアアァァッ!」バッ!

シュッガギッ!

剣士「……早くてもよ……そう殺気だされたらな」

蒼頭「ぐうぅぁ!」

剣士「かわしやすいし……よっ!」バッ!

蒼頭「………」

剣士「なんなんだよ。そんなに召喚士斬れなかった事が嫌だったか?」

蒼頭「………」ザザッ!

ガギンッ!ギリギリ……

剣士「落ち着けって。そらよッ!」

ガッ……パシン……ヒュンヒュン……

蒼頭「しまったッ!」

剣士「止めだぜ!」ブワッ!

蒼頭「……ッ!」

ガサガサッ……

剣士「……やべっ蒼頭避け

蒼頭「………」バッ……

バシッ……シャッ!

剣士「………」

蒼頭「………」

剣士「な、なんだこれ……何で……」

蒼頭「………」

剣士「何でお前が俺の剣持ってんだ……」

蒼頭「………」

剣士「参った……首筋から剣退かしてくれよ……」

蒼頭「………」ザッ……

剣士「今のはなんだよ……お前の刀を払ってお前を斬る寸前で……」

蒼頭「……無刀取り」

剣士「今の技がそれか?」

蒼頭「………」

ネメア「お前達まだいたのか」

剣士「あ?ネメアか……お前のせいで蒼頭斬りそうになったぜ!」

ネメア「はぁ?」

蒼頭「……剣士、某は先に戻る」

たたた……

剣士「お、おい!待てって……なんだよ……」

ネメア「……何かあったのか?」

剣士「いや……ん、まぁな」

ネメア「……?」

剣士「よくわかんねえけどよ、あいつ召喚士相手してから殺気立ってよ……」

ネメア「ふむ……」

剣士「……そうだ!あいつ今凄え技やったんだぜッ!斬ったと思ったら剣取られてこっちの首筋に当てるのッ!」



蒼頭「ば、馬鹿かあいつはッ!」

蒼頭「普通稽古なのだから寸止めするものだろうにッ!」

蒼頭「あああああ……まだ膝が震えて……」

蒼頭「防ごうと腕を出したら偶然……」

蒼頭「出来て良かった……無刀取り……」

蒼頭「こんなものは作り話だとばかり思っておったが……本当に出来るものなのだな……」

蒼頭「………」

蒼頭「早く戻り……あがが……下着を変えねば……」

蒼頭「うぅぅ……某が漏ら……」

蒼頭「………」



喚起士「あの……召喚士さんは?」

ネメア「剣士が寝かせに行った」

喚起士「大丈夫でしょうか……」

ネメア「平気だ。そうでも無くとも無理矢理召喚術を行うから心配するな」

喚起士「そうですか……」

カチャ

剣士「待たせたな」

姫宮「あれ?蒼頭は?」

剣士「んあ?先に帰ってきてないのか?」

姫宮「見てないけど……」

剣士「………」

ネメア「蒼頭にも思う所があるのだろう。そっとしておけ」

剣士「そうだな……」

ネメア「……喚起士よ、いつ城に忍び込む?」

喚起士「明朝と思っています」

剣士「夜のうちのがいいんじゃねえのか?」

喚起士「それも考えましたが……明朝ならば進軍の準備も進んで場内にいる兵士の数も少しは減っているのではと」

剣士「なるほど……けどよ明るいと見付かるもの早くなるよな?」

喚起士「……覚悟してください」

剣士「そう言う事か。わかったぜ」

喚起士「あと、私達の目標は魔喚士と将軍ですからそれ以外の戦闘は出来るだけ避けるのもお忘れなく」

剣士「そううまくいけばいいな……」

喚起士「はい……」

ネメア「………」



召喚士「痛いよぉ……ポンポン痛いよぉ……」

カチャ……

蒼頭「………」ソゥ……

召喚士「……?」

蒼頭「うぅぅ……死の瀬戸際に立たされると生ける者の行動が如実に出ると言うが……」

召喚士「……?」

蒼頭「……驚愕しチビってしまうとは……ああああああ」

召喚士「………」

蒼頭「不覚……このような姿」ピタッ

召喚士「………」

蒼頭「………」

召喚士「………」

蒼頭「いつからいた……」

召喚士「蒼頭が部屋に入って来る前から……」

蒼頭「そうで御座りますか……」

召喚士「………」

蒼頭「………」

召喚士「お前漏ら

蒼頭「ぎゃらはなたぁかざなかじゃッ!!」

召喚士「………」

蒼頭「………」

召喚士「漏ら

蒼頭「ぐぁばぎぁがならッ!!」

召喚士「………」にや……

蒼頭 (そ、そんな悪代官のような顔を……)

召喚士「………」

蒼頭「………」ガタガタ……

召喚士「……蒼頭さ」

蒼頭「どどどどどうかッ!それだけは御勘弁を!」

召喚士「へ?」

蒼頭「某はまだ経験が無い故ぇッ!では無くそう言うものは愛を通じた殿方とッ!」

召喚士「………」

蒼頭「無理矢理にでもと申すなら!この場で舌を噛み切って自害する事もぉぉぉッ!」

召喚士「……あのさ」

蒼頭「………」グッ……

召喚士「今夜ネメアを預かってくれよ」

蒼頭「父上母上!先立つ……は?」

召喚士「黙っててやるからネメアを預かってくれって」

蒼頭「……そのような事で良いのですか?」

召喚士「うん」

蒼頭「何故に?」

召喚士「ちょっとね……」にや……

蒼頭 (また悪代官のような顔を……)

召喚士「………」

蒼頭「わかり申した……」

召喚士「頼んだよ」

蒼頭「………」

召喚士 (これは面白い事になりそうだなぁ……。ネメアも喜ぶ、寝る時は煩いネメアがいない……一石二鳥!流石俺!うふふふ……)

蒼頭 (てっきり手込めにされるものかと思ったが……流石練達の士と言う訳で御座りますか……)

召喚士 (あぁ、後ネメアをからかえるなぁ……)

蒼頭 (あーれー……とか!お止めくださいお代官様……とか!言う羽目にならず本当に良かった……)



召喚士「……zzz」

剣士「凄えな召喚士……明日死ぬかもしれねえのによく寝れるわ……」

盗賊「………」

剣士「……なあ盗賊よ」

盗賊「なに?」

剣士「人間ってよ……死んだらどうなるんだ?」

盗賊「………」

剣士「恐えんだよ……死ぬ事もそうだけどよ……」

盗賊「………」

剣士「死んだらそこで終りって言うのもな……頑張って生きてきて何もかも終りじゃ……」

盗賊「……大丈夫」

剣士「………」

盗賊「死の先にも道はあるから……」

剣士「そっか……」



姫宮「………」ゴソ……

喚起士「眠れませんか?」

姫宮「うん……」

喚起士「明日は……長い日になりますので少しでも寝ておいた方が……」

姫宮「喚起士……」

喚起士「はい?」

姫宮「ごめんね……」

喚起士「………」

姫宮「こんな事に……」

喚起士「いえ、謝らないでください。……正直なところ私は感謝してるんです」

姫宮「……感謝?」

喚起士「………」

姫宮「………」

喚起士「もし今のような事になっていなかったら……何も出来ないまま無駄に時間を過ごさねばいけなかったかもしれないんです……」

ジノ「……そうだよね。本当……」

姫宮「………」

傭兵「………」

喚起士「さあ眠らないと!明日は頑張らないといけませんし!」

姫宮「うん……」

喚起士「ところで、蒼頭さんは?」

姫宮「ちょっと……」

喚起士、ジノ「……?」

姫宮「………」

ジノ「……何か隠してるね?」

姫宮「……うぅ。内緒だからね?秘密だよ?」

ジノ「オッケー……で、何?」

姫宮「蒼頭とネメアが……お互い好き同士なんだって……」

ジノ「うそぉ?……いや、思い当たる節があるかも……」

姫宮「やっぱりあるんだ……」



ネメア「召喚士はどう言うつもりで私をお前に預けたのだ……」

蒼頭「さ、さあ……何故で御座ろうな」

ネメア「まあいい。馬鹿の側で眠るよりいいだろ」

蒼頭「………」

ネメア「なんだ?悩みか?」

蒼頭「ネメア殿……某は弱いで御座ろうか?」

ネメア「………」

蒼頭「あの時、召喚士殿に傷ひとつ付けられず……」

ネメア「蒼頭よ、それは当たり前の事なのだ」

蒼頭「当たり前……?」

ネメア「トヴェルグが私の毛皮を欲しがったのを覚えているか?」

蒼頭「はい……」

ネメア「何故欲しがったのか……それはな神殺しの武器と対極にある物を造りたかったからだ」

蒼頭「………」

ネメア「神の攻撃をも退ける防具をな」

蒼頭「……それがネメア殿の毛皮をで出来ると?」

ネメア「そうだ。私を召喚する事で召喚士はそれを手に入れた」

蒼頭「………」

ネメア「ここまで言えば……お前ならわかるな?」

蒼頭「はい……」

ネメア「だから気を落とす事は無い。恐らくだが……この世で私に傷を付けられる者などいないのだから」

蒼頭「わかり申した……」

ネメア「ふむ」

蒼頭「……ならばネメア殿は無敵なので御座ろうか?」

ネメア「……そうでも無い。一度人間に倒されている」

蒼頭「なんと……」

ネメア「ふふ……弱点を突かれてな」

蒼頭「………」

ネメア「わかるか?私の弱点が何なのか」

蒼頭「いいえ……神の攻撃も効かない毛皮で覆われて弱点などあるのですか?」

ネメア「ある。首を絞められ倒された。その後私は今のお前のように……」

蒼頭「………」

ネメア「……蒼頭よ、だからな」

蒼頭「ネメア殿それ以上は結構で御座ります」

ネメア「そうか……」

蒼頭「わざわざ御自分の弱点を某に……ネメア殿に気を使わせてしまいました……」

ネメア「………」

ーー

蒼頭「……ここからなら城の周りが見渡せるかと」

剣士「おうおう居るなぁおい。あの数じゃ見廻り……なんて事は無いよな」

喚起士「それにあの装備やらですからね……」

姫宮「………」

ジノ「お姫様大丈夫だって!」

姫宮「うん……」

召喚士「……マジでやるの?」

ネメア「そうだ」

召喚士「……イタタタッお腹痛い!だからッ!」

ネメア「やめるか?私は構わんが……お前は喚起士や剣士、蒼頭、お嬢を見てそんな事を言えるのか?」

召喚士「………」

ネメア「覚悟を決めろ。もうここまで来たら止まる事は無いのだからな」

召喚士「あああ……」

剣士「召喚士よ……」

召喚士「何?」

剣士「………」

召喚士「……?」

剣士「手を見せてくれよ」

召喚士「良いけど……」パッ

剣士「………」パシッ

召喚士「………」

剣士「こんな人を殴った事も無いような手で……俺より強えんだもんな……」

召喚士「………」

剣士「見てくれよ俺の手を。こんなゴツゴツしてよ……まだ弱えんだぜ?」

蒼頭「剣士よ……」サッ

剣士「………」

蒼頭「某はお前の手……好きだぞ」

剣士「………」

蒼頭「努力を積み重ねた綺麗な手だ。某はそう思う」

剣士「………」

蒼頭「某の手は……」

喚起士「蒼頭さん……」サッ

蒼頭「………」

喚起士「蒼頭さんの手……白くて細長くて綺麗な手ですね」

蒼頭「………」

喚起士「この手から素早い刀撃を繰り出すのですから……本当凄いです……」

蒼頭「………」

喚起士「………」

ジノ「ほら!お姫様も手を乗っけて!」

姫宮「え?あ、うん!」サッ

剣士、蒼頭、喚起士、姫宮「………」

召喚士「おお……あえうぅ?」

ネメア「皆、お前の言葉を待っている。気のきいた言葉をかけてやれ」

召喚士「………」

剣士、蒼頭「………」

喚起士、姫宮「………」

召喚士「あ、あのさ……頑張ろう……」

ネメア「なんだそれは。他に言いようが

召喚士「ごめん……ちゃんとやるから」

ネメア「………」

召喚士「はぁ……よし」

ネメア「………」

召喚士「みんなさ……俺と約束してくれるかな……死なないって……」

召喚士「もしかしたら……これから痛い思いをするかもしれないけど……」

召喚士「………」

召喚士「その時は俺が絶対助けに行くから……」

召喚士「ごめん……俺じゃこれくらいしか言葉が出てこないや……」

剣士、喚起士、蒼頭、姫宮、傭兵「………」

召喚士「本当ならもっと格好いい事言った方がいいと思うんだけどさ……」

剣士「いいぜ召喚士!」

蒼頭「その約束……守らねばな」

喚起士「………」

剣士「行くか……なぁッ!」

喚起士「そうですね……召喚士さん」

召喚士「……はい?」

喚起士「………」ジッ……

召喚士「ああの……?」

喚起士「行って来ます。そちらもお気をつけて」

召喚士「は、はい!」



召喚士、ネメア「………」

召喚士「はぁぁぁぁぁ帰りたい……」

ネメア「うるさいッ!いい加減にしろ!」

召喚士「だってさ……この数どうすんの?ひい……ふう……かなりの人数が城の広場にいるけど……」

ネメア「そうだな……取り合えず騒ぎを起こし、こちらへ意識を移さねばな」

召喚士「………」

ネメア「あれで全ての兵では無いだろうが……出来るだけ城門の外へ誘き出したい」

召喚士「どうすんの?」

ネメア「あの門番を殴れ。それからだな」

召喚士「はぁぁぁぁぁ……」

ネメア「………」



たたた……

門番右「……ん?」

門番左「なんだ貴様」

召喚士「おはようございます!門番さん達お勤めご苦労様であります!」えへっ!

門番右、門番左「………」イラッ!

召喚士「ではッ!」シュタッ!

門番右「待て待て!普通に通り過ぎようとするな!」

門番左「なんだこいつは……」

召喚士「ちょっと用事があるんですよぉ」

門番左「で?」

召喚士「だから通りますね。ではッ!」

門番右「ふざけるな!通せる訳無いだろ!」

召喚士「ケチだなぁ……」

門番右 (なんだろう……こいつ激しくムカつくな……)

召喚士「どうしても駄目?」

門番左「駄目だ!帰れ!」

召喚士「可愛い笑顔見せてあげるからぁ!」えへっえへっ!

門番右「それのどこに可愛いさがあるんだ……」

門番左「………」

門番右「今日はお前みたいな奴を相手にしてる暇は無いんだ。早くこの場から離れろ」

門番左「そうだぞ。……門番右、こいつは多分アレだ」

召喚士「……?」

門番右「ああアレか。なら仕方無い」

召喚士「アレって何?」

門番左「頭の可哀想な奴なんだろ?ここから逆に行けば保護してくれる人がいるから」

門番右「気を付けて帰れよ」

召喚士「………」

門番左「………」

門番右「………」

召喚士「ふは……」

門番右、門番左「?」

召喚士「ふははははッ!我を誰だと思っているッ!」

門番左「もうそう言うのいいから」

門番右「ほれ、行った行った」

召喚士「え?ちょっ」

門番左「あんまここら辺いるなよぉ!」

門番右「危ないからなぁ!」

召喚士「………」



召喚士「クッ……この国の門番達……中々やりおるわ……」

ネメア「馬鹿か……」

召喚士「どうしよう……」

ネメア「問答無用で殴ればいいだろうが!」

召喚士「ん……あのさ……」

ネメア「なんだ?」

召喚士「あの人達……いい人そうだよね……」

ネメア「………」

召喚士「操られてるとか敵意剥き出しとかならさ……良かったんだけど……」

ネメア「ならばどうするのだ?」

召喚士「………」

ネメア「仕方が無いな……召喚士、私がやり過ぎたら止めろ。いいな?」

召喚士「な、何するの?」

ネメア「いいから……」

召喚士「……殺したりしないよね?」

ネメア「そうならぬよう止めろ」

召喚士「………」

ネメア「お前がやらぬのなら私がやらねばならんだろ」

召喚士「………」

ネメア「わかったな?」

召喚士「……でもさいい人そうだし」

ネメア「それでも今は敵だ。行くぞ」

召喚士「うん……」



ネメア「………」

門番右「また来たのか……」

門番左「困ったな。いい加減にしてくれないとオジサン達怒られちゃうよ?」

門番右「取り合えずここにいると危ないからな」

ネメア「………」裏拳ッ!

ズキャァァッ!ズザザザ……

門番左「………」

ネメア「お前もこうなりたいか?」

門番左「………」

ネメア「命を刈られたく無いのならば……兵を集め私を止めよ……」

門番左「………」

ネメア「………」バッ!

門番左「ひぃぃッ!敵襲!敵襲だぁッ!」

召喚士 (凄い回転して吹っ飛んでったけど……あの門番さん死んで無いよな……)



ワアァァァァ………

剣士「始まったか……くぅ見てえなぁ……」

蒼頭「姫様足元に気を付けなされ」

姫宮「うん。こんな所があったなんて……」

喚起士「………」

ジノ「喚起士……大丈夫?」

喚起士「大丈夫です……」

ジノ「………」

剣士「暫くここで待機か」

傭兵「そうだな。まだ城の中にわんさか兵がいるだろうからな」

剣士、蒼頭、喚起士、姫宮、ジノ「ッ!?」

傭兵「……なんだ?」

蒼頭「何故いる……」

傭兵「最初からいただろ。何を言ってるんだ」

剣士「……い、いたか?」

喚起士「全然気付きませんでした……」

傭兵「………」

蒼頭「本当に某達の後を付けて来たのではなく……?」

傭兵「いた……」

姫宮「一体いつからいたの……?」

傭兵「最初からだって言ってるだろ!相手が女王でも怒るぞ!」

喚起士「ジノは気付かなかったんですか?」

ジノ「全く……」

傭兵「おいおい……いい加減にしてくれよ……」

剣士、蒼頭「………」

傭兵「喚起士って言ったっけ?と女王は一緒に寝たじゃないか」

喚起士、姫宮「は?」

傭兵「可愛い寝顔で

シュパンッ!

傭兵「」ドサッ……

蒼頭「峰打ちだ……」

剣士「のびた後に言っても意味ねえだろ……」

喚起士「……蒼頭さん」

蒼頭「礼はいりませぬ故」

喚起士「駄目ですよ気絶させては……」

蒼頭「……え」

喚起士「ちゃんと意識を保たせたままいたぶらないと私達に何かしたのか聞き出せないじゃ無いですか……」

蒼頭「そ、そうですな……某うっかり……」

喚起士「まだ城に突入するまで時間はありそうですから、起きたらしっかり聞き出しましょうッ!」

蒼頭「………」

剣士 (おっかねぇ……)



召喚士「グハハハハッ!愚かなり人間どもッ!」

ネメア「………」

囲めェーッ!ワアァァァァ……

召喚士「浅はかな行動は死ぬものと思えぇぇぇッ!」

ネメア「おい……」

召喚士「何やってんだよネメアッ!休んで無いで一緒にやれよッ!」

ネメア「あ、ああ……」

相手は一人だぁ怯むなッ!

召喚士「ヌハハハハハァッ!緩い!緩いぞぉッ!」

ネメア「ぐははは……」

召喚士「ゆっくりはスムーズ!スムーズは早いんだァァァッ!」

ネメア「………」



ワアァァァァギャァァァァ……

蒼頭「頑張ってるみたいだな」

剣士「そうだな……あ?」

姫宮「盗賊止めなよ……」

盗賊「………」ツンツン

傭兵「」

剣士「姫さんよ……盗賊と並んでくんねえか?」

姫宮「え?いいけど?」

剣士「………」

姫宮、盗賊「……?」

剣士「盗賊デカくなってねえか……?」

姫宮「え!?」バッ……ポスッ

盗賊「………」

姫宮「本当だ……」

剣士「お前、化物なんだからそのままじゃねえのか?」

ジノ「あれだよ。質のいい魔力の素を摂取したから?かな」

剣士「へぇ……よくわかんねえけど」

ジノ「………」

剣士「お前そんなの食ってたんだな」

盗賊「………」

姫宮「ジノ、魔力の素って何?」

ジノ「お姫さまにはまだ早いよ……」

姫宮「何で?」

ジノ「……耳貸して」

姫宮「……?」

ジノ「ゴニョゴニョ……」

姫宮「………」カァ……



召喚士、ネメア「………」

殺せぇぇッ!何としてでも奴の首を取るんだァァッ!オオォォォォッ!

召喚士「ごめん……」

ネメア「………」

我ら人間の世界の為にィィッ!平和の為にィィィィッ!

召喚士「………」

ネメア「これを言うのは何度目かな……」

召喚士「本当……ごめん……」

ネメア「馬鹿か貴様はッ!魔王などと名乗ったらこうなる事ぐらいわかるだろうがッ!」

召喚士「………」

ネメア「もうこいつは……」

召喚士「自分でも信じられないくらい調子に乗ってたと思うよ……」

ネメア「………」

召喚士「………」



剣士「そろそろか……」

蒼頭「剣士、某から出るぞ!」

剣士「ああ。姫さん、蒼頭よ……お前らの仲間かもしれねえ奴等を斬るぜ」

姫宮「………」

蒼頭「……姫様」

剣士「蒼頭行ってくれ」

蒼頭「わかった……」

剣士「姫さんよ……恨んでくれてもいいからな」

姫宮「………」

剣士「………」

タタタ……

喚起士「こんな時に……」

姫宮「喚起士いいの……こうなるかもしれないって思ってたし……」

喚起士「………」



蒼頭「………」

剣士「なんだこりゃ……誰もいねえぜ」

蒼頭「それに静か過ぎる……」

剣士「召喚士、そんなに上手く誘きだしたのか?」

喚起士「もしそうだとしても……おかしいと思います……」

蒼頭「何故で御座ろう?」

喚起士「戦闘に加わらない兵達もいる筈です……」

剣士「そうだな。いくら戦争するからって城を空っぽにするなんて事はねえだろうし」

蒼頭「なるほど……」

喚起士「それに城に従事する方達の姿も無いみたいですね……」

蒼頭「………」

剣士「蒼頭よ、ここは城のどこら辺になるんだ?」

蒼頭「城の一階の広場の隅になる。あの門より中庭へ、こちらの階段から上へと言う感じだな」

……「ようこそ。お待ちしておりました」

喚起士「ッ!」

剣士「………」

蒼頭「誰だ貴様はッ!」

……「御嬢さん方、お初に御目にかかります。坊っちゃんはお久し振りで御座いますね」

蒼頭「坊っちゃんは……?」

剣士「……俺の事だ」

……「お懐かしゅう御座います……」

剣士「……そうだな」

……「ささ!どうぞお通りください。上で坊っちゃんと女王様を御待ちになっていますよ」

姫宮「………」

剣士「行くぞ……」

……「………」

剣士「何故行かせる?……お前が俺らを始末

……「滅相も御座いません。それに……必要だそうで御座いますから」

剣士「何が必要だと?」

……「ふふふ……」

剣士「答えろッ!」

……「………」

剣士「………」

……「坊っちゃん……コソ……」

剣士「………」

……「お願い致します……」

剣士「それはアイツの願いか?」

……「私めも望んでおります……どうか……」

剣士「………」

姫宮「………」

剣士「チッ……」

……「………」

喚起士、盗賊「………」

蒼頭「………」

……「おっと……貴女様はここまでで」

蒼頭「……御老人、何故だ?」

……「貴女様の役目はここまでで御座いますから」

蒼頭「役目?」

……「はい。女王様を監視し、またここへ連れてくる事で御座います」

蒼頭「ふざけるなッ!某はそのような!」

……「現にこうしてここにいらっしゃいます」

蒼頭「それは姫様が国を取り戻す為にッ!」

剣士「やめろよ爺……」

……「………」

剣士「蒼頭、悪りいけどよ……ここで待っててくれや」

蒼頭「それでは某は姫様を御守り出来ぬ!」

剣士「……頼む。俺も盗賊もいるから大丈夫だって」

蒼頭「………」

剣士「………」

蒼頭「わかった。なら某は後から追う。それでいいな?」

剣士「……無理だ」

蒼頭「あ??そんな事は!」

剣士「いいから大人しく待っててくれッ!」

蒼頭「………」

剣士「……悪りい。爺、こいつ以外は通るぜ」

……「どうぞ」

剣士「………」

タタタ……



剣士「………」

喚起士「何故蒼頭さんを置いて来なければいけなかったか……お聞かせ願いますか?」

剣士「………」

姫宮「そうだよ……それにあの人見た事が無いし何者なの……」

剣士「あれは俺んちの執事だ……」

姫宮「……俺んち?……え」

剣士「まさかいるとは思わなかった……アイツが通さないって言ったら絶対なんだ。だから蒼頭を置いてきた」

喚起士「絶対って……そんなに危険な人には思えませんでしたが……」

剣士「あれはヤバイんだ……」

喚起士「………」

剣士「召喚士でも勝てねえかもしれねえんだよ……」



執事「………」

蒼頭「………」

執事「……お茶でもお入れしましょうか?」

蒼頭「茶などいらぬ!某を通さない理由を言え!」

執事「先程申したでは御座いませんか。貴女様の役目はここまでと」

蒼頭「それの意味がわからぬ故言っている!」

執事「……困りました。あまり語りたくは無いのですが……」

蒼頭「それに剣士を知っているかのような感じだったな……それについても言って貰おうか!」

執事「………」

蒼頭「言わぬのなら……力付くでも言わせる!」

執事「……わかりました。少しだけお話しましょう」

蒼頭「………」

執事「女王様をここまでお連れした御礼にですよ?」

蒼頭「………」

執事「では、私めの主人……将軍様より女王様を御守りするよう仰せつかっていたと思いますが……どうでしょう?」

蒼頭「その通りだ」

執事「その理由は?」

蒼頭「………」

執事「なるほど。何故旦那様は貴女様を御選びになられたかもわかりませんね?」

蒼頭「如何にも……」

執事「何も御存知無いのによくもまあ引き受けたものです……」

蒼頭「………」

執事「最初から説明した方が宜しいようですね」

蒼頭「………」

執事「おほんッ……何故貴女様が選ばれたか。それは貴女様が人間では無かったからで御座います」

蒼頭「ん……将軍は某が人間で無いと初めから知っていたのか?」

執事「はい。何故知っていたのか……それはお教え出来ませんが」

蒼頭「………」

執事「貴女様が人間に対して友好的な魔物である事……これを利用したと言うわけです」

蒼頭「意味がわからぬ……確かに某は魔物で人間に対して敵対している訳では無いがそれがなんだと言うんだ?」

執事「常時、魔物であるから貴女様の居場所がこちらに伝わっていた……としたらどうします?」

蒼頭「な……」

執事「女王様を遠ざけておきたいがそれを任せられる人間がいない。だが魔物の中にはいたという訳です」

蒼頭「……そんな事をお前は出来るのか?」

執事「いいえ、私めでは御座いません。旦那様が出来るので御座います」

蒼頭「もし……某がここへ戻って来なくても探し出せると言う事か……」

執事「はい。女王様を見捨てるなり殺すなりすれば別ですが」

蒼頭「………」

執事「次に……もう御察しだとは思いますが、貴女様方といた坊っちゃんもとい剣士様は……」

蒼頭「……将軍の親類か何かか」

執事「はい……旦那様の御子息で御座います」

蒼頭「………」

執事「………」

蒼頭「そうか……」

執事「では、褒美はここまでにさせて頂きます」

蒼頭「申し訳無いが……ひとつだけ聞きたい事がある。よいか?」

執事「……何で御座いましょう?」

蒼頭「剣士と……将軍はこの国の事について繋がっていたのか……?」

執事「いいえ……」

蒼頭「わかった……褒美は終わっているのに答えて頂き感謝する……」

執事「いえ」

蒼頭「………」

執事「………」

蒼頭「まだ色々と聴きたい事があるのだが……もう話さないので御座ろう?」

執事「左様で御座います」

蒼頭「……ならばもう用は無い。御老人、申し訳無いがそこを通らせて頂く」

執事「………」

蒼頭「この先に将軍が待ち構えているのだろ?剣士達を待たせるのも悪いからな……」チャッ……

執事「……やめておかれた方が宜しいと思いますが」

蒼頭「………」

執事「仕方ありませんね……今はティースプーンくらいしか持ち合わせていないので御勘弁ください」

蒼頭「某をあまり嘗めるなよ……」

執事「いえいえ、嘗めてなど……端から相手になりませんので」

蒼頭「………」バッ!

執事「………」



ワアアアアァァァァァ……

召喚士「ぐはははぁかかってこいー」

ネメア (こいつあきて来たんだな……)

召喚士「はぁ……ネメアこれいつまでやるの……」

ネメア「………」

召喚士「ネメア?」

ネメア「何かおかしい……」

召喚士「何が?」

ネメア「先程から城門より人が出てきていないんだ……」

召喚士「じゃあ終わり!?」

ネメア「そう簡単に終わるか……だが何か変だ」

召喚士「………」

ネメア「召喚士よ……」

召喚士「んぅ?」

ネメア「今から城門を突破し突入するぞ」

召喚士「………」

ウオォォォォォォオ………

召喚士「凄いいっぱい人がいるんだけど……」

ネメア「突っ切って行け!突撃だぁッ!」

召喚士「………」

ダダダダッ!

召喚士 (……あれ?気が付かなかったけど……兵士の中にも女の人はいるんだなぁ……)

召喚士「………」

召喚士「突撃だぁぁぁぁッ!」

召喚士 (うん!今からオッパイを偶然にも触れてしまうかもしれないけど故意!じゃ無いからな!うんッ!)

ネメア「………」

召喚士「うおおおおッ!」



来たぞぉぉぉッ!

召喚士「ぐはははははッ!」

ズダダダダッ!

召喚士 (あの子は筋肉付き過ぎパス!あの子は貧乳パス!)

ネメア「おい!城門から反れてるぞ!」

召喚士 (あの子はキープ!……いた!いたぞ……クククッ)

ネメア「召喚士聞いてるのか!?」

召喚士「………」ピタッ

ネメア「止まるな!」

召喚士「止まれ……人間どもよぉぉッ!」

ネメア「……?」

召喚士「………」

ザワ……ザワ……

ダダダダッ!ガシッ!

女兵士「ひぁッ!?」

召喚士「動くなよぉぉぉッ!この女の血肉を浴びたく無ければなッ!」

ネメア「な、何をやってるんだ貴様!」

卑怯なッ!魔王が本性を現した!

召喚士「………」

女兵士「………」ガタガタ……

召喚士 (鎧邪魔だな……うん、俺は今魔王だからな!無理矢理取らないとそれらしくない!仕方無いもんな魔王だし!うひょょ!)

ネメア (こいつ……そうか、この女を盾にして進めば兵達を傷付けず行けると言う訳か。なるほど……)

召喚士「……クククッ」ガシッ!

女兵士「い、嫌……」

召喚士「アハハハハッ!」バリッ!

ネメア「………」

召喚士「さあ!この女が四散するところを見たくないのならば道を開けよッ!」



姫宮「………」

剣士「何故執事をやってるかは知らねえがな……」

喚起士「生身の人間が素手でドラゴンと渡り合うなんて信じられません……」

ジノ「あの爺ちゃんはあたしの見る限り普通の人間だったよ……」

喚起士「………」

剣士「……だからあいつはヤバイんだって。蒼頭を置いてきた理由……わかって貰えたか?」

喚起士「……はい」

剣士「………」

姫宮「剣士……」

剣士「ん?なんだ?」

姫宮「将軍と……剣士は知り合いなの……?」

剣士「俺の親父だ」

姫宮「………」

剣士「姫さんよ……いいか」

姫宮「………」

剣士「これから先、お前にとってつれえ事があるかもしれねえ……」

姫宮「………」

剣士「言いたくねえが王とかその周りが殺されてるかも

姫宮「やめてッ!」

剣士「聞け!……お前がそれで怒ったり恨んだりしてもよ……その矛先は全部俺に向けてくれ」

姫宮「………」

剣士「………」

喚起士「……姫宮さん」

剣士「さぁ……着いたぜ。行くぞ」

バターンッ!



蒼頭「ぐはぁっ……はぁはぁ……」

執事「………」

蒼頭 (こ、こいつ……強いなんてもんじゃない……)

執事「そろそろお止めになられたら如何でしょう」

蒼頭「まだだッ!」バッ!

執事「……言ったではありませんか、相手にならないと」

蒼頭「アァァァァッ!」ヒュバッ!

執事「これではとてもとても……」

蒼頭「チィッ!ダアァァァッ!」シュバッ!

執事「………」スゥ……バッ

蒼頭「あがが……」

執事「後一歩……踏み込んでいたらこの蹴りで貴女様のお顔を潰した事になりますね」

蒼頭「………」

執事「ふむ……」

蒼頭「……?」

傭兵「………」ソゥ……

執事「如何なさいましたか?」

蒼頭「あ……いや……」

執事「……?」

傭兵「喰らえやッ!」バッ!

バカンッ!

執事「ふぐぁ!?」

傭兵「ははッ!蒼頭、こんなじい様に手こずってるようじゃお前もまだまだ

執事「ハァッ!」

傭兵「」ドサ……

蒼頭「………」

執事 (な、なんと……)

蒼頭 (弱すぎるだろ……)

執事 (これ程己の気配を消せる輩がこの国にいたとは……)

蒼頭 (助太刀するならもっと確りと助けんか!)

執事「いやはや……驚きました……」

蒼頭「邪魔が入ってしまったな……」

執事「はい……私めが思うにこの方は国に遣える暗殺者ではないかと」

蒼頭「………」

執事「ですが、悟られず近付ける技術は卓越していても肝心の攻撃がこれでは……」

蒼頭「………」

執事「勿体無い……」

蒼頭 (誤解だと言った方がいいので御座ろうか……)

執事「………」

蒼頭「……はあ」

執事 (まだこの城に人が残っていたのですね……私めとしたことが旦那様に叱られてしまいます)

蒼頭「………」

執事 (……ならばこの者、居なかった事にすれば!)

蒼頭「おい」

執事「な、なんで御座いましょう?」

蒼頭「後、一撃……某の攻撃を受けて貰えないだろか」

執事「一撃で御座いますか……」

蒼頭「某の全身全霊を賭けた一撃……これが通らなければ某を好きにしていい」

執事「………」

蒼頭「………」

執事「わかりました。来なさい」

蒼頭「然らば……」ザッ!

執事「………」

蒼頭「グオォォォォッ!!!」ギリギリッ……



バターンッ!

ネメア「何とか兵達を追い出し城門を閉められたが……」

召喚士「ネメアさ……」

ネメア「なんだ?」

召喚士「もう隠すとか隠れる気無いよな……」

女兵士「………」

ネメア「知られてもたかが知れてる。もう構わなくてもいい」

召喚士「そう……で?おかしくない?」

ネメア「確かにおかしいな……何故誰もいないのか……」

召喚士「………」

ネメア「ここが戦場になる訳でもあるまいし……城内の者達を逃がしたとも考えられんし」

召喚士「ねぇ君さ、いいかな?」

女兵士「そう言う事ね……」

召喚士、ネメア「……?」

女兵士「さっきからの変な声……それが魔王なんでしょッ!?」

ネメア「………」

女兵士「おかしいと思った……こんな間抜けな顔した人が魔王だなんて有り得ない!」

召喚士「………」

ネメア「この女……実に良くわかっているな」

召喚士「………」

女兵士「それに!これも魔王の仕業何でしょ!」

ネメア「女、いいか。これは我々の仕業では無い。後、私は魔王では無い」

女兵士「………」

ネメア「わかったか」

女兵士「あの強さ……魔王以外有り得ないでしょってッ!」

ネメア「ぐぬぅ……めんどくさい!お前のせいだぞ!」

召喚士「………」

女兵士「この人間を操っておいて認めないなんて……」

ネメア「操って無い!」

召喚士「……操られてたよぉ」

ネメア「貴様ッ!」

女兵士「やっぱり……」

召喚士「兵士さん怖かったよぉぉ!助けてくださいぃぃ」

女兵士「………」

ネメア「違う!こいつが力を手に入れ調子図いて!」

女兵士「魔王め……なんと卑怯な……」

ネメア「………」

召喚士 (チャンスだッ!このまま怖かったふりをしてオッパイヘダイブッ!)

ネメア「もういい……魔王でよい……」

女兵士「そんな事認めなくてもわかってる!」

召喚士 (いや待てよ……あれ?魔王のせいにしちゃえば何でもしていい……?)ニヤ……

女兵士「おのれ……城の人達を何処へやった!?」

ネメア「知るか!」

女兵士「そのにやけた面をして知らないって言うの!?」

ネメア「は?」

召喚士「ぐああぁッ!……へ、兵士さん……助け……」

女兵士「だ、大丈夫か!」

召喚士「グハハハッ!再びこの身体は乗っ取ったぁあ!」

女兵士「ぐっ!おのれ……」

召喚士「クククッ……この人間を解放して欲しいのならば!」バッ!

女兵士「な、何をするつもりだ!」

召喚士「わかるだろ……ふふふ」

女兵士「………」

召喚士 (今だッ!オッパイタッチッ!)カチン!

女兵士「くッ……私一人では無かったらお前なんて……」

召喚士「………」カチン!

女兵士「私に力があったらこんな屈辱を味わう事もぉ!」

召喚士「……固いんだけど」カチン!

女兵士「あぁ?インナーアーマーばかり触って……」

召喚士「インナー……アーマー……?」

女兵士「……?」

召喚士「………」

女兵士「………」

召喚士「おのれ人間んんッ!謀ったなあッ!!!」

ネメア「………」



剣士「………」

将軍「女王、やっとお戻りになりましたか」

姫宮「………」

将軍「ふふふ……そう睨まないで頂きたい。何分こちらにも事情と言うものがありましてな」

姫宮「こんな事やめて……」

将軍「こんな事?」

姫宮「戦争しようとしている事を!」

将軍「戦争しようなどとは……ふっ」

姫宮「………」

将軍「女王は少し勘違いをされていますな。戦争など私はしませんよ」

姫宮「ならなんで進軍しようとしているの……」

将軍「ああ、あれは足りない分の贄で御座います。女王」

姫宮「贄……?」

喚起士「贄とは何ですか!」

将軍「………」

喚起士「………」

将軍「女……女王のお供ご苦労だった」

喚起士「質問に答えなさい!」

剣士「………」バッ……

喚起士「………」

剣士「おい……魔喚士って奴はどこにいる?」

将軍「………」

剣士「言えよ……お前の相手は俺がする」

将軍「誰かと思えば使えぬ屑か。お前も女王の元にいたとはな」

剣士「………」

将軍「どう言う出会いがあったのか知らんが……お前には関係無い。出て行け」

剣士「はっ、悪りいな。俺はこいつを死んでも守るって約束しちまってるんだよ」

将軍「………」

剣士「だから出て行かねえし……おめえが悪さしようとしているのも止めなきゃならねえんだ」

将軍「くだらん理由だな。それに……少しはまともになっているかと思えば出来ぬ約束をする辺り屑は変わらんものだ」

剣士「………」

将軍「兄弟揃ってどうしようもない……」

剣士「てめえの子供だろうが……何言ってやがる……」

将軍「私の子なら私に従うべきだ。それが出来ぬのなら私の子では無い!」

剣士「ふん……それこそくだらねえ」

将軍「己の生きる道を受け入れられなかったお前にはわかるまい」

剣士「わかって堪るかよ」

将軍「だがもういい。親族だろうが何だろうが関係無くなるのだからな」

剣士「それはどう言うこった……?てめえの自慢の馬鹿兄貴もどうでもいいのか?」

将軍「奴は死んだ」

剣士「死んだのか……」

将軍「親の権威だけで勇者に仕立てあげられた癖にそれを自分の力と過信した愚か者だ。どうでもいい」

剣士「………」

喚起士 (勇者?……魔物との戦闘で亡くなった勇者の事でしょうか……)

剣士「てめえが殺ったのか……」

将軍「魔物の討伐に失敗……馬鹿な輩には相応しい末路だ。ふはははっ」

剣士「………」

将軍「……だがな、奴は素晴らしい土産を置いていってくれたぞ」

剣士「………」

将軍「血と言うものはこれ程素晴らしい物とは思っていなかった……」

剣士「……?」

将軍「ある血族が残した遺産……これをあの愚か者は私に教えてくれた」

剣士「………」

将軍「そして私は知った。その遺産の使い方と血族の生き残りがいる場所を」

喚起士「まさか……」

姫宮「……え」

将軍「中々察しがいい。女王こそその血族の生き残り……」

姫宮「………」

将軍「遠い昔に魔導の理を得た天才……その血を女王は継いでいる」

喚起士「……この国の王達はその血脈を受け継いでいると?」

将軍「国など関係無い。もちろん王も……ただ女王だけが受け継いだ」

喚起士「そんな事が有り得るんですか……姫宮さんだけが……」

将軍「この国の王と……女王とでは血が繋がっていないとしたらどうだ?」

姫宮「うそ……」

喚起士「………」

姫宮「そんな事無い!私はこの国で生まれて御父様の子で!」

将軍「……その自分の生い立ちが正しいと思っているのか?」

姫宮「正しいに決まってる!それじゃなきゃ……私は……私……」

将軍「ふふ……」

姫宮「………」

剣士「クソが……小娘苛めて何が楽しい」

将軍「事実を述べただけだ」

剣士「………」



………ィィィィイイン……パキンッ……

蒼頭「………」

執事「ふむ……ティースプーンが斬られてしまいました」

蒼頭「……駄目か」

執事「今一歩お踏み込みなされたら私めの首がこうなっていたで御座いましょう」

蒼頭「………」

執事「素晴らしい斬撃で御座いました」

蒼頭「………」カチンッ……スゥ……

執事「……?」

蒼頭「受け取れ……」

執事「………」

蒼頭「せめて……最期は某の刀で逝きたい……」

執事「………」

蒼頭「………」

執事「それはお受け出来ません」

蒼頭「何故だ……」

執事「私めが受けた命令に含まれていませんので」

蒼頭「………」

執事「お茶にいたしましょう。ただ待つと言うのも退屈で御座いましょう」

蒼頭「………」

執事「あちらに御用意出来ていますので」

蒼頭「わかった……頂こう……」

執事「では」

蒼頭「………」

執事「……貴女様は今」

蒼頭「某は蒼頭と言う名だ。蒼頭でいい……」

執事「左様で御座いますか」

蒼頭「………」

執事「では、蒼頭様は今……自由でおられますか?」

蒼頭「……自由?どう言う事で御座ろう?」

執事「………」

蒼頭「自由と言われれば自由で御座るが……」

執事「私めがこうしてここにいる……これを疑問に思いませんか?」

蒼頭「そうだな……御老人程の強さならば人の下に付かなくとも……」

執事「………」

蒼頭「……?」

執事「私めは……お相手して頂いた方々にはこうして説明をしているので御座います……」

蒼頭「………」

執事「何故、私めはこのようにしているのか。それは……」

蒼頭「………」

執事「命令されなければ生きていけない……そんな人間がいたらどうお思いでしょうか」

蒼頭「なんだそれは……」

執事「………」

蒼頭「それが御老人だと言うのか?」

執事「はい……」

蒼頭「………」

執事「若き頃よりそう過ごして参り……気が付いた時にはそれ以外の生き方が出来なくなっていました……」

蒼頭「………」

執事「そんな事は……とお思いでしょうが……事実で御座います……」

蒼頭「………」

執事「これで私めが今の居場所にいる事を後納得して頂けたでしょうか……」

蒼頭「にわかに信じがたいが……それが本当の事で御座ろう?」

執事「はい……」

蒼頭「ならば信じよう」

執事「………」

蒼頭「………」

執事「……ささ!お茶が冷めてしまいます。どうぞ御召し上がりください」

蒼頭「うぬ。頂こう」グイッ

執事「………」

蒼頭「……え?」

執事「いかがなさいました?」

蒼頭「あ……いや……」グイッ

執事「……?」

蒼頭 (なななななんだこれはッ!?この世の物とは思えん不味さだ……)

蒼頭 (何かの間違いかと二口目を飲んでみたが……飲み込めん……)



召喚士、女兵士「………」

ネメア「だから貴様はッ!」クドクド……

召喚士「あのネメアさん……今、こんな事してる場合じゃ無いと思うんですよぉ……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「お前はぁッ!私がこう声を荒げているのは誰のせいだと思っているんだッ!ああッ!?」

召喚士「………」

女兵士「魔王……なんで私まで正座させられてるの……」

ネメア「女、先程から魔王魔王と……魔王が単身、こんな所へ踏み込んで来る訳が無いだろ!」

召喚士「そうだそうだ!偽乳女!」

ネメア「貴様は黙っていろッ!これも全部お前のせいだろうがッ!」

召喚士「へぇい……」

女兵士「……東の方に魔王の軍勢を展開させてるんじゃないの?だから
……」

ネメア「なんだそれは……」

女兵士「そう聞いてるけど……」

ネメア「………」

召喚士「俺達はそっちから来たんだよ。でもそんなのいなかったよ?偽乳女」

女兵士「偽乳って言うなってッ!」

召喚士「言うわ!人の期待を裏切ったんだぞッ!」

女兵士「……期待?」

召喚士「………」

女兵士「もしかして……一辺たりとも操られて無かったの……?」

召喚士「そんな事無いよぉ……もう凄い操られてたし……」

女兵士「………」

召喚士「本当だって!自分でも信じられないくらい操られてた!」

女兵士「………」

ネメア「女よ……本当なのか?」

女兵士「嘘なんて言ってもしょうがないでしょ」

ネメア「そうだな……だが、魔王の軍勢と言うのはいない」

女兵士「なんでわかるの?」

ネメア「こいつも言っていたが私達はその方角が来たんだ。それにその軍勢がいる気配も無かった」

女兵士「それ信用しろって言うの……」

ネメア「お前と同じで私が嘘を言ってもしょうがない」

女兵士「もし貴方が魔王じゃ無いならなんなの……」

ネメア「私は……」

女兵士「………」

ネメア (また知らぬとこの人間にも言われるであろうな……)

女兵士「………」

ネメア (それほど私の名は人間の世界に浸透していないのだろうか……)

女兵士「……?」

ネメア (はぁぁぁぁ……なにやら嫌になるな……)

召喚士「……ネメアどうしたの?」

女兵士「ネメア?」

ネメア「それが私の名だな」

女兵士「………」

ネメア「………」

女兵士「あの黄道十二星座のひとつ、獅子座の魂の元となった獅子がネメアのライオンで!」

召喚士、ネメア「………」

女兵士「神話の勇者ヘラクレスの最初の敵として現れて!古代バビロニアや古代エジプトでは王権の象徴として崇められて!」

召喚士、ネメア「………」

女兵士「古来からある星座のひとつにネメアのライオンと称えられて!」

召喚士、ネメア「………」

女兵士「現在では行き遅れた婚活中の女性の間で話題になっている恋愛運を上げる為にネメアのライオンの刺繍を施した物が人気で!」

召喚士、ネメア「………」

女兵士「その本人が貴方だって言うのッ!?」

ネメア「……げ、現在ではと言うのはわからんがそれが私だ」

女兵士「本当に?」

ネメア「ああ……」

女兵士「おおおおおッ!!!!」

召喚士 (やべぇ……ネメアマニアだ……)



将軍「………」

姫宮「嘘ッ!御父様に会わせて!」

将軍「会って何になる?事実は何も変わらないぞ?」

姫宮「そんな事……無い……」

喚起士「………」

将軍「まあ……直に会える。あの世でな」

姫宮「………」

剣士「チッ……」

将軍「女王、こちらへ

盗賊「………」バッ!

ズバキッ!ガシッ……

将軍「グゥッ!なんだお前は……」

盗賊「………」

喚起士「姫宮さん……」

剣士「喚起士、ちょっと姫さん頼むわ……盗賊の奴キレちまってやがる」

喚起士「え?……パイア……」

将軍「小賢しいッ!」ブオッ!

シュッ……ガキッ!

盗賊「………」

将軍「耐えるか。体が小さいわりにはやるな」

盗賊「………」ググッ……

剣士「盗賊!落ち着けッ!」

盗賊「……止めないで」

剣士「気持ちはわかるがまだ待て!」

盗賊「………」グ……

剣士「………」

将軍「止める事など無いだろ。こちらの方がお前より強いかもしれんな。ふふっ」

剣士「てめえにはまだ聞かなきゃなんねえ事があるからな。それにお前が盗賊の相手するなんざ荷が重すぎら!」

将軍「それはどうかな……クククッ」

盗賊「………」

剣士「……もう一度聞くが、魔喚師って奴はどこにいる?」

将軍「さてな。あの空者の事など聞いてどうする?お前達には関係無いだろ」

剣士「てめえの知らねえ因縁ってものあるんだよ」

将軍「………」

剣士「………」

将軍「なるほど……」

喚起士「………」

将軍「魔喚師ならこの上にいる。誰がそれなのか知らないが行くなら私は止めはしない」

剣士「……喚起士、行けよ」

喚起士「ですが……」

剣士「ここは俺と盗賊でやっとくからよ」

喚起士「………」

剣士「大丈夫。俺と盗賊が危なくなっても召喚士が必ず駆け付けてくれるさ」

喚起士「………」

剣士「……もちろんお前がピンチになった時もな」

喚起士「わかりました……」

剣士「それに召喚士との約束守らにゃならんし。ふふ」

喚起士「……そうですね。ならこの場はお願いします」

剣士「ああ。仇取ってこいよ」

喚起士「………」コクッ

タタタ……



タタタ……

喚起士「………」

ジノ「驚いたね……お姫さまが……」

喚起士「………」

ジノ「あの将軍って言うのも気になるね」

喚起士「そうですね……姫宮さんで何をしようとしているのか……」

ジノ「それもなんだけどさ……あれ人間やめてる感じだったよ」

喚起士「……将軍はもう人間では無いと?」

ジノ「どうやったか知らないけど魂が魔物に近い感じになってたね……」

喚起士「………」

ジノ「本当……何しようとしてるんだか」

喚起士「………」



女兵士「ははぁ……何卒何卒ぉぉッ!」

ネメア「拝むな……」

女兵士「……どうか私にいい出会いがぁぁぁぁ」

ネメア「………」

召喚士「ネメア……これからどうするの?」

ネメア「城へ入るしかあるまいな。訳がわからぬ事ばかりだ……」

召喚士「……また正面から?」

ネメア「……蒼頭達がどのような状況下にいるかわからぬ。そうした方がいいだろ」

召喚士 (ほう……蒼頭の名前から出しますかネメアさん!)

ネメア「無事ならいいが……」

女兵士「………」ナムナム……

召喚士「この人はどうするの……」

ネメア「このまま……と言う訳にはいくまいな……」

召喚士「じゃあ帰す?」

ネメア「それだと城門を開けねばならんだろ。もうこれ以上の面倒は御免だ」

召喚士「連れてくの……?」

ネメア「仕方あるまい……」

召喚士「………」

ネメア「はぁ……女、私達はこれから城へ入る。付いてこい」

女兵士「いい男いる?」

ネメア「………」

女兵士「何で黙るの……いるのね!?じゃあ行くッ!」



蒼頭「いや……もう結構……」

執事「そう言わず!……ああ!なるほど、私め気付きませんで失礼しました」

蒼頭「………」

執事「蒼頭様は東方の出身で御座いましたね。なら、緑のお茶の方が宜しかったですね!」

蒼頭「本当……もう結構で御座りますので……」

執事「少々お待ちを……ふふん!」

蒼頭 (この戦闘時との違いはなんで御座ろう……)

執事「御待たせ致しました。どうぞ」スッ!

蒼頭「………」

執事「私めはこうして茶を入れ差し上げる事に喜びを感じているので御座います。ですから遠慮は要りませんので」

蒼頭「左様か……」

あけおめ

執事「ささ!熱いうちに御召し上がりを!」

蒼頭 (……淹れ方は普通だった。茶葉も恐らく緑茶で間違いないで御座ろうが……)

執事「………」ニコニコ

蒼頭 (それにこれを不味く淹れる事は不可能……だと思うが……)

執事「……?」

蒼頭「……頂こう」

執事「はい」

蒼頭 (南無三ッ!)グイッ

執事「………」

蒼頭「………」

執事「………」

蒼頭 (ぇぇぇぇ……?ぇぇぇぇ……?茶葉に湯を注ぐだけで何故このように不味く淹れられるのか……)

執事「どうでしょう?」ニコニコ

蒼頭 (……有り得ん。もしや……某は試されているのか?)

執事「……?」

蒼頭 (そうか……真の戦いはこれからと言う訳か……)

バターンッ!

ネメア「ここも人はいない……蒼頭ッ!」

蒼頭「………」

ネメア「無事か?」

蒼頭「………」

執事「これはこれは……どこから侵入して来たのかはわかりませんが、新しいお客様で御座いますか……」

ネメア「………」

召喚士「この人誰?」

女兵士「知らない……」

明けましておめでとうございます。
皆様支援有り難う御座います。
>>871
凄いですね。
初めて見ました。

ネメア (蒼頭に外傷は無いようだな……)

執事「私めの知る限り……地下からと正面の城門から城へ入る事は出来ないと思っておりましたが……」

ネメア「……誰だか知らんが答える必要は無い」

召喚士「その正面の城門から入って来たんだけど」

ネメア「お前は!余計な事を……」

召喚士「ええ?だって本当の事だろ」

執事「………」

召喚士、ネメア「……?」

執事「ふふふふ面白いご冗談を」

ネメア「冗談など言わん。本当の事だ」

執事「兵達が貴方様方を通したと?」

ネメア「……答える必要は無い」

召喚士「突っ切って来たんだよ」

ネメア「一々言うなッ!」

召喚士「ほら、蒼頭が座ってお茶飲んでるんだよ?戦ってる訳じゃ無いんだから危ない人じゃ無いって」

ネメア「だがな……」

執事「………」

召喚士「ネメアの声聞いても……あれ?」

ネメア「私の事を知っていた……これはどう説明する?」

召喚士「………」

執事「………」

召喚士「何で知ってんの?」

執事「お答えしかねます」

召喚士「教えてよ。なんでさ?」

執事「……お答えしかねますと申しましたが」

召喚士「いいじゃん!教えて!」

執事「嫌で御座います……」

召喚士「おーしーえーてーよーッ!」

執事、ネメア (鬱陶しいッ!)

召喚士「まあいいや……蒼頭、剣士達は?」

蒼頭「………」フルフル

召喚士「?」

蒼頭「………」フルフル

召喚士「喋れよ……パイアじゃ無いんだから」

蒼頭「………」バッ!フルフル

ネメア「……喋られんのか?」

蒼頭「………」コクコク

ネメア「貴様……蒼頭に何をした……」

一気に槍からここまで そしてなんとなく盗賊の バッ に萌えたのでチラシの裏
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3806239.jpg.html
続き楽しみにしております


執事「……蒼頭様とこうしてお茶を楽しんでいるだけで御座います」

ネメア「本当か?蒼頭……」

蒼頭 (どう説明したらいいものか……口の中の物を吐き出せば……)

執事「………」

蒼頭 (御老人に失礼……しかもあの強さを見せられた後にそんな事をしたら……)

ネメア「………」

蒼頭 (ぐああ……先程の茶が原因なのか……気持ち悪く……)

召喚士「蒼頭、一口貰うよ」

蒼頭「ッ!?」フルフルッ!

召喚士「ケチケチするなよ。へぇ変わった色のお茶だね」グイッ

蒼頭「………」

>>880
ありがとうございます。
保存させて頂きました。

ネメア「グアァッ!な、なんだこれはッ!」

召喚士「ふむ、中々いけるね!」

ネメア「は!?お前これが平気なのか!」

召喚士「ええ?普通に美味しいけど」

ネメア「………」

執事「なるほど……」

召喚士「……?」

執事「召喚士様……で宜しいですね?」

召喚士「うん……何で知っ

執事「それはお答え出来ませんが、魔物と一体になっていたとは……」

召喚士「………」



将軍「あの女……魔喚士を屠るつもりか?」

剣士「………」

将軍「ふふはっ黙すると言う事は正鵠を射っているのだな」

剣士「だからどうした」

将軍「いや……クククッ」

剣士「チッ……敵わねえとでも思ってんか!」

将軍「そうれは違うぞ。是非とも魔喚士を討って貰いたいものだ」

剣士「あ?……てめえ仲間が殺られても良いって言うのか?」

将軍「仲間?仲間か……そう言う視線でしか人間を見れんお前ではわからんかもしれんな」

剣士「………」

将軍「ククク……ふはははッ!」

剣士「何がおかしい……」

将軍「こうも私の思い通りに事が運べばな笑いたくもなる……クク」

剣士「………」

盗賊「………」

姫宮「盗賊……私……私……」

盗賊「………」

姫宮「うぅ……私は何なの……」

盗賊「………」

姫宮「私は誰で……私は私じゃ無いの……」

盗賊「大丈夫」

姫宮「………」

盗賊「………」



喚起士「ジノ……お願いします」

バシュンッ!

ジノ「……ついに来たね」

喚起士「はい……」

ジノ「………」

喚起士「………」グッ……

ジノ「喚起士……」

喚起士「なんでしょう?」

ジノ「ん……やっぱいいや。頑張ろうね!」

喚起士「……はい」

ジノ「………」

喚起士 (ジノは……何か私に隠しているんでしょうか……)

ジノ「喚起士、扉開けるよ!」

喚起士「………」

ギィ……バタン……

喚起士「……ッ!」

ジノ「………」

……「誰……かしら?」

喚起士 (女性……?それにカンヘルッ!)

……「スフィンクスね……綺麗な髪……」

喚起士「……貴女が魔喚士ですか?」

魔喚士「そう……将軍が寄越した人って訳では無いみたいね」

喚起士「はい。私は喚起士と言います……カンヘルを討ちに参りました……」

魔喚士「そう……フフフ」

喚起士「………」

魔喚士「カンヘル……この女、貴方を討つんだって。こんなに美しくて素敵な貴方を……」

カンヘル「………」

喚起士「……魔喚士さん、喚起士兄と言う名はご存知でしょうか?」

魔喚士「さあ……私って人間に興味無いから……フフ」

喚起士「そこの……カンヘルに殺された人間の名前です……」

魔喚士「………」

喚起士「………」

魔喚士「へぇ、そうなの……なるほどね仇討ちって訳」

喚起士「貴女がカンヘルに……命令したのでは無いんですか……」

魔喚士「どうだったかしら。人の命なんてカンヘルのエサにしかならないから覚えて無いわ」

喚起士「エサ……」

ジノ「………」

喚起士「………」

魔喚士「そんなに睨まないで。貴女だってスフィンクスと一緒にいるって事は同じなんじゃない?」

喚起士「私はそんな事していません!ジノは……」

魔喚士「……なるほど。まぁそれもアリよね」

喚起士「………」

魔喚士「自分の魂と引き換えに召喚した者といられるんだから」

喚起士「………」

魔喚士「でもね私の見立てだと釣り合わないんじゃないかしら?フフフ……」

喚起士「何が釣り合わないと……?」

魔喚士「貴女の魂でスフィンクスをこの世に留まらせておく事……かしら」

喚起士「………」

ジノ (不味いな……こいつに見透かされてる……)

魔喚士「お釣が来ちゃいそうよね……スフィンクスだけじゃ」

喚起士「………」

魔喚士「……自分が少しでも助かるなら等価にする必要は無い。なんて事は無いんじゃない?」

喚起士「どうでしょうね……案外そうかもしれませんよ」

魔喚士「フフフ……カンヘルを相手にするのにスフィンクスでは役不足なのは貴女もわかってるんでしょ?」

喚起士「………」

魔喚士「あら?その顔……フフフ当たりかしら」

喚起士「………」

魔喚士「スフィンクスの他にも何か隠してるわねぇ?」

喚起士「……それがどうかしましたか?」

魔喚士「いいえ……中途半端な覚悟でここに居るんじゃなくて良かったと思って」



執事 (魔物と一体化……それがそれ程の力を与えるものなのでしょうか……)

ネメア「……蒼頭無事か?」

蒼頭「なんとか……」

執事 (兵達を掻い潜りここまで来た……しかも掠り傷ひとつも無く……)

蒼頭「ぐぅ……胃が……」

ネメア「………」

執事 (もし本当ならば……私めの攻撃にも対処出来る筈)

女兵士「いい男は?」

召喚士「……いるなんて言ってないよ?」

執事 (確かめさせて頂きましょう……)

女兵士「はあ!?騙したのねッ!」

召喚士「………」

カンヘル(canhel)とは中米土着信仰とキリスト教信仰が融合した、天使的性格を持つ龍人である。
蝙蝠の羽、鉤爪を持つ持つ姿で描写される。アステカ創世神話と深く関連づけられている。
元々は蛇を象った杖を指す言葉が「カンヘル」であり、権力の象徴でもあった。
中米においてキリスト教を布教する際、原住民向けにキリスト教創世神話が作られた。
それによると、主はセルピヌスというカンヘルを作り出し、さらに後世に生まれた四方を象徴する4匹のカンヘルを支配させたという。

執事「………」

蒼頭「……?」

執事「………」ダッ!バッ!

女兵士「いい男いるって言ったじゃないのぉぉ!」グッ!

召喚士「服掴まないで!言ってないからぁぁ!」スカッ!

執事「ッ!?……ッ!」スパンッ!

女兵士「これで婚期逃したらアンタのせいよッ!」グイッ!

召喚士「知らないよ!そんなの偽乳だから悪いんだろッ!」スカッ!

執事「ッ!?」

女兵士「何ですってッ!」

召喚士「離してくれってぇ!」

ネメア、蒼頭「………」

執事 (驚きました……私めの攻撃を見てもいないのに御婦人と戯れながら華麗にかわすとは……)

蒼頭 (あれをかわすとは……流石で御座いますな……)

ネメア (運のいい奴め……)

女兵士「ああああ……私の人生設計が脆く儚く崩れ去るよってぇぇ……」

召喚士「………」

女兵士「……何とかしなさいよ」

召喚士「……後でネメア触らせるから」

女兵士「……で?」

召喚士「ほらあれ……直接触ったら縁結びの効果倍増するよぉ……」

女兵士「マジで!?」

召喚士「マジで!!もう撫でたら撫でただけッ!」

ネメア「変な約束と変な噂を広めるなッ!」

 【縁結び】ネメアのライオン【婚活】
ネメアのたてがみ 1本 金貨5枚
ネメアの肉球なでなで  金貨1枚
ネメアの祝福       銅貨10枚

召喚士「これで勝つる!! ネメア協力してよ、お・願・い・っ・♪」

ネメア「ふざけるなッ!」

執事「……召喚士様」

召喚士「全身の毛が抜け落ちるくらい撫で回していいから!」

ネメア「やめろ!」

執事「召喚士様ッ!」

召喚士「は、はい?」

執事「……剣士様、女王、喚起士様はこの先においでになります」

召喚士「………」

執事「どうぞお通りください……」

召喚士「うん……」

ネメア「………」

蒼頭「ネメア殿……某はここでお待ちしております故……」

ネメア「……何故だ?」

蒼頭「………」

>>890
例のごとく、役不足の使い方間違ってるよ!

ネメア「……わかった。行くぞ召喚士」

召喚士「蒼頭置いてって良いのかよ……」

ネメア「いいんだ。早くしろ」

召喚士「………」

タタタ……

蒼頭「………」

女兵士「待ってよ!」

執事「………」スゥ……

女兵士「……何か?私の婚活請け負いさんが行っちゃうんだけど!」

執事「誰かは知りませんが、ここから先はお通し出来ません」

女兵士「ええ!困るって!」

執事「………」

蒼頭「……ここで待つしかない。悪い事は言わぬ従った方がいい」

女兵士「………」

蒼頭「………」

女兵士 (後ろ姿しか見てなかったけど……やだ……この人超美形ッ!)

蒼頭「……?」

女兵士「はい……わかりました」

執事「……?では、蒼頭様とお茶でも飲まれながらお待ちください」

蒼頭「……某はもう結構」

執事「そう言わずに!」

蒼頭「本当……結構で御座ります……」

執事「……どうぞ」スゥ!

蒼頭 (早い……これでは拒否出来ん……)

女兵士「私……頂きます」

蒼頭「待たれよ!」

執事、女兵士「何か?」

蒼頭「いや……その……」

女兵士「……?」グイッ

蒼頭「………」

女兵士「ブハァァッ!なにこれマズッ!」

執事「え……」

蒼頭 (あわわ……)

女兵士「何よこれ!人に変なもん飲ませんじゃ無いわよってッ!」

執事「変な……そそそれはお茶で御座いますが……」

女兵士「はあぁ?こんな苔みたいな色のお茶がありますかって!」

執事「東方で好まれている……」

女兵士「チッ……紅茶入れて」

執事「……かしこまりました……ぁぁ」

蒼頭「………」

女兵士「早くしてよ。変なもん飲まされて頭きてんだから!」

執事「ど、どうぞ……」スゥ

女兵士「………」グイッ

執事「………」

女兵士「………」

執事「………」

女兵士「……ペッ!」

執事「ッ!?」

女兵士「あんたふざけてんの……?ねえ?なにこれ?」

執事「ふざけなどは……」

女兵士「……チッ」

執事「………」

蒼頭 (知らぬと言うのは恐ろしきかな……)

>>897
ご指摘ありがとうございます。



タタタ……

ネメア「………」

召喚士「蒼頭……置いてきて良かったの?」

ネメア「………」

召喚士「ねえ……」

ネメア「お前はあれを見ておかしいと思わなかったのか?」

召喚士「何が……蒼頭が執事っぽい人とお茶飲んでただけじゃん」

ネメア「それがおかしいと言っているんだ。剣士達はこの先にいるのに何故蒼頭だけが残っている?」

召喚士「そう言えばそうだな……何で?」

ネメア「少しは自分で考えてみろ」

召喚士「ん……蒼頭が行きたく無かったから?」

ネメア「違う。蒼頭が剣士達と行きたく無いと思う理由など無いだろ」

召喚士「じゃあ魔物は通れない何かがあった?」

ネメア「それだとジノやパイアが残っているだろうに……」

召喚士「そっか……ええ……」

ネメア「わからんのか……まあいい。恐らくあの老人が行かせなかったんだ」

召喚士「なんで?」

ネメア「そこまでは知らん」

召喚士「自分だって理由わかって無いんじゃないか……」

ネメア「理由がわからずともあの場で何があったか検討が付くだろ」

召喚士「何があったの?」

ネメア「あの二人……戦闘を行ったんだろうな」

召喚士「まさかぁ……怪我とかして無かったよ?」

ネメア「二人の間に力の差が有りすぎたんだろ」

召喚士「蒼頭が勝って執事っぽい人にお茶を入れさせてたって事か」

ネメア「逆だ」

召喚士「……は?」

ネメア「蒼頭は負けたんだ……」

召喚士「………」

ネメア「……急ごう。剣士達が心配だ」

召喚士「うん……」

ネメア「………」

召喚士「………」

タタタ……



将軍「さあ女王こちらへ」

姫宮「………」

剣士、盗賊「………」バッ……

将軍「退け。貴様達には関係の無い事だ」

剣士「何やるか知らねえが……はいそうですかで退けるかよ。なぁ盗賊!」

盗賊「………」コクッ

将軍「………」

剣士「国を乗っ取って……姫さん使って何しようってんだ!」

将軍「……もう一度言うぞ。退け」

剣士「………」

将軍「そうか……」チャ……

剣士「………」チャキ……

将軍「………」

剣士「てめえは自分の為ならなんだってやりやがる……これからやるのも自分の為かッ!」

将軍「そうだ。それに私にしか出来ぬ事……」

剣士「………」

将軍「人は何の為に戦っているのだと思う?」

剣士「………」

将軍「答えろ」

剣士「失ったりしたくねえ守りたい物の為だろう……」

将軍「なるほど。お前にしてはいい答えだ」

剣士「………」

将軍「ならばそれを止める術はどうだ」

剣士「………」

将軍「わからぬと言った顔をしているな。だがそれが正しい」

剣士「あ?」

将軍「人は何かと戦わなければ生きていけぬ者だからだ」

剣士「……それがなんだ?てめえがやろうとしてる事と関係あるのか」

将軍「ふふ……あるな。もし私がそれを止める術を見付けたとしたらどうする」

剣士「………」

将軍「これから先、多少の犠牲を代償に人は争いの無い世界で生きられるとしたらどうだ」

剣士「………」

将軍「くだらぬ国同士の争い……魔王や魔物と人間の争い……」

剣士「………」

将軍「人が生きて歩む道筋にこんな物は必要無い」

剣士「………」

将軍「平穏で豊かな日々を暮らし、何者にも怯える事の無い理想の世界……それを私は創れる!」

剣士「頭でもおかしいんじゃねえか……」

将軍「ふふ……常人に理解してもらおうとは思わん」

剣士「………」

将軍「人が進む未来を私が造り上げ……そして人が歩む道筋を言葉を紡ぐ如くひとつにしてみせよう」

剣士「そんな事本当に出来んのかよ……」

将軍「本当だ」

剣士「………」

盗賊「……剣士」

剣士「………」

盗賊「………」

剣士「お前もそんな顔出来るんだな……」

盗賊「………」

剣士「心配すんな。俺はこいつの言葉なんかじゃ揺れたりしねえ」

将軍「………」

剣士「ようは……てめえに楯突く奴がいないてめえの理想の世界を造りたいだけだろ」

将軍「………」

剣士「何が争いが必要無いだ。人はな争そっていてもな一生懸命生きてんだ!魔物も同じようにな」

将軍「………」

剣士「それがあるから泣いたり喜んだり信頼しあえるんじゃねえのか!」

将軍「………」

剣士「ふざけんなよ……てめえの思い通りになんかさせるかよ……」

将軍「……愚か者め。ならば死ね」

剣士「………」ザッ!

将軍「ハアァァアッ!」フォオッ!

剣士「オオオオッ!」

シュバッ!ガギ……ッ!

将軍「ほう……」

剣士「グギギギッ……」

将軍「………」

剣士 (こいつ片手でこんな重てえ斬撃出来んのかよ!)

盗賊「………」ダッ!

シュ!……ズガガッ!

将軍「小さき者よ無駄だッ!」

盗賊「………」

剣士「ウオオオオッ!」

ギャリリ……ザッ!

剣士、盗賊「………」

将軍「………」グッグッ……

剣士 (暫く見ねえうちに何故こんな強くなってやがる……)

将軍「まだ……完全とはいかぬか……」

剣士「ああ?」

盗賊「……剣士」

剣士「なんだ?」

盗賊「人を相手にしてるとは……思わない方がいい……」

剣士「どういうこった?」

盗賊「………」

将軍「そっちの小さき者はわかってしまったようだな」

剣士「何をだ!?」

将軍「私が……人間の先にいる存在になっている事をだ」

剣士「先にだぁ?……盗賊よなんだそりゃ」

盗賊「魔物……」

剣士「ッ!?」

将軍「そのような賤陋の存在では無い。私はな神に等しい者に近付いているのだ」

剣士「盗賊よ……」

盗賊「………」

剣士「こいつは化物になっちまったって思っていいのか……?」

盗賊「………」コクッ……

剣士「………」

将軍「神に等しい……いや、神を越えた存在に私はなるのだアハハハハッ!」

剣士「チッ……イカれてやがる……」

盗賊「………」



喚起士「……将軍は何をしようとしているのですか……それに」

魔喚士「それに……女王を何故遠ざけたのか……かしら?」

喚起士「………」

魔喚士「答えてあげると思う?」

喚起士「いいえ……ですから

魔喚士「カンヘルを討ち取った後、私を捉え聞き出す……?」

喚起士「………」

魔喚士「それもいいかもしれないわね……出来るならだけど」

喚起士「………」

魔喚士「フフフ……教えてあげるわ。私には興味無い事だし……」

喚起士「………」

魔喚士「それにそこのスフィンクスと貴女にはカンヘルのエサになって貰うし」

喚起士「………」

魔喚士「ただで魂貰うなんて悪いじゃない?だから教えてあげる」

ジノ「喚起士……こいつムカつくね……」

喚起士「それほど自信があるんでしょう……」

ジノ「………」

喚起士「魔喚士さん……そう簡単にはいかないと思いますが」

魔喚士「そうかしら?……簡単にいかなくても結果は決まっているから。カンヘルを相手にするんだからね」

喚起士「………」

魔喚士「さて、カンヘルがお腹を空かせちゃうと可哀想だしフフフ」

カンヘル「……ゥゥ」

魔喚士「将軍は何をしようとしているのか……」

喚起士「………」

魔喚士「この国の兵隊さん達を生け贄に捧げるみたいよ。ここら辺りの人間を巻き込んでね」

喚起士「………」

魔喚士「そして纏まった魂を将軍が取り込む……」

喚起士「そんな事可能なんですか……」

魔喚士「さあ?でも可能なんでしょう。自分自身を魔物に変えちゃうくらいだもの」

喚起士「なら姫宮さんは……」

魔喚士「それを発動させる鍵って言った方がいいのかしらね」

喚起士「………」

魔喚士「なにやら女王は特別な生まれみたいね。錬金術師……って人の血を引いてるらしいわ」

喚起士「………」

魔喚士「女王の事……聞いても驚かないのね」

喚起士「……将軍が言っていましたから」

魔喚士「そう、つまらない。でも中々の悲劇よね。女王だと思っていたのに女王では無かったなんて」

喚起士「………」

魔喚士「この国の人達も何も知らずに女王では無い者に従っていたんだから」

喚起士「………」

魔喚士「そう睨まないで。本当の事言っただけだし」

喚起士「……将軍が姫宮さんを遠ざけたのは何故ですか?」

魔喚士「それは私に女王の血を横取りされない為じゃないかしら。私って余程将軍から信用されて無かったのね……ちょっとショック」

喚起士「将軍と貴女は仲間では無かったんですか……?」

魔喚士「それは違うわ。あれよ、利害が一致しただけ。もう不一致だけれども」

喚起士「………」

魔喚士「カンヘルって結構食べるのよ。で、将軍が協力するならエサをくれるってね」

喚起士「………」

魔喚士「こんなとこかしら」

喚起士「……こんな事を貴女に言うのは無駄なのかもしれませんが」

魔喚士「うん?」

喚起士「将軍を止めようとは思わなかったんですか……カンヘルを還そうとは思わなかったんですか……」

魔喚士「全然!将軍の事は興味無いし、カンヘルを還そうなんて思った事も無いわ」

喚起士「……その行いで消えなくても良かった命があったとしてもですか?」

魔喚士「いずれは皆消える命だもの。少しぐらい早く消えてもね構わないでしょ。フフフ」

喚起士「………」

魔喚士「……思い出した!その目あれに似てるわね!」

喚起士「………」

魔喚士「カンヘルを還そうとしたお馬鹿さんに。そっか、あれが貴女のお兄さんだったのね」



将軍「ハアアアッ!」

ガガガガギャッ!ギリリッ……

剣士「グアアッ!ぐぅ……」

盗賊「………」バッ!

将軍「ふんッ!」

ズドッ!ガシッ……

盗賊「………」グググ……

剣士 (やべぇ……まともに反撃出来ねえッ!)

将軍「受けるしか出来ぬか?」

剣士「………」

将軍「ふはははッ!そうだろうな。只の人では私に敵う筈がない」

剣士「デアアアアッ!」ズアッ!

将軍「………」スゥ……

ガギィンッ!……

ヒュン……

剣士「しまっ」

盗賊「ッ!」

将軍「終わりだ。私の糧となり死ねる事を喜べッ!」ブワッ!

ザバンッ!……ギギッ……

剣士「………?」

将軍「……ぬぅ」

ギギギギッ……

召喚士「………」

剣士「召喚……士……」

ネメア「何をしている!早く剣を取れ!」

剣士「ぁぁ……」バッ!

将軍「……いい目をしているな」

召喚士「………」

剣士「すまねえ……」

召喚士「………」

ネメア「これが将軍か?」

剣士「ああ……」

ネメア「お嬢は……何かあったのか?」

剣士「………」

ネメア「………」

召喚士「剣士……」

剣士「………」

召喚士「俺は今約束を守ったよ」

剣士「………」

召喚士「今度はお前が約束を守れよ」

剣士「………」

召喚士「喚起士さんはこの先か?」

剣士「ああ……この上に行ったぜ……」

召喚士「そっか……行こうネメア」

ネメア「は?この状況で行けるか!」

召喚士「剣士……俺達は必要か?」

剣士「……いや、必要ねえぜッ!」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「行くから。お姫様も守れよ」

剣士「ああッ!任せとけッ!」

召喚士「………」

タタタッ……

将軍「何故行かせた?」

剣士「てめえこそ……」

将軍「………」

剣士「盗賊よ……こっちは俺だけでいいから姫さんを守ってくれ」

盗賊「………」



タタタ……

召喚士「………」

ネメア (剣士を信頼し……か。中々やるではないか)

召喚士「………」

ネメア (少ぉ…………しだけ見直したぞ、召喚士よ)

召喚士「あああ……」

ネメア「どうした?」

召喚士「恐かったね……」

ネメア「……は?」

召喚士「あの人何か超睨らんできたよ……あんなんと戦うんじゃなくて良かったよね」

ネメア「………」

召喚士「喚起士さんの仇もあんな感じなのかな……」

ネメア「………」

召喚士「やる気無くなるよね」

ネメア「………」

召喚士「もっとこうさ……なんて言うの、色気みたいな物欲しいよね」

ネメア (こいつ……自分が今置かれている状況を理解してるのか……?)

召喚士「あはははは!」

ネメア「……???」

召喚士「そこに何か妖精が見えるよぉ」」

ネメア「………」

召喚士「………」ブツブツ……

ネメア (ああ……そう言う事か……)

召喚士「オッパイ……オッパイ……」

ネメア (先程の……剣を受けた時の恐怖で錯乱してるのか……)

召喚士「………」

ネメア「行くか……」

タタタッ……



傭兵「ぉぉ……」

召喚士、ネメア「………」

傭兵「魔物を従えた女同士の戦いなんて滅多に御目にかかれないぜえ……」

召喚士「あんたこんな所で何やってんの……?」

傭兵「はべだがばばきゃあわッ!」ビクゥッ!

召喚士「………」

傭兵「ななななんだ……お前さんか。ビビらすなよ……」

召喚士「何でいるの……?」

傭兵「何でってそりゃ……俺とお前達は仲間だからさ!」

ネメア「仲間にしたのか……」

召喚士「俺はしたつもりは一切無いけど……」

傭兵「………」

ネメア「……まあいい。そこをどけ」

傭兵「まあ待ちなよ。クククッ」

ネメア「ああ?」

傭兵「少し様子を伺ってからのがいいだろうがよ。な?」

ネメア「………」

傭兵「それに、扉の隙間見てみ」

召喚士、ネメア「……?」ソゥ……

傭兵「な?」

ネメア「何が、な?なのだ……」

召喚士「なるほど……」

傭兵「わかるか……」

召喚士「わかる……」

ネメア「?」

傭兵「これは世紀の対決だ。水を指しちゃいけねえぜ」

召喚士「……そうだね」

ネメア「………」

傭兵「いいな……」

召喚士「いいね……」

ネメア「何がだ?」

傭兵「こう……な」

召喚士「そう……ね」

ネメア「………」

傭兵「神乳対……」

召喚士「魔乳の戦い……」

ネメア「………」

傭兵「おいおい……あの白い魔物に押し付けてるぜ……」

召喚士「喚起士さんも負けずに頑張って貰いたいな……」

ネメア「………」



喚起士「………」

魔喚士「神の側に居る者を人間の都合で好きにしてはならないって。知らないわよそんな事」

喚起士「………」

魔喚士「例え神の側に居る者でも私はカンヘルを心から愛してしまったんだもの……」

喚起士「………」

魔喚士「貴女のお兄さんもそれを止めようだなんて馬鹿げてると思わない?」

喚起士「………」

魔喚士「……だから言ってあげたの。無駄な努力ご苦労様……死ねって」

喚起士「………」ギリ……

魔喚士「そうその目!そっくりだわ。……でもその目好きよ」

喚起士「………」

魔喚士「悔しさ……無念さ……その類いの感情が籠った視線……」

喚起士「………」

魔喚士「そんな目で見詰められたら……ふふ、濡れてきちゃう」

喚起士「兄は……さぞ悔しかったでしょう……」

魔喚士「そうかも。カンヘルを還せなかった……」

喚起士「いえ、そうではありません……」

魔喚士「……?」

喚起士「貴女のような人間を相手にしなければいけなかった事……貴女のような人間を止められなかった事です……」

魔喚士「………」

喚起士「……これから私はカンヘルを討ちます。そして貴女には……」

魔喚士「殺す?」

喚起士「いいえ。貴女が興味が無いと言っていた人間に裁いて貰います」

魔喚士「そう……」

喚起士「………」

魔喚士「それで……お兄さんのようにならなければ良いわね……ねえカンヘルふふ」

カンヘル「……ゥゥ」

ジノ (このカンヘル……何かおかしい……)

魔喚士「さあ……始めましょう。貴女の悲鳴聞かせて頂戴……それが私の糧になり……カンヘルの糧になる……」

喚起士「………」

魔喚士「お兄さんのように……すぐに死なないでね」

喚起士「……闇夜に架かる初月の如く眠れる射の牙よ……いざ我の元にッ!」

スバシュウッ!

魔喚士「へぇ……武具召喚ね。珍しい」

喚起士「ジノ……行きます。お願いしますね」

ジノ「任せといてッ!」



将軍「ヌアアアッ!」ゴスッ!

ガギッ!……ギチ……

剣士「……グゥゥゥッ!」

将軍「もう力の差は歴然だ。諦めろ」

剣士「………」

将軍「己が生き歩むべき道から逃げたお前が死ぬ事からは逃げぬとは狡猾だな」

剣士「………」

将軍「……楽にしてやる。疲れただろう?逃げ生きる事に。死ぬ事に怯える事に」

剣士「………」カチャ……

将軍「………」

盗賊「………」

将軍「そうか……剣を下げたと言う事は……」

剣士「俺はよ……」

将軍「……?」

剣士「お前から逃げた時から……強くなろってな頑張ってきたんだぜ……」

将軍「………」

剣士「お前ら……権力を持ってる奴等が弱い人に……魔物にしてる事……全部ぶっ壊してやろってな……」

将軍「………」

剣士「だがよ……全然強くなんねえんだよ……弱いままだ……」

将軍「………」

剣士「嫌だよな弱いって……何にも助けらんねえし……欲しいもん何にも手に入らねえしよ……」

将軍「………」

剣士「今な……自分が弱過ぎて泣くほどぉぐやしいんだぜええ!」

将軍「………」

剣士「はあ……怖えよぉ……悔しいよぉ……ぐうぅ……」

将軍「………」

剣士「………」カチャ……ドッ!

将軍「剣を床へ突き刺し何をするつもりだ?」

剣士「……先へ行くんだよ」

将軍「………」

剣士「盗賊よ……」

盗賊「……剣士」

剣士「俺が死んじまったら……姫さんに名前貰ってくれよ」

盗賊「………」

剣士「………」

盗賊「嫌……」

剣士「そっか……なら死ねねえな……」

盗賊「………」

剣士「……親父これで終わりだ。来いやッ!」

将軍「終わりか……出来るだけ苦しませずに逝かせてやる。行くぞッ!」バッ!



将軍「……ッ!!」

剣士 (悪い盗賊……俺死んだわ……)

将軍「………ッ!」

剣士 (人間死ぬ前には……周りの音が聴こえなくなるんだな……)

……死と向き合った先に真の強さがあるのではないのか?

剣士 (ああ?……ネメアよ、本当にそんなもんあんのかよ……)

……私を守って!……私……弱いから……

剣士 (すまねえ姫さん……その約束守れそうもねえわ……俺も弱えから……)

……戦う相手を倒したいの?

剣士 (盗賊よ……何でそう思うんだろうな。負けたくねえ……から?どうなんだろうな……)

……剣士さ、何で旅をしてるの?

剣士 (………)

……強くなりたいんだろ?……何も言わないで付いて来ればいい

剣士 (………)

……今度はお前が約束守れよ

剣士 (召喚士……)

剣士 (どうすれば召喚士に追い付けるんだろな……)

剣士 (……一度でいいから……)

将軍「………ッ!」

剣士 (早く斬れよ……?……剣が……)

将軍「……ッ!」

剣士 (遅せえ……これが先ってやつなのか……)

……無刀取り

剣士「………」バッ……

バシッ……シャァッ!……



傭兵「あの白い魔物に服引っ掛かって胸元捲れねえかな……」

召喚士「………」

ネメア (なんだあれは……カンヘルの様子がおかしい……)

傭兵「上下に動けって!」

召喚士「ネメア……」

ネメア (くだらん事を言うのだろ……無視だ)

召喚士「喚起士さん……本当にカンヘル倒せるんだよね?」

ネメア「………」

召喚士「もし……」

ネメア「心配はいらない。一撃で終わる」

召喚士「え……一撃?」

ネメア「………」

召喚士「喚起士さんはそんな凄い攻撃出来るの……?」

ネメア「そうだ」

召喚士「でも……かわされたり……」

ネメア「それも無い。ジノがいるからな」

召喚士「ジノ?ジノがどうするの?」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「私は……本来、止めるべき立場だ……」

召喚士「……何を?」

ネメア「ジノの死を……」

召喚士「……は?」

ネメア「ジノが選んだ選択だ。私は黙って見ている事しか出来ない……」

召喚士「………」

ネメア「………」

傭兵「左右でもいいぜってぇぇッ!」

召喚士「ジノが何するかわからないけど死ぬって……ネメア本当にそれでいいの……」

ネメア「いいわけ無いだろ!……だが」

召喚士「だが何?……お前自分の妹だろ!助けてやれよ!」

ネメア「私だってそうしたい!だが私ではどうする事も出来ないんだ!」

召喚士「なんだよどうする事も出来ないって!ふざけんなよッ!」

ネメア「お前にわかるか!助ける事も身代りになる事も出来ず、ただその死を見ている事しか出来ない者の気持ちが!」

召喚士「そんなのわかってたまるかッ!お前がジノを助けてやらなくて誰が助けるんだよ!」

ネメア「………」

召喚士「喚起士さんも何で平気でいられるんだ!仇を討つ為ならジノがどうなってもいいって言うのかよ!」

ネメア「喚起士は……ジノの事は知らない……」

召喚士「なんだよそれ!ジノは喚起士さんの為に死んでも良いって事なのかよ!」

ネメア「そうだ……それがジノの覚悟だ」

召喚士「………」

ネメア「後……もしジノを救えば喚起士が死ぬ」

召喚士「………」

ネメア「……これでも私の勝手でジノを助けられると思うか?あの二人が……相手を想うが故の行動を……」

召喚士「なんなんだよ……そんなの……」

ネメア「………」

召喚士「本当になんなんだよ……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「召喚士よ」

召喚士「………」

ネメア「きっと私が言った事が正しく無く……お前が思っている事が正しいのだろう……」

召喚士「………」

ネメア「………」

召喚士「何か手は無いの……?二人供助けるさ……」

ネメア「………」

召喚士「俺は……喚起士さんとジノを死ぬのを見るのにここまで付いて来たなんて嫌だよ……」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「私はな、ジノの話をして……お前があんなに真剣に怒るとは思わなかった……」

召喚士「……?」

ネメア「お前の言った言葉で今心が揺らがなければ……私は兄失格だ……」

召喚士「………」

ネメア「召喚士……力を貸せ。二人を助けるならばお前の力がどうしても必要だ」

召喚士「……俺の力?」

ネメア「……そうだ」

召喚士 (お、俺の力……って。まさかここに来て何か開花しちゃったのか……?)

ネメア「………」

召喚士 (ネメアにしかわからない何かを……)

ネメア「貸すのか貸さないのか……どうする?」

召喚士「そ、その力ってなに?」

ネメア「………」

召喚士「………」

ネメア「まだ知る必要は無い。いいから貸すのか貸さないのか答えろ!」

召喚士「……それで本当に助けられるんだよね?」

ネメア「ああ、間違いなく」

召喚士「なら……貸すよ。俺。力を存分に使ってよ!」

ネメア「ありがとう召喚士……」

召喚士「いいよ。あ、あのさネメア……?」

ネメア「なんだ?」

召喚士「その力を使うのに……蒼頭みたいな刀無くて良いのかな?」

ネメア「?」

召喚士「ほら、格好良く構えて……卍

ネメア「いらん……何も必要無い……」

召喚士「そっか……」

ネメア「………」

召喚士「何かポーズ決めなくて

ネメア「必要無い!」

召喚士「そっか……」

ネメア「………」

召喚士「やっぱりこう格好いい

ネメア「しつこいッ!いらんと
言ったらいらんッ!」



喚起士「………」グッ……

シュパッ……グバッ!キンッ……

カンヘル「……ゥゥ」

魔喚士「まあ当然よねフフ。その矢で私を倒せればそれで終わりなんだから」

喚起士「………」

魔喚士「でも無駄。私を狙ってもカンヘルが守ってくれるし」

喚起士「確認しただけですから」

魔喚士「そう。……さあ見せて、貴女の最高の攻撃を!」

喚起士「ジノ……」

ジノ「………」コクッ

喚起士「闇夜に輝きし地獄の狩人よ……師の意志を受け継ぎし清浄と破浄の力を!いざ我の元にッ!」

……ォォォオオオッ………

魔喚士「………」

喚起士「………」

魔喚士「……ん?まさか……その矢だけかしら?」

喚起士「そうです……この一本の矢だけです」

魔喚士「………」

喚起士「………」

魔喚士「そんなみすぼらしい矢で……一体何が出来ると言うの?もしかして馬鹿にしているのかしら」

喚起士「いいえ、馬鹿になどしていません。……これで終わります」

魔喚士「ふぅん……」

ジノ「行くよ喚起士!」

喚起士「お願いします!」

ジノ「……たああ!」ダッ!

ダダダッ!……ガシッ!

カンヘル「……ゥゥ」

魔喚士「……?カンヘルを捕まえて何を……」

ジノ (なんで張り付いても何もしないの?)ググッ……

魔喚士 (……何するかわからないけど、このままやらせてあげるって言うのはシャクよねフフフ……)

喚起士「………」グッ!

魔喚士「カンヘル……」

カンヘル「……ゥゥゥ」……ガブッ

ジノ「え……ギャアアァァ……ァァ……」

ズガァッ!ズザザザァァ……

喚起士「ジノッ!」

ジノ「アア……アアァァ……グア……」

魔喚士「フフッ駄目じゃないカンヘル。つまみ食いしちゃ」

喚起士「ジノ!ジノッ!」

ジノ「喚起……士……ァァ……」

魔喚士「ごめんなさいね。邪魔しちゃって」



執事「………」

女兵士「………」

執事「……これならば如何でしょうか」スゥ

女兵士「………」クイッ

執事「………」

女兵士「……マズッ」

執事「………」

女兵士「何でお湯を淹れるだけなのに不味いのって!」

蒼頭「御婦人……あまり言わぬ方が……」

女兵士「はい……貴方かそう仰るならって」ウフッ

蒼頭「………」

執事「……?……蒼頭様」

蒼頭「……は、はい?」

執事「上へ参りましょう……終わりの時が来たようで御座いますので」

蒼頭「終わりの時?……誰がの戦闘が終ったと言う意味で御座ろうか?」

執事「………」

蒼頭「………」

女兵士「……?」

執事「……本来なら私めはここを通さぬ役目で御座いました。それももうお仕舞いのようです……」

蒼頭「そうか……剣士やったな……」

執事「旦那様……」

蒼頭「………」

女兵士「私は?どうするって?」

執事「貴女様はここへお残りになられた方が……」

女兵士「いーやッ!女ひとり残してどうすんのよ!」

執事「しかし……」

蒼頭 (御老人もハッキリ言ってやればいいものの……)

女兵士「男二人で勝手に決めるなって!」

蒼頭「男二人で?」

女兵士「はい……私のナイト様……」

蒼頭「某……女ですぞ……?」

女兵士「……男でしょ?」

蒼頭「女で御座ります……」

女兵士「嘘ぉ……」

執事「蒼頭様は女性で在られますよ。人間と同じ……いえ、これは余計な事で御座りますね……」

女兵士「………」

蒼頭、執事「………」



将軍「こ、これは……」

剣士「無刀取り……ってんだ……」

将軍「………」

剣士「……てめえの負けだ」

将軍「………」

剣士「………」

盗賊「……剣士」

剣士 (やべっ……膝が笑ってやがる……。蒼頭はこんなんを涼しい顔してやりやがったのか……なんて野郎だ……)

将軍「………」

剣士「どうする?まだ続けるか?あ?」

将軍「………」

バタンッ……

蒼頭「剣士!……姫様!姫様如何なされたッ!」ダッ

執事「旦那様……坊っちゃん……」

剣士「………」

将軍「爺……お前が来たと言う事は……終わりか」

執事「はい……旦那様……いえ、将軍様……」

剣士「……?」

将軍「………」

執事「坊っちゃん……もう剣を下ろしてください……」

剣士「………」カチャン……

将軍「そうか……そう……か……」

剣士「爺よ……てめえの願い、これで叶ったな?こいつの……」

執事「はい……」



蒼頭「姫様!確りとしてくだされ!」

姫宮「………」

蒼頭「お子!何があった!?」

盗賊「………」

姫宮「蒼頭……」

蒼頭「姫様……」

姫宮「私……女王じゃ無いんだって……」

蒼頭「……どう言う事で御座ろうか」

姫宮「私……あたじ……ふうぁああっ私は誰なのぉぉ!」

蒼頭「………」

姫宮「蒼頭……うぅ私は何なのぉ……何なの……」

蒼頭「………」

剣士「蒼頭……来い」

蒼頭「何があった……姫様が……」

剣士「あいつよ……ここの王の子じゃ無いんだとさ……」

蒼頭「………」

剣士「何て言ってやれば……あいつを守るって言ったのによ……」

蒼頭「………」

剣士「あいつを救える言葉……俺にはねえんだよ……」

蒼頭「………」

剣士「どうしたらいいんだろうな……」

蒼頭「……某に任せろ」

剣士「………」

蒼頭「………」



姫宮「………」

蒼頭「姫様……姫様の事、剣士に伺いました」

姫宮「蒼頭……私……」

蒼頭「……誰であろうと姫様は姫様では御座らんか」

姫宮「でも……」

蒼頭「ご自分で……自分が自分では無いと申されるか」

姫宮「………」

蒼頭「姫様お聴きください……今、姫様はご自分が否定され……そして己自身も否定しようとしておられます」

姫宮「………」

蒼頭「それでは……あの頭巾を取った一件までの某のような者になってしまいますぞ?」

姫宮「………」

蒼頭「姫様は生涯、自分として生きていかねばならないのです」

姫宮「………」

蒼頭「……これは某がネメア殿に言われた言葉ですがな。姫様の心情痛いほどわかりますが……」

姫宮「………」

蒼頭「………」

姫宮「………」

蒼頭「………」ソゥ……ダキ……

姫宮「………」

蒼頭「某……幼少の頃は甘えん坊でしてな。何かあればこうして母上の胸元に……」

姫宮「………」

蒼頭「辛いで御座いましょう……悲しいで御座いましょう……」

姫宮「うぅぅ……」

蒼頭「姫様、今は……泣かれる事が姫様に必要で御座います……」



執事「………」

将軍「私が目指した物はなんだったのだ……答えてくれないか執事よ……」

執事「儚き白日夢……触れてしまえば脆くも崩れ去る夢幻……で御座います……」

将軍「………」

執事「どうかこの行いで生じた罪を償い……以前、共に過ごした時間を取り戻しに……」

将軍「そのような事が許されると思っているのか……?」

執事「いいえ……」

将軍「そうか……」

執事「本来であれば将軍様を止める役目……私めが勤めるべきでありました……」

将軍「………」

執事「偶然とは言え……坊っちゃんに……」

将軍「言うな。……これはこうなるべくしてなった事なのだろう……」

執事「………」

将軍「また……お前の淹れた不味い茶を飲みたいものだ」

執事「………」

将軍「ふふ……その様な顔をするな」

執事「将軍様……」

将軍「世話になった。……次にお前と会うのは地獄か」

執事「はい……」

将軍「ではな……」ダッ……

執事「………」

執事「うぅくぁ……私めは……私めは……」



将軍「………」カチャ……

剣士「……また剣持って何するつもりだ」

将軍「聴け。……ここより三里離れた場所に私の軍が展開している」

剣士「………」

将軍「この国の兵が私の贄になる事から逃れられぬようにな」

剣士「チッ……」グッ……

将軍「……それは貴様が止めろ。我が子ならば出来るだろう」

剣士「……どう言うつもりだ?」

将軍「………」

剣士「………」

将軍「人は完全を求め……完璧な世界を造ろうと……」

剣士「………」

将軍「そこに辿り着くまでに如何なる事も無謬しなければならない……」

剣士「………」

将軍「白き布に一点の染みが無いようにな。……だが私はそれを成せなかった……」

剣士「………」

将軍「今の私ならば……いや、止めておこう。もしは無いのだからな」

剣士「……さっきから何を言ってやがる」

将軍「事を成せぬ者がどうなるか……その末路を見せてやろうと思ってな」

剣士「………」

将軍「………」スゥ……カチャ……

剣士「………」グッ……

ヒュッ……ドスッ!

剣士「なッ!?」

将軍「グアァァ……グゥ……」

剣士「てめえ何してやがるッ!自分を……」

将軍「確りと……見ておけ……」

剣士「………」

将軍「貴様が否定した者の最後を……ッ!」

剣士「………」

将軍「……お前……いい剣を手に入れたな……」

剣士「………」

将軍「………」

剣士「……とっとと逝け」

将軍「フフ……気を……使わせたな……。お前の前で……父親……面……」

剣士「………」

将軍「……せねば……」

剣士「………」

将軍「………」

剣士「………」

剣士「ふざけんなよ……」

剣士「何が貴様が止めろだ……てめえの尻拭い押し付けやがって……」

剣士「こんな事になるなら……最初っからすんなよ……」

剣士「………」

剣士「……てめえはこの世界を……」

剣士「………」

剣士「馬鹿だぜ……親父よ……」

剣士「………」



ネメア「………」

召喚士 (俺の力ってなんだよぉぉもうぅぅぅッ!)

ネメア「………」

召喚士 (もったいつけるなよぉぉぉ!)

ネメア「………」

召喚士 (……そうか!まだ知らなくていいって事は、まだやっちゃ駄目だからだな。と言う事は……)

ネメア「………」

召喚士 (変身系か!なるほど……変身してから出てっても俺だってわからないもんな……)

ネメア「……ついにか」

召喚士 (それならそうって言ってくれよネメアぁ。……あれ?じゃあ必要だよな……)

ネメア「ジノ……」

召喚士 (決め台詞みたいなの!)

ネメア「………」

召喚士 (こう……格好いいのがいいよな……)

ネメア「あれが……レラジェの魔矢か……」

召喚士 (んん……チェイングッ!……ちょっと違うな……)

ネメア「………」

召喚士 (正義……友情……勝利……愛……愛ッ!そうこれ!愛ってフレーズは入れたいな!)

ネメア「……恐ろしい力だ」

召喚士 (愛ある限り戦いましょう……この命燃え尽きるまでッ!……どっかで聞いた事あるな……)

ネメア「ッ!」

召喚士 (愛……愛……愛故に!……ちょっとな……)

ネメア「行くぞ召喚士ッ!」

召喚士「え?ま、まだ決まって無いんだよ!」

バターンッ!

これ次スレ行くか?

>>992
間違いなく行きますね……。
申し訳無いです。

次スレは自分で立てようと思うのでお待ちください。

エクレアとタルトの出番はありますか?

>>994
ありません(笑)

アレご存じなんですね……。



喚起士「ジノ!」

ジノ「喚起士……来ちゃ……駄目だよ!」

喚起士「ですが……」

ジノ「……いいから!ゴホッ……はぁ……」

魔喚士「お腹食べられても自分の所に来ないでって……健気なスフィンクスねぇフフッ」

喚起士「………」

魔喚士「スフィンクスもああ言う風に言ってるんだから、その矢で攻撃してきたら?」

喚起士 (ジノがいなければ……この矢は射てない……)

魔喚士「どうしたの?ほらほら早くしないとスフィンクス死んじゃうわよ」

喚起士「クッ……」

バターンッ!

ネメア「ジノォッ!」

喚起士「ッ!召喚士さん!」

魔喚士「またお客さんね……はぁ」

ジノ「兄……ちゃん……ハァハァ……」

ネメア「ジノ……」

魔喚士「……どなた?」

ネメア「貴様に名乗る名など無い!行くぞ召喚士ッ!」バッ!

召喚士「俺にも格好い

ダダッ!……ガシッ!

魔喚士「………」

ネメア「喚起士よッ!その矢を射るのだッ!」

喚起士「安易に射てません!」

ネメア「全てジノから聞いているッ!大丈夫だ!」

喚起士「………」

召喚士「ひいぃぃ……」

ネメア「召喚士よ恐れるな!お前は私に力を貸すのだろ!?」

召喚士「そ、そうだ……俺には力がる怖くない怖くない……」

ネメア「喚起士ッ!早くしろッ!」

喚起士「しかし……ッ!」

ネメア「私を信じろッ!」

喚起士「……わかりました」

召喚士 (目の前に化け物いるとやっぱり怖えぇぇぇぇッ!)

魔喚士「またなの……ふぅ。カンヘル……」

カンヘル「……ゥゥ」ガッ

ネメア「噛み付いても無駄だッ!」

魔喚士「な……カンヘル振り払いなさい!」

カンヘル「……ゥゥガァッ」ガスッ!

ネメア「離すかッ!」

魔喚士「あら凄いのねぇ……カンヘルでも振り払えない、噛み付かれても平気なんて」

ネメア「ジノにした事……カンヘルを葬った後、償わせるからなッ!」

魔喚士「やってご覧なさい。無駄だしね……」

ネメア「ウオォォォオオッ!」グググッ

召喚士 (怖くない怖い怖くない怖い怖くない怖い……)

喚起士「………」グッ!

ネメア「まだかッ!?」

喚起士「射ちますッ!!」

シュパッ!……

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召喚士「出でよ!!可愛い獣娘!!」★2
召喚士「出でよ!!可愛い獣娘!!」★2 - SSまとめ速報
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