弱虫ヴァンパイア(オリジナルss) (17)
オリジナルSSです
オリジナル書くのは初。よろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412506450
―魔界―
ヴァン(魔界は格差社会だ)
ヴァン(最高ランクをSSSとし、そこからSS,S,Aとランクが下がっていき、Eランクまでが存在している)
ヴァン(ランクの平均値って言うのは職業ごとに違っていて、僕、ヴァンパイアはBランクであることが普通だ。そんな中僕は……)
ミア「あらあら、ヴァン君じゃないの。元気してた?」
ヴァン「あ、ミアさん……どうも」
ヴァン(彼女はラミアのミアさん。Aランクという高いランクに存在してるにも関わらず、こんな僕にやさしく接してくれる)
ミア「今日は確か新しいランクを魔王様から授かれる日だったわよね? どう? ランクはCから上がったの?」
ヴァン「……ごめん、Dに落ちた」
ミア「……へ?」
ヴァン「……どうしよう……僕、このままEランクに落ちたら、スライムにこき使われるようになっちゃうよ……」
ヴァン(人間を1人も殺せたことがない僕は……ヴァンパイア平均のBランクはおろか、Cを維持することもなく、今日ランクをDに落とされてしまった)
ミア「えっと……ま、まあ、そんな日もあるわよ」
ヴァン「ミラさん、どうしよう……僕このままだとEランクだよ……!!」
ミア「ヴァン君、人を1人殺せたら、貴方だってきっと立派なヴァンパイアよ?Cランクには戻してもらえると思うわ」
ヴァン「……うん、そうはいっても……」
???「おーい! ヴァーン!」
ヴァン「……あ、デューク」
デューク「どうだ、ヴァン。同じヴァンパイアとして、お前のランクもかなり気にしてるんだ。ちなみに俺はAランクに上がったぜ」
ミア「ちょっとデューク君、今ヴァン君にそういう話は……」
ヴァン「Dになった」
デューク「な……マジかよ……1人くらい殺せって言ってるじゃねぇか……」
ヴァン「だって、そんなこと」
デューク「まさかまだヴァンパイアの癖に血を見るのが怖いとかいうんじゃねぇだろうな?」
ヴァン「そ、それは……」
デューク「はぁ……それで得意の召喚術で、メスの蚊を呼びまくっちゃあ血を集めてもらって、それで食って行ってるってのか? 冗談キツイぜ……」
ヴァン「ご、ごめん」
ミラ「デューク君、熱くなる気持ちは分からなくはないけど……少し言い過ぎじゃない?」
デューク「このくらい言わねぇと、ヴァンには分かんないんですよミラさん。いいか、ヴァン、これだけは言っとく。体験こそしたことないが……」
デューク「Eランクは地獄だぜ」
ヴァン「……!!」
ヴァン(僕が……Aランクになるには……人を殺すしかない、ん、だよね……)
デューク「……やり方なんて簡単だろ? 人間界に行ってこいよ……弱くておいしそうな人を見つけたら……そのままガブリだ……学校で教えてもらったし、大丈夫だろ?」
ヴァン「…………」
デューク「後はお前次第だ。俺はまた飯を食いに人間界に行く。じゃあ、また後でな」
ミラ「……ヴァン君」
ヴァン「僕も、もう逃げ場はないもんね……やるしか、ないんだよね……」
ミラ「ええ、そうね……ただ、できる? まずはネズミとかで練習してから」
ヴァン「大丈夫。これでも学校では成績優秀だったんだし……きっと大丈夫……覚悟を決めたよ。行ってきます」
―人間界―
ヴァン(人間界は、魔界なんかよりも広く、時間の流れがゆっくりだ)
ヴァン(魔物には、この人間界に住み着いて、うまく人を喰い殺しながら生活している魔物もいる……僕はそんなことをしていなかったけれど)
ヴァン「まずは簡単そうな人間から、血を吸ってみようかな……」
ヴァン(血を見るのは怖いけど、味は好きだから……目を瞑って首筋を噛めば、絶対大丈夫だよね)
ヴァン「子供……それも力の無さそうな女の子とかがいいな……どこかにいないから」
ヴァン(僕は羽根を隠し、耳を隠すためにヘッドフォンを着ける。そして、辺りを見回し、1人で歩く金髪の少女を見つけた)
ヴァン(まずは……あの子だ)
ヴァン(彼女に気付かれないように、街中を歩く。少女はどこに行くんだろう?)
ヴァン(籠の中に入ってる果実を見る限り……おつかいの帰り、とかかな?)
ヴァン(そんな女の子を……殺すのか……)
ヴァン(……………………)
ヴァン(いや、今あの子を殺さなかったら、僕がスライムに奴隷にされる生活が始まるんだぞ。そんなの僕だけじゃない。ヴァンパイア一族の恥になる。歴史にそんな形で名を残したくないよ……)
ヴァン「……今やらないで、いつやるんだ……」
ヴァン(もう一度、心に固く決意をして、少女の跡を追いかける)
少女「~♪」
ヴァン(鼻歌を歌いながら、上機嫌で歩く少女……町を抜けて、畦道を歩き、どんどん遠くへ、遠くへ)
ヴァン(……お家に帰ろうとしてるんじゃ、ないのか?)
ヴァン(何にせよ、僕としては好都合だ……誰も見ていないから、人間界の魔物ハンターに捕まることもなさそうだしね……)
ヴァン(……僕の食事第一号……いただきます!!)
ヴァン(その瞬間、僕は羽根を出して低空で滑空し、彼女の前に回り込んだ)
少女「……?」
ヴァン(きょとんとした顔の少女は、少しつっている、まつ毛の長い青い瞳をぱちくりさせて、僕の事を見る)
ヴァン(人形のような美しい少女に近づき、僕は牙を剥いて、首筋めがけて――)
少女「あの、何ですか?」
ヴァン「え?」
ヴァン(いきなりの想像してなかった言葉に、思わず動きが止まる。首筋まで、あと数センチといった距離で)
少女「町を出たあたりから、ずっとあたしの事見て、あたしの所についてきてましたよね……?」
ヴァン(バレ……てる?)
少女「もしかして変態さんかな? って思ってたけど、変態通り越してヴァンパイアだったんですね……」
ヴァン(……え?)
少女「誰に喧嘩売ってるのか……わかってんでしょうねこのクソ悪魔め」
ヴァン(そう言って彼女が懐から取り出したのは……一本の金色の銃だった)
ヴァン「ま、まさかそれ……」
アリス「あたしはアリス・フォン・リフィカツィオネ。この名前を聴けば……もうわかるわよね? 対魔物専用の銃を持つことを法律で許されている唯一の名家……その1人娘があたしよ」
ヴァン(……まずい子に喧嘩を売ってしまった……)
アリス「死にたくないなら……今すぐ離れて」
ヴァン「…………」
ヴァン(何も言わずに、すぐさま彼女から離れると……)
ヴァン「うわぁ!!」
ヴァン(すぐに思いっきり背中のマントを引っ張られる)
アリス「来なさい」
ヴァン「ひっ!?」
ヴァン(銃を頭に向けられて、何も言えなくなってしまった僕は……彼女に従うしかなかった……)
いったん中断。もう少し後でまた書きます
―屋敷―
ヴァン(リフィカツィオネ家。魔物を倒すために、対魔物用の銃を持つことを許されている、いわば魔物の天敵となる名家。そこの一人娘の少女、アリスに引っ張られて、僕はリフィカツィオネ家の屋敷の前に来ていた)
アリス「ほら、来なさい」
ヴァン「もう離していいよ。どうせついていくことしか、僕にはできないんだから」
アリス「……」
ヴァン(アリスは屋敷の入り口の前まで抵抗しない僕を引きずると、銃と手を離した)
アリス「ほら、入って」
ヴァン(彼女にそう言われて、僕は屋敷の重い扉に手をかけて、ゆっくりと扉を開ける)
ヴァン(屋敷の中は想像以上に広く……)
ヴァン(想像以上に、何もなかった)
ヴァン「ここが、リフィカツィオネ家……なの?」
アリス「ここに来たからには、もうアンタは逃げられないわね……まず、名前は?」
ヴァン「ヴァンだよ……想像の通り、ヴァンパイアの」
アリス「……ねぇ、ヴァン、アンタは弱いから無理だろうけど……」
ヴァン「え?」
アリス「この写真に、見覚えはあるかしら?」
ヴァン(そう言って出してきた彼女の写真を見て、僕は血の気が引いたのがわかった)
ヴァン(その写真に写っていたのは、大量の血に塗れながら倒れている、いくつもの死体だ。もう一枚には、首についた傷痕が残っている)
ヴァン「…………」
ヴァン(言葉に詰まった僕は、硬い表情のまま、無言で首を横に振った)
アリス「……ふんっ、その感じなら、本当になんにも知らないみたいね」
ヴァン「君の家には……何もないね……テーブルやイス、生活に必要な最低限の物があるくらいで……ここの写真に写ってるのは……」
アリス「パパとママよ。傷痕から判断するに、ヴァンパイアに殺された……」
ヴァン「……ごめん」
アリス「なんで謝るの? 生きるために必要な行動、でしょ? 仕方ないとは思う、でもね……魔物を滅するための一族であるリフィカツィオネ家が、ヴァンパイアごときに殺されるだなんて、絶対にあっちゃいけないことなのよ……これは一族の恥の写真だわ」
ヴァン「……ど、どういうこと?」
アリス「だからこそあたしは、魔物を倒さなきゃいけないの……信頼を大きく失わせてしまった、リフィカツィオネ家を……何とか立ち上がらせないといけない……もうあたししかこの家には残されていないんだから」
ヴァン(……僕と同じだけど、違う。そんな矛盾に満ちた想いを、僕は彼女から受けた)
アリス「それで、手始めにこれを襲ったヴァンパイアから殺そうと思ってるんだけどね……アンタみたいな人に危害を与えることも出来そうにない奴は、殺したって信頼の汁一滴にもなりゃしないわ」
ヴァン「酷い事言うね……その通りだけど」
アリス「それで、ヴァンパイアについての情報が欲しいんだけど」
ヴァン「うーん……これだけの事が行えるって言うのは、相当ランクの高い魔物のはず……」
アリス「ランク?」
ヴァン(……しまった。人間には魔界のランクの事は、誰にも知られていないんだった……)
ヴァン「あ、いや、なんでもないよ。僕は知らない」
アリス「言いなさい。ランクって何?」
ヴァン「……魔界に存在する、魔物のランク……人を殺すことでランクが上がっていくんだ……そのランクが上がれば、それだけ良い待遇をされる。魔王様はそういうサイクルで、人間界の人間を減らして行き、ゆくゆくは世界を魔界で満たそうとしてるんだよ」
アリス「ふーん、初めて知ったわ……魔界の常識なのよね、それ」
ヴァン「うん」
ヴァン(全部喋ってしまった……)
アリス「そんで、アンタのランクは?」
ヴァン「Dランク……」
アリス「最高は?」
ヴァン[SSSまであって、最低は……Eランク」
アリス「仮にもヴァンパイアでしょ……」
ヴァン(こんな幼い女の子にまで、ため息をつかれてしまった……)
アリス「はぁ、まあいいわ。アンタを殺しても何の価値もないだろうし、もう帰って……」
アリス「あっ!」
ヴァン(彼女は呆れて僕を帰そうとする途中で、何かを思いついたらしい。年相応のにっこりとした笑顔を浮かべて、彼女は僕に近寄ってきた)
アリス「ねぇ、ヴァン。こうしましょ? あたしはアンタのランクを上げるために協力してあげる」
ヴァン「え?」
アリス「あの感じを見ると、ランクを上げるためにこっちに来たんでしょ? 違うの?」
ヴァン「そ、そうだけど……それが?」
アリス「だから、協力したげるって言ってんの!」
ヴァン「……協力、だって?」
アリス「そ、協力」
アリス「その代わりに、アンタは必ず、素性を明かさずに、ランクを上げて強い魔物と話せる状況をつくり、魔界であたしの親を殺した犯人を見つけてきて。いいわね?」
ヴァン「え? で、でも……それって君が人殺しに協力することになるんだよ? いいの?」
アリス「あたしだって、アンタにさせてることはおんなじよ?」
ヴァン(あ、そっか……彼女に協力するって事は、僕も……でも、悪い話じゃないよね……お互い。でも)
ヴァン「……もし、嫌だて言ったら?」
アリス「分からせる」
ヴァン「……それもう肯定しかないじゃん」
アリス「そういう事ね」
ヴァン「分かった……飲むよ、その条件」
アリス「本当? ふふっ、やったわね♪」
ヴァン(今日はもう疲れたな……彼女の事も気になるけど、魔界に戻ろう)
ヴァン「それじゃあ僕は……」
アリス「待って」
ヴァン「……?」
アリス「泊まっていきなさいよ。久しぶりなの。こうして誰かと話すの」
ヴァン「……アリスちゃん……」
アリス「嫌って言ってもいいのよ? 縛り上げるだけだから」
ヴァン「いや、別にかまわないよ。僕は」
アリス「……そう?」
ヴァン(彼女は少し、僕に似ている)
ヴァン(違うところの方がいっぱいあるけれど……僕は彼女みたいに簡単に殺すなんて言えないし、置かれてる境遇は正反対だ)
ヴァン(でも……自分自身の地位をあげようと、誰かを殺そうとしてるところとか、強くなろうともがいているところとか……だから、協力を飲んだ。そして、ここで泊まることも了承した)
ヴァン「君さえよければ、僕は大丈夫」
アリス「……えへへ、嬉しい。ありがと」
ヴァン「……うん」
アリス「じゃあ、明日から始めるわ。ヴァンのランクアップ大作戦!」
ヴァン「え、いきなり?」
アリス「もちろんよ!」
ヴァン(人を殺す僕たち魔物と、魔物を殺せる人間、アリス。僕らの奇妙な出会いは、後に奇跡だとわかる)
#1 弱虫ヴァンパイア END
とりあえずこんな感じです。よろしくお願いします
#2は今日か明日か、分かりませんが、またよろしくです
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