兄「北海道へ行ってみよ~ぅ」(133)

妹「こういう兄妹がいてもいいんじゃない?」の新婚旅行編です
単独でも読めるように投下していきます

ちなみに前作を3行で書くと
1、兄妹は幼いころから仲良く過ごす
2、両親の事故死をきっかけに男女の仲になる
3、ケジメを付けるために結婚(婚姻届は提出せず)
という流れです

―――上野駅

妹「あなた、カシオペア号って何番線から出るの?」

兄「13番線だよ」

妹「早く行こうよ」

兄「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」

妹「だって楽しみなんだもん」



兄「お、丁度入線したところだよ」

妹「わぁ恰好いい!」

兄「独特の存在感があるよね」

プシュー

妹「ドアが開いたよ。乗ろうよ」

兄「さぁ北海道へ行ってみよ~ぅ」

妹「何それ? 誰かの物まね?」

兄「○かりや長介だよ」

妹「古っ」

―――カシオペア号展望部屋

妹「この展望を独り占めできるなんて凄いねー」

兄「カシオベア号のウリのひとつでもあるんだけどね」

妹「シャワーにトイレに洗面台まであってホテルそのものね」

妹「テレビで見たけどプラチナチケットなんでしょ?」

兄「そうだよ、今回は運が良かったな」

妹「あなた、キス」

兄「ここで?」

妹「観光地に着く度にキスしようって言ったのはあなたでしょう?」

兄「ここは観光地ではないと思うのだが…」

妹「細かい事は気にしないの」

兄「それに見てごらん外を。写真撮ってる人がいっぱい居るよ?」

妹「私達じゃなくて列車を撮ってるんでしょ?」

兄「そうなんだけどね…」

妹「早くぅ」

兄「まぁいいか」

チュッ

プルルルルル

兄「お、発車だ」

妹「いよいよ新婚旅行の始まりね」



妹「この飲み物は?」

兄「ウェルカムドリンクだよ。タダだから自由に飲んでいいよ」

妹「凄い。ワインやウイスキーまである」

兄「シャワー浴びたら飲もう。さ、お弁当食べようよ」

妹「あなた、あーん」

兄「自分で食べるよ///」

妹「いいじゃない、誰も見てないでしょ?」

兄「恥ずかしいんだよなぁこれ///」

兄「」パク モグモグ

妹「どう? 美味しい?」

兄「うん、凄く美味しく感じるよ」

妹「じゃ全部私が食べさせてあげる」

兄「う、まぁ新婚旅行だしな」

妹「ふふっ」



妹「寝台列車に乗るの初めてよね」

兄「乗り心地はどうだい?」

妹「最高よ。気に入ったわ」

兄「2人で流れゆく夜景を見るのもいいもんだね」

妹「本当…。ずっとこうしていたいな」コテ

兄「腰が痛くなりそうだけどね」

妹「」ツネリッ
兄「いてっ」

妹「ムードぶち壊すようなこと言わないの」

兄「ごめん」



兄「夜も遅いし、そろそろシャワー浴びなよ」

妹「うん、一緒に浴びよう」

兄「え、1人分のスペースしかないぞ?」

妹「体くっつければ入れるよ」

兄「一応入れたけどあまり動けないね」

妹「どうやってお湯出すのこれ?」

兄「ここを押すとね」カチッ

シャー


兄「しかし何だな…、体くっつけてシャワー浴びるのって結構その、エロいというか…」

妹「えへへ、狭いんだからしょうがないでしょ」ダキ

兄「そんなに狭くないと思うのだが…」

妹「気のせいよ」

兄「それにしても妹、本当にいい体してるね、ってセクハラかな?」

妹「私達夫婦よ? そういう事言ってくれない方がよっぽどセクハラよ」

兄「…セクハラって言うのかそれ?」



妹「ふう、さっぱりした」

兄「はい、浴衣」

妹「あ、ありがとう」

兄「このワインせっかくだから飲まないか?」

妹「あら、あなたが酒を勧めるなんて珍しいね」

兄「特別な日だからな」

兄・妹「乾杯」


妹「札幌に着いたらどうするの?」

兄「市内を観光した後一泊して襟裳岬へ行こうと思ってるんだよ」

妹「聞いたこと無いけどどこにあるの?」

兄「北海道の真ん中の下に漏斗みたいな形してる所があるでしょ? その突端だよ」

妹「へぇ、どんな景色なんだろうなぁ」

妹「このワイン美味しいね」

兄「もう一杯飲む?」

妹「ううん、もういい」



妹「ねぇ」

兄「ん?」

妹「酒に酔って浴衣がはだけてる女が目の前に居るのよ?」

兄「もうすぐ青函トンネルに入るから、そしたら、ね」ナデナデ

妹「もう、焦らさないでぇ」ダキ

兄「海の下でエッチするんだよ? 凄い事じゃないか」

妹「神秘的ね。青函(性感)トンネルって言う位だから気持ちいいんだろうなぁ」

兄「…」

妹「…」

兄「さーて寝るべ…」
妹「だめっ!」

―――翌朝、札幌駅

妹「昨日は激しかったね。列車がいつもより揺れたんじゃないかな」

兄「そこまで凄くないと思うが」

妹「今夜も期待してる」

兄「努力します…」


妹「これからどうするの?」

兄「まずレンタカー借りて市内を観光しよう」

―――大通公園

妹「あなた、キス」

妹「ん」

チュッ


妹「そこに座ろうよ」

兄「いいよ」

妹「通りの真ん中に公園があるなんて珍しいね。雪まつりの会場なんでしょ?」

兄「ああ、その時が一番賑わうんだってさ」

妹「迫力あるんだろうなぁ」

兄「妹の雪像も作ってもらう?」

妹「やめてよ///」

訂正です
>>18、3行目
妹「ん」→兄「ん」

「ネー、OOチャンキョウモニイサントデートナンダッテ」
「キモッ、アノフタリホントウニキモイヨネー」

兄・妹「…」

妹「ああいう話聞くと悲しくなるね」

兄「気にするな」

妹「意識しないようにしてるんだけどね」

兄「でも父さんと母さんも同じようなこと言ってるかもね…」

妹「気にするな。ね」

兄「だね。この話は止めよう。むなしくなる」

妹「むなしさを解消するのに膝の上に座ったりして」チョコン

兄「う/// 昼間にこれは恥ずかしいな」

女「真昼間から見せつけてくれるわね」

妹「私達新婚なんです」

女「あら、それはおめでとう。若いうちにしか出来ないから存分にやっておいた方がいいわよ」

女「私も若ければ旦那と同じ事してるわ。今じゃ恥ずかしくて家の中でしか出来ないけど」

妹「今でも若いと思いますけど?」

女「外見だけよ。あ、旦那が来たわ。お幸せにね」

兄・妹「ありがとうございます」

妹「嫌味言われるのかと思ったわ」

兄「僕達も中年になれば家の中でしか出来なくなるのかな」

妹「ううん、私が強制的にしちゃうもん」

兄「まぁ夜なら酔っぱらったふりして出来るかな」



兄・妹「ふぁ~あ…」

兄「眠そうだね」

妹「あなたもね。ちょっと早いけどチェックインする?」

兄「だな。一眠りしよう」

続きます

―――ホテル

妹「わぁいい眺め」

兄「札幌の街が一望できるね。ロマンチックな夜になりそうだな」

妹「早く夜にならないかなぁ」

兄「ふぁ~あ眠い…。先に寝るよ」

妹「私も寝る」

―――数時間後

妹「あなた、あなた起きて!」

兄「ん? 何何?」

妹「もう9時よ」

兄「え!? 随分寝ちゃったな」

妹「私もびっくりしたよ。時計が狂っちゃったのかと思ったわ」

兄「まいったな」

妹「夜ごはん食べに行かない?」

兄「行くか。何食べようか?」

妹「うーん、折角だから外で食べようよ」

―――繁華街

兄「どこで食べようか?」

妹「あ、あそこなんかどう?」

(居酒屋・カップルシートあり)

兄「お、いいねぇ」

―――居酒屋

店員「いらっしゃいませ。カップルシートでよろしいですか?」

妹「はい」

店員「こちらへどうぞ」

妹「私達を見るなりカップルシート勧めて来たね」

兄「そりゃ腕組んだまま入ればそうだろ」



店員「ご注文は以上でよろしいですか?」

兄「はい」

店員「かしこまりました」

妹「他にも何組かいるね」

兄「みんな兄妹だったりしてね」

妹「それはいくらなんでも無いんじゃない? だけど同性のカップルだとこの席使えるのかな?」

兄「どうなんだろうね。あまり見たくない気もするが」

妹「『お前らが言うな』って言われちゃうよ」

兄「ははは、そうだね」


兄「トイレに行ってくるよ」

妹「早く戻ってきてね」

―――トイレ

男「あんたの連れ綺麗だね。俺のと交換しない?」

兄(この男は確か隣の席の…)

兄「何言ってるんです、あなたのお連れさんのほうが綺麗じゃないですか」

男「綺麗っちゃ綺麗なんだけど義理の妹なんだよねぇ」

兄(おや、同業者でしたか)

男「妹連れてカップルシートなんておかしいだろ? 恥ずかしくてなぁ」

兄「そんなこと言わないでくださいよ。だったら実の妹連れてる僕はどうなるんです?」

男「え!? 実の妹なの?」

兄「そうなんですよ。ですから隣にもっとおかしなカップルがいると思ってくださいよ。そうすればあまり恥ずかしくないと思いますよ」

兄「綺麗な女性を連れて美味しい酒と食べ物を口にするなんて最高じゃないですか(ちょっとオヤジ臭かったかな)」

男「まぁそうだが妹だからなぁ」

兄「女性として意識すればいいんですよ」

男「うむ、ひとつ訊きたいんだが妹と意識しないようにする何かいい方法ないかい?」

兄「そうですねぇ、名前で読んでもらってはどうでしょう?」

男「あんたは妹からなんて呼ばれてるの?」

兄「『あなた』って呼ばれてます」

男「けーっ、まいったねこりゃ。まぁでも名前で呼んでくれって言ってみるよ」

男「やれやれ、あんたには世話になってしまったね。そうだ、名刺を差し上げよう」

兄「あいにく僕名刺持ち合わせていなくて」

男「いいんだよ。何もあんたとビジネスをしようってんじゃないんだから」

男「男って言うんだ。よろしくな」

兄「いえ、こちらこそ(凄いな、金箔塗りの名刺だ)」

男「じゃ、俺席に戻るから」

兄(いけね、僕も戻らないと)

妹「遅いよー、何してたの?」

兄「ごめん、隣の席の人と話し込んじゃって」

妹「どんなこと話したの?」

兄「ウンタラカンタラって事をね」

妹「へぇ、隣も兄妹カップルだなんて」

妹「はい、あーん」

兄「ここでも?」

妹「口移しの方がいい?」

兄「いや…」

妹「ここでは右手は使わせないからね。私の腿の上に置いといて」

兄「例のエロゲの影響かい?」

妹「え?」

兄「何でもない」

店員「失礼します。こちら、隣のお客様からです」

兄「え」
妹「あら」

兄「どうも、ごちそうになります」

妹「ありがとうございます」

男「」ニコ

男妹「」フルフル



アリガトウゴザイマシター

妹「美味しかったね」

兄「ああ、雰囲気も良いしね」

妹「この街少し歩いてみようよ」

妹「東京の街並みとは少し雰囲気が違うね」

兄「そうかな? 僕は変わらないと思うけど」

妹「ふふっ。感性の違いかしらね」

兄「ところで妹…」

妹「何?」ダキ

兄「信号待ちの度に抱きつかれるの恥ずかしいんだが…」

妹「若い時にしか出来ないのよ」

「あ! おまえは」

兄・妹「?」

DQN1「へへぇ、まさかここで会うとはねぇ」

兄(う、東京で絡んできた奴だ)

DQN1「ここは俺達の地元だ。今日は逃がさねぇぞ」

DQN2「兄ぃ、何ですこいつらは?」

DQN1「前に話しただろ? 東京で女掻っ攫おうとして逃げられた奴らだよ」

DQN3「へぇ、こいつらがねぇ」

DQN4「こんなヘッポコより兄貴の方がよっぽど似合ってますぜ」

妹「お兄ちゃん…」

兄(弱ったな、完全に囲まれた。何としても妹を守らないと)

DQN1「女はもらうぜ」

兄「やめろ!」

DQN1「あ? やるのか?」
兄「…っ」

DQN1「ん? 何だこの胸ポケットに入っているのは?」

DQN1「お、ゴールドカードじゃねぇか。これももらって… !!!」

DQN1「たっ、大変申し訳ございません!」ガバッ

兄「へ?」

DQN1「おいお前ら! このお方は組長の金の名刺を持っておられるぞ。手ついてお詫びせんかい!」

DQN2,3「えっ!? 申し訳ございません!」ガバッ

DQN4「あの、金の名刺を持ってると何k」
DQN3「バカ野郎! 組長が世話になった人に感謝の気持ちを込めて渡すものなんだ。それを持っておられるんだよ!」

DQN4「えっ!? ごご、ごめんなさいっ!」ガバッ

兄・妹(うわー、道の真ん中で水戸光圀状態…)

DQN1「本当にとんでもない事をしてしまいました。どうか許してください」

兄「あ、あの皆さん、お顔を上げてください」

DQN1「」クイ

DQN1「言えた立場ではありませんが、この事は黙っていてもらえませんか?」

DQN1「でないと俺達、組長にどんな仕打ちをされるか…」ジワッ

兄「ま、まぁ二度とこんな事をしないって約束できるなら」

DQN1「はい、天地天命に誓ってこんな事はしません。本当に申し訳ありませんでした」

DQN1「おい、お前ら帰るぞ」

DQN2,3,4「はいっ」

タタタタッ

兄・妹「」

妹「さっきの居酒屋の人、凄い人だったんだね」

兄「ああいう連中をまとめてる人には見えなかったけどなぁ」

妹「だけどお兄ちゃん、怖かったよぉ」ダキ

兄「もう大丈夫だよ。ホテルに帰ったらいっぱい抱いてあげるから忘れてね」ナデナデ

妹「うん…」

続きます

―――翌朝

妹「昨日の夜は濃厚だったね」

兄「忘れられた?」

妹「うん、気分爽快よ」

兄「よかった」

兄「今日はズボン履いてね」

妹「どうして?」

兄「襟裳岬はいつも強い風が吹いてるんだよ」

妹「ミニスカートとホットパンツしか持ってきてないよ?」

兄「じゃホットパンツ履いて、髪も束ねた方がいいね」

妹「ちょっと待っててね」



妹「お待たせ」

兄「さ、行こう」

兄(エロいホットパンツだな。お尻がちょっとはみ出てるよ)

妹「太腿晒してる時はいつでもOKだからね」

兄「何が?」

妹「私から言わせないでよ///」

兄「あ…」

兄(って事は旅行中はずっとか。…ロングスカートプレゼントしようかな)

―――襟裳岬

ビュウウウウ…

妹「うわー、本当に凄い風」

兄「年間300日近くこんな強風が吹くんだって」

妹「殆ど丸1年じゃない。あ、キスするの忘れた」

兄「今する?」

妹「もちろん」

チュッ レロッ
兄「!」

妹「忘れたからその分ね」

妹「いい眺め」

兄(妹の後ろ姿見てる男達も同じこと思ってるだろうな)

兄「このガイドによればゼニガタアザラシがいるはずなんだけとなぁ」

妹「今日はいないね。残念」

兄「今だから話すけど、付き合い始めた頃は『本当にこれでいいのか?』ってよく悩んだよ」

妹「何で?」

兄「告られたのは嬉しかったよ。でも妹の人生を台無しにしたんじゃないかってね」

兄「もちろん今はこれで良かったって思ってるよ」

妹「そんなこと気にしてたの?」

妹「私にしてみればあなたに捨てられるのが人生を台無しにされるって事だから」

兄「そう言われると葛藤してたのがバカみたいだね」

妹「もういいじゃない。そんな葛藤、カットしてよ」

兄「…」

妹「…」

兄「…お昼ごはん食べようか」

妹「もう、クスッと笑ってくれたっていいじゃない///」

―――移動中

妹「時々、不安になることがあるの」

兄「ダジャレがウケないから?」

妹「違うよっ///」



妹「最近ずっといい事ずくめじゃない? その反動でとんでもない不幸が起きそうな気がして」

兄「『幸せすぎて怖い』ってやつだね?」

妹「うん」

兄「やれやれ、妹の不安癖にも困ったもんだね」

妹「ごめんね」

兄「僕達には両親が同時に亡くなるっていうとんでもない不幸があったじゃないか」

妹「その反動の反動が怖いのよ」

兄「たいていの不幸にはね、幸せのタネがあるものなんだよ」

妹「…どういう事?」

兄「不幸が起きたら協力して解決すればいいんだよ。そうすれば絆はもっと強くなると思うけど?」

兄「2人で解決すれば自信にもつながるだろうし、その経験や教訓を今後の人生に生かしていけばいいのさ」

兄「不幸は嫌な事じゃなくて、精神的に強くなったり次の幸せを得るためのプロセスなんだよ」

兄「だから一緒にプロセスを踏んで行こう。僕がいつも傍に居るから何も心配する事は無いよ」

妹「ねぇ、車止めて」

兄「ん? ああ」

キキキ…

妹「」ダキッ
兄「?」

兄「どうしたの?」

妹「…何でもないの。無性に抱き付きたくなっちゃって」ジワッ

兄「」ナデナデ

妹「お兄ちゃんの妹に生まれて本当によかったな。お父さんとお母さんに感謝しなくちゃね」ポロッ

妹「これからも不安な気持ちになったら和らげてね…」

兄「もちろんさ。僕が取り除いてあげるから」

兄「次に行く所はそんな妹にピッタリだよ」

妹「?」

―――旧幸福駅

妹「あなた、キス」

兄「ん」

チュッ レロッ

妹「ふふっ」
兄「」ニコ

妹「幸福駅だなんて随分縁起がいいね」

兄「元々この辺は『幸震』って言う名前だったんだけど、福井からの入植者が多かったからそれぞれの字を取って『幸福』になったんだってさ」

妹「昔は鉄道が走ってたの?」

兄「広尾線って言うんだけどね。僕達が生まれる前に廃止されちゃったけど」

妹「幸福駅があっても幸福にならなかったのね」

兄「誰がうまいこと言えと?」

妹「えへへ」

兄「名前が名前だからここで結婚式をするカップルもいるらしいよ」

妹「私達も10年目の結婚記念日にもう一度しない?」

兄「いいね。そうしよう」

妹「その頃の私達はどうなっているのかなぁ」

兄「今と変わらないよ」ダキ

妹「うん、私もそんな気がする」ギュ

兄「愛してるよ、妹…」

妹「私も愛してる…」

チュッ レロッ


兄「今夜も激しくなりそうだね」

妹「夜まで待てないよぉ…」

兄「じゃ早めにホテルチェックインするか」



   ―――2人は北海道内を観光しています―――

続きます

―――旭川市内ホテル

兄「ウェブで予約した兄と申します」

係員「はい、兄様ですね。宿泊カードの記入をお願いします」

「あれ? ひょっとして妹ちゃんじゃない?」

妹「?」

妹友1「私よ私、ほら、高校の時に後ろの席に座っていた」

妹「え? 妹友1ちゃん?」

妹友1「そうよ私。凄い、こんな所で会うなんてすごい偶然だね」

妹「私もびっくりしちゃった」

妹友1(女)「ねぇみんな妹ちゃんだよ。高校1年の時に一緒だった」

妹友2(女)「うそ!? あ、本当だ」

妹友3(男)「なんとまぁ」

妹友4(男)「え? マジかい?」

妹友1「私たち高校出てもつるんでてさ、一緒に旅行してるのよ。妹ちゃんは?」

妹「私はね…」

妹(兄と旅行って言えばいいのかな。いや、確か4人共お兄ちゃんの事は知らないはずだし結婚したんだから…)

妹「私結婚したの。新婚旅行なのよ」

妹友1「本当に? おめでとう」

妹友2「おめでとう妹ちゃん」

妹友4(え!? 結婚しちゃったのか…)

妹友3「よかったね。旦那さんは?」

妹「えーっとね…、あなたー」

兄「ん? どうした?」

妹「」ウインク

兄(バッチコイ)

妹「紹介するわ。私の旦那よ」

兄「初めまして。夫です」

妹友1「初めまして。私達高校時代の友人なんですよ」

妹友2.3.4「はじめまして」

兄「そうでしたか。凄い偶然ですね」

妹友3「こうして並ぶとお似合いのカップルだね」

妹「ふふ、ありがとう」

妹友4「…」

妹友1「妹ちゃんは夕食どうするの?」

妹「まだ決めてないけど?」

妹友1「じゃ一緒に食べない? 旦那さんもどうですか?」

妹「うん、いいわよ」

兄「僕もですか? ではお言葉に甘えまして」

妹友2「とりあえずチェックインして一休みしない?」

妹友1「そうね、部屋に入ろうよ。妹ちゃん6時でいいかな?」

妹「うん」

妹友1「また後でね」



妹友4(旦那さんって、あの人お兄さんだよな?)

妹友4「」ニヤッ

―――レストラン

店員「ご注文は以上でよろしいですか?」

妹友1「とりあえずそれで」

店員「かしこまりました」


妹友3「それにしても妹ちゃんがもう奥さんとはねぇ」

妹友1「こんなに綺麗なんだもん、男たちが黙ってる訳無いでしょう?」

妹友2「そうよね。でも半年で中退しちゃったのはちょっとびっくりしたけど」

妹「あの頃は人見知りが激しかったからね。雰囲気に馴染めなかったって言うか」

妹友3「そう言えばいつも1人だったよね」

妹友2「人の縁って分からないよねー、本当に」

妹友1「新婚生活はどんな感じ?」

妹「そうねぇ、暇さえあれば膝の上に座っているかな///」

妹友2「ごちそうさまでした」

妹友3「なんだよ、料理が来る前にお腹一杯になっちゃったな」

妹友1「妹ちゃん、責任とって料理食べてね」

妹「うん、旦那と一緒に食べるから」

妹友3「食べ過ぎの薬買ってこようかな…」

妹友4「旦那さん、美しい奥さんを手に入れるコツを教えてくださいよ」

兄「コツと言われましてもねぇ、僕の場合は偶然が重なっただけなんで…」

妹友2「あら、偶然で結婚するなんてある意味凄いですよ」

妹「そう言うみんなはどうなのよ?」

妹友3「俺はまだまだだよ。彼女すら出来ないし」

妹友2「私もよ」

妹「4人の中でくっついたりしないの?」

妹友1「それは無いと思うよ」

妹友4「みんな付かず離れずって感じだからね」

店員「お待たせしました、海鮮定食のお客様…」

妹友1「えーっと、あちらと私です」



妹「ちょっとトイレに行ってくるね」

兄「ああ」

妹友4「俺もトイレ」

妹友3「寝るなよ」

妹友4「寝ねーよ」

―――トイレ前

妹友4「あ、妹ちゃん、このあと2人で飲みに行かない?」

妹「駄目よ。旦那がいるんだから」

妹友4「『昔の友達とおしゃべりがしたい』って言えばいいじゃん」

妹「私達新婚旅行なのよ?」

妹友4「あれ? 兄妹って結婚出来たっけ?」

妹「…っ」

妹友4「実は1回だけ話をした事があるんだよね。お兄さんは忘れちゃってるみたいだけど」

妹「…どうするつもりなの?」

妹友4「2人の幸せをほんのちょっと分けてくれないかな?」

妹「断ったら?」

妹友4「それは妹ちゃんの自由だけど、俺週刊誌の記者やってるんだよね」

妹「…脅すの?」

妹友4「脅すなんて人聞きの悪い、間違った道へ進んでいる妹ちゃんを正しい道へ進ませようとしているんだよ?」

妹「食事が終わるまで返事待ってくれる?」

妹友4「いいよ。前向きな返事期待してるから」

妹「分かったわ」



妹(私達の絆を見縊らないで)

―――テーブル

妹友4「そうだ、2人の馴れ初めを聞かせてよ」

妹(馴れ初め!?)

妹友1「あ、聞きたい」

妹「え、えーっとね…」

兄「あ、あの、僕達家が隣同士の幼馴染なんですよ。小さな時からずっと一緒だから自然にこうなったと言いますか」

妹友4「そうなんですか? 妹ちゃんに幼馴染がいるなんて雰囲気ありませんでしたけど?」

兄「高校生だった時は仕事の関係で東京に居ましたからね」

妹友2「それじゃ見かける訳ないわよ」

妹友4「旦那さんにしてみれば妹みたいなもんですよね?」

兄「そうですよ。兄妹みたいなもんです」

妹友4「兄妹で結婚、何だか羨ましいなぁ」

妹「…」



妹友4「美味しかったね。そろそろ行こうかみんな」

妹友1「うん、行きましょう」

妹「あの…、みんなちょっと聞いてくれる?」

兄・妹友達「?」

妹「突然だけどね、私の旦那、…本当は実の兄なの」

妹友達「ええっ!?」
兄「妹…」

妹「あ、でもね、2人だけで結婚式をしたから旦那でもあるのよ。嘘ついてごめんね」

妹「その証拠に…」ガバッ チュ レロッ
兄「!?」

妹友4「!!」ガーン

妹「という訳なんだよね…。気持ち悪いもの見せちゃったから、お詫びにここは私が奢るわ」

妹「今日は楽しかった。でももうみんなと会う事は無いと思うけど…」ジワッ

妹「2匹のケダモノの相手をしてくれてありがとうございました」ペコリ

妹「お兄ちゃん行こ」

兄「あ、ああ…」


妹「会計お願いします」

妹友達「」ボーゼン

―――部屋

兄「あれでよかったのか?」

妹「いいのよ。嘘つくのってやっぱりしんどいし」

妹「実はさっきカクカクシカジカってことがあったの」

兄「へぇ、そんなことする人には見えなかったけどなぁ」

妹「あなたと話したことあるんだって。知ってる?」

兄「いや、知らない…、あ!」

兄「そういえば妹が留守中に忘れ物を届けに来た男がいたよ。その人かな?」

妹「多分そうだわ」

妹「今週刊誌の記者やってるんだって。もしかしたらこの事書かれちゃうかもしれないけど」

兄「地位も名誉も無い僕たちを? まぁそうなっても別にいいじゃん」

兄「居辛くなったら人里離れて暮らすとか、海外へ移住する手もある」

妹「どこまでも前向きなのね」

兄「父さんと母さんが死んだ時はどんなことも前向きに考えるようにしてたんだよ。それが癖になっちゃったのかな」

妹「それのおかげで私の不安を無くせるんだもんね」

兄「でも嬉しいよ、妹の気持ちがブレなかったのが」

妹「当然よ」

妹「今頃4人はどんな話してるかな」

兄「考えるのはやめなよ」

妹「いっぱい愛してもらわないと考えちゃいそう…」ダキ

兄「分かったよ」ナデナデ

妹「えへへ」

―――事後

妹「ねぇ、兄妹が愛し合うメリットって何だろう?」

兄「そうだなぁ、気を遣わなくていいのと、いつでもイチャイチャしたりエッチできるよなぁ」

兄「後は親戚が増えないから揉め事に巻き込まれるリスクが少なくなるとか」

妹「逆に言えばそれ位しかないんだよね」

兄「そうなるな」

妹「でもいいの。私はあなたさえいれば」

妹「これからもカミングアウトするスタンスで行こうと思うんだけど?」

兄「それでいいんじゃないかな」



妹「もう一回抱いて…」

兄「いいよ」

―――翌朝

兄「朝食はルームサービス頼もうか?」

妹「ううん、朝食券あるんだから食べに行こうよ」

兄「4人と鉢合わせちゃうかもしれないよ?」

妹「いいの。どんな顔するか見てみたいし」

兄「楽しんでるねぇ」

―――朝食会場

兄「居ないね」

妹「そのうち来るかもね。食べようよ」



妹(あ、来た来た)

妹友1「あ、あの妹ちゃん…、一緒に食べてもいい?」

妹「うん、いいよ」

妹友2「お兄…、旦那さんも構いませんか?」

兄「もちろんですよ」

妹「妹友4君は?」

妹友3「あいつ酷い二日酔いでさ、まだベッドの中だよ」

妹友2「妹友1ちゃんから聞いたんだけど、両親を亡くしてるんだって?」

妹「そうなのよ。事故でね」

妹友1「だとしたら2人がそうなったのもしょうがないよね」

妹友3「少なくとも俺達は2人の味方だからさ、『もう会うことは無い』なんて言うなよ」

妹友1「そうよ、これからも時々メール交換とかしようよ」

妹「うん、ありがとうみんな」

兄「みんないい友達じゃないか」

妹(1人を除いてね)

妹友3「だけどあいつ大丈夫かな。来る気配無いな」

妹「そんなにお酒飲んだの?」

妹友1「そうなのよ。昨日あれから居酒屋行ったんだけど浴びるように酒飲んじゃってさ」

妹友2「もしかすると妹ちゃんが好きだったんじゃないのかな」

妹友3「なら結婚したって聞いたときに落ち込むと思うけど、逆にテンション高くなったよあいつ」

妹友2「そういえばそうだね」

妹友1「どういう事?」

妹友3「さあ…」

兄「まぁいいじゃないですか。彼なりに何か思うところがあったのでしょう」

妹「そうよ。そんなに気にしなくてもいいんじゃない」

妹友1「そうだね。今は元気になるのを祈ろう」

妹友1「今日はどこへ行くの?」

妹「えへへ、内緒」

妹友1「何よ、教えなさいよ」

妹友2「お邪魔虫に教えると思ってるの?」

妹「そういう事よ」

妹友1「もう。でも2人の幸せがいつまでも続くのを祈ってるわ」

妹「うん、ありがとう」

兄「ありがとうございます」

続きます
次の投下で完結です

―――宗谷岬

妹「あなた、キス」

兄「ん」

チュッ


兄「遂に最北の地まで来たか」

妹「何だか特別な気分になるね」

兄「緯度が高いせいか肌寒いな」

妹「だったら体くっつけてようよ」ダキ

兄「そんなにくっつかれると歩けないんだが…」

兄「旅行も明日で終わりだね。どんな気分?」

妹「もっと回りたいような帰りたいような、何とも言えない気分だわ」

兄「もう少し回ろうか?」

妹「ううん、キリがなくなりそうだから」

兄「いろんな出来事があったね」

妹「そうね。まさかクラスメイトとバッタリ会ったのはびっくりしたけど」

兄「4人は今頃どの辺り回っているのかな」

妹「そんなことどうだっていいじゃない」

兄「そうだな」

妹(妹友1ちゃんに忠告のメール送ったんだけど見たかな)



妹「みんなのお土産買わなくちゃね」

兄「そこにお土産屋さんあるから行こう」



兄「これだけ買えば十分だね」

妹「ちょっと買い過ぎたかもよ」

兄「まぁいいじゃん、足りなくなるよりは」

妹「ちょっとトイレに行ってくるね」

兄「ああ」



兄(風景写真も撮っておこうかな)



妹(今夜は北海道最後の夜だから、いつも以上に愛してもらおうかな。ふふ)

妹「お待たせ…、あら?」

妹(あなた?)キョロキョロ

妹「」ポツーン

妹(お兄ちゃん…、1人にしないでぇ…)ジワッ

妹「…」ポロッ

妹「おにいちゃあああああああああああん!!!!」
兄「何ぃっ!?」
妹「え!?」

「ナンダナンダ?」
「ケンカカ?」

兄「何何? ど、どうしたの?」

妹「あ、あれ? どこに居たの?」

兄「トイレの脇だよ、写真撮ってたんだ」

妹(死角に居て見えなかったんだ…)

妹「もうっバカバカあっ! 突然居なくならないでよぉ!」ポカポカ

兄「ごめん、ごめんね」

―――移動中

妹「…」

兄「…」

兄「その…、ごねんね。怒ってるよね」

妹「ううん、怒ってない。自分自身にびっくりしてるのよ」

妹「少し探したりとか、携帯に電話したりとかできたはずなのに何でパニックになっちゃったのかなって」

妹「車止めて」

兄「ん、ああ…」

キキキ…

妹「お兄ちゃん…」

妹「私は、あなたがいないと生きていけません。1人になるのが凄く怖いです」

妹「だから、いつも私の目の届くところに居てください」ジワッ

兄「うん、わかったよ。ちゃんと傍に居るから」ナデナデ

妹「今夜は今までで一番愛してよね」ニコ

兄「頑張ります…」



兄(ちょっと変わった愛情表現してみようかな。勇気がいるけど北海度最後だからな)

―――稚内市内ホテル

兄「ふー、着いたね」

妹「はやくチェックインしよ」

兄「ちょっと待って。小さな荷物だけ持ってね」

妹「?」

兄「よいしょっと」ダキアゲ
妹「え、きゃ…」

兄「妹、ここでは歩かせないからね」ニコ

妹「え?」

兄「ちょっと変わった愛し方をしてみようと思って」

妹「変わり過ぎよ。まさか、抱っこしたままチェックインするの?///」

兄「そのまさかだよ」

妹「やめてよ恥ずかしい///」

兄「やめないよ」

妹「止めてってばぁ///」ジタバタ

兄「だめ」

妹「じゃせめておんぶにしてよ///」

兄「わかった」ストン

兄「よいしょっと…」

妹「ねぇ、本当におぶったままチェックインするの?///」

兄「そうだよ」



兄「予約した兄と申します」

係員「いらっしゃいませ。あの…、お連れ様どうかなさいましたか?」

兄「何でもないんです。罰ゲームなんですよ」

係員「そうでしたか、大変ですね。宿泊カードは私が代筆いたしましょうか?」

兄「いえ、大丈夫です」

係員「ではお願いします」

妹「係員さんドンビキしてるよ///」ボソボソ
兄「分かってる」ボソ

―――部屋、夕方

兄「夕食はどこで食べようか?」

妹「ホテルのレストランがいいな」

兄「外じゃなくていいの?」

妹「だっておぶって行くんでしょ? 恥ずかしいよ」

兄「気にしなければいいじゃん」

妹「無理よ///」

―――部屋の外

兄「カードキー持ったよね?」

妹「持ったけど。ねぇ…、これやっぱり止めようよ。恥ずかしいよ///」

兄「まぁ妹がそう言うなら。レストランの入り口までね」

妹(でもお兄ちゃんに密着してると何だかいい感じ)

妹「あ、あれ? どこに行くの? レストランあっちだよ?」

兄「ちょっと予定変更」

妹「へ?」

兄「やっぱり外で食べよう」

妹「じゃ降ろしてよ///」

兄「だめ」

妹「降ろしてぇ!///」ジタバタ

兄「ほら、そんなに暴れるともっと見られちゃうよ」

妹「もう///」

兄「若い時にしかこういう事は出来ないからさ」

妹「しなくていいよ///」

―――街中

妹(うわー、道行く人みんな見てる///)

兄「そこの食堂でいいかな?」

妹「早く降りたいからどこでもいいよ///」

兄「ごはん食べる時は抱っこしながらだからね」

妹「ゑ?」

兄「冗談だよ。でも終わりにしよう、腕が疲れちゃったよ」ストン

妹(ホッ、でも何か残念なような…)

妹「でもありがとうあなた。これからもずっと傍に居てね」

兄「どういたしまして。勿論だよ」

妹「お礼に…」

チュッ レロレロッ

通行人「あれ? この辺だけ熱いぞ」

妹「ふふっ、寝る前も期待してるから」

兄「了解。さ、入ろう」

イラッシャイマセー

―――翌朝、フロント

兄「お世話になりました」

係員「こちら、領収書でございます。それとお客様…」

兄「はい?」

係員「お二人のお幸せがいつまでも続きますように祈願しております」

兄・妹「ありがとうございます」

係員「ありがとうございました」

妹「ふふっ、ホテルの人にも祝福されるなんてね」

兄「良い人だね」

兄「忘れ物無い?」

妹「うん、大丈夫」

兄「じゃ行こうか」

妹「東京へ帰ってみよ~ぅ」

兄「…」

妹「…」

兄「妹は○かりや長介の真似はしない方がいいと思うぞ…」

妹「ギャップ萌え狙ったんだけどね///」

終わりです
最後まで御覧下さいましてありがとうございました

「両親の法事編」を構想中です

大勢の親戚が集まる中、兄は従姉妹達に囲まれて妹の胸中は穏やかでないが
自分も従兄弟たちに囲まれて・・・
という展開を考えています

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