マスオ「うわ~、これはヒドイなぁ」
ワカメ「どうしたのマスオ兄さん?」
マスオ「あぁ、ワカメちゃん。今朝ポストに入ってたチラシを見てたんだよ」
ワカメ「チラシ?」
マスオ「そう。政党の中傷ビラ」
ワカメ「何て書いてあるの?」
マスオ「えっとね……」
『自民党は右派政党ではない』
『公共事業による経済活性化や、中国・朝鮮への平和外交など』
『世界的に見て、左派政党の“主張”“手法”により日本政治を動かしてきた』
『これにより自民党は左派政党であることは、疑いようがない』
『よって、自民党よりも、左の政党は全て極左政党であり総て危険団体である』
『極左政党は即刻解党させよ。目覚めよ日本人!』
マスオ「って書いてあるんだ」
ワカメ「ヤダ。なんだか怖い文章」
ワカメ「……ねぇマスオ兄さん?」
マスオ「なんだいワカメちゃん?」
ワカメ「右派政党と左派政党ってどういう部分が違うの?」
ワカメ「右翼と左翼って何?」
ワカメ「最近ニュースでよく放送されてて、気になってるのに」
ワカメ「小学校でも教えてくれないし、まとめブログにも載ってないの」
マスオ「政治的な右と左の違い……良い所に気が付いたねぇ」
ワカメ「マスオ兄さんは分かる?」
マスオ「あぁ。教えてあげるよ」
ワカメ「わーい、ありがとう!」
マスオ「まず最初に……」
マスオ「ワカメちゃん、アメリカとイギリスにある二大政党の名前分かるかい?」
ワカメ「ええ!」
ワカメ「アメリカは共和党と民主党。イギリスは保守党と労働党でしょ」
ワカメ「共和党と保守党が右派で、民主党と労働党が左派よね」
マスオ「よく知ってるねぇ。えらいえらい!」
ワカメ「えへへ」
マスオ「じゃぁ、右派政党のイメージはどんなだい?」
ワカメ「う~ん……イメージかぁ」
ワカメ「武器や戦争好きで、宗教を信じてて、お金儲けが好きで、優等生が好きで、民族主義で、競争好きなイメージ」
マスオ「反対の、左派政党はどうだい?」
ワカメ「えっと、」
ワカメ「平和好きで、科学技術を信じてて、人助けが好きで、落ちこぼれも少数派も大切にして、平等好きなイメージ」
マスオ「うんうん。いい線いってる!」
マスオ「それではここで、質問でーす!」
マスオ「フランスで、“徴兵制”をしようとするのは右か左どっちでしょう!?」
ワカメ「知ってる! 徴兵制は右派よ。テレビで言ってた」
マスオ「ふふふ~。せいかーい……と言いたいところだけれど」
ワカメ「ええっ、違うの?」
マスオ「フランスでは左派の方が“徴兵制”に賛成なんだよね」
ワカメ「そうなの!?」
マスオ「つづきまして、」
マスオ「中国共産党は右翼でしょうか左翼でしょうか?」
ワカメ「共産主義は……左側、左派政党!」
マスオ「でもワカメちゃん。中国は『戦争してやるぞ~』って日本を脅してくるよね」
ワカメ「あっ、本当だわ!」
マスオ「ワカメちゃん、さっき左派政党は平和好きって言ってたけど……」
ワカメ「あれれ? ほんとだ」
ワカメ「何がおかしいんだろう?」
マスオ「それでは第3問!」
マスオ「『人民の人民による人民のための政治』と言ったのは……」
ワカメ「エイブラハム・リンカーン!」
マスオ「大正解!」
マスオ「じゃぁ、リンカーンは共和党と民主党のどっちでしょう?」
ワカメ「えーとえーと……」
ワカメ「皆で頑張ろうって事だから、左の、民主党の大統領!」
ワカメ「奴隷の解放をしたりもしたから、平等好きで、民主党!」
マスオ「……」
ワカメ「……」
マスオ「ざんねん!」
ワカメ「えーっ!」
ワカメ「うわーん、3つとも全然わかんなかった」
マスオ「いやー、イジワルな問題出してゴメンね」
ワカメ「イジワル問題だったの」
マスオ「そうだよ。でもね、知ってほしかったんだ」
マスオ「政党や政治家の、右や左っていうのは、」
マスオ「どういう“主張”やどういう“手法”をするのかとは、直接関係がないってこと」
マスオ「生れた場所や、皮膚や目や、髪の色といった人種・民族とも関係ない」
ワカメ「じゃぁ、右の政党と左の政党の、本質的な違いって何?」
マスオ「それは……」
カツオ「ちょっと待った、ここから先は僕が答えよう!」
ワカメ「おにいちゃん!」
マスオ「お、じゃぁカツオくんの意見を聞こうか」
カツオ「右翼か左翼かの違いはズバリ、愛国か売国かだね!」
マスオ「……」
カツオ「右翼は愛国で日本人の味方、左翼は売国で日本人の敵さ!」
カツオ「違いはそれだけ! ってまとめブログに書いてあった」
カツオ「正解だよね、マスオ兄さん!」
マスオ「う~ん……」
マスオ(それにしても君たち、まとめブログ好きだね)
マスオ「じゃぁカツオくんに質問!」
マスオ「tppに賛成な政治家は右の愛国家か、左の売国奴か?」
カツオ「そりゃ勿論愛国さ。なんたってアメリカと同盟を結ぶんだからね」
カツオ「売国奴のやれる仕事じゃないよ」
マスオ「でもカツオくん。tppは日本の農業や、知的財産、特許権、文化、医療」
マスオ「日本国内の金融、保険会社に大打撃を与えるって言われてるよ」
カツオ「あっ!」
マスオ「しかも移民の推進もセットになってる。移民増加は右で愛国かい?」
カツオ「……違う…………と思う」
マスオ「ふふふ」
マスオ「いいかい2人とも」
マスオ「とある政党が右翼か左翼なのかを決める、本質的な要因はね」
ワカメ「はい」
カツオ「うん」
マスオ「その政党に所属する政治家や党員が、どういう“思想・哲学”の持ち主か、」
マスオ「つまり」
『人間を、力強い存在と信じているか、弱い存在と思っているのか』
マスオ「で決まるんだ」
ワカメ「?」
カツオ「……」
カツオ「ははーん。なるほど」
カツオ「『人間は強い』って思ってる方が右で、」
カツオ「『人間は弱い』って思ってる方が左な訳か!」
マスオ「その通り!」
マスオ「流石はカツオくん、察しがいい!」
ワカメ「ええっ、私はよく分かんないよ!」
マスオ「人間は強い。だから○○っていう政策をとっても大丈夫」
マスオ「こう考えるのが右派で、」
マスオ「人間は弱い。だから○○っていう政策を取らなきゃいけない」
マスオ「こう考えるのが左派なんだ」
ワカメ「えーと……」
マスオ「なにか、いい例えはないかなぁ」
マスオ「あっ!」
マスオ「いいかいワカメちゃん」
マスオ「もしもの話だけど、」
マスオ「日本中で、たくさんの竜、ドラゴンが出現したらどうする?」
ワカメ「ドラゴン? どんなドラゴン?」
マスオ「大きくて、空を飛び、火を吐いて、カッコいいトゲトゲした外見の、肉食ドラゴン!」
ワカメ「ええっ、何それ恐い!」
ワカメ「自衛隊や警察に退治してもらう。私はその間、食べられないように神様に祈る!」
カツオ「そんな勿体ない」
カツオ「空飛べるし、火を吐けるんだぜ。僕だったら飼いならして、見世物にするよ」
カツオ「ドラゴンの中でも特に強そうな奴を一匹選んで手下にする。日本人みんながそうすれば、国力も上がる」
ワカメ「そんなの無理よ。食べられちゃうよ~」
カツオ「大丈夫だよ。上手くやれば大丈夫!」
マスオ「じゃぁもしもの話、その2」
マスオ「日本中で、たくさんの妖精さんが出現したらどうする?」
ワカメ「妖精? どんな妖精?」
マスオ「小さくて、魔法が使え、いたずら好きで、かわいい丸みを帯びた癒し風の、蛍みたいに儚い妖精!」
ワカメ「わぁっ、何それカワイイ!」
ワカメ「環境省に保護してもらう。それで仲良くして、どんな魔法が使えるか見せてもらう」
カツオ「つまらなさそうだなぁ」
カツオ「そんなのが居たって、何の役にも立ちそうにない。保護したってお金の無駄だよ」
カツオ「いたずら好きなんだろう。僕たち、人間様の生活を邪魔してくるなんて害虫だよ」
ワカメ「なによ、蛍みたいに儚くてカワイイなら保護すべきよ。お兄ちゃんだって、いたずら好きのくせに」
カツオ「そうかなぁ? けど僕は人間だからね。害虫とは違う」
ワカメ「はっ!」
マスオ「おっ、気づいたみたいだね」
ワカメ「そっか『強いもの好き派は右』、『儚いもの保護派は左』なんだ!」
マスオ「うんうん。分かってくれたみたいだね」
マスオ「右側の人っていうのは、自分を含む人間全体を、ドラゴンみたいな強いものだと認識してる」
マスオ「だから他国から攻められないように、軍事力や警察力を高めるのに余念がない」
マスオ「そして自分の力が及ばない不運や不幸が来ないよう、宗教にはまるし、」
マスオ「人間の力を制限なく発揮するため、規制緩和を叫ぶ」
マスオ「とにかく優秀な“勝てる人”を尊敬して、」
マスオ「自分たちが社会を引っ張っていくんだという気概を持ち、」
マスオ「他者との闘いの日々を生きぬいていく、それが右の人」
マスオ「そして、そんな人たちが集まって作った政党が、右派政党なんだ」
カツオ「つまりその逆は……」
マスオ「うん」
マスオ「左側の人っていうのは、自分を含む人間全体を、蛍のような弱くて儚いものだと認識してる」
マスオ「だから戦争が起きて、儚い命が散っていくのを恐れるし、」
マスオ「助けてくれるか分からない神様よりも、科学技術を信頼し、」
マスオ「弱者の権利が侵害されないよう、社会や経済に規制を求める」
マスオ「“単純に強いだけの人”より“頑張り屋の優しい人”を尊敬して」
マスオ「社会全体で、貧しい人を助けて生きていくんだという気持ちで、」
マスオ「他者と協力して毎日生きていく、それが左の人」
マスオ「そして、そんな人たちが集まって作った政党が、左派政党なんだ」
ワカメ「そうだったんだ」
カツオ「とある政党が右翼なのか左翼なのかを知るには、」
カツオ「“どっち側の哲学を持つ”人が“集まってる”かに注目したらいいんだね」
マスオ「その通り!」
ワカメ「じゃぁマスオ兄さん」
ワカメ「自民党って結局、右か左かどっちかっていうと……」
マスオ「『人は強いものだ』って言う政治家さんが多いから、右派政党だね」
ワカメ「なるほど~!」
ワカメ「色々教えてくれてありがとう、マスオ兄さん!」
マスオ「いやいや、どういたしまして」
ワカメ「すごく勉強になったわ」
ワカメ「あ。いけない、お姉ちゃんから用事頼まれてたんだった」
ワカメ「ちょっと出かけてくるわね~」
マスオ「はいはい、気を付けて~」
カツオ「う~む」
マスオ「どうかしたかい、カツオくん?」
カツオ「うん。自民党が右の人が集まった右派政党だとすると、不可解な点があるんだ」
マスオ「?」
カツオ「あの、チラシにも書いてあったけど」
カツオ「自民党は、なんで公共事業や護送船団方式みたいな、左派の経済政策をとったのか」
カツオ「それが謎だなって」
マスオ「……」
マスオ「それは、たぶん」
マスオ「僕は、こういう事なんじゃないかって思うんだ」
カツオ「どんなの? 聞かせてよ」
マスオ「外国の右派政党なら、“有能な人間”をより成長させることに注力するんだけど……」
マスオ「日本の右派政党である、自由民主党は、」
マスオ「1人の人間が、強いか弱いかは気にせずに、人生の価値なんて気にも留めずに」
マスオ「“有能な組織や団体”としか、向き合ってこなかったんじゃないだろうか?」
カツオ「と、いいますと?」
マスオ「うん、詳しく説明するよ」
マスオ「ぼくはさっき、右の人間についてこう言った」
①「他国から攻められないように、軍事力や国防力を高めるのに余念がない」
②「自分の力が及ばない不運や不幸が来ないよう、宗教にはまる」
③「人間の力を制限なく発揮するため、規制緩和を叫ぶ」
④「とにかく優秀な“勝てる人”を尊敬」
⑤「自分たちが社会を引っ張っていくんだという気概」
⑥「他者との闘いの日々を生きぬいていく」
マスオ「ここらを昔から、長年の与党である自民党が、」
マスオ「組織と周辺の個人を、どう扱っていたのか検証・説明していこうと思う」
カツオ「うん」
マスオ「①について。戦車や戦闘機のような兵器強化については力を入れてるけど」
マスオ「自衛官、1人1人の待遇や社会的地位については、なおざりな部分が多い」
マスオ「②は宗教団体には免税措置なんかをして優遇してるけど」
マスオ「宗教団体が信者にしてる行為や、政教分離の監視体制は甘い」
マスオ「③は、農協・土建業界・医師会・経団連といった業界団体に有利な政策はとるけど」
マスオ「後ろ盾のない、失業者や非正規労働者、マイノリティの都合は聴き入れない」
マスオ「④は、“勝てる大企業”は守ろうとするけれど」
マスオ「中で働いている“社員”、特に技術者はドンドンと、中国韓国に引き抜かれている」
マスオ「⑤は、『政権復帰した自民党は頑張ります』とアピールするかわり」
マスオ「生活困窮者を、ネットを使って弾劾してる」
マスオ「そして⑥、無意味に、対立や戦う事を強いて、休むことは許されないという空気を作ってきた」
マスオ「それが自殺者数が毎年3万人を超える、今の日本さ」
マスオ「人間1人ひとりがどうあるべきかよりも、」
マスオ「“団体や組織が勝てる・強くなる”ことが自民党にとっての優先第一」
マスオ「公共事業拡大や護送船団方式は、強い個人をより強くするって“右側の発想”じゃなく」
マスオ「強い組織や企業をより強くするための“右側の発想”から生まれた政策なんだろうと」
カツオ「なるほど」
カツオ「自民党的の組織・団体の優遇は、右の哲学・強くあるべしって姿勢からで、」
カツオ「他国の左派の思想、規制強化による弱者保護って視点・思想からじゃなかったわけだね」
マスオ「そういうこと」
カツオ「それでも結果的には民主党よりずっと、弱者保護ができてるんだけど」
マスオ「だよねぇ」
マスオ「専門家や学者さんからすれば、『間違いがある』って指摘されるだろうけど」
マスオ「とりあえず僕はこう思う」
マスオ「いいかい、カツオくん」
カツオ「なぁに?」
マスオ「日本じゃ、どういう組織・団体に属しているかが全てなんだ」
マスオ「同じ職場で同じ仕事をしても、」
マスオ「労働組合に所属している正社員と非非正規じゃ、待遇が全然違うし」
マスオ「同じ業界の同じ能力の自営業者でも、」
マスオ「コネクションがあるかどうかで、仕事の入り方がさっぱり違ってくる」
マスオ「生活保護を受けるにも、」
マスオ「政党や、やくざ屋さんの口利きがなくちゃ窓口で追い返される」
カツオ「ひどいよねぇ。どうして民主党とか左派政党はこんな状況を放置してるんだろう」
マスオ「左派政党も自民党と同じだよ。組織・団体とは仲良くするけど、ただの個人には見向きもしない」
マスオ「民主党は、労働組合や日教組、自治労といった組織の意見は聞くけど、構成員個人の意見は尊重しないし」
マスオ「未来の党は、反原発デモ隊の勢いを見誤って、反原発派が日本で多数派を占めてると勘違いしてる」
マスオ「社民党や共産党は、自分たちの党員、支持者としか交流せず、部外者は叩きまくる」
マスオ「他の右派政党も、『俺らは優秀有能正義の味方、他はバカで無能で生きる意味のないゴミ』という姿勢」
マスオ「組織から零れ落ちた1人の人間や、無党派の意見をかき集めよう」
マスオ「そういう発想が日本のどの政党からも抜け落ちてるんだよねぇ……」
カツオ「……ネット選挙解禁で、そういうのが変わるといいね」
マスオ「まったくだよ」
マスオ「右の人とも左の人とも、お互いにお互いの価値観を押し付け合うんじゃなく、」
マスオ「“会話のキャッチボール”ができる場があって欲しいねぇ」
マスオ「ともかくいいかい」
マスオ「自分でしっかり働き稼げる、友人も恋人も居る、若い無党派・ノマドの日本人よりも」
マスオ「ベットで寝たきり、残された時間もないけど、怪しい宗教団体に所属している在日外国人の方が」
マスオ「日本では、社会的地位も存在感も、国から貰える恩恵も上なんだ」
マスオ「この差は月とスッポンってレベルじゃない!」
マスオ「そういう価値観で、『今の日本』は成り立ってる」
マスオ「これを、けっして、忘れちゃいけないよ」
マスオ「だから、自分を成長させるなんてことよりも、」
マスオ「日本社会をよくしようと考えるよりも、」
マスオ「いい組織に滑り込めるのを第一に、生きていくんだよ!」
カツオ「はーい!」
おわり
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