にこ「余命幾許もない私と」真姫「私」 (348)

「にこちゃんのことが、すきなの」

躊躇いがちに。けれど勇気を振り絞って口にしたであろう世紀の大告白を、それでも私は他人事のような心持ちで受け止めることしか出来なかった。

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真姫ちゃんは一体、何を言っているのだろう。

顔を真っ赤に染め、上目遣いでこちらの様子を窺ってくる目の前の少女は、確かにかわいいと思った。

けれど、それだけ。


「にこも真姫ちゃんのこと、好きよ」

好き、だけれど。

けれど、それだけだった。

(……面倒なことに、なっちゃったわね)

さて、これからどうしてしまおう。

緊張の面持ちを浮かべて震える少女は、まるで判決を待つ罪人のようで。

いまこの瞬間の全てが自分に委ねられていることを、私は瞬時に理解していた。


(本当に私のこと、すきなのかしら)

同性愛というものが、にこには理解できない。

それは時間の無駄でしか無いように思えた。全く合理的ではないし、通常の社会生活に於いては障害にすらなり得る。

当たり前のことだ。その程度のこと、目の前の少女だって解っているはずなのに。

(意味、わかんない)

結局、彼女の想いを理解できないまま、私は静かに別れを告げることにした。

震えながら駆け足で遠ざかる背中を見せ付けられて、僅かながらの罪悪感が芽生えるのを知覚した。

私の身体に異変が起こったのは、高校二年の夏休みのことだった。

家を空けることの多い母に代わって妹達の世話を焼いていた私は、昼食の調理中に刃物で指先を切ってしまった。

傷は思ったよりも深くて、すぐさま真紅の血液が溢れ出る。慌てた私は急いで処置を施して、そうして何とか事なきを得たかに思えた。

けれど、それはどうやら間違いだったらしい。

(なんでかしら、くるしい……)

傷口に当てていたタオルはいつの間にか真っ赤に染まり切っていた。血が止まらない。

それに気が付いた時には、もう立つこともままならない状態で。

倒れ込んだ私を、妹達の不安げな瞳が見下ろしていた。

「にこにーだいじょうぶ?具合わるいの?」


「平気よ」

そう言って、微笑んであげたかった。

微笑んで、あげたかったの。

点滴の管にまみれて目覚めた私に告げられたのは、白血病というありふれた病名だけ。

それに対する有効な治療法も、自分に残された時間も知らされず。

けれど病室ですすり泣く母の様子を目にすれば、他の言葉など必要ないことに気付かされた。

私は父と同じ病気で、父と同じように苦しみながら死んでいく。

夢を叶えることも出来ず。

誰かを幸せにすることも出来ず。

ただ、命を落とす。きっと、それだけなのだと思う。

「ごめんね、ママ」

母は、何も言わなくて。

私も、何も言えなかった。

お互いのすすり泣く声だけが、狭い個室内で延々とこだました。

数日後、私に退院の許可が下りた。まだ暫くは入院の必要もないという。

けれど、勘違いしてはいけない。完治することは絶対にないと、主治医からは強く念を押されていた。

手の施し様はない代わりに、当面の生活に大きな支障もないというわけで。全くもって都合の良い話だと思った。

(でも……正直それで助かったわ)

入院が必要ともなれば、必然的に多くのお金が必要になる。

しかし矢澤家にそんなお金が無いことを、にこは知っていて。

それでもあの優しい母のことだから、自分が更に無理をしてでも何処からかお金を用意しようとする筈だ。

そんなことになったら、苦しい想いをするのはにこだけでは済まない。

母も、三人の小さな妹弟たちも。皆が辛い想いをするだろう。

そんなことになるなら、ひとりで痛みに耐えて死んでいく方が遥かにましだと思った。

そうやって命を全うする為に、にこは今までよりずっと、強く在らなくてはないと思った。

自信はある。痛みにも苦しみにも負けることのない、最強の笑顔。

自分にはそれがあると、にこは信じていたから。

夏休みが明けて二学期が始まる。

学校ではいつもひとり。その方が気楽で良い。笑顔で明るく振る舞う必要がないから。

放課後の部室で流れる緩やかな時。誰にも侵されることのない静寂が心地よい。

もうこの時点で、アイドルに対する憧れも熱意も私の中には殆ど残っていなかった。

本当なら放課後の時間を使ってアルバイトでもしたかったけど。

しかし母からの強い反対に遭い断念。

隠れて働くことも考えたけど、子守りの時間を確保しつつ出来る仕事など限られていて、結局諦めることにした。


季節は移り変わり、秋へ冬へ。自分がアイドルに憧れていたことも、私は日に日に忘れていって。

そうして再び春が訪れた時、気が付くと私はアイドルだった。


「うそつき」

本当はちっとも諦めていなかったの。

食事の度に服用する薬の量は日に日に増えていった。

少しの運動ですぐに息が切れてしまう。

一日の終わりには体がだるくなったり、熱っぽくなることもあった。

自分が徐々に弱っていくのが分かる。

本当なら、スクールアイドルなどしている場合ではないのかもしれない。

けれど、差し伸べられた手を、私は掴む。

それは命を削って手にした、幸福な時間。

あの頃の夢には決して届かないことを理解しても。

最期の最後まで全力の笑顔で居るために選んだ、ここはそういう場所。

だから、邪魔をする物には容赦しない。

『にこちゃんのことが、すきなの』

誰であろうと、容赦はしない。

今回は以上です。にこまき成分はこれから増える予定

少し時間がかかっていますが近々更新します。来週中にでも投下出来たらと

真姫ちゃんから告白を受けた翌日。放課後の部室は案の定重苦しい空気に包まれていた。

「それで、新曲の振り付けの件だけど……」

いつもはハキハキと話す絵里が、今日は様子を探るように遠慮がちに。

「わ、私はそれでいいと思いますけど……」

「凛も、それで……」

周りのメンバーもそれにつられて意見を言い淀む。

「そう、ですね。あとはセンターの二人で打ち合わせが済めば、それで……」

部活が始まってから机に顔を伏せたまま微動だにしなかった真姫ちゃんの肩が僅かに揺れる。

今回の曲のセンターはふたり。真姫ちゃんと、にこ。

(とは言っても、どうするのよ、これ)

昨日の告白の事は誰にも話していなかった。

けれど、今日の真姫ちゃんの様子では察するなと言う方が無理だろう。

元々そこまで器用な子じゃないし、期待はしていなかったけど。

それでもあの穂乃果や凛にまで気を遣わせる程とは予想していなかった。

これではスクールアイドルとしての日常を守るどころの話ではない。

(……仕方ないわね)

思えば昨日はフォローが足りなかったかもしれない。それでなくとも同性愛だなんて、デリケートかつマイノリティな問題なのだから。

昨日の今日でこうして部活にまで顔を出している真姫ちゃんは実際たいしたものだと思う。

少なくとも私が同じ立場に立たされたら、同じように振る舞える自信はない。

「それなら後はにこと真姫ちゃんで話し合うから、皆は先に屋上で振り付けの練習をしてたらどうかしら」

そもそも告白すること自体あり得ないないのだから、まったく無意味な比較になるけれど。

「……ごめんなさい」

顔を見せないまま、くぐもった声で真姫ちゃんは告げる。

他の皆は既に屋上へ向かった後だったので、部室に居るのは私達だけ。

そういうことで図らずも昨日と同じシチュエーションに陥ってしまう。

(しまった……)

今頃になって気が付いても遅い。

「やっぱり……来るんじゃなかった。学校、休めばよかった」

徐々に不明瞭になってくる声色からは、いつもの真姫ちゃんらしい強かさは微塵も感じられない。

弱気で後ろ向きで臆病で。初めて晒された彼女の新たな一面。

それでも不思議と違和感はない。繊細な癖に不器用で、意地っ張りな真姫ちゃんらしいとさえ思った。

「ずるい」

彼女のそういう所が、にこは嫌いになれなくて。

……ううん、そうじゃない。堪らなく、好きなのだ。

本当は誰より弱くて傷付きやすい癖に。

それなのに、たったひとりで凛と生き抜いてやるって顔をして。

そんなの、放っておける筈がない。まったく真姫ちゃんたら、最高に魔性の女なんだから。

(さて、これからどうしてしまおう)

既に9割方出揃った答えを見比べて、私は往生際悪く悩んでいるフリを。

「ずるいよ。真姫ちゃん」

泣き腫らしたまぶたの下から覗く上目遣いの瞳。そこには淡い期待の色。

「そんなに泣かれたら、好きじゃなくても気になっちゃうし」

ごめんね。意地悪で。だけどこのくらい、大目に見て欲しいの。

「好きだったなら、尚更よ」

意地悪なにこで良ければ、真姫ちゃんのモノになってあげるから。

「付き合おっか」

にこがそう告げてから数秒の間の真姫ちゃんはなかなか見物だった。

呼吸も瞬きも忘れたかのように微動だにせず、目を開けながら気絶したのではと心配になるほど見事に固まってしまう。

お医者さんやアイドルと同じくらい、パントマイムの才能があるかもと思った。

「バカにしないで!」

不意に顔を真っ赤にした真姫ちゃん。机を叩いた勢いで体を起こして。

そしてにこを鋭い目付きでキッと睨み付ける。

「…………」

(ああ。目も鼻も真っ赤ね。かわいい顔が台無しよ)

そう思っても、にこは何も言わない。宝石のような真姫ちゃんの瞳を、ただ見つめ返すだけ。

「同情なんかで付き合ってもらおうなんて……」

ああ。また、泣くんだ。自分の言葉に傷付けられて。

「思わない、わよ」

やっぱりずるいよ。真姫ちゃん。

「でも、期待してたでしょ?」

刃のように突き立てられた私の言葉に、真姫ちゃんはビクリと震えて反応を示す。

「そ、そんなことっ」

「そんな風にちっぽけで弱っちくて可愛い真姫ちゃんが好きよ」

ほらね。これで両想い。よかったわね。真姫ちゃん。

「だから、にこと付き合お?」

「そ、そんなの嘘よ!」

(そりゃそうよね)

いくら真姫ちゃんでも、こんな話をいきなり信じるほどおめでたい頭の作りをしている訳ではなさそうだ。

「どうして嘘だと思うの?」

「だって、昨日の話よ!それなのに、今日になっていきなりそんなこと言われたって……」

「真姫ちゃんのこと好きだよって、昨日も言ったじゃない」

「で、でもっ」

私の言葉にいちいち反応して頬を染める真姫ちゃんは、素直にかわいいと思った。

「でも、信じられないわよ!そんなのっ!」

「…………そう」

切なげな余韻を響かせて、部室に沈黙が満ちる。

真姫ちゃんの荒い息遣いだけが、停滞した二人の間の空気に動きをもたらしているような、そんな錯覚。

「そうよね。ごめんなさい」

重苦しい沈黙の中、僅かな隙間を見つけて紡ぎ出した私の言葉に、真姫ちゃんは俯きかけていた顔を上げて。

その顔はもう知っている。何かに期待している、他力本願な時の真姫ちゃん。

「本当に、ごめんなさい」

だけど、その期待には応えてあげない。

真姫ちゃんに背を向けて、私は扉に向かって一歩踏み出す。

「──ッ!待って!」

そうして、欲しかったその言葉が、降ってくる。待っていたのは私の方なのだ。

「待ってよ、にこちゃん……」

今度はその言葉に応じて、私は今にも泣き出しそうな表情を作り真姫ちゃんの方へと振り返る。

(……負けた)

真姫ちゃんの方がずっと、泣きそうな顔。

けれど、これで確定した。

真姫ちゃんの気持ちは、もう止まらない。

「本当は信じたいのっ」

開口一番、溢れだす言葉の波。

「好きって言葉も、付き合おうって言葉も、全部」

でも、と続いて。

「でも、どうしたら良いかわかんないの。惨めで、悲しくて。なのに、にこちゃんの傍から、離れたくないの」

……あーあ。やっぱり泣いちゃった。けれど、私は言葉を挟まず耳を傾けて。

「もう、意味わかんない」

……そうして一通り、想いを吐き出しただろうか。もう、真姫ちゃんの嗚咽しか聞こえない。

「それならね」

弱った真姫ちゃんの心に。

「にこが信じさせてあげる」

囁きかける、悪魔の戯れ言。

気付いてた?いつの間にか私達の距離が、触れ合うほど近く。

息遣いさえ肌で感じられるほど、縮まっていたことに。

涙に濡れた頬に両手を添えて。お互いしっかり目が合ったことを確認する。

「真姫ちゃん」

「ふぇ?」

まだぼんやりとした面持ちの彼女は。

「にこのこと、信じさせてあげる」

けれど今日のことを、生涯忘れないだろうと思う。

身長差があるせいで、少し背伸びをしたことも。

涙と鼻水で、塩辛いと感じたキスの味も。

少なくとも私は、絶対に忘れない。

今回はここまで。ゆっくりですけどがんばります。

「真姫ちゃんの具合が悪そうだから、家まで送って帰るわね」

5分ほど前の、にこの言葉。

その宣言通り、屋上からは仲睦まじげに手を繋いで下校する二人の背中が見えた。

「確かに、少しフラついているかしら」

真姫の様子がおかしいことにはみんな気が付いていた。

けれど本人が大丈夫としか言わないものだから、結局にこに任せてしまって。

「とりあえずは問題なさそうね!」

とにかくひとつ、心配事が解消された。

「……それにしても」

あの二人、本当に仲が良いのよね。

「最初はにこちゃんが一方的にオモチャにしてるだけだと思ってたんやけどね」

柵に寄りかかって二人の背中を目で追っていた私の隣に、希が腰かける。

「そうなのよね。でも、気付いたら真姫の方からにこに関わっていくようになって……」

どうやら希も今日の真姫の様子が気になっていたみたいね。

「最近だと帰るのもいつも一緒やで、あの二人」

「そうなの?でも昨日はにこ、ひとりで帰ってたみたいだけど」

「そうなん?練習が終わってから真姫ちゃんに呼び出されてるとかって言ってたから、ウチはてっきり一緒に帰るものかと……あっ」

「……?どうしたの」

どうやら何かに気が付いたらしい希は。

「……なんでもない。たぶんウチの思い違い」

それ以上、何も教えてはくれなかった。

(いいわよ。明日、本人達に聞いちゃうんだから!)

もうすぐ陽が落ちる。下校まで残り30分といったところだろうか。

休憩終了を告げて、振り付けの確認を再開する。

けれどその最中にも、私の頭の中では手を繋いで下校する二人の背中がぼんやりと浮かんだままだった。

「……どうして」

冷めるどころか止めどなく溢れだしてくる熱に煽られるように、我慢できなくなった私は言葉を絞り出す。

「どうして今日になって、私と付き合う気になったの?」

言葉にすると一層その意味を自覚してしまう。

鏡を見なくとも自分の顔が真っ赤に染まっていることは十分に理解できた。

「……昨日ね」

一瞬、真っ赤な顔を茶化されるかと思ったけど、そんなことはなくて。

「真姫ちゃんから好きだって言われて、ずっと考えてたの」

にこちゃんは初めて聞く穏やかな声で、ゆっくりと話し始める。

「にこは同性愛のこととか全然知らなかったし、自分がそういう形で誰かと付き合うことなんて考えたこともなかった」

「…………ッ」

(そう……よね)

きっと、それが普通なのだろう。当たり前だ。おかしいのは自分の方だって、分かっていた。

「正直に言うとね、今日は学校に来て真姫ちゃんに会うのが怖かった。どんな顔して、どんな言葉をかけて良いのか、分からなかったから」


少しの間、気まずい沈黙が流れた。けれどそれをかき消すように、にこちゃんは深呼吸して、次の言葉を紡いでいく。

「でもね、だからと言って真姫ちゃんのこと避けたり、素知らぬ顔をしていつも通りに接したり振る舞うのも違うと思った」

今度は自身に発破をかけるように、少しだけ強い口調で。それでも相変わらず優しい声。

(昨日のことで悩んでいたの、私だけじゃなかったんだ……)

悲観的な気分に浸っていただけの私より、にこちゃんの方がよっぽど真剣に前向きに考えていてくれたのかもしれない。

「それでね、結局はどうしたら良いか分からなかったけど、それでも意を決して放課後の部室の扉を開けてみたら」

なんだか嬉しかった。ようやくにこちゃんの言葉に実感が伴ってきて、頬が緩むのが分かる。恥ずかしいから、顔は伏せておくことにしよう。

「真姫ちゃんが机に突っ伏してめちゃくちゃ落ち込んでたから、笑っちゃったわ」

……やはり、顔は見せられない。きっと今度こそバカにされてしまう。トマトみたいだって。

「なっ……」

やっとのことで吐き出した言葉も途切れがちになって。

「なに言ってんのよ!」

顔は熱いし涙は零れそうだしで、私はてんてこ舞い。

「なによ。本当のことでしょ!?」

そんな私を包み込む、いつも通りのイタズラっぽいにこちゃんの微笑み。

「真姫ちゃんはにこが傍で支えてあげなきゃ危なっかしいしー」

そ、そんなに世話を焼かれているつもりは……。

「それに、あんな真姫ちゃんを見て放っておけないわよ」

……いまの状況だと、ないとは言い切れないけど。

「にこはね、真姫ちゃんのことが好きだから放っておけなかったし、気まずくなって疎遠になるのも嫌だったの」

彼女は何時もハッキリと物を言う。そんな風に真っ直ぐな所が、私はやっぱり好きなのだと思う。

「何か文句ある!?」

だから、そう締め括られてしまうと私には返す言葉がない。本当にもう、敵わない。

(にこちゃんの、くせに……)

満足気につり上がったにこちゃんの気の強そうな眉毛が、しかし見る見るうちにハの字に垂れ下がっていく。

理由はわかっている。私がまた、泣いてしまったから。

「もう!真姫ちゃんは本当に泣き虫なんだから……」

若干呆れながらも、にこちゃんは私を受け入れ抱き締めてくれた。

柔らかくて、いい匂い。包まれると安心して、眠たくなるような。

「にこちゃん、大好き」

此処は貴女の胸の中。私が素直になれる、たったひとつの優しい場所。

真姫ちゃんが泣き止むのを待ってから。

「それじゃ帰るわよ」

「う、うん……って、ちょっと!?」

所在なさげに宙をさ迷うその手を半ば強引に握り締めて、私は部室を後にする。

急に手を引かれて慌てる真姫ちゃんは幼い子供のようで。

「真姫ちゃん、顔真っ赤」

「う、うるさいわね!」

かわいくて、そして酷く滑稽だ。

(バカな真姫ちゃん)

少しのことで赤面して、今の彼女は本当に幸せそうだった。

(にこのこと、そんなに好きなのね)

触れ合う指先から伝わる、幼いぬくもり。

戸惑いも羞恥も、全てが筒抜け。

ぎゅっ──と。

にこの手を離さないようにと、真姫ちゃんが僅かに力を込める。

「ふふっ」

ねえ、真姫ちゃん?

「な、なによ……」

「べっつに~?」

あんまりかわいいと、また意地悪したくなっちゃうよ?

握られていた腕に、不意に力を込めてみれば。

「あっ───」

スルリ、と。

たったそれだけのことで、固く握られていた筈の繋がりは容易くほどけてしまう。

真姫ちゃんは名残惜しそうに、にこの指先を視線で追い続ける。

「あーあ。離しちゃったわね」

追い続ける──だけで動こうとはしない。そのせいで私達の間に生まれた、距離。

「……真姫ちゃん」

解放された腕を振りかざすように。私は距離を保ったまま、ゆっくりと振り返る。

「今度は真姫ちゃんの方から、にこの手を掴んで欲しいな」

さっきとは逆の腕を差し出してあげる。

その代わりに最後の一歩、余った距離は真姫ちゃんの方から歩み寄って?


与えられるがまま。奪われるがままの真姫ちゃん。

貴女は私という人間を通じて、勝ち取るという事を学ぶの。

めそめそと泣いていれば、いつか誰かが手を差し伸べてくれるけれど。

それでは本当に欲しいものは手に入らないから。

今の真姫ちゃんが、私を手に入れ損ねたみたいに。

与えられたものは、全て紛い物。そんなの、嫌でしょう?

だから、ね?

欲しいものには、手を伸ばすの。

奪われたら、追い駆けるの。

与えられたものは、磨き続けるの。

そうしたらいつか、本物が手に入るから──。

しっとりと濡れた体温に包まれた指先は、けれどそれを心地よいとさえ知覚した。

(真姫ちゃんのこと、本当に好きになれたら良かったんだけど……)

先程とは逆に、今度は真姫ちゃんが私の腕を引いて歩く。

健気で一生懸命な彼女の気持ちに、けれど私は紛い物の気持ちでしか応える術を持たない。

果たして紛い物の想いであっても、熱すれば燃えるのだろうか。

もしそうであるなら、少しは救われるかもしれない。


(……なんてね)

どんな言い訳をしても変わらない。私は残りの自分の時間を守るため、真姫ちゃんを嘘で包み込んで騙した。

だって邪魔だったんだもの。仕方ないじゃない。

(でも大丈夫。最期まで騙し通してあげるから)

差し掛かった別れ道。特に何かを話していたわけではなくとも、ふたりで歩く帰りの景色は瞬くような早さで通り過ぎていく。

「それじゃ真姫ちゃん」

また明日──と私が告げるよりも先に。


ちゅ、と。


ふんわりとした、けれど熱っぽい水音で言葉を遮られた。

「に……にこちゃん、また明日っ」

逃げるように背を向けて走り去るあの子の潤んだ瞳と上気した頬の色だけが、網膜に張り付いた残像のようにいつまでも私の中でゆらゆらと漂い続ける。

「……油断した」

向こうからのキスなんて、あと1ヶ月は先のことだと思っていたのにね。

今回はここまで。

朝、目が覚めた私は未だかつて味わった事のない不思議な気分に浸っていた。

「……あ」

(ダメなんだ、これ)

体を起こすどころか、頭の向きを変える事さえ出来ない。

まるで脳をスプーンか何かでゆっくりとかき混ぜられほぐされているような感覚。

動かせない体が、くるくると回転して渦に飲まれていくような錯覚。

(きもちわるい)

脳裏でそう呟いて間もなく、私はそのまま嘔吐した。

けれどそんなことは気にならない程度に、私の体調は最悪だった。

(誰が呼ばないと)

霞がかった頭で考え付いたことを実行する。しようとして。

しかし私は激しく咳き込む。その反動で揺れた脳が、更なる歪みを生む。

私の手では届かない、脳の裏側の遥か上の方で。

そこで何度か白い閃光が点滅して、次第にその間隔は短くなっていく。

まぶしい……のかもしれない。自分がその光をどう感じているのか理解も出来ないまま。

私は光に包まれた。

きっと目を閉じることが出来なくなってしまったのだと思う。

周囲は何時までも白に染まったままだった。

目覚めた私は酷い偏頭痛で顔をしかめた。

どこか拒絶に近いよそよそしさを感じさせる白の天井と囲いには見覚えがある。

ここには前にも来たことがある。真姫ちゃんの病院だ。

(私、倒れたんだ)

カーテンの向こう側から微かに漏れる光は既にオレンジに染まりきっていた。

ナースコールのボタンを手に取り、同時に自分が覚えていた最後の記憶を辿っていく。

(あの時……)

点滅する白。動かない体。徐々に遠のく、心音。

酷くあっさりとした意識の喪失。

(死ぬって……はっきりと、そう思った)

痛みも苦しさもない。それが却って死を身近に感じさせた。

(まだ、先のことだと思っていたのに……)


ひたひたと迫る命の期限から、目を背けていたわけじゃない。

処方される薬の量も種類もどんどん増えて。それでも最近は体調の悪い時間の方が長くなっていて。

今回のように意識を失って倒れることも、あらかじめ危惧していた。

ふとした理由で死んでしまうことだって、可能性としては十分にあるのだ。

だから、いつ何が起こっても不思議ではない。

そんな風に覚悟はしていたし、平気な筈だったのに。


(…………っ)

どうして私は泣きながら震えているのだろう。

これではまるで、死ぬのを恐れているようではないか。

(大丈夫。大丈夫、だから……)

止まらない震えを押さえ付けて、私は必死にそう言い聞かせる。

ひとりで居ると押し潰されそうで。誰でもいいから傍に居て欲しかった。

(そうだ、ナースコール)

いつの間にか指先からこぼれ落ちていたボタンを拾い直そうとして、しかし震える体がそれを許してくれない。

そうして──数秒。ようやくボタンを拾い上げた時になって。

ガラガラと入り口の扉が開く音がする。

それに続いて室内に響いたのは、控えめな靴音。

来訪者は囲いになっているカーテンを掴むと、その隙間から顔だけで此方を覗いた。

「……!?」

目が合い、互いに驚きの声を発する。

大粒の宝石のような瞳は二、三度瞬き、そして綻ぶ。

けれど私の方は未だに驚きを隠しきれてはいなかった。

「真姫ちゃん、どうして……」

私の一番見られてはいけない姿。それをよりにもよって、一番見せてはいけない仲間のひとりに見られてしまった。

やはり短いですが今回はここまで。がんばります

応援ありがとうございます。またまた短くなるとは思いますが、次の投下は来週頭頃になる予定です。

ドサッと音を立てて、真姫ちゃんの鞄が床に落ちる。

「にこちゃん!」

けれどそれを気にする素振りも見せずに、真姫ちゃんは一心不乱に私の下へと駆け寄って。

そして目を白黒させるにこの事なんてお構い無しに、強い力でぎゅっと抱き締められる。

「ちょ……真姫ちゃん、くるしい」

「……しらないっ」

不覚というか、不本意というか。それでも私は押し付けられた彼女の体温に包まれて、他の何物にも換えがたい安堵感を抱く。

(……あったかくて、落ち着く)

私は真姫ちゃんの腰の辺りに腕を回して抱き返す。

そうすれば抱擁は真姫ちゃんからの一方通行なだけの行為ではなくなってしまっていた。

(ちょっとだけなら……バレないよね?)

肩に顔を埋めるふりをして、目じりに溜まっていた雫をぬぐい去る。

真姫ちゃんは何も言わなかった。きっと私に抱きつくことに夢中でそれどころではないのだろう。

「心配……したんだから」

恨めしげに、けれど拗ねたような。真姫ちゃんらしい、甘えた口調。

「2日間も学校休むし……連絡もつかないし」

徐々に震えを帯び始めた低い声。聞いている側からすれば、これから泣きますよと脅されているようなものだ。

私は慌てて真姫ちゃんの背中をぽんぽんと撫でるように叩く。

(ていうか、2日間も気絶してたのね)

そりゃ、確かに心配になるわよね。寄りによって付き合う事になった翌日だもの。

「……ごめんね、真姫ちゃん」

不安にさせちゃったよね。連絡のつかない間、きっとたくさん悩んだよね。

「ごめんね」

何かに怯えるように、真姫ちゃんは抱き着く腕に更に力を込めて呟く。

「嫌われたのかと……思った」

……まったく、馬鹿ね。本当、バカなんだから。

ヒンヒンとすすり泣く真姫ちゃんの様子を見て、確信する。

真姫ちゃんはまだ、私の病気については何も知らない。

(でなきゃ白血病の人間を相手に、ここまでハードなハグを迫ったりしないもの……)

仮にも医者志望なんだから……ねえ?

(きっと……うちのママに聞いたのね……)

私と連絡の取れなくなった真姫ちゃんは、無い勇気を振り絞って私の家に押し掛けたか、それとも電話でもしたのだろう。

そうして母は私が入院していることを伝えた。病気の事に関しては強く口止めしておいたから話していない筈だし。

そう考えれば今の状況も辻褄が合う。真姫ちゃんは病気については聞かされず、ただ心配で不安でここに訪れたのだ。

(だから、落ち着いたら必ず──)

「……にこちゃん、何の病気だったの?」

聞かれると、思っていた。

(白血病なの。もうすぐ死ぬのよ)

けれど本当の事なんて、死んだって教えてあげない。

「まだ検査中だけど、数日あれば退院できるわ」

曖昧、だけど言い切ってしまえばそれ以上を追及されることはなかった。

「退院したら、デートしよ!」

まあ、元より追及させるつもりもないけどね。

「べ、別にいいけど……」

だから、これで良いの。これでまた明日から、前と同じ日常が続いていく。そうに決まっているのだから。

日も暮れて、病院の面会時間が終了を迎える。

「……じゃあ、また学校で」

別れ際に、キスをしてあげた。

「……お見舞い、ありがとね」

心配してくれたご褒美と、不安にさせちゃったお詫びに。

今度は不意打ちじゃなく、お互いの意思を重ねて。

ウブな真姫ちゃんは、キスをする前から顔を真っ赤に染めていたけど。

「真姫ちゃん、目……閉じて」

きっと私も、同じ顔をしていたと思う。

「キス………するね」


沈黙を心地よいと感じたのは、その時が初めてだったかもしれない。

余計なお喋りも気遣いも必要ない。ただ、その温度を身近に想えるだけで。

なんだかとても、幸せな気がした。

数分後、真姫ちゃんと入れ違いで私の様子を見に来た母は、気の毒に思えるほど憔悴しきっていて。

そのせいで母に同伴して私の病室に訪れたお医者さんの落ち着いた様子が、一層際立って見えた。


「医師の立場から言わせて頂きますと、早急にご入院されることをお勧めします」

落ち着きながらも温かみを感じさせる優しい声で、その人は言う。

胸元の名札には、見覚えのある苗字。きっと、真姫ちゃんのお父さんだと思った。

「矢澤さんの病状には保険が適用可能ですから。経済的な面でも心配は要らないでしょう」

私が抱いていた懸念事項のひとつについて、その人は話す。

(……まるで説得でもされてるみたいね)

事実、そうなのだと思う。きっと母が先生に頼んだのだ。

家に居た間も何度かそういう話はした。お金のことなら大丈夫だから、と。

……でも。

「ごめんなさい」

でも本当はそんなの、入院を拒む為の言い訳に過ぎない。

「入院しないでいたら沢山の人に迷惑をかけてしまうこと、分かっています。今のままでいることが単なるワガママでしかないことも、全部」

本当は、ただ皆と一緒に過ごしていたいだけだった。

「それでもどうかお願いです。今まで通り、家に居させてください。学校にもぎりぎりまで通わせてくたさい」

皆と一緒に過ごすことで、これまでと同じ自分のままで居ようとしただけだった。

「私が矢澤にこで居られる、その時まで」

母の愛情も、先生の思い遣りもすべて無下にして。

それは現実から目を背けているだけだと、そう言われても仕方ないと思った。


けれど、そんな私を包んだのは母の優しい体温で。


「最後まで、一緒にがんばろうね」


頬を伝う雫はひとすじ、熱い軌跡を辿って心まで沁み込んだ。

今回はここまで。今週中にもう一度更新できたら幸せです。あまり期待せずにお待ち頂ければ更に幸いです

2日後、退院した私が自宅に戻ると、待ち構えていたのは妹弟達とμ‘Sの面々だった。

「にこちゃん!退院おめでとー!」

こちらが状況を飲み込む間もなく抱き付いてきた穂乃果の勢いに押されてよろめいた私を、後ろから母が支える。

「ちょ……アンタたちっ」

決して広くない家の中には質素ながらもきらびやかな飾り付けが施されていた。

「穂乃果、にこが驚いてますよ。一旦離してあげてください」

「ちぇ~」

海未に諭されて、穂乃果はおずおずと私から体を離す。私はというと、未だ動悸が収まらない。

「サプライズ成功だにゃー!」

「まだまだ、驚くのはこっからやで、にこっち」

まったく……なんなのよ、急に。

「びっくりさせたくてね、昨日からみんなで準備してたんだよ」

ねー?と、小鳥に微笑みかけられた花陽が頬を染めておずおずと。

「わ、私と小鳥ちゃんはケーキを作ってみたんです。美味しく出来てるか、自信ないですけど……」

(……それをばらしちゃったらサプライズにならないんじゃないの?)

思い付いた言葉を、しかし私は胸にしまっておくことにした。

「……みんな、ありがと。ただいま」

今日はとにかく楽しもう。最っ高の笑顔で、不安も何もかも吹き飛ばしちゃうんだから。

「にこたち、そろそろ帰って来るって!」

にこのお母さんから送られてきたメールを見て、私は声を上げる。

「よっし!こっちはもう準備出来てるよ」

「飾り付けも完璧にゃ!」

希と凛の声を筆頭にして、各々が分担していた作業の完了を告げている。

どうやら残るは私達のグループだけのようだ。

「あと10分ほどね……」

それぞれが持ち込んだ調理済みのおかずがあったとはいえ、平日の授業終了後ということもあって時間の余裕はない。

時刻はすでに夕方6時を回ろうとしていた。

「大丈夫よ、エリー。間に合うわ」

手元のフライパンに視線を向けたまま、真姫が静かにそう告げる。

「そうね……がんばりましょう」

彼女が自分から料理を担当したいと言い出した時には、本当に驚いた。

真姫が料理なんてほとんど出来ないことはメンバー全員が知っていたし、本人だって自覚はあっただろう。

けれど決意の炎が宿った瞳を見て、彼女を止めようとする仲間はひとりも居なかった。

(私も……負けられない)

単純な料理の腕なら負ける筈ないと分かっているのに。それなのに何故だか私はそんな風に思って、真姫と共に料理を担当することにした。

(にこのこと、ガッカリさせたくないもの)

隣を覗けば、そこには彼女の真剣な横顔。やはり負けたくないという想いが胸の中で沸き上がるのを確かに感じた。

メールが来てから10分ほどが経過した。

料理を担当している私と絵里を除く全員が、玄関先でにこちゃんの帰還を今か今かと待ちわびている。

(私も早く向こうに行きたいけど……)

隣で盛り付けの仕上げに取り掛かっていた絵里と目が合う。

「こっちはもう完成よ」

安堵の笑みを浮かべて、絵里は言う。カラフルに彩られたサラダはとても美味しそうだ。

「私もあとはオーブンだけね」

熱を発して唸りをあげるオーブンレンジに点る残り時間は30秒。何とか間に合ったらしい。

「エリー、いろいろとありがとう」

にこちゃんのお母さんに聞いて彼女の好物まではリサーチしたものの、自分ひとりではここまで手際よく調理をこなすことは出来なかった。

というか、私はほとんど指示に従って動いていただけだったので、8割方は絵里の功績と言っても過言ではない。

悔しいけれど、今の私の料理の腕では大好きな人の好物を作ることさえままならないのだ。こんな腕で、よく調理担当に立候補したものだと呆れてしまう。

「真姫だって、よくがんばったわ」

微笑みを浮かべて私を褒めてくれた絵里は、しっかり者のお姉さんみたいだった。

「ありがと」

なんだか照れくさくって、二度目の感謝の言葉は小声になってしまう。それがおかしかったのか、私達はどちらともなく笑みを零した。

と、同時に玄関の扉が開く音がした。続いて穂乃果の底抜けに明るい声。

「しまったわね……出遅れたわ」

絵里が珍しく焦った声色でそう告げた。その声に重ねて音を立てたオーブンを見ると丁度加熱が終わったところだった。

扉を開けると、美味しそうなチーズの匂いが漂う。

「このグラタンだけ並べたら、私達も行きましょう」

少し慌てて加熱用のお皿を掴もうとした私の手を。

「真姫!熱いから素手で触ったらダメよ!」

絵里の言葉が遮ろうとする。けれど、もう遅かった。

「熱ッ」

反射的に手を離した私の元から重力に従って、グラタンの載ったお皿が地面に吸い込まれるように落ちていく。

手を伸ばしても、もう遅かった
派手な音を立てて、お皿はグラタンごと粉々になってしまう。

しん──と。

家の中が静まり返ったのが分かって、私はその場にぺたんと音を立てて座り込んだ。

この光景を見たら、にこちゃんは悲しむだろう。そう考えると私も悲しくて、たぶん泣いてしまうだろうと思った。

「ところで絵里と真姫ちゃんは?」

みんなの手厚い歓迎をひとしきり受けきったところで疑問を口にする。あの二人のことだから、欠席するとも思えないけど。特に真姫ちゃん。

「ふたりは台所をお借りして料理の最中です。もうじき終わると絵里からは聞いていますが……」

「えっ」

(絵里はともかく、真姫ちゃんがお料理?)

真姫ちゃんとお料理。あまり聞きなれない歪とも思える組み合わせに、嫌な予感が胸をよぎる──。

瞬間、家の奥の方から響いたのは、食器か何かが割れた音だった。

(真姫ちゃんだ)

突然の事に固まったままの皆を尻目に、私はひとり台所に駆けつける。

「ふたりとも、大丈夫!?」

最初に目に入ったのは口許に手を当てて驚きの表情を浮かべた絵里。次いで割れたグラタンの皿と、その前に座り込む真姫ちゃんだった。

「にこ!ごめんなさい」

台所に入ってすぐに絵里とは目が合う。

「平気よ!ケガはない?」

「ええ、私は……」

けれど不安げに揺れるブルーの瞳はそのまま、その場から動こうとしない真姫ちゃんに視線を移した。

「真姫ちゃん!ケガしてない!?」

「えっ……あ、にこちゃん……」

こちらの声に反応してくれたことにホッとする。見た限りでは特にケガをした様子もなさそうだ。

「ごめんなさい、にこちゃん……」

けれど、それでも真姫ちゃんはそこから動こうとはしなかった。

「真姫ちゃん、どこかケガしたの?」

割れた細かい破片を拾い集めながら、真姫ちゃんの表情を窺う。基本的に私以外のメンバーの前では気丈に振る舞う彼女だけど、今日はどうやらそうもいかないらしい。

「違うの、ごめんなさい。にこちゃんにも、エリーにも、みんなにも申し訳なくて」

彼女はついに、両手で瞳を覆ってしまった。

「お祝いだからって、エリーが一生懸命準備してくれたのに……」

「ちょ、ちょっと!真姫ちゃん!?」

(お祝いだったら泣かないでよ!)

もうっ!バカ真姫ちゃん!仕方ないんだから!

「もう……怒ってなんかいないわよ。ほら」

あんまりみんなの前ではしたくなかったけど、仕方ない。いつもより少し強く、私は真姫ちゃんを抱き締めた。

「絵里、あんたもこっち来なさいよ。ほら!」

「わ、私!?わ、わかったわ!」

ハラショー!なんて言いながら、絵里も遠慮がちに真姫ちゃんを抱き締める。

「ねえ真姫ちゃん、絵里も怒ってないわよ。もちろん、みんなだってね」

絵面だけ見ると、私と絵里で真姫ちゃんを取り合っているみたいだ。

「グラタンは残念だけど、また作れるわ。今度はにこが手伝ってあげるから」

それを聞くと真姫ちゃんは顔を上げた。どこまでも現金な子だと思った。

「……デートもしてくれる?」

絵里には聞こえないように、小声のやり取り。

「うん、デートとは別で付き合ってあげる」

いい加減、3人で抱き合うこの体勢に疲れてきた。バランスの悪いスクラムを組んでいるみたいで酷く無理をしているのだ。

「……にこちゃん大好き。エリーもありがとう」

そう漏らして、真姫ちゃんは最後にもう一回だけ泣いた。明日、私と絵里はきっと筋肉痛に苦しむことになる。半ば確信に近い、そんな予感がした。

「それでは改めまして……」

始まる前からいろいろあったけれど。

「にこっち!退院おめでとー!!」

にこの退院を祝う集い──通称NTTは無事開幕した。

「おいしい……」

「おいしいにゃ……」

「おいしいです……」

「ちょっと!なんで私の方を見るのよ!」

真姫ちゃんと絵里の作ったお料理は予想していたよりも遥かに真っ当で、なおかつとても美味しかった。

「真姫ちゃんのことだから、もっと圧倒的なトマト攻めでくるかと思ってたのに」

「な、なにそれ!意味わかんない!」

向かい側の席で絵里が苦笑する。

「大丈夫よ。真姫ったら、にこの為にすごくがんばったんだから」

「そうよ!本当にがんばったんだから、その……」

絵里のフォローで息を吹き返して。けれどその勢いはすぐに下火になっていく。

「ちょっとくらい、褒めてよ……」

そこまで素直にせがまれてしまったら、拒絶できない。あーもう、仕方ないわね。

「真姫ちゃんの作ったお料理、すっっごく美味しかった!ありがとにこー!」

さっきも似たようなことをした気がするけど、それでも真姫ちゃんは顔を耳まで真っ赤にして喜んでくれた。

(……もし、にこが)

男の人だったら、真姫ちゃんのこと大事にしてあげられるのかな。意地悪せずに、愛を注いで。

少しの間考えてみる、けれどすぐに無駄なことだと思った。どのみち、残された時間は多くないのだから。

食事が終わると、今度はケーキが出てきた。真っ赤なイチゴが乗った、大きなケーキ。

小鳥が人数に合わせて綺麗に切り分けたケーキを、私は半ば無理を言って最後のひとくちまで真姫ちゃんに食べさせてもらった。

「次は真姫ちゃんの番ねー」

「わっ私はいいわよ……」

ふんわりとした生地に、絶妙な甘さのクリーム。ほのかに酸味が残るイチゴを乗せたケーキは今まで食べたどんなものよりも美味しいと思った。

だけど残念。きっと真姫ちゃんには味なんて分からなかっただろう。それだと流石に可哀想だから、ひとくち分だけ残しておいてあげるね。


「そんじゃそろそろメインイベント行こっかー!」

希の号令を口火にみんなが立ち上がり準備を始める。

部屋の隅では何処から持ってきたのか、かろうじて持ち運びが出来そうな大きさの電子ピアノがセッティングされていた。

奏者はもちろん真姫ちゃん。何度か鍵盤を叩いて音を確認した彼女はOKと合図をして。

「にこちゃんの退院を祝ってみんなで歌います。曲名は──」

ピアノ用にアレンジされた、聞き覚えのある軽快な前奏。

μ‘Sのみんなと私の家族が奏でる澄んだ音色は狭い室内にこだまする。

気付くと私も一緒になって口ずさんでいた。そうでもしないと、きっと泣いてしまっていただろう。

そうなってしまったら、きっと病気のことだって全部打ち明けてしまうから。

だから涙を見せないように、私は歌い続ける。決して笑顔を絶やさぬ、幸せな歌を。

時刻は9時を回って、宴もたけなわ。片付けも済んでみんなの気が抜けたところで、私は処方された薬を手に洗面所へと向かう。

「にこ?」

その途中で私を呼び止めたのは絵里だった。幸い他のみんなの目には触れない、洗面所の入口前。

「それ、お薬?ずいぶん……たくさんあるのね」

「……まあね。退院したとはいえ、まだ暫くは飲まないといけないのよ」

見られたのは、処方された薬のほんの一部。だけど「暫くは飲まないといけない」なんて言うような軽々しい量ではなかった。

咄嗟に薬を隠しそうになった自分を諌める。そんなことをしては怪しまれるだけだ。

「本当は食後30分以内に飲む約束なんだけど、楽しくて忘れちゃってたわ」

この場の空気にそぐわぬ軽い口調。

「そうなの……。それなら早く飲まないといけないわね。邪魔しちゃってごめんなさい」

どこか不安げな空気を残して、絵里との会話は締め括られた。

それから皆が帰宅するまでの間、絵里とは一度も会話をすることはなく。

けれど不意に感じる青い視線の気配だけが、彼女の心で沸き起こる拭い去れない疑念の存在を主張しているようだった。

今回はここまで。今回は殆ど推敲できていないので誤字脱字など多いかもしれませんが、次もなるべく早く更新出来るようにがんばります

小鳥が漢字なのは何か意味があるのだろうか

>>75
ミスなんです。特に意味はないのでごめんなさい

次の更新はいつ?

>>77
来週末の予定です。もし遅れるようならここでご連絡しますね

少し早くに目が覚めた。

(大丈夫、起きられる)

体の調子は悪くない。ひょっとすると、ここ暫くでは最高のコンディションかもしれないと思った。

早朝の我が家には、まだ静寂が鎮座している。耳を澄ませば妹たちの寝息さえ聞こえそうなほど。

慣れ親しんだ日常の暖かみに、頬が緩んでいくのを感じる。

(この家に、私は帰って来ることが出来たんだ)

出来ることなら1日でも永く、この家に。家族の傍に。

そんな風に願いを込めながら、枕元に用意されていた薬を服用していく。

きっといま飲んでいる薬には、神頼みとそう変わらない程度でしか意味はない。

私の運命を変えるほどの力は、きっと。

「……お弁当、作らなきゃ」

私の朝は家族全員分の朝食とお弁当を用意するところから始まる。

いい加減、私が代わるわと。母は何度も言ってくれたけど。

それでも、この役目を譲る気にはなれなかった。

「今日はいい天気ね」

台所の窓から覗く空を眺めて。

今日もきっと良い1日になる。そんな予感がした。

早起きしたお陰で時間はたっぷり余っていて。

だから今日は気合いを入れて、念入りに髪をとかしてきた。

その甲斐あってか、今日のツインテールはばっちり決まっている。まあ、登校時間はギリギリになっちゃったけどね。

「おはよう、にこ」

下駄箱の前で声をかけてきたのは、絵里だった。

「おはよう。こんな時間に会うなんて珍しいわね」

生徒会長を務めていた頃からの習慣か、絵里の登校時間はいつも朝早い。こんな風に下駄箱前で会うのはμ‘Sの朝練がある時くらいだろう。

「今朝は寝坊しちゃったの」

僅かに頬を染めて、誤魔化すように絵里は笑った。

「ふぅん」

まあ、たまにはそんな事もあるわよね──なんて。適当な相づちと会話を交えながら、私達は3年生の教室まで共に歩いた。

「ねえ、にこ」

お互いクラスは別々だから、一緒に歩くのもここまで。また放課後ね、なんて手を振ったのも束の間、呼び止められる。

「体はもう……平気?」

ほんの僅かな淀みを含んで放たれた言葉は、核心を突くのに十分な切れ味を誇っていた。

「もう退院したのよ?平気に決まってるじゃない」

……ああ。また面倒ごとが増えてしまう。

「……そうよね。変なことを聞いてごめんなさい」

わかりやすく笑顔を張り付けて、絵里は教室へと去っていく。

寝起きの快調からは打って変わって頭が痛い。

絵里の背中を見送る傍らで、私はぼんやりとそんなことを思った。

二限目の終わりに携帯電話をチェックすると、真姫ちゃんから昼食を一緒に食べようという旨の連絡が来ていた。

『いいわよ』

早速そう返信して、私は教室を後にする。この時間に服用する薬は、幸い制服のポケットに収まる量で済んでいた。

「にこ」

廊下に出るなり視界の隅に映った金髪。私はそれに気付かないふりをしようとして、けれどあちらがそうはさせてくれなかった。

「絵里、どうしたの」

きっと、居るだろう。そんな予感めいた確信が、にこの中にはあった。それが現実になったとしても、さして驚きはしない。

「たまたま見かけたから声をかえただけよ。どこか行くの?」

きっと前の休み時間も、こうやって待ち構えていただろうに。それなのに、『たまたま』なんて言葉はあまりに急ごしらえで見え透いた嘘だった。

(真姫ちゃんみたい)

あの子ほど、意地っ張りではないけれど。それでも分かりやすいという点では大差ない。

(……感情に振り回されない分、絵里の方が厄介かしら)

昨日見られてしまった薬のことがあるから、下手に煙に巻こうとしても納得はしてくれないだろう。

そういう時、絵里は間違いなく希に相談してしまうから。そうなれば結論にたどり着き、それがμ‘Sの仲間達に伝わるのもあっという間だ。

休み時間はたっぷり10分。その間に絵里とは話しておく必要がある。

「絵里、話があるの。二人きりになれないかしら」

向こうから声をかけて来てくれたのは、却って好都合だった。

丁度真姫ちゃんから返ってきた返信を見て、私は行き先を決める。

「部室まで、一緒に行きましょう」

「昨日見た薬のこと、誰にも話さないで欲しいの」

紅い双眼に射抜かれて、私は暫し硬直する。

綺麗だと思ったのだ。よりにもよって、同世代の女の子のことを。

自分よりも小柄で幼く、かわいらしい筈の、目の前の少女のことを。

「理由を聞かせて頂戴」

けれどそんな自身を諌めるように、私はより毅然と振る舞う。

私がほんの一瞬抱いた不埒な想いを、彼女に悟られてはいけない。

理由はわからずとも、本能でそう感じたのだ。

「……もう、気付いてるんでしょ?」

「………」

沈黙は、肯定の意を表して。

けれど相変わらず、私を捉えて離さないにこの瞳に。

「予測の域は……出ないけど」

堪えきれず、私は敢えて言葉として紡いでいく。

「……そう」

重い。

ふと、そう思った。言葉も仕草も息遣いも、何気ない視線の動きさえも、すべて。

これまでの私が知る、矢澤にこのすべて。そのどんな場面よりも、目の前の少女が発する重みは鈍く、息苦しい。

「にこ、あなた……」

「ねえ、絵里」

遮られた言葉の続きは。

「本当はにこの病気、まだ治ってないの」

彼女自身の口から語られた。

「実を言うとね」

どうかお願いです。神様。

「もう、時間がないのよ」

もし、彼女の言葉を聞かずに済む方法があるのなら。

「残りの時間、ずっと病人扱いで寝たきりなんてゴメンだわ」

どうか、そのやり方を私に教えてください。

「そんなの、にこらしくないでしょ?」

でなきゃこんなの、酷すぎる。

「矢澤にこは最期までアイドルなの。ずっと、笑顔なのよ」

痛々しくて、あまりに聞くに堪えない。私の方が、先にダウンしてしまいそうなのに。

「だからお願いよ、絵里」

どうして貴方が笑っていられるの。

「みんなには何も言わないで」

どうして私が泣きそうなの。

どう考えたっておかしいじゃない。そんなのって、無いわよ。

「みんなには私から話すわ」

いつ、どんな形でそれを伝えるか。それはまだ考えられない。

けれど、話さず秘密にしておくなど有り得ないことだ。

「ダメよ」

彼女がいくらそう拒んでも、それは変わらない。共に歩いた仲間達には、知る権利がある筈だから。

「……どうしてそこまで頑なに」

「にこが嫌だって、そう思ってるの。それだけよ」

「っ……それじゃ何も分からないわ!ちゃんと理由を教えてよ!」

休み時間などとうに終わっていたが、そんなことはどうでも良かった。普段なら有り得ないことだけど、それくらい頭に血が昇っていた。

「あんたに話す必要なんてない。余計なことしたら絶対に許さないわよ」

けれど沸騰した血液さえも、彼女の冷たい言葉の前では凍りつく。

「……どうして」

どうしてそんなこと、言うのよ。

にこから向けられたのは軽蔑するような眼差しだった。怒りも呆れも通り越して、まるでお前には元からそんな権利などないのだとでも言いたげに。

「あんたこそ、どうして余計なことばっかりしようとするの」

「…………」

問われて、思い出したのはあの日のこと。にこが真姫の手を引いて、ふたりが仲睦まじげに帰路へと付いていく、放課後の情景。

「そんなの、決まってるじゃない」

貴女が大切だからとは、とうとう口にできなかった。

「……今日の放課後に」

部室の薄暗い蛍光灯の下。青白いにこの顔は輪郭さえもおぼろ気で。

「練習を見て、無理だと感じたらみんなに話すわ」

今年の夏に、にこを褒めた時のことを思い出す。あの時は確か、白くて綺麗な肌をしていると、そう言った。

彼女の病のことなど知らずに、そう言ったのだ。今にして思えば、なんて残酷な言葉だったことか。

あの時のにこは、何を思っていたのだろう。心のうちでは私に怒っていたのだろうか。

「……好きにしたら」

……きっと、そうじゃない。にこは私のことなど何とも思わなかったに違いない。

「そうなったら、あんたと顔を合わせてうんざりするのも今日が最後になる。それだけよ」

にこにとって、私の存在など取るに足らない程度のものでしかないのだ。

大事なのはμ‘Sそのもので、そのメンバーのひとりでしかない私への興味なんて驚くほどちっぽけ。

そうに決まっている。だから今更、私達の関係に発展なんて訪れない。

あとは死を待つだけの彼女なのだから、気を引こうとしたって無駄なんだ。

「……また放課後」

これ以上会話を続けても無駄と踏んだらしい。私の横を通り過ぎて、心底うんざりしたように彼女は告げた。

「ええ、また……」

あとで。と言い切る前に、扉は無慈悲な音を立てて私とにことを隔ててしまう。

あとに残ったのは如何ともし難い焦燥だけ。どうして気付いてしまったのだろう。何もかも手遅れなら、知らない方が幸せだったかもしれないのに。

真姫ちゃんとの昼食を滞りなく済ませて、あっという間に放課後。

幸いなことにそれまでに私の様子を怪しむ者はひとりもいなかった。

きっと絵里だって、薬のことを知らなければ今でも何も気付かずにいられただろう。

「今日は17時から振り付けの合わせをするわよ」

絵里は屋上でみんなにそう告げる時、私の方に一瞬だけ視線を注いだ。

その程度で釘を差したつもりなのか。彼女は自信の無い時ほど、決意を見せつけるように強硬な態度を表す。そういう癖があるのだ。

「真姫ちゃん、振りの練習付き合って」

過ぎ去った時間、その後ろ姿を追いかけるように。私は一心不乱に止まることなくダンスに取り組んでいく。

……嘘だ。急な激しい動きに体が付いていけるはずもなく、途中に何度か休憩を挟んでもらった。

格好つけようとしたって、出来ないことはある。迷惑かけちゃってごめんね、真姫ちゃん。


「……一度全員で合わせて踊りましょうか」

ろくに息を整える間もなく集合がかかる。私を気遣った真姫ちゃんが待ったをかけようとするのを制止して、そのまま列に加わった。

絵里は一度決めたらトコトン頑固な性格だから、きっと私に対してだって手を抜いたりはしない。

だけどそれ故に、自分の望まぬことであっても約束を覆すことはない。そんな彼女の誠実さと優しさを、私は信じていた。

「……始めるわよ」

1オクターブ低い声で絵里が呟くと音楽が流れ、みんなが一斉に踊り出す。

はっきり言ってしまえば、付いていくだけで精一杯だった。というかそれさえ出来ていたかどうか、自信はない。

それでも踊る。可能なら限り、手を足を脳を働かせて。

途中から、絵里はこちらを見なくなった。それが良いことなのか、悪いことなのかは分からなかったけど。

とにかく曲が終わると、私は糸が切れたかのようにその場に座り込む。

休憩、と。絵里は私を見ずに全員に告げた。

ひとりになりたい気分だった。

「どこへ行くの」

私が休憩を宣言するなり、彼女は屋上を後にした。その足取りは覚束ない。

「……着いて来ないで」

あまりにも見るに堪えない姿だった。途中から、目を背けてしまいたくなるほど。

あんなのは、ダンスとは呼ばない。ただ動いているだけだ。

きっと私の他にも何人かは気が付いただろう。一緒に振り付けの練習をしていた真姫なんて特に。

「ひとりに、なりたいの」

手すりに掴まり、荒い呼吸と共に言葉を吐き出す。階段を降りようと前に踏み出すけど、今の彼女にはそれすら無謀に思えた。

「……みんなに話しましょう」

にこは静かにこちらに振り替える。

(そんな顔……したって……ッ)

ただ微笑み、談笑する。そんないつも通りのゆるやかな日常が続いていくのであれば、あるいは──。

そう思った。

強く眩しい憧れを誰よりも永く抱き続けた彼女ならば、あるいは──。

そう思った。

けれど実際はそんなことはなくて。迫り来る生命の期限を前に、目の前の少女は余りにも無力だった。

「みんなに話して、そして一緒に考えましょう?にこがμ‘Sを続けていけるように、みんなで……」

空虚な事実を叩き付けられて、視界が滲んだ。夢をみることさえ許されないのだと、知った。

「イヤよ」

神様も。

「他の誰にも話さない。話したらあんたを許さない」

貴女も。私に何も許してはくれない。

「どうして?」

うなだれた私に向かって、躊躇いがちに。

「にこが何て言おうと伝えれば良いじゃない、みんなに」

そんなことを問うにこは、何も分かっていない。

「……それじゃ意味がないのよ」

偉そうなくせに。小さいくせに。本当に何も分かっていない。

「単なる私のワガママなのよ」

一番大事なのは、あなたを労る事じゃない。私が貴女を失わないことなの。

だから貴方に拒絶されない為なら、私は騙す。嘘もつく。例えそれが唯一無二の友人たちでも。

それほどまでに、貴女が。

「貴女が大切なの……」

それだけじゃない。

「愛してるの、よぉ……」

今ぐらい、許してくれるでしょ?抱き締めて、すがり付いて。そして泣くくらい、良いじゃないの。

今回はここまで。応援とても励みになっています。また来週末に投下しますね。

ちょっとご連絡。次回の投下予定ですが、書き溜めしていたデータと共にスマホがご臨終した関係で数日遅れる見込みです。
遅くとも火曜日までには投下できるよう算段を整えておりますので、もしお待ちくださっている読者の方が居りましたらもうしばらくご辛抱願います。
こちらの勝手な事情、勝手な都合で恐縮ですが、これからも私の拙い文章を気にかけてらもえれば幸いです。
なんだか硬い文章になってしまいましたが、これで失礼します。

ご容赦頂きありがとうございます。
とりあえず消し飛んだ辺りまでの書き直しは済んだので、今日のお昼過ぎにでも続きを投下します。
それまでもう少々お待ちください。

「ちょっと……冗談でしょ」

戸惑いつつも気だるげな、にこの言葉に少し傷付いた。

縋り付いて、泣き付いて。みっともなくても確かに伝えた愛の告白。

「冗談なわけ……ないじゃない」

もしそれが嘘や冗談であるなら、私はこれ以上どうやって想いを伝えれば良いのだろう。

「……そうよね。ごめん」

それっきり、お互いに黙り混んだ。

相変わらずにこの腰に回された私の両腕。絡み付くような抱擁を、けれども彼女は返してはくれなかった。

きっと、それが返答なのだと、そう思った。

「付き合っている人が居るの」

だから彼女の言葉にも、驚きはしない。

「真姫でしょ?……知ってたわ」

「…………そう」

たったそれだけの淡白なやり取り。私の恋は、そこで潰えた。

けれど、彼女を抱き締める腕の力を、私が緩めることはない。

もっと貴女を困らせたいから。

もっと私のことを、見ていて欲しいから。

「今日、一緒に帰りましょう」

私の腕の中で、少女が顔をしかめた。

「……嫌なの?」

「真姫ちゃんと帰る約束してるのよ」

どうやら先約があるらしい。けれど、今日だけは許さない。

「だめよ」

腕の中に向かって、私は囁く。

「今日はにこの具合が悪いことにして、ふたりで先に早退するの」

有無を言わせぬ強い口調。自分のことながら、強引過ぎるという自覚は十分にある。

「好きにしたら」

だからこそ、にこが折れるまでに時間はかからなかった。

どんなに突き放すような言い方をしても、人の本質はそう変わらない。

誰かに対して冷徹であり続けようとするには、彼女は少し優し過ぎる。

だから私のことも、突き放せない。

ひょっとするとそれは、真姫に対しても同じなのかもしれない。なんて。

こんなのはただの願望でしか、ないのだけど。

「にこの体調が悪そうだから、私が一緒に送って帰るわ」

屋上での私の言葉に意を唱える者は誰ひとりとして居なかった。

日頃の信用の積み重ねか、それともにこの身を案じてのことか。どちらにしても私にとって都合の良い事に代わりはない。

私達は他愛ない会話を交わしつつ、にこの自宅に向けて歩みを進めていた。

「そういえば、結局さ」

思い出したように突然、にこから振られた話題は。

「にこのダンス、どんな感じだったのよ」

先程までの練習のことだった。

「正直……酷かったわ」

あまり思い出したくないと言ったら彼女に失礼だけど。

それでも見ている私の方がいたたまれない気持ちになるくらい、今日の彼女のダンスは悲しい出来だった。

まだ元気に映っていた頃の彼女を知っているからこそ、余計に辛いものがある。

「今度付きっきりで教えてあげるわね」

言葉の裏に下心を隠して、誤魔化すように早口で告げる。

「ありがと」

珍しく素直な彼女の言葉に、思わず尻込みしてしまう。

背中に嫌な汗をかいたような気がして、こういう時だけは奥手そうな真姫の純朴さが羨ましく思えた。

にこの居ない屋上で、真姫はいま何を思っているだろう。

今日、最後に見た真姫の表情がフラッシュバックする。

にこを送って帰ると、そう告げた時の真姫の表情。不安でぐちゃぐちゃにかき乱された、むき出しの感情。

にこのことが心配で仕方ないって、そんな顔をして。

きっとあの子には想像もつかないだろう。私が今にこの隣で抱いている劣情も、真姫に対する嫉妬の想いも。

「真姫には病気のこと、知らせてあるの?」

「伝えてないし、その予定もないわ。余計なこと、しないでよね」

にこの言葉に反応して、胸の内で熱い火柱が立ち昇る。そんな不思議な感覚。

(何も……知らないのね)

出遅れた私は、にこの恋人になることは出来なかった。

その役は既に別の少女に与えられていて。入り込む余地は、もしかするとあるのかもしれないけど。

でも私はいま、にこにとって恋人よりももっと特別な存在に成ろうとしていた。

可哀想な真姫。何も知らない真姫。

あの子はある日突然やって来る別れに、一瞬で全てを奪われるのだ。

矢澤にこの恋人という肩書きも、にこから愛されていたという自負さえも、全て。

そうなった時、真姫の手元には何が残るのだろう。それを想像するだけで、胸が張り裂けてしまいそうだった。

でもだからと言って、知っていたとしても止められるものではない。

それなら、知らないこともひとつの幸せ、なのだろうか。

少なくとも、己の無力に悩まされる日々は存在しないのだから。

にこが自宅に入っていくのを見送って、私は独り来た道を引き返す。

先程と全く同じ道のりを辿って。だけど隣ににこが居ないだけで、広くなったように思える道幅。

寂しい。そう口にするのは憚られた。そんな事を言い出してしまえば、本当はもっとにこと共に同じ時間を過ごしていたかったのだから。

けれど、にこの自宅にまで踏み込む勇気が私にはない。

学校までここまで歩いて来て、気付いたことがひとつあった。

それは自宅が近付くにつれて、にこの体調が徐々に悪化してきたこと。

(きっと自宅が境界線なのね)

どうやら彼女は見知った近所の風景を目にしてしまうと、安心感からか張り詰めた糸が弛んでしまうようだった。

学校に居る間、私達の前では弱った様子など一切見せないにこ。だけど帰り道、自宅に近付くとあからさまに歩幅が狭まり歩みも遅くなる。

最も安心できる自宅を前にしてしまうと、自身を取り繕うことが出来なくなってしまうのだ。

だから、彼女の自宅に私は踏み込めない。そこに入ってしまえば、病で弱りきった矢澤にこと現実で対峙しなくてはならないのだから。

私にはまだ、彼女の病もその命の期限も、真正面から受け止めるだけの勇気はない。

不甲斐ない自身を呪うように俯いて、けれど不意に顔を上げた。

そこには見知った顔がひとつ。

彼女はいま、私がもっとも顔を会わせたくない友人。

後輩だけど年下とは思えないほと落ち着いていて。様々な分野で非凡な才能を持つ、μ‘Sの作曲担当。

「………真姫」

そこに居たのは、矢澤にこと恋仲の、かわいらしい少女だった。

「……エリー」

一瞬だけ私を見つめた瞳は、だけど遠くを見ているように焦点が合わない。

病人のように白い肌。変化の乏しい表情。

そのどれもが私の知る、恋する乙女とはあまりに似付かない。

「にこのお見舞いに行くのね。貴方達、付き合ってるんでしょう?」

僅かに漏れた苛立ち。少しだけトゲを感じさせる私の論調を、けれど真姫は気にもせず。

「ええ、顔だけでも見て帰ろうと思って」

それが更に私の苛立ちを加速させる。

けれどダメだ。何も言ってはいけない。

いけない、けれど。

「……もう行くわね。また、明日」

けれど、我慢が出来なかった。耐えられなかったと言い換えても良い。

「ねえ、真姫。私ね」

だって、にこの恋人である筈の貴方が。

よりによって、恋人の貴方が。

なんて酷い顔をしているの。まるで不幸で仕方ないとでも言いたげなほど、憂いた表情。

そんなの、私が許さない。

「にこのこと、愛してるのよ」

そんな顔をするくらいなら、あの子の恋人など辞めてしまえばいいのに。

血液が燃えたぎるほどの私の怒りを。

「……無駄よ」

しかし、彼女が短く言い放った言葉が凍り付かせていく。

それは初めから決められていたセリフのように自然と。それなのに抑揚のない無慈悲さを帯びていて。

降伏宣言に近いその言葉は、私よりも真姫の心の深くへと食い込んでいくようだった。

けれど此方を振り返った真姫は、泣いてなどいなかった。

「真姫………あなた」

彼女はもう、私に見向きもしなかった。なんて意地っ張りな子だろう。

あの子はきっと、何も変わらない。これまでも、これからも。

ただ、にこが望む形でにこを愛する。それだけのつもりで。

私とは違う。気付いていても、気付かない振りを続けていく。

にこも、真姫も。お互いバカみたいに意地っ張りで、きっと自分から折れることはないのだ。

(……付き合い切れないわ)

けれど私はもう、気付いてしまったから。だから自分のやり方で、にこを大切にしていくしかない。

真姫にも、μ‘Sの他の仲間達にも出来ないやり方で。矢澤にこを、守らなくてはいけない。

小気味よいチャイムの音も、今は耳障りに響くだけだった。

「……いったい誰よ」

けれど、さすがに無視する訳にはいかない。まるで痺れたように重い足を引きずって、私はドアスコープを覗き来客の姿を確認する。

「真姫ちゃん?」

指先で自分の髪を弄ぶシルエット。急いで扉を開けると、その先で待ち受けていた彼女の視線と衝突する。

「お見舞いに来てくれたの?」

一瞬で紅潮する真姫ちゃんの頬。慌てて視線を逸らす仕草が可愛らしいと思った。

「ええ。一応メールはしたんだけど、迷惑だった……?」

「そんなことない。嬉しいよ」

嘘じゃない。きっと玄関先でなかったら、抱き締めていたと思うほど。

「お土産を持ってきたけど、食べられる?というか、寝てなくて平気なの?」

ふたりでソファーに座り込むなり、真姫ちゃんはオロオロとせわしなく。

「大丈夫よ。今日は大事をとって早引きしただけなの」

真姫が持って来てくれたのは、穂むらのお饅頭──通称ほのまん。

元は好物だったそれも、しかし今は過去のことで。

最近は甘い物を口にするのが特に苦手になっていた。けれど、要らないとは言えない。

「ありがと、真姫ちゃん。一緒に食べよっか」

取り出したお饅頭を半分に割って、私はそれを真姫ちゃんの口元に。

これくらいの量なら、多少苦しくても食べきれる。

「……いただきます」

消え入るような声。顔を更に紅く染めた真姫ちゃんは、意外なほど素直に差し出されたお饅頭を口にした。

なんだか今日の彼女は、少し変かもしれない。

「ねえ、にこちゃん」

「なぁに?」

妙に素直で。

「今日、にこちゃんの晩御飯作りたい」

やけに積極的だから。

「……真姫ちゃん、お料理苦手じゃない」

いいわよ、無理しなくて──。そう言葉にする前に。

「私の隣でにこちゃんが作り方を教えてくれれば、平気よ」

強がった言葉と共に、私に絡み付いてくる細い腕。

「だから、お願い」

私の首筋に熱い吐息を吐きかけて、そのせいでこちらまで顔が火照る。

主導権を彼女に握られるのは、どうも慣れない。そう思う。

「それなら、お願いするわ」

結局昨日に引き続き、真姫ちゃんは我が家の台所へ立つことになった。

メニューは雑炊。料理に慣れていない彼女にとってはちょうど良いくらいの難易度。

頑固な真姫ちゃんは、どうせ私に手を出させてくれないから。

だからせいぜい失敗しないように、隣で見守っていてあげよう。

「真姫ちゃんのお料理、楽しみだわ」

なんだか久しぶりに、優しい笑みが零れた気がした。

首もとに埋められた真姫ちゃんの顔はまだまだ熱を帯びていて。

彼女が料理を始めるには、もう少し時間が必要だろう。



鼻腔をくすぐるのは、優しく包み込むような卵の薫り。

スプーンでひと掬い、口に運べば。それはより一層風味を増していく。

「おいしい?」

心配げに私の様子を伺ってくる少女に向けて、指で円を作りOKとサインを放てば、彼女の表情はまるで花でも咲いたように綻んだ。

「すっごくおいしいわよ。さすが真姫ちゃんね」

ほのかに漂う卵の風味も、適度に熱して食べやすくしたお米の柔らかさも。

どちらも初めて作ったとは思えないほどの出来映えだ。

「……にこちゃんが喜んでくれて、嬉しい」

いつもだったらムッとして、照れ隠しに「当たり前でしょ?」なんてそっぽを向く彼女は。

それでも今日は素直に喜びを口にした。なんだか予想を外されたみたいで、悔しいけれど。

以前とは少し変わってしまった素直な真姫ちゃんも、やっぱり可愛いと思った。

「真姫ちゃんってさ」

きっと、真姫ちゃんを変えたのは私なんだ。

「……にこのこと、本当にすきなんだね」

その事実は嬉しくて。だけど少しだけ、悲しい。

「あ、当たり前でしょ!」

変わらなくて良いんだよ、にこのために。

真姫ちゃんは真姫ちゃんのまま。それで良かったの。

今回はここまで。読んでくれる人が居るというだけでモチベーションがあがります。ありがとうございます。

あと次の投下ですが、今回が遅れた分、少し早めにしようと考えています。がんばります。

あっという間に思えても、時間は淀むことも知らずに針を刻む。

雑炊を食べ終えた頃には、辺りもすっかり暗くなっていた。

「もう遅くなるから、片付けはいいわよ」

そう言っても、真姫ちゃんは聞かない。

「せっかくだし。最後まで手伝わせて」

仕方がないのでふたりで流しに立つ。私が食器を洗い、真姫ちゃんが布巾で水を拭き取る。

「なんだか新婚みたいね」

からかってそう呟いたら、危うくお皿を割りそうになった真姫ちゃん。危なっかしいから、それきりにした。

「お疲れさま」

洗い物も終わって再びソファーで一段落。そわそわしている真姫ちゃんは、一体いつになったら帰るつもりだろうか。

「にこちゃん」

ふたりで覗き込むように見ていた雑誌。ページを捲る手を止めて、私は振り返る。

「なぁに、真姫ちゃん」

やや挙動不審な彼女は、だけど勇気を出して私の手を握る。

「恋人らしいことが、したい……です」

語尾は何故か、敬語だった。

「…………」

さすがにしばらく、閉口する。先程から落ち着きがなかったのは、そういうことだったらしい。

「……ごめんなさい。やっぱり忘れて」

そんな状態が5秒も続けば、早くも彼女は陥落。宝玉のような瞳が、熱を帯びて潤んでいく。

でも、ここで泣いたら帰りが更に遅くなるよ、真姫ちゃん。

「いいよ、恋人らしいこと……しよ?」

忘れてと自分で言ったくせに、握ったままの手のひら。それを今度は私が握り返す。

「真姫ちゃんは、どんなこと……したいの」

密着した体勢から、更に顔を寄せる。膝の上に置いていた雑誌が、音を立てて床に落ちて。

真姫ちゃんの目付きが、変わった。

「…………したいの」

仔猫のようにかわいい恋人が、肉を貪る獣へ。

見え透いた下心は。

「……デート」

意味深長に感じられて。

「…………デート、したいの」

だからこそ、深読みしてしまう。駆け引きを知らない純朴な瞳に、踊らされてしまうような気さえして。

「……いいよ。にこのお願い、聞いてくれるなら」

本当にバカみたいだ。私の言葉で一喜一憂する彼女の心には、裏も表も在りはしないのに。

「キスして。真姫ちゃんから」

それなのに、求められる以上の物を、この子には与えてしまいたくなる。

やっぱり狡いよ。真姫ちゃん。

母が妹弟と共に帰宅したのは、それからほんの数分後のことだった。

「じゃあ、デートは次の日曜日ね」

小声で告げて、彼女の背中を見送る。まだ紅く染まったままの頬をちらつかせた彼女は、時おり名残惜しげに此方を振り返っては徐々に遠ざかる。

その背中が見えなくなるまで眺め続けて、私は冷たい体を引きずるように家に戻って行った。

「仲よしなのね、真姫ちゃん」

整頓された台所を見つめて、母が呟く。

喜びとも悲しみともつかない表情を浮かべたまま、夕飯の調理に取り掛かる。

その様は何か言いたいことを堪えているようにも見えたし、私の病に対する無力感にうち震えているようにも映った。

「友達じゃないわ」

私が隣に立っても、母の手は止まらない。

「恋人なの」

ただ、涙を流すだけ。

一年生の頃、数人の同級生と共に目指したスクールアイドル。

最初の一歩目で夢に躓いたあの時から、私の世界に長い沈黙が居座った。

家族に心配をさせたくない一心で通い続けた学校。

信頼できる友人なんて、ひとりだって居なくて。

自宅に人を招き入れたこともない。

病を患ってからも、それは変わらない。

それでも明るく振る舞った。妹弟たちの前では、アイドルみたいに笑って、輝いて。

けれど、母だけは気が付いていた。私が身を寄せる孤独に。

そしてずっと責めていた。父親も居らず、裕福でもない家庭を。

私が夢を追えないことも、学校で孤独であることも。全て自分のせいなのだと、母は自分を責めていた。

「ねえ、ママ」

絶望の淵。死の淵に立って、それでも。

いつも通り。私はいつも通りに生きていく。

私の死を惜しむ人は、家族しかいないから。だから余計に、母は辛かったのかもしれない。

いつも通りに生活したい。病に倒れた時、一番始めに告げた私の言葉を、しかし母は悲しげに了承した。

でも、今は違う。

誰かが、私に手を伸ばした。

それは穂乃香だったかもしれないし、真姫ちゃんだったかもしれない。ひょっとすると、絵里だったのかも。

μ‘S。顔も知らない女神様が微笑みかける。神様からは、とうに見放されたと思っていたのに。

「わたし、しあわせよ」

今はもう、寂しくない。

ただ通り過ぎるだけだった日常は、彩られて。

耳障りな静寂は、賑やかな笑い声に。

幸せだと、本当に心から。

泣き止まない母にも、それは伝わるだろうか。

とにかく今は、料理を代わろうと思った。

既視感のある危なっかしい手付き。

今の母では真姫ちゃんと同じくらいに妙ちくりんな夕飯を作ってしまうから。

そうなったら流石に妹弟たちが気の毒だ。

短いですが、今回はここまで。思ったよりもイチャイチャしませんでした。

「おはよう、にこ」

翌日、玄関を出ると家の前には絵里が居た。

「……なにしてんのよ」

「一緒に登校しましょう」

私の問いかけに曖昧な笑みだけを返して、彼女は身を翻す。

もちろんそんな約束をした覚えは、微塵もない。

「……勝手に決めてんじゃないわよ。約束もしてないのに」

「だって……にこは断るじゃない」

真っ白な吐息と共に紡いだ言葉。僅かに朱が差すのは、白い頬と整った形の鼻。

「……にこが休みだったら、どうすんのよ」

「それは……考えてなかったわね」

今更になって考え込む絵里の姿は、当初私が抱いていた理知的で冷淡なイメージとはおおよそかけ離れていて。

今の絵里は、どちらかと言えばかわいらしい。そんな印象を受ける。

「……休む時は、にこから連絡するから」

眉尻を下げて、弱気な顔。手のかかる子供みたいな、元生徒会長。

「それと早く着いたならチャイムくらい鳴らしなさいよね。うちに入って待ってなさい」

掴んだ彼女の指先は、芯まで冷たくなっていて。もう少しの間だけ、握ったままでいてあげようと思った。

「それじゃ、さっさと行くわよ。遅刻しないうちにね」

遠慮なく引かれた手。心踊るように、金色の尾は小さく揺れた。

帰り道。

「絵里と一緒に登校することになったの」

「エリーと……?」

思っていたよりも、真姫ちゃんは驚きはしなかった。

「ここ最近、調子を崩してるからって心配してくれてるみたい。家だってそんなに遠くないから」

「……そうなの」

言い訳じみた私の言葉に、短い言葉だけが返ってくる。

そして暫しの、息苦しい沈黙の後。

「……エリーはね」

真姫ちゃんの言葉は手のひらから零れ落ちる砂のように。

「エリーは優しいの」

ゆるやかに。

「にこちゃんにも」

「私にも」

音を立てずに降り積もる。

「だからね、にこちゃん」

今はまだ僅かにしか感じさせないその重みが。

「にこちゃんは私の恋人だけど」

いつか抱えきれなくなる、そんな風に感じる時が来るのだろうか。

「きっと絵里のことも、大切にしないとだめなのよ」

宥めるように、真姫ちゃんは呟く。まるで自分自身に、言い聞かせるようだった。

朝は友人と歩いて学校を目指し、夜は恋人と手を繋いで家に戻る。

相変わらず授業中は退屈で、μ‘Sの練習では体力が落ちたせいで足を引っ張ってばかり。

始めに想い描いていた日常とは少し違っていて、歪とも感じられる日々だけど。

それでも私は幸せだった。家には母と二人の妹と、更に歳の離れた弟が居る。

学校に行けば真姫ちゃんと絵里、μ‘Sのみんなが居る。

こんな幸せな人間は、きっと全世界を探し回っても私だけしか存在しない。

身体を病に蝕まれていようが関係ない。

むしろ病を患っていたからこそ、得ることの出来た幸せだと思う。

「幸せだなぁ」

呟いた独り言は真姫ちゃんの耳にも届いていたようで。

「なら、私も幸せ」

彼女は少し照れて、優しく手を握り返してくれた。

静まり返った夜の道。張り裂けそうな冷たい風に晒されて。

それでも心だけは暖かい。

この気持ちのまま逝くことが出来たなら、きっと私には未練も後悔も生まれないだろう──なんて。

そんな風に思った矢先、私の入院が決まった。

やはりもっと早くに、私は死んでおくべきだったのかもしれない。

放課後、部室へ向かう途中で倒れた私はそのまま病院に運び込まれた。

幸い意識はすぐに回復した。けれど病状を見て、病院から出すのは危険だと判断されたらしい。

仕方がない。初めから約束していたのだから。

今まで通りの生活を送ることが困難であるようならば、その時は。そういう約束で入院を先伸ばしにしていた。

「デート……行けないね」

時刻はすでに病院の消灯時間を過ぎて。私に与えられた個室も多分に漏れず灯りは消えていた。

院内に音はない。静寂が生理的な不安を掻き立てる。連想されるのは死ばかり。此処には何の希望もない。

「もう……μ‘Sも続けられない」

心に灯っていた希望の火が、1つずつ消えていく。

「もう……アイドルじゃない」

出来ることならμ‘Sのまま、スクールアイドルのままで逝きたかった。

何者でもない自分はあまりに無力で無防備だから。

「もう……誰も笑顔にできない」

アイドルへの憧れは、即ち笑顔への憧れ。人を幸せにする事への憧れだった。

けれど今の私には、人を哀しませることしか出来ない。

私が夢みていたアイドルとは、まるで対極の存在。

そこに身を堕とす前に、逝ってしまいたかった。

生き長らえる必要も、別れの言葉もなく。

あの子は最期まで笑顔だったと、そんな風に。

そのために頑なに入院も拒んだし、身体の不調にも耐えたのに。

それも全て無駄だった。意味の無いことだったんだ。


「にこがまた入院したというのは、本当なのですか!」

珍しく早い時間に登校してきた穂乃香とことりを引き連れて、海未は捲し立てるように私の元へ。

にこが病院に運び込まれたのは、昨日の放課後だった。

それを知った時から、私には予感があった。きっとにこは、病院から出ることは出来ないであろうという予感。

けれどその予感がある故に、冷静では居られない。事実は私の中で余計な動揺を生むだけだった。

「まだ……わからないのよ。にことだって、直接話したわけではないから」

震える声を抑えて、当たり障りのない言葉だけを紡いでいく。

連絡をくれたのは、にこのお母さんだった。私にだけは伝えておくようにと、にこから頼まれていたという。

「ねえ絵里ちゃん、にこちゃん病気なの?すぐ治るよね?」

私の袖を掴んで、穂乃香はすがり付くように。

よく通る彼女の声。教室内、周囲の同級生たちの視線が集まるのを感じる。

(……やめて)

こっちを見ないで。話を聞かないで。

(こんなの……にこは望んでなかった)

矢澤さん、病気なんだって。

そういえばいつも、顔色も悪かったよね。

大丈夫かな、心配だね。

(……やめて)

人から人へ。瞬く間に感染拡大していく病原菌のように。

急速に崩壊していく、矢澤にこの日常。

彼女が一番恐れていたこと。

「やめてよ!」

怖くなって、叫んだ。けれどもう遅い。此処は既に、彼女の望む場所ではなくなっていた。

矢澤にこが望んだ日常は、此処からは既に失われた後だった。

今回はここまで。なかなか思うようにはいきませんが、楽しんで頂けるようにがんばります。


いつも楽しませてもらってるで
後穂乃'果'な

乙ー
あとμ‘S→μ'sもできれば直してほしい

>>129
>>130
気付いてなかったので助かります。ありがとうございます。

放課後。部室に集まったμ'sの仲間達。

私はそこで、全てを伝える決心をした。

きっと、にこには怒られてしまう。嫌われてしまうけれど。

少し強気な眼差しも、時おり見せてくれた柔和な笑みも。

もう、そのどちらも私には向けて貰えなくなるのだとしても。

「にこは病気で……もう長くないの」

それでも良いの。

軽蔑されても良い。貴女の秘密を無断でみんなに話したことも、未練がましく毎朝家まで貴女を迎えに行っていたことも、全て。

貴女のためだなんて、口先だけで。

私はいつも、自分が一番傷付かない道を選択するだけで。

だから本当はにこのことだって、これっぽっちも。

「なあ、えりち」

これっぽっちも……。

「泣いたらアカンよ」

希の忠告も、もう手遅れだった。俯いた拍子に零れた雫。

「えりちが泣いたら、信じるしかないやん」

たちの悪い冗談。悪質な大嘘。誰か、そうだと言ってよ。

自然と湧き出る涙の粒を、抑えることは叶わない。

遥か彼方の幼い記憶。その残滓を掬い取るように。

私は泣いた。赤子のように声を上げて。叫んで、喚いて、咽び泣く。

看護師さんの案内で連れて来られたにこの病室は、一般病棟の一番端にある個室だった。

事務的な動作で扉をノックすると、中からは微かな声で返事が聞こえる。

引き戸を開いて中を覗く。病室のベッドの上には上半身を起こしてこちらに視線を向けたにこが居る。

「……来てくれたのね、絵里」

弱々しく微笑んだ彼女は、思っていたよりも元気そうで。

「来たのは、私だけじゃないの」

そのせいで、期待してしまう。

「病気のこと、みんなに話したわ」

貴女がまた、以前のように笑ってくれるのではないかと。

「……そう」

「約束を守らなくて、ごめんなさい」

「いいわよ、別に」

私の言葉を鼻先で笑って、けれどそこには笑顔はなかった。

「みんなは、廊下に居るの?遠慮しないで入って来なさいよ」

誰も応えない。よく通る筈のにこの声は、廊下までは届かなかった。

「……呼んでくるわ」

たったそれだけの事実で、また泣きそうになる。さっきまで、散々泣きわめいたのに。

にこの傍に居ると、どうしても涙腺が弛む。泣いても彼女は喜ばないのに、それなのに。

「なんだか、久しぶりに揃った気がするわね」

病室には真姫を除いた全員がにこを囲むように立ち尽くしていた。

明るいトーンのにこの声色は、周囲の空気に馴染まない。

「みんな、来てくれてありがとうね」

白い入院服に身を包んだにこ。清潔なベッドと、腕に差し込まれた点滴の管。

どこか冗談のようで、現実感のない目の前の光景。

「もう絵里から話は聞いてるわよね」

だけど、みんな理解している。これは紛れもない、現実で。

「今まで黙っていて、ごめん」

変えようのない、理不尽で。

「私ね、本当はずっと病気だっの」

目の前の少女が、いずれは居なくなってしまうのだということを。

ビニール同士が擦れ合う耳障りな音を立てて、花陽が持っていた筈の造花の花束が足元に転げ落ちる。

全員が俯いて、けれど誰もそれを拾おうとはしない。動いたら泣いてしまうと、そう思ったのかもしれない。

だけどもう、何をしても手遅れ。

病室に入った時から、既に何人かは涙を堪えきれなくなっていた。

昨日までは同じ学校に居て、当たり前のように共に過ごしていた筈のにこが、今は当たり前のように病室のベッドの上で横たわっている。

そんな事実を、誰もが受け止めきれずにいる。当たり前だ。

「ごめ、なさ……」

押し殺そうとして、けれど僅かに漏らした嗚咽。声に出してしまえば、きっともう止まらない。

泣き崩れそうになった花陽の手のひらに、透き通るように白いにこの手が触れた。

一瞬だけ、にこは以前のように微笑んだように見えた。けれど、花陽が泣き止むことはない。

零れた涙はすぐさま周囲に伝播する。さっき散々泣きわめいた筈の私にまで、いつの間にか。

「みんな、ありがとう」

当事者であるにこだけが、涙を見せない。

「ごめん」

涙で袖が汚れるのも構わず、花陽と凛がにこの腕に縋り付く。まるで次の言葉が紡がれるのを、畏れるように。

「にこね」

ふたりを見つめて困ったように笑みを浮かべた、にこは。

「μ's、辞めるわ」

誰に告げるでもなく、静かに言葉を吐き出した。

「……本気なのね」

ふたりだけになった病室で、私は無意味に念を押す。

撤回される筈のない彼女の言葉が消え去りでもすれば良いのに、と。

そんな僅かな願望を乗せて。

「…………」

けれどもう、にこは私の言葉に答えてはくれなかった。

悲しくなんてない。病気のことを皆に話すと決めた時から、二度と口を利いてもらえなくても仕方ないと、そう言い聞かせてきたから。

「……また、お見舞いに来るわね」

髪を下ろした貴女の横顔は、酷く無慈悲に思えたけれど。

「さようなら、にこ」

けれど私は知っている。誰よりも深い貴女の優しさを。

私の知り得ぬ不条理と、ずっと戦い続けてきた強さを。


「また、明日」

今度は私も、貴女と共に。

隣に立つことは出来なくても、後ろから追いかけるくらいなら、きっと。

優しい貴女だったら、それくらい許してくれる筈でしょう?



「真姫ちゃん、来てくれたの」

ベッドの横に置かれた椅子に腰かけて。

「パパの所に行っていたら、遅れちゃったの」

案外落ち着いた様子で、彼女は口許に笑みを浮かべた。

みんなはもう、帰った後。ふたりきり。


「μ's、辞めることにしたの」

私の手を握ってくれた真姫ちゃんは、それを聞いても何も言わずに微笑むだけだった。

「わたし、アイドルでなくなっちゃった」

改めて言葉にしてみて。

ふ──と。

体が宙に浮いてしまいそうになる虚脱感。

意識だけが、一瞬思考の外側へ。

けれどそれを繋ぎ止めてくれたのは、未だに手のひらに残る真姫ちゃんの体温。

真姫ちゃんは泣かない。ひたすら笑顔だけ浮かべて。

「いいのよ。アイドルじゃなくても」

私が私であることを、悲しんだりはしない。

「私がすきなのは、にこちゃんだから」

何も持たない私を、愛している。そう言ってくれた。

今回はここまで。一応確認はしているのですが、誤字脱字があったらすみません。そろそろ別のスレでも立ててみようかとも思っているのですが、まだどうなるかは分かりません

ちょっとぐちゃぐちゃになってしまったので手直ししています。来週までには投下できると思うのですが……

今年中には来れるかなあ

>>147
手こずってしまってギリギリになりそうですが、何とか間に合うように頑張りますね。

あけましておめでとうございます。結局年内は更新できず申し訳ないです……

ここ数日の間に何とか続きを投下できるように頑張るのでもうしばらくお待ちください

| ̄| ∧∧
|ニニ( ゚Д∩コ
|_|⊂  ノ
   / _0
  (ノ

 えっ…と、ゴミスレ
\はここかな…、と/
  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧∧ ∧∧
 ∩Д゚≡゚Д゚)| ̄|
  ヽ  |)ニニニ|
   | |? |_|
   ∪∪


  ∧∧ ミ  ドスッ
  (  ) ___
  /  つ 終了|
?(  /   ̄|| ̄
 ∪∪   || ε3

      ゙゙~゙~

14 名無しで叶える物語(庭)@転載は禁止 2014/12/31(水) 00:42:51.18 ID:QCVwawl4
当て馬に使うやつ多いしなカプ厨
カップリング否定する気はないが特定のカップリングを成立させるために当て馬にキャラ使う奴が多くてカプ自体好きじゃない

97 名無しで叶える物語(庭)@転載は禁止 2014/12/31(水) 21:09:00.84 ID:QCVwawl4
にこ「りんまき?なにそれ?」
真姫「最近私達の中傷をしてるキモオタの集まりって聞いたわ」
にこ「最近露出増えてきたし変なのも湧いてくるのね…」
真姫「にこちゃん、そんなことはどうでもいいの」
真姫「明日初詣行くために泊まりに来ない?」

98 名無しで叶える物語(庭)@転載は禁止 2014/12/31(水) 21:11:51.09 ID:QCVwawl4
にこ「真姫ちゃんから誘われるなんて久しぶりにこ~」
真姫「何言ってるの!にこちゃん!」
真姫「クリスマスも私が誘わなかったらお泊まりなかったじゃない!」
にこ「え~?にこは~アイドルだからお泊りデートしたらファンに噂されちゃうのよねー」

99 名無しで叶える物語(庭)@転載は禁止 2014/12/31(水) 21:15:56.96 ID:QCVwawl4
にこ「まあ?真姫ちゃんが勇気出して誘ってくれたし泊まりに行こうかなあ?」
真姫「ハヤクシナサイヨ」

もうすぐ母が見舞いにやって来る。

「もう少しだけ、一緒に居て」

私の病気のことなど何も知らない妹弟たちを連れて。

「ひとりだと、挫けてしまいそうなの」

私をアイドルと信じて疑わない、無垢な瞳に晒される。

「大丈夫よ。ずっと一緒に居てあげる」

私の震えを感じ取って、真姫ちゃんは勇気づけるように髪を撫でた。

私よりも体温の高い手のひらが肌に触れる度、くすぐったくて身をよじる。

「ずっと、一緒だから」

けれど耳や頬を掠めた手のひらもまた震えていて。それに気が付いてからは真姫ちゃんの笑顔も、一層脆く感じられた。

「……真姫ちゃん」

急に怖くなる。

「……もう、平気」

この子はいったい何処まで、私と共に歩もうというのか。

「怖くないよ」

私の向かう先は、断崖絶壁で。

忍び寄る甘い死の誘惑が、すでに背後に迫っていた。

疲れきった私は、きっと肩を叩かれれば誘惑に負け振り返ってしまうだろう。

行くも止まるも、辿り着く先は同じ。それならば楽な方を選んでしまいたくなるのが人間だから。

けれど、隣を歩く少女が目指す先は断崖絶壁などではない筈だった。

「もう平気だから……」

医者にだってアイドルにだって、ピアニストにだって。

真姫ちゃんには可能性がある。閉塞した私の世界とは違う、万華鏡のような明日が道となって続いているのに。

「だめよ、にこちゃん」

私の拒絶を感じ取り、それでも彼女は微笑んだ。

「ずっと、一緒に居てあげる」

今までに見たことのない、作り物の笑みだった。

アイドルは負けない。そう信じて疑わない妹弟たちの為に。

私は誰より輝いて、最期まで屈せず生きようと思った。

けれど私の輝きは、思うほど永くは続かない。

血を吐き、高熱にうなされ。そして今は視力を失いつつあった。

既に満身創痍。十分すぎるほどに打ちのめされて。

それでも弱りきった姿を子供たちに晒すまいとして、母や大切な友人達を巻き込んだ。

全部私のワガママで、だけど全部が無駄だった。

私は今日、アイドルで居ることを諦めた。矢澤にことして、弱く惨めに死ぬことを選択した。

隣を歩く真姫ちゃんのことなど、考えもせずに。


「ずっと、一緒に居てあげる」

掴まれた手首が焼けるような痛みを訴えた。真姫ちゃんはベッドへ上がり、そして私に跨がる形で向かい合う。

拒否する間もなく重ねられた唇。彼女を壊したのは私だった。

「わたし、にこちゃんに嘘、ついたの」

幾度となく私を映した宝石のような瞳。そこから零れた涙が私の頬に滴る。

貪るような乱暴なくちづけの合間に吐き出された、嗚咽のような言葉。

「真姫、ちゃ……」

私の弱さを、けれど真姫ちゃんは己の罪として告白する。

「病気の、こと。ほんとは始めから、知ってた……」

拘束されていた筈の手首に、もう力は込められていなかった。

「知ってて、気付かないふり……してた」

五月雨のようなくちづけの連鎖は降り止んで、けれど熱い雫だけはとめどなく流れ落ちた。

「ごめ……なさい」

私は彼女を抱き締めた。

「ごめんなさい……」

身体ごと、言葉ごと。ぎゅっと、抱き締めた。

冷たい体が、けれど芯の方から熱を帯びていくのを感じる。

ふんわりと、曖昧でどこか稀薄に思えた自身の存在が再び濃度を増していく。

「真姫ちゃん……泣かないで」

瞬間、こみ上げてきたのは愛しさだった。

それは放置すれば知らぬ間に身体を蝕んでいくような、気だるく。

「知ってたよ、そんなこと」

それでいて甘美な蜜のような。


「にこだって、気付かないふりをしていただけなの」


堪え切れなくなって、今度は私がキスを降らせた。

涙で濡れた真姫ちゃんの輪郭。その上で涙を掬い取るように踊る、舌と唇。

熱に浮かされるように放心した彼女の瞳からは、けれどとめどなく涙が溢れる。

その雫を一滴でも取り零さないようにと、私は舐め取り嚥下していく。

「もっと、ちょうだい」

耳許で囁き、そしてねだる。その雫を自身の中に取り込んでいく程、私は熱く強くなれる。そんな気がした。

無抵抗の真姫ちゃん。その肩を押して、今度は私が彼女に覆い被さる。

くちびると唇が触れ合う柔らかな感触。

時に優しく、時に蹂躙するような粘膜同士の接触は、これまで交わしたどんな口付けよりも淫靡で、それでいて清らなものに思えた。

そうして触れ合った永遠とも思える時も、けれど時間にすればほんの数分の出来事でしかない。

啄むように触れた、最後の口付け。

ゆっくりと離れた私達の間には、互いの未練を伝えるように透明な橋が架かり、しかしそれすら儚く崩れた。


「……絵里に連絡しなくちゃ」


夢中になった後、ほんの数瞬のまどろみ。

そこで口を突いた此処には居ない少女の名を聞いて、真っ赤に顔を染めた彼女は不機嫌に顔を逸らす。

「……どうしてそこで、絵里の名前が出てくるのよ」

涙すら滲んだ震える声を聞いて、けれど私の表情は苦笑いに留まる。

「訂正……しないといけないから」

もう身体も満足に動かせない私だけれど。

「ねえ、真姫ちゃん」

それでも諦めてはいけない夢があるから。

「私たち、終わりにしましょう」

『もう少しの間だけ、私をμ'sで居させて』

たった今にこから送られてきたメールの文面を幾度となく読み返す。

相変わらず心を覆う悲しい気持ちの中から、僅かに喜びが芽を出した。

このメールを見せれば、気落ちした他のみんなも少しは元気を取り戻すかもしれない。

決して何かが変わるわけではないけれど。

彼女の病気も残りの時間も、何も解決することはないけれど。

だけどそれでも良い。

矢澤にこがアイドルで在り続けることを望むなら、少なくとも私達の中での彼女は永遠に笑顔を忘れることはない筈だから。

人は死んでも誰かの心の中で生き続ける。そんな言葉は嘘だと知っている。

私達の中に遺るのは、記憶であって記録ではない。

自身によって無意識のうちに改竄されたメモリー。

最も濃く、衝撃的な部分がフォーカスされた偽りの偶像。

全てを諦め弱りきった、渇いた微笑。

それが今の私達にとっての、絢瀬絵里にとっての記憶。

そんな表情で生き長らえることは、きっと彼女も望まない。

「いつだって、いつまでだって、あなたは大切なμ'sの仲間よ」

明日、直接そう伝えたらあの子はどんな顔をするだろう。

『ありがとう、絵里』

きっとあの子は明るく笑う。そして決して褪せない笑顔を私の胸に刻み込むことだろう。

今回はここまで。すっかり期間が開いてしまい申し訳ないです。また少しずつ投下して行きますね。

1(中)
ID:aFqRG4t4O
正直にこまき以外を書く作者って自己主張が強すぎると思う。
流れに逆らうっていうのかな、板のリソースも限られてるわけで、
嫌味ならメモ帳あたりでやればいい

2(左)
ID:tWBoJ/tM0
にこまき以外考えられない
にこまき以外増えて欲しくない

3(右)
ID:sMhE8B/Ho
にこまきは公式の意向だぞ
認められないならラブライブから離れろ

4(三)
ID:gkYlXsmB
同じにこまき好きとして恥ずかしいわ
ほのにこ、ぱなにこ、ほのまき、りんまき等の数多の魅力的な
可能性のリンクがあってこそ、にこまきをつなぐ線の特権性が輝くというのに

5(遊)
にこまき推さないとかひねくれてるよなぁ?
http://i.imgur.com/FeG7sjs.jpg

6(二)
矢澤と真姫もぼっちだからぴったり!私もぼっちだから同じタイプ!
http://i.imgur.com/U1IbCnu.jpg

7(DJにこ巻き)
にこまき以外認めない
http://i.imgur.com/RhIIIo6.jpg

8(一)
ID:RJxZM99YO
にこまきの相性がよすぎるってのも問題だよ
確かに他キャラと絡ませるのはみたくないってのもわかる
人気見れば一番相性がいいのは間違いないし

9(投)
ID:77j2aKs9o
にこまきこそ正義 お前ら邪道の屍なので土に帰ってくれ
ID:77j2aKs9o
俺のきんたまもモザイクかかってるわ


なにこれ?詳細希望

かなり遅くなりましたけど近日更新します……

にこちゃんが入院するようになってから流れるように一月が過ぎた。

学内は彼女の長期入院という報せに始めこそ騒然としたが、数日も過ぎれば普段と何ら変わらない日常を取り戻した。

『たかが一人の人間のことだもの、そんなものよ』

勝手に落ち込んだり憤慨したりする私をなだめるように、にこちゃんは笑った。

けれどその笑みも日を追うごとに枯れ細っていく。

服用する薬の量が、また少し増えた。

にこちゃんの病状は安定しつつあるけれど、それでも苦痛から逃れることは出来ないのだとパパは言っていた。

それからしばらくすると、にこちゃんは一日の大半を寝て過ごすようになった。

「今日はね、みんなで新曲の振り付けを練習したわ」

何も語らない彼女の傍らで過ごす時間は刹那の時の牢獄のようで重く苦しい。

「にこちゃん達の卒業ライブで歌う曲よ」

けれど痛みを和らげるためのお薬は、今のところ効果があるようで何よりだった。

一度だけ、お見舞いに来ていてにこちゃんの発作の現場に居合わせたことがある。

目の前で痛みに悶え痙攣する貴女を、私はどうしてあげることも出来なくて。

私はそれを怖いと思った。

好きとか、愛とか。

そんな言葉を並べても、どうすることもできなくて。

手を握ってあげることすらためらった自分に打ちのめされる。

何も出来ない。無力であることは、こんなにも恐ろしいことなのか。

「だから、早く元気になってね」

今はただ、目を瞑る。

きっとこれからも、ずっと。

何も出来ない自分から目を逸らして、私は気休めの言葉を並べ続ける。

だって、私は知っていた。

貴女の身体のこと。病気のこと。

知っていて、騙されることを選んだの。

受け入れた、なんて綺麗ごと。

騙されてしまえば、何も出来なくたって言い訳にしてしまえるから。

だから私は、目を閉じた。

耳を塞いで、聞こえないふりをした。

きっとにこちゃんは、それすら見抜いて。


『私たち、終わりにしましょう』

私に言い訳を与えてくれたのだと、そう思った。

「……今日も来てくれたんだ」

薄明かりの中、無理に微笑んだ横顔はいつだって酷く儚い。

そうすることを強いているのが私自身なのだとしても、どうすれば良いのか分からない。

「今日はね、体調がいいの」

この言葉も嘘だ。

まるで子供をあやすように、にこちゃんは何時だって優しくて。

それが離れてしまった心の距離をより遠く感じさせる。

「……久しぶりにお散歩でもしましょうか」

ふと思い付きでそう提案して。

「良いけど、にこは車椅子よ?」

「いいのよ。にこちゃんと行きたいから、付き合って欲しいの」

ふたりで病院内を歩き回ることにする。

「今日はいいお天気ね」

広いロビーを抜けて、陽の当たる中庭へ。

冬の空はよく晴れていて、今日は久々に暖かい。

底抜けに青く明るい空は果てなく、けれどどこか不安げな影を私の心に落とした。

「……にこちゃん、寝ちゃったの?」

返事はない。

彼女の冷たい頬と手のひらに触れて、私は誰にも気付かれぬよう、ひとり泣いた。

黒く艶のあった美髪はすっかり抜け落ちて、今や剥き出しになった白い首筋。

かつては瑞々しく弾力に溢れていた柔肌の渇いた感触に触れて、私は決して変わることのない永劫の時の流れを呪う。

「私はどうしたら良かったの」

無限の空に吸い込まれて消えた青い問い。

答えが返ってくるのはいつになるのか、それは分からない。

まるで眠るように世界は沈黙する。

冷たい風にあてられた私は、無言のままに車椅子を押して病院を出た。

人の行き交う街を過ぎ、人気の少ない道を抜ける。

そうしてようやく学校に着いた頃には、既に冬の空は冷たい色に染まりかけていた。


「少し寒いね」

こんな時間でも生徒は残っているようで、手をかけた扉は容易く私を受け入れる。

車椅子を押して廊下を歩けば、何人かの生徒とすれ違った。

そのまま部室に向かおうとして、けれど階段があることを思い出す。

仕方がないので私は、にこちゃんを抱えて歩いた。

彼女の身体は冷たいガラスの彫刻みたいで。けれど中身は空洞かと疑うほどに軽い。

これならなんとか抱えて歩けないこともない。私は勢いのままに進み、そうして部室の扉を開いた。

乾いた木の香りがやけに懐かしい。

この空間だけは日々の流れも意に介さず、あの日と同じ時が続いているようだった。

「着いたわ、にこちゃん」

彼女を特等席にいざなって、私はカーテンの向こうにあるはずの夕陽を見つめた。

あの日、あの時。この場所で。

私たちは始まり、けれど同時に終わっていた。

「ねえ、にこちゃん」

今ならそれが分かると思った。例え遥かに手遅れであっても。

「私ね、にこちゃんのことが好きなの」

今度は躊躇わず口にした。

冷たい氷のような言葉に。

貴女からの返答は永劫に訪れない。

けれど、それで良い。

きっと私たちは、そうあるべきだった。

今回はここまで。本当に遅くなってしまって言い訳の仕様がありません。待っていてくださった皆さんには感謝しかないです。ありがとうございます。
更新は恐らく次回が最後になるかと思います。結末に関してはまだ迷う部分もありますが、少しでも良いものが書ければと思います。
時間はかかるかもしれませんが、また近日中に投下します。

1(中)
ID:aFqRG4t4O
正直にこまき以外を書く作者って自己主張が強すぎると思う。
流れに逆らうっていうのかな、板のリソースも限られてるわけで、
嫌味ならメモ帳あたりでやればいい

2(左)
ID:tWBoJ/tM0
にこまき以外考えられない
にこまき以外増えて欲しくない

3(右)
ID:sMhE8B/Ho
にこまきは公式の意向だぞ
認められないならラブライブから離れろ

4(三)
ID:gkYlXsmB
同じにこまき好きとして恥ずかしいわ
ほのにこ、ぱなにこ、ほのまき、りんまき等の数多の魅力的な
可能性のリンクがあってこそ、にこまきをつなぐ線の特権性が輝くというのに

5(遊)
にこまき推さないとかひねくれてるよなぁ?
http://i.imgur.com/FeG7sjs.jpg

6(二)
矢澤と真姫もぼっちだからぴったり!私もぼっちだから同じタイプ!
http://i.imgur.com/U1IbCnu.jpg

7(DJにこ巻き)
にこまき以外認めない
http://i.imgur.com/RhIIIo6.jpg

8(一)
ID:RJxZM99YO
にこまきの相性がよすぎるってのも問題だよ
確かに他キャラと絡ませるのはみたくないってのもわかる
人気見れば一番相性がいいのは間違いないし

9(投)
ID:77j2aKs9o
にこまきこそ正義 お前ら邪道の屍なので土に帰ってくれ
ID:77j2aKs9o
俺のきんたまもモザイクかかってるわ


にこまき…泣

南中尋定@アナエル ?@nanchu_erosada 2月28日
愛されて当然だと思ってる人がその愛をなくした時どんな反応をするのかな。「あれ?え?希は私の味方よね?え?なんで?」てなるんだろうね。
のんたんがどんな気持ちで愛していたかなんて考えたこともなかったんだろうね。「いつもありがとう。希」とさえ言ったことなさそう。傲慢絢瀬だよね

南中尋定@アナエル ?@nanchu_erosada 5月21日
絢瀬[ピーーー]wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
流石にこれは[ピーーー]wwwwwwww氏ねじゃなくて[ピーーー]wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

りんあ@のぞえりくれやがれください ?@sana0827 2月23日
東條のこと考えれば考える程胸痛くてほんと不憫な子だな幸せにしたいってなるのに
絢瀬のこと考えれば考える程優等生のメッキ剥がれて絢瀬お前マジってなるからもう早く東條幸せにすることだけ考えてなさいよ

†┏┛りんあ┗┓† ?@sana0827 6月3日
希ちゃんは希ちゃんだから大好きなんだけど絢瀬は希ちゃん大好きで希ちゃん幸せにしたくて頑張ってる絢瀬が大好きなんだよ
それ以外にふらふらしてる絢瀬は蹴り飛ばしたい勢いってくらい私のぞえり拗らせてる

†┏┛りんあ┗┓† ?@sana0827 11月6日
何回も言ってるけど、東條さんがふらふら浮気しちゃうのは許せても絢瀬さんのは許せない。だって東條さん浮気したとしても何だかんだ心は絢瀬さんの物で絶対揺るがないじゃないですか。
でも絢瀬さん浮気中は東條さんのこと忘れそうじゃないですか。。最後は東條さんの所に帰ってくるとしても。許さん

あおしろ@東條回いつですか ?@4windice5 21時間
絢瀬は一回東條さんの有難さを分かるべき。いつも隣にいるのが当たり前とか思ってるでしょあの人。
いやそれすらも思ってないな。東條さんが隣にいるのが当たり前すぎて何も感じてないでしょ。殴る。

あおしろ@東條回いつですか ?@4windice5 4月30日
のぞえり以外の絢瀬CPがダメとかそういうんじゃなくて絢瀬が希さん以外に目を向けてるのを見ると殴りたくなるっていうそういうことだから

巽谷* 5/14僕ラブ4ノ-17 ?@tatsumiya00 5月5日
アニメ見たのぞえり勢さ、多分絢瀬の「私はあなたの手に救われた」で号泣してるじゃん。
こいつ全く自分の隣見えてねえんだなって泣いてるじゃん。それでのんキチ化進行してる人多いじゃん?
GODもそうなんじゃないかと思ってる。SIDがあまりに理想ののぞえりすぎて

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 @atanak_akurah ・ 57 分
ふざけんななんでうみばっかでてくんだよ!希と被りすぎなんだよ!
希センター曲だろ!マジキレソーーーーー!!!!!!!www

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 @atanak_akurah ・ 54 分
あいつほんと希の邪魔しかしない!スノハレの嬉しさ返せまじ!

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 ?@atanak_akurah 7分
@stardust_porter ラブライブのキャラでは本当に希の邪魔しかしないから!
のぞえりであってうみえりじゃないからまじで

ぐず ?@gzlive_zzzz 9月3日
絢瀬絵里という人は…
全宇宙ののんキチの代わりにのんちゃんを幸せにしなければならない使命を背負ってるんだなあ…

こづも ?@kdmo_walk 9月12日
絢瀬を奇跡とする希に絢瀬は感謝しなければならないのにあいつときたら!浮気を!するんだ!

南中尋定 @nanchu_erosada ・ 10月5日
希が余るくらいなら絵里が余れ。ソロライブしろ。希のためにソロライブしろ。

冬でも抱く夏でも抱く(肩) ?@nanchu_erosada 11月8日
よそはよそ、うちはうち ではないの?っていつも思うけど
それより甘やかされてる絢瀬さんへのイラつきがぱねえ。

にこまきよりこっちのが酷い
成り済ましの可能性無いし

おはようございます

次の投下ですが、書いているうちに長くなってしまったのでもしかすると2回に分けるかもです

のぞえりってこれだろ
論外だわ

南中尋定@アナエル ?@nanchu_erosada 2月28日
愛されて当然だと思ってる人がその愛をなくした時どんな反応をするのかな。「あれ?え?希は私の味方よね?え?なんで?」てなるんだろうね。
のんたんがどんな気持ちで愛していたかなんて考えたこともなかったんだろうね。「いつもありがとう。希」とさえ言ったことなさそう。傲慢絢瀬だよね

南中尋定@アナエル ?@nanchu_erosada 5月21日
絢瀬[ピーーー]wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
流石にこれは[ピーーー]wwwwwwww氏ねじゃなくて[ピーーー]wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

りんあ@のぞえりくれやがれください ?@sana0827 2月23日
東條のこと考えれば考える程胸痛くてほんと不憫な子だな幸せにしたいってなるのに
絢瀬のこと考えれば考える程優等生のメッキ剥がれて絢瀬お前マジってなるからもう早く東條幸せにすることだけ考えてなさいよ

†┏┛りんあ┗┓† ?@sana0827 6月3日
希ちゃんは希ちゃんだから大好きなんだけど絢瀬は希ちゃん大好きで希ちゃん幸せにしたくて頑張ってる絢瀬が大好きなんだよ
それ以外にふらふらしてる絢瀬は蹴り飛ばしたい勢いってくらい私のぞえり拗らせてる

†┏┛りんあ┗┓† ?@sana0827 11月6日
何回も言ってるけど、東條さんがふらふら浮気しちゃうのは許せても絢瀬さんのは許せない。だって東條さん浮気したとしても何だかんだ心は絢瀬さんの物で絶対揺るがないじゃないですか。
でも絢瀬さん浮気中は東條さんのこと忘れそうじゃないですか。。最後は東條さんの所に帰ってくるとしても。許さん

あおしろ@東條回いつですか ?@4windice5 21時間
絢瀬は一回東條さんの有難さを分かるべき。いつも隣にいるのが当たり前とか思ってるでしょあの人。
いやそれすらも思ってないな。東條さんが隣にいるのが当たり前すぎて何も感じてないでしょ。殴る。

あおしろ@東條回いつですか ?@4windice5 4月30日
のぞえり以外の絢瀬CPがダメとかそういうんじゃなくて絢瀬が希さん以外に目を向けてるのを見ると殴りたくなるっていうそういうことだから

巽谷* 5/14僕ラブ4ノ-17 ?@tatsumiya00 5月5日
アニメ見たのぞえり勢さ、多分絢瀬の「私はあなたの手に救われた」で号泣してるじゃん。
こいつ全く自分の隣見えてねえんだなって泣いてるじゃん。それでのんキチ化進行してる人多いじゃん?
GODもそうなんじゃないかと思ってる。SIDがあまりに理想ののぞえりすぎて

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 @atanak_akurah ・ 57 分
ふざけんななんでうみばっかでてくんだよ!希と被りすぎなんだよ!
希センター曲だろ!マジキレソーーーーー!!!!!!!www

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 @atanak_akurah ・ 54 分
あいつほんと希の邪魔しかしない!スノハレの嬉しさ返せまじ!

斗奏(はるか かなた)@びんるい絵斗音斗 ?@atanak_akurah 7分
@stardust_porter ラブライブのキャラでは本当に希の邪魔しかしないから!
のぞえりであってうみえりじゃないからまじで

ぐず ?@gzlive_zzzz 9月3日
絢瀬絵里という人は…
全宇宙ののんキチの代わりにのんちゃんを幸せにしなければならない使命を背負ってるんだなあ…

こづも ?@kdmo_walk 9月12日
絢瀬を奇跡とする希に絢瀬は感謝しなければならないのにあいつときたら!浮気を!するんだ!

南中尋定 @nanchu_erosada ・ 10月5日
希が余るくらいなら絵里が余れ。ソロライブしろ。希のためにソロライブしろ。

冬でも抱く夏でも抱く(肩) ?@nanchu_erosada 11月8日
よそはよそ、うちはうち ではないの?っていつも思うけど
それより甘やかされてる絢瀬さんへのイラつきがぱねえ。

1(中)
ID:aFqRG4t4O
正直にこまき以外を書く作者って自己主張が強すぎると思う。
流れに逆らうっていうのかな、板のリソースも限られてるわけで、
嫌味ならメモ帳あたりでやればいい

2(左)
ID:tWBoJ/tM0
にこまき以外考えられない
にこまき以外増えて欲しくない

3(右)
ID:sMhE8B/Ho
にこまきは公式の意向だぞ
認められないならラブライブから離れろ

4(三)
ID:gkYlXsmB
同じにこまき好きとして恥ずかしいわ
ほのにこ、ぱなにこ、ほのまき、りんまき等の数多の魅力的な
可能性のリンクがあってこそ、にこまきをつなぐ線の特権性が輝くというのに

5(遊)
にこまき推さないとかひねくれてるよなぁ?
http://i.imgur.com/FeG7sjs.jpg

6(二)
矢澤と真姫もぼっちだからぴったり!私もぼっちだから同じタイプ!
http://i.imgur.com/U1IbCnu.jpg

7(DJにこ巻き)
にこまき以外認めない
http://i.imgur.com/RhIIIo6.jpg

8(一)
ID:RJxZM99YO
にこまきの相性がよすぎるってのも問題だよ
確かに他キャラと絡ませるのはみたくないってのもわかる
人気見れば一番相性がいいのは間違いないし

9(投)
ID:77j2aKs9o
にこまきこそ正義 お前ら邪道の屍なので土に帰ってくれ
ID:77j2aKs9o
俺のきんたまもモザイクかかってるわ


これとは別なのか?


無人の音楽室。私は此処で貴女を待つ。

待ち合わせをしたわけでも、約束が有るわけでもない。

ただ、此処に居れば見つけてもらえる。そんな気がした。


「卒業おめでとう、真姫ちゃん」


無人の音楽室。私は此処で貴女を待つ。

もう少し。あと少しの間だけ。



原っぱの上に寝転んで、空を見上げた。

雲ひとつない青々と澄んだ空は潔癖すぎるように思えて、あまり好きではない。


「このトマト、真姫ちゃんみたいね」


そう高くはない筈の茂みに埋もれた貴女は、大粒の実を携えひょっこりと顔を出す。

青空よりも澄んだ笑顔は眩しく、けれどそれを目の当たりにしても卑屈さを募らせることはなかったのに。

それなのに今でも青空が苦手なのは、きっと貴女が隣に居ないせいだ。



「ヒョウの赤ちゃんだって」


貴女の視線は檻の中。

片方は大きな、きっと母親で。

もう一方は子猫のような、けれど何処か研ぎ澄まされた野性を感じさせる赤子だった。

時間を惜しむかの如く母の元へと身を寄せる小さな野性は、きっと本能で知っている。

いつか独りきりになる時が、そう遠くない先に訪れると。


檻の周囲に人影はない。

私は今日も、ひとり。



私の奏でる旋律だけが、静寂の中でこだまする。

呼吸さえ凍り付かせてしまいそうなほどの沈黙を、私の指先だけが侵していく。


「どうしてピアニストになったの」


この道に進んで数年が経ち。

けれど未だにその問いは、私の心を波立たせる。


「貴女が喜んでくれると思ったから」


そう伝える機会は、永遠にない。

馬鹿な女だと。


貴女は笑うだろうか、それとも。



電子の海の果て。0と1に介在する、終末なき世界。

にこちゃんは其処でアイドルとなった。


「バーチャルネットアイドル にこ 18歳?」

「そうよ!にこはみんなのアイドルなんだから」


きっとそれは、遠くで打ち上がる花火のようなものだ。

にこちゃんは身近で、けれどずっと遠い所まで行ってしまった。

私は今日も画面を見つめ。

そして僅かに微笑んだ。



悪い科学者に改造されたにこちゃんは、生まれ変わってサイボーグとなりました。

住み慣れた町。大好きな真姫ちゃんや仲間達。

みんなを守る為、彼女はガトリングガンを片手に今日も戦います。


「傷付いても壊れても、何度でも蘇るわよ!」


物語は底抜けに明るいコメディで。

だけど私はきっと泣くだろうから。

サイボーグにこちゃん。貴女だけは今日も笑顔で居て。



……

少しばかりの時が進んで、3年生達は卒業の日を迎えた。

もちろん、そこににこちゃんは居ない。

絵里が大切に抱えた遺影だけが、かつてこの場に存在していた少女の残像を滲ませていた。

きっと、みんな泣いていた。さして意味もなく、脊髄反射のごとく涙を流した。

多分それは感情ではない。

インプットされたプログラムに沿って泣いたり、哀しんだり。

たったそれだけの理由で流れた衝動的な雫には、一体どれほどの意味が在るというのだろう。

彼女の死を心から悼み哀しんでいる人間が、今この場にどれだけ存在するというのか。

遠くから見つめることしかしない私は無責任で、だけどそれに対して怒る権利くらいはある筈だ。

式は進む。


冗長で薄っぺらな校長先生の言葉の後、もう何処にも居ないにこちゃんへ卒業証書が授与された。

けれど、そんなもの。

にこちゃんが欲しかったのは、そんなものじゃない。

彼女が欲しかったのは、みんなと。私達と共に過ごす時間だった。

止まってしまった時を動かす何か。

それは決して薄っぺらな一枚の紙などではない。

そんなもの与えても、与えられても。

感傷に浸れるのは私達だけ。慰められるのは、私達だけなのだから。

そこににこちゃんの意思は介在しない。

にこちゃんの卒業証書を受け取った絵里は、式が終わるとにこちゃんの家族の元へ向かった。

黒い礼服を着込んだにこちゃんのお母さんは既に心の整理が付いていたようで、絵里から受け取った証書を大事そうに握り締め、綻ぶような笑みを浮かべた。

堪えきれず、絵里は嗚咽を漏らして泣いた。

絵里を抱き寄せるお母さんの姿は、私の知る矢澤にこの面影と重なって、けれど同化するのを拒むかのように揺れた。

色濃く残る彼女の面影が顕在すればするほどに、矢澤にこを失った世界が浮き彫りになるようで受け入れ難い不快感に襲われる。


逃げ出したい。

いますぐこの場から消えてしまいたい。

現実感を喪失していた現実は大層居心地が良くて。

そしてにこちゃんの居ない世界は、私にはほんの少し荒んで見えた。


「わかってる」

時が過ぎれば哀しみは癒え、胸にぽっかりと空いた穴も別の何かで埋まっていく。

仲間達は平穏な生活を取り戻して、私もいつかはそうなるだろう。

相も変わらず私の時は停滞することもなく流れ続けていたし、きっとそれは死ぬまで変わらない。

私にはそれが我慢ならない。

今という瞬間が褪せていく。唯一無二であった筈の貴女の。

その代替品さえも創造しゆく、残酷な時の速さ。

最愛の人が陳腐でありふれた物に変えられてしまう様を、私は一番間近の特等席で眺め続ける。

「そんなのって、ないわよ」


屋上から眺める街の明かり。そのひとつひとつが命を照らす灯火で。

今はその中にひとり、貴女だけが居ない。

今回はここまで。次回こそ本当に最後です。たぶん
また近いうちに投下できればと思います。それではまた

はよー

1(中)
ID:aFqRG4t4O
正直にこまき以外を書く作者って自己主張が強すぎると思う。
流れに逆らうっていうのかな、板のリソースも限られてるわけで、
嫌味ならメモ帳あたりでやればいい

2(左)
ID:tWBoJ/tM0
にこまき以外考えられない
にこまき以外増えて欲しくない

3(右)
ID:sMhE8B/Ho
にこまきは公式の意向だぞ
認められないならラブライブから離れろ

4(三)
ID:gkYlXsmB
同じにこまき好きとして恥ずかしいわ
ほのにこ、ぱなにこ、ほのまき、りんまき等の数多の魅力的な
可能性のリンクがあってこそ、にこまきをつなぐ線の特権性が輝くというのに

5(遊)
にこまき推さないとかひねくれてるよなぁ?
http://i.imgur.com/FeG7sjs.jpg

6(二)
矢澤と真姫もぼっちだからぴったり!私もぼっちだから同じタイプ!
http://i.imgur.com/U1IbCnu.jpg


7(DJにこ巻き)
にこまき以外認めない
http://i.imgur.com/RhIIIo6.jpg

8(一)
ID:RJxZM99YO
にこまきの相性がよすぎるってのも問題だよ
確かに他キャラと絡ませるのはみたくないってのもわかる
人気見れば一番相性がいいのは間違いないし


9(投)
ID:77j2aKs9o
にこまきこそ正義 お前ら邪道の屍なので土に帰ってくれ
ID:77j2aKs9o
俺のきんたまもモザイクかかってるわ

余ったら大変だと騒ぎまくってるのは
希(のぞえり)、花陽(りんぱな)、にこ(にこまき)推し

大手カプが邪魔でdisしてるのは
真姫(にこまきは嫌い)、凛(りんぱなは嫌い)、絵里(のぞえりは嫌い)推し

二年生は公式が蒔いた種でなのでどうしようもない。どうやっても荒れる
http://imgur.com/RhIIIo6.jpg

7 名無しで叶える物語(家)@転載は禁止 2015/01/05(月) 00:20:05.88 ID:hppGt/jW
[ピーーー]よりんまき厨
印象操作すんなゴミが

2 名前:名無しで叶える物語(家)@転載は禁止 :2015/01/05(月) 00:40:11.72 ID:hppGt/jW
知的障害者凛ちゃん
ひまわり学級
パン工場

もうちょいかかります。すみません

遅くなっていてすみません。なかなか納得のいく文章にならず手こずっています
結末は既に決まっているんですが、お待たせしてしまって申し訳ないです。もう少しだけ時間を頂けると幸いです

目が覚めた瞬間、此処が自分の生きるべき世界ではないと悟った。

だって此処には大切なものが欠けている。

にこちゃんが此処には居ない。

何度眠りに落ちて、何度目が覚めても。それは欠けたまま一向に埋まる気配がない。

空想と逃避を重ねて、私はこの穴が塞がるのを待つ。

いつか誰かがこの穴を埋めてくれる。それをひたすら期待して。


……嘘だ。

本当はにこちゃんに唯一無二を期待した。

この世界には替えの利かない物が確かに存在するから。

だから私の胸に空いた決して埋まらない空洞が。

それが永久に埋まることさえなければ、私の存在そのものが矢澤にこが唯一無二であることの証明になると思った。

にこちゃんはもう居ない。誰かがにこちゃんの生きた証を残さなくてはならない。

大勢の人にとっての『特別』になるはずだったあの人。

『特別』になることを望んでいたはずだったあの人。

その想いは私が生涯を懸けて叶えてみせる。

大丈夫だよ、にこちゃん。わたしは幸せだよ。

平気だよ、にこちゃん。いつだって貴女のことを想ってる。

何よりも。誰よりも。

……絵里よりも。

五月の頭。

廃校が発表されて間もない我が校に、転校生がやってくるという。


お気の毒さま、なんて。


そう思うのは私がこの学校に入学した自分自身を憐れんで居るからだろう。

代わり映えのしない景色。朝礼が始まる。

こんな中途半端な時期に転校してきた憐れな転校生は担任教師と共に教室へと足を踏み入れた。



瞬間、誰かが息を飲む音が聞こえる。

教室に入ってきたのは女の子だった。

真っ黒な髪と真っ白な肌の小柄な子。

赤いリボンで結ったツインテールが歩く速度に合わせて小さく揺れて。

私はぼんやりとその動きを目で追ってしまう。



不意に。本当に不意に。

私はその人のことを、かわいいと思った。

「矢澤にこです」

かわいらしい外見に反して、やや張りつめた声色がしんと静まり返った教室内でこだまする。

「病気でしばらく入院していて、学校に通うのは久しぶりになります。迷惑をかけることもあると思いますが、よろしくお願いします」

教卓の横で律儀に礼をした彼女は先ほどまでよりも更に小さく映る。

きっと、入院という言葉を聞いたせいだ。

そのせいで小柄な体躯は更に華奢に映るし、潔癖なまでに白い肌も病人特有の不健康なものに見えてくる。

けれど艶のかかった黒髪だけは一部の隙もなく美しい。

それが一層私の不安を掻き立てる。

たったいま出会ったばかりの他人が気になって仕方がなくなる。


「矢澤さんは後ろの空いている席に座ってください」

担任の言葉に促されて、少女は小さく一歩踏み出す。

今朝になったら増えていた一組の机と椅子。

私の席の隣に設置されていたそれに少女が腰かけた瞬間、
踊り出す鼓動の最中に一抹の平穏が滴るように染み込んだ。

「……わたし、西木野真姫。よろしくね」

不器用にリズムを刻む心音。だけど心の底では落ち着いて。

「矢澤にこです。よろしくね──」

彼女の笑顔とその声に。

「真姫ちゃん」

何処か懐かしさを感じる自分に、私は気付かないふりをした──。

今回はここまで。あまりにも間が開いてしまったので完成していた分だけ投下しました。

本当は今回の投下で完結させる予定でしたが、うまく行かず済みません。なんだかズルズル延びてしまいそうですが、続きもしっかり書いていきます。次こそはまた近いうちに

書き溜めは遅々として進んではいないのですが、やる気だけはあるのでもう少々お待ちを
また久しく間が開いておりますが、完結だけはさせるつもりでいます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月29日 (月) 23:15:29   ID: nhdH7M0f

こんなつまらんの書くな死ねよ

にこまきとかキモいにわか丸出し

2 :  SS好きの774さん   2014年09月30日 (火) 13:57:56   ID: zC9hVoWM

好きなカプなんて人それぞれでええやん?

3 :  SS好きの774さん   2014年09月30日 (火) 20:52:44   ID: ijP3dqz4

希ちゃん口調でキモいこといってんじゃねぇよ死ねよ、

死ネタとかは渋の糞きもスイーツ腐女子
とでもやってろバーカ

4 :  SS好きの774さん   2014年10月01日 (水) 05:56:02   ID: RIQt1uD2

嫌なら読むなよ

5 :  SS好きの774さん   2014年10月01日 (水) 18:49:32   ID: _Nxna1Zr

死ねとか
不愉快だからやめろ

6 :  SS好きの774さん   2014年10月02日 (木) 15:47:05   ID: NNZm3h_h

続き期待、

7 :  SS好きの774さん   2014年10月19日 (日) 21:48:36   ID: Iqc6FPfe

続き期待しています 続きはよ
頑張って

8 :  SS好きの774さん   2014年10月20日 (月) 23:56:45   ID: 9cBwO9Ob

続き頑張って下さい(^_^)
とても楽しみにしています!

9 :  SS好きの774さん   2014年10月21日 (火) 11:10:08   ID: Irjgp9bu

はい安定のにこまきアンチ〜
キモいのはお前らの醜い感性だろ
にこまき好きな訳じゃないけど荒らしてくアンチはこないでね

10 :  SS好きの774さん   2014年11月02日 (日) 02:32:45   ID: A-b9nOQb

続き待てるぞ!!
ファイトだよ

11 :  SS好きの774さん   2014年11月27日 (木) 22:45:21   ID: lNmlSm0A

アンチは気にすんなよ(^^)
書きたいこと書けばええねん

12 :  SS好きの774さん   2014年12月02日 (火) 23:17:13   ID: izg_wK59

早く続きが読みたいです!

13 :  にこまき推し   2014年12月18日 (木) 21:12:59   ID: kRH3qfTt

続き待ってます

14 :  SS好きの774さん   2014年12月24日 (水) 01:15:11   ID: oK5X7Ef3

にこにー死なないでくれ

15 :  ほのえり推し   2015年01月05日 (月) 23:47:09   ID: 5ttYKlyO

好きなカップリングなんて人それぞれだろ。
それを否定するのが一番のにわかだと思う。
死ねなんて単純な文字でしか
他人を否定できないような餓鬼が
人様が必死に書き上げている文章を読む資格なんてない。
そんな歪んだ感性持ってる奴を自分は怒り通り越して
哀れみを感じます。
作者さん応援しているので続き頑張ってください。待ってます。

16 :  ほのえり推し   2015年01月05日 (月) 23:48:25   ID: 5ttYKlyO

好きなカップリングなんて人それぞれだろ。
それを否定するのが一番のにわかだと思う。
死ねなんて単純な文字でしか
他人を否定できないような餓鬼が
人様が必死に書き上げている文章を読む資格なんてない。
そんな歪んだ感性持ってる奴を自分は怒り通り越して
哀れみを感じます。
作者さん応援しているので続き頑張ってください。待ってます。

17 :  SS好きの774さん   2015年03月09日 (月) 00:13:55   ID: vKdmXKdl

泣いた

18 :  SS好きの774さん   2015年03月22日 (日) 18:04:01   ID: DdZVUa04

にこまきは公式のryとか言ってるけど公式と全く関係ないssで何やったっていいじゃねぇか

19 :  SS好きの774さん   2015年04月08日 (水) 23:24:59   ID: K9BJzJCb

SSだけまとめてくれよ

20 :  SS好きの774さん   2015年06月18日 (木) 00:59:10   ID: y7m48f9Q

後半酷過ぎてむしろまとめてる奴が一番頭おかしい気がしてきた

21 :  SS好きの774さん   2016年05月14日 (土) 15:44:51   ID: QZbs2Q-h

泣いたぜよ

22 :  SS好きの774さん   2016年07月17日 (日) 18:04:36   ID: is6Vz_il

SSだけまとめて下さい

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