男 ザクッザクッザクッ
男 ザクッザクッ
男「………」ザクッ
男「……疲れた」ドサッ
男「……はぁ」
男「やっぱそう簡単に財宝なんて見つかんないかぁ」
男(この国じゃあ成人した男で、職についてない奴は兵士になる決まりだ)
男(そして俺も今年で成人。父親が平兵士だったから、継ぐような職もない)
男(兵士になんかなりたく無かったから、国外れの森にあるっていう
財宝で一山当てて旅暮らしでもしたいと思って来てみたけど……)
男「……三日かけて、もうほとんど森中掘りつくしちゃったなぁ」
男「まぁ、そりゃそうだよな」
男「はぁー……」
男「戦争も無いこんな辺境で、一生警備だけして生きてくのかなー……」
男「……あーやめやめ!鬱になりそうだ」
男「今日も暗くなってきたし、いい加減家に帰る……」
男「……前に、もう一掘りだけしていくか」
テクテク
男「このへんは、何かちょっとだけ手ごたえが違ったんだよな……」
ザクッザクッ
ザクッザクッザクッ
…カンッ
男「なんか掘り当てた……」
男「んー」パッパッ
男「なんだこれ?四角い……箱?」
男「黒っぽい半透明で、なんか綺麗だな……」
男「……さすがに財宝って感じではないけど」
男「あれ、ちょっとヒビが入ってる。
さっきスコップが当たったからかな……」
ビキッ
男「え?」
ビキビキビキッ
男「なんかヒビが広がって……光が……!?」
ビキッ
…パキィンッ!
??「ぁああああっ!!やっと出れたーーー!!」
.
男「………」
??「せまいし暗いし退屈だし動けないし暇だし何よりせまぁいっ!
土の中なんてもう一生入りませんからね私はっ!」
男(なんだこれ……)
男「なんだこれ……」
??「これとは失礼な……おっと、こちらこそ失礼しました」
妖精「まだ名乗ってもいませんでしたね。私は妖精といいます」
妖精「封印石に今の今まで閉じ込められていた所を助けていただき、本当にありがとうございます」
妖精「いやマジで、感謝してもしきれませんよ……。
三百年ぐらい過ぎてからは封印の監視が無くなったから
逃げ出すチャンスだと思ったら、今度は完全に忘れ去られるんですもん……」
男「……えーっと」
男「全然話についていけないけど……とりあえず、一つだけ教えてくれ」
妖精「おやなんです?貴方は私の人生の恩人ですし、何でも答えますよ!」
男「お前が"財宝"……なのか?」
妖精「"財宝"……なるほど、そんな感じの伝承になってるんです?
ある意味真逆のような気もしますが、いや全く私には好都合でしたねー」
男「……つまり、そうなんだな?」
妖精「ええその通り!千年近く前にちょっとやらかしちゃって封印された、
英雄促成キットこと"至高"のアーティファクト妖精ちゃんとは私の事です!」
男「なら話は早い」
男「"財宝"は見つけた人間の願いを叶えるって噂だった」
男「もしそれが本当なら、俺の願いを叶えてくれ!」
男「よくわからんが、俺はあんたの恩人なんだろ?」
妖精「……んー、なんだか誇張されてるような過小評価されているような」
妖精「まぁ何はともあれ、その願い叶えましょう!」
妖精「私も元々そのつもりでしたし、今はうるさい奴らも全員墓の下です!」
妖精「ポコペンポコペンダーレガツツイタ……」
男「えっ……えっちょっ、ちょっと待って」
男「まだ願いも何も言ってないぞ!?」
妖精「お気になさらず!どうせ私にできるのはこれだけですし、
これ一つあれば大抵の願いは叶いますから!」
妖精「テクマクマヤコンテクマクマヤコン」
男「えっ、えっ!?」
妖精「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり!」
妖精「ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ!」
男「何か凄い光ってるー!?」
妖精「――アルドニアス・ヘルドッ!」
.
―――
――
―
男「う……」
男「何だったんだ今の光……まだ目がチカチカする」
妖精「ふっふっふ」
男「何か……したのか?」
妖精「どう思います?」
男「……全身に違和感がある、変な感覚も」
妖精「英雄化後の副作用ですね。身体機能のズレと、魔力酔いと……」
妖精「ま、そのうち慣れるでしょう。皆大体似たようなもんでしたし」
妖精「というわけで……」
妖精「おめでとうございます!成功です!」
男「何が、どういうことだ……」
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