お、来た来た。全く、オレの誕生日なんだし仕事なんかさっさと終わらせてくれればよかったのに。


オレのために頑張った？どういう意味？…そのうち分かるって、もったいぶるなー。


まっ、とりあえずキャッチボールやろう！最近忙しくて前みたいに頻繁にやれなかった分、今日は気が済むまで付き合ってもらうからな！


…へっ？このあとオレ仕事あるの？……なんかなぁ、誕生日なのに仕事ってのも…。


ちょ、ちょっと忘れてただけだから！た、誕生日だからって浮かれてたわけじゃないから！う…うるさいー！

…あ、強く投げすぎたかも……。大丈夫か、プロデューサー？


なんだ、全然大丈夫じゃんか。


もっと全力で投げてこい？ふふん、言ったあとで後悔しても知らないからな？

うおっ、プロデューサーも結構重い球投げてくるようになったなー。オレだって一応女なんだからケガさせないでくれよなー。


…なんだよその顔。物珍しそうな顔。オレが女で悪いかよ。


…まぁ女の子っぽくはないけど…というか女の子になるためにアイドルになったのにまだなれないって本末転倒だよな。


十分女の子らしいって？ば、ばかっ、いきなりなんだよ！あーもう手元狂ったじゃんか！

プロデューサーがそう思ってくれるのは嬉しいけどさ、オレはまだなってないと思ってるんだよ。


女の子って翼や恵美みたいなのだろ？オレはまだそういうの無理だからさ。


オレにはその二人みたいにはなれないって、酷いこと言うよな。…オレにはオレの女の子らしさがある？


…ふーん、プロデューサーか言うんならそうなんだろうな。というかそのオレなりの女の子らしさ教えてくれてもいいだろ？ダメ～？なんちゃって。


変な顔するなよ！分かったよ、プロデューサーが教えてくれないなら自分で見つけてやるよ。

プロデューサーの言う女の子らしさを見つけて女の子になれたらさ…あのネックレス、やっとつけられるよ。


ほら、前に一緒に服選びに言っただろ？ちゃんとあの日のこと全部覚えてるからな？


あのネックレス、一生大切にするって言ったけど、帰ってから思ったんだよ。これは今つけるものじゃないって。


もっと女の子らしくなってから、あのネックレスはつけることにしてるんだ。


だからオレがネックレスつけるのを見るのはプロデューサーが一番な！


何でって？


…何でだろう？プロデューサーに見てもらいたいから、かな？

何で見てもらいたいかって言われると…うーん、答えられないなー。まっ、ネックレスをつける日が来たらそれも分かるだろ。


その日が来たらプロデューサーもオレの魅力にダウンしたり、なんてなー。もう魅力は伝わってるって…よくそんなこと真顔で言えるよな。


みんながプロデューサーに苦労してるの少しだけわかった気が…ん、いや何でもないよ。


それよりもまずはトップアイドルになることを目指すよ！…女の子とトップアイドル、先になるのがどっちか分からないけど。

あ、そろそろ時間か。…んじゃ最後に一回ずつ投げて終わりにしようぜ！全力でな！


すぅ…プロデューサー！これからもプロデュース、よろしくおねがいします！


…っ！プロデューサーの全力、伝わったよ！お互いよろしくな！

そういえば今日の仕事って何だっけ？確か教えてもらってなかった気が…。


…し、始球式ぃ！？マジで！？よっしゃー！まさかサプライズ？くぅーやられた！


キャッチボールも結果的に始球式に向けての肩慣らしになったな。よーし、バッター打ち取ってくるよ！


あ、もし打ち取ったら帰りにケーキな！もちろんプロデューサーの奢りで！OK？うおっ、ますますやる気出てきた！そうとなれば早く行こうぜ！

「あ、一つ言い忘れてたことがあった」


ん？まだ何かあるのか？


「誕生日おめでとう、昴！」


へへっ、ありがとうプロデューサー！



おわり