ベジータ「ラーメン二郎西の都店だと!?」(23)

ベジータ「なんだ、そのラーメン二郎というのは?」

トランクス「ネット界隈で話題になっているラーメン屋ですよ。ついにここ西の都にも出店してきたみたいですね」

ベジータ「たかがラーメン屋だろう。何をそんなに夢中になっているんだお前は。くだらん事に気をまわしている暇があったらトレーニングをしろ。ナンパにうつつをぬか

す悟天のようになりたいのか?」

トランクス「これでもカプセルコーポレーション次期社長として世間の情勢の勉強まっ最中なんですよ。強くなるだけじゃ会社のトップになれませんよ」

ベジータ「フン、くだらん。俺は強くなるだけでサイヤ星の王子になったぞ」

トランクス(父さんの場合はただの血筋でしょう・・・・・・)

トランクス「聞くところによるとラーメン二郎とはただのラーメン屋にあらず。あれはラーメン屋に化けた戦場だと──」

ベジータ「なにっ!?戦場だと!?」

トランクス「『二郎の常連客、通称ジロリアンとよばれる者たちがロットを乱さずラーメンとも形容しがたい怪物をいかに食すか、日夜絶えずバトルが繰り広げられている

』と書かれていますね」

ベジータ「・・・・・・ふん、それならば行ってやらんでもない」

トランクス(えっ、別に父さんは誘ってないんですが・・・・・・)

ベジータ「・・・・・・それでなぜ貴様までいる?」

悟空「いやあ、悟飯が研究のため西の都に行くっつうからよ。暇つぶしについてきてみたら、おめえたちが二郎に行くっていうからさぁ」

悟飯「僕ら住む東の439地区にはラーメン二郎がありませんでしたから。トランクスから西の都に出店したと聞いてこれは行ってみようかと思いまして」

ベジータ「貴様ら、のんきそうに言っているが二郎がどんな所か分かっているんだろうな?」

悟空「よく知らねえけどすげえ食わせてくれるラーメン屋なんだろ?悟飯が言ってたぞ」

ベジータ「フ・・・・・・甘いな、カカロット。貴様は二郎のことを何も分かっていない」

悟空「はあ?」

ベジータ「二郎とはただのラーメン屋ではない。『ろっと』を乱さずいかにラーメンとも形容しがたい化物を食すか、その目的のためにさながら俺達ジャンプ漫画のごとく

『ろったー』達によるバトルが繰り広げられる死ぬか生きるかの戦場。それこそがラーメン二郎なのだ!」

悟空「へえ~、ベジータは詳しいなあ」

トランクス(・・・父さん、オレから聞いた情報の受け売りな上に尾ひれまでつけちゃってる)

悟飯「なんだかいろいろルールが厳しそうですけど、僕らのような初心者が行って大丈夫ですかね?」

トランクス「あ、それは大丈夫ですよ。オレがネットから仕入れた情報をメモしておきましたら。分からなくなったらそれを参考にしましょう」

悟空「ま、オラは腹いっぱい食えればそれでいいけどな」

ベジータ「カカロット!貴様との長年の勝負、二郎で決着をつけてやるから覚悟しろ!」

ラーメン二郎西の都店前

悟飯「あれかな?なんか凄く人が並んでるけど・・・・・・」

悟空「うわ~、20人くらいいるぞ」

ベジータ「どういうことだトランクス!すぐに入れるのではなかったのかっ!?」

トランクス「・・・ええと、メモによると『行列は当たり前。並ぶ間に今日の腹具合と相談しつつ戦略をたてるのがジロリアンの心得』とありますね」

ベジータ「くそっ、俺は今すぐにでも闘ってやってもいいのに!」ギリギリ

悟飯「でも見ていたらどんどんお客さんが入っていきますよ。案外すぐに入れるんじゃないかな?」

トランクス「これくらいの並びなら一時間くらいで入店できるみたいですよ」

悟空「早く食いたいなあ。オラ腹が減って腹が減って力がでねえ」

ベジータ「呑気な奴だな、カカロット。いずれ二郎で地獄をみるのだから今のうちにいい夢でも見ていやがれ!」

トランクス(父さん、何しにいくかわかっているのかな・・・・・・)

悟飯「やっと僕たちの番みたいですね」

ベジータ「4人だ。すぐにこの店で一番のラーメンを持ってこいっ!」バンッ

トランクス「父さん、違いますよ。入る前にこの券売機で食券を買うんです」

ベジータ「なにぃっ!?何でそんな七面倒くさいことをしなければならんのだ!?」

トランクス「一応ルールですから・・・・・・二郎に入ったらそれに従いましょうよ」

悟飯「ラーメンは大か小しかないけどこれでいいのかな。『ぶた入り』と『ぶたダブル』ってどういう意味なんだろう?」

トランクス「ここの『ぶた』とはチャーシューのことみたいですね。通常が2枚で、ぶた入りが5枚、ダブルが10枚と──」

ベジータ「ふん、カカロット、わかっているだろうな?」

悟空「おう!あったりめえだ。オラたちが注文するのは当然」

ベジ・悟空「ぶたダブル大ラーメン!」

ザワワッ

「おい、マジかよ」「あいつら初心者なのにいきなり大にぶたダブル・・・・・・」「死にたいのか・・・・・・?」「ジロリアンの風上にもおけぬ所業・・・・・・」


悟飯「一番多いのがそれなら僕もそれにしようかな。トランクスはどうする?」

トランクス「オレもそれにします」

ザワワワワッ

店員「そちらの大ラーメンご注文の方、ニンニクいれますか?」

ベジータ「なんだ貴様はやぶからぼうに!死にたいのか!?」

トランクス「父さん、これがコールですよ。トッピングを聞いているんです」

悟飯「トッピングはどういう種類があるのかな?」

トランクス「メモによるとニンニク(刻みニンニク)、ヤサイ(キャベツ&モヤシ)、カラメ(味の濃さ)、アブラの四種類みたいですね。これに『マシ』か『マシマシ』

をつけることで量を調整するんですよ。例えば野菜を多くしてもらいたいときは『ヤサイマシマシニンニクカラメアブラ』といった具合に──」

ベジータ「いちいち面倒だな。そんなもの覚えていられるか」

悟空「オラもそんな呪文みたいな言葉、とても覚えられねえなあ」

悟飯「トランクス、もっと短いものはないの?」

トランクス「・・・・・・一応、トッピング全部つける『全マシ』というのがあるそうですけど──」

ベジータ「なら俺はその『全マシ』だっ!」

悟空「オラも『全マシ』!」

悟飯「それじゃ僕も『全マシ』」

トランクス「・・・じゃあオレは『ヤサイマシニンニクカラメアブラ』で──」

ベジータ「トランクス!貴様、サイヤ星の王子であり親でもある俺に恥をかかせる気か!カカロットの息子が『全マシ』なら貴様も当然『全マシ』だっ!」

トランクス「・・・・・・はあ」

ザワワワッ

「あいつら『全マシ』頼みやがった」「初心者なのに大豚ダブルに全マシ・・・・・・」「舐めている、二郎を舐めている」「ギルティ・・・ッ」「ギルティ・・・・・・ッ」

店員「お待ちどう様~」

ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ

悟空「ひゃあ~、すげえな。まるでマッスルタワーみたいなラーメンだ」

悟飯「これはなかなかの量ですねえ」

ベジータ「どういうことだ!麺の姿が影も形もみえないぞ!」

トランクス「このキャベツとモヤシの山の底にあるんですよ」

ベジータ「ふん、それなら先にこの野菜を片づけてから麺を食うとするか」

ザワワワワワッ

「『天地返し』をしないだと・・・・・?」「野菜から食べるのはもっとも危険な食べ方・・・・・」「2ロット、遅くとも3ロットの内に食べきるのがマナーなのに」「あいつらロ

ットを守る気がないのか・・・・・?」

「やはりギルティ」

「ギルティ」

「ギルティ」

「ギル──」

悟空&ベジ&悟飯&トラ「「「「いただきまーす」」」」

ガツガツガツムシャムシャムシャガガガガガクッチャクッチャズズズズズズズーズズズズズズズゴクゴクゴクゴクゴクゴク

悟空&ベジ「「おかわり!」」ガンッ


「1ロットもいかずに完食・・・・・だと・・・・・・!?」

ベジータ「なにっ、おかわりができないだと!?どういうことだっ」

トランクス「だから注文はあそこの券売機で買うんですよ」

ベジータ「それならお前がさっさと行って買ってこい!」

悟飯「ベジータさん、それはいくらなんでも迷惑ですよ。後ろの行列のお客さんが待っているんですから」

ベジータ「な、なんだと!?それじゃどうすればいいと言うんだ!?」

トランクス「もう一回並んで入るしか方法はないでしょうねえ・・・・・・」

悟空「ええ~っ、また並ぶのかぁ?オラまだ腹減ってるから我慢できそうにないぞ」

トランクス「一応ルールですから」

ベジータ「く、くそったれぇ・・・・・・!」ギリギリ

再びラーメン二郎西の都店前

ベジータ「貴様らぁ・・・・・・早く食って帰りやがれぇ・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴ

トランクス「と、父さん、怒りのあまり超サイヤ人化するのはやめてください!前に並んでるお客さんたちが怯えているじゃないですか」

ベジータ「知ったことか!」ゴゴゴゴゴゴ

悟空「なあ、悟飯。さっきの『大ぶたダブル全マシ』って本当に一番量が多いのかあ?オラには前菜くらいの量だったぞ」

悟飯「う~ん、二郎って注文は同じでも量は店によって違うらしいですからね。たぶん西の都店は他よりも量が少ないんだと思いますよ」

悟空「そっかあ、残念だなあ」

ヤムチャ「お~い、おまえら~」

悟空「お、ヤムチャじゃねえか」

ヤムチャ「やっぱり悟空たちか。いつもよりも人が多いからおかしいなと思ってきてみたんだが──」

悟飯「ヤムチャさんも二郎にきたことあるんですか?」

ヤムチャ「フフフ、俺はすでに週に5回はきている立派なジロリアンだぜ。それにしても相変わらずの混みようだな。せっかくだから前に入れてくれよ」

トランクス「え?」

ベジータ「貴様・・・・・・俺達が並んでいるのが見えないのか?」

ヤムチャ「知り合いだから別にいいじゃないか」

ベジータ「・・・トランクス、ラーメン二郎鉄則第3条を言ってみろ・・・・・・」

トランクス「ええと、『たとえ知り合いだとしても割り込みは重大なルール違反』──」

ベジータ「そういうことだ、ルールも守れない貴様はさっさと失せろ!ギルティッ!!」ズアッッッ!!!

ギャーッ

ベジータ「フン、きたねえ花火だ」

悟空「あれ?なんか知らない間にオラたちの後ろの客がいなくなってるぞ」

悟飯「お昼時が過ぎたから帰ったんですかね?」

「あ、小ラーメン、ヤサイスクナメで・・・・・・」

「お、俺も・・・・・・」

「俺も・・・・・・」

「俺も・・・・・・」

トランクス「今食べているお客さんたちも注文の量が少ないから思ったよりも早く入れそうですよ」

ベジータ「はやくしやがれぇぇぇ!!」シュインシュインシュイン

「・・・・・・」ビクビク

悟飯「やっと僕たちの番ですね」

悟空「でも一番多いのはさっきの『大ぶたダブル全マシ』なんだろ?注文どうすんだ?」

ベジータ「フッ、カカロット。この俺が何の考えもなしに再び並んだとでも思っているのか」ニヤッ

悟空「おお、なんかいい考えでもあるのか?」

ベジータ「当然だ。さっきの量で足りなければあらかじめ券売機で大量に買ってしまえば何の問題もない」

悟空「へえ~、ベジータあったまいいなぁ」

悟飯「それっていいんですかね?」

ベジータ「トランクス、券売機で大量に買うのはどうなんだ?マナー違反か?」

トランクス「・・・う~ん、それは特に何のルールもないようですねえ」

ベジータ「ふん、ならば問題ない」

ベジータ「よしカカロット、俺が今から1000ゼニー札をどんどん入れていくから貴様は注文のボタンを押しまくれ、悟飯、トランクス、貴様らは出てくる食券を片っ端

から集めろ」

悟空「おっしゃ、任せろ!」

悟飯「分かりました」

トランクス「・・・・父さん、念のために聞きますけどその大金はどこから──」

ベジータ「カプセルコーポレーションの金庫からだ。文句あるか?」

トランクス「いえ・・・・・・(あとで母さんに報告しておこう)」

10分後

悟空「お~い、ベジータ。もうボタン押しても何にも出てこねえぞ」カチカチカチ

悟飯「あ~、ランプが消えてますから全部売り切れたみたいですね」

ベジータ「フン、ならば仕方ない。おい、親父。注文はこの食券全部だ」

店員「ニ、ニンニク入れま──」

悟空&ベジ&悟飯&トラ「「「『全 マ シ 』!」」」」



その日ラーメン二郎西の都店はメニュー全てにとどまらず、翌日以降の仕込みに食材、黒烏龍茶、賄いや店長の愛妻弁当、果ては残飯処理するはずだったものに至るまでこ

とごとく喰い尽されたという・・・・・・・・


ベジータ「フン、なんだかニンニクとアブラだらけの味だったがまあまあだな」シーハー

悟空「オラ、正直まだ食い足りねえんだけどこれくらいにしとくか。腹八分っていうもんな」

悟飯「ルールに厳しい店と聞いてたけどそうでもなかったね、トランクス」

トランクス「喜んでもらえてよかったです。また来ましょうね」


当然のことだが、ラーメン二郎西の都店はその後一週間ももたずに閉店した

ベジータ「くそったれ、あれからしばらくたつがどうにもあの二郎の飯が食いたくて仕方ないぞ!」

悟飯「なんというかまた行ってみたくなる不思議な味ですね」

悟空「だけど店なくなっちまったんだろ?残念だなあ」

バタンッ

トランクス「父さん、朗報です!」

ベジータ「なんだ?」

トランクス「いろいろ調べてみたんですけど、ラーメン二郎発祥の地である日本では今でも本店含めて30軒近くの店が営業しているそうですよ」

ベジータ「なにっ!?」

悟空「本当か!?」

ベジータ「30軒というと朝昼晩で3軒喰ったとしても10日間はもつな」

悟飯「せっかくですから今度は他のみんなも誘いましょうよ。悟天やパンもきたがってましたから」

悟空「そういやヤジロベーがカリン塔でのメシに飽きあきしたって言ってたっけな、あいつも呼ぶか」

ベジータ「フン、それならブルマやブラも連れて行ってやるか」

トランクス「じゃあ、さっそく皆を呼んできましょうか」


ラーメン二郎全国店がサイヤ人一行に喰い尽されるまであと10日・・・・・・・


おわり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom