このSSは
暁美ほむらが将棋のルールを覚えるまでを克明に綴った大長編スペクタクル
である。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410266164
・将棋よくわかんない
・少々地の文あり
ほむら「将棋ですって? 嘘でしょ?」
ほむら「将棋で感情エネルギーが集まるわけないじゃない」
QB「魔法少女システムだけでは非効率だからね」
QB「僕たちインキュベーターは感情の揺らぎに目をつけたんだ」
ほむら「…………」
ほむら「将棋ってあの将棋よね」
QB「あの将棋だよ」
ほむら「あんな根暗オタクゲーム如きで揺らぐわけ?」
QB「色んなボードゲームを試した結果が将棋なのさ」
QB「特に第二次性徴k……」パーン
ほむら「はいはい。すごいすごい」
ほむら「そもそも貴方がこの手の提案をする場合、決まって手のひら返しがあるはずよ」
QB「やだなあ。僕はただ経営方針を変えただけさ」
QB「少数の顧客から搾り取るより、間口を開けてより多くのお客様から少しずつ分けて貰う」
QB「近代の人口増に着目した素晴らしいアイデアさ」
ほむら「スーパー怪しいわ……」
ほむら「この指輪型の回収装置だってお手軽すぎて怪しいわ」
ほむら「実はいやらしい機能が隠されてるのでしょう?」
QB「まさか! QBenzaの形勢判断機能しか付いてないよ!」
ほむら「形勢……? え?」
QB「疑うのかい? それなら僕と将棋を打とうよ」
ほむら「笑止! 耳毛でこの私とですって!?」
QB「そうなるね」ニョイン
ほむら「将棋は日本独自の文化。たかが宇宙人如きに勝てる可能性はゼロよ!」
QB「まあそうだろうね」
ほむら「今、言い間違えた気がするわ」
QB「じゃあこの指輪を左手の薬指につけてね」
ほむら「あ、うん」
QB「対局開始だ」
先手:暁美ほむら
後手:インキュベーター
QB「君からだよ」
ほむら「えいっ」パチン
QB「いきなり定石を外すとはね」ペチ
ほむら「作戦通りよ」パチ
QB「いいのかい?」パチ
ほむら「ふっ。引っかかったわね」パチ
QB「くっ」パチ
ほむら「盤上を制圧したわ! もう負ける気がしない」ペシ
QB「まだ50手目だ。勝負はこれからだよ……」パチ
ほむら「ああ!私の味方が裏返っていく!」
QB「さて61対3で僕の勝ちだ」パチパチ
ほむら「ま、負けた……」
QB「どうだい? 思い知っただろう?」
ほむら「ええ。でも素晴らしい勝負だった」
ほむら(――将棋って奥が深い。そう思ってしまうのでした)
ほむら「って、リバーシじゃない!!!!」ダンッ
QB「やれやれ。気づくのが20手ばかし遅いんじゃないかな」
ほむら「おちょくってたのね! この指輪もいらない! 返すわ!」
QB「ちょっと待ってくれ!」
QB「今の勝負で得られた感情エネルギーは8Gqbだ! 君は宇宙をちょっとだけ救ったんだよ!」
ほむら「Gqb?」
QB「君はネゲントロピーという言葉を知ってるk」
ほむら「」タァン
ほむら「QB8000000000匹相当のエネルギー……?」
QB「そうだよ」
ほむら「これ、広まったらまどかが契約する必要ないわね」
QB「長い目で見ればね」
ほむら「この指輪型回収装置を付けて、感情の揺らぎを発生させる」
ほむら「実に簡単だわ! 早速、明日将棋してくる!」
QB「いってらっしゃい」
◇学校
まどか「しょうぎで?」
さやか「宇宙を救う……電波さんかな?」
ほむら「騙されたと思って一回勝負しなさい」
さやか「あたし、ルール知らないよ」
まどか「ほむらちゃんは知ってるの?」
ほむら「よく聞いててね。一度だけ説明してあげる」
まどか「わーわー」
さやか「ぱふぱふ」
◇ルール説明
ほむら「将棋の打ち方をレクチャーするわ」
ほむら「まず、全部で何マスあるか知ってる?」
まどか「100マスくらい?」
さやか「361マスって聞いた記憶があるよ」
ほむら「ハチワンダイバーという将棋漫画があるのだけど、名前の通り81×81マスなの」
まどか「へー。6561マスもあるんだー」
ほむら「これが将棋する板よ。ごめんなさいまどか。さっきのは嘘。81マスだったわ」
まどか「大丈夫だよ。怒ってないよ」ニコニコ
ほむら「その笑顔も素敵だわ」
ほむら「では美樹さやか。まず五角形のチップを板に置くのよ」
さやか「うん」ペチッ
ほむら「初期配置は以下の通りよ」
http://i.imgur.com/v9caP62.png
さやか「左右対称なんだね!」
ほむら「間違った。こっちよ」
http://i.imgur.com/4pGYM0a.png
さやか「やっぱりね! 何かおかしいなとは思ったよ!!」
まどか「あ、このチップ、木で出来てるんだー」
さやか「ほむら先生。色んな文字が書いてあるけど、動きはやっぱ違うの?」
ほむら「そうね。将棋にはZOCの概念が用いられているわ」
まどか「ZOC?」
ほむら「Zone of Control つまりチップの射程範囲は様々というコトよ」
さやか「?」
ほむら「まどか☆マギカポータブルと全部同じよ」
さやか「なるほど! ターン制ストラテジーなんだね!」
ほむら「分かればよろしい」
ほむら「次はチップの動き方よ」
ほむら「最初は歩兵。ミニミで正面の敵を掃討するわ」
ほむら「香車。ロケランで二十マス向こうも木っ端微塵、最強の雑魚ね」
ほむら「王様。周囲一マスにモーニングスターをぶちかますよ」
ほむら「金将。斜め後ろに隙があることで有名ね」
ほむら「銀将。前と斜め一マスに進めるわ」
ほむら「角行。斜めにしか動けないお荷物よ」
ほむら「飛車。最強の名に相応しいチップよ」
ほむら「桂馬。何だかよくわからない複雑な動きよ」
さやか「覚えるの大変だなあ」
ほむら「大丈夫。わからないのなら動かさなければいいんだから」
さやか「天才か……!」
ほむら「後、裏返すと強くなるらしいわ」
さやか「どうすれば勝てるの?」
ほむら「王様を殺害したほうが勝ちよ」
まどか「なるほど、簡単だね」
ここまで
次回初バトル
乙
将棋を打とうよと定石はリバーシへの伏線かな?
>>18
そーだよ!
ほむら「まどか、歩を五枚投げて」
と
まどか「うぇい」
と
歩 歩
ほむら「振り駒の結果、『と』が3枚に『歩』が2枚だから美樹さやかの先手ね」
と
▲さやか「お願いしまーす」パチ
▲さやか「お、なんだこれ」
△ほむら「先手は▲マークがくっつくのよ。後手は△ね」ペチ
◇対局中
さやか「この取った駒は再利用できるんだよね?」ペシ
ほむら「勿論。この台が収容所代わりなの」トントン
さやか「へえ。置いとこ」ポフッ
まどか「チェスだとそのまま除外するんだよっ」
ほむら「将棋は終盤になるほど複雑になるの。チェスとの大きな違いはソコね」ペチ
まどか「引き分け多いもんね。チェス」
さやか「早速ほむらの銀をここに打とう」パチ
ほむら「投降、利敵行為の心証は最悪よ。その銀は最速で撃滅するわ」ペシ
ほむら「……」ペチ
さやか「あ、王手だよ」
ほむら「そう来ると思ってた」スッ
さやか「王様討ち取ったり!!」
ほむら「し、しまった!!!!」
さやか「勝っちゃった! 初めてなのに勝っちゃった!」
ほむら「に、逃げ延びた飛車がいつの日か革命の火種に……」
まどか「さやかちゃんつよーい!」
ほむら「ゔぅ」
さやか「キュゥべえー居るんでしょー。どれくらいエネルギー貯まった?」
QB「4Tqbさ。エントロピーを凌駕したんだよ」
さやか「しょうぎすげー」
ほむら「あの美樹さやかに負けた……」グジグジ
QB「実に良い負けっぷりだったね。暁美ほむら」
ほむら「今度は負けないんだからー!」ダッ
まどか「あ、ほむらちゃんが逃げた」
QB「そっとしておこう。この無意味な悔しさがエネルギーを生むんだ」
ほむら(強くなりたい! 強くなりたい!)タッタッタ
ほむら「どうすれば……どうすれば……!」
ほむら「あ、あの人に上達の秘訣を聞いてみよう!」ダッダッダ
◇公園
織莉子「将棋……?」
ほむら「ええ。どうすれば強くなれるのかしら」
織莉子「私は予知能力で相手の十手先を読むから……」
ほむら「私は自分の力で強くなりたいの!」キッ
織莉子(この目、この指輪……。彼女は本気で宇宙を救う気なのね)
織莉子「これも何かの縁。短期間で強くなる方法を伝授するわ」
ほむら「ありがとう! バケツの人!」
織莉子「そうね、早速だけどあなたはネコ? タチ?」
ほむら(ネコ? タチ?)
ほむら「猫ではないわね……」
織莉子「私と同じね」ニコリ
◇書店
織莉子「暁美さん、こっちこっち!」
ほむら(名局集、寄せ、必死、手筋……専門用語がいっぱい)
織莉子「N手詰めハンドブックと○○ノートがあるでしょ?」
織莉子「私達魔法少女は振り飛車党が多いからコレね」ヒョイ
ほむら「ひと目の石田流? 5手詰めハンドブック?」
織莉子「初心者向けの定跡本と詰将棋の問題集よ」
織莉子「もちろん、気に入ったものを選べばいいわ。学習参考書と同じね」
ほむら「石田流の極意じゃなくていいの? 文字が一杯でとても詳しそうだわ」
織莉子「脳内で盤駒の再現が出来てからにしなさい」
織莉子「予習シリーズと新数学演習くらいの差があるわ」
ほむら「はぁい(?)」
織莉子「ちなみに○○ノートというものは自戦記で、対局の解説、読み、感想が主よ」
織莉子「本題に入るわ」
織莉子「将棋では序盤、中盤、終盤、と大きく3つに分かれるの」
■序盤(駒組、仕掛け)
織莉子「玉の守りは金銀3枚。攻めは飛車角銀桂と言われていて――」
織莉子「具体的には、矢倉、美濃、穴熊が守り、中飛車、四間飛車などが攻めになるわ」
ほむら「ひと目の○○や○○必勝ガイド、よくわかる○○が序盤戦に対応しているのね」
織莉子「因みに私の勧める石田流は、三間飛車の一種で超攻撃的な戦型」
織莉子「隙を見せたらあっという間に潰されてしまうわよ」
■中盤
織莉子「囲いと攻めの態勢が整ったらいよいよ開戦になるわ」
ほむら「玉に突っ込めばいいのかしら?」
織莉子「いいえ、まずは手柄を挙げるの。具体的には『手筋』を活用する感じね」
・攻めは「歩」と「飛車、角+銀」の連携で。
・単騎だけでは返り討ちに遭ってしまいます。
・「桂」も活用することで攻撃力が増します。
・「駒の損得」を大事にしましょう。
(金銀3枚)>飛車>(金銀2枚)≧角>金≧銀>桂≧香>歩
・『手筋』が攻めに役立ちます。
織莉子「上級者は「位(くらい)」も気にするようになるわ」
ほむら「位?」
織莉子「戦争で、先に中立都市を制圧したら動きやすいでしょ?」
織莉子「玉を詰ますために、攻めの拠点を増やしたり、盤中央を奪うのが中盤の要なのよ」
織莉子「ただ、中盤の上達は大変難しい。とりあえず感覚だけでも掴んでおきましょう」
■終盤(寄せ合い)
ほむら「囲い崩し○○、や必死○○、詰将棋の書籍は充実してる印象があったわ」
織莉子「終盤になると、駒の価値が大きく変わるの」
ほむら「駒得よりも対局を制する方が嬉しいものね」
織莉子「斜め駒で詰むけど駒が足りない。そんなときは飛車や金を捨ててでも取りに行くのよ」
織莉子「つまり、駒の価値は「銀=角>>>>その他」になるわけ」
・自陣の詰みがあるか確認しましょう。
・寄せ合いは速度が大事です。
・「詰めろ」をかけましょう。
・無駄な王手はやめましょう。
ほむら「え、王手駄目なの?」
織莉子「玉は全方向に動けるから、王手するたびにのらりくらりと逃げられてしまう」
織莉子「さきに玉の逃げ道を封鎖してからよ」
織莉子「最後に。何事にもバイブルが必要よ。羽生の頭脳と羽生の法則を貸してあげる」
ほむら「は……にゅ? わっ、分厚い」
織莉子「『法則』は手筋の書籍、中終盤を鍛えるのには最適よ」
織莉子「『頭脳』は古い定跡書だから丸暗記だけでは駄目。攻めと受けの考え方を学びなさい」
ほむら「わかったわ」
織莉子「それと将棋の道場を紹介してあげる」
ほむら「道場ね!」
織莉子「大会にもいっぱい出るのよ!」
ほむら「ええ!」
・何事も継続です。
・敗戦譜の検討が上達のカギ。
・チェスもバックギャモンもあるんだよ。
◇
まどか「王手!」
さやか「あーやっちゃったよー」
仁美「まあ! まどかさん、お強いですね」
まどか「えへへ」
マミ「美樹さん! 暁美さん知らないかしら!?」ガラッ
さやか「ほむらなら数日前から休んでるよん。多分公園じゃないの」パチ
マミ「それが……街中探しても見つからないのよ!」
まどか「え!?」パチ
仁美「……」
マミ「どうしましょ。矢倉の勉強する約束したのに」
QB「参ったね。感情エネルギーは地味に貯まってるから生きてるはずなんだが」
仁美「わ、私……彼女の居場所知っていますわ」
マミ「え? どちら様?」
仁美「ある賭場に出入りしてる少女の姿をうちの者が見た、と」
QB「どうするんだい?」
マミ「追いかけるわよ」
仁美「と、とても危険なんです!」
マミ「百も承知! 私一人で行くわ!」
さやか「マミさん私も……」
マミ「ダメよ。これは私達、魔法少女の問題なんだから!」
仁美「では、住所のメモをお渡ししますわ……ご武運を」
◇美国倶楽部72
マミ「ここね……」
美国久臣「おや、新顔だね。君も真剣師かい」
マミ「黒髪の中学生がここにいると聞いたのですが」
美国久臣「ふむ。見滝原の攻め師のことだね」
美国久臣「だが――腕に自信はあるのかな?」
マミ「私はキュゥべえに認められた将棋少女。タダでは転ばないわ」
美国久臣「よろしい。席料は20万、飲み物は飲み放題だよ」
マミ「そんな大金持ってないわよぉ」
美国久臣「じゃあ2000円」
マミ「はい」ペラ
美国久臣「右の通路をまっすぐ進んだ奥の部屋だよ」
???「どうぞ、お掛けになって下さい」スッ
マミ(どうみても暁美さんだわ)
マミ「一局お願いできますか。攻め師さん」
???「持ち時間は10分切れ負けで」
マミ「5分で十分よ、暁美さん」
ほむら「あら、一瞬で終わってしまうわよ」
マミ(なんて強気なの!?)
ほむら「私の先手で対局開始よ、巴マミ……」ペチ
マミ「暁美さん、ここで何してたの」ペシ
ほむら「賭け将棋よ」ペチン
マミ「深くは聞かないわ。足を洗いなさい」ペチ
ほむら「私に勝てたらね」ペチ
マミ「あら、王手飛車取りよ!」ビシィィ
ほむら「……」
ほむら「盤上を良く見なさい……」
マミ「う、嘘……私の王様が詰まされている!」
ほむら「ふふ。タマは頂くわ」オウサマ
マミ「ま、負けました……」ガックリ
美国久臣「素晴らしい闘いを観せて貰ったよ。これでおほむちゃんの59連勝だね」
ほむら「それほどでも……」
マミ「貴女の才能は本物よ。暁美さん」
ほむら「巴マミ……?」
マミ「はい、賭け金の五千円。でも残念ね」
ほむら「この期に及んで負け惜しみかしら」
マミ「賭場での棋譜を全部キュゥべえに見せなさい。全てが分かるわ」
◇ほむホーム
ほむら「キュゥべえ。将棋のコツがなんとなく掴めて来たわ」
QB「棋譜を見せてくれ。話はそれからだ」
ほむら「はいどうぞ」ペラ
QB「……」
QB「……へぇ」
QB「…………おぉ」
ほむら「?」
QB「マミの推薦を受けた理由がやっとわかった」ペラ
QB「君の棋譜は全て見せて貰った。君ならプロになれるよ」
ほむら「プロ……!? どうやってプロに……」
QB「奨励会と呼ばれるプロ養成機関に入るんだ」
ほむら「色々面倒ね。このまま真剣師として生きていくわ」
QB「対局するたびに無尽蔵のお金が貰えるよ!」
ほむら「分かった。行って来るわ」タッタッタ
◇
ほむら「プロになったわ!」
QB「史上5人目の中学生棋士だ!」
暁美ほむら四段誕生の瞬間であった。
QB「次は順位戦だよ!」
ほむら「何それ!」
QB「プロ五十数人と戦って上位三名に入るんだよ!」
ここまでーお休みなさい
◇千駄ヶ谷
ここは東京、将棋会館。
己の全てを賭けて、選ばれし天才達が競い合っている。
事務「C級2組の方はこちらですー」
QB「トップ3に食い込めばひとつ上のクラスに。負ければフリクラ行き(※)だ」
※魔女の結界のこと。
ほむら「さあ、勝負よ!」
永瀬「参りました」
佐藤「負けました」
千田「ありません」
田中「参りました」
岡崎「負けました」
長岡「ありません」
新人王、暁美ほむら。破竹の勢いはとどまる事を知らず。
軽妙な捌きと残忍な盤外戦術で次々と強敵を屠り、C級2組を一瞬で通過した。
ほむら「次の戦場はC級1組ですって」
QB「今度は三十数人を相手に上位二名になるんだ!」
近藤「参りました」
船江「ありません」
中村「負けました」
宮田「ありません」
金井「負けました」ウィーン
佐々木「参りました」
暁美ほむら五段。勝率8割4分7厘。棋士番号315。
光速の指し回しと攻撃に特化した戦形を好むことから『見滝原のイナズマ』と呼ばれた。
ほむら「B級2組よ!!」
QB「二十五人を相手に上位二名を目指すんだ!」
野月「参りました」
北浜「負けました」
森下「ありません」
戸辺「参りました」
鈴木「負けました」
この大型新人の登場に棋界は震撼した。
暁美ほむらは史上最年少棋士として歴戦のプロ棋士相手に猛威を奮ったのだ。
島朗「あ、ありません」
ほむら「やったあ!」
島朗「この指輪は……?」
ほむら「記念にどうぞ。あと次からソレつけて対局してください」
QB「申し訳程度の回収ノルマ設定は生きてるからね」
◇
さやか「今日もほむら休み?」パチ
マミ「残念ね……」パチ
まどか「うん……少し寂しいな」
QB「だったら僕とけいy」スパーン
マミ「キュゥべえ!?」
ほむら「久しぶりね。まどか、その他」
ほむら「今日はその……」
さやか「?」
ほむら「実は……プロ棋士になったの!」
マミ「!!」
まどか「!?」
ほむら「私が名人になったら、今度こそ本当の将棋の指し方を教えてあげるわ!」
さやか「えー。冗談でしょ」
ほむら「本気よ! それじゃ今日も大事な試合だから早退するわね!」タッタッタ
さやか「プロ棋士? 何でまた急に……?」
マミ「途轍もない才能だったからキュゥべえに紹介してあげたの」
まどか「あのほむらちゃんが……意外と簡単なのかな」
QB「彼女は影で大変な努力を積んだからね。当然だと思うよ」
QB「毎日将棋の研究をして、深夜まで集中力を維持する。それが将棋指しだ」
マミ「棋士の多くは都内のスポーツクラブで体力づくりしてるのよ」
まどか「ええっ!? 意外!!」
さやか「あたし達には向いてないなあ」
◇
ほむら「打って変わってB級2組後半戦よ!」
稲葉「ありました」パチ
高橋「律っちゃん。マミさん。ラブライバー」
ほむら「……」ゾクッ
先崎「歩が足りないんだよ」
豊川「まにあわじ」
ほむら「よし、なんとか一位通過だわ!」
QB「ついにB級1組に昇級だね……これは差し入れのグリーフシードだよ!」
マミ「差し入れの紅茶とケーキよ!」
織莉子「差し入れのクッキーよ!」
さやか「差し入れの消火器だよ!」
まどか「差し入れはとくに無いよ!」
ほむら「ありがとう! この調子でごぼう抜きするわ!」
◇ほむホーム
QB「深夜遅くまでお疲れ様。首尾はどうだい」
ほむら「B級1組……B級グルメと同じで個性的な棋譜ばかりね」パラパラ
ほむら「普通に実力が出せれば1組も突破確実でしょう」ペラペラ
QB「楽観視は出来ないよ、暁美ほむら。B級2組で9勝2敗。2回も負けてしまったんだ」
ほむら「2敗とはいえトップの成績よ、これ」
QB「本音を言えば、全勝が望ましかった」
ほむら「どーゆーこと?」
QB「この程度では、B級1組は突破できないんだ」
ほむら「……何故決め付けるの?」
QB「A級に近づくにつれて、羽生世代が猛威を奮うんだ」
ほむら「羽生世代?」
QB「佐藤、丸山、藤井、森内、郷田、村山くん、(先崎)のことだよ」
QB「彼らは、羽生世代。羽生以外を狩る者たちさ」
書き直すべき部分があったのでここまで
A級でトップになると名人と戦えるらしいです、お休みなさい
将棋は現名人がチート過ぎるからな……
そして高橋名人にクソワロタwwww
ニッチなネタが続きます
>>55
コピペ伝説程度には知ってたんですが
ちゃんと調べてみて初めてその凄さに気づきました
ほむら「聞いたことないわね」パラパラ
QB「とにかく物凄いんだ! 直観、体力、経験、大局観、何もかも突出している」
QB「羽生世代に食らいつく若手筆頭もB級1組に集結してて付け入る隙が無いんだよ」
ほむら「だからこうして棋譜を見てるんでしょ」パラパラ
QB「君含めた13人全員の棋譜を見て気づいたことはあるかな……?」
ほむら「え? みんなすごいなって……」ペラペラ
QB「じゃあB級2組に居たとき、どんな戦型が多かったかな?」
ほむら「えっと……」
ほむら「まず私が飛車を振るでしょ」
QB「どこに?」
ほむら「向かい飛車、三間飛車、四間飛車、中飛車、何でもありよ」
QB「そのときの相手側はどんな感じだった」
ほむら「舟囲いで右の銀を上げてきたり、穴熊だったり、穴熊だったり、穴熊、穴熊、穴g」
ほむら「他には穴熊、穴熊……ぁ一人だけ端攻めばかりする早石田が居たけど、概ね穴熊ね」
QB「大介以外は全員居飛車党だ。その理由は分かるかい?」
ほむら「振り飛車は左桂の活用が難しいからよね」
ほむら「後、飛車を振る分の一手損が終盤響くわ」
QB「だから不利飛車なんだよ! 今こそオールラウンダーに転向するんだ!!」
QB「この先にいる不利飛車党は3人だけ!!! 既に時代遅れなんだよ!!!!」
ほむら「3人も居れば十分だわ」
QB「ほむら抜いたら2人だ」
QB「ただでさえ不利飛車。さらに傾向分析されるパターンでこの先生きのこれないよ!!」
QB「いつまで藤井システムと中田XPに縋るんだい!?」
ほむら「言われてみればワンパターンだった……ような」
QB「だから事前に研究されて返り討ちにあったんだ」
ほむら「なるほど。居飛車、振り飛車、両方指せれば事前対策は困難ね」
QB「そこで今から居飛車の勉強をしてもらう」
ほむら「でも難しいんでしょー?」
QB「基本は簡単。囲って飛車先を突破するのが居飛車党のやり口だ」
QB「居飛車の戦法は大体3種類。矢倉、横歩取り、相掛かり、だね」
QB「横歩、相掛かりは超急戦で一手間違えると即死するんだ」
QB「矢倉は持久戦。定跡研究と深い読みが勝敗をわけるんだ」
ほむら「持ってて良かった羽生の頭脳」
QB「残念だが……その本の定跡は当時のものだ。今のプロには通用しにくい」
ほむら「え。結構使えるのに」
QB「定跡は生き物なんだ。次から次へと変化していく」
QB「そしてプロは全員『頭脳』を全巻暗記している。当然だよね」
QB「だから今から最新形を学んでもらうよ」
ほむら「今から!?」
ティロティロティロティロ…
QB「お、着信だね」
ほむら「ねえ……これ」
QB「ティロフォンさ。さあ出たまえ」
ほむら『もしもし。どちらさま』
マミ『あ、暁美さん。久しぶり。そ、その元気?』
ほむら「……巴マミだったわよ」
QB「今からマミ(居飛車党)と七番勝負をしてもらう」
QB「ほむらには居飛車三大戦法を先後で持ってもらうよ。最終局は角換わりだ」
QB「勿論、目隠し将棋。持ち時間は各30分だ」
マミ『あれ? もしもーし! 聞こえてるー?』
QB「はやくやりなよ。電話代が勿体無いじゃないか」キュップイ
マミ『暁美さんは目隠しプレイは初めて?』
ほむら『ええ。お、お手柔らかに……』
マミ『私もよ。少しドキドキしてる……に、2六歩』
ほむら『8四歩でいいのよね』
マミ『ふふ。早く慣れましょう、朝まで持たないわ。 2五歩』
ほむら『んっ……8五歩』
マミ『とても上手よ、暁美さん。7八金』
ほむら『さ、3二金でどうかしら』
マミ『相してるわ。2四歩』
ほむら『夜の相掛かりは……激しく来るのね。同歩///』
――――――――
――――
…
……
マミ『お疲れ様。どうだった? 初めての、相居飛車』
ほむら『繊細で……だけど時々激しくて……』
ほむら『電話越しでシてるんだって、思うとなんだか頭が熱くなって……』
マミ『私もよ……下半身が痺れて動けなくなっちゃった』
ほむら(ずっと正座……? 体位を変えないから……)
マミ『暁美さん、意外と受けもいけるのね……』フフフ
ほむら『貴女も。手堅い攻めで、たじろいでしまったわ……』フフフ
◇
QB「夜の感想戦は終わったかな。もう朝だよ!」
ほむら「眠いー。行方不明になりたいわ」
QB「何を言ってるんだ」
QB「こうしてる時も、とんでもない才能を持った人がとんでもない努力をしてるんだ」
ほむら「ううっ。水行して気合入れなおしてくるわ……」
QB「さて、初戦の相手は誰かな」ペラッ
QB「れ、歴代最年少名人……」
ほむら「どうしたの?」ビショビショ
QB「どーするんだいこれ。物凄いペースで昇級して名人を手にした漫画みたいな人だよ」
QB「しかも中二でプロ。どこかの誰かと同じじゃないか」
ほむら「だってB級1組だもの。仕方ないわ」
◇
ほむら「B級1組! そこをどきなさい!」
谷川「居飛車ですか? 珍しいですね」ピシィィィ
ほむら「誰が相手でも容赦はしない。2五桂!」ペチッ
谷川「端を詰めて来ますか。では、これでどうでしょう」シュン
ほむら(指し手が早い……! これが光速流!)
山崎「相掛かりいける口でしたか。諦めます」
木村「神は私を見放した」
藤井「ん゙っ。強すぎです」ファンタ
豊島「隙が無いです……」
橋本「マジヤベえ」
屋敷「ええ、まあー。素晴らしいです」
谷川「もうすぐですよ。頑張ってください」
ほむら「ありがとう。貴方達も強かったわよ!」
西の皇子、千駄ヶ谷の受け師、金融ヤクザを始め、
終盤のファンタジスタ、忍者屋敷など、棋界を代表するタイトル経験者を捻じ伏せた。
10勝2敗という恐るべき好成績で、暁美ほむら七段の昇級が確定したのである。
QB「明日はついに決戦だね。棋界トップ10人での総当たり戦だ」
QB「A級順位戦で序列一位になれば、名人挑戦権獲得だよ」
ほむら「思えば遠くに来たものね。初めはエネルギー回収ノルマありきだったのに」
ほむら「将棋の魅力に憑り付かれてしまったわ」
QB「将棋のお陰でエネルギー回収効率は今期最大級だったよ」
ほむら「それは凄い……魔法少女要らずね」
QB「JCの大活躍で空前の大ブームになってるんだよ。新規開拓に大成功したわけだ」
ほむら「ブーム? 実感が湧かないわ」
QB「地上波での君の勇姿に興奮する人が急増したってことさ」
ほむら「そういえば、声掛けられる事案が増えてる……ような」
QB「僕たちの母星でも君の名前は轟いている。きっと名人になってよ、暁美ほむら」
ほむら「宇宙レベルで注目されてるの? 流石の私も緊張してきたわ」
◇
場所は千駄ヶ谷の将棋会館。
超天才達が雌雄を決するA級順位戦が行われるのである。
ほむら「A級だあああああああああ!!」
深浦「はぁーいい手ですねえ」ピシィ
ほむら「あーら、足元がお留守よ」ペチン
三浦「うーん。うーん」ペシィ
ほむら(この人将棋盤を見ないで指してる……)ペチャ
阿久津「いやーちょっと」ペシ
ほむら「あっくん。それ悪手」ペチ
QB「お疲れ様。恋愛流はどんな味だったかな」
ほむら「思い出したくない」
ほむら「うーん。深夜までの対局は堪えるわ」
森内「4戦目は私です。あ、お願いします」パチ
ほむら「何、この肩幅と眉毛……只者じゃないわ」ペチ
森内「あ、はい。受けます」パチ
ほむら「私の攻めが……切らされてる!?」ガクガク
森内「あ、王手です」バチーンバチーン
ほむら(て、鉄板で殴り殺される……!)ペチン
森内「あ、勝ちました」ベシィィィ
ほむら「な、流れは完全に森……」ガクッ
――――――――
――――
ほむら「3勝1敗。全治一ヶ月のおまけ付き。流石A級ね……」
QB「羽生世代を相手に大健闘じゃないか。予想以上だよ」
ほむら「うーん。純粋に強すぎるの。やっていけるかしら」
QB「B級1組全勝して、A級1勝8敗なんてこともあるからね」
QB「全敗の下馬評を覆しただけでも評価に値するよ」
紅一点、暁美ほむら八段は森内九段に二手差で敗れた。
だが、実践的かつ『友達を無くす』ような激辛の棋風で三連勝と好調な出だしを決める。
見滝原にこの人在り。A級の猛者達は大いに唸り、惜しくも散っていった。
ほむら「順位戦も後半戦を迎えたわ!」
行方「えー。これ定跡なんですかあ?」ビシィ
ほむら「その手は形勢不明だけど研究済みよ」ポチャ
郷田「はー、元気の良い手です」ピシ
ほむら「噂どおりの格調高い人ね」ペト
久保「一目、悪手に見えるんですが気のせいですかね」ベシ
ほむら「ここで飛車を捌くっ!」ヒョイ
佐藤「そうですねえ。ここはじっと金を引いてどうですか?」ピシッ
ほむら「ち、緻密すぎる……隙がない……」ペチ
緻密流との253手にも及ぶ熱戦を制し6勝2敗と好成績。1位タイに躍り出た。
最終戦を前にして名人挑戦は森内九段、暁美八段に絞られている。
◇将棋界の一番長い日(※)
※
A級順位戦最終日のこと。
ほとんどの対局が日付をまたぐことから別名、ワルプルギスの夜と呼ばれている。
三浦「おはようございます」
佐藤「おはようございます」
カラっと晴れた寒空の下、棋士達が神妙な面持ちで挨拶をする。
TVクルーを横切り、将棋会館の対局室に消えていく。
ほむら「おはよーございます」
開始七分前、暁美ほむら八段が駆け込む。これで十人全員の棋士が揃った。
A級順位戦最終局。名人挑戦と降級二名が決まる運命の日だ。
「9時になりましたので、これよりA級順位戦を開始します」
森内九段、暁美八段が共に勝つか負けた場合、
この二名でプレーオフが行われ挑戦者を決定する。
暁美が敗北し、森内が郷田九段に勝利した場合、挑戦者は森内九段となる。
暁美八段は渡辺二冠に勝利することが絶対条件であった。
しかし相手は無双の二冠。
永世竜王の資格を持つ、棋王・王将の現役タイトルホルダーである。
棋界最強の一劃、魔太郎が暁美ほむらに立ち塞がった。
◇特別対局室
ほむら「私のターン!」ベチ
渡辺「あ、噂は聞いてますよ。お手柔らかに」ピシ
序盤。魔太郎は角換わり腰掛け銀を選択した。
指し手は進んで行く。39手目、暁美ほむらは静かに歩を進ませる。
ほむら「……そろそろ仕掛けるわよ」ペシ
渡辺「取って取ってバラバラにして、飛車、銀でどうするの?」ビシ
ほむら「流石の早見えだわ。でも負けるわけにはいかない!」ペチ
渡辺「ここで桂馬跳ねたら?」ピョン
ほむら「何これ!! 私の攻めにカウンターしてきた!?」
ほむら「こ、こうよ。こうしてこうして……」ペシペシペシ
暁美ほむらの『刺し回し』に魔太郎は飛び上がった。
87分の長考の末、暁美八段は銀の犠打で局面を収める奇手を放って来たのだ。
魔太郎の顔色がみるみる変わっていく。
渡辺「いやーこれはマズいっすねえ」ピシ
ほむら「参ったと言いなさい」ペシィ
魔太郎は文字通り刺されていた。手番が巡ることなく攻め潰されていたのだ。
後手側の駒は既に根絶やしにされている。
魔太郎の駒台には使われることの無い金駒(かなごま)で溢れていた。
魔太郎は暁美ほむらの▲3四角成を見て項垂れる。
ほむら「やったわ!」
日付の変わった午前1時53分。
17時間の死闘を制したのは暁美ほむら八段だった。
「161手を持ちまして、暁美八段の勝ちです」
対局室に記者が大勢入室してきた。隣では対局中の深浦九段と久保九段が呻っている。
棋界に現れたイレギュラーにフラッシュが引っ切り無しに焚かれ、シャッターが切られた。
記者らは我先にとマイクを差し出し、次期名人候補の言葉を聞き漏らすまいと躍起になっている。
――史上最年少で名人挑戦を決めましたが。
「そうでしたか。感無量です」
――どこらへんで勝利を確信しましたか。
「自玉に詰みが無いとわかったときでしょうか。銀を引いた辺りです。際どい勝負でした」
――相手は羽生名人ですが、どんな印象をお持ちですか。
「桁違いの強さですが、勝てない相手ではないと思います」
暁美八段は疲れを見せながらもにっこりと笑う。
自信に満ちた素晴らしい笑顔と勇敢な発言を前に、記者達は大いに沸いた。
ここまで
次回はタイトル戦です
◇将棋会館 桂の間
QB「君が活躍すればするほど、ニュースを見た人間の感情が揺れ動く」ペラッ
ほむら「あなた達の作戦通りね」
QB「名人戦は是非とも勝利して宇宙を救ってほしい。期待してるからね」
ほむら「ええ。全力を尽くすわ」
QB「名人戦の次はN○K杯がある。この棋戦にも出てみよう」
QB「地上波だから更なる感情エネルギーが回収できるよ」
ほむら「羽生を倒せば出る必要はないのでしょう?」
QB「それはそうなんだけど……」
QB「羽生名人……彼は別格だ……」
ほむら「……わかってる」
ほむら「今出来ることは決戦に備えて疲れを取ることだけよ」
QB「うん。存分に休むといい」
ほむら「Zzz……」
QB(レート上、羽生は棋界最高峰の郷田、豊島、渡辺、森内相手に勝率7割以上)
QB(しかし現実にはA級棋士への勝率は8割以上を保っている)
QB(暁美ほむらでも5回に1回入るかどうか……)
QB(その分、得られる感情エネルギーは宇宙に大きく貢献しうる……だけど)
QB(一方で、4タテを喰らって終了の可能性も大いにある)
QB「名人になる前、直近3年間の羽生のA級での勝率は0.926(25勝2敗)だ」
QB「くっ……僕たちインキュベーターは、無謀なことをしてたのかもしれない……!」
◇東京駅
羽生「あっ、どうも。えー、明日はよろしくお願いします」
ほむら「は、ぜ、全力で戦えるように頑張りますっ!」
羽生「えぇえぇ、楽しみにしてます」
ほむら「この人が……羽生。一度具現化するだけで数百の棋士が犠牲に……」
QB「得意戦法を好き放題に指させて、フルボッコに返り討ちする」
QB「それが棋畜眼鏡。羽生名人だ」
羽生「♪」
ほむら(なんだか嬉しそうね)
QB「なんか経験値多そうなやつが来たな、位にしか思われてないだろう」
ほむら「あのおっさんが宇宙で一番強いのよね。信じられないわ……」
QB「つまり彼を倒すことで宇宙一のエネルギーが得られるのさ」
加藤一二三九段「けん検分、検分があり、ありますので検分がそこで検分がですね。その17時から検分で」
◇前夜祭
「ありがとうございました。続きまして挑戦者、暁美ほむら様のご挨拶です」
「皆様、改めましてこんばんは。このような素晴らしい場所で対局出来ることに感動しています。
明日は、自分なりに最大限の実力を出して、力いっぱい頑張ろうと思います。また、主催して下
さったスポンサーの方々、地元関係者の方々、何よりも将棋ファンの方々に楽しんで頂ければ
幸いです。本日はありがとうございました。明日もどうぞよろしくお願いします」
ほむらは対局者歓迎パーティを終え、対局会場のホテルで静かな夜を過ごした。
翌日の対局は羽生名人の先手番。午前9時から行われる。
持ち時間は各々9時間。ほむらにとって二日間に及ぶ棋戦は未知数だった。
◇名人戦七番勝負第1局
ほむら「お願いします」
羽生「あ、よろしくお願いします」パチィン
対局開始。羽生の初手は▲7六歩。
ほむら「こ、こんなに冷酷な▲7六歩は初めてだわ」ガクガク
羽生「えー。まあ、はい……」パチッ
■羽生名人(王位・王座・棋聖)
タイトル戦登場118回。計88期。棋戦優勝は42回。
竜王6期・名人8期(十九世名人)・王位15期(永世王位)
王座21期(名誉王座)・棋王13期(永世棋王)・王将12期(永世王将)・棋聖13期(永世棋聖)
最優秀棋士選出(史上最年少)
史上初の七冠同時達成、通算1000勝達成(史上最速)、史上初の「永世六冠」
通算タイトル獲得数歴代1位、名誉N○K杯選手権者(史上初・永久シード権)
最優秀棋士賞19回(歴代1位)、最多対局賞12回(歴代1位)、最多勝利賞14回(歴代1位)、
勝率第一位賞7回(歴代1位)、連勝賞5回(歴代1位)、名局賞5回(歴代1位)、
賞金王19回(対局料獲得額 1億円超15回)
ほむら「居飛車でどうですか」パチ
羽生「ええ、ええそうですね。お任せします」パチ
今朝の東京は曇天。午後からは雨が予想されている。
対局室の窓。晴れの日には富士山が見える。
羽生「そろそろ外しますよ」バチーン
ほむら(ここで▲9六歩!? なんてプレッシャーなの)パチィ
■暁美ほむら八段
2001年X月XX日生まれ。2014年、アマ棋戦規定により三段リーグ編入。
美国久臣九段門下。2014年、四段。2014年、八段。棋士番号は315。
タイトル戦登場1回。棋戦優勝は1回(新人王戦)。歴史上初の女性プロ棋士。
羽生「あー。うーん。厳しいですねえ」パチ
ほむら「狙いがまるで見えてこないわ」パチ
羽生「ええ、えええ、はあ。そうですね、▲4六銀が良さそうです」パチィ
■羽生名人(王位・王座・棋聖)
その他の主な記録
A級以上棋士の年間勝率 0.8364(歴代1位)、順位戦通算勝率 0.7919(歴代1位)
A級順位戦21連勝(歴代1位)、同一タイトル連続獲得 19期(王座 1992-2010)(歴代1位)
全棋士参加トーナメント棋戦で4連覇(将棋・囲碁を通じて史上初)
デビュー以来、28年間連続年度勝率6割以上(前人未到・継続中)
*羽生の本年度成績は19勝3敗(0.864)
*勝数ランキング1位、勝率ランキング1位、対局数ランキング2位
*通算成績は1287勝492敗(0.723)
■暁美ほむら八段
その他の主な記録
タイトル挑戦最年少記録14歳Xヶ月。
暁美八段が前傾姿勢で小刻みに揺れている。
超集中モードに入って読み切るつもりだろう。
「足りるかどうか微妙です。一回、端を詰めてから仕掛けたいところです」【小林七段】
ほむら「9筋に圧力をかけましょう」スッ
羽生「いやぁ難しいです」パチ
ほむら「△5七歩成▲同角△7七桂成▲同金△5六歩▲7九角に△4四角で崩れるわ」パチパチ
羽生「ええ、ええ。ここは角を逃がさずにこうすると受かるんです」パチ
ほむら「せ、攻め合い!?」パチパチ
羽生「はい。まぁ、ここは当然の一手です」ピシ
ほむら「我慢の一手。凌げるかしら……」パチ
羽生「ええ。そこは、えー。詰めろ逃れの詰めろがあります」ベシ
攻防の要所に銀を打ち込んだ。
これが厳しく、一番攻めが早い。
「これはハッキリしたかも知れません。3枚の銀がよく働いています」【勝又六段】
ほむら「ひ、ヒモが外れた……。攻め切れない……!」
羽生「あ、詰んでます」パチン
ほむら「嘘……」
羽生「ええ。ええ、ええ」
77手目、羽生名人の手が震えた。
ここから先の変化は一直線。控え室では読み抜けが無いか検討している。
指し終えた羽生名人が離席すると、暁美八段は頭を抱えてため息をついた。
……
…
ほむら「……」パチ
羽生「……」パチ
110手目、暁美八段は水を飲み、駒台に手を乗せ投了の意を伝えた。
暁美ほむらは成す術も無く、気づく間も無く倒れていた。
◇名人戦七番勝負第2局
羽生名人に暁美八段が挑戦する名人戦七番勝負は羽生の先勝で始まった。
羽生が一気に連勝するか、暁美がタイに戻すか。
暁美は8時49分ごろ、羽生は52分ごろに対局室入り。
両者、大橋流で駒を並べる。
ほむら「こっちが先手! 今度こそ決着をつけてやる……!」パチ
羽生「はい。ではどうぞ」パチ
■本局のスケジュール
1日目
9時 対局開始
10時 午前のおやつ
12時 昼食休憩
13時 対局再開
15時 午後のおやつ
18時 封じ手手番決定
2日目
9時 封じ手開封
10時 午前のおやつ
12時 昼食休憩
13時 対局再開
15時 午後のおやつ
ほむら「……」パチッ
羽生「そーですね。なかなかの手です(笑)」パチ
ほむら「串刺しにしてやるわ」ペチ
ほむら「すかさず飛車で銀を釘付けよ」スッ
羽生「あーいい手ですねー。なるほどぉー」ピョン
ほむら「Qxc3 Qg5、g3 Qh5でどうかしら」
羽生「いやー素晴らしいですね」パチッ
控え室では継ぎ盤を使って検討するが、指し手が全く当たらない。
ここ数手で暁美八段が盛り返したか。
「羽生さんの趣味はチェスです。仏GM相手にチェスの定跡を書き換えました。
全日本チャンピオン(当時)が胃痛で寝込むくらいお強いです」【永瀬六段】
ほむら「王手よ」ペチャ
羽生「え、え、え~。いやぁーちょっと自信ないですね」バシッ
ほむら「角のただ打ち。取ったら詰み、取らなければ龍が死ぬことになるわ」パチ
羽生「……負けました」
羽生名人の猛攻に暁美八段が喰らいついた。
これで1勝1敗の振り出しに戻った。第三局はあすなろロイヤルパークホテルで行われる。
◇名人戦七番勝負第3局
本局も一コ二コ生放送及びUscreamにて13時からライブ中継が行われる。
解説は立花宗一郎七段、聞き手は神名ニコ女流三段が務める。
福崎「羽生名人の封じ手は▲4八飛、です」ペラッ
羽生「……」スッ
ほむら「二日目よーいドン」パチパチ
羽生「そう来ますよねえ」パチッ
本局に使用されるのは掬水作水無瀬書の盛上げ駒。
盤・駒ともに東京・将棋会館から運ばれたものだ。
羽生「お互い、手堅く指しましょうか」パチ
今期は第1局を羽生が先勝。相矢倉を目指した。
先手の羽生が早めに▲4六銀と上がる凝った序盤になる。
終盤は羽生が角取りを手抜き、鮮やかな勝利を挙げた。
第2局も同様の進行。先手の暁美は矢倉穴熊に組み換える。
一日目は駒組で終了。本格的な戦いが始まったのは二日目14時。
暁美の実践的な攻めに羽生玉は屈した。
ほむら「飽和しきった局面ね。今日は松尾流穴熊に組み替えましょう」パチン
羽生「松尾流は、えー反則です。組まれる前に牽制します」パチ
午前のおやつ。
先手の羽生はアイスレモンティーとチョコレートケーキを選択。
前日から予告はされていたが意欲的な指し回しだ。
対する後手の暁美はホットコーヒー。
アマチュア間でもよく見られる手だが、指されてみると自然な一着である。
「お互いに手を消しあう将棋です。先に網を破られた方が負けます」【藤井九段】
天気が回復し、窓からはあすなろ市内が見えている。
終盤に近づくにつれて、検討陣の指し手があたるようになってきた。
ここまでの消費時間は▲羽生8時間31分、△暁美8時間54分(持ち時間各9時間)
ほむら「形勢は逆転したわ!」パチ
暁美は前傾姿勢。羽生の背中はピンと伸びている。
羽生「……!」パチ
羽生がしきりに水を飲む。
控え室では暁美の勝ち筋がいくつも検討されていた。
ほむら「これでチェックメイト。貴方の負けよ!」パチン
まで128手で後手の勝ち。
暁美挑戦者が今期シリーズ2勝目を挙げた。
◇名人戦七番勝負第4局
ほむら「角交換型だし▲9六歩で早繰り銀を匂わせておくわ」パチィ
羽生「今日は腰掛け銀にしませんか」パチン
羽生名人の昼食はマルゲリータピザとバニラアイスクリーム。
暁美八段はうな重(松)で羽生の軽食を咎めにいく。
ほむら「ここで▲2五桂よ。前例は2局、どう戦うの?」パチパチ
羽生「相腰掛け銀を先手から打開してきましたか」ペチ
控え室では継ぎ盤が用意され、棋士達が検討を始めている。
▲6四角△9二飛▲6五歩は△6三銀▲5五角△5四銀▲6六角
△7三桂▲7六銀△6五銀▲同銀右で先手やや指しやすい。
羽生名人は目を閉じて長考に入る。
羽生の注文したアイスクリームは溶けきっている。
羽生「えー玉を上がって攻めを緩和します。次善手ですが咎められますか?」パチッ
羽生がアイスクリームを飲み干す。暁美八段の指し手が止まった。
ほむら「の、飲んだのね」パチ
羽生「ええ、勿体無いので(笑)」パチ
ほむら「ふ、ふーん……」ペタ
暁美八段は冷えピタを頭頂部に貼り出す。前例は丸山八段の1局のみだ。
羽生は右手を頭に当て、じっと暁美を睨み付けている。
それを見た暁美は冷えピタを口にも貼った。羽生の肩がビクンと震えた。
羽生「いやいやいや」パチ
ほむら「モジュモジュ」
ここで羽生名人が投了。暁美八段が名人に王手をかけた。
羽生は先手を持ってのカド番を迎える。第5局で巻き返せるか。
:::::::: ┌─────────────── ┐
:::::::: | また羽生が負けたようだな │
::::: ┌───└───────────v───┬┘
::::: | ククク…奴は羽生の中でも最弱… |
┌──└────────v──┬───────┘
| 暁美ほむらに3敗するとは |
| 羽生の面汚しよ │
└────v─────────┘
|ミ, / `ヽ /! ,.──、
|彡/二Oニニ|ノ /三三三!, |!
`,' \、、_,|/-ャ ト `=j r=レ /ミ !彡 ●
T 爪| / / ̄|/´__,ャ |`三三‐/ |`=、|,='| _(_
/人 ヽ ミ='/|`:::::::/イ__ ト`ー く__,-, 、 _!_ / ( ゚ω゚ )
/ `ー─'" |_,.イ、 | |/、 Y /| | | j / ミ`┴'彡\ ' `
羽生王座 羽生王位 羽生棋聖 羽生名人
ここまで
次回羽生のリミッターが外れます
久々に荒巻氏が仕事したと聞いて避難所に逃げてました
メモリ大増設お疲れ様です
投下
◇将棋会館 桂の間
「暁美さんの指し回しには感心しました。
羽生さん相手に少しのリードを守り切る力強さが際立ちます」【スライス秋山七段】
「飛車先が軽くなったとき、少しよくなったと思った。夕方頃には勝ちを確信した」【暁美八段】
「予想していなかった作戦で、冷えピタを見て苦しくなった気がした。
口にも貼るとは思わなかったので度肝を抜かれてしまった」【羽生名人】
ほむら「みてみて。新聞に載ってるわ。ちょっと嬉しい」
QB「女性名人誕生も近いね!」
羽生「あー、ええ、ええ。暁美さん、強すぎです(笑)」
ほむら「羽生さんだわ! こんばんは!」
羽生「次からは本気で相手しますので、そのつもりで」ニコニコ
ほむら「は、はい!?」
QB「何を言ってるんだ。羽生は常に全力だろう?」
羽生「ええ、ですから勝負に徹するということです(笑)」
ほむら「羽生さんの本気……わくわくしてきたわ!!」
QB「どこかの元王位のようにはいかないよ。彼女は本当に強いんだ」
羽生「ええ、だからこそ本気なんですね。ええ(笑)」
広瀨「……」
◇名人戦七番勝負第5局
羽生「ええ、えええ。ええええ。お願いします」パチ
ほむら「……」パチ
定刻午前9時、対局開始。
カド番に追い込まれた羽生名人の先手番。
羽生「ええ、そうですねえ」パチ
ほむら「……」ゾクッ
■羽生名人(王位・王座・棋聖)
1985年、四段。1994年、九段。棋士番号は175。
タイトル戦登場118回。計88期。棋戦優勝は42回。
竜王6期・名人8期(十九世名人)・王位15期(永世王位)
王座21期(名誉王座)・棋王13期(永世棋王)・王将12期(永世王将)・棋聖13期(永世棋聖)
と、ここまで書いて頭がクラクラしそうになる。
天才中の天才達が1つのタイトルを求めて四苦八苦するのが普通なのだ。
ほむら「オーラがまるで違うわ……」パチ
ここまでで羽生一勝、暁美三勝。
齢14の暁美が名人位に就くことはタイトル奪取以上に重い意味がある。
羽生「えええ、えええええ。勝ちに徹してますから(笑)」パチ
羽生名人は横歩取りを誘導し、暁美八段が受けて立った。
棋士の先手横歩取り平均勝率は53%。対して羽生の勝率は80%近い。
ほむら「これが……羽生の本気!!」パチ
羽生は全ての戦型が8割前後の勝率を誇っている上、横歩取りは更に頭ひとつ抜けている。
A級、タイトル挑戦者相手に前人未到の勝率を保持し続けている羽生。
本局を確実に決めに来た。羽生マジックなるか。
羽生「こうですね」パチ
ほむら(とても強いわ……深く読んでもその遥か先を見透かされているよう)パチ
四段当時、鬼神のような攻め手で『見滝原のイナズマ』の異名で恐れられた暁美ほむら。
棋界に新風をもたらし、谷川の再来とまで言われた。
彼の光速流に肖(あやか)り、今では『時間停止流』と讃えられている。
ほむら「押されている……」パチン
羽生「ええ、そうでしょうね。わかりませんけど(笑)」パチ
羽生が仕掛けた。ゆったりとした手つきだが、指し手は一番激しい。
超天才オールラウンダーが時間停止流に牙を剥く。
ほむら「……むう」パチィン
世代交代が注目視される第5局。
大盤解説会場には入りきらないほどの観客が殺到していた。
羽生「攻めが切れましたよ。この手をどうかわしますか?」パチ
ほむら「む、無理です」フニャー
暁美八段、無念の敗北。これは投了やむなしだ。
羽生名人、念願の二勝目。圧倒的な強さで暁美八段を破った。
◇名人戦七番勝負第6局
しとしと冷たい小雨が降る中、暁美八段が対局場に姿を現す。
数分後、羽生名人が現れ、お互い神妙な面持ちで軽く会釈をした。
このまま暁美八段が勝つのか。それとも第7局まで縺れ込むのか。
羽生「私の後手ですね」
ほむら「前回、羽生マジックは出しませんでしたね?」
羽生「ええ、ええ。偶々です(笑)」
ほむら「後悔しますよ」
対局開始。暁美はじっと水を口に含んだ。
ほむら「本気の時間停止流を見せてあげる」パチッ
暁美八段が指し終え、おもむろに席を立つ。
羽生名人は二、三小さく頷いた。
羽生「これは、うーん。ええ?」
暁美八段の初手は▲7六歩
▲5六歩▲7七角▲8八銀▲2六歩▲2五歩
▲4八銀▲7八金▲6九玉▲5八金▲3六歩
▲3七桂▲1六歩▲1五歩▲9六歩▲9五歩
「これは後手まずそうです」と大盤解説の真田七段。
暁美八段はたった一手で勝ちを引き寄せた。
羽生名人は65分の大長考の末に初手△3四歩。角道をあけた。
ほむら「さあどうするの? 降参するなら今のうちよ」パチ
羽生「ええ。勝ちます。意地でも(笑)」パチ
羽生の選択は△7七角成。十六手損角換わりを採用した。
前例は谷川-暁美戦の一局のみ。谷川九段は光速の指し手で時間停止流を仕留めた。
羽生「ええー、8筋は守りきりますよ」ペチーン
ほむら「羽生……恐ろしい子!」パシ
羽生「ええ、ええ」バシ
羽生は嬉しそうに長考している。
無理も無い。後の定跡になる戦いが今始まったのだ。
控え室には森内九段、渡辺二冠、郷田九段など錚々(そうそう)たる顔触れだ。
暁美八段の意表を突いた初手に若手棋士が検討を続けている。
「これは反則では無いんですか?」と増田六段。
「相手の番ではないので意外と大丈夫なんですよ」と淡路九段が一蹴。
将棋の概念を覆しかねない実践的な一手。時間停止の本流ここにありと言ったところか。
「時よ止まれ、汝は如何にも美しい。
そういうわけで、今から競艇場に9-5の一点買いに行ってきます。」【itumon】
羽生「これでどうでしょう」パチッ
ほむら「くっ! 盤上の駒が霞んで見える……」パチィ
羽生「ええー、はい、いい手です」パチィィ
読み筋通りとばかりに香車を打って羽生は席を外す。
角道を封鎖し、玉頭に厭味を付ける。味の良い一手だ。
暁美はあぐらの姿勢に崩した。
羽生名人の昼食はビーフカレーとグレープフルーツジュース。
暁美八段の昼食は玉子とじうどんとマテ茶。(七味もついている)
昼食の形勢は互角だ。控え室では先手持ちがやや多い。
グレープフルーツジュースが程好く働いている。
ほむら「と金でじりじり寄って間に合えばいいけど」パチ
羽生「これはしょうがないんですねえ。耐えるしかありません」
羽生は眼光鋭く盤面を見つめている。
83手目▲5一角で消費時間は▲暁美1時間51分、△羽生8時間3分(持ち時間各9時間)
「とても後手を持って指しきれるとは思えない」【阿久津八段】
通常の棋士が一手指す間に、二手、三手と進む激辛流が続く。
暁美駒の練度は一味違うのだ。
「実践的かつ非情な指し回しですね」と中村六段。控え室では深いため息が上がった。
羽生「どうぞ」パチ
「おおっ」と声が上がる。
控え室で検討されていなかった会心手。意表の△6八角打だ。
ほむら「何これ……。タダじゃないの……?」
羽生「ええ、えぇええぇえぇ。タダです(笑)」
ほむら「これは、取ると頓死(※)しそうね」ヒョイ
※詰み筋に入ってしまい、自玉が詰んでしまうこと。
羽生「ええ、えええええ取ると21手詰み。取らなくても△7七桂で必死(※)がかかります」パチ
※次に何をしても自玉が詰まされてしまうこと。
ほむら「羽生玉はゼット(※)……。ま、負けてる!!」
※絶対に詰まない……の略。
暁美ほむらは大優勢と思われた局面で羽生マジックに敗れた。
感想戦での検討ではなんと初手のうち▲1六歩▲1五歩▲9六歩▲9五歩
が疑問手では無いか、と羽生名人が指摘した。
暁美八段は大いに頷き▲1五歩▲9六歩▲9五歩の代わりに玉を囲っていれば互角だったと結論を出す。
つまり検討陣は皆、初めから形勢を見誤っていたことになるのだ。
わずか十数手で未知の局面に入る将棋の奥深さに感心する。
と同時に、その局面を容易く評価してしまう二人の大局観には脱帽せざるを得ない。
◇名人戦七番勝負第7局
名人戦七番勝負もいよいよ最終局。
羽生名人が勝って防衛となるか、暁美ほむら八段が初タイトルを獲得するか。
今後の棋界を占う意味でも大きな一番となった本局は「ホテルニューウメス」で行われる。
立会人は谷川九段、記録係は中沢初段(故・佐倉九段門下)
観戦記者は劇作家でお馴染み、虚淵さんだ。
8時30分過ぎ、まず暁美が姿を見せて天を仰ぐ。いささか早めの入室といえる。
羽生は50分過ぎの入室。こちらは名人の貫録だ。
ほむら「泣いても笑ってもこれが最終局!」
羽生「えええ、ええ。全力で(笑)」
中沢「振り駒の結果、先手は羽生名人でお願いします」
羽生「はい、お願いします」パチ
ほむら(羽生名人が先手……これは頂けないわね)パチ
羽生「はー。振ってきましたかー。昔の暁美さんらしいですね」パチ
ほむら「暁美流ダイレクト向かい飛車の真髄を味わいなさい」パチ
羽生「へ↑え↓」パチ
ほむら「戦場を二箇所に増やすわ」パチ
羽生「ここは飛車を回って受けてどうか、という感じです」パチ
ほむら「その隙を見て私はこっちを攻める!」スッ
羽生「ここも回って受けるしか……!」パチ
ほむら「ふふふ、気づいたようね」ペチ
羽生「いやー、参りました。素晴らしい戦術です(笑)」パチ
ほむら「……」パチ
羽生「……」パチ
ほむら「……」パチ
羽生「……」パチ
ほむら「……」パチ
羽生「これは打開できないですか……」パチ
ほむら「繰り返す。私は何度でも繰り返す」バシィィィィ
谷川「千日手(※)が成立しましたので。えー、30分後に先後入れ替えて指し直しになります」
※全く同じやり取りが4回繰り返されること。
「なんだかゾクゾクします」【伊藤五段】
「大好物です」【永瀬六段】
関係者が忙しなく動いている。もちろん指し直しの準備のためだ。
羽生名人は千日手成立の局面を見つめて首を捻っていた。
暁美八段はおもむろに水とカロリーメイトを取り出し、もぐもぐ頬張っている。
大きな扇子も忘れない。丸山流盤外戦術で羽生を揺さぶった。
ほむら「私の先手ね」
羽生「いやいやいや、面白くなりました」
谷川「それでは暁美八段の先手で始めて下さい」
ほむら「時間停止……」カチッ
ほむら「一手で十手よ!!!」パチパチパチパチ
羽生「」
谷川「」
灰色に停止する世界で、ほむらは呉流超速4八銀戦法を宣言した。
暁美八段、注目の初手は▲7六歩――
△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金
▲2四歩△同 歩▲同 飛△8六歩▲同 歩△同 飛▲3四飛
△3三角▲3六飛△2二銀▲8七歩△8五飛▲2六飛△4一玉
▲4八銀△6二銀▲3六歩△5一金▲3七桂△7四歩▲3三角成
△同桂▲3五歩
ほむら「!?」
羽生「ええ、ええ。所謂キリカスペシャルは後手側に有力な対策があるんですよ」
ほむら「……」
暁美は俯いて考え込んだ後、席を外した。気持ちを整理するためだろう。
ここまでの消費時間はお互いに0分。
ほむら「失礼したわ」パチ
羽生「まあ、そうですねえー。プロ間では滅多に見ないので驚きましたけど(笑)」パチ
ほむら「この構え……敢えて新山崎流を誘導していたのね」パチ
羽生「ええ、えええ。面白そうなので」パチ
羽生名人の昼食は天ぷらうどん、おにぎり2つ (七味もついている)
暁美八段の昼食はかき揚げそば、おにぎり2つ (七味もついている)
うどんとそばで果敢に攻め合いを選択するも、相おにぎりと手厚い棋風さえ感じられた。
嬉しいことに七味はおかわり自由。かけ放題だ。
ほむら(形勢はほぼ互角。だけど、時間停止が羽生に通じない)ペチ
ほむら(崖っぷちだけど面白くなってきたわ……!)ペチ
羽生名人のおやつはフルーツの盛り合わせ(ビワを除く)
暁美八段のおやつはチョコレートとアイスコーヒーと桃10個
羽生「そちらのおやつはどうですか?」パチ
ほむら「頼みすぎた」ペチ
百江女流二級は悠々とチーズケーキをほおばっている。
この局面で全く動じていない。まるで百戦錬磨の冒険者のよう。
「とても強い指し手です。検討されていた△3三同金が掠れてきました」【豊島七段】
「時間停止を咎められてもなお、お強いのが暁美流です」【美国(織)女流初段】
羽生「はぁー、二段構えですか。やりますね」パチ
ほむら「時間停止だけに頼って勝てる相手ではないもの」パチ
控え室の見解は分かれた。変化も膨大で、もはや形勢不明である。
ただどちらかが既に倒れている。そういう局面だ。
ほむら「もう角には頼らない」ペチ
羽生「えー。そうきましたか」ビシィ
口々に驚きの声を上げる控え室の検討陣。
どう攻めをつなげるのかという局面で、暁美は露骨に角を成り捨てた。
これで寄れば話は早いが、単純な攻めで指しにくい順だ。
羽生「手が広すぎて困りました。どれも正解に見えます」パチ
ほむら(羽生よりも深く、もっと深く読まなきゃ……!)ペチ
羽生「んー。そっかーぁ」パチィ
ほむら「……」パチン
木村八段が△7二玉の早逃げを指摘している。
羽生「えええ、ええ。金は渡せません、ええ」デクシ
ここで暁美の手が止まった。モニターには、しきりに扇子をあおぐ様子が映っている。
控え室では、後手の羽生がいけそうだと言われているが、やはり変化が難解で結論は出ない。
ほむら「……」
ほむら「参りました」
暁美の突然の投了の意思表示に対して、羽生は身体をびくんと震わせ、「おっ」と声を上げた。
突然の投了に心から驚いている様子だ。そしてすぐに暁美に向かって、
この将棋は難解なまま、まだまだ続くはずだ、そして自分のほうの形勢が少し悪かったとかなり強い口調で指摘した。
山崎もすぐさま言葉を返したが、羽生の口調と表情は厳しいままだった。
数分後に関係者が大挙して入室したときには、穏やかないつもの羽生に戻っていたが、
盤側で一部始終を観ていた暁美は、終局直後の羽生のあまりの険しさに圧倒される思いだった。
羽生には勝利を喜ぶ、あるいは勝利に安堵するといった雰囲気は微塵もなく、
がっかりしたように、いやもっと言えば、怒っているようにも見えたからだ。
羽生「……」
ほむら「どの変化も深く深く読みましたがジリ貧で駄目でした」
ほむら(そもそも時間停止流を看破された以上……)
ほむら「万策尽きてます……投了やむなしです」
羽生「んー。そうでしたか。ええー」
ほむら「NH○杯でリベンジさせて下さい……」
羽生「ええ、えええ。私も楽しみに待ってます」
街の喧騒とは無縁の小部屋で名人と少女は静かに感想戦を終えた。
全局を通して羽生、暁美は完璧な指し回しを見せた。
二人の天才は今後の棋界を支える教科書を作り上げたのだ。
暁美ほむらと羽生名人の更なる飛躍に期待したい。
ほむら「キュゥべえ……私……」
QB「何、次があるさ。今はお疲れ様」
かくして名人戦七番勝負はフルセットで幕を閉じる。
対局会場すぐ傍、暁美ほむらは気の置けない仲間たちと光り輝く夜景を見ている。
「私、羽生さんに勝って見せるわ」
その顔には棋理に挑もうとするあどけない少女の笑顔が浮かんでいた。
【完】
ではでは一区切り
あと30レスほどあります
おまけ投下です
クオリティもクオンティティもおまけにふさわしいおまけ具合です
おまけ
■N○K杯編
QB「そこそこ凄かったね。名人戦から得られた感情エネルギーは」
ほむら「負けたのに、それだけ多くの人が感動してくれたの?」
QB「全国5000万のほむらファンが血涙を流したんだ。莫大な感情エネルギーが手に入ったよ」
ほむら「5000万は盛りすぎよ」
QB「5000万匹だ」
ほむら「え?」
QB「冗談だよ」
ほむら「……」
ほむら「☠」
QB「さて早指し棋戦の季節だ。N○K杯に出てリベンジしたいのだろう?」
ほむら「うー。どーやって参加すればいいの?」
QB「既に登録されているよ」
QB「でもつわもの揃いだから、勝ち抜かないと羽生名人には当たらない」
ほむら「だったら今から特訓よ、キュゥべえ」パチ
QB「一手20秒で練習だ」パチ
ほむら「こうかしら」パチ
QB「N○K杯はちょっと特殊で対局時間が極めて短いんだ」パチ
QB「だから、まず早指しは自分の得意な形に……」
ほむら「あ、ちょっと待って。まどか達に連絡しなきゃ」ワクワク
◇
――――――――
――――
まどか「嘘じゃないよ! あのN○K杯だよ!」
詢子「へー。そいつはすげーな」
まどか「うん。すげー、だよ!」
知久「どういう人が出れるんだい?」
まどか「えっとねー」
■本戦シード32名
1.前年度ベスト4(準決勝まで直接対決しないようにトーナメント表が組まれる)
2.タイトル保持者
3.永世称号呼称者(「名誉N○K杯」を含む)および順位戦B級1組以上の棋士
4.順位戦A級棋士
5.公式棋戦優勝者
6.女流枠から出場する女流棋士(1名)
7.成績優秀による選抜者
8.順位戦B級1組の棋士(補填)
まどか「ほむらちゃん八段は4に該当してるから予選無しで出れるんだね!」
詢子「羽生名人は1,2,3,4,5,7か。へー総なめだなー」
知久「彼は名誉N○K杯選手権者だから永久シード権を保持しているんだよ」
詢子「名前しか知らなかったけど凄い人なんだねえ」
まどか「ほむらちゃん八段がリベンジするんだって言ってた。見逃さないように予約しなきゃ!」
知久「32人に加えて予選を勝ち上がった18人(関東12人、関西6人)を足した50人で戦うんだね」
まどか「トーナメント戦方式……誰と当たるのかな?」ワクワク
詢子「試合は次の日曜日だろ? しっかり応援しなきゃな!」
◇
TV「~N○K杯テレビ将棋トーナメント~」ティロリー
まどか「ほむらちゃんの名前あったよ!」
詢子「おお、冗談かと思ってたがマジなんだな」
TV「本日の対局はクマー五段と巴マミ女王です」
TV「本日の意気込みをお願いします」
クマー「負けたら魔獣化だクマー。負けられないクマー」
マミ「一戦一戦、全力を出していきたいです」
タツヤ「あーい。がんぎーでがんがーん」
まどか「あ、マミ女王さんだー」
知久「この制服……まどかの先輩だね」
まどか「うん! 自慢の先輩だよ!」
◇
マミ「中住まいよ」パチ
クマー「さっそく王手だクマー」クマー
マミ「それはデコイラン」ペチ
クマー「逃げるクマー」クマー
マミ「頓死っ子の発想ね。はい、王手」パチ
クマー「負けました」
ほむら「巴マミは女王のタイトルホルダーなのね」
QB「彼女にもエネルギー回収を手伝ってもらってるからね!」
ほむら「この展開だとあの子も出てるのかしら」
QB「誰のことかな?」
織莉子「?」
藤井「あー。えー。ん゙っ、これは、そうです。そうきますか」ペチ
杏子「ガジガジ踊ってんじゃねーよ! このウスノロ!」ペチ
ほむら「やっぱり杏子だわ!」
藤井「▲8三飛打」ファンタ
杏子「どういうことだ、おい! この飛車……ただじゃねえか!」
室谷「20秒ー」
室谷「1、2、3……」
ほむら「ただやん」
QB「ただだね」
杏子「うぉぉぉぉぉぉ」
藤井(←頭を抱えている)
室谷「7、8……」
杏子「こいつ(▲8三飛)は幻覚か何かか!?」ロッソ・ファンタ
ほむら「取らなかった」
QB「取らなかったね」
藤井「飛車逃げます。よくわかりませんけど」スッ
杏子「ただのファンタかよ! おい待てコラァ!!」
マミ「あらら」
カンナ「117手を持ちまして藤井九段の勝ちとなりました」
藤井「芸術的でしょ? 笑っちゃうよね。フフッ」
杏子「いいよ、それが正解さ……」
清水「本日の対局は暁美ほむら八段と巴マミ女王です。ごゆっくら」
清水「解説は藤井錳九段です」
藤井「えー、そうですね。興味深い一局だと思います」
マミ「ごきげんよう。後手だけど頑張るわ」
ほむら「私の相手は巴マミね」オウテ
清水「あの。初手が王手ですが」
藤井「やっぱ凄いね。この人は。初手で王手だからね」
藤井「いやー惚れ惚れしちゃうね」
清水「反則っぽい気がしますが」
藤井「夢ですよ夢。我々一度は夢見るわけです。初手に王手かけたいなって」
藤井「もうね、これはね。ん゙っ、凄いことなんですよ」
マミ「同玉で別に……」ペシ
ほむら「引っかかったわね」カチッ
マミ「私の玉が中央に移動している!?」パチ
ほむら「あはは、なんてザマなの! 裸玉で私に勝てるのかしら」パチ
マミ「時間停止流……噂通りの激辛ね。だけど――」ペチ
マミ「この玉、実はリボンなのよ」シュルシュル
ほむら「!?」
マミ「本物の玉はこっち。前もって駒台に逃がしておいたの」
ほむら「し、縛られたら次の手が指せない!」ギュゥゥッ
室谷「持ち時間が無くなりましたので、これより一手30秒以内に……」
藤井「青春ですね。もう殴り合いですよ。これは強いほうが勝ちます」
◇
TV「13手を持ちまして暁美八段の勝ちとなりました」ティロリー
TV「ん゙っ。感想戦1時間もありますね。これはね、ん゙っ、大ピンチですよ」
まどか「すごーい。ほむらちゃんが勝った!」
詢子「最近の将棋は血が流れるんだな」
QB「次は準々決勝だね」
渡辺「いやあ。お久しぶりです。この前は惜しかったですねえ」
QB「ま、魔太郎!? 将棋界の三強じゃないか」
ほむら「ふっふっふ。事前研究を見せるときが来たわ」
/~~⌒⌒`\
/ /YYYYYYYヾ
|/ |
|| / \ | ///;ト,
r-─| -・=H=・- | ////゙l゙l; 6八金!6八金!
|り| ー一( )ー一'| l .i .! |
ー l 〓 l { .ノ.ノ
ヽ、____ノ / / .|
ほむら「えい」カメムシ
渡辺「なんですかそれは」パチ
ほむら「えいえい」カメムシカメムシ
渡辺「それくらい何とも無いですよ」
ほむら「えい」コオロギ
渡辺「負けました」
QB「いよいよ準決勝だね。雑展開だけど順当に勝ち上がっているよ!」
ほむら「これから当たる相手は恐らく……」
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ほむら「……の二人ね」
QB「決勝でリベンジが果たせるなんてドラマみたいだよ」
森内「あ、暁美さん。負けませんよ」
ほむら「羽生名人と戦うのはこの私」
森内「あ、お互い頑張りましょう。あ、でも私が勝ちますけど」
QB「鉄板でフルボッコにされるから気をつけて」
ほむら「あの時の傷は癒えた。絶対に負けないわ」
清水「暁美八段の印象をお願いします」
森内「あ、激辛で指しにくい相手です。序盤で突き放してくるので」
森内「戦型予想は先手なら相穴熊。後手なら飛車を振ってくるかなと。あ、でも受けて勝ちます」
清水「はい、ありがとうございます」
清水「では森内九段の印象をお願いします」
ほむら「鉄板流の名に相応しい堅い囲いが特徴の居飛車党です」
ほむら「だけど所詮鉄板。合金でない以上、ロケランで貫通できます」
清水「?」
清水「解説は渡辺二冠です。どんな戦いになるでしょうか」
渡辺「そうですね。先後関係なく横歩取りだと楽しいですけどね、うひゃひゃひゃひゃ」
カンナ「持ち時間はそれぞれ10分、それを使い切りますと1手30秒以内にs」
_____
/:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::/~~~~~~~~/
|::::::::/ ━、 , ━ |
|:::::√ < ・ > <・ >|
(6 ≡ ' i |
≡ _`ー'゙ ..| 運命は勇者に微笑む
\ 、'、v三ツ | これ、忘れるなよ
/ \ |
__/ニヘ ヽ__ 人__
__,,,,==ニニ三三ヘ. ||三ニ==、__
/三三三三三rイ◯三ニ| \__,/ |三三三三ニ==、
_|三三三ニ/ `ーイニ三;;| ./三\ |三三三三三三;\
_|三三三=广 \. `i,j! }ニ;| \三/ :|三三三三三三三|
|三三三iく \ { /三=| :|三| |三三○三三三三;|
あ、とても眠いので寝ます
あ、次回鉄板流の猛攻に大ピンチです
一瞬野崎まどが入ったね?
>>141-142
QB「わっ」グシャ
QB「何をするんだ。勿体無いじゃないk」ベショ
ほむら「ボウリングの玉が足りないわ!」ゴロゴロゴロ…
ほむら「16ポンド! 16ポンド持ってきてー!」ゴロゴロ…
○ @~~~●←私
↑ ↑
いんきゅべーたー。 16ポンド
マミ「盤が砕け散ったわ」
渡辺「これは千日手模様ですか」
カンナ「準決勝よーいどん」
ほむら「おねがいします」ペコリ
森内「あ、鉄板です」バコーン
ほむら「痛っ」ベシベシ
森内「駒は渡しませんよ」バコーンバコーン
ほむら「う、羽毛」
清水「この手は?」
渡辺「叩きの鉄板ですね。森内さんらしい手堅い攻撃です」
森内「あ、カレーです」ベシャァァァァ
ほむら「私の手番。美樹さやかの消火器を二本追加!」プシュゥゥゥゥゥゥゥ゙
清水「すごい切り合いが起きてますが」
渡辺「とても実戦的ですね。これは誰にも真似出来ません」
森内「あ、セメント囲いです」バコーン
ほむら「そんな弱気な手、私には通じないわ」カチッ
清水「これは?」
渡辺「ええ、時間を止めましたね。私も順位戦でコレにやられました(笑)」
清水「確かに一度に三手、四手指されると辛いものがありますね」
渡辺「森内さんに使わざるを得ない。それだけの強敵だと認めてるんですね」ケラケラ
ほむら「そろそろ銀銀桂爆弾を投下するわよ」ポイ
森内「あ、鉄板の二枚重ねです」バコーォォォン
清水「見応えがありますね。暁美八段の攻めをギリギリで受けきってますよ」
渡辺「決戦に備えて200mmの鉄板を用意したんです」
渡辺「私は研究済みだぞ、と主張してるわけですね」
ほむら「時間停止の寄せよ!」ペチペチ
森内「あ、9九馬と1一香で痺れてます」タァン
清水「せ、戦闘不能……でしょうか。決着が付きました」
渡辺「最後まで難解でしたね。感想戦で色々聞きだしましょう。うひゃひゃひゃ」
清水「お疲れ様でした。残り五分と短い時間ですが……」
渡辺「仕掛けの辺りからが良いですかね」
ほむら「ええと、桂が跳ねる前くらいで」パチパチパチ
渡辺「ええ」
森内「」
ほむら「こうですね。ここは金を寄るかどうか迷って」パチパチ
森内「」
渡辺「これは後手辛いですねー」
ほむら「ええ、なので先に歩を突いて消していこうと」パチパチパチ
森内「……!」ハッ
清水「時間となりました。この将棋の棋譜解説は将棋講座テキスト2月号に掲載されます」
清水「では次回をお楽しみに」ティロリー
◇渋谷 CT-108スタジオ
ここは東京の某国営放送局センター内にある某スタジオ。
大盤とシアターカメラのみが用意された無音の空間。分厚い鉄扉がギィと啼く。
羽生「あ、おはようございます」
清水「あれ? 本日の解説は羽生名誉N○K杯選手権者ですか」
羽生「えええ、ええ。前回負けてしまいました」
清水「名誉N○K杯選手権者を負かすとは、どんな相手だったんでしょう」
羽生「しょうがないんですね。あれは底知れないです」
さやか「ふっふっふ。奇遇だね、暁美ほむら八段」
ほむら「!!」
ほむら「どうしてあなたが将棋を……とんだ番狂わせだわ」
QB「美樹さやかかい? 彼女は癒しの祈りの使い手だからね」
QB「駒にダメージを与えてもすぐに回復するんだ」
ほむら「何それ反則じゃないの?」
まどか「わあ、本物のほむらちゃん八段だー! 頑張ろうね!」ガラッ
ほむら「あら応援に来てくれたのね」
さやか「ちょっとぉ、まどか達は隣のスタジオでしょっ」
まどか「えへへ……つい」
織莉子「こんにちは。暁美さん八段」
ほむら「美国さんも来てくれたのね。心強いわ」
まどか「あっ、始まるよ! 急ごう、ほむらちゃん八段」
ほむら「え、ええ」
清水「お互いの印象をどうぞ。では、先手の鹿目まどか竜王から」
まどか「ほむらちゃん? 強いよね」
まどか「序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ」
まどか「でも、絶対に負けないよ」
清水「本局への意気込みをどうぞ」
まどか「こまだ……っ」
まどか「駒達の躍動する姿を皆さんに見せたいな」
ほむら「え!? え?! 応援じゃないの?」
さやか「あたしが応援だよ。まどかのね」
ほむら「!?」
織莉子「私はお二人の応援です」
QB「つまり、そういうことなんだ……」
ほむら「!!」
清水「次に後手のインタビューをご覧ください」
ほむら「鹿目まどか……の印象はまるで無いわ。将棋指してる姿も見たこと無いわね」
ほむら「同じ学校のクラスメイトで手芸部と園芸部の掛け持ち……」
ほむら「そういえば趣味でチェスをやっていたような……」
ほむら「いや、順当に羽生名人だと思ってたので驚いてるのよ」
清水「本局への意気込みをどうぞ」
ほむら「腑に落ちないけど勝つわ。歩だけに」
清水「はい」
清水「ということで、お二人は同じ学校のクラスメイトだとか」
羽生「えええ。ええそうですね、すでに面白くなりました」
清水「次に二人の対戦成績をご覧ください」
これまでの対戦成績
鹿目 竜王 暁美 八段
初手合い
羽生「ええー。初めてなんですねえ、まあそこはしょうがないです」
清水「竜王位と今期A級1位の対決となりましたが。どんな展開が予想できるでしょうか」
羽生「いやいや、全く予想が付きません。ええ」
羽生「あっ、そうですね。私は暁美八段とよく研究会で指すんですが……」
清水「あの伝説の島研ですか?」
羽生「えー、はい。攻めが非常に速く『時間停止流』の名に違わない実力者です」
羽生「一方、鹿目竜王はアマ界隈で『宇宙流』と呼ばれています」
羽生「棋譜が少なく、何もかも未知なんです。だから居飛車振り飛車何でもあります。ええ」
羽生「ただ、鹿目竜王は非常に侮れないですからね。あの森内さんを圧倒しましたから」
ほむら「あなた……アマチュアのド素人なのに、何故NHK杯にいるの!!」
まどか「ほむらちゃん。わたしは竜王なんだよ……!」ガオー
ほむら「竜王は名人に匹敵する最高峰タイトル……」
ほむら「あ、ありえない! プロでもないのにっ! 何かの間違いよっ!」
QB「実力さえあれば、誰にでもチャンスが与えられる。それが竜王戦なんだ」
まどか「うそ。知らなかったの?」
まどか「竜王戦はオープン棋戦。竜王戦のシステムを教えてあげる!!」
まどか「まずアマ竜王戦 群馬県予選で200人相手に7連勝!」
まどか「次にアマ竜王戦全国大会で上位4人、つまり6連勝!」
まどか「そして竜王ランキング戦6組で56人相手に1位通過! プロに6連勝だよ!」
まどか「さらに決勝トーナメントで7勝!」
まどか「最後に森内前竜王を相手に7番勝負!」
まどか「31連勝で更にNHK杯で4連勝! やっと逢えたねほむらちゃん!」
ほむら「……!」ゾクッ
羽生「ええ、実力的には互角以上ですね。竜王1期で八段に昇段出来ますから。ええ」
清水「はぁー。だから鹿目竜王が上座なんですか」
◇N○K杯 決勝戦
室谷「持ち時間はそれぞれ10分。それを使いきりますと一手30びょ」
カンナ「はい。よーいスタート」
まどか「おねがいしまーす」パチ
カンナ「先手、鹿目まどか竜王▲7六歩」
ほむら「飛車先を進めるわ。横歩で激しくシましょ?」ペチ
カンナ「後手、暁美ほむら八段△8四歩」
まどか「▲6八銀だよ!」バシ
ほむら「矢倉……なるほどね。受けて立つわ」ペチ
カンナ「後手、△3四歩」
羽生「ええ、えええ。早指し棋戦では珍しいですね」
清水「というと?」
羽生「そうですね。まあ、定跡が整備されてるので神経を使うんです」
羽生「つまり逆転が難しいんですね。一回のミスが致命傷です」
まどか「絶対に負けない!」パシ
ほむら「矢倉は研究勝負。年季が違うのよ」ペシーン
まどか「手が震えてるよ。ほむらちゃん」スッ
>>155訂正
◇N○K杯 決勝戦
室谷「持ち時間はそれぞれ10分。それを使いきりますと一手30びょ」
カンナ「はい。よーいスタート」
まどか「おねがいしまーす」パチ
カンナ「先手、鹿目まどか竜王▲7六歩」
ほむら「飛車先を進めるわ。横歩で激しくシましょ?」ペチ
カンナ「後手、暁美ほむら八段△8四歩」
まどか「▲6八銀だよ!」バシ
ほむら「矢倉……なるほどね。受けて立つわ」ペチ
カンナ「後手、△3四歩」
羽生「ええ、えええ。早指し棋戦では珍しいですね」
清水「というと?」
羽生「そうですね。まあ、定跡が整備されてるので神経を使うんです」
羽生「つまり逆転が難しいんですね。一回のミスが致命傷です」
まどか「絶対に負けない!」パシ
ほむら「矢倉は研究勝負。年季が違うのよ」ペシーン
まどか「手が震えてるよ。ほむらちゃん八段」スッ
まどか「それはとっても強気だなって」パチィ
ほむら「なんて大胆な……!」ペチ
清水「この手はなんでしょうか」
羽生「先に受けたんですね。桂馬が跳ねてくるのを見越してるんです」
まどか「ほむらちゃん八段は1八香型と1七香型どっちが好きなのかな?」ペチン
ほむら「4五歩で大騒ぎよ」ペシ
羽生「後手が仕掛けました。もう収まりません(笑)」
清水「60手以上ノンストップです」
羽生「ん、先後、お揃いの指輪してますね?」
清水「あら可愛らしい。あ、また手が進みました」
ほむら「蛮勇な手には激辛な手よ」ペチ
まどか「ここで▲1九角打だよっっ」パチィ
羽生「いやいやいや。△8二の飛車狙いを付けてはいるんですが」
羽生「んー。どうですかねえー。もしかしたら一直線で来るかもしれませんけど」
ほむら「△3七銀で飛車角両取りヘップバーンよ」バチィィィィ
まどか「角さんごめんね。切るよ」シャー
ほむら「角銀交換ですって? ふふっ。と金を作ったら貴女の飛車も死ぬわよ」ペシ
まどか「飛車なんて……必要ない!」パチン
織莉子「ひええ~~」
まどか「そして▲3一銀! さあ出てきてよ! 王様ぁ!」パチ
ほむら「その銀、タダよ? わかってる?」スィ
羽生「ええー。鹿目竜王が大駒2枚プレゼントして……さらに銀のタダ捨てです」
羽生「相手玉を引き摺りだす代わりに銀をプレゼント、これは反則です(笑)」
清水「アマチュアから見たら絶望的な差ですが」
羽生「おすすめ出来ませんね。この二人だから出来るんです。えええ、ええ」
ほむら「一気に片付けるわ」ペチ
まどか「うう…負けないもん」ペチ
清水「どちらが有利なんでしょうか」
羽生「次の手次第ですね。あれが来たらもう……ですね」
まどか「必殺! ▲6六桂打だよ」バシィィ
羽生「えええ、ええええー。出ました(笑)」
ほむら「こ、この手は……永瀬新手!」
■永瀬新手とは、相矢倉の特定の局面において後手有利の定跡に一石を投じる研究手である。
まどか「みんなは、後手有利で結論を出した場面だけど……」
まどか「ううん。違う。わたしは先手が良いと思った」
まどか「矢倉の定跡は間違ってる!!!」
羽生「ええ。えええ。棋理に挑む戦いです」
室谷「10秒ー」
ほむら「この永瀬新手を破る光明は……」
室谷「20びょー」
ほむら「必殺! △6九銀打よ」バシィィ
まどか「こ、この手は……羽生新手!」
■羽生新手とは、相矢倉の特定の局面において後手有利の定跡に
一石を投じる研究手である永瀬新手に一石を投じる絶妙手である。
羽生「ええ、えええ。この形、後手有利とよく言われるんですよね」
織莉子「後手の駒がよく働いてるわね」
杏子「将棋わっかんねえ」
まどか「△6九銀打かあ……」
ほむら「ふふ。後手有利の定跡に飛び込んで自滅」
ほむら「……とても強く、切なく、そして優しく、悲しい戦いだわ」
室谷「10秒ー」
まどか「この羽生新手を破る光明は……」
室谷「20びょー」
まどか「じっと▲6八金寄りだよ」バシィィ
ほむら「こ、この手は……鹿目新手!」
■鹿目新手とは、相矢倉の特定の局面において後手有利の定跡に
一石を投じる研究手である永瀬新手に一石を投じる絶妙手である羽生新手に
一石を投じる疑問手である。
ほむら「第一観、悪手にしか見えないわ」パチ
まどか「粘って粘って粘るもん」パチ
ほむら「無理攻めは良くないわよ。すぐに終わりが来てしまう」パシ
さやか「うー。あの転校生八段に大駒4枚持たれちゃった。もう無理だよぉ」
マミ「逝ってしまったわ。円環の棋理(ことわり)に導かれて」
http://i.imgur.com/2NN9Vpe.png
まどか「まだまだ後手優勢だね。ほむらちゃん……」パチ
ほむら「飛車を取り返されたけど、私の方が明らかに有利……」パチ
ほむら「明らか有利なのに、とても難解だわ」ホムム
室谷「暁美八段残り2分です」
ほむら「あと何分?」
カンナ「2分です」
ほむら「あと何分?」
清水「次の手は何があるんでしょうか」
羽生「えーえーえーえええええーえええ」
羽生「極めて難解です。一目△7一歩ですが……」
羽生「△7一歩は▲5三金△8五桂▲9二竜△同香▲6二飛△2三玉
▲2二銀△2五歩▲同歩△同馬▲2六歩で後手まずいですね」
羽生「そこで△3二金になるんですがぁ……」
羽生「それだと多分……」
清水「おや?」
ほむら「……」パチ
清水「あ。指しました」
まどか「△3二金……!?」ツンツン
ほむら「ええ。△3二金」ツンツン
http://i.imgur.com/tIpdn19.png
ほむら「――金よ」
ここまで
マジレスすまん カメムシとかコオロギって何?気になり過ぎる
ほむら「>>165が何か言ってるわ」
QB「渡辺二冠の弱点は昆虫だ。クモもハエもカメムシも無理なんだ」
ほむら「第63期王将戦七番勝負第4局の動画が参考になるわ」
QB「以下に簡単な棋士データを添付しておくよ」
http://livedoor.blogimg.jp/copipe_hozondojo/imgs/c/3/c391093c.jpg
http://livedoor.blogimg.jp/copipe_hozondojo/imgs/7/2/72c2e467.jpg
http://livedoor.blogimg.jp/copipe_hozondojo/imgs/5/8/586330d2.jpg
ほむら「残り僅かだけど、疑問に思った点は気軽に質問してね」
なぎさ「投下なのです」
ほむら「金を引いただけよ?」
まどか(何の狙いもない俗手。でも最善手だよぉ……)
清水「凄いですね。羽生さんの言った通りに進んで行きます」
羽生「えええーえええ。△3二金は。ええー」
羽生名人は大盤をしきりに動かし、ある一筋の予想図を示した。
▲8二桂成△6八銀成▲同金△7八金▲同金△同銀成▲同玉△6九角▲6七玉△5八角成
▲6六玉△4六馬▲3一銀△2三玉▲1五桂△同歩▲2二金△1三玉▲1四銀△同馬
▲1五歩△6五歩▲7五玉△7四歩▲同玉△8五銀▲6五玉
http://i.imgur.com/bq2SAoB.png
羽生「多分こう進みます。一例ですが(笑)」
羽生「この先▲6五玉に△3一金は……」
▲1四歩△2二玉▲1三歩成△同香▲1一角△1二玉▲3一竜△7四銀▲5四玉△6三銀
▲同玉△6二金▲同玉△8二飛▲7二金△7三銀▲5一玉△5二金▲同玉△7二飛
▲4一玉△4二金▲同竜△同飛▲同玉△6四馬▲5三金
http://i.imgur.com/wNu1EZc.png
羽生「えええ、とても難解です(笑)」
羽生「また、▲6五玉に△6四歩とすると」
▲同金△3一金▲1四歩△2二玉▲3三銀△2三玉▲9二成桂△7四桂
羽生「ええ、ええ。△7四桂が味のある一手で――」
http://i.imgur.com/ILAro1w.jpg
▲9五玉△9四歩▲同玉△8二桂▲8二同竜△8五銀打▲9三玉△9四金
http://i.imgur.com/E5gPBLN.jpg
羽生「こう進むと後手勝ちですね。暁美N○K杯選手権者の誕生です」
羽生「つまりここが一見自然ですが悪い手なんですよ、ええ、えええ」
羽生「ですからー。▲3三銀に代わって」
羽生「んー。▲1三歩成△同香▲1一角△1二玉▲9二桂成でしょうか」
http://i.imgur.com/P0v2T9W.jpg
羽生「はぁー。大決戦になりそうですね。ええ」
清水「30秒でここまで読むんですか……」
羽生「いやー見ごたえある一着です。この戦い、200手は確実でしょうね」
羽生名人の解説は直線で55手、変化含め100手近くに渡った。
聞き手はにこやかに相槌を入れながら盤を見るのだが、
名人の笑顔とは裏腹にあまりに深く難解な内容に、幾度も聞き返してしまうのだ。
視聴者は理解することを放棄し、羽生の駒捌きと読みの深さに思わず舌を巻いた。
「負けました」
更に90手近く進んだ172手目。雌雄は決した。
羽生新手を指した瞬間から、先手の鹿目まどか竜王がこうなるだろうと予想していた。
いや、暁美ほむらは分かっていたのだ。
矢倉88手定跡は一般に後手有利と言われている。
プロの大局観、研究会、棋書、コンピューターに拠る解析、将棋用ソフトウェア。
あらゆる視点で、後手有利の結論が出ている。
(鹿目竜王は若干ミスを犯したが)二人は最善と思われる手を指し続けた。
暁美八段に敗因は何一つ在り得ない。鹿目竜王が、自らこの変化に飛び込んできたのだ。
「それでは賞状と優勝エントロピーの授与です」
「ありがとうございます」
「次に次期N○K杯選手権者から一言お願いします」
暁美ほむらは微笑んでいる。
鹿目まどかは静かに涙を流していた。
まどか「ほむらちゃん八段に勝ててうれしいです」
暁美ほむらは全てを知っていた。
後手優勢とされた矢倉88手定跡は、全て≪先手≫が勝利を収めていることをも。
手番、駒の働き、大駒4枚。後手は勝勢と言っても良い。
コンピューターに50億手読ませたとしてもその結論は変わらない。
しかし、不思議なことに後手は必ず負けてしまうのだ。
水平線効果なのか、膨大な変化のためか、或いは、それ以上の何かが――。
最新鋭の解析技術を持ってでさえ、一尺四寸の盤に悠々と凌駕される。
形勢判断はたちどころに狂い出し、やがて先手に勝利の女神が微笑むのだ。
室谷「興奮醒めやらぬ大激戦でした」
カンナ「間近で見られるだけでも恐悦です。勉強させて頂きました」
清水「羽生名誉NH○杯選手権者からも一言お願いできますか」
羽生「はい。お二人の底力が垣間見えた名局と言っても差し支えありません」
羽生「ただ、まあ時間に追われてしまうので仕方ない面もあったのかな、と……」
羽生名人だけは若干不満そうな表情をしていた。
大好きなおもちゃを突然取り上げられてしまったような。
いや。鹿目、暁美、両対局者の底の浅さを見透かしてしまったような。
ほむら「……それって」
羽生「162手目から、お二人ともちょっと残念な変化に入ってしまった気が」
まどか「……ぁ」
――彼にだけ見えている世界がある。
この男は底知れない。
誰もがそう感じ、激しい驚嘆と深い畏敬の念を抱いた。
まどか(そっかぁ。本当はまだまだ続く戦いだったんだ……)
ほむら「あの、私からも受け取って欲しいものがあるの」
まどか「え? それって……」
ほむら「これを……」スッ
まどか「あっ……指輪……」キュン
ほむら「夜の感想戦を始めましょう」
まどか「ほむらちゃああああああああん!!」ダキッ
二人は幸せなキスをして終了。宇宙も概ね救われた。
…………
……
――数年後。
A級順位戦最終局を終えるも多くの棋士が未だに残っている。
千駄ヶ谷は黎明の光で薄白く染められていた。
「もう何も怖くない」
暁美ほむら王座はそう言い残し、羽生三冠の待つ特別対局室へ戻っていった。
局面は終盤、ぎりぎりの寄せ合いに突入しようとしていた。
ここは東京、将棋会館。
名人挑戦権を賭けて、二人の天才棋士がプレーオフを闘っている。
【完】
N○K篇をまるまるスルーしても最後につながるようになってますよと
王座王位棋聖名人のうちいっこほむーに取られちゃって名人も取られちゃったけど
なんだかんだぁで三冠に戻ったよという含みを持たせております
現名人はほむーはぶぁ以外のどなたか。ご想像にお任せするとしてHTML化させて頂きます
あ、このお話は架空のフィ、フィクションです。ええ。はい。
・元ネタ
将棋名人のなりかた講座
・参考文献
将棋MAD将棋板他多数
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