謁見の間にて
王「勇者よ」
勇者「はい」
王「近頃、魔物が活発に動き、人々も不安な日々を過ごしている」
王「そこで、勇者には元凶となる魔王を討ってもらいたい」
勇者「なるほど、わかりました」
王「そこで、旅の助けになる物を用意した。大臣!」
大臣「はっ」サッ
勇者「これは…?」
大臣「ピストルです、勇者殿」
勇者「えっ、剣くれるかと思った」
王「これは、隣国の機密情報をもとに造られた、最新兵器…」
王「そして、その武器と、大臣!」
大臣「はっ!…私めが、勇者殿の旅のサポートを致します」
勇者「えっ、ついてくるの?」
大臣「ご不満ですかな?」
勇者「いえ、とんでもない」
王「大臣は案内兼補給役…その武器の使用法も教わるとよい」
王「では、行くがよい勇者よ」
城下町にて
勇者「さあ、まずは酒場だ」
大臣「なりません、勇者殿」
勇者「どうして」
大臣「勇者殿はまだ未成年です」
勇者「何も頼まないよ、仲間探しだけだって」
大臣「私めがいるではありませんか」
勇者「いや僧侶とか必要…」
大臣「私、これでも魔法、剣術、素手格闘をマスターしていますので」
勇者「そ、そう、じゃあいいかな」
勇者「じゃあ、よろず屋に」
大臣「なりません」
勇者「僕泣いちゃうよ?」
大臣「補給すべきものは揃えてありますので」
勇者「そう…わかったよ」グスッ
フィールドにて
勇者「久々に街の外だ、草のにおいと風がいい気持ち」
大臣「それでは勇者殿…」
勇者「うん」
大臣「武器の使い方をお教えしましょう」
勇者「そうだった、剣の方が良かったんだけどね」
10分後…
大臣「そして、トリガーを引きます」
勇者「えいっ」
パァァン
勇者「~~~!!」ビリビリ
大臣「だから言ったではありませんか」
大臣「気を取り直して…おお、手頃な怪物が」
ゴブリン「」キョロキョロ
大臣「さあ、勇者殿、さっきのやり方で」
勇者「手が痛いよ…」
大臣「平和のためです。経験を積んで下さい」
勇者「わかったよもう…」チャキッ パァン
ゴブリン「カッ」バッシャア
勇者「うえぇっ、頭砕けた!エグぅ!」
大臣「なるほど…少しの時間で会得でき、充分な威力、と」メモメモ
勇者「ねえ、大臣、ヤバいよ、オーバーキルどころじゃないよ!やっぱり剣がいいよ!」オロオロ
大臣「こほん…勇者殿。魔王討伐の道中、苦悩や困難はつき物…」
大臣「この程度でうろたえてどうします」
勇者「ご、ごめん」
大臣「さあ、村に着くまで装填のやり方を教えましょうかね」
村にて
大臣「着きましたよ」
勇者「街からあんまりでないから、初めて来たよ」
大臣「ここは我々の生活用品を作る職人の村です」
大臣「あなたの服や武器、食品、雑多なものを作り…」
勇者「それぐらい知ってるよ、学校で教わったから」
大臣「そうそう、そのピストルですが、他人に見せないで下さい」
勇者「わかった、危ないからね」サッ
大臣「では、宿をとって参りますので、後はご自由に」
勇者「うん」
宿にて
勇者「大臣!情報を集めたんだ!聞いて!」
大臣「左様ですか」
勇者「どうやら、鉱山に」
大臣「山賊が出たんでしょう?」
勇者「なっ、なんで知ってるの」
大臣「ここは王国の領土内」
大臣「配属している兵に聞けば分かります」
勇者「そんな、結構聞いてまわったのに」
大臣「まあ、その行動力やよし」
大臣「明日、すぐに討伐に向かいましょう」
勇者「わかった」グス
フィールドにて
勇者「ふわぁ~」
大臣「まだ寝たりないのですか」
勇者「うん、だって日も登ってないよ」
大臣「山賊の不意を突くためです」
勇者「ふわぁ~…」
鉱山にて
勇者「この洞穴にいそうだね」
大臣「間違い無いでしょう、この生臭さといい…不潔な」
勇者「で、どうするの?」
大臣「これをピストルに装着して下さい」ゴソッ
勇者「筒?」
大臣「発射時の音を抑制するはずです」
勇者「どれどれ」バスッ
勇者「本当だ」
大臣「無駄撃ちはご遠慮を」
勇者「ごめんごめん」
大臣「随分と手慣れたものです」
勇者「怒ってる?」
大臣「いいえ…では、お好きな様に攻め込んで下さい」
勇者「あれ、来てくれないの」
大臣「ええ、勇者殿の旅ですから。戦闘には参加しません」
勇者「ええー…わかったよ、行くよ」ザッザッザッ
オマエタチ、セイバイシテクレル!
ワー、ナンダ
ゾクノシュウライカ
パァンパァン
イテェヨー
大臣「奇襲するために早く来たんですが…やれやれ」
勇者「終わったよ、悪は滅びた!」
大臣「悪は魔王です」
勇者「そっか」
大臣「ふむ…数人の完全武装者も瞬殺…」メモメモ
勇者「なにか言った?」
大臣「いいえ…。勇者殿、村に戻り、報告しましょう」
勇者「うっし」
村長に報告し…
フィールドにて
勇者「良いことすると気持ちがいいね」
大臣「ええ、まあ」
勇者「お礼ももらったし」チャリンチャリン
大臣「勇者殿、次は山登りですよ」
勇者「わ、ハイキング?」
大臣「竜の棲む山ですから、バーベキューなるとよろしいですよ」
勇者「そんなに怒らないで」シュン
竜の巣、山頂にて
竜「グルル…」
勇者「わっ竜だ!絵本で見た竜だ、本物の竜だー!」
大臣「はしゃぐと絵本の村人aのように襲われますよ」
勇者「うっ…じゃあ、そーっと歩いて…」
大臣「いいえ、討伐します」
勇者「えっ」
大臣「これを」サッ
勇者「これは?」カチャッ
大臣「ライフル、という物です」
勇者「ピストルに似てるね」
大臣「ええ、造りはほぼ同じです」
大臣「では、やってください」
勇者「なんで!!」
竜「ゴアアァァア!」
大臣「ほら見なさい、竜の逆鱗に触れてしまいました」
竜「ガァッ」ドシッドシッ
勇者「うわっこっち来た」ガクガク
大臣「さあ、ライフルを構えて」
勇者「こ、こうかな」スチャッ
大臣「違います。まあ、後で教えるので、トリガーを」
ドンッ
竜「ゴァッ…」ドシャア
勇者「はあ、はあ、もう一丁!」ドンッ
竜「」
大臣「勇者殿、すでに息絶えております」
勇者「」ヘナヘナ
下山後、港にて
大臣「勇者殿」
勇者「はぃ」
大臣「元気がありませんね」
勇者「はぃ」
大臣「だいぶお疲れでしょうから宿をとりました」
勇者「はぃ」
大臣「まずは休みましょう」
勇者「はぃ」フラフラ
宿にて
勇者「すやすや」
大臣「ライフルは竜にも効果あり、と」メモメモ
大臣「…これでいいのだろうか」
大臣「……勇者殿…いや、勇者…」
大臣「君は純粋過ぎる…」
大臣「私は……」ギリッ
早朝、船上にて
勇者「すやすや」
大臣「おぶると重いですねー…」ポイッ
勇者「ぐえっ」ドサッゴロゴロ
大臣「ああ、申し訳ございません」
勇者「ら、乱暴な…」
大臣「いつまでも起きないので」ニコ
勇者「ここは?」
大臣「船です、魔王城のある辺境の島まであと5分といったとこでしょう」
勇者「早っ」
辺境の島
勇者「ここに魔王城が…」
大臣「ええ、行きましょう」
勇者「あっ魔物」
大臣「ふむ、この距離ならばピストルで充分でしょう」
パァン
魔物「ギャッ」パタッ
勇者「上手い鉄砲数撃たず!」エッヘン
大臣「何を言っているのでしょう」
魔王城にて
勇者「着いたね」
大臣「ええ」
勇者「結構早かったね」
大臣「そうですね」
勇者「門…開けるよ」
ゴゴォォン
勇者「いざ!覚悟!」
大臣「…」
魔王城内部にて
勇者「誰もいないね」
大臣「そのようです」
勇者「まあ好都合かな」
勇者「この扉…!奥にいるなっ」
ギィィッ・・・
魔王「誰だ?来客か」
勇者「やい、魔王!成敗してくれる!」
勇者「くらえっ」パァンパァン
魔王「ひどいよいきなり」ゴフ
勇者「まだまだ!ライフルとピストル同時攻撃!」パァンパァンドパァン
魔王「」バタッ
勇者「あれっ」
大臣「お見事」
大臣「結果的に、魔王も3発で絶命」メモメモ
大臣「さあ帰りましょう、王が待っています」
勇者「あれっ」
謁見の間にて
勇者「戻りました」ザッ
大臣「」スタスタ
王「勇者、大臣。この度は御苦労であった」
王「して、勇者よ、魔王討伐の褒美は何を望む」
勇者「えと、お金!家はスラムにあるんだ、だから、家族と、友達の生活に困らないくらいの…」
パァン
勇者「お、か…」ドサッ
大臣「勇者殿、すまない…」カチャッ
王「大臣、御苦労であった」
大臣「…はい。一般人が銃を使った際の戦闘データも充分に」パラッ
王「うむ、ではそのデータを活用し、兵を訓練するのだ」
大臣「御意のままに」
王「フフッ…隣国より先に銃を造り、戦闘の情報も充分に得てから攻め込む」
王「これで世界は我が手に…フフッ、フハハハッ」
スラム生まれの勇者は、学校に数日しか通えず、魔王が世界を滅ぼすことが嘘という事実を教わらなかった
王はスラムの一般人である勇者を、勇者に仕立て上げ、銃の威力を確かめる役として、大臣と旅をさせた。充分に情報を得て、事実を悟られないうちに勇者を殺害。そして隣国を攻め、次々に国を落とし、やがて王は、魔王として世界中から畏怖される存在となった……
終
大臣ルート書きます
宿にて
勇者「すやすや」
大臣「ライフルは竜にも効果あり、と」メモメモ
大臣「…これでいいのだろうか」
大臣「……勇者殿…いや、勇者…」
大臣「君は純粋過ぎる…」
大臣「私は……」ギリッ
大臣「勇者殿、起きてください」
勇者「ふえっ」
大臣「勇者殿に伝えなければならないことがあります」
勇者「なーにー」ボー
大臣「それは…」
大臣は、王の策略を全て話した
勇者「そんな…」
大臣「今まで…申し訳ない事を」
勇者「いいんだよ」ニコ
大臣「えっ」
勇者「正直に言ってくれて嬉しいよ、大臣」
大臣「勇者殿…」
勇者「それで、どうするの?」
大臣「秘密を語ってしまった以上、大臣ではいられん…」
大臣「今をもって、勇者を護衛するただの傭兵だ!」
勇者「カッコいい…」
傭兵「さあ、勇者、真の魔王を討ちに行こう」
勇者「う、うん。随分雰囲気変わったね」
謁見の間にて
王「勇者、大臣、御苦労であった」
傭兵「すまない、私はただの傭兵だ」
王「なっ、なにを…」
傭兵「王よ、貴様の他国侵略は、民にも大きな負担となる」
傭兵「それにより重税、重労働、民のことなぞ考えずに」
傭兵「何が王だ!笑わせる!貴様なぞ勇者にも劣るクソッタレだ!!」
王「貴様、血迷ったか」
傭兵「覚悟しろ」チャッ
勇者「僕より劣るって、僕は下に見られてたんだ」
傭兵「死ねっ」
パァン
傭兵「がっはぁ」ドサッ
王「ふん、呆気ない」カチャッ
傭兵「なぜ…っ」
王「防弾服だよ、大臣…いや、傭兵くずれのカスが…」パァン
王「こうなると思い用意したのだ」パァン
傭兵「」
勇者「やめろぉぉぉ!」ダッ
王「ふん」パァンパァン
勇者「うおおぉおお!!」ダダダダダ
王「なぜ倒れん!」パァンパァンパァン
バキッ
王「ごふっ」
勇者「許さない、許さない!」フーッフーッ
王「待て、よせ!」
パァン
一発の銃声が響き、しばらくは泣き咽ぶ声だけが城内に響いた…
しばらくし、スラム生まれの人間が王になったと、全世界に知れ渡った…その国は、どの国よりも栄え、民、そして竜を含む魔物も保護する、慈愛に満ちた国となった…
「勇者」
王「やめてよ、今は王だ」
「フッ、そうでした」
王「さて、大臣、今日も頑張ろうか…平和のために」
終
途中疲れて急ピッチで終わらせたのを反省
細かい描写や設定がないのも反省しつつ
見てくださった方に、感謝します
それではまた
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